説明

車両用振動制御システム

【課題】自動車の運転快適性を改善するために振動を取り扱う場合に、簡単な構成と良好なエネルギ効率とを実現する車両用振動制御システムを提供する。
【解決手段】自動車の運転中に振動を生じる構成部材1、10、11に取り付けられるとともに振動を入力して振動電気信号を出力する第1トランスジューサ2と、構成部材に取り付けられるとともに付与された駆動電気信号によって機械的振動を構成部材に出力する第2トランスジューサ3と、振動電気信号を入力して振動電気信号から駆動電気信号を生成して出力する信号処理手段4とからなる車両用振動制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に生じる振動を制御して、自動車の運転快適性を改善する車両用振動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の各構成要素における振動は運転快適性に悪影響を与えるものであり、種々の制振対策が講じられている。しかしながら、逆に自動車の特定の構成要素に振動を付与することで利点を生み出す技術も知られている。例えば、車両の車外に取り付けられたミラーやウインドウガラスなどの雨滴付着部材の外表面の上部又は側部の少なくともいずれか一方に高周波用スピーカを備えた雨滴除去装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この雨滴除去装置は、高周波スピーカを作動することにより出力される大きな音圧でミラーやガラスに滞留している水滴を下方へ押し流すことものである。この大きな音圧を作り出すために、それ相応の電源回路、発振器、高周波発生回路、アンプを用意する必要があり、装置が大がかりとなるだけでなく、エネルギ効率的にも問題がある。
【0003】
また、自動車のフロントガラスの上下端部に超音波振動子を取り付け、この超音波振動子に交流電流を印加することにより、フロントガラスを強く振動させ、その表面に付着した雨滴を振るい落とす水滴除去方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。この水滴除去方法においても、超音波振動子を駆動するために、電源回路、交流電流発生器、アンプなどが必要であり、装置が大がかりとなる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−295204号公報(段落番号0008−0021、図3)
【特許文献2】特開2007−191129号公報(段落番号0034−0036、図6,図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の課題は、自動車の運転快適性を改善するために振動を取り扱う場合に、簡単な構成と良好なエネルギ効率とを実現する車両用振動制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による車両用振動制御システムは、自動車の運転中に振動を生じる自動車の構成部材に取り付けられるとともに、入力された前記振動を振動電気信号として出力する第1トランスジューサと、前記構成部材に取り付けられるとともに、入力された駆動電気信号を機械的振動に変換して前記構成部材に出力する第2トランスジューサと、前記第1トランスジューサから入力される前記振動電気信号に基づいて前記振動電気信号から前記駆動電気信号を生成して前記第2トランスジューサに出力する信号処理手段とを備える。
【0007】
この構成によれば、自動車の運転中に自動車の構成部材に生じている振動を振動電気信号として取り込み、取り込んだ振動電気信号から得られた駆動電気信号を機械的振動に変換し、この機械的振動を必要とする箇所に与えることができる。つまり、この車両用振動制御システムでは、最終的な振動出力の源となる振動は自動車の構成部材に生じている振動であるので、従来技術では必須であった発振回路が不要となっている。また、第1トランスジューサを振動が不要な、ないしは振動が害となっている箇所に配置した場合、その振動を取り出すことで、何らかの制振効果も副次的に得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る車両用振動制御システムは、さらに、前記第2トランスジューサから出力される振動の位相と、前記第2トランスジューサの取付位置において前記構成部材に生じている振動の位相とが逆位相となるように、前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサとが前記構成部材に取り付けてあることを特徴とする。この特徴によれば、第2トランスジューサから出力され、構成部材に伝播する機械的振動は、その際に構成部材に生じている振動に対してその振幅を打ち消すように働く。従って、この構成による車両用振動制御システムは、自動車の構成部材に生じた振動をそのまま用いて、同じ構成部材を制振する効果を得るものである。
【0009】
また、本発明に係る車両用振動制御システムは、前記第2トランスジューサから出力される振動の位相と、前記第2トランスジューサの取付位置において前記構成部材に生じている振動の位相とが逆位相となるように、前記信号処理手段が前記駆動電気信号を生成することを特徴とする。つまり、前記信号処理手段が位相シフト機能を備えることなる。この特徴により、第1トランスジューサと第2トランスジューサの取付位置にかかわらず、第2トランスジューサから出力され、構成部材に伝播する機械的振動を、その際に構成部材に生じている振動に対してその振幅を打ち消すように働かせることができる。従って、この構成による車両用振動制御システムは、自動車の構成部材に生じた振動をそのまま用いて、同じ構成部材を制振する効果を得るものである。
【0010】
また、本発明に係る車両用振動制御システムでは、さらに、前記信号処理手段は、前記振動電気信号の周波数から変換された特定高周波数を前記振動電気信号の周波数に重畳して、前記駆動電気信号を生成するように構成してあることを特徴とする。振動電気信号の周波数から特定高周波数への変換は、振動電気信号には、共振周波数を中心周波数としてその高周波成分が含まれていることを利用して、特定高周波数帯域のハイパスフィルタを用いる方法を採用することができる。また、振動電気信号の中心周波数を周波数変換する方法を採用することもできる。この特徴により、第2トランスジューサからは、自動車の構成部材の振動と同様の振動特性を有する第1の振動に所望の特定高周波成分からなる第2の振動が重ね合わされた振動が出力される。その結果、第1の振動を通じて構成部材を制振する効果と、第2の振動を通じて雨滴除去の効果とを得ることが可能となる。なお、雨滴除去を主な目的とする場合には、前記信号処理手段を、前記振動電気信号の周波数を特定高周波数に変換して、前記駆動電気信号を生成するように構成するとよい。その場合は、第2トランスジューサから所望の特定高周波成分からなる振動を出力して、構成部材に伝播させることができ、その高周波振動によって雨滴除去が実現する。なお、駆動電気信号の帯域を可聴周波数領域を超える帯域とすると、第2トランスジューサから出力される高周波振動は、人間の耳には感じることがないので、騒音対策上、好都合である。
【0011】
第2トランスジューサから大きなパワーを有する機械的振動を出力させるためには、第1トランスジューサで得られた振動電気信号を電気的に増幅して駆動電気信号を生成する必要がある。この目的のために、本発明に係る車両用振動制御システムでは、さらに、前記信号処理手段に、好ましくは正帰還の増幅器が備えられていることを特徴とする。振動電気信号の増幅手段として正帰還増幅器を使用すると、自励発振が行われるので、増幅効率が良く、好都合である。
【0012】
上述したように、本発明に係わる車両用振動制御システムは、雨滴除去と制振の両方の効果が得られるので、特に、前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサとがウインドウなどのガラス又はミラーに取り付けられていると好都合である。また、大きな振動が得られるボンネットなどに第1トランスジューサを取り付け、第2トランスジューサをドアミラーに取り付けることで、振動の変換効率に起因するエネルギ損失を考慮した車両用振動制御システムが実現する。
また、本発明の車両用振動制御システムで用いられている第1トランスジューサは、自動車の構成部材に生じた振動を振動電気信号に変換するものであるから、この第1トランスジューサを構成部材に生じた振動の検知センサとして流用することが可能である。従って、本発明による車両用振動制御システムは、付加的機能として、前記第1トランスジューサがドアウインドウを含む自動車ドアに取り付けられ、前記信号処理手段は前記振動電気信号に基づいて前記自動車ドアに対するノック振動を検出して、その検出結果に基づいてノック検知信号として出力することもできる。このノック検知信号は、ドアロックの開錠やドア開放のトリガー信号として利用される。
【0013】
本発明の車両用振動制御システムでは、第1トランスジューサと第2トランスジューサは自動車の構成部材に取り付けられる。また、雨滴除去と制振の効果を高めるためには複数を適所に分布配置することも必要となる。従って、トランスジューサ単体はコンパクトなものが好適である。このため、前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサが圧電素子から構成されることが好ましい。さらには、自動車の構成部材のほとんどは、曲面形状を有しているので、構成部材への振動伝播効率を考慮するならば、両トランスジューサは、この曲面形状にできるだけ密着できる振動面を有することも重要である。従って、本発明の好適な実施形態では、前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサはシート状の可撓性高分子圧電素子から構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には、本発明に係る車両用振動制御システムの原理図が示されている。図番1は、ボンネット、ドア、ウインドウガラス、ドアミラーなどの自動車の構成部材を示している。この構成部材1は、自動車の運転中に振動を生じる部材である。この構成部材1に、構成部材1に生じている振動を振動電気信号に変換する第1トランスジューサ2が取り付けられている。さらに、この構成部材1には、駆動信号の印加によって機械的振動を励起する第2トランスジューサ3が、この機械的振動が構成部材1に伝播されるように取り付けられている。第1トランスジューサ2から出力された振動電気信号を、実質的にそのままで、あるいは必要に応じて増幅や周波数成分の選択などの電気的処理を施して駆動電気信号として第2トランスジューサ3に付与する信号処理手段4も備えられている。この信号処理手段4と第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3が車両用振動制御システムを構成している。信号処理手段4と第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3の間はケーブルで接続されており、信号処理手段4は構成部材1以外の適当な部材に取り付けることができる。
【0015】
図2には、第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3とが構成部材1としてのドア11のウインドウガラス10に取り付けられ、信号処理手段4がドア11に取り付けられた実施形態の車両用振動制御システムが示されている。もちろん、信号処理手段4も同じウインドウガラス10に取り付けることができる。
【0016】
ウインドウガラス10は曲面を有しているので、ここでは、第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3とはシート状の可撓性高分子圧電素子で構成されている。つまり、所定の大きさに切断された薄い可撓性高分子圧電シート20の両面に電極層21と22を形成することで可撓性高分子圧電素子が作られている。電極層21と22の一方が正極、他方が負極として機能し、各電極層21と22に接合されたケーブルが接合されており、このケーブルは信号処理手段4に接続されている。ここでは、信号処理手段4には増幅器40が備えられており、第1トランスジューサ2によって得られた振動電気信号を増幅して駆動電気信号が生成される。その際、第2トランスジューサ3に効率よく機械的振動を出力できる駆動電気信号を印加できるように、増幅器40の増幅率を設定すると好都合である。この増幅器40を、正帰還増幅器として構成すると、自励発振するので、強い駆動電気信号を作り出すには好都合である。
【0017】
本発明による車両用振動制御システムをウインドウガラス10の制振のために利用する際に、次の2つの実施形態を採用することができる。
第1の形態では、第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3との配置が重要となる。例えば、ウインドウガラス10の振動が板波として作用していると考えると、図4に示すように、第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3との取付間隔をウインドウガラス10の共振周波数f0での波長λ0の(n+1/2)倍の長さ(nは0,1,2・・・)とするよい。これにより、第2トランスジューサ3から出力される振動の位相と、第2トランスジューサの取付位置においてウインドウガラス10に生じている振動の位相とが逆位相となる。その結果、第2トランスジューサの取付位置においてウインドウガラス10に生じている振動が、第2トランスジューサから出力される振動によって打ち消され、ウインドウガラス10が制振される。
第2の形態では、図5に示すように、信号処理手段4には位相シフタ44が備えられており、第1トランスジューサ2によって得られた振動電気信号の周波数を任意の位置にシフトさせた駆動電気信号が生成される。その際、位相シフタ44によってシフトされる振動電気信号の位相シフト量は、駆動電気信号により第2トランスジューサ3から出力される振動の位相が、第2トランスジューサ3の取付位置においてウインドウガラス10に生じている振動の位相と逆位相となるように決定される。これにより、第2トランスジューサ3をウインドウガラス10のどこに取り付けても、適正な位相シフト量を選択することで、第2トランスジューサの取付位置においてウインドウガラス10に生じている振動が、第2トランスジューサ3から出力される振動によって打ち消され、ウインドウガラス10が制振される。
【0018】
また、この車両用振動制御システムをウインドウガラス10に付着した雨滴等の除去のために利用するには、第2トランスジューサ3によって出力される機械的振動の周波数帯域が重要となる。ガラスなどの平板に付着した異物は高周波帯域の振動によって良好に振り落とすことができる。このため、第2トランスジューサ3に高周波帯域の駆動電気信号を印加させて、第2トランスジューサ3から高周波帯域の機械的振動を出力させる。その際、駆動電気信号の高周波帯域を可聴周波数帯域外とすると、その振動が空気伝播して騒音となる問題を解消することができる。そのような高周波帯域の駆動電気信号を信号処理手段4で生成するための好適な形態の1つは、図6で模式的に示されている。ここでは、信号処理手段4に振動電気信号の周波数を特定のより高い周波数に変換する周波数変換手段としてのフィルタ41が備えられている。なお、フィルタリングによる損失を補う必要がある場合には、増幅器40を備えるとよい。このフィルタ41をウインドウガラス10の共振周波数成分とその高周波成分を含む振動電気信号から可聴周波数帯域外の特定周波数成分だけを通過させるハイパスフィルタとすることで、特定周波数成分を有する駆動電気信号が生成される。なお、前記周波数変換手段としてはフィルタだけではなく、周波数逓倍器などを採用することも可能である。
さらには、振動電気信号のベースとなっている共振周波数振動に、周波数変換手段によって振動電気信号から変換された高周波数振動を重畳させて駆動電気信号を生成することも可能である。図7で示すように、そのような駆動電気信号に基づいて第2トランスジューサ3から出力される振動は、共振周波数に高周波数が重畳している。従って、第2トランスジューサ3から出力される共振周波数の機械的振動でウインドウガラス10の制振を行い、特定高周波の機械的振動でウインドウガラス10の雨滴除去を行うことができる。このように、振動電気信号から共振周波数成分と高周波数成分を取り出す簡単な形態は、デュプレクサをフィルタ41として採用することである。このデュプレクサはウインドウガラス10の共振周波数成分とその可聴周波数帯域外の特定高周波成分とを通過させる2つの帯域フィルタを有する。図8には、周波数変換手段として周波数逓倍器45を用いて振動電気信号から変換された高周波数振動を、共振周波数振動に重畳させる車両用振動制御システムが示されている。その際、振動電気信号は位相シフタ44によって適正な位相にシフトされる。従って、重畳された駆動電信号による第2トランスジューサ3から出力される振動は、第2トランスジューサの取付位置において制振作用をもつとともに、雨滴除去の機能をもつ。
【0019】
これまでの実施の形態の車両用振動制御システムでは、その説明を簡単にするため、第1トランスジューサ2と第2トランスジューサ3とは、それぞれ1個だけ備えられていたが、もちろん複数備えられてもよい。例えば、図9で模式的に示すように、複数の第1トランスジューサ2から得られた振動電気信号を統合処理して又は個別処理して駆動電気信号を生成し、この駆動電気信号を複数の第2トランスジューサ3に印加することができる。これにより、広い範囲から振動を取り込んで、広い範囲にその振動を付与することができる。さらに、複数の第1トランスジューサ2に代えて、複数の圧電素子をリニアアレイとした構成の第1トランスジューサ2を採用する変形例も可能である。この変形例では、それぞれの圧電素子から得られた振動電気信号を適正に位相シフトさせて重ね合わせることで、最終的に大きな振幅の振動電気信号を信号処理手段4に入力することも可能である。
【0020】
図10には、本発明による車両用振動制御システムをドア開閉制御システム100に組み込んだ実施例のブロック図が示されている。このドア開閉制御システム100は、スマートキーシステムとも呼ばれる、近づいてきた認証カード等との暗号通信に基づいて認証を行い、ドアロックを自動的に解除するシステムである。さらに、このドア開閉制御システムでは、認証カードを所有する運転者が自動車に近づくとともに、開けようとするドアをノックすることで、そのドアのドアロックを解除されるドア開閉制御が採用されている。従って、特定のドアに対して行われているドアノックを検知してノック検知信号を送出するセンサ機構が必要となる。このセンサ機構に、本発明による車両用振動制御システムを利用する。つまり、第1トランスジューサ2は、ドア11又はドアウインドウ10に生じたドアノックの振動に反応して、振動電気信号を出力するように設置される。この振動電気信号は信号処理手段4を介してノック検出信号としてバッファ101に転送される。バッファ101に転送されたノック検出信号がドア開閉制御システム100に取り込まれることにより、ノックされたドア11のロックが開錠される。誤操作防止のため、ドアノックによる振動とその他外乱による振動とを区別することが要求されることがある。その場合には、ドアノックの振動に反応して出力される振動電気信号の振動特性(周波数特性や振動経過時間など)と、ドアノック以外によって生じる振動に反応して出力される振動電気信号の振動特性とを区別するための、特定の振動特性に関する比較器42を信号処理手段4に備えるとよい。比較器42により、ドアノックに起因する振動電気信号が入力したと判断された場合に、信号処理手段4からバッファ101にノック検出信号が転送される。
【0021】
上述した実施の形態では、車両用振動制御システムは、機械的振動を電気信号に変換する第1トランスジューサ2と電気信号を機械的振動に変換する第2トランスジューサ3とを備えていた。しかしながら、圧電素子などを用いた場合、同じトランスジューサで、機械的振動を電気信号に変換すること、及び、電気信号を機械的振動に変換することが可能である。従って、機械的振動を電気信号に変換するとともに電気信号を機械的振動に変換する単一のトランスジューサだけを備えた車両用振動制御システムも本発明の範囲に含まれている。そのような車両用振動制御システムは、図11で模式的にしか示されていないが、信号処理手段4に時分割制御部43を備えられる。1つのトランスジューサ2又は3は、時分割制御により、第1トランスジューサ2として動作させることと、第2トランスジューサ3として動作させることとが交互に繰り返される。
【0022】
この単一トランスジューサ構成の変形例として、1つの圧電素子型トランスジューサに、第1トランスジューサ2として動作する第1圧電素子20aと、第2トランスジューサ2として動作する第2圧電素子20bとを複合的に組み込んだものも提案される。その際、第1圧電素子20aと第2圧電素子20bとを同芯配置するとよい。同芯配置としては、図12(a)に示すような同芯円配置や図12(b)に示すような同芯矩形配置など、種々の配置形態を採用することができる。
【0023】
以上のように、本発明による車両用振動制御システムは、機械的振動と電気信号との相互変換を通じて、自動車の構成部材から取り込んだ振動を所望の箇所に付与することで、構成部材の制振や雨滴除去などを簡単な構成で実現させている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による車両用振動制御システムの原理を説明するブロック図
【図2】本発明による車両用振動制御システムをドアウインドウの制振及び雨滴除去に適用させた実施形態を説明する模式図
【図3】図2による車両用振動制御システムに採用されたトランスジューサの構造を説明する模式図
【図4】ドアウインドウの板波振動を制振するトランスジューサの配置を説明する説明図
【図5】振動電気信号の周波数をシフトして駆動電気信号を生成する信号処理手段のブロック図
【図6】周波数帯域を選択して駆動電気信号を生成する信号処理手段のブロック図
【図7】共振周波数振動と高周波数振動を重畳した出力信号を作り出すことを説明する説明図
【図8】共振周波数をベースとした振動電気信号から共振周波数と高周波数を重畳して駆動電気信号を生成する信号処理手段のブロック図
【図9】複数の第1トランスジューサと第2トランスジューサを採用した車両用振動制御システムの一例を説明するブロック図
【図10】本発明による車両用振動制御システムをドア開閉制御システムに組み込んだ実施形態を説明する模式図
【図11】単一トランスジューサを採用した車両用振動制御システムを説明するブロック図
【図12】同芯配置された圧電素子を用いた単一トランスジューサの説明図
【符号の説明】
【0025】
1:自動車の構成部材
2:第1トランスジューサ
3:第2トランスジューサ
4:信号処理手段
10:ドアウインドウ(自動車の構成部材)
11:ドア(自動車の構成部材)
20:高分子圧電シート
40:増幅器(信号処理手段)
41:フィルタ(信号処理手段)
42:比較器(信号処理手段)
43:時分割制御部(信号処理手段)
44:位相シフタ(信号処理手段)
45:周波数逓倍器(信号処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転中に振動を生じる自動車の構成部材に取り付けられるとともに、入力された前記振動を振動電気信号として出力する第1トランスジューサと、
前記構成部材に取り付けられるとともに、入力された駆動電気信号を機械的振動に変換して前記構成部材に出力する第2トランスジューサと、
第1トランスジューサから入力される前記振動電気信号に基づいて前記駆動電気信号を生成して前記第2トランスジューサに出力する信号処理手段と、を備える車両用振動制御システム。
【請求項2】
前記第2トランスジューサから出力される振動の位相と、前記第2トランスジューサの取付位置において前記構成部材に生じている振動の位相とが逆位相となるように、前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサとが前記構成部材に取り付けてある請求項1に記載の車両用振動制御システム。
【請求項3】
前記第2トランスジューサから出力される振動の位相と、前記第2トランスジューサの取付位置において前記構成部材に生じている振動の位相とが逆位相となるように、前記信号処理手段が前記駆動電気信号を生成する請求項1に記載の車両用振動制御システム。
【請求項4】
前記信号処理手段は、前記振動電気信号の周波数から変換された特定高周波数を前記振動電気信号の周波数に重畳して、前記駆動電気信号を生成するように構成してある請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用振動制御システム。
【請求項5】
前記信号処理手段は、前記振動電気信号の周波数を特定高周波数に変換して、前記駆動電気信号を生成するように構成してある請求項1に記載の車両用振動制御システム。
【請求項6】
前記特定高周波成分は可聴周波数を超える周波数帯域である請求項4又は5に記載の車両用振動制御システム。
【請求項7】
前記信号処理手段には、正帰還増幅器が備えられている請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用振動制御システム。
【請求項8】
前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサとがガラス又はミラーに取り付けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用振動制御システム。
【請求項9】
前記第1トランスジューサが自動車ドアに取り付けられており、前記信号処理手段は前記振動電気信号に基づいて前記自動車ドアに対するノック振動を検出して、その検出結果に基づいてノック検知信号として出力する請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用振動制御システム。
【請求項10】
前記第1トランスジューサと前記第2トランスジューサは圧電素子から構成されている請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用振動制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−126232(P2009−126232A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300605(P2007−300605)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】