説明

車両用操舵装置

【課題】 車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】 EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御するEPSECU11とを備え、EPSECU11は、モータ制御信号を出力するマイコンと、モータ制御信号に基づいてEPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12に駆動電力を供給する駆動回路とを備える。マイコンは、車内ネットワーク13を介してEPSECU11と接続されたカーナビゲーションシステム30から走行路の制限速度Vlimを取得する。そして、この制限速度Vlimと車速Vとの差分値、即ち速度差分値が大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を小とすべくモータ制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、所謂カーナビゲーションシステム等の普及により、走行路に関する多種多様な道路情報を取得することが可能となっており、このような背景の下、従来より、搭乗者に対する道路情報案内にとどまらず、こうした道路情報に基づいて車両の走行特性を積極的に変更する試みがなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両運動制御装置は、カーナビゲーションシステム等から取得した走行路の道路情報に基づいて、該走行路の種類(高速道路、山岳路等)を判定する。また、特許文献2に記載の車両特性制御装置は、同様に取得した走行路の道路情報に基づいて、該走行路の基準車速及び基準ヨーレイトを算出し、その実測値との比較により運転者の嗜好(ドライビングプレジャ度)を判定する。
【0004】
そして、これらの判定結果に応じて、パワーステアリング装置の操舵アシスト量等、各種車両特性を変更することにより、走行路の種類、及び運転者の嗜好に適合した良好な走行特性を得ることができる。
【特許文献1】特開平5−69848号公報
【特許文献2】特許第3120588号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、走行路の種類を問わず、車速の上昇によって運転者は少なからず緊張するものである。そして、その緊張が、手に力が入りすぎる、或いはステアリング操作が荒くなる等といった、走行安全上、好ましくない状況を招くことがある。そのため、車速上昇時には、こうした運転者の緊張を和らげるべくその走行特性を変更することが望ましい。
【0006】
しかしながら、このような運転者の緊張は、如何に走行路の種類に適合した走行特性を実現しようとも、それのみをもって解消されるものではない。まして、基準値よりも高速で走行しているからといって、必ずしも運転者がその運転を楽しんでいるとは限らず、その嗜好性に適合する走行特性、即ち運転を楽しむための走行特性の変更が、却って運転者の緊張を煽るおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、車速を検出する車速検出手段と、走行路の制限速度を取得する制限速度取得手段とを備え、前記制御手段は、前記車速と前記制限速度との間の差分値が大となるほど前記アシスト力を小とすること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、運転者が緊張を感じやすいと推定される制限速度よりも実際の車速が速い領域において、速度差分値の増加、即ち緊張の高まりに応じてステアリング剛性感を高めそのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。その結果、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記制御手段は、前記差分値が所定値以上となった場合に、前記アシスト力を小とすること、を要旨とする。
上記構成によれば、運転者の緊張の度合いが低いと推定される速度差分値が所定値よりも小さい領域においては、アシスト力を減少させることなく、運転者の負担を軽減し、速度差分値が所定値以上の領域においては、速度差分値が大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を小とすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記操舵輪の舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、車速を検出する車速検出手段と、走行路の制限速度を取得する制限速度取得手段とを備え、前記制御手段は、前記車速と前記制限速度との間の差分値が大となるほど前記操舵角に対する前記操舵輪の舵角の比率が小さくなるように前記伝達比可変装置の作動を制御すること、を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、運転者が緊張を感じやすいと推定される制限速度よりも実際の車速が速い領域において、速度差分値の増加、即ち緊張の高まりに応じてギヤ比をスローとし、そのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。その結果、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記差分値が所定値以上となった場合に、前記操舵角に対する前記操舵輪の舵角の比率が小さくなるように前記伝達比可変装置の作動を制御すること、を要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、運転者の緊張の度合いが低いと推定される速度差分値が所定値よりも小さい領域においては、舵角応答性の高い軽快なステアリング特性を実現し、速度差分値が所定値以上の領域においては、速度差分値が大となるほど、ギヤ比をスローとして、そのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のEPS1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により操舵輪6の舵角、即ちタイヤ角が可変することにより、車両の進行方向が変更されるようになっている。
【0018】
EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのEPSECU11とを備えている。
【0019】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、その駆動源であるモータ12がラック5と同軸に配置された所謂ラック型のEPSアクチュエータであり、モータ12が発生するアシストトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック5に伝達される。尚、本実施形態のモータ12は、ブラシレスモータであり、EPSECU11から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、EPSECU11は、このモータ12が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0020】
本実施形態では、EPSECU11には、トルクセンサ14及び車速検出手段としての車速センサ15が接続されている。尚、車速センサ15は、車内ネットワーク(CAN:Controller Area Network)13を介してEPSECU11と接続されている。そして、EPSECU11は、これらトルクセンサ14及び車速センサ15によりそれぞれ検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、EPSアクチュエータ10の作動、即ちパワーアシスト制御を実行する。
【0021】
次に、本実施形態におけるEPSの制御態様について説明する。
図2は、本実施形態のEPSの制御ブロック図である。尚、以下に示す各制御ブロックは、後述するマイコン17が実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0022】
同図に示すように、EPSECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン17と、モータ制御信号に基づいてモータ12に三相の駆動電力を供給する駆動回路18とを備えている。
【0023】
本実施形態では、EPSECU11には、モータ12に通電される各相電流値Iu,Iv,Iwを検出するための電流センサ21u,21v、及びモータ12の回転角(電気角)θを検出するための回転角センサ22が接続されている。そして、マイコン17は、これら各センサの出力信号に基づき検出されたモータ12の各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角θ、並びに上記操舵トルクτ及び車速Vに基づいて駆動回路18にモータ制御信号を出力する。
【0024】
詳述すると、マイコン17は、操舵系に付与するアシスト力の制御目標量である電流指令値Iq*を演算する電流指令値演算部25と、電流指令値演算部25により算出された電流指令値Iq*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部26とを備えている。
【0025】
電流指令値演算部25は、上記トルクセンサ14及び車速センサ15により検出された操舵トルクτ及び車速Vに基づいて電流指令値Iq*を演算し、その電流指令値Iq*をモータ制御信号出力部26に出力する。また、モータ制御信号出力部26には、電流指令値演算部25により算出された電流指令値Iq*とともに、各電流センサ21u,21vにより検出された各相電流値Iu,Iv,Iw及び回転角センサ22により検出された回転角θが入力される。そして、モータ制御信号出力部26は、これら各相電流値Iu,Iv,Iw、及び回転角θに基づいて、制御目標量である電流指令値Iq*にモータ12に供給される電流量(実電流値)を追従させるべくモータ制御信号を出力する。
【0026】
尚、本実施形態では、モータ制御信号出力部26は、検出された各相電流値Iu,Iv,Iwをd/q座標系のd,q軸電流値に変換(d/q変換)することにより、上記電流フィードバック制御を行う。
【0027】
即ち、電流指令値Iq*は、q軸電流指令値としてモータ制御信号出力部26に入力され、モータ制御信号出力部26は、回転角θに基づいて各相電流値Iu,Iv,Iwをd/q変換する。続いて、モータ制御信号出力部26は、そのd,q軸電流値及びq軸電流指令値に基づいてd,q軸電圧指令値を演算し、そのd,q軸電圧指令値をd/q逆変換することにより各相の電圧指令値を算出する。そして、モータ制御信号出力部26は、この電圧指令値に基づいてモータ制御信号を生成し、駆動回路18へと出力する。
【0028】
一方、駆動回路18は、モータ12の相数に対応する複数(6個)のパワーMOSFET(以下、単にFET)により構成されており、具体的にはFET27a,27dの直列回路、FET27b,27eの直列回路及びFET27c,27fの直列回路を並列接続することにより構成されている。そして、FET27a,27dの接続点28uはモータ12のU相コイルに接続され、FET27b,27eの接続点28vはモータ12のV相コイルに接続され、FET27c,27fの接続点28wはモータ12のW相コイルに接続されている。また、各FET27a〜27fのゲート端子には、マイコン17から出力されるモータ制御信号が印加される。そして、このモータ制御信号に応答して各FET27a〜27fがオン/オフすることにより、車載電源29の直流電圧が三相の駆動電力に変換され、モータ12に供給されるようになっている。
【0029】
[速度上昇時の制御態様]
次に、本実施形態のEPSにおける速度上昇時の制御態様について説明する。
上述のように、車速の上昇により運転者は少なからず緊張するものである。そのため、こうした車速上昇時には、その緊張を和らげて走行安全性を向上させるためにも、車両走行特性をより安定性の高いものとすることが望ましい。
【0030】
この点を踏まえ、本実施形態のEPS1では、車両が現在走行中の道路、即ち走行路の制限速度を取得し、実際の車速との差分値(速度差分値)を演算することにより、その速度差分値が大となるほど操舵系に付与するアシスト力を小とする。
【0031】
即ち、本願発明者は、制限速度が法令に規定された道幅、車線数等に基づく数式により算出されたものであることに着目し、この制限速度が運転者の緊張の度合いを図る基準速度として妥当なものと考える。そして、この基準よりも実際の車速が速いほど操舵系に付与するアシスト力を小とし、ステアリング剛性感を高めてその特性をより安定性の高いものとする。そして、これにより、運転者の緊張を和らげ、ひいては走行安全性の向上を図るのである。
【0032】
尚、社会通念上、制限速度とは法定速度を指すものであり、本来、車両は、この法定速度の範囲内で走行することが望ましいことは言うまでもないことである。そのため、本実施形態における制限速度は、取得可能な法定速度から予め所定の速度を減算した値とし、以下同様とする。
【0033】
詳述すると、図1に示すように、本実施形態では、EPSECU11には、車内ネットワーク13を介して制限速度取得手段としてのカーナビゲーションシステム30が接続されており、マイコン17は、このカーナビゲーションシステム30から走行路の制限速度Vlimを取得する。そして、マイコン17は、この制限速度Vlimと車速Vとの差分(V−Vlim)を求めることにより、その速度差分値Vdが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力が小となるようにモータ制御信号を出力する。
【0034】
更に詳述すると、図2に示すように、マイコン17の電流指令値演算部25は、操舵トルクτ及び車速Vに基づいて電流指令値Iq*の基礎成分である基礎アシスト量Ias*を演算する基礎アシスト量演算部31に加え、速度差分値Vdに基づく電流指令値Iq*の補正成分である制限速度補正量Ilim*を演算する制限速度補正量演算部32を備えている。そして、電流指令値演算部25は、この制限速度補正量Ilim*を基礎アシスト量Ias*から減算した値を電流指令値Iq*としてモータ制御信号出力部26に出力する。
【0035】
本実施形態では、制限速度補正量演算部32は、制限速度補正量Ilim*と速度差分値Vdとが関連付けられたマップ32aを備えており(図3参照)、同マップ32aにおいて、制限速度補正量Ilim*は、速度差分値Vdが大となるほど大となるように設定されている。より具体的には、同マップ32aにおいて、制限速度補正量Ilim*は、速度差分値Vdが所定値Vd0よりも小さい領域においては「0」と設定され、所定値Vd0以上の領域において速度差分値Vdが大となるほど大となるように設定されている。尚、所定値Vd0は、実験やシミュレーション等により求められた、速度差分値Vdが該所定値Vd0より低い場合には、運転者の緊張が比較的低いと推定される値に設定されている。そして、制限速度補正量演算部32は、このマップ32aに、速度差分値Vdを照合することにより制限速度補正量Ilim*を演算する。
【0036】
即ち、制限速度補正量演算部32は、速度差分値Vdが所定値Vd0よりも小さい領域においては制限速度補正量Ilim*を「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd0以上の領域においては速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Ilim*を算出する。
【0037】
本実施形態では、制限速度補正量演算部32において算出された制限速度補正量Ilim*は、フィルタ演算部33に入力され、同フィルタ演算部33においてその急峻な変化を抑制すべく補正される。尚、本実施形態では、フィルタ演算部33は、一次のローパスフィルタにより構成されている。
【0038】
補正後の制限速度補正量Ilim**は、基礎アシスト量Ias*とともに減算器34に入力される。そして、電流指令値演算部25は、この減算器34において基礎アシスト量Ias*から制限速度補正量Ilim**を減じた値を電流指令値Iq*とすることにより、速度差分値Vdが大となるほど小さな値を有する電流指令値Iq*をモータ制御信号出力部26に出力する。そして、この電流指令値Iq*に基づいて、モータ制御信号出力部26がモータ制御信号を出力することにより、速度差分値Vdが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力が小とされるようになっている。
【0039】
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御するEPSECU11とを備え、EPSECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン17と、モータ制御信号に基づいてEPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12に駆動電力を供給する駆動回路18とを備える。マイコン17は、車内ネットワーク13を介してEPSECU11と接続されたカーナビゲーションシステム30から走行路の制限速度Vlimを取得する。そして、この制限速度Vlimと車速Vとの差分値、即ち速度差分値Vdが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を小とすべくモータ制御信号を出力する。
【0040】
このような構成とすれば、運転者が緊張を感じやすいと推定される制限速度よりも実際の車速が速い領域において、速度差分値Vdの増加、即ち緊張の高まりに応じてステアリング剛性感を高めそのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。その結果、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる。
【0041】
(2)電流指令値演算部25は、速度差分値Vdに基づく補正成分である制限速度補正量Ilim*を演算する制限速度補正量演算部32を備え、この制限速度補正量Ilim*を基礎アシスト量Ias*から減算することにより操舵系に付与するアシスト力の制御目標量である電流指令値Iq*を演算する。そして、制限速度補正量演算部32は、速度差分値Vdが所定値Vd0よりも小さい領域においては制限速度補正量Ilim*を「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd0以上の領域においては速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Ilim*を算出する。
【0042】
このような構成とすれば、運転者の緊張の度合いが低いと推定される速度差分値Vdが所定値Vd0よりも小さい領域においては、アシスト力を減少させることなく、運転者の負担を軽減し、速度差分値Vdが所定値Vd0以上の領域においては、速度差分値Vdが大となるほど、操舵系に付与するアシスト力を小とすることができる。
【0043】
(3)制限速度補正量演算部32において算出された制限速度補正量Ilim*は、フィルタ演算部33に入力され、同フィルタ演算部33においてその急峻な変化を抑制すべく補正される。このような構成とすれば、急ブレーキや制限速度Vlimの変化に伴う制限速度補正量Ilim*の急峻な変化を抑制して、好適なステアリング特性を確保することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明をギヤ比可変システムを備えた車両用操舵装置(ステアリング装置)に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図4に示すように、本実施形態のステアリング装置40は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する操舵輪6の舵角(タイヤ角)の比率、即ち伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置としてのギヤ比可変アクチュエータ41と、該ギヤ比可変アクチュエータ41の作動を制御する制御手段としてのIFSECU42とを備えている。
【0046】
詳述すると、ステアリングシャフト43は、ステアリング2が連結された第1シャフト44とラックアンドピニオン機構4に連結される第2シャフト45とからなり、ギヤ比可変アクチュエータ41は、第1シャフト44及び第2シャフト45を連結する差動機構46と、該差動機構46を駆動するモータ47とを備えている。そして、ギヤ比可変アクチュエータ41は、ステアリング操作に伴う第1シャフト44の回転に、モータ駆動による回転を上乗せして第2シャフト45に伝達することにより、ラックアンドピニオン機構4に入力されるステアリングシャフト43の回転を増速(又は減速)する。
【0047】
つまり、図5及び図6に示すように、ギヤ比可変アクチュエータ41は、ステアリング操作に基づく操舵輪6の舵角(ステア転舵角θts)にモータ駆動に基づく操舵輪6の舵角(ACT角θta)を上乗せすることにより、操舵角θsに対する操舵輪6のギヤ比を可変させる。即ち、ステア転舵角θtsが「第1の舵角」、ACT角θtaが「第2の舵角」を構成する。
【0048】
尚、この場合における「上乗せ」とは、加算する場合のみならず減算する場合をも含むものと定義し、以下同様とする。また、「操舵角θsに対する操舵輪6のギヤ比」をオーバーオールギヤ比(操舵角θs/タイヤ角θt)で表した場合、ステア転舵角θtsと同方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は小さくなる(タイヤ角θt大、図5参照)。そして、逆方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は大きくなる(タイヤ角θt小、図6参照)。
【0049】
また、本実施形態のモータ47は、ブラシレスモータであり、IFSECU42から三相(U,V,W)の駆動電力が供給されることにより回転する。そして、IFSECU42は、この駆動電力の供給によりモータ47の回転、即ちACT角θtaを制御することにより、ギヤ比可変アクチュエータ41の作動を制御する(ギヤ比可変制御)。
【0050】
次に、本実施形態のステアリング装置の電気的構成及び制御態様について説明する。
図7に示すように、IFSECU42は、モータ制御信号を出力するマイコン48と、モータ制御信号に基づいてモータ47に三相の駆動電力を供給する駆動回路49とを備えている。尚、駆動回路49の構成は、上記第1の実施形態の駆動回路18と同一であるためその説明を省略する。
【0051】
マイコン48は、ACT角θtaの制御目標量であるACT指令角θta*を出力するACT指令角出力部51と、そのACT指令角θta*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部52とを備えている。
【0052】
本実施形態では、IFSECU42には、車内ネットワーク13を介してステアリング2の操舵角θs(操舵速度ωs)を検出するためのステアリングセンサ53、及び車速センサ15が接続されており(図4参照)、ACT指令角出力部51は、これら操舵角θs、操舵速度ωs、及び車速Vに基づいてACT指令角θta*を出力する。
【0053】
また、IFSECU42には、モータ47の回転角θを検出するための回転角センサ54が接続されており、モータ制御信号出力部52には、上記ACT指令角θta*とともに、回転角θに基づき検出されたACT角θtaが入力される。そして、モータ制御信号出力部52は、ACT指令角θta*とACT角θtaとの偏差に基づくフィードバック制御により、ACT角θtaをACT指令角θta*に追従させるべくモータ制御信号を出力する。
【0054】
[速度上昇時の制御態様]
次に、本実施形態のステアリング装置における速度上昇時の制御態様について説明する。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、上記第1の実施形態のEPS1と同様、IFSECU42には、車内ネットワーク13を介して車両のカーナビゲーションシステム30が接続されている。そして、IFSECU42は、カーナビゲーションシステム30から取得した走行路の制限速度Vlimと実際の車速Vとの間の差分値、即ち速度差分値Vdが大となるほど、操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率が小さくなる(オーバーオールギヤ比大)ようにギヤ比可変アクチュエータ41の作動を制御する。
【0056】
詳述すると、図7に示すように、マイコン48のACT指令角出力部51は、車速V及び操舵速度ωsに応じた目標オーバーオールギヤ比(目標OAギヤ比Roa)を演算する目標OAギヤ比演算部55と、ACT指令角θta*を演算するACT指令角演算部56とを備えており、ACT指令角演算部56は、操舵角θsに基づいて上記目標OAギヤ比Roaに応じたACT指令角θta*を演算する。
【0057】
また、ACT指令角出力部51は、これら目標OAギヤ比演算部55及びACT指令角演算部56に加え、速度差分値Vdに応じて目標OAギヤ比Roaを補正するための制限速度補正量Rlimを演算する制限速度補正量演算部57と、車速Vに応じて制限速度補正量Rlimを補正するための速度ゲインKvを演算する速度ゲイン演算部58とを備えている。
【0058】
本実施形態では、制限速度補正量演算部57は、制限速度補正量Rlimと速度差分値Vdとが関連付けられたマップ57aを備えており(図8参照)、同マップ57aにおいて、制限速度補正量Rlimは、速度差分値Vdが大となるほど大となるように設定されている。より具体的には、同マップ57aにおいて、制限速度補正量Rlimは、速度差分値Vdが所定値Vd1よりも小さい領域においては「0」と設定され、所定値Vd1以上の領域において速度差分値Vdが大となるほど大となるように設定されている。尚、所定値Vd1は、実験やシミュレーション等により求められた、速度差分値V1が該所定値Vd1より低い場合には、運転者の緊張が比較的低いと推定される値に設定されている。そして、制限速度補正量演算部57は、このマップ57aに、速度差分値Vdを照合することにより制限速度補正量Rlimを演算する。
【0059】
同様に、速度ゲイン演算部58は、速度ゲインKvと車速Vとが関連付けられたマップ58aを備えており(図9参照)、同マップ58aにおいて、速度ゲインKvは、車速Vが大となるほど大となるように設定されている。より具体的には、同マップ58aにおいて、速度ゲインKvは、車速Vが所定値V0よりも小さい領域においては「0」と設定され、所定値V0以上の領域において車速Vが大となるほど大となるように設定されている。尚、所定値V0は、実験やシミュレーション等により求められた、車速Vが該所定値V0より低い場合には、運転者の緊張が比較的低いと推定される値に設定されている。そして、速度ゲイン演算部58は、このマップ58aに、車速Vを照合することにより速度ゲインKvを演算する。
【0060】
本実施形態では、制限速度補正量演算部57により算出された制限速度補正量Rlimは、速度ゲインKvにより算出された速度ゲインKvとともに乗算器59に入力され、速度ゲインKvにより補正された補正後の制限速度補正量Rlim´(Rlim´=Rlim×Kv)は、目標OAギヤ比演算部55により演算された目標OAギヤ比Roaとともに、加算器60に入力される。そして、この加算器60において目標OAギヤ比Roaと制限速度補正量Rlim´とが加算された補正後の目標OAギヤ比Roa´がACT指令角演算部56に入力される。
【0061】
即ち、制限速度補正量演算部57は、速度差分値Vdが所定値Vd1より小さい領域において制限速度補正量Rlimを「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd1以上の領域において、速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Rlimを算出する。従って、この制限速度補正量Rlim(補正後の制限速度補正量Rlim´)により補正された補正後の目標OAギヤ比Roa´(Roa´=Roa+Rlim´)は、速度差分値Vdが所定値Vd1以上の領域において、速度差分値Vdが大となるほど大きな値、即ち操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率を小さくするような値となる。
【0062】
そして、ACT指令角出力部51が、この目標OAギヤ比Roa´に基づき演算されたACT指令角θta*をモータ制御信号出力部52に出力し、モータ制御信号出力部52が、そのACT指令角θta*に基づくモータ制御信号を出力することにより、速度差分値Vdが大となるほど、操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率が小さくなるようにギヤ比可変アクチュエータ41の作動が制御されるようになっている。
【0063】
また、速度ゲイン演算部58は、車速Vが所定値V0以下の領域においては、速度ゲインKvを「0」と算出し、車速Vが所定値V0以上の領域において、車速Vが大となるほど大きな値を有する速度ゲインKvを算出する。そして、目標OAギヤ比Roaは、この速度ゲインKvにより補正された補正後の制限速度補正量Rlim´により補正される。従って、車速Vが所定値V0よりも小さい領域においては、制限速度補正量Rlim´は「0」となる。即ち目標OAギヤ比Roaが補正されることはない。そして、車速Vが所定値V0以上の領域においては、その車速Vが大となるほど、補正後の制限速度補正量Rlim´は大となり、これにより、目標OAギヤ比Roa´は、操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率をより小さくするような値に補正されるようになっている。
【0064】
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)IFSECU42は、カーナビゲーションシステム30から取得した走行路の制限速度Vlimと実際の車速Vとの間の差分値、即ち速度差分値Vdが大となるほど、操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率が小さくなる(オーバーオールギヤ比大)ようにギヤ比可変アクチュエータ41の作動を制御する。
【0065】
このような構成とすれば、運転者が緊張を感じやすいと推定される制限速度よりも実際の車速が速い領域において、速度差分値Vdの増加、即ち緊張の高まりに応じてギヤ比をスローとし、そのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。その結果、車速上昇時の運転者の緊張を和らげて走行安全性を向上させることができる。
【0066】
(2)ACT指令角出力部51は、目標オーバーオールギヤ比(目標OAギヤ比Roa)を演算する目標OAギヤ比演算部55と、目標OAギヤ比Roaに応じたACT指令角θta*を演算するACT指令角演算部56と、速度差分値Vdに応じて目標OAギヤ比Roaを補正するための制限速度補正量Rlimを演算する制限速度補正量演算部57を備える。目標OAギヤ比演算部55により算出された目標OAギヤ比Roaは、制限速度補正量Rlim(補正後の制限速度補正量Rlim´)が加算されることにより補正され、ACT指令角演算部56は、その補正後の目標OAギヤ比Roa´に基づいてACT指令角θta*を演算する。そして、制限速度補正量演算部57は、速度差分値Vdが所定値Vd1より小さい領域において制限速度補正量Rlimを「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd1以上の領域において、速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Rlimを算出する。
【0067】
このような構成とすれば、運転者の緊張の度合いが低いと推定される速度差分値Vdが所定値Vd1よりも小さい領域においては、舵角応答性の高い軽快なステアリング特性を実現し、速度差分値Vdが所定値Vd1以上の領域においては、速度差分値Vdが大となるほど、ギヤ比をスローとして、そのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。
【0068】
(3)ACT指令角出力部51は、車速Vに応じて制限速度補正量Rlimを補正するための速度ゲインKvを演算する速度ゲイン演算部58を備え、速度ゲイン演算部58は、車速Vが所定値V0以下の領域においては、速度ゲインKvを「0」と算出し、車速Vが所定値V0以上の領域において、車速Vが大となるほど大きな値を有する速度ゲインKvを算出する。そして、目標OAギヤ比Roaは、この速度ゲインKvにより補正された補正後の制限速度補正量Rlim´により補正される。
【0069】
このような構成とすれば、車速Vが所定値V0よりも小さい領域においては、制限速度補正量Rlim´は「0」となる。即ち目標OAギヤ比Roaが補正されることはない。そして、車速Vが所定値V0以上の領域においては、その車速Vが大となるほど、補正後の制限速度補正量Rlim´は大となり、これにより、目標OAギヤ比Roa´は、操舵角θsに対するタイヤ角θtの比率をより小さくするような値に補正される。その結果、運転者の緊張の度合いが低いと推定される車速Vが所定値V0よりも小さい領域においては、舵角応答性の高い軽快なステアリング特性を実現し、車速Vが所定値V0以上の領域においては、車速Vが大となるほど、ギヤ比をスローとして、そのステアリング特性をより安定的なものとすることができる。
【0070】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態では、本発明を、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてEPSアクチュエータ10を備えた電動パワーステアリング装置(EPS)に具体化した。しかし、これに限らず、図10に示すパワーステアリング装置70のように、油圧ポンプ71と、その油圧に基づいて操舵系にアシスト力を付与するパワーシリンダ72と、前記パワーシリンダに供給する圧油の流量を変更可能な流量制御弁74と、該流量制御弁74を制御するVFCECU73とを備えた流量可変型の油圧式パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【0071】
尚、この場合、VFCECU73においては、上記第1の実施形態における電流指令値Iq*に代えて、パワーシリンダ72に供給する圧油の流量を制御目標量として用いればよい。即ち、VFCECU73は、速度差分値Vdが大となるほど、パワーシリンダ72に供給する圧油の流量を小とし、これによりアシスト力を小とする構成とすればよい。
【0072】
・上記第1の実施形態では、制限速度補正量演算部32は、速度差分値Vdが所定値Vd0よりも小さい領域においては制限速度補正量Ilim*を「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd0以上の領域においては速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Ilim*を算出することとした。しかし、これに限らず、制限速度補正量演算部32は、その大小に関わらず、速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Ilim*を算出することとしてもよい。
【0073】
・上記第1の実施形態では、制限速度補正量演算部32において算出された制限速度補正量Ilim*は、フィルタ演算部33に入力され、同フィルタ演算部33においてその急峻な変化を抑制すべく補正されることとしたが、このフィルタ演算部33は必ずしも設けなくともよい。また、上記第2の実施形態において、ACT指令角出力部51は、制限速度補正量Rlim(Rlim´)の急峻な変化を抑制するフィルタ演算部を備えることとしてもよい。
【0074】
・上記第2の実施形態では、制限速度補正量演算部57は、速度差分値Vdが所定値Vd1より小さい領域において制限速度補正量Rlimを「0」と算出し、速度差分値Vdが所定値Vd1以上の領域において、速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Rlimを算出する。しかし、これに限らず、制限速度補正量演算部57は、その大小に関わらず、速度差分値Vdが大となるほど大きな値を有する制限速度補正量Rlimを算出することとしてもよい。
【0075】
・上記第2の実施形態では、ACT指令角出力部51は、車速Vに応じて制限速度補正量Rlimを補正するための速度ゲインKvを演算する速度ゲイン演算部58を備えることとした。しかし、これに限らず、必ずしも速度ゲイン演算部58は設けなくともよい。また、上記第1の実施形態において、電流指令値演算部25に、このような速度ゲイン演算部58を設けてもよい。
【0076】
・更に、速度ゲイン演算部58は、車速Vが所定値V0以下の領域においては、速度ゲインKvを「0」と算出し、車速Vが所定値V0以上の領域において、車速Vが大となるほど大きな値を有する速度ゲインKvを算出することとした。しかし、これに限らず、速度ゲイン演算部58は、その大小に関わらず、車速Vが大となるほど大きな値を有する速度ゲインKvを算出することとしてもよい。
【0077】
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
(イ)請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記制御手段は、前記車速が所定値以上となった場合に、車速が大となるほど前記アシスト力を小とすること、を特徴とする車両用操舵装置。
【0078】
(ロ)請求項3に記載の車両用操舵装置において、前記制御手段は、前記車速が所定値以上となった場合に、車速が大となるほど前記操舵角に対する前記操舵輪の舵角の比率が小さくなるように前記伝達比可変装置の作動を制御すること、を特徴とする車両用操舵装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1の実施形態のEPSの概略構成図。
【図2】第1の実施形態のEPSの制御ブロック図。
【図3】制限速度補正量と速度差分値とが関連付けられたマップの概略構成図。
【図4】第2の実施形態のステアリング装置の概略構成図。
【図5】ギヤ比可変制御の説明図。
【図6】ギヤ比可変制御の説明図。
【図7】第2の実施形態のステアリング装置の制御ブロック図。
【図8】制限速度補正量と速度差分値とが関連付けられたマップの概略構成図。
【図9】速度ゲインと車速とが関連付けられたマップの概略構成図。
【図10】別例のパワーステアリング装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0080】
1…EPS、2…ステアリングホイール(ステアリング)、6…操舵輪、10…EPSアクチュエータ、11…EPSECU、12,47…モータ、13…車内ネットワーク、15…車速センサ、17,48…マイコン、25…電流指令値演算部、26,52…モータ制御信号出力部、30…カーナビゲーションシステム、31…基礎アシスト量演算部、32,57…制限速度補正量演算部、32a,57a,58a…マップ、33…フィルタ演算部、34…減算器、40…ステアリング装置、41…ギヤ比可変アクチュエータ、42…IFSECU、51…ACT指令角出力部、55…目標OAギヤ比演算部、56…ACT指令角演算部、58…速度ゲイン演算部、59…乗算器、60…加算器、70…パワーステアリング装置、71…油圧ポンプ、72…パワーシリンダ、73…VFCECU、74…流量制御弁、V…車速、Vlim…制限速度、Vd…速度差分値、Ilim*,Ilim**,Rlim,Rlim´…制限速度補正量、Vd0,Vd1,V0…所定値、Iq*…電流指令値、Ias*…基礎アシスト量、Roa,Roa´…目標OAギヤ比、Kv…速度ゲイン、θta*…ACT指令角、θs…操舵角、θt…タイヤ角、θts…ステア転舵角、θta…ACT角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、該操舵力補助装置が発生する前記アシスト力を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、
車速を検出する車速検出手段と、
走行路の制限速度を取得する制限速度取得手段とを備え、
前記制御手段は、前記車速と前記制限速度との間の差分値が大となるほど前記アシスト力を小とすること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記制御手段は、前記差分値が所定値以上となった場合に、前記アシスト力を小とすること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記操舵輪の舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置であって、
車速を検出する車速検出手段と、
走行路の制限速度を取得する制限速度取得手段とを備え、
前記制御手段は、前記車速と前記制限速度との間の差分値が大となるほど前記操舵角に対する前記操舵輪の舵角の比率が小さくなるように前記伝達比可変装置の作動を制御すること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用操舵装置において、
前記制御手段は、前記差分値が所定値以上となった場合に、前記操舵角に対する前記操舵輪の舵角の比率が小さくなるように前記伝達比可変装置の作動を制御すること、
を特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−131000(P2006−131000A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320082(P2004−320082)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】