車両用懸架装置
【課題】 ボールねじ軸など潤滑を必要とする部品に、潤滑液を安定して供給することができる車両用懸架装置を提供する。
【解決手段】 この車両用懸架装置は、ボールねじ機構と電磁モータ式の抑制力発生器6を利用して減衰力を発生させる装置である。この車両用懸架装置は、ボールねじ4の外周を囲んで配置されボールねじ4を支持するハウジング3と、ボールねじ軸7の一端に設けられ、ハウジング3内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割する軸端部材20と、この軸端部材20に設けられ、ボールねじ軸7の上昇時に開放し、ねじ軸側空間14内に介在する潤滑液をボトム側空間15へ送る逆止弁40と、ハウジング3に設けられ、ねじ軸側空間14とボトム側空間15とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路13とを有する。
【解決手段】 この車両用懸架装置は、ボールねじ機構と電磁モータ式の抑制力発生器6を利用して減衰力を発生させる装置である。この車両用懸架装置は、ボールねじ4の外周を囲んで配置されボールねじ4を支持するハウジング3と、ボールねじ軸7の一端に設けられ、ハウジング3内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割する軸端部材20と、この軸端部材20に設けられ、ボールねじ軸7の上昇時に開放し、ねじ軸側空間14内に介在する潤滑液をボトム側空間15へ送る逆止弁40と、ハウジング3に設けられ、ねじ軸側空間14とボトム側空間15とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路13とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ機構と、電磁モータ式の抑制力発生器を利用して減衰力を発生させる車両用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、懸架部と被懸架部との間に、懸架ばねと油圧緩衝器とを並列に配置し、路面の凹凸によって生じる振動等を減衰させることで、車体の乗り心地と操縦性を確保する装置が実用に供されている。近年、前記油圧緩衝器に代わる機構として、電磁モータを利用して減衰力を発生する電磁モータ式緩衝器が提案されている。なお、この明細書で「電磁モータ」とは、電気による磁場の力で動くモータを意味し、電動機と同義である。電磁モータを使うことで、減衰力制御や車高調整などを自在に行うことが可能となる。また電磁モータを発電機として利用することで、振動エネルギーを回生利用することも可能である。
【0003】
これらを実現し電磁モータにより所望の力を得る手段として、ボールねじを使用する機構が提案されている。懸架部と被懸架部との間に生じる振動を、ボールねじによって直線運動から回転運動へと変換し、ボールねじ軸を回転させ動力伝達手段を介して、ボールねじ軸の軸方向一端に配置した電磁モータに伝える。この電磁モータで電磁力に起因するトルクで回転運動を抑制し振動を減衰させる。
【0004】
このとき、ボールねじの円滑な螺子運動を確保するために、ボールねじにはグリースなどの潤滑剤が塗布されることが多い。しかし、グリースは時間の経過と共に劣化やボールねじからの脱落が生じるため、グリースを定期的に補給する必要がある。グリースの定期的な補給作業は、時間的コスト的に作業負担が大きくなる可能性がある。そこで、図12に示すように、オイルなどの潤滑液をボールねじ100に対して塗布する機構が提案されている(特許文献1)。上記提案では、ボールねじ軸が上下運動する際に、ボールねじ軸の直下にある潤滑液101の液面に、ボールねじ軸端が接触または突入することで潤滑液を飛散することにより、ボールねじ軸に潤滑液を塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4306583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、ボールねじ軸が上下運動し、ボールねじ軸端が潤滑液101の液面に接触または突入する際に、ボールねじ軸が軸方向に液面をたたくことで衝撃力がボールねじ軸に作用し、車両の乗り心地を悪化させる可能性がある。また、ボールねじ軸端が潤滑液101の液面に接触または突入するためには、ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせる必要がある。ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせることができない場合には、ボールねじ軸に潤滑液を定期的に安定して供給できない可能性がある。
【0007】
この発明の目的は、ボールねじ軸など潤滑を必要とする部品に、潤滑液を安定して供給することができる車両用懸架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用懸架装置は、ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、ボールねじのボールねじ軸とハウジングを、車両の例えば、車体とアームなど車輪を支持する部材の間に取付けて使用される。車両の走行時の振動により、ボールねじのボールねじ軸は、ボールねじナットおよびハウジングに対して相対的に軸方向へ直線運動する。このときボールねじ軸に螺合するボールねじナットは回転運動し、この回転運動は、電磁モータ式の抑制力発生器のモータロータに伝達される。このとき抑制力発生器が、回転運動を抑制する方向に力を発生させることで、前記車両の振動を減衰することができる。発生する力を抑制力発生器で制御することで、所望の減衰力が得られる。
【0010】
ボールねじ軸の一部がハウジングに対して突出するボールねじ軸の上昇時には、このボールねじ軸の一端に設けられた軸端部材が、ねじ軸側空間を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これに伴って軸端部材に設けられた逆止弁が開き、ねじ軸側空間内部の気体および潤滑液を、ハウジング内のボトム側空間に送る。
ボールねじ軸の一部がハウジングに対して退入するボールねじ軸の下降時には、軸端部材がボトム側空間を圧縮し、このボトム側空間の気体圧力を上昇させる。これに伴ってボトム側空間内部の気体および潤滑液は、潤滑液用通路を通ってねじ軸側空間へ送られる。前記潤滑液は、ハウジング内のボールねじ軸など潤滑を必要とする部品を通過して移動する。このように、ボールねじ軸の上下運動により上記動作が繰り返され、ハウジング内の潤滑液が循環し、潤滑を必要とする部品に潤滑液を安定して供給することができる。ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせることができない場合であっても、ハウジング内のいずれか一方の空間の気体圧力を上昇させることで、潤滑液を移動させて潤滑に用いることが可能となる。
【0011】
前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記軸端部材に設けた逆止弁は閉じているものとしても良い。この逆止弁により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0012】
前記潤滑液用通路に、ボールねじ軸の下降時に開放し、ボトム側空間内に介在する潤滑液をねじ軸側空間へ送る逆止弁を設けたものとしても良い。ボールねじ軸の下降時、軸端部材がボトム側空間を圧縮し、このボトム側空間の気体圧力を上昇させる。これに伴って潤滑液用通路の逆止弁が開き、ボトム側空間内部の気体および潤滑液が、潤滑液用通路を通ってねじ軸側空間へ送られる。
前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁は閉じているものとしても良い。この逆止弁により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0013】
前記潤滑液用通路に、潤滑液が溜まる潤滑液溜りを設けたものとしても良い。この場合、ボールねじ軸が下降してきても、ボトム側空間内部の潤滑液は、潤滑液用通路の潤滑液溜りへ送られるため、ボールねじ軸や軸端部材が潤滑液と接触することがない。したがって、ボールねじ軸などが潤滑液の液面をたたくことに起因して、ボールねじ軸に作用する衝撃力を未然に防止することができる。よって車両が凹凸路を走行する場合に、車両の乗り心地が悪化することを緩和することが可能となる。
【0014】
前記潤滑液用通路に設けた逆止弁に近接して前記潤滑液溜りが設けられているものとしても良い。この場合、潤滑液用通路内の気体圧力が上昇し前記逆止弁が開いたときに、この逆止弁を通過した気体によって、潤滑液溜り内の潤滑液が飛散し飛沫となって潤滑液用通路内の所定箇所に効率良く送られる。
【0015】
前記ハウジングの内面の下端よりも下方に、前記潤滑液溜りが設けられているものとしても良い。この場合、ボールねじ軸の軸方向の移動量に拘わらず、ボールねじ軸や軸端部材が潤滑液の液面をたたくことをより確実に防止することができる。したがって車両の乗り心地が悪化することを緩和し得る。
【0016】
前記潤滑液溜りを構成する面が、前記ボールねじ軸の外周面を含んでいるものとしても良い。この場合、ボールねじ軸は、潤滑液と常時接しているため、従来例のようにボールねじ軸端が潤滑液の液面をたたくことによる衝撃力が発生しない。
前記ハウジングの内面の下端に、潤滑液を回収する潤滑液回収用通路が設けられているものとしても良い。この場合、ボールねじ軸が下方に移動してきても、ボールねじ軸および軸端部材が潤滑液と接触することがなく、また効率的に潤滑液を回収し循環させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の車両用懸架装置は、ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路とを有する。このため、ボールねじ軸など潤滑を必要とする部品に、潤滑液を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図2】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図3】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図4】(A)は、同車両用懸架装置におけるボールねじ軸の下降時の態様を表す要部の拡大断面図、(B)は同ボールねじ軸の上昇時の態様を表す要部の拡大断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図6】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図7】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図9】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図10】いずれかの車両用懸架装置の抑制力発生器を発電機等として使用する場合の配線例を概略示すブロック図である。
【図11】いずれかの車両用懸架装置を車両に搭載した例を概略示す図である。
【図12】従来例の車両用懸架装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の第1の実施形態に係る車両用懸架装置を図1ないし図4と共に説明する。
図1に示すように、車両用懸架装置は、例えば、四輪車等の車両の車体を含む懸架部1と、車輪やアーム等を含む被懸架部2との間に設けられ、これら懸架部1,被懸架部2間の振動を減衰する。車両用懸架装置は、ハウジング3と、ボールねじ4と、増速機構5と、電磁モータ式の抑制力発生器6とを有する。
【0020】
前記ボールねじ4は、ボールねじ軸7と、このボールねじ軸7に螺合されるボールねじナット8とを有する。ハウジング3内に、ボールねじ軸7の大部分およびボールねじナット8と、増速機構5と、抑制力発生器6とが設けられている。ハウジング3における長手方向一端この例では上端の開口部から、少なくともボールねじ軸7の軸方向一端が突出する。このボールねじ軸7の軸方向一端には、雄螺子からなる車両取付部9が設けられ、この車両取付部9が車両の懸架部1に取付け可能に構成される。ハウジング3の長手方向他端には車両取付部材10が設けられ、この車両取付部材10が車両の被懸架部2に取付けられる。
【0021】
ハウジング3について説明する。
ハウジング3は、略円筒状のハウジング本体11と、このハウジング本体11の外周に設けられるハウジングカバー12とを有する。ハウジングカバー12の内周面と、ハウジング本体11の外周面との間に、環状の潤滑液用通路13が設けられ、この潤滑液用通路13は、ハウジング本体11内の空間におけるねじ軸側空間14とボトム側空間15とに連通する。ハウジング本体11は、駆動部ハウジング16と、ねじ軸支持ハウジング17と、ボトム側ハウジング18とを有する。駆動部ハウジング16の軸方向一端に、ねじ軸支持ハウジング17が接続され、駆動部ハウジング16の軸方向他端に、ボトム側ハウジング18が接続されている。
【0022】
図3に示すように、駆動部ハウジング16は円筒状に形成され、この駆動部ハウジング16内に、ボールねじナット8、増速機構5、および抑制力発生器6を含む駆動部が設けられている。ねじ軸支持ハウジング17は、軸方向に沿って順次、フランジ部17a、大径円筒部17b、テーパ筒部17c、および小径円筒部17dを有する。駆動部ハウジング16の軸方向一端に、フランジ部17aが接続されている。テーパ筒部17cは、大径円筒部17b側から小径円筒部17d側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。大径円筒部17bの内周面には、転がり軸受19の軸方向位置を規制する段差部17baが設けられている。
【0023】
図2に示すように、ボトム側ハウジング18は、軸方向に沿って順次、大径円筒部18a、テーパ筒部18b、小径円筒部18cを有する。テーパ筒部18bは、大径円筒部18a側から小径円筒部18c側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。ボールねじ軸7の軸方向他端には、環状の軸端部材20(後述する)が設けられている。軸端部材20は、ボールねじ軸7の軸方向移動の範囲を制限し、ハウジング本体11内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割する。小径円筒部18cの内周面18caは、前記軸端部材20の外周面が内接する内径寸法に規定されている。小径円筒部18cと軸端部材20とで囲まれたボトム側空間15に、一定量の潤滑液が封入されている。
【0024】
図1に示すように、ハウジングカバー12は、主カバー部21と副カバー部22とを有する。主カバー部21は、駆動部ハウジング16およびボトム側ハウジング18の外周を覆う略円筒状に形成されている。図3に示すように、副カバー部22は、ねじ軸支持ハウジング17の外周を覆う略円筒状に形成されている。図2に示すように、前記主カバー部21は、軸方向に沿って順次、大径カバー部21a、テーパカバー部21b、小径カバー部21cを有する。大径カバー部21aは、主に駆動部ハウジング16の外周を覆い、駆動部ハウジング16の外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。図3に示すように、大径カバー部21aの軸方向一端に内向きのフランジ21aaが付設され、このフランジ21aaに副カバー部22が接続されている。副カバー部22は、軸方向に沿って、テーパカバー部22aと、小径カバー部22bとを有する。これらのうちテーパカバー部22aは、小径カバー部22b側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。小径カバー部22bの軸方向一端に内向きのフランジ22baが付設されている。ねじ軸支持ハウジング17の外周面における上端部に、フランジ22baの内周面が固定される。
【0025】
図2に示すように、テーパカバー部21bは、ボトム側ハウジング18の主にテーパ筒部18bの外周を覆い、テーパ筒部18bの外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。このテーパカバー部21bは、大径カバー部21a側から小径カバー部21c側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。小径カバー部21cは、小径円筒部18cの外周を覆い、小径円筒部18cの外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。小径カバー部21cの軸方向一端に内向きのフランジ21caが付設され、ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cの外周面における下端部に、フランジ21caの内周面が固定される。
【0026】
ハウジングカバー12の内周面と、ハウジング本体11の外周面との間の径方向すきまが、環状の潤滑液用通路13を成す。ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cには、ボトム側空間15と潤滑液用通路13とに連通する貫通孔状の油路23が設けられている。また、ねじ軸支持ハウジング17には、ねじ軸側空間14と潤滑液用通路13とに連通する貫通孔状の油路24が設けられている。
【0027】
ボールねじ4等について説明する。
図3に示すように、ボールねじ4は、ボールねじ軸7による直線運動を、ボールねじナット8による回転運動に変換し、増速機構5に伝達するものである。駆動部ハウジング16の内周面には、転がり軸受25,25、歯車保持部材26の軸方向位置をそれぞれ規制する段差部16a,16bが設けられている。駆動部ハウジング16の内周面は、これら段差部16a,16bにより、軸方向に沿って順次、大径部、中径部、小径部に形成される。駆動部ハウジング16の中径部には、ボールねじナット8を回転自在に支持する2つの転がり軸受25,25が嵌合されている。
【0028】
これら転がり軸受25,25は、それぞれアンギュラ玉軸受からなり、背面組合せに組み込まれている。転がり軸受25,25の内輪内周面に、ボールねじナット8の外周面が嵌合されている。図3上側の転がり軸受25の内輪端面に、ボールねじナット8の第1フランジ部が当接されると共に、図3下側の転がり軸受25の内輪端面に、ボールねじナット8の第2フランジ部が当接される。両フランジ部間に内輪25a,25aおよび内輪間座27が挟み込まれ、前記転がり軸受25の外輪端面が段差部16aに当接する。したがって、ボールねじナット8は、転がり軸受25,25によって軸方向および半径方向に支持される。
【0029】
増速機構5等について説明する。
増速機構5は、ボールねじナット8の回転運動を増速し、抑制力発生器6に伝達する機構である。この増速機構5は、遊星歯車機構であり、太陽歯車28と、複数の遊星歯車29と、複数のキャリアピン30と、内歯車31と、歯車保持部材26とを有する。ハウジング本体11内におけるボールねじ軸7の半径方向外方に、これら構成部品を含む増速機構5が設けられる。太陽歯車28に複数の遊星歯車29が噛合されると共に、内歯車31に複数の遊星歯車29が噛合されている。太陽歯車28と、内歯車31と、複数のキャリアピン30を支持する前記第1フランジ部とが、同一軸心に配置されている。太陽歯車28は、内周部が中空形状となるリング状に形成され、後述の抑制力発生器6(図1)の一部に接合または一体に設けられる。前記第1フランジ部の一端面のうち外周側には、複数のキャリアピン30が軸方向に所定距離突出するように接合されている。これらキャリアピン30は、複数の遊星歯車29を回転自在に支持するものであり、円周方向一定間隔おきに設けられている。
【0030】
駆動部ハウジング16内の前記大径部に、リング状の歯車保持部材26が嵌合され、段差部16bに、歯車保持部材26の端面が当接される。この歯車保持部材26の内周面に段差部が設けられ、この段差部に内歯車31の一端面が支持されると共に、この内歯車31の外周面が歯車保持部材26の内周面に嵌合固定されている。内歯車31の両端面が、軸受保持部材32と前記段差部との間に挟持されることで、内歯車31の軸方向位置が規制される。
ボールねじナット8が回転することで、複数の遊星歯車29が太陽歯車28の回転軸心L1周りに公転すると共に、これら遊星歯車29と太陽歯車28とがそれぞれ自転する。このように太陽歯車28が自転することで、ボールねじナット8の回転運動が抑制力発生器6に伝達される。
【0031】
抑制力発生器6等について説明する。
抑制力発生器6は、電磁モータ式の抑制力発生器であり、例えば、駆動用のモータとして使用可能な電磁モータを用いている。この電磁モータは、直流モータや同期モータ等種々のモータを適用し得る。なお、抑制力発生器6は、必ずしも駆動用のモータとして使用可能なものでなくてもよく、ステータとロータ間で電磁的に回転の抑制力が生じるものであれば良い。ハウジング本体11内におけるボールねじ軸7の半径方向外方に、抑制力発生器6が設けられている。この抑制力発生器6は、モータロータ33と、永久磁石34と、モータステータ35とを有する。前記ねじ軸支持ハウジング17および駆動部ハウジング16には、中空形状のモータロータ33を回転自在に支持する転がり軸受19,19がそれぞれ設けられている。すなわち前記ねじ軸支持ハウジング17のうち大径円筒部17bの内周面に、転がり軸受19の外輪外周面が嵌合されている。これと共に、大径円筒部17bの内周面に設けられた段差部17baに、この転がり軸受19の外輪端面が当接されている。
【0032】
駆動部ハウジング16の内周面には、軸受保持部材32を介して転がり軸受19が設けられている。軸受保持部材32はリング状に形成され、この軸受保持部材32の軸方向一端が、内歯車31および歯車保持部材26の一端面に当接するように構成されている。軸受保持部材32の内周面に軸受を保持する段差部が設けられ、この段差部に外輪端面が当接され、且つ、軸受保持部材32の内周面に外輪外周面が嵌合されている。転がり軸受19,19の内輪内周面に、モータロータ33の外周面がそれぞれ嵌合されている。軸方向に対向する内輪端面間には、モータロータ33の段差部が挟み込まれている。したがって、モータロータ33は、ボールねじ軸7の半径方向外方で回転自在に支持される。
【0033】
モータロータ33の外周面には、円筒状の永久磁石34が設けられている。また駆動部ハウジング16の内周面にはモータステータ35が設けられている。永久磁石34の外周面は、モータステータ35に対し定められた径方向すきまを介して対向するように設置される。前記モータロータ33の外周面に設けられる永久磁石34と、モータステータ35との間で、電磁力による回転方向の力が生じるよう構成されている。ボールねじ軸7の直線運動をボールねじナット8の回転運動に変換し、この回転運動を増速機構5を介して増速して抑制力発生器6のモータロータ33に伝達する。抑制力発生器6は、前記回転運動を抑制する方向の力を発生することでボールねじ軸7の直線運動を抑制するように構成されている。
【0034】
ボールねじ軸7およびその支持構造について説明する。
ねじ軸支持ハウジング17のうち、小径円筒部17dの内周面には、円筒状の軸支持部材36が固定されている。この軸支持部材36は、ボールねじ軸7の摺動部37を摺動自在に支持する。摺動部37のうち軸方向の一部の外周面である摺動面が、軸支持部材36に摺動自在に支持される。軸支持部材36は、この例では摺動性の良い樹脂材料や金属材料からなる滑り軸受が適用される。但し、軸支持部材36として転がり軸受を適用しても良い。ねじ軸支持ハウジング17の軸方向先端部には、ボールねじ軸7の摺動部37に接触する接触式シールからなる環状のシール部材38が設けられている。このシール部材38は、外部からハウジング本体11内への異物の侵入を防ぐ部材である。
【0035】
図1に示すように、ボールねじ軸7には、軸方向一端から他端に沿って順次、車両取付部9、摺動部37、およびボールねじ溝部39が設けられている。ボールねじ軸7は、主に軸方向直線運動を行うが、本実施形態では、駆動部ハウジング16やボトム側ハウジング18に対して相対的に回転可能である。ボールねじ溝部39は、ボールねじ軸7の外周面に、螺旋状のボールねじ溝加工が施されたねじ溝加工面が形成されたものである。摺動部37およびボールねじ溝部39は、中空形状のモータロータ33の内周面つまり中空部に対し、径方向すきまをもって通過可能に構成されている。
【0036】
軸端部材20および逆止弁40,41について説明する。
図2に示すように、ボールねじ軸7におけるボールねじ溝部39の先端に、軸端部材20が固定されている。この軸端部材20は、ボールねじ軸7と同心に配置される円盤部42と、この円盤部42の外周面に嵌合されたリング状の摺動部材43と、円盤部42のうちボトム側空間15に臨むストッパ部材44とを有する。摺動部材43は、例えば、摺動性の良い樹脂等から成り、この摺動部材43の外周面が、小径円筒部18cの内周面に対し摺動可能に構成される。またストッパ部材44は、ゴムや樹脂等の衝撃吸収性の良い弾性材からなり、ボトム側ハウジング18の底面との衝突時の衝撃を緩和し得る。なお、ボトム側ハウジング18の底面に、軸端部材20が衝突した際の衝撃を緩和する図示外のゴムや樹脂等からなる緩衝部材を設けても良い。このような軸端部材20をボールねじ溝部39の先端に設けたため、軸端部材20は、ボールねじ軸7の軸方向移動の範囲を制限し、ハウジング本体11内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割し得る。
【0037】
軸端部材20には、油路45および逆止弁40がそれぞれ設けられている。軸端部材20には、ねじ軸側空間14とボトム側空間15とを連通する貫通孔状の油路45が設けられている。軸端部材20における円盤部42のうち、ボトム側空間15に臨む一表面部に、逆止弁40が固定されている。この逆止弁40は、前記油路45を塞ぐ板ばね部材40aと、この板ばね部材40aの一端を円盤部42に固定するボルト等からなる固定具40bとを有する。逆止弁40は、ボールねじ軸7の上昇時に、軸端部材20が、ねじ軸側空間14を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これにより板ばね部材40aの他端が図4(B)に示すように弾性変形することで油路45を開放し、ねじ軸側空間14に介在する気体および潤滑液をボトム側空間15へ送る。ボールねじ軸7の下降時または停止時には、板ばね部材40aの他端が図4(A)に示すように弾性復帰した状態となり、油路45を塞ぐようになっている。この場合、逆止弁40により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させ得る。
【0038】
潤滑液用通路13には、逆止弁41が設けられている。ボトム側ハウジング18における小径円筒部18cの外周面に、前記逆止弁41が固定されている。この逆止弁41は、油路23を塞ぐ板ばね部材41aと、この板ばね部材41aの一端を小径円筒部18cに固定するボルト等からなる固定具41bとを有する。逆止弁41は、ボールねじ軸7の下降時に、軸端部材20が、ボトム側空間15を圧縮し、このボトム側空間内部の気体圧力を上昇させる。これにより板ばね部材41aの他端が図4(A)に示すように弾性変形することで油路23を開放し、ボトム側空間15に介在する気体および潤滑液を、潤滑液用通路13を介してねじ軸側空間14へ送る。ボールねじ軸7の上昇時または停止時には、板ばね部材41aの他端が弾性復帰した状態となり、油路23を塞ぐようになっている。この場合、逆止弁41により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させ得る。
【0039】
作用効果について説明する。
車両が路面の凹凸上を走行したときに生じる車両懸架部1と被懸架部2との間の振動により、ボールねじ軸7は、ボールねじナット8およびハウジング3に対して相対的に軸方向へ直線運動する。このときボールねじ軸7に螺合するボールねじナット8は、転がり軸受25,25を介して回転運動し、ボールねじナット8に設けられる複数のキャリアピン30を、ボールねじナット8の回転軸心L1周りに回転させる。これにより複数の遊星歯車29が太陽歯車28の回転軸心L1周りに公転すると共に、これら遊星歯車29と太陽歯車28とがそれぞれ自転する。このように太陽歯車28が自転することで、ボールねじナット8の回転運動が、抑制力発生器6のモータロータ33に伝達される。このとき抑制力発生器6が、回転運動を抑制する方向に力を発生させることで、前記車両の振動を減衰することができる。発生する力を抑制力発生器6で制御することで、所望の減衰力が得られる。また、外部から抑制力発生器6に電力を供給することで、モータロータ33を回転させ、増速機構5を介してボールねじナット8を回転させることで、ボールねじ軸7を軸方向に移動させることで、車両の車高調整等の能動的な制御も可能である。
【0040】
車両懸架部1と被懸架部2との間の振動により、ハウジング3に対してボールねじ軸7が下方に移動するとき、軸端部材20がボトム側空間15を圧縮し、このボトム側空間15の気体圧力を上昇させる。これに伴って潤滑液用通路13の逆止弁41が開き、ボトム側空間内部の気体および潤滑液は、順次、油路23,潤滑液用通路13,および油路24を通ってハウジング3内のねじ軸側空間14へ送られる。潤滑液は、潤滑液用通路13の内面に沿って上昇するが、飛沫となって気体内にも存在しており気体と共にねじ軸側空間14に到達しボールねじ軸7に噴霧される。潤滑液は、ハウジング本体11内の軸受19,25や歯車28,29,31およびボールねじ4等の潤滑液を必要とする部品を通過し、ハウジング本体11内の下方へ移動する。
【0041】
ハウジング3に対してボールねじ軸7が上方に移動するとき、軸端部材20がねじ軸側空間14を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これに伴って軸端部材20に設けられた逆止弁40が開き、ねじ軸側空間内部の気体および潤滑液が、軸端部材20に設けた油路45を通ってボトム側空間15へ送られる。
このようにボールねじ軸7の上下運動により上記動作が繰り返され、ハウジング3内の潤滑液が循環し、ハウジング3内に収められたボールねじ4や軸受19,25、歯車等に潤滑液が送られる。ボールねじ軸7に十分な距離の上下運動をさせることができない場合であっても、ハウジング3内のいずれか一方の空間14,15の気体圧力を上昇させることで、潤滑液を移動させて潤滑に用いることが可能となる。ハウジング3に対してボールねじ軸7が凡そ移動していないとき、潤滑液用通路13に設けられた逆止弁41を閉じた状態とすることで、潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0042】
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
【0043】
図5〜図7の車両用懸架装置は、潤滑液用通路13の上部および下部に、潤滑液が溜まる潤滑液溜り46,47をそれぞれ設けている。また潤滑液用通路13に設けた逆止弁41A,41Bに近接して前記潤滑液溜り47,46がそれぞれ設けられている。図6に示すように、ハウジング3の内面の下端よりも下方に、潤滑液溜り47が設けられている。小径カバー部21cの下端縁部および小径円筒部18cの外周面には、前記潤滑液溜り47を形成する潤滑液溜り部材48が取り付けられている。この潤滑液溜り部材48には、ボトム側空間15に連通する油路49,50が設けられている。
【0044】
一方の油路49が、ボトム側ハウジング18に設けた傾斜状の油路51に繋がり、逆止弁41Aは、他方の油路50を開閉可能に構成される。前記傾斜状の油路51は、ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cの下端縁部からボトム側空間15内に繋がり、上方に向かうに従って軸心L1側に傾斜するように延びる断面傾斜状に形成されている。
またボトム側ハウジング18における小径円筒部18c内の下端面は、例えば、中央部18caが外周部よりも上方に凸となる形状に形成されている。前記外周部は、潤滑液を回収する環状溝から成る潤滑液回収用通路18cbとしている。このような潤滑液回収用通路18cbを設けて、ハウジング3の内面の下端よりも下方に位置する潤滑液溜り47に潤滑液を円滑に導くようになっている。
【0045】
図7に示すように、テーパカバー部22aの下部および大径円筒部17bの外周面には、上部の潤滑液溜り46を形成する環状の隔壁52が設けられている。隔壁52に貫通孔状の油路53が設けられ、この隔壁52の上面には、前記油路53を開閉可能な逆止弁41Bが取り付けられている。
【0046】
この構成によると、ハウジング3に対してボールねじ軸7が下方に移動して軸端部材20がボトム側空間15を圧縮すると、ボトム側空間15および潤滑液用通路13の下部つまり潤滑液溜り部材48内の気体圧力を上昇させる。これに伴って逆止弁41Aが開いたときに、この逆止弁41Aを通過した気体によって潤滑液溜り部材48内の潤滑液が飛散し飛沫となって効率良く上方へ送られる。潤滑液用通路13内の気体圧力の上昇により逆止弁41Bも開く。よって、潤滑液通路13内の上方へ送られた気体および潤滑液は、油路53,24を通ってハウジング3内のねじ軸側空間14へ送られ、ハウジング本体11内の部品の潤滑に供される。
【0047】
図8および図9に示す車両用懸架装置は、前記各実施形態の車両用懸架装置が概略上下逆になった形態となっている。この例では、ハウジング本体11内の下端に、潤滑液溜り54が設けられている。この潤滑液溜り54は、ねじ軸支持ハウジング17における小径円筒部17dの内周面と、ボールねじ軸7の摺動部37の外周面と、軸支持部材36の軸方向一端面とで環状に囲まれて設けられている。この場合、ボールねじ軸7は潤滑液と常時接しているため、従来例のようにボールねじ軸端が液面をたたくことによる衝撃力が発生しない。
【0048】
図10(1)は、車両用懸架装置の抑制力発生器6を発電機として使用する場合の配線例を概略示すブロック図である。抑制力発生器6に、順次、整流回路55、昇降圧回路56を介して、バッテリ57が電気的に接続されている。この場合、モータロータの回転により抑制力発生器6で発生した電力を、整流回路55、昇降圧回路56を介してバッテリ57に回生し得ると共に、減衰力を制御することが可能となる。この構成によると、抑制力発生器6を発電機として使用することで、振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、回生電力として利用こともできる。したがって、車両に搭載されるバッテリー57の負荷を低減することが可能となる。なお図10(2)は、減衰力を制御可能な車両用懸架装置において、バッテリに電力を回生しない場合の配線例を概略示すブロック図である。同図に示すように、抑制力発生器6に、順次、整流回路55、昇降圧回路56を介して、抵抗器58が電気的に接続されている。図10(3)は、車両の車高調整等の能動的な制御を行うことができる車両用懸架装置の配線例を概略示すブロック図である。同図に示すように、抑制力発生器6に、インバータ回路59を介して、抑制力発生器6に電力を供給する電源60が電気的に接続されている。
【0049】
図11は、いずれかの車両用懸架装置を車両に搭載した例を概略示す図である。この例では、車両用懸架装置のハウジングカバー12の外周にフランジ61を設けて、このフランジ61と懸架部1との間に、スプリング62を設けた構成にしている。また車体側の懸架部1に、車両取付部9が取付けられ、車輪側の被懸架部2を含むロアーアーム63に、車両取付部材10が取付けられている。なお車両用懸架装置とスプリング62とを並列に設けた構成にしても良い。タイヤ64が路面の凸部に乗り上げると、スプリング62が衝撃力を吸収して縮むと共に、車両用懸架装置において前述の潤滑液の循環が行われつつこの車両用懸架装置で振動を減衰する。
【符号の説明】
【0050】
3…ハウジング
4…ボールねじ
6…抑制力発生器
7…ボールねじ軸
8…ボールねじナット
13…潤滑液用通路
14…ねじ軸側空間
15…ボトム側空間
20…軸端部材
33…モータロータ
40,41…逆止弁
46,47…潤滑液溜り
18cb…潤滑液回収用通路
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ機構と、電磁モータ式の抑制力発生器を利用して減衰力を発生させる車両用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、懸架部と被懸架部との間に、懸架ばねと油圧緩衝器とを並列に配置し、路面の凹凸によって生じる振動等を減衰させることで、車体の乗り心地と操縦性を確保する装置が実用に供されている。近年、前記油圧緩衝器に代わる機構として、電磁モータを利用して減衰力を発生する電磁モータ式緩衝器が提案されている。なお、この明細書で「電磁モータ」とは、電気による磁場の力で動くモータを意味し、電動機と同義である。電磁モータを使うことで、減衰力制御や車高調整などを自在に行うことが可能となる。また電磁モータを発電機として利用することで、振動エネルギーを回生利用することも可能である。
【0003】
これらを実現し電磁モータにより所望の力を得る手段として、ボールねじを使用する機構が提案されている。懸架部と被懸架部との間に生じる振動を、ボールねじによって直線運動から回転運動へと変換し、ボールねじ軸を回転させ動力伝達手段を介して、ボールねじ軸の軸方向一端に配置した電磁モータに伝える。この電磁モータで電磁力に起因するトルクで回転運動を抑制し振動を減衰させる。
【0004】
このとき、ボールねじの円滑な螺子運動を確保するために、ボールねじにはグリースなどの潤滑剤が塗布されることが多い。しかし、グリースは時間の経過と共に劣化やボールねじからの脱落が生じるため、グリースを定期的に補給する必要がある。グリースの定期的な補給作業は、時間的コスト的に作業負担が大きくなる可能性がある。そこで、図12に示すように、オイルなどの潤滑液をボールねじ100に対して塗布する機構が提案されている(特許文献1)。上記提案では、ボールねじ軸が上下運動する際に、ボールねじ軸の直下にある潤滑液101の液面に、ボールねじ軸端が接触または突入することで潤滑液を飛散することにより、ボールねじ軸に潤滑液を塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4306583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、ボールねじ軸が上下運動し、ボールねじ軸端が潤滑液101の液面に接触または突入する際に、ボールねじ軸が軸方向に液面をたたくことで衝撃力がボールねじ軸に作用し、車両の乗り心地を悪化させる可能性がある。また、ボールねじ軸端が潤滑液101の液面に接触または突入するためには、ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせる必要がある。ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせることができない場合には、ボールねじ軸に潤滑液を定期的に安定して供給できない可能性がある。
【0007】
この発明の目的は、ボールねじ軸など潤滑を必要とする部品に、潤滑液を安定して供給することができる車両用懸架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用懸架装置は、ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路とを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、ボールねじのボールねじ軸とハウジングを、車両の例えば、車体とアームなど車輪を支持する部材の間に取付けて使用される。車両の走行時の振動により、ボールねじのボールねじ軸は、ボールねじナットおよびハウジングに対して相対的に軸方向へ直線運動する。このときボールねじ軸に螺合するボールねじナットは回転運動し、この回転運動は、電磁モータ式の抑制力発生器のモータロータに伝達される。このとき抑制力発生器が、回転運動を抑制する方向に力を発生させることで、前記車両の振動を減衰することができる。発生する力を抑制力発生器で制御することで、所望の減衰力が得られる。
【0010】
ボールねじ軸の一部がハウジングに対して突出するボールねじ軸の上昇時には、このボールねじ軸の一端に設けられた軸端部材が、ねじ軸側空間を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これに伴って軸端部材に設けられた逆止弁が開き、ねじ軸側空間内部の気体および潤滑液を、ハウジング内のボトム側空間に送る。
ボールねじ軸の一部がハウジングに対して退入するボールねじ軸の下降時には、軸端部材がボトム側空間を圧縮し、このボトム側空間の気体圧力を上昇させる。これに伴ってボトム側空間内部の気体および潤滑液は、潤滑液用通路を通ってねじ軸側空間へ送られる。前記潤滑液は、ハウジング内のボールねじ軸など潤滑を必要とする部品を通過して移動する。このように、ボールねじ軸の上下運動により上記動作が繰り返され、ハウジング内の潤滑液が循環し、潤滑を必要とする部品に潤滑液を安定して供給することができる。ボールねじ軸に十分な距離の上下運動をさせることができない場合であっても、ハウジング内のいずれか一方の空間の気体圧力を上昇させることで、潤滑液を移動させて潤滑に用いることが可能となる。
【0011】
前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記軸端部材に設けた逆止弁は閉じているものとしても良い。この逆止弁により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0012】
前記潤滑液用通路に、ボールねじ軸の下降時に開放し、ボトム側空間内に介在する潤滑液をねじ軸側空間へ送る逆止弁を設けたものとしても良い。ボールねじ軸の下降時、軸端部材がボトム側空間を圧縮し、このボトム側空間の気体圧力を上昇させる。これに伴って潤滑液用通路の逆止弁が開き、ボトム側空間内部の気体および潤滑液が、潤滑液用通路を通ってねじ軸側空間へ送られる。
前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁は閉じているものとしても良い。この逆止弁により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0013】
前記潤滑液用通路に、潤滑液が溜まる潤滑液溜りを設けたものとしても良い。この場合、ボールねじ軸が下降してきても、ボトム側空間内部の潤滑液は、潤滑液用通路の潤滑液溜りへ送られるため、ボールねじ軸や軸端部材が潤滑液と接触することがない。したがって、ボールねじ軸などが潤滑液の液面をたたくことに起因して、ボールねじ軸に作用する衝撃力を未然に防止することができる。よって車両が凹凸路を走行する場合に、車両の乗り心地が悪化することを緩和することが可能となる。
【0014】
前記潤滑液用通路に設けた逆止弁に近接して前記潤滑液溜りが設けられているものとしても良い。この場合、潤滑液用通路内の気体圧力が上昇し前記逆止弁が開いたときに、この逆止弁を通過した気体によって、潤滑液溜り内の潤滑液が飛散し飛沫となって潤滑液用通路内の所定箇所に効率良く送られる。
【0015】
前記ハウジングの内面の下端よりも下方に、前記潤滑液溜りが設けられているものとしても良い。この場合、ボールねじ軸の軸方向の移動量に拘わらず、ボールねじ軸や軸端部材が潤滑液の液面をたたくことをより確実に防止することができる。したがって車両の乗り心地が悪化することを緩和し得る。
【0016】
前記潤滑液溜りを構成する面が、前記ボールねじ軸の外周面を含んでいるものとしても良い。この場合、ボールねじ軸は、潤滑液と常時接しているため、従来例のようにボールねじ軸端が潤滑液の液面をたたくことによる衝撃力が発生しない。
前記ハウジングの内面の下端に、潤滑液を回収する潤滑液回収用通路が設けられているものとしても良い。この場合、ボールねじ軸が下方に移動してきても、ボールねじ軸および軸端部材が潤滑液と接触することがなく、また効率的に潤滑液を回収し循環させることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の車両用懸架装置は、ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路とを有する。このため、ボールねじ軸など潤滑を必要とする部品に、潤滑液を安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図2】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図3】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図4】(A)は、同車両用懸架装置におけるボールねじ軸の下降時の態様を表す要部の拡大断面図、(B)は同ボールねじ軸の上昇時の態様を表す要部の拡大断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図6】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図7】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用懸架装置の断面図である。
【図9】同車両用懸架装置の要部の拡大断面図である。
【図10】いずれかの車両用懸架装置の抑制力発生器を発電機等として使用する場合の配線例を概略示すブロック図である。
【図11】いずれかの車両用懸架装置を車両に搭載した例を概略示す図である。
【図12】従来例の車両用懸架装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の第1の実施形態に係る車両用懸架装置を図1ないし図4と共に説明する。
図1に示すように、車両用懸架装置は、例えば、四輪車等の車両の車体を含む懸架部1と、車輪やアーム等を含む被懸架部2との間に設けられ、これら懸架部1,被懸架部2間の振動を減衰する。車両用懸架装置は、ハウジング3と、ボールねじ4と、増速機構5と、電磁モータ式の抑制力発生器6とを有する。
【0020】
前記ボールねじ4は、ボールねじ軸7と、このボールねじ軸7に螺合されるボールねじナット8とを有する。ハウジング3内に、ボールねじ軸7の大部分およびボールねじナット8と、増速機構5と、抑制力発生器6とが設けられている。ハウジング3における長手方向一端この例では上端の開口部から、少なくともボールねじ軸7の軸方向一端が突出する。このボールねじ軸7の軸方向一端には、雄螺子からなる車両取付部9が設けられ、この車両取付部9が車両の懸架部1に取付け可能に構成される。ハウジング3の長手方向他端には車両取付部材10が設けられ、この車両取付部材10が車両の被懸架部2に取付けられる。
【0021】
ハウジング3について説明する。
ハウジング3は、略円筒状のハウジング本体11と、このハウジング本体11の外周に設けられるハウジングカバー12とを有する。ハウジングカバー12の内周面と、ハウジング本体11の外周面との間に、環状の潤滑液用通路13が設けられ、この潤滑液用通路13は、ハウジング本体11内の空間におけるねじ軸側空間14とボトム側空間15とに連通する。ハウジング本体11は、駆動部ハウジング16と、ねじ軸支持ハウジング17と、ボトム側ハウジング18とを有する。駆動部ハウジング16の軸方向一端に、ねじ軸支持ハウジング17が接続され、駆動部ハウジング16の軸方向他端に、ボトム側ハウジング18が接続されている。
【0022】
図3に示すように、駆動部ハウジング16は円筒状に形成され、この駆動部ハウジング16内に、ボールねじナット8、増速機構5、および抑制力発生器6を含む駆動部が設けられている。ねじ軸支持ハウジング17は、軸方向に沿って順次、フランジ部17a、大径円筒部17b、テーパ筒部17c、および小径円筒部17dを有する。駆動部ハウジング16の軸方向一端に、フランジ部17aが接続されている。テーパ筒部17cは、大径円筒部17b側から小径円筒部17d側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。大径円筒部17bの内周面には、転がり軸受19の軸方向位置を規制する段差部17baが設けられている。
【0023】
図2に示すように、ボトム側ハウジング18は、軸方向に沿って順次、大径円筒部18a、テーパ筒部18b、小径円筒部18cを有する。テーパ筒部18bは、大径円筒部18a側から小径円筒部18c側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。ボールねじ軸7の軸方向他端には、環状の軸端部材20(後述する)が設けられている。軸端部材20は、ボールねじ軸7の軸方向移動の範囲を制限し、ハウジング本体11内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割する。小径円筒部18cの内周面18caは、前記軸端部材20の外周面が内接する内径寸法に規定されている。小径円筒部18cと軸端部材20とで囲まれたボトム側空間15に、一定量の潤滑液が封入されている。
【0024】
図1に示すように、ハウジングカバー12は、主カバー部21と副カバー部22とを有する。主カバー部21は、駆動部ハウジング16およびボトム側ハウジング18の外周を覆う略円筒状に形成されている。図3に示すように、副カバー部22は、ねじ軸支持ハウジング17の外周を覆う略円筒状に形成されている。図2に示すように、前記主カバー部21は、軸方向に沿って順次、大径カバー部21a、テーパカバー部21b、小径カバー部21cを有する。大径カバー部21aは、主に駆動部ハウジング16の外周を覆い、駆動部ハウジング16の外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。図3に示すように、大径カバー部21aの軸方向一端に内向きのフランジ21aaが付設され、このフランジ21aaに副カバー部22が接続されている。副カバー部22は、軸方向に沿って、テーパカバー部22aと、小径カバー部22bとを有する。これらのうちテーパカバー部22aは、小径カバー部22b側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。小径カバー部22bの軸方向一端に内向きのフランジ22baが付設されている。ねじ軸支持ハウジング17の外周面における上端部に、フランジ22baの内周面が固定される。
【0025】
図2に示すように、テーパカバー部21bは、ボトム側ハウジング18の主にテーパ筒部18bの外周を覆い、テーパ筒部18bの外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。このテーパカバー部21bは、大径カバー部21a側から小径カバー部21c側に向かうに従って小径側に至るように傾斜する断面テーパ形状に形成されている。小径カバー部21cは、小径円筒部18cの外周を覆い、小径円筒部18cの外周面に径方向すきまを介して前記外周面よりも大径に形成されている。小径カバー部21cの軸方向一端に内向きのフランジ21caが付設され、ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cの外周面における下端部に、フランジ21caの内周面が固定される。
【0026】
ハウジングカバー12の内周面と、ハウジング本体11の外周面との間の径方向すきまが、環状の潤滑液用通路13を成す。ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cには、ボトム側空間15と潤滑液用通路13とに連通する貫通孔状の油路23が設けられている。また、ねじ軸支持ハウジング17には、ねじ軸側空間14と潤滑液用通路13とに連通する貫通孔状の油路24が設けられている。
【0027】
ボールねじ4等について説明する。
図3に示すように、ボールねじ4は、ボールねじ軸7による直線運動を、ボールねじナット8による回転運動に変換し、増速機構5に伝達するものである。駆動部ハウジング16の内周面には、転がり軸受25,25、歯車保持部材26の軸方向位置をそれぞれ規制する段差部16a,16bが設けられている。駆動部ハウジング16の内周面は、これら段差部16a,16bにより、軸方向に沿って順次、大径部、中径部、小径部に形成される。駆動部ハウジング16の中径部には、ボールねじナット8を回転自在に支持する2つの転がり軸受25,25が嵌合されている。
【0028】
これら転がり軸受25,25は、それぞれアンギュラ玉軸受からなり、背面組合せに組み込まれている。転がり軸受25,25の内輪内周面に、ボールねじナット8の外周面が嵌合されている。図3上側の転がり軸受25の内輪端面に、ボールねじナット8の第1フランジ部が当接されると共に、図3下側の転がり軸受25の内輪端面に、ボールねじナット8の第2フランジ部が当接される。両フランジ部間に内輪25a,25aおよび内輪間座27が挟み込まれ、前記転がり軸受25の外輪端面が段差部16aに当接する。したがって、ボールねじナット8は、転がり軸受25,25によって軸方向および半径方向に支持される。
【0029】
増速機構5等について説明する。
増速機構5は、ボールねじナット8の回転運動を増速し、抑制力発生器6に伝達する機構である。この増速機構5は、遊星歯車機構であり、太陽歯車28と、複数の遊星歯車29と、複数のキャリアピン30と、内歯車31と、歯車保持部材26とを有する。ハウジング本体11内におけるボールねじ軸7の半径方向外方に、これら構成部品を含む増速機構5が設けられる。太陽歯車28に複数の遊星歯車29が噛合されると共に、内歯車31に複数の遊星歯車29が噛合されている。太陽歯車28と、内歯車31と、複数のキャリアピン30を支持する前記第1フランジ部とが、同一軸心に配置されている。太陽歯車28は、内周部が中空形状となるリング状に形成され、後述の抑制力発生器6(図1)の一部に接合または一体に設けられる。前記第1フランジ部の一端面のうち外周側には、複数のキャリアピン30が軸方向に所定距離突出するように接合されている。これらキャリアピン30は、複数の遊星歯車29を回転自在に支持するものであり、円周方向一定間隔おきに設けられている。
【0030】
駆動部ハウジング16内の前記大径部に、リング状の歯車保持部材26が嵌合され、段差部16bに、歯車保持部材26の端面が当接される。この歯車保持部材26の内周面に段差部が設けられ、この段差部に内歯車31の一端面が支持されると共に、この内歯車31の外周面が歯車保持部材26の内周面に嵌合固定されている。内歯車31の両端面が、軸受保持部材32と前記段差部との間に挟持されることで、内歯車31の軸方向位置が規制される。
ボールねじナット8が回転することで、複数の遊星歯車29が太陽歯車28の回転軸心L1周りに公転すると共に、これら遊星歯車29と太陽歯車28とがそれぞれ自転する。このように太陽歯車28が自転することで、ボールねじナット8の回転運動が抑制力発生器6に伝達される。
【0031】
抑制力発生器6等について説明する。
抑制力発生器6は、電磁モータ式の抑制力発生器であり、例えば、駆動用のモータとして使用可能な電磁モータを用いている。この電磁モータは、直流モータや同期モータ等種々のモータを適用し得る。なお、抑制力発生器6は、必ずしも駆動用のモータとして使用可能なものでなくてもよく、ステータとロータ間で電磁的に回転の抑制力が生じるものであれば良い。ハウジング本体11内におけるボールねじ軸7の半径方向外方に、抑制力発生器6が設けられている。この抑制力発生器6は、モータロータ33と、永久磁石34と、モータステータ35とを有する。前記ねじ軸支持ハウジング17および駆動部ハウジング16には、中空形状のモータロータ33を回転自在に支持する転がり軸受19,19がそれぞれ設けられている。すなわち前記ねじ軸支持ハウジング17のうち大径円筒部17bの内周面に、転がり軸受19の外輪外周面が嵌合されている。これと共に、大径円筒部17bの内周面に設けられた段差部17baに、この転がり軸受19の外輪端面が当接されている。
【0032】
駆動部ハウジング16の内周面には、軸受保持部材32を介して転がり軸受19が設けられている。軸受保持部材32はリング状に形成され、この軸受保持部材32の軸方向一端が、内歯車31および歯車保持部材26の一端面に当接するように構成されている。軸受保持部材32の内周面に軸受を保持する段差部が設けられ、この段差部に外輪端面が当接され、且つ、軸受保持部材32の内周面に外輪外周面が嵌合されている。転がり軸受19,19の内輪内周面に、モータロータ33の外周面がそれぞれ嵌合されている。軸方向に対向する内輪端面間には、モータロータ33の段差部が挟み込まれている。したがって、モータロータ33は、ボールねじ軸7の半径方向外方で回転自在に支持される。
【0033】
モータロータ33の外周面には、円筒状の永久磁石34が設けられている。また駆動部ハウジング16の内周面にはモータステータ35が設けられている。永久磁石34の外周面は、モータステータ35に対し定められた径方向すきまを介して対向するように設置される。前記モータロータ33の外周面に設けられる永久磁石34と、モータステータ35との間で、電磁力による回転方向の力が生じるよう構成されている。ボールねじ軸7の直線運動をボールねじナット8の回転運動に変換し、この回転運動を増速機構5を介して増速して抑制力発生器6のモータロータ33に伝達する。抑制力発生器6は、前記回転運動を抑制する方向の力を発生することでボールねじ軸7の直線運動を抑制するように構成されている。
【0034】
ボールねじ軸7およびその支持構造について説明する。
ねじ軸支持ハウジング17のうち、小径円筒部17dの内周面には、円筒状の軸支持部材36が固定されている。この軸支持部材36は、ボールねじ軸7の摺動部37を摺動自在に支持する。摺動部37のうち軸方向の一部の外周面である摺動面が、軸支持部材36に摺動自在に支持される。軸支持部材36は、この例では摺動性の良い樹脂材料や金属材料からなる滑り軸受が適用される。但し、軸支持部材36として転がり軸受を適用しても良い。ねじ軸支持ハウジング17の軸方向先端部には、ボールねじ軸7の摺動部37に接触する接触式シールからなる環状のシール部材38が設けられている。このシール部材38は、外部からハウジング本体11内への異物の侵入を防ぐ部材である。
【0035】
図1に示すように、ボールねじ軸7には、軸方向一端から他端に沿って順次、車両取付部9、摺動部37、およびボールねじ溝部39が設けられている。ボールねじ軸7は、主に軸方向直線運動を行うが、本実施形態では、駆動部ハウジング16やボトム側ハウジング18に対して相対的に回転可能である。ボールねじ溝部39は、ボールねじ軸7の外周面に、螺旋状のボールねじ溝加工が施されたねじ溝加工面が形成されたものである。摺動部37およびボールねじ溝部39は、中空形状のモータロータ33の内周面つまり中空部に対し、径方向すきまをもって通過可能に構成されている。
【0036】
軸端部材20および逆止弁40,41について説明する。
図2に示すように、ボールねじ軸7におけるボールねじ溝部39の先端に、軸端部材20が固定されている。この軸端部材20は、ボールねじ軸7と同心に配置される円盤部42と、この円盤部42の外周面に嵌合されたリング状の摺動部材43と、円盤部42のうちボトム側空間15に臨むストッパ部材44とを有する。摺動部材43は、例えば、摺動性の良い樹脂等から成り、この摺動部材43の外周面が、小径円筒部18cの内周面に対し摺動可能に構成される。またストッパ部材44は、ゴムや樹脂等の衝撃吸収性の良い弾性材からなり、ボトム側ハウジング18の底面との衝突時の衝撃を緩和し得る。なお、ボトム側ハウジング18の底面に、軸端部材20が衝突した際の衝撃を緩和する図示外のゴムや樹脂等からなる緩衝部材を設けても良い。このような軸端部材20をボールねじ溝部39の先端に設けたため、軸端部材20は、ボールねじ軸7の軸方向移動の範囲を制限し、ハウジング本体11内の空間をねじ軸側空間14とボトム側空間15とに分割し得る。
【0037】
軸端部材20には、油路45および逆止弁40がそれぞれ設けられている。軸端部材20には、ねじ軸側空間14とボトム側空間15とを連通する貫通孔状の油路45が設けられている。軸端部材20における円盤部42のうち、ボトム側空間15に臨む一表面部に、逆止弁40が固定されている。この逆止弁40は、前記油路45を塞ぐ板ばね部材40aと、この板ばね部材40aの一端を円盤部42に固定するボルト等からなる固定具40bとを有する。逆止弁40は、ボールねじ軸7の上昇時に、軸端部材20が、ねじ軸側空間14を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これにより板ばね部材40aの他端が図4(B)に示すように弾性変形することで油路45を開放し、ねじ軸側空間14に介在する気体および潤滑液をボトム側空間15へ送る。ボールねじ軸7の下降時または停止時には、板ばね部材40aの他端が図4(A)に示すように弾性復帰した状態となり、油路45を塞ぐようになっている。この場合、逆止弁40により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させ得る。
【0038】
潤滑液用通路13には、逆止弁41が設けられている。ボトム側ハウジング18における小径円筒部18cの外周面に、前記逆止弁41が固定されている。この逆止弁41は、油路23を塞ぐ板ばね部材41aと、この板ばね部材41aの一端を小径円筒部18cに固定するボルト等からなる固定具41bとを有する。逆止弁41は、ボールねじ軸7の下降時に、軸端部材20が、ボトム側空間15を圧縮し、このボトム側空間内部の気体圧力を上昇させる。これにより板ばね部材41aの他端が図4(A)に示すように弾性変形することで油路23を開放し、ボトム側空間15に介在する気体および潤滑液を、潤滑液用通路13を介してねじ軸側空間14へ送る。ボールねじ軸7の上昇時または停止時には、板ばね部材41aの他端が弾性復帰した状態となり、油路23を塞ぐようになっている。この場合、逆止弁41により潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させ得る。
【0039】
作用効果について説明する。
車両が路面の凹凸上を走行したときに生じる車両懸架部1と被懸架部2との間の振動により、ボールねじ軸7は、ボールねじナット8およびハウジング3に対して相対的に軸方向へ直線運動する。このときボールねじ軸7に螺合するボールねじナット8は、転がり軸受25,25を介して回転運動し、ボールねじナット8に設けられる複数のキャリアピン30を、ボールねじナット8の回転軸心L1周りに回転させる。これにより複数の遊星歯車29が太陽歯車28の回転軸心L1周りに公転すると共に、これら遊星歯車29と太陽歯車28とがそれぞれ自転する。このように太陽歯車28が自転することで、ボールねじナット8の回転運動が、抑制力発生器6のモータロータ33に伝達される。このとき抑制力発生器6が、回転運動を抑制する方向に力を発生させることで、前記車両の振動を減衰することができる。発生する力を抑制力発生器6で制御することで、所望の減衰力が得られる。また、外部から抑制力発生器6に電力を供給することで、モータロータ33を回転させ、増速機構5を介してボールねじナット8を回転させることで、ボールねじ軸7を軸方向に移動させることで、車両の車高調整等の能動的な制御も可能である。
【0040】
車両懸架部1と被懸架部2との間の振動により、ハウジング3に対してボールねじ軸7が下方に移動するとき、軸端部材20がボトム側空間15を圧縮し、このボトム側空間15の気体圧力を上昇させる。これに伴って潤滑液用通路13の逆止弁41が開き、ボトム側空間内部の気体および潤滑液は、順次、油路23,潤滑液用通路13,および油路24を通ってハウジング3内のねじ軸側空間14へ送られる。潤滑液は、潤滑液用通路13の内面に沿って上昇するが、飛沫となって気体内にも存在しており気体と共にねじ軸側空間14に到達しボールねじ軸7に噴霧される。潤滑液は、ハウジング本体11内の軸受19,25や歯車28,29,31およびボールねじ4等の潤滑液を必要とする部品を通過し、ハウジング本体11内の下方へ移動する。
【0041】
ハウジング3に対してボールねじ軸7が上方に移動するとき、軸端部材20がねじ軸側空間14を圧縮し、このねじ軸側空間内部の気体圧力を上昇させる。これに伴って軸端部材20に設けられた逆止弁40が開き、ねじ軸側空間内部の気体および潤滑液が、軸端部材20に設けた油路45を通ってボトム側空間15へ送られる。
このようにボールねじ軸7の上下運動により上記動作が繰り返され、ハウジング3内の潤滑液が循環し、ハウジング3内に収められたボールねじ4や軸受19,25、歯車等に潤滑液が送られる。ボールねじ軸7に十分な距離の上下運動をさせることができない場合であっても、ハウジング3内のいずれか一方の空間14,15の気体圧力を上昇させることで、潤滑液を移動させて潤滑に用いることが可能となる。ハウジング3に対してボールねじ軸7が凡そ移動していないとき、潤滑液用通路13に設けられた逆止弁41を閉じた状態とすることで、潤滑液の逆流を防いで潤滑液を効率良く循環させることができる。
【0042】
他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
【0043】
図5〜図7の車両用懸架装置は、潤滑液用通路13の上部および下部に、潤滑液が溜まる潤滑液溜り46,47をそれぞれ設けている。また潤滑液用通路13に設けた逆止弁41A,41Bに近接して前記潤滑液溜り47,46がそれぞれ設けられている。図6に示すように、ハウジング3の内面の下端よりも下方に、潤滑液溜り47が設けられている。小径カバー部21cの下端縁部および小径円筒部18cの外周面には、前記潤滑液溜り47を形成する潤滑液溜り部材48が取り付けられている。この潤滑液溜り部材48には、ボトム側空間15に連通する油路49,50が設けられている。
【0044】
一方の油路49が、ボトム側ハウジング18に設けた傾斜状の油路51に繋がり、逆止弁41Aは、他方の油路50を開閉可能に構成される。前記傾斜状の油路51は、ボトム側ハウジング18の小径円筒部18cの下端縁部からボトム側空間15内に繋がり、上方に向かうに従って軸心L1側に傾斜するように延びる断面傾斜状に形成されている。
またボトム側ハウジング18における小径円筒部18c内の下端面は、例えば、中央部18caが外周部よりも上方に凸となる形状に形成されている。前記外周部は、潤滑液を回収する環状溝から成る潤滑液回収用通路18cbとしている。このような潤滑液回収用通路18cbを設けて、ハウジング3の内面の下端よりも下方に位置する潤滑液溜り47に潤滑液を円滑に導くようになっている。
【0045】
図7に示すように、テーパカバー部22aの下部および大径円筒部17bの外周面には、上部の潤滑液溜り46を形成する環状の隔壁52が設けられている。隔壁52に貫通孔状の油路53が設けられ、この隔壁52の上面には、前記油路53を開閉可能な逆止弁41Bが取り付けられている。
【0046】
この構成によると、ハウジング3に対してボールねじ軸7が下方に移動して軸端部材20がボトム側空間15を圧縮すると、ボトム側空間15および潤滑液用通路13の下部つまり潤滑液溜り部材48内の気体圧力を上昇させる。これに伴って逆止弁41Aが開いたときに、この逆止弁41Aを通過した気体によって潤滑液溜り部材48内の潤滑液が飛散し飛沫となって効率良く上方へ送られる。潤滑液用通路13内の気体圧力の上昇により逆止弁41Bも開く。よって、潤滑液通路13内の上方へ送られた気体および潤滑液は、油路53,24を通ってハウジング3内のねじ軸側空間14へ送られ、ハウジング本体11内の部品の潤滑に供される。
【0047】
図8および図9に示す車両用懸架装置は、前記各実施形態の車両用懸架装置が概略上下逆になった形態となっている。この例では、ハウジング本体11内の下端に、潤滑液溜り54が設けられている。この潤滑液溜り54は、ねじ軸支持ハウジング17における小径円筒部17dの内周面と、ボールねじ軸7の摺動部37の外周面と、軸支持部材36の軸方向一端面とで環状に囲まれて設けられている。この場合、ボールねじ軸7は潤滑液と常時接しているため、従来例のようにボールねじ軸端が液面をたたくことによる衝撃力が発生しない。
【0048】
図10(1)は、車両用懸架装置の抑制力発生器6を発電機として使用する場合の配線例を概略示すブロック図である。抑制力発生器6に、順次、整流回路55、昇降圧回路56を介して、バッテリ57が電気的に接続されている。この場合、モータロータの回転により抑制力発生器6で発生した電力を、整流回路55、昇降圧回路56を介してバッテリ57に回生し得ると共に、減衰力を制御することが可能となる。この構成によると、抑制力発生器6を発電機として使用することで、振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、回生電力として利用こともできる。したがって、車両に搭載されるバッテリー57の負荷を低減することが可能となる。なお図10(2)は、減衰力を制御可能な車両用懸架装置において、バッテリに電力を回生しない場合の配線例を概略示すブロック図である。同図に示すように、抑制力発生器6に、順次、整流回路55、昇降圧回路56を介して、抵抗器58が電気的に接続されている。図10(3)は、車両の車高調整等の能動的な制御を行うことができる車両用懸架装置の配線例を概略示すブロック図である。同図に示すように、抑制力発生器6に、インバータ回路59を介して、抑制力発生器6に電力を供給する電源60が電気的に接続されている。
【0049】
図11は、いずれかの車両用懸架装置を車両に搭載した例を概略示す図である。この例では、車両用懸架装置のハウジングカバー12の外周にフランジ61を設けて、このフランジ61と懸架部1との間に、スプリング62を設けた構成にしている。また車体側の懸架部1に、車両取付部9が取付けられ、車輪側の被懸架部2を含むロアーアーム63に、車両取付部材10が取付けられている。なお車両用懸架装置とスプリング62とを並列に設けた構成にしても良い。タイヤ64が路面の凸部に乗り上げると、スプリング62が衝撃力を吸収して縮むと共に、車両用懸架装置において前述の潤滑液の循環が行われつつこの車両用懸架装置で振動を減衰する。
【符号の説明】
【0050】
3…ハウジング
4…ボールねじ
6…抑制力発生器
7…ボールねじ軸
8…ボールねじナット
13…潤滑液用通路
14…ねじ軸側空間
15…ボトム側空間
20…軸端部材
33…モータロータ
40,41…逆止弁
46,47…潤滑液溜り
18cb…潤滑液回収用通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、
前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、
前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、
この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、
前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路と、
を有することを特徴とする車両用懸架装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記軸端部材に設けた逆止弁は閉じている車両用懸架装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記潤滑液用通路に、ボールねじ軸の下降時に開放し、ボトム側空間内に介在する潤滑液をねじ軸側空間へ送る逆止弁を設けた車両用懸架装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁は閉じている車両用懸架装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記潤滑液用通路に、潤滑液が溜まる潤滑液溜りを設けた車両用懸架装置。
【請求項6】
請求項5において、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁に近接して前記潤滑液溜りが設けられている車両用懸架装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記ハウジングの内面の下端よりも下方に、前記潤滑液溜りが設けられている車両用懸架装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記潤滑液溜りを構成する面が、前記ボールねじ軸の外周面を含んでいる車両用懸架装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記ハウジングの内面の下端に、潤滑液を回収する潤滑液回収用通路が設けられている車両用懸架装置。
【請求項1】
ボールねじおよび電磁モータ式の抑制力発生器を有し、前記ボールねじのボールねじナットと抑制力発生器のモータロータとが連結され、前記ボールねじのボールねじ軸の直線運動をボールねじナットの回転運動に変換し、この回転運動をモータロータに伝達し、抑制力発生器が前記回転運動を抑制する方向の力を発生することで前記ボールねじ軸の直線運動を抑制する電磁モータ式緩衝器を用いた車両用懸架装置において、
前記ボールねじの外周を囲んで配置され前記ボールねじを支持するハウジングと、
前記ボールねじ軸の一端に設けられ、ハウジング内の空間をねじ軸側空間とボトム側空間とに分割する軸端部材と、
この軸端部材に設けられ、ボールねじ軸の上昇時に開放し、ねじ軸側空間内に介在する潤滑液をボトム側空間へ送る逆止弁と、
前記ハウジングに設けられ、ねじ軸側空間とボトム側空間とに連通して潤滑液の通路となる潤滑液用通路と、
を有することを特徴とする車両用懸架装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記軸端部材に設けた逆止弁は閉じている車両用懸架装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記潤滑液用通路に、ボールねじ軸の下降時に開放し、ボトム側空間内に介在する潤滑液をねじ軸側空間へ送る逆止弁を設けた車両用懸架装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ボールねじ軸がハウジングに対して相対運動していないとき、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁は閉じている車両用懸架装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記潤滑液用通路に、潤滑液が溜まる潤滑液溜りを設けた車両用懸架装置。
【請求項6】
請求項5において、前記潤滑液用通路に設けた逆止弁に近接して前記潤滑液溜りが設けられている車両用懸架装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記ハウジングの内面の下端よりも下方に、前記潤滑液溜りが設けられている車両用懸架装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記潤滑液溜りを構成する面が、前記ボールねじ軸の外周面を含んでいる車両用懸架装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記ハウジングの内面の下端に、潤滑液を回収する潤滑液回収用通路が設けられている車両用懸架装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−96536(P2013−96536A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241837(P2011−241837)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]