説明

車両用換気システム

【課題】 屋外での車両駐車時等、車内が高温となった場合に、効率的かつ速やかに車内を冷却でき、かつ、冷却の際に防犯上の問題の無い車両用換気システムを安価に提供する。
【解決手段】 車両用換気システム1であって、ユーザーによる換気モード選択入力操作を受け付けるIVAスイッチ11dを備え、車両のエンジン始動が検出され、かつIVAスイッチ11dが受け付けられた場合に、複数のパワーウィンドウを、換気モードとして予め定められた開形態となるように換気開閉駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2006−7928号公報
【0003】
真夏の炎天下時、車両を屋外に長時間にわたって駐車した場合には、車内が高温となり運転どころか車内に入ることさえためらわれるような状況となることがある。このため、例えば、特許文献1のような手法により車内の換気を行なって、車内を冷却する技術の開示がある。特許文献1では、室内気流路と室外気流路との間を連通するバイパス流路が設けられており、電動の送風手段により室内気を室内気流路からバイパス流路に吸引して、吸引した室内気を室外気流路から車外に排出している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のように、バイパス通路や送風手段等といった換気用設備を新たに設けるにはコストがかかるし、それらを配置するスペースの確保といった問題も生ずる。また、駐車中の車内の高温化を防ぐために、窓をわずかに開けておくという簡易な方法もあるが、防犯上の問題が生ずるし、逆に、窓をわずかに開けておいたところで車内の高温化を防ぐことはできない。また、リモコンエンジンスタータ等の遠隔エンジンスタートを行なって予め空調装置を動作させておく方法もあるが、高温状態の車室内を空調装置のみで冷却することは極めて非効率であり、燃費悪化やバッテリー上がりの要因となる。
【0005】
本発明の課題は、屋外での車両駐車時等、車内が高温となった場合に、効率的かつ速やかに車内を冷却でき、かつ、冷却の際に防犯上の問題の無い車両用換気システムを安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車両用換気システムは、
車両に設けられた複数のパワーウィンドウと、
ユーザーによる換気モード選択入力操作を受け付ける換気モード選択入力手段と、
前記車両のエンジン始動を検出するエンジン始動検出手段と、
前記エンジン始動が検出され、かつ前記換気モード選択入力操作が受け付けられた場合に、前記複数のパワーウィンドウを、換気モードとして予め定められた開形態となるように換気開閉駆動制御する換気制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記本発明によれば、エンジン始動に伴うパワーウィンドウの開閉動作により車室内を効率的に冷却することができる。空調装置のみで高温状態の車内を冷却するような非効率な冷却手法を用いる場合に比べて、省燃費を図ることができる。また、一般的な車両に既に搭載されているパワーウィンドウを利用するシステムであるから安価に実現できるというメリットもある。さらに、上記本発明によれば、ユーザーの判断でパワーウィンドウによる換気を開始できるので、ユーザー不在時にパワーウィンドウが開状態となることがなく、防犯上の問題も無い。さらに言えば、運転者の判断でパワーウィンドウの換気開閉駆動を開始できるから、突然のパワーウィンドウの駆動にユーザーが驚き、戸惑うこともない。
【0008】
換気制御手段は、換気モードにて、車幅方向において互いに異なる側に位置するパワーウィンドウの対を同時に開状態とするものとできる。この構成によると、換気時に、車両の左右の窓から窓へと車内の空気を動かすことができるので、車内を横方向に空気が通過するようになり、車内を効率的に換気することができる。また、換気制御手段は、換気モードにて、パワーウィンドウの対を互いに異なる開度で開状態とするものとできる。この構成によると、ベルヌーイの定理に基づいて、開度の小さい窓から開度の大きい窓への気流の流れが生ずるので、車内を効率的に換気することができる。つまり、開度の小さい窓から高速に外気が取り込まれ、取り込まれた外気により車内に停滞していた高温の空気が開度の大きい窓から排出されるように、車室内の気流の流れをコントロールできるので、車内を効率的に換気することができるのである。
【0009】
また、換気制御手段は、換気モードにて、車幅方向及び車長方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置にある1対のパワーウィンドウを開状態とすることができる。これにより、車幅方向及び車長方向とは異なる斜め方向に気流の流れを作ることができるので、車内の空気を効率的に換気することができる。また、その1対のパワーウィンドウを開状態とする一方で、残余のパワーウィンドウを閉状態とすることで、その斜め方向の気流を確実に作って換気を行なうことが可能となる。具体的に言えば、車両は乗用車であり、換気モードにて開状態とされる1対のパワーウィンドウは、車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウと定めることができる。これにより、車内において対角線上に配置された窓から窓への空気の流れが形成され、効率的に換気ができる。
【0010】
そして、換気制御手段は、換気モードにて、複数のパワーウィンドウの開形態が互いに異なる複数の駆動状態を順次切り替えて実行するようにすることができる。この構成によると、パワーウィンドウの開放状態が切り替わり、複数の向きに気流の流れが形成されるので、車内をより効率的に換気できる。具体的にいえば、換気制御手段は、換気モードにて、車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウとを開状態とする第一モードを実行した後、車幅方向における第一側の後席パワーウィンドウと、同じく第二側の前席パワーウィンドウとを開状態とする第二モードを実行するようにできる。これにより、車内を流れる空気の流れが第一の対角線方向と第二の対角線方向との間で切り替わるので、より効率的に車内を換気できる。
【0011】
車両に設けられた吹出し口から空調気流を吹き出す車載空調装置と、換気制御手段は、換気動作制御として、パワーウィンドウの換気開閉駆動とともに車載空調装置による空調気流の吹き出しを実行させることができる。この構成によると、パワーウィンドウの開放により生ずる空気の流れを、車載空調装置(車載エアコン)から吹き出す空調気流によりアシストすることができるので、車内をより効率的に換気できる。
【0012】
また、車両が乗用車であり、換気モードにて開状態とされる1対のパワーウィンドウが、車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウである構成の場合には、車載空調装置による空調気流の吹出し方向を、車幅方向における開状態となった一方のパワーウィンドウから他方のパワーウィンドウに向かう方向となるように制御する吹出し方向制御手段を備えるように構成できる。この構成によると、パワーウィンドウの開放により生ずる空気の流れがアシストされるように、パワーウィンドウの開放状況に対応する形で、車載空調装置(車載エアコン)の空調気流を吹き出すことができるので、空調気流のアシストにより車内をより効率的に換気できる。
【0013】
また、換気制御手段が、換気モードにて、パワーウィンドウの対を互いに異なる開度で開状態とするものである場合に、車載空調装置による吹出し口からの空調気流の吹出し方向を、開度が小となるパワーウィンドウから開度が大となるパワーウィンドウに向かう方向となるように制御する吹出し方向制御手段を備えて構成することができる。この構成によると、開度の小さい窓から開度の大きい窓に向けて流れる車室内の空気の流れを、空調気流によりアシストすることができるので、車内をより効率的に換気することができる。
【0014】
本発明は、換気モード選択入力手段による換気モードの利用案内情報を視覚情報、音声情報もしくはそれらの組合せにより出力する利用案内情報出力手段を有して構成することができる。これにより、ユーザーは本発明の換気機能を容易に利用することが可能となる。
【0015】
本発明は、車内温度を検出する車内温度検出手段を備えることができ、このとき、換気制御手段は、検出される車内温度が予め定められた温度を下回った場合に、換気モードにて開状態とされたパワーウィンドウを閉状態とするように構成できる。この構成によると、換気が自動終了するので、運転者が寒いと感ずる前に、運転者の手を煩わす換気を終了することができる。
【0016】
一方で、本発明は、車内温度を検出する車内温度検出手段と、車外温度を検出する車外温度検出手段とを備えることができ、このとき、換気制御手段は、検出された車内温度と車外温度との温度差が予め定められた値未満となった場合に、換気動作制御を抑制するように構成できる。この構成においても、換気が自動終了するので、運転者が寒いと感ずる前に、運転者の手を煩わす換気を終了することができる。また、車内温度と車外温度とが接近するまで換気が継続されるので、空調装置の無駄な使用を抑制することができる。
【0017】
換気制御手段は、換気動作制御中に前記パワーウィンドウをマニュアル開閉するマニュアル操作がなされた場合に換気動作を中断する換気動作中断手段を有して構成することができる。この構成によると、例えば、換気とは異なる意図でユーザーがパワーウィンドウを開閉した際には、その操作が優先して実行されるので、ユーザーは換気動作に拘束されることなくパワーウィンドウを自由に開閉でき、便利である。
【0018】
また、本発明は、車両周囲の天候を反映した天候情報を取得する天候情報取得手段を備えることができ、このとき、換気制御手段は、取得した天候情報に基づいて換気動作を抑制する換気動作抑制手段を有して構成することができる。この構成によると、例えば、雨滴センサ(降雨状態取得手段)により降雨が検出されている場合や、天気予報より現在位置における現在の降水確率が所定確率を上回る場合等、雨や雪等が降っているような状況において、換気のためのパワーウィンドウの開閉をしないように定める、あるいは換気のためのパワーウィンドウの開度を通常より小さく定めることができる。
【0019】
また、本発明は、車両周囲の悪臭の存在状態を反映した悪臭存在情報を取得する悪臭存在情報取得手段を備えることができ、このとき、換気制御手段は、取得した悪臭存在情報に基づいて、当該悪臭の存在を警告する悪臭警告手段を有して構成することができる。この構成によると、周辺が臭い場合、あるいは臭いと予想される地点である場合に、換気のためのパワーウィンドウの開閉動作前に、悪臭があればこれをユーザーに報知することができ、この場合、ユーザーの許可無くパワーウィンドウの開閉がなされることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である車両用換気システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示す車両用換気システム1は、エアコンECU100、ドアECU200、ナビゲーション装置300、エンジンECU400とが多重通信バス500を介して互いに通信可能に接続されてなる。
【0022】
エアコンECU100は、図2に示すように、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)、タイマー等を備えるマイクロコンピュータ101と、入出力インターフェース回路102,103等により構成されており、車両に設けられた吹出し口から空調気流を吹き出す車載空調装置(エアコン)を制御するものである。
【0023】
入力インターフェース回路102には、車内温度を検出する内気センサ(本発明の車内温度検出手段)111、車外温度を検出する外気センサ(本発明の車外温度検出手段)112、日射量を検出する日射センサ113、、エバポレータを通過した直後の空気の温度を検出するエバポレータ後センサ(図中のエバ後センサ)114等のエアコン用センサ110と、エアコン操作用スイッチ群11(後述するスイッチ11a〜11k:図4参照)とが接続されている。さらに、入力インターフェース回路102には、車外の排気ガスを検出するために設けられた排ガスセンサ115が接続されている。なお、排ガスセンサ115は、車両の前部あるいは側面部に設けられ、自車両の排ガスが検出され易い車両後部を除く位置に設けられている。
【0024】
出力インターフェース回路103には、エアコン吹出し口に設けられるグリル(ルーバー)を水平方向(車幅方向)及び上下方向に駆動するグリル駆動部(例えばサーボモータ及びその駆動回路:なお、図示しないがモータは水平駆動用と上下駆動用とが設けられる)121、内気吸気・外気吸気を切り替え用ダンパーを駆動する内外気切替ダンパー駆動部(例えばサーボモータ及びその駆動回路)122、エアミックスダンパー(A/M)を駆動するエアミックスダンパー駆動部(例えばサーボモータ及びその駆動回路)123、吹出口切替用ダンパーを駆動する吹出口切替用ダンパー駆動部(例えばサーボモータ及びその駆動回路)124等のエアコン用駆動部120が接続されている。
【0025】
マイクロコンピュータ101は、各エアコン用センサ111〜114の検出結果情報と、エアコン操作用の各種スイッチ11への操作入力情報とを、入力インターフェース回路102を介して取得するとともに、それらの上方に基づいて各エアコン用駆動部121〜124への駆動指令情報を出力インターフェース回路103を介して出力する。また、マイクロコンピュータ101には、ナビゲーション装置300が接続されるとともに、通信線500と多重通信入出力部104,105を介して通信可能に接続されている。
【0026】
ドアECU200は、エアコンECUと同様の構成を有しており、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)等を備えるマイクロコンピュータと、入出力インターフェース回路等により構成されている。出力インターフェース回路には、車両の各座席に設けられたパワーウィンドウ(図中のP/W)を駆動するためのユーザー操作入力を受け付けるウィンドウ開閉操作部211〜214(パワーウィンドウスイッチ:図中のP/W SW)が接続されており、入力インターフェース回路には、各座席の開閉操作部211〜214になされるユーザー操作入力に基づいて対応するパワーウィンドウを駆動するウィンドウ駆動部(サーボモータ及びその駆動回路)221〜224が接続されている(図3参照)。また、マイクロコンピュータには、ナビゲーション装置300が接続されるとともに、通信線500と多重通信入出力部を介して通信可能に構成されている。なお、ウィンドウ開閉操作部211〜214は符号210で総称し、ウィンドウ駆動部221〜224は符号220で総称する。
【0027】
ナビゲーション装置300は、周知の地磁気センサ・ジャイロスコープ・距離センサ・GPS受信機等を備えてなる自車両位置検出器310,地図データ等及び経路案内実行のためのナビゲーションプログラム等を記憶するデータ記憶装置(HDD)320の他、表示装置330,音声出力装置340,操作スイッチ群350等を備える周知の構成を有するものである。
【0028】
本実施形態における表示装置330は、周知のカラー液晶表示器で構成されており、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、例えば、画素毎にトランジスタを付けて目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができるアクティブマトリックス駆動方式が用いられ、ナビゲーション装置の制御回路から送られる表示指令および表示画面データに基づいて表示を行う。また、表示装置330として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)表示器,プラズマ表示器を用いてもよい。なお、この表示装置330が本発明における利用案内情報出力手段を構成する。
【0029】
また、本実施形態における音声出力装置340は、周知の音声合成回路24に接続されたスピーカーであり、ナビゲーション装置300の制御回路からの指令によって、該ナビゲーション装置300のメモリあるいはHDDに記憶されているデジタル音声データを、音声合成回路24においてアナログ音声に変換し、スピーカー340から出力する。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき必要に応じて繋ぎ合わせる録音編集方式、文字入力情報からそれに対応する音声を合成するテキスト合成方式などがある。なお、この音声出力装置340も本発明における利用案内情報出力手段を構成するものである。
【0030】
エンジンECU400は、エアコンECUやドアECUと同様の構成を有しており、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)等を備えるマイクロコンピュータと、入出力インターフェース回路等により構成されている。イグニッションスイッチ(IGSW)440が接続されており、該スイッチ440からのエンジン始動トリガー信号の入力に基づいて、車両のエンジンを始動する。このイグニッションスイッチ440が本発明において、車両のエンジン始動を検出するエンジン始動検出手段として機能する。
【0031】
ところで、自動車等の車両においては、搭載される電子機器、例えば空調装置やオーディオ装置、さらにはナビゲーション装置を操作するための操作ユニットが、車両インパネ部分に設けられる。本実施形態においては、図4に示すように、車両インパネ部分に車載空調装置(エアコン)を操作するためのエアコンパネル10が設けられている。このエアコンパネル10には、エアコン操作用の各種スイッチ11a〜11kが設けられている。
【0032】
スイッチ11aはコンプレッサやエバポレータを作動させるA/Cスイッチ、スイッチ11bは内気吸気/外気吸気/AUTO吸気との間で切り替えを行なう内外気切替スイッチ、スイッチ11cはデフロスタスイッチ、スイッチ11dはエンジン始動後に換気駆動を実行するためのIVA(Intelligent Ventilation Assist;換気モード選択入力手段)スイッチ、スイッチ11eは運転席側と助手席側とで独立して空調制御する「独立制御」とそれら双方を一括して空調制御する「一括制御」とを切替え可能な独立/一括制御切替スイッチ(DUALスイッチ)、スイッチ11fは空調の吹き出し口切り替え設定スイッチ(MODEスイッチ)、スイッチ11gは吹出し風量の切り替え設定スイッチ、スイッチ11hは空調装置をオフするOFFスイッチ、スイッチ11iはオート空調制御を設定するAUTOスイッチ、スイッチ11j,11kは運転席側・助手席側の吹出し温度設定スイッチである。
【0033】
スイッチ11a〜11e,11iの操作状態(ON・OFF)は、各スイッチ11a〜11iに対応形成されたインジケータ9の点灯状態により確認することができる。スイッチ11j、11k、11f、11gの操作設定状態は、液晶表示面12の対応する表示領域12j、12k、12f、12gに表示され、その内容を確認できる。OFFスイッチ11hの操作状態は、インジケータ9や液晶表示面12を含む、車内操作ユニット100の全発光部の消灯により確認することができる。
【0034】
本実施形態の車両用換気システム1は、イグニッションスイッチ440によるエンジン始動の検出に伴い、複数のパワーウィンドウを、換気モードとして予め定められた開形態となるように、エアコンECU100が換気開閉駆動制御を実行する。具体的に言えば、この換気開閉駆動制御は、エアコンECU100のメモリ(例えば不揮発性メモリ)に記憶された換気処理プログラムを、そのCPUが実行することによって実行される。図5、図6、図7、図8は、その換気開閉駆動制御の処理の流れを示すフローチャートであり、以下、その説明を行なう。
【0035】
図5のS1では、イグニッションスイッチ440へのエンジン始動トリガー信号の入力を、エンジンECU400から取得する。そして、そのエンジン始動状態において、エアコンECU100は、自身の不揮発性メモリに記憶されている前回エンジン停止時のIVAスイッチ11dの操作状態を読み出して、IVAスイッチ11dがONであった場合には、S2に進む。あるいは、エンジン始動検出から所定時間T1(例えば60秒)以内にIVAスイッチ11dに、ユーザーによる換気モード選択入力操作がなされた場合にも、S2に進む。所定時間T1のうちにIVAスイッチ11dへの操作が無ければS5に進み、エアコンECU100はエアコンの通常制御を開始する。
【0036】
S2でIVAスイッチ11dがONとなった場合には、S3に進む。S3では、換気モードの利用案内情報を視覚情報、音声情報もしくはそれらの組合せによる出力を開始する。本実施形態においては、ナビゲーション装置300に接続される表示装置330の表示画面に表示して換気操作の誘導案内を開始するとともに、音声出力装置340からの音声出力による換気操作の誘導案内も開始する。S3が終了すると図6のS11に進む。
【0037】
図6のS11では、換気操作の誘導案内表示として図9に示す表示画面31(図6では画面1と称する)を表示する。続いてS12にて、該表示画面31上に表示された、換気開始(換気スタート)と換気中止とを選択するタッチスイッチ31a,31bのうち、タッチスイッチ31aが操作されたか否かを判定する。なお、表示画面31には、タッチスイッチ31a,31bとともに、その同一画面内に、換気開始が選択された場合にどのように空気が流れるかを示す換気方向情報37も表示される。なお、この換気方向情報37では、開状態となるパワーウィンドウと閉状態となるパワーウィンドウとが識別可能に表示されている。また、S11にて、表示画面31が表示されるに伴い、換気時の各パワーウィンドウの開閉状態、該換気時の空気の流れ方向、及びタッチスイッチ31a,31bの説明等が行なわれる(換気動作及び換気操作の誘導案内)。
【0038】
S12にて、換気開始のタッチスイッチ31aが操作されていない場合はS20に進む。S20では、換気停止のタッチスイッチ31bが操作されたか否かを判定する。タッチスイッチ31bが操作された場合にはS22に進み、エアコンECU100はエアコンの通常制御を開始する。タッチスイッチ31bが操作されていない場合はS21に進み、エンジン始動検出から所定時間T2(例えば30秒)経過したか否かを判定する。経過していなければS4に戻り、経過していればS22に進み、エアコンECU100はエアコンの通常制御を開始する。
【0039】
他方、S12にて、換気開始のタッチスイッチ31aが操作されたと判定された場合にはS13に進む。S13では、音声出力装置340から左前席(助手席)のパワーウィンドウを開ける旨を音声出力した上で、対応するウィンドウ駆動部222に当該パワーウィンドウの開駆動指令を出力する。これにより、左前席(助手席)のパワーウィンドウは開状態となる。続いてS14では、音声出力装置340から右後席のパワーウィンドウを開ける旨を音声出力した上で、対応するウィンドウ駆動部224に当該パワーウィンドウの開駆動指令を出力する。これにより、右後席のパワーウィンドウが開状態となる。
【0040】
つまり、S14が終了することで、車幅方向において互いに異なる側に位置するパワーウィンドウの対を同時に開状態とする換気モードとなる。さらに言えば、この換気モードにおいて、車幅方向及び車長方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置にある1対のパワーウィンドウが開状態となり、残余のパワーウィンドウが閉状態となっている。
【0041】
ただし、この換気モードにおいて、開状態となったパワーウィンドウの対は互いに異なる開度で開状態となっている。即ち、本実施形態においては、S13において開状態となった左前席(助手席)のパワーウィンドウの開状態よりも、S14において開状態となった右後席のパワーウィンドウの開状態の方が、開口面積が大きくなるよう、エアコンECU100は対応するウィンドウ駆動部222,224に対し開駆動指令を出力している。結果、左前席(助手席)のパワーウィンドウは、図14の(b)に示すように、窓枠Wに対しパワーウィンドウGが半開状態となり、他方で、右後席のパワーウィンドウは、図14の(a)に示すように、窓枠Wに対しパワーウィンドウGが全開状態となる。そして、左前席(助手席)のパワーウィンドウの開口領域O(図14の(b))が換気用吸気口、右後席のパワーウィンドウの開口領域O(図14の(a))が換気用排出口となる形で気流の流れがベルヌーイの定理に従い形成される。つまり、車幅方向において互いに異なる側に位置するパワーウィンドウの対を同時に開状態とする際に、対をなすパワーウィンドウを互いに異なる開度で開状態とすることで、図12に示すような気流の流れが強制的に形成されるから、効率的に車内の空気を排出することができるのである。
【0042】
なお、本実施形態においては、開駆動しなかった残余のパワーウィンドウは図14の(c)のごとく閉状態となっているものとする。ただし、例えば、それら残余のパワーウィンドウが開状態となっていた場合に、S13及びS14の前の段階で、音声出力装置340からそれら残余のパワーウィンドウを閉める旨を音声にて警告出力した上で、対応するウィンドウ駆動部221,223に当該パワーウィンドウの閉駆動指令を出力し、駆動対象となる席(ここでは右前席(運転席)及び左後席)のパワーウィンドウを閉状態としてもよい。より強い気流の流れを所定方向(車両の対角線方向)に強制的に作る観点から、気流の流れるべき方向に位置しないパワーウィンドウは閉じておいた方が望ましい。
【0043】
S13及びS14が終了すると、S15に進む。S15では、車載空調装置による空調気流の吹出し方向を、車幅方向において開状態となった一方のパワーウィンドウから他方のパワーウィンドウに向かう方向となるように制御する。さらに具体的に言えば、車載空調装置による吹出し口からの空調気流の吹出し方向を、開度が小となるパワーウィンドウから開度が大となるパワーウィンドウに向かう方向となるように、エアコンECU100がグリル駆動部121を駆動制御する。ここでは、本実施形態においては、S13において開状態となった左前席(助手席)のパワーウィンドウの開状態よりも、S14において開状態となった右後席のパワーウィンドウの開状態の方が、開口面積が大きいので、車載空調装置のグリルを右後方に向ける。これにより、図12に示すように、左前席(助手席)側から右後席側への空気の流れをアシストし、その方向へのより強い気流の流れを作り出す。さらに、グリルを、その水平方向の向きを維持したまま上方向に向ける。これにより、シートに遮られ難い気流の流れを作り出す。そして、S16では、気流の強い流れを作り出すために、車載空調装置のブロワ風量を予め定められた風量値に設定して、吹出し口(図12の符号8a,8b)から所定風量の空調気流を吹き出す。本実施形態においては、吹出し口8a,8bから最大風量で吹き出されるようブロワ風量を最大とする。
【0044】
続いてS17では、所定時間T3(例えば10秒)毎に内気センサ111及び外気温センサ112から検出結果情報を取得する。検出結果情報に基づいて、車内温度が、車外温度と所定温度K1との和以下であった場合に、図6のS31に進む。車内温度がその和より大きい場合にはS19に進み、S16終了の段階から所定時間T4(例えば60秒)が経過しているか否かを判定する。そして、所定時間T4が経過していれば図6のS31に進み、経過していなければS17に戻る。なお、これらの時間計測はマイクロコンピュータ101に設けられるタイマー機能により実施する。
【0045】
なお、S17では、内気センサ111により検出される車内温度と外気センサ112により検出される車外温度との温度差が、所定温度K1以下となった場合に、図6のS31に進むように定められているが、内気センサ111により検出される車内温度が予め定められた温度以下となった場合に、図6のS31に進むように定められていてもよい。
【0046】
図7のS31では、換気操作の誘導案内表示として図10に示す表示画面32(図10では画面2と称する)を表示する。続いてS32にて、該表示画面32上に表示された、換気開始(換気スタート)と換気中止とを選択するタッチスイッチ32a,32bのうち、タッチスイッチ32aが操作されたか否かを判定する。なお、表示画面32には、タッチスイッチ32a,32bとともに、その同一画面内に、換気開始が選択された場合にどのように空気が流れるかを示す換気方向情報38も表示される。なお、この換気方向情報38では、開状態となるパワーウィンドウと閉状態となるパワーウィンドウとが識別可能に表示されており、それらが表示画面31とは逆に設定されている。また、S31にて表示画面32が表示されるに伴い、換気時の各パワーウィンドウの開閉状態、該換気時の空気の流れ方向、及びタッチスイッチ32a,32bの説明等が行なわれる。(換気動作及び換気操作の誘導案内)。
【0047】
S32にて、換気開始のタッチスイッチ31aが操作されていない場合はS42に進む。S42では、換気停止のタッチスイッチ32bが操作されたか否かを判定する。タッチスイッチ32bが操作された場合にはS44及びS45に進む。タッチスイッチ32bが操作されていない場合はS43に進み、エンジン始動検出から所定時間T2(例えば30秒)経過したか否かを判定する。経過していなければS42に戻り、経過していればS44及びS45に進む。S44及びS45では、音声出力装置340から、図6のS13及びS14で開状態とされたパワーウィンドウを閉める旨を音声にて警告出力した上で、対応するウィンドウ駆動部222,224に当該パワーウィンドウの閉駆動指令を出力して、駆動対象となる席のパワーウィンドウを閉状態とする。ここでは、S44にて、左前席(助手席)のパワーウィンドウを閉める旨を音声にて警告出力して該パワーウィンドウを閉状態とし、続いて、S45にて、右後席のパワーウィンドウを閉める旨を音声にて警告出力して該パワーウィンドウを閉状態とする。そして、S46に進み、エアコンECU100はエアコンの通常制御を開始する。
【0048】
他方、S32にて、換気開始のタッチスイッチ32aが操作されたと判定された場合にはS33に進む。S33及びS34では、音声出力装置340から、図6のS13及びS14で開状態とされたパワーウィンドウを閉める旨を音声にて警告出力した上で、対応するウィンドウ駆動部222,224に当該パワーウィンドウの閉駆動指令を出力して、駆動対象となる席のパワーウィンドウを閉状態とする。これは上記のS27及びS28と同様の処理である。
【0049】
続いてS35では、音声出力装置340から右前席(運転席)のパワーウィンドウを開ける旨を音声出力した上で、対応するウィンドウ駆動部221に当該パワーウィンドウの開駆動指令を出力する。これにより、右前席(運転席)のパワーウィンドウは開状態となる。続いてS36では、音声出力装置340から左後席のパワーウィンドウを開ける旨を音声出力した上で、対応するウィンドウ駆動部223に当該パワーウィンドウの開駆動指令を出力する。これにより、左後席のパワーウィンドウが開状態となる。
【0050】
つまり、図7のS35及びS36が終了することで、図6のS13及びS14において、車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウとが開状態となっていた第一モードが、車幅方向における第一側の後席パワーウィンドウと、同じく第二側の前席パワーウィンドウとが開状態となる第二モードに切り替わる。第一モードと第二モードとでは異なる向きに空気の流れが生じている。ただし、この第二モードにおいても、第一モードと同様、開状態となったパワーウィンドウの対は互いに異なる開度で開状態となって、強制的な空気の流れが形成されている。本実施形態における第二モードでは、図13に示すような気流の流れが強制的に形成される。
【0051】
S36が終了すると、S37に進む。S37では、車載空調装置による吹出し口からの空調気流の吹出し方向を、開度が小となるパワーウィンドウから開度が大となるパワーウィンドウに向かう方向となるように、エアコンECU100がグリル駆動部121を駆動制御する。ここでは、本実施形態においては、S35において開状態となった右前席(運転席)のパワーウィンドウの開状態よりも、S36において開状態となった左後席のパワーウィンドウの開状態の方が、開口面積が大きいので、グリルを左後方に向ける。これにより、図13に示すように、右前席(運転席)側から左後席側への空気の流れをアシストし、その方向へのより強い気流の流れを作り出す。さらに、上下方向については、S15における位置を維持したままとする。
【0052】
続くS38〜S41は上記S15〜S18と同様であるので説明を省略する。S40では、車内温度が、車外温度と所定温度K2との和以下であった場合、あるいは、S41にて、S38の終了の段階から所定時間T4(例えば60秒)が経過していた場合には、図8のS51に進み、経過していなければS38に戻る。なお、これらの時間計測はマイクロコンピュータ101に設けられるタイマー機能により実施する。
【0053】
なお、S40では、内気センサ111により検出される車内温度と外気センサ112により検出される車外温度との温度差が、所定温度K1よりも小さい所定温度K2(例えば10℃)以下となった場合に、図8のS51に進むように定められているが、内気センサ111により検出される車内温度が予め定められた温度以下となった場合に、図8のS51に進むように定められていてもよい。
【0054】
図8のS51では、換気操作の誘導案内表示として図11に示す表示画面33(図8では画面3と称する)を表示する。続いてS52にて、該表示画面32上に表示された、パワーウィンドウ全閉開始(OKスイッチ)を指示するタッチスイッチ33aが操作されたか否かを判定する。なお、表示画面33には、タッチスイッチ33aとともに、その同一画面内に、タッチスイッチ33aが選択操作された場合にどのように空気が流れるかを示す換気方向情報40も表示される。なお、この換気方向情報39では、開状態となるパワーウィンドウと閉状態となるパワーウィンドウとが識別可能に表示されており、表示画面33では、全パワーウィンドウが閉状態であることが表示されている。また、S51にて表示画面33が表示されるに伴い、タッチスイッチ33a後の各パワーウィンドウの開閉状態及びタッチスイッチ32a,32bの説明等が行なわれる。
【0055】
続くS53〜S57の処理は、S42〜S46の処理と同様であるので説明は省略する。
【0056】
なお、上記換気処理プログラムは、実行中にパワーウィンドウをマニュアル開閉するマニュアル操作(ウィンドウ開閉操作部211〜214への操作)がなされた場合には直ちに処理が中断され、車載空調装置の通常制御が開始する。
【0057】
このように、エアコンECU100が図5、図6、図7、図8に示す換気処理プログラムを実行することで、本発明の換気制御手段(吹出し方向制御手段)、利用案内情報出力手段、換気動作中断手段として機能する。つまり、エアコンECU100が主体となってこれら手段の機能を果たす。
【0058】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記換気処理プログラムを実行する主体はエアコンECU100でなく、ドアECU200であってもよいし、他に専用のECUを設ける構成であってもよい。
【0060】
また、換気モードは、換気方向を上記のような車両対角線上の二方向に定めるもの以外にも、例えば車両の天井に設けられる開閉式サンルーフSが設けられる場合には、該開閉式サンルーフSを開状態とする換気モードを有していてもよい。この場合、車両前席のパワーウィンドウを、開閉式サンルーフSの開口面積よりも小となる開状態とし、図15のような空気の流れを設けてもよい。また、この場合、車載空調装置のグリルは開閉式サンルーフSを向く上向きの位置に設定して、空気の流れをアシストすることができる。
【0061】
また、換気モードにおける換気条件、即ち換気モードにおけるパワーウィンドウ及び車載空調装置の設定条件を変更可能とするために、設定変更可能な換気条件の設定内容を記憶する換気条件記憶部と、ユーザー操作により該換気条件の設定入力を受け付ける換気条件設定入力部と、受け付けた該換気条件の設定入力に基づいて、換気条件記憶部に記憶された換気条件の設定内容を変更する換気条件変更手段と、を設けて構成することができる。これにより、換気条件をユーザーの嗜好に応じた条件に変更することができる。
【0062】
変更可能な換気条件としては、例えば、換気モードにおけるパワーウィンドウの開口面積、換気モード継続時間(図6のS19及び図7のS41における所定時間T3)、換気モードにおける車載空調装置のブロワ風量、換気モードにおける温度計測周期(図6のS17及び図7のS39における所定時間T3)等を設定することができる。
【0063】
具体的に言えば、図16に示すような換気条件設定画面40から換気条件の設定が可能となるように構成できる。図16の画面40は、ナビゲーション装置300の表示装置330表示されるものであり、ナビゲーション装置に設けられた換気条件設定スイッチの操作により表示される。そして、図16の画面40に表示されるタッチスイッチ41(41a,41b),42,43,44(44a,44b)に対するタッチ操作を行なって、対応する換気条件(パワーウィンドウの開口面積、換気モード継続時間、換気モードにおける車載空調装置のブロワ風量、換気モードにおける温度計測周期)を設定し、確定する際にはタッチスイッチ45をタッチ操作することで、換気条件を変更することができる。これにより、換気条件記憶部をなすエアコンECUの不揮発性メモリに記憶されている先の換気条件情報が上書きされて、エアコンECUは、次回の換気処理プログラムにおいては、これらの設定条件を読み出す形で処理を実行する。なお、上記の換気条件変更手段は、エアコンECUのCPUが上記処理を実行することで機能するとともに、上記換気条件設定入力部は、タッチスイッチ41(41a,41b),42,43,44(44a,44b),45に相当する。
【0064】
また、換気処理プログラムのうち図5に示す初期処理を、図17のように変更してもよい。図17のS101では、図5のS1と同様、エンジン始動トリガー信号を取得する。そして、そのエンジン始動状態において、IVAスイッチ11dがONであった場合、あるいはエンジン始動検出から所定時間T1(例えば60秒)以内にIVAスイッチ11dがユーザー操作された場合に、S102に進む。所定時間T1のうちにIVAスイッチ11dへの操作が無ければS113に進み、エアコンECU100はエアコンの通常制御を開始する。
【0065】
S102では、IVAスイッチ11dがONとなった場合に、S103に進む。S102及びS103は、図5のS2及びS3と同様の処理である。S103に続き、S104では、内気センサ111により検出される車内温度と外気センサ112により検出される車外温度とを検出してS105に進む。S105では、検出された車内温度と車外温度との温度差が所定温度K0以下である場合にはS110に進み、S110にて換気不要を報知する(換気不要報知手段)。その上でS113に進み、エアコンの通常制御を開始する。他方、S105にて、検出された車内温度と車外温度との温度差が所定温度K0(例えば上記所定温度K1と同じ温度)を上回る場合にはS106に進む。
【0066】
S106では、現在の車両周囲の天候を反映した天候情報を取得する。具体的に言えば、現在が雨天である、あるいは雨天と推定される状態であるか否かを判定するための情報を取得する。本実施形態においては、フロントガラスに付着した水滴をレインセンサ(天候情報取得手段)により検出することで、雨天に係る天候情報を取得する。なお、ナビゲーション装置に搭載される通信機(天候情報取得手段)により、外部情報センタより天候情報を無線通信取得してもよい。
【0067】
そして、S107では、取得した天候情報に基づいて、現在の車両周囲の天候が雨である場合にはS111に進み、図18のような、換気に適さない天候状態であることを報知する換気不適切天候情報報知画面50を表示する(換気不適切天候情報報知手段)。この画面では現在の車両周囲の天候が換気に適さないことを文字表示している(符号50c)。そして、タッチスイッチ50a,50bへの選択操作を、画面表示と音声案内によりユーザーに促して、なされた選択操作に基づいて、換気を実行するか否かを判定する。タッチスイッチ50bがタッチ操作されて換気をしないと判定された場合にはS113に進み、エアコンの通常制御を開始する。タッチスイッチ50aがタッチ操作されて換気をすると判定された場合にはS108に進む。
【0068】
S108では、車両周囲の悪臭の存在状態を反映した悪臭存在情報を取得する。ここでは、排ガスセンサからの検出結果を取得する。そして、S109では、現在の車両周囲に悪臭が存在するか否か、あるいは悪臭が存在すると推定されるか否かを判定する。ここでは、排ガスセンサ(悪臭存在情報取得手段)により検出される排ガスレベルが所定レベルを上回った場合に、悪臭が存在すると判定するものとする。悪臭が存在する場合には、S112に進み、図19のような、悪臭が存在することを警告する換気不適切天候情報報知画面60を表示する(悪臭警告手段)。この画面では現在の車両周囲の天候が換気に適さないことを文字表示している(符号60c)。そして、タッチスイッチ60a,60bへの選択操作を、画面表示と音声案内によりユーザーに促して、なされた選択操作に基づいて、換気を実行するか否かを判定する。タッチスイッチ60bがタッチ操作されて換気をしないと判定された場合にはS113に進み、エアコンの通常制御を開始する。タッチスイッチ60aがタッチ操作されて換気をすると判定された場合には、図5の処理を終了して、図6のS11に進む。
【0069】
なお、悪臭存在情報は、ナビゲーション装置において地図データに対応付けて記憶される悪臭地点データであってもよい。この場合、地図データ上に、例えば牛舎や排ガス排出量の多い道路等を、悪臭地点としてデータ登録しておき、車両現在位置がそれら地点に接近している場合に、悪臭が存在すると判定するようにもできる。
【0070】
上記した図17の換気処理プログラムを、換気制御手段をなすエアコンECU100のCPUが実行することにより、検出された車内温度と車外温度との温度差が予め定められた値未満となった場合に、換気動作制御を抑制する換気動作抑制手段として機能する。また、車両周囲の天候を反映した天候情報を取得して、取得した天候状態から換気に適さない天候状態であることが判定された場合に、換気に適さない天候状態であることを報知する換気不適切天候情報報知手段として機能するとともに、同じく取得した天候状態から換気に適さない天候状態であることが判定された場合に、換気動作を抑制する換気動作抑制手段としても機能する。さらに、取得した悪臭存在情報に基づいて、当該悪臭の存在を警告する悪臭警告手段として機能し、同じく取得した悪臭存在情報が悪臭の存在を反映するものである場合に、換気動作制御を抑制する換気動作抑制手段としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の車両用換気システムの全体構成を示す図。
【図2】エアコンECUの構成を示すブロック図。
【図3】ドアECUの構成を示すブロック図。
【図4】エアコンパネルの外観図。
【図5】換気処理プログラムの流れを示すフローチャート。
【図6】図5に続くフローチャート。
【図7】図6に続くフローチャート。
【図8】図7に続くフローチャート。
【図9】換気操作の誘導案内表示画面を示す第一の図。
【図10】換気操作の誘導案内表示画面を示す第二の図。
【図11】換気操作の誘導案内表示画面を示す第三の図。
【図12】換気モードのうち、第一モードにおける換気経路を説明する図。
【図13】換気モードのうち、第二モードにおける換気経路を説明する図。
【図14】換気モードにおける各窓(パワーウィンドウ)の開閉状態を説明する図。
【図15】図5とは異なる換気処理プログラムの流れを示すフローチャート。
【図16】天候条件による喚起動作の警告画面を示す図。
【図17】悪臭の存在を警告する悪臭警告画面を示す図。
【図18】換気動作における条件設定を説明する図。
【図19】図12及び図13とは異なる換気モードの換気経路を説明する図。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用換気システム
10 エアコンパネル
11d IVAスイッチ(換気モード選択入力手段)
100 エアコンECU(換気制御手段(吹出し方向制御手段、換気動作中断手段、換気動作抑制手段、悪臭警告手段)、利用案内情報出力手段)
111 内気センサ(本発明の車内温度検出手段)
112 外気センサ(本発明の車外温度検出手段)
115 排ガスセンサ(悪臭存在情報取得手段)
121 グリル駆動部
200 ドアECU200
210(211〜214) ウィンドウ開閉操作部
220(221〜224) ウィンドウ駆動部
300 ナビゲーション装置(天候情報取得手段)
320 データ記憶装置(HDD)
330 表示装置(利用案内情報出力手段)
340 音声出力装置(利用案内情報出力手段)
400 エンジンECU
440 イグニッションスイッチ(エンジン始動検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた複数のパワーウィンドウと、
前記車両のエンジン始動を検出するエンジン始動検出手段と、
ユーザーによる換気モード選択入力操作を受け付ける換気モード選択入力手段と、
前記エンジン始動が検出され、かつ前記換気モード選択入力操作が受け付けられた場合に、前記複数のパワーウィンドウを、換気モードとして予め定められた開形態となるように換気開閉駆動制御する換気制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用換気システム。
【請求項2】
前記換気制御手段は、前記換気モードにて、車幅方向において互いに異なる側に位置するパワーウィンドウの対を同時に開状態とするものである請求項1記載の車両用換気システム。
【請求項3】
前記換気制御手段は、前記換気モードにて、前記パワーウィンドウの対を互いに異なる開度で開状態とするものである請求項2記載の車両用換気システム。
【請求項4】
前記換気制御手段は、前記換気モードにて、車幅方向及び車長方向のそれぞれにおいて互いに異なる位置にある1対のパワーウィンドウを開状態とするものである請求項2又は請求項3に記載の車両用換気システム。
【請求項5】
前記車両は乗用車であり、前記換気モードにて開状態とされる前記1対のパワーウィンドウは、前記車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウである請求項4記載の車両用換気システム。
【請求項6】
前記換気制御手段は、前記換気モードにて、複数の前記パワーウィンドウの開形態が互いに異なる複数の駆動状態を順次切り替えて実行するものである請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項7】
前記換気制御手段は、前記換気モードにて、前記車幅方向における第一側の前席パワーウィンドウと、同じく第二側の後席パワーウィンドウとを開状態とする第一モードを実行した後、前記車幅方向における第一側の後席パワーウィンドウと、同じく第二側の前席パワーウィンドウとを開状態とする第二モードを実行する請求項6記載の車両用換気システム。
【請求項8】
車両に設けられた吹出し口から空調気流を吹き出す車載空調装置と、
前記換気制御手段は、前記換気動作制御として、前記パワーウィンドウの前記換気開閉駆動とともに前記車載空調装置による前記空調気流の吹き出しを実行させる請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項9】
請求項5記載の要件を備え、
前記車載空調装置による前記空調気流の吹出し方向を、前記車幅方向における開状態となった一方の前記パワーウィンドウから他方の前記パワーウィンドウに向かう方向となるように制御する吹出し方向制御手段を備える請求項8記載の車両用換気システム。
【請求項10】
請求項3記載の要件を備え、
前記車載空調装置による前記吹出し口からの前記空調気流の吹出し方向を、開度が小となる前記パワーウィンドウから開度が大となる前記パワーウィンドウに向かう方向となるように制御する吹出し方向制御手段を備える請求項8又は請求項9に記載の車両用換気システム。
【請求項11】
前記換気モード選択入力手段による前記換気モードの利用案内情報を視覚情報、音声情報もしくはそれらの組合せにより出力する利用案内情報出力手段を有する請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項12】
車内温度を検出する車内温度検出手段を有し、
前記換気制御手段は、検出される前記車内温度が予め定められた温度を下回った場合に、前記換気モードにて開状態とされた前記パワーウィンドウを閉状態とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項13】
車内温度を検出する車内温度検出手段と、
車外温度を検出する車外温度検出手段とを備え、
前記換気制御手段は、検出された前記車内温度と前記車外温度との温度差が予め定められた値未満となった場合に、前記換気動作制御を抑制するものである請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項14】
前記換気制御手段は、前記換気動作制御中に前記パワーウィンドウをマニュアル開閉するマニュアル操作がなされた場合に前記換気動作を中断する換気動作中断手段を有する請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項15】
車両周囲の天候を反映した天候情報を取得する天候情報取得手段を備え、
前記換気制御手段は、取得した天候情報に基づいて前記換気動作を抑制する換気動作抑制手段を有する求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の車両用換気システム。
【請求項16】
車両周囲の悪臭の存在状態を反映した悪臭存在情報を取得する悪臭存在情報取得手段を備え、
前記換気制御手段は、取得した悪臭存在情報に基づいて、当該悪臭の存在を警告する悪臭警告手段を備える請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の車両用換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−213763(P2008−213763A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57162(P2007−57162)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】