車両用操舵装置
【課題】修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制することができる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】ギヤ比可変アクチュエータの作動を制御するIFSECUは、ステアリング中立位置のときの操舵角を跨いでステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定する修正操舵判定部43と、転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定する適正転舵角推定部51とを有する修正操舵制御演算部42を備えた。そして、修正操舵制御演算部42は、修正操舵判定部43により修正操舵が行われていると判定された場合に、転舵輪の転舵角θtを適正転舵角θt*とするべく、ゼロでない修正操舵指令角θad*を出力するようにした。
【解決手段】ギヤ比可変アクチュエータの作動を制御するIFSECUは、ステアリング中立位置のときの操舵角を跨いでステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定する修正操舵判定部43と、転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定する適正転舵角推定部51とを有する修正操舵制御演算部42を備えた。そして、修正操舵制御演算部42は、修正操舵判定部43により修正操舵が行われていると判定された場合に、転舵輪の転舵角θtを適正転舵角θt*とするべく、ゼロでない修正操舵指令角θad*を出力するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置がある。このような駆動手段としては、例えばステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく転舵輪の第2の舵角(ACT角)を上乗せすることにより、ステアリングの舵角(操舵角)と転舵輪の舵角(転舵角)との間の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置がある(例えば特許文献1参照)。そして、このような伝達比可変装置を採用することで、低車速時においてはステアリング操作に対する転舵角の変更量を大として運転者の負担を軽減し、高車速時にはその変更量を小として高い操舵安定性を確保するといった、優れたステアリング特性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行時において、例えば障害物を避けるために操舵した後に、或いは運転者の癖等により、所望の車両進行方向に対応した基準操舵角(例えば直進状態であれば、ステアリング中立位置のときの操舵角)を跨いでステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われることがある。そして、このような修正操舵が行われる場合には、本来不必要な転舵輪の転舵が行われることにより車輪が路面から受ける走行抵抗が増大し、燃費が悪化する等の問題が生じる。
【0005】
しかしながら、上記伝達比可変装置を採用した構成において、修正操舵に伴う燃費の悪化を考慮した制御はなされておらず、この点においてなお改善の余地があった。なお、上記駆動手段として、例えば操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により操舵伝達系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置等の他の駆動手段を採用した構成においても、同様に修正操舵に伴う燃費の悪化を考慮した制御はなされておらず、同様に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制することができる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられモータ駆動により前記転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置において、修正操舵判定手段と、前記適正転舵角推定手段とを備え、前記修正操舵判定手段は、所定車両進行方向に対応する基準操舵角を跨いで前記ステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定し、前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角に対応した適正転舵角を推定するものであり、前記制御手段は、前記修正操舵判定手段により修正操舵が行われていると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、修正操舵が行われている場合には、制御手段により転舵輪の転舵角が適正転舵角となるように駆動手段の作動が制御されるため、転舵輪の不必要な転舵が行われることを抑制し、車輪が路面から受ける走行抵抗が増大することを防いで燃費の悪化を抑制できる。また、例えば障害物を避けるために操舵した後等に修正操舵が行われる場合には、速やかに車両を所望の進行方向に向かって走行させることができ、運転者の負担を軽減できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記修正操舵判定手段は、所定時間内に前記ステアリングが前記基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサにより検出される操舵トルクの方向と前記ステアリングの操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定することを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、修正操舵発生手段は、所定時間内にステアリングが基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵されなければ、修正操舵が行われていると判定しないため、例えば車両が旋回している場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。また、修正操舵発生手段は、操舵トルクの方向とステアリングの操舵方向とが一致する場合、すなわち運転者により修正操舵が行われる場合に修正操舵が発生したと判定する。そのため、操舵トルクの方向とステアリングの操舵方向とが一致しない場合、すなわち転舵輪に対する逆入力の印加によって修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用操舵装置において、直進状態判定手段を備え、該直進状態判定手段は車両が直進状態であるか否かを判定するものであり、前記基準操舵角は、ステアリング中立位置のときの操舵角であり、前記制御手段は、前記直進状態判定手段により直進状態であると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、路面の車線を撮像する撮像手段等の特別な構成を設けずとも、車両が直進状態において修正操舵が行われる場合には、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制でき、コストの増大を抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用操舵装置において、前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角を前記適正転舵角とすることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角が適正転舵角とされるため、車両の直進状態において、運転者の意志を反映したより適切な進行方向に向かって車両を走行させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の車両用操舵装置において、撮像手段を備え、該撮像手段は路面に描かれた車線を撮像するものであり、前記基準操舵角は、前記撮像手段により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角であることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、路面に描かれた車線に沿って車両を進行させる操舵角が基準操舵角とされるため、車両が直進状態である場合に限らず、例えば車両が旋回状態である場合に修正操舵が行われたときでも、その旨の判定をすることができ、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記修正操舵判定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値が該基準操舵角に収束する場合に前記修正操舵が行われていると判定することを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、操舵角のピーク値が基準操舵角に収束する場合に修正操舵が行われていると判定されるため、例えば蛇行するカーブ路を走行する場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記駆動手段は、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記転舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置であることを要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、駆動手段はモータ駆動に基づく転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより、転舵輪の転舵角が変更されるため、運転者に転舵輪の舵角が変更されたことを認識させることなく、車両を所望の進行方向に走行させることが可能になり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制することが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両用操舵装置の概略構成図。
【図2】(a),(b)伝達比可変制御の作用説明図。
【図3】車両用操舵装置の制御ブロック図。
【図4】第1実施形態の修正操舵制御演算部の制御ブロック図。
【図5】第1実施形態の切り返し判定部による切り返し判定の処理手順を示すフローチャート。
【図6】第1実施形態の修正判定信号出力部による修正判定の処理手順を示すフローチャート。
【図7】第1実施形態の修正判定信号補正部による修正判定信号の補正の処理手順を示すフローチャート。
【図8】操舵角を連続値として変換したデータを説明する説明図。
【図9】第1実施形態の適正転舵角演算部による適正転舵角演算の処理手順を示すフローチャート。
【図10】第1実施形態の直進状態判定部による直進状態判定の処理手順を示すフローチャート。
【図11】修正操舵抑制制御を実行した場合の操舵角の変化を示すグラフ。
【図12】第2実施形態の修正操舵制御演算部の制御ブロック図。
【図13】第2実施形態の切り返し判定部による切り返し判定の処理手順を示すフローチャート。
【図14】第2実施形態の収束判定信号出力部による収束判定の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)及び伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置に具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラック&ピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラック&ピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により転舵輪6の舵角、すなわち転舵角が可変することにより、車両の進行方向が変更される。従って、本実施形態では、ステアリングシャフト3、ラック&ピニオン機構4、及びラック5(並びに詳述しないタイロッドやナックルアーム等)により、ステアリング2と転舵輪6とを連結する操舵伝達系が構成されている。
【0025】
車両用操舵装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する転舵輪6の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置としてのギヤ比可変アクチュエータ7と、該ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するIFSECU8とを備えている。
【0026】
詳述すると、ステアリングシャフト3は、ステアリング2が連結された第1シャフト9とラック&ピニオン機構4に連結される第2シャフト10とからなり、ギヤ比可変アクチュエータ7は、第1シャフト9及び第2シャフト10を連結する差動機構11と、該差動機構11を駆動するモータ12とを備えている。そして、ギヤ比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に伴う第1シャフト9の回転に、モータ駆動に基づく回転を上乗せして第2シャフト10に伝達することにより、ラック&ピニオン機構4に入力される同第2シャフト10の回転を増速(又は減速)する。
【0027】
つまり、図2(a)(b)に示すように、ギヤ比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に基づく転舵輪6の舵角(ステア転舵角θts)にモータ駆動に基づく転舵輪6の舵角(ACT角θta)を上乗せすることにより、操舵角θsに対する転舵輪6の転舵角θtの比率、すなわち伝達比(ギヤ比)を可変させる。そして、制御手段としてのIFSECU8は、モータ12に対する駆動電力の供給を通じてギヤ比可変アクチュエータ7を制御し、これにより操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比(ギヤ比)を制御する(伝達比可変制御)。このように、ギヤ比可変アクチュエータ7は、モータ12の駆動により転舵角θtを変更可能な駆動手段として機能する。
【0028】
なお、この場合における「上乗せ」とは、加算する場合のみならず減算する場合をも含むものと定義し、以下同様とする。また、「操舵角θsに対する転舵角θtのギヤ比」をオーバーオールギヤ比(操舵角θs/転舵角θt)で表した場合、ステア転舵角θtsと同方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は小さくなる(転舵角θt大、図2(a)参照)。そして、逆方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は大きくなる(転舵角θt小、図2(b)参照)。そして、本実施形態では、ステア転舵角θtsが第1の舵角を構成し、ACT角θtaが第2の舵角を構成する。
【0029】
また、図1に示すように、車両用操舵装置1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置としてのEPSアクチュエータ17と、該EPSアクチュエータ17の作動を制御するEPSECU18とを備えている。
【0030】
EPSアクチュエータ17は、その駆動源であるモータ22がラック5に設けられた所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータであり、モータ22が発生するアシストトルクは、ボール螺子機構(図示略)を介してラック5に伝達される。そして、EPSECU18は、このモータ22が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0031】
本実施形態では、上記のギヤ比可変アクチュエータ7を制御するIFSECU8、及びEPSアクチュエータ17を制御するEPSECU18は、車内ネットワーク(CAN:Controller Area Network)23を介して接続されており、該車内ネットワーク23には、車両状態量を検出するための複数のセンサが接続されている。具体的には、車内ネットワーク23には、ステアリングセンサ24、トルクセンサ25及び車速センサ26が接続されており、これら各センサにより検出される操舵角θs、操舵トルクτ及び車速Vは、車内ネットワーク23を介してIFSECU8及びEPSECU18に入力される。なお、トルクセンサ25には、周知のツインレゾルバ型が採用されており、同トルクセンサ25は、ラック&ピニオン機構4近傍の第2シャフト10(ピニオンシャフト)に設けられている。そして、IFSECU8及びEPSECU18は、車内ネットワーク23を介して相互通信を行うことにより、上記の伝達比可変制御及びパワーアシスト制御を統合的に実行する。
【0032】
次に、本実施形態の車両用操舵装置(ギヤ比可変アクチュエータ)の電気的構成及び制御態様について説明する。
図3に示すように、IFSECU8は、モータ制御信号を出力するマイコン31と、モータ制御信号に基づいてモータ12に駆動電力を供給する駆動回路32とを備えている。なお、同図に示す各制御ブロックは、IFSECU8に備えられたマイコン31が所定周期毎に実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0033】
マイコン31は、ギヤ比可変制御演算部33及び微分ステア制御演算部34を備えており、ギヤ比可変制御演算部33には、操舵角θs及び車速Vが入力され、微分ステア制御演算部34には、車速V及び操舵速度ωsが入力される。そして、ギヤ比可変制御演算部33は、車速Vに応じてギヤ比(伝達比)を可変させるための制御目標成分であるギヤ比可変指令角θgr*を演算し、微分ステア制御演算部34は、操舵速度ωsに応じて車両の応答性を向上させるための制御目標成分である微分ステア指令角θls*を演算する。
【0034】
ギヤ比可変制御演算部33及び微分ステア制御演算部34により演算されたギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*は、加算器35に入力され、この加算器35において、これらギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*が重畳されることによりACT指令角θta*が演算される。そして、ACT指令角θta*は、加算器36に入力され、この加算器36において、後述する修正操舵制御演算部41により演算された修正操舵指令角θad*がさらに重畳されることにより、補正ACT指令角θta**が演算される。
【0035】
また、マイコン31には、モータ12に設けられた回転角センサ37の出力するモータ回転角θmが入力されるようになっており、加算器36において演算された補正ACT指令角θta**は、そのモータ回転角θmに基づき演算されるACT角θtaとともに、位置制御演算部38に入力される。そして、位置制御演算部38は、指令値であるACT指令角θta*と実際値であるACT角θtaとの偏差に基づくフィードバック演算により電流指令εを演算してモータ制御信号出力部39に出力する。
【0036】
そして、モータ制御信号出力部39は、電流指令εに基づき生成されたモータ制御信号を駆動回路32に出力し、そのモータ制御信号に基づく駆動電力がモータ12に供給されることにより、同モータ12、すなわちギヤ比可変アクチュエータ7の作動が制御されるようになっている。
【0037】
(修正操舵抑制制御)
次に、本実施形態の車両用操舵装置における修正操舵抑制制御の態様について説明する。
【0038】
上述のように、車両の走行時において、所定車両進行方向に対応した基準操舵角θbを跨いでステアリング2を繰り返し操舵する修正操舵が行われると、本来不必要な転舵輪6の転舵が行われることにより、例えば燃費の悪化等を招くといった問題が生じる。なお、本実施形態の基準操舵角θbは、ステアリング中立位置のときの操舵角(「θs=0」)であるように予め設定している。
【0039】
この点を踏まえ、マイコン31は、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵を抑制させるための制御目標成分である修正操舵指令角θad*を演算する修正操舵制御演算部41を備えている。修正操舵制御演算部41には、操舵角θs、車速V、操舵トルクτ及びACT角θtaが入力され、修正操舵制御演算部41はこれらの値に基づいて修正操舵指令角θad*を演算する。
【0040】
詳述すると、図4に示すように、修正操舵制御演算部41は、基礎修正操舵指令角θad_e*を演算する基礎修正操舵指令角演算部42を備えており、この基礎修正操舵指令角演算部42には操舵角θs、車速V及びACT角θtaが入力される。また、修正操舵制御演算部41は、修正操舵判定手段としての修正操舵判定部43と、直進状態判定手段としての直進状態判定部45とを備えている。この修正操舵判定部43には操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτが入力され、直進状態判定部45には操舵角θs及び操舵トルクτが入力される。
【0041】
基礎修正操舵指令角演算部42は、適正転舵角推定手段としての適正転舵角推定部51を備えており、適正転舵角推定部51には操舵角θs及び車速Vが入力される。この適正転舵角推定部51は、転舵角θtが前記基準操舵角θb(ステアリング中立位置)に対応した値となるよう、操舵角θs及び車速Vに基づいて転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定(演算)し、減算器52に出力する。また、基礎修正操舵指令角演算部42は、ACT角θtaに基づいて転舵輪6の転舵角θtを演算する転舵角演算部53を備えている。この転舵角演算部53は、操舵角θsにラック&ピニオン機構4のベースギヤ比を乗じた値、すなわちステア転舵角θtsにACT角θtaを加算することにより転舵角θtを演算し、減算器52に出力する。続いて、減算器52は、適正転舵角θt*と、転舵角演算部53により演算された転舵角θtとの偏差Δθtを演算し、F/B演算部54に出力する。そして、F/B演算部54は偏差Δθtに基づくフィードバック演算により基礎修正操舵指令角θad_e*を演算して乗算器55に出力する。
【0042】
修正操舵判定部43は、操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτに基づいて、修正操舵が行われているか否かを表す修正判定信号αを出力する。なお、修正操舵が行われている状態では修正判定信号αとして「1」が出力され、修正操舵が行われていない状態では修正判定信号αとして「0」が出力される。また、本実施形態では、修正操舵判定部43から出力された修正判定信号αは、修正判定信号補正部57に入力される。この修正判定信号補正部57には、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。
【0043】
直進状態判定部45は、操舵角θs及び操舵トルクτに基づいて、車両が直進状態であるか否かを表す直進判定信号βを出力する。なお、車両が直進状態である場合には直進判定信号βとして「1」が出力され、車両が直進状態でない場合には修正判定信号αとして「0」が出力される。また、本実施形態では、車両の直進状態とは厳密な直進(操舵角θsが「0」)ではなく、操舵角θsが小さい範囲の状態も含む。
【0044】
そして、乗算器55において、基礎修正操舵指令角演算部42により演算された基礎修正操舵指令角θad_e*に、修正判定信号補正部57から出力された補正修正判定信号γ及び直進状態判定部45から出力された直進判定信号βが乗算されることにより、修正操舵指令角θad*が演算される。つまり、修正操舵制御演算部41は、補正修正判定信号γ及び直進判定信号βがともに「1」の場合、すなわち車両が直進状態であり、修正操舵が行われている場合に、ゼロでない修正操舵指令角θad*(基礎修正操舵指令角θad_e*の値)を加算器36(図2参照)に出力する。これにより、車両が直進状態であり、修正操舵が行われている場合に、ゼロでない修正操舵指令角θad*がACT指令角θta*に重畳され、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵が抑制されるようになっている。
【0045】
以下、修正操舵判定部43(修正判定信号補正部57)、適正転舵角推定部51及び直進状態判定部45に分けて、それぞれの制御ブロックが行う処理を詳細に説明する。
(修正操舵判定)
修正操舵判定部43は、所定時間内にステアリング2がステアリング中立位置を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定する。詳述すると、修正操舵判定部43は、切り返し判定部61と、修正判定信号出力部62と、タイマ63とを備えている。この切り返し判定部61には、操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτが入力され、切り返し判定部61はこれらの値に基づいてステアリング中立位置を跨いでステアリング2が操舵されたことを表す切り返し信号Skを、修正判定信号出力部62及び後述する適正転舵角推定部51の操舵角データ蓄積部65に出力する。具体的には、切り返し判定部61は、ステアリング2の操舵方向と操舵トルクτの方向とが一致している場合において、操舵角θsの符号が変化したときに、切り返し信号Skを出力する。そして、修正判定信号出力部62は、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力された場合に、修正判定信号αとして「1」を出力する。なお、タイマ63は、修正判定信号出力部62の要求に応じて時間を計測し、その計測時間を示す計測タイマ値Tを同修正判定信号出力部62に出力する。
【0046】
また、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。具体的には、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αが「0」として入力された場合には、補正修正判定信号γを「0」として出力する。一方、修正判定信号αが「1」として入力された場合には、偏差Δθtがゼロになるまで補正修正判定信号γを「1」として出力し、偏差Δθtがゼロになると補正修正判定信号γを「0」として出力する。
【0047】
次に、切り返し判定部61による切り返し判定の処理手順を図5に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、切り返し判定部61は、センサ値として操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτを取得すると(ステップ101)、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ102:YES)には、ステップ103に移行する。なお、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一でない場合には(ステップ102:NO)には、ステップ103以降の処理を実行しない。
【0048】
そして、切り返し判定部61は、ステップ103において、操舵角θsの前回値θs_b(1つ前の周期での操舵角θs)がゼロ以下であり、且つ操舵角θsがゼロよりも大きいか否かを判定し、この条件を満たす場合には(ステップ103:YES)切り返し信号Skを出力する(ステップ104)。一方、前回値θs_bがゼロよりも大きい場合、又は操舵角θsがゼロ以下の場合には(ステップ103:NO)、前回値θs_bがゼロよりも大きく、且つ操舵角θsがゼロ以下であるか否かを判定する(ステップ105)。そして、前回値θs_bがゼロよりも大きく、且つ操舵角θsがゼロ以下である場合には(ステップ105:YES)、ステップ104に移行して切り返し信号Skを出力する。
【0049】
なお、操舵角θsの前回値θs_bがゼロ以下の場合、又操舵角θsがゼロより大きい場合には(ステップ105:NO)、ステップ104の処理を実行しない。このように、切り返し判定部61は、所定周期毎に上記ステップ101〜105の処理を実行し、切り返しが発生した場合には切り返し信号Skを出力する。
【0050】
次に、修正判定信号出力部62による修正判定の処理手順を図6に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、修正判定信号出力部62は、切り返し判定部61から切り返し信号Skが入力されたか否かを判定し(ステップ201)、切り返し信号Skが入力された場合には(ステップ201:YES)、タイマ63による計測が開始されていることを示す計測フラグFtがセットされているか否かを判定する(ステップ202)。続いて、計測フラグFtがセットされていない場合には(ステップ202:NO)、タイマ63による時間計測を開始させ(ステップ203:T=0)、計測フラグFtをセットする(ステップ204)。そして、タイマ63の時間計測開始後における切り返し信号Skの入力回数を示すカウンタNをクリアし(ステップ205:N=0)、タイマ63から計測タイマ値Tを取得する(ステップ206)。なお、計測フラグFtがセットされている場合には(ステップ202:YES)、ステップ203〜205の処理を実行せず、ステップ206に移行する。
【0051】
続いて、修正判定信号出力部62は、ステップ206において計測タイマ値Tを取得すると、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth未満である否かを判定し(ステップ:207)、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth未満である場合には(ステップ207:YES)、カウンタNをインクリメントする(ステップ208:N=N+1)。そして、カウンタNが所定カウンタNthよりも大きいか否かを判定し(ステップ209)、カウンタNが所定カウンタNth未満である場合には(ステップ209:NO)、修正判定信号αを「0」として出力する(ステップ210)。一方、カウンタNが所定カウンタNthよりも大きい場合には(ステップ209:YES)、修正判定信号αを「1」として出力し(ステップ211)、計測フラグFtをリセットし(ステップ212)、カウンタNをクリアする(ステップ213:N=0)。
【0052】
なお、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth以上である場合には(ステップ207:NO)、ステップ208〜211の処理を実行せず、修正判定信号αを「0」として出力し(ステップ214)、ステップ212に移行する。また、切り返し信号Skが入力されない場合には(ステップ201:NO)、ステップ202以降の処理を実行しない。このように、修正判定信号出力部62は、所定周期毎に上記ステップ201〜214の処理を実行し、修正判定信号αを出力する。
【0053】
次に、修正判定信号補正部57による修正判定信号αの補正の処理手順を図7に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αが「1」として入力された状態であることを示す修正フラグFαがセットされているか否かを判定し(ステップ301)、修正フラグFαがセットされていない場合には(ステップ301:NO)、修正判定信号αが「1」であるか否かを判定する(ステップ302)。続いて、修正判定信号αが「1」である場合には(ステップ302:YES)、修正フラグFαをセットし(ステップ303)、偏差Δθtがゼロであるか否かを判定する(ステップ304)。なお、修正フラグFαがセットされている場合には(ステップ301:YES)、ステップ302,303の処理を実行せず、ステップ304に移行する。
【0054】
続いて、偏差Δθtがゼロでない場合には(ステップ304:NO)、修正判定信号補正部57は、補正修正判定信号γを「1」として出力する(ステップ305)。一方、偏差Δθtがゼロである場合には(ステップ304:YES)、修正フラグFαをリセットし(ステップ306)、補正修正判定信号γを「0」として出力する(ステップ307)。なお、ステップ302において、修正判定信号αが「0」である場合には(ステップ302:NO)、ステップ303〜306の処理を実行せず、ステップ307に移行し、補正修正判定信号γを「0」として出力する。このように、修正判定信号補正部57は、所定周期毎に上記ステップ301〜307の処理を実行し、補正修正判定信号γを出力する。
【0055】
(適正転舵角演算)
図4に示すように、適正転舵角推定部51は、操舵角データ蓄積部65と、ピーク値演算部66とを備えており、操舵角データ蓄積部65には、操舵角θs及び切り返し信号Skが入力される。そして、操舵角データ蓄積部65は切り返し信号Skが入力されてから、次の切り返し信号Skが入力されるまでの間に入力される操舵角θsを、例えば図8に示すような連続値の操舵角データDsに変換する。なお、本実施形態では、図8における基準操舵角θbはゼロである。また、操舵角データ蓄積部65は、切り返し信号Skが入力されるごとに該操舵角データDsをピーク値演算部66に出力する。
【0056】
ピーク値演算部66には、車速V及び操舵角データ蓄積部65から操舵角データDsが入力される。そして、ピーク値演算部66は操舵角データDsが入力されると、該操舵角データDs基づいて操舵角のピーク値θpを演算する。具体的には、図8に示すような操舵角データDsの最大値(絶対値)をピーク値θpとして演算する。また、図4に示すように、ピーク値演算部66は、複数(本実施形態では偶数)のピーク値θpを記憶するメモリ67を備えており、ピーク値θpを演算すると、メモリ67に記憶された最も過去のピーク値θp1を削除するとともに、最新のピーク値θpnをメモリ67に記憶することで、メモリ67に記憶されるピーク値θpを更新する。そして、ピーク値演算部66は、メモリ67に記憶された複数のピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として演算し、同適正操舵角θs*及び車速Vに応じた換算係数Aに基づいて適正転舵角θt*を演算する。
【0057】
次に、適正転舵角推定部51(ピーク値演算部66)による適正転舵角演算の処理手順を図9に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、ピーク値演算部66は、操舵角データDsが入力されたか否かを判定し(ステップ401)、操舵角データDsが入力された場合には(ステップ401:YES)、該操舵角データDsに基づいてピーク値θpを演算し(ステップ402)、メモリ67内に記憶された複数のピーク値θpを更新する(ステップ403)。続いて、ピーク値演算部66は、メモリ67内に記憶された複数のピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として演算し(ステップ404)、車速Vに応じた操舵角θsと転舵角θtとの換算係数(ギヤ比)Aを演算する(ステップ405)。そして、ピーク値演算部66は、ステップ404において演算した適正操舵角θs*にステップ405において演算した換算係数Aを乗算することにより、適正転舵角θt*を演算する(ステップ406)。なお、操舵角データDsが入力されない場合には(ステップ401:NO)、ステップ402以降の処理を実行しない。このように、適正転舵角推定部51は、所定周期毎に上記ステップ401〜406の処理を実行し、適正転舵角θt*を演算する。
【0058】
(直進状態判定)
直進状態判定部45は、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であり、且つ操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτthの絶対値未満である場合に、車両が直進状態であると判定し、直進判定信号βを「1」として出力する。一方、直進状態判定部45は、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合、又は操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値以上である場合に、車両が直進状態でないと判定し、直進判定信号βを「0」として出力する。
【0059】
次に、直進状態判定部45による直進状態判定の処理手順を図10に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、直進状態判定部45は、センサ値として操舵角θs及び操舵トルクτを取得すると(ステップ501)、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定する(ステップ502)。続いて、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満である場合には(ステップ502:YES)、操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値未満であるか否かを判定する(ステップ503)。そして、直進状態判定部45は、操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値未満である場合には(ステップ503:YES)、車両が直進状態であると判定し、直進判定信号βを「1」として出力する(ステップ504)。一方、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合(ステップ502:NO)、又は操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値以上である場合には(ステップ503:NO)、車両が直進状態でないと判定し、直進判定信号βを「0」として出力する(ステップ505)。このように、直進状態判定部45は、所定周期毎に上記ステップ501〜505の処理を実行し、直進判定信号βを出力する。
【0060】
以上のように構成された車両用操舵装置1では、図11に示すように、車両の直進時において、例えば障害物を避けるために操舵した後(時刻t以降)に修正操舵が行われた場合であっても、修正操舵抑制制御の実行により、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵が抑制される。その結果、車両が速やかに所望の進行方向に向かって走行するようになり、例えば運転者が未熟者である場合であっても、同図において実線で示すように速やかに修正操舵が抑制される。なお、修正操舵抑制制御が実行されない従来の操舵角θsの変化を同図において破線で示す。
【0061】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するIFSECU8は、基準操舵角θbを跨いでステアリング2を繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定する修正操舵判定部43と、転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定する適正転舵角推定部51とを有する修正操舵制御演算部41を備えた。そして、修正操舵制御演算部41は、修正操舵判定部43により修正操舵が行われていると判定された場合に、転舵輪6の転舵角θtを適正転舵角θt*とすべく、ゼロでない修正操舵指令角θad*を出力するようにした。
【0062】
上記構成によれば、修正操舵が行われている場合には、IFSECU8により転舵輪6の転舵角θtが適正転舵角θt*となるように、ギヤ比可変アクチュエータ7の作動が制御されるため、転舵輪6の不必要な転舵が行われることを抑制し、車輪が路面から受ける走行抵抗が増大することを防いで燃費の悪化を抑制できる。また、例えば障害物を避けるために操舵した後等に修正操舵が行われる場合には、速やかに車両を所望の進行方向に向かって走行させることができ、運転者の負担を軽減できる。
【0063】
(2)修正操舵判定部43は、所定時間内にステアリング2が基準操舵角θb(ステアリング中立位置のときの操舵角)を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサ25により検出される操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向(操舵速度ωs)とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定するようにした。上記構成によれば、所定時間内にステアリング2が基準操舵角θbを所定回数以上跨いで繰り返し操舵されなければ、修正操舵が行われていると判定されないため、例えば車両が旋回している場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。また、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合、すなわち運転者により修正操舵が行われる場合に修正操舵が行われている判定される。そのため、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致しない場合、すなわち転舵輪6に対する逆入力の印加によって修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0064】
(3)基準操舵角θbをステアリング中立位置のときの操舵角とし、IFSECU8は、直進状態判定部45により直進状態であると判定された場合に、転舵輪6の転舵角θtを適正転舵角θt*とすべく、ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するようにした。上記構成によれば、路面の車線を撮像する撮像手段等の特別な構成を設けずとも、車両が直進状態において修正操舵が行われる場合には、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制でき、コストの増大を抑制できる。
【0065】
(4)適正転舵角推定部51は、基準操舵角θb(ステアリング中立位置のときの操舵角)を跨いでからステアリング2の操舵方向が変化し、再び基準操舵角θbを超えるまでの間における操舵角θsのピーク値θpの平均値に対応する転舵角θtを適正転舵角θt*とするようにした。上記構成によれば、車両の直進状態において、運転者の意志を反映したより適切な進行方向に向かって車両を走行させることができる。
【0066】
(5)ステアリング操作に基づく転舵輪6のステア転舵角θtsにモータ駆動に基づく転舵輪6のACT角θtaを上乗せすることにより操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比を可変させるギヤ比可変アクチュエータ7により、転舵輪6の舵角を変更可能な駆動手段として構成した。上記構成によれば、モータ駆動に基づく転舵輪6のACT角θtaを上乗せすることにより、転舵輪6の転舵角θtが変更されるため、運転者に転舵輪6の舵角が変更されたことを認識させることなく、車両を所望の進行方向に走行させることが可能になり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0067】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
なお、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、その修正操舵制御演算部の構成及び修正操舵抑制制御の態様についてのみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0068】
図12に示すように、本実施形態の車両用操舵装置1は、車両進行方向の路面に描かれた車線(走行路を規定する白線)を撮像する撮像手段としてのカメラ71を備え、修正操舵制御演算部72は、カメラ71により撮像された画像データDgが入力される基準操舵角演算部73を備えている。この基準操舵角演算部73は、カメラ71から入力された画像データDgを解析して車線を抽出し、該車線に沿った方向に車両を進行させる操舵角を基準操舵角θbとして演算する。なお、画像データの解析(車線の抽出)は、周知の解析方法であるため詳細な説明は省略するが、その解析方法についての詳細は、例えば特開2008−123348号公報の記述を参照されたい。
【0069】
また、修正操舵制御演算部72は、基礎修正操舵指令角θad_e*を演算する基礎修正操舵指令角演算部74と、修正操舵判定手段としての修正操舵判定部75とを備えている。この基礎修正操舵指令角演算部74には、基準操舵角演算部73により演算された基準操舵角θb及び車速Vが入力され、修正操舵判定部75には操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbが入力される。
【0070】
基礎修正操舵指令角演算部74は、適正転舵角推定手段としての適正転舵角推定部81を備えており、適正転舵角推定部81には基準操舵角θb及び車速Vが入力される。この適正転舵角推定部81は、基準操舵角θb及び車速Vに基づいて転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定(演算)し、減算器52に出力する。具体的には、適正転舵角推定部81は、基準操舵角θbに車速Vに応じた操舵角θsと転舵角θtとの換算係数Aを乗算することにより、適正転舵角θt*を演算する。続いて、減算器52は、適正転舵角θt*と、転舵角演算部53により演算された転舵角θtとの偏差Δθtを演算し、F/B演算部54に出力する。そして、F/B演算部54は偏差Δθtに基づくフィードバック演算により基礎修正操舵指令角θad_e*を演算して乗算器55に出力する。
【0071】
修正操舵判定部75は、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbに基づいて、修正操舵が行われているか否かを表す修正判定信号αを出力する。なお、修正操舵が行われている状態では修正判定信号αとして「1」が出力され、修正操舵が行われていない状態では修正判定信号αとして「0」が出力される。また、修正操舵判定部75から出力された修正判定信号αは、修正判定信号補正部57に入力される。この修正判定信号補正部57には、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、上記第1実施形態と同様に、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。
【0072】
詳述すると、修正操舵判定部75は、切り返し判定部82と、操舵角データ蓄積部83と、収束判定信号出力部84と、回数判定信号出力部85と、タイマ86とを備えている。この切り返し判定部82には、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbが入力され、切り返し判定部82はこれらの値に基づいて基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことを表す切り返し信号Skを、操舵角データ蓄積部83及び回数判定信号出力部85に出力する。なお、切り返し判定部82は、上記第1実施形態と同様の処理を実行することにより、切り返し信号Skを出力する。
【0073】
操舵角データ蓄積部83には、操舵角θs及び切り返し信号Skが入力され、操舵角データ蓄積部83は切り返し信号Skが入力されてから次の切り返し信号Skが入力されるまでの間に入力される操舵角θsを操舵角データDsに変換し(図8参照)、切り返し信号Skが入力される毎に該操舵角データDsを収束判定信号出力部84に出力する。
【0074】
収束判定信号出力部84は操舵角データDsが入力されると、該操舵角データDsに基づいて操舵角θsのピーク値θpを演算し(図8参照)、該ピーク値θpが収束しているか否かを示す収束判定信号α_pを乗算器87に出力する。具体的には、ピーク値θpがその前回値θp_b未満である場合には、ピーク値θpが収束していると判定し、収束判定信号α_pを「1」として出力する。一方、ピーク値θpがその前回値θp_b以上である場合には、ピーク値θpが収束していないと判定し、収束判定信号α_pを「0」として出力する。
【0075】
回数判定信号出力部85には、切り返し判定部82から切り返し信号Skが入力される。そして、回数判定信号出力部85は、所定時間内の切り返しの回数が、修正操舵が行われていると考えられる所定回数以上であるか否かを表す回数判定信号α_nを乗算器87に出力する。具体的には、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力された場合には、修正操舵か行われていると判定し、回数判定信号α_nとして「1」を出力する。一方、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力されない場合には、修正操舵が行われていないと判定し、回数判定信号α_nとして「0」を出力する。なお、タイマ86は、回数判定信号出力部85の要求に応じて時間を計測し、その計測時間を示す計測タイマ値Tを同回数判定信号出力部85に出力する。
【0076】
そして、乗算器87において、収束判定信号α_pと回数判定信号α_nとが乗算された値が修正判定信号αとして修正判定信号補正部57に出力される。従って、修正操舵判定部75は、収束判定信号α_p及び回数判定信号α_nがともに「1」の場合、すなわち操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵され、且つ、操舵角θsのピーク値θpが収束する場合に修正操舵が行われていると判定する。
【0077】
次に、切り返し判定部82による切り返し判定の処理手順を図13に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、切り返し判定部82は、センサ値として操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ、基準操舵角θbを取得すると(ステップ601)、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一であるか否かを判定する(ステップ602)。そして、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ602:YES)、ステップ603に移行する。なお、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ602:NO)には、ステップ603以降の処理を実行しない。
【0078】
そして、切り返し判定部82は、ステップ603において、操舵角θsの前回値θs_b(1つ前の周期での操舵角θs)が基準操舵角θb以下であり、且つ操舵角θsが基準操舵角θbよりも大きいか否かを判定し、この条件を満たす場合には(ステップ603:YES)、切り返し信号Skを出力する(ステップ604)。一方、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きい場合、又は操舵角θsが基準操舵角θb以下の場合には(ステップ603:NO)、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きく、且つ操舵角θsが基準操舵角θb以下であるか否かを判定する(ステップ605)。そして、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きく、且つ操舵角θsが基準操舵角θb以下である場合には(ステップ605:YES)、ステップ604に移行して切り返し信号Skを出力する。
【0079】
なお、前回値θs_bが基準操舵角θb以下の場合、又操舵角θsが基準操舵角θbより大きい場合には(ステップ605:NO)、ステップ604の処理を実行しない。このように、切り返し判定部82は、所定周期毎に上記ステップ601〜605の処理を実行し、切り返しが発生した場合には切り返し信号Skを出力する。
【0080】
次に、収束判定信号出力部84による収束判定の処理手順を図14に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、収束判定信号出力部84は、操舵角データDsが入力されたか否かを判定し(ステップ701)、操舵角データDsが入力された場合には(ステップ701:YES)、該操舵角データDsに基づいてピーク値θpを演算する(ステップ702)。続いて、収束判定信号出力部84は、ピーク値θpがその前回値θp_b未満であるか否かを判定し(ステップ703)、ピーク値θpがその前回値θp_b未満である場合には(ステップ703:YES)、ピーク値θpが収束していると判定し、収束判定信号α_pを「1」として出力する(ステップ704)。一方、ピーク値θpがその前回値θp_b以上である場合には(ステップ703:NO)、ピーク値θpが収束していないと判定し、収束判定信号α_pを「0」として出力する(ステップ705)。なお、収束判定信号出力部84は、操舵角データDsが入力されない場合には(ステップ701:NO)、ステップ702〜705の処理を実行しない。このように、収束判定信号出力部84は、所定周期毎に上記ステップ701〜705の処理を実行し、収束判定信号α_pを出力する。
【0081】
なお、回数判定信号出力部85による回数判定の処理手順は、上記第1実施形態の修正判定信号出力部62の修正判定の処理手順と同様であり、修正判定信号αに代えて回数判定信号α_nを出力するのみである(図6参照)ため、その詳細は省略する。また、修正判定信号補正部57による修正判定信号αの補正の処理手順は、上記第1実施形態と同様である(図7参照)ため、その詳細は省略する。
【0082】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(5)の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(6)路面に描かれた車線を撮像するカメラ71を備え、基準操舵角θbをカメラ71により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角とした。上記構成によれば、カメラ71により路面に描かれた車線に沿って車両を進行させる操舵角が基準操舵角θbとされるため、車両が直進状態である場合に限らず、例えば車両が旋回状態である場合に修正操舵が行われたときでも、その旨の判定をすることができ、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制できる。
【0083】
(7)修正操舵判定部75は、操舵角θsのピーク値θpが基準操舵角θbに収束する場合に修正操舵が行われていると判定するようにしたため、例えば蛇行するカーブ路を走行する場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0084】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、修正操舵判定部43,75から出力された修正判定信号αを修正判定信号補正部57に入力し、補正修正判定信号γを乗算器55に出力するようにしたが、これに限らず、修正判定信号αをそのまま乗算器55に出力するようにしてもよい。
【0085】
・上記第1実施形態では、切り返し判定部82は、ステアリング2の操舵方向と操舵トルクτの方向とが一致している場合において、操舵角θsの符号が変化したときに、切り返し信号Skを出力するようにした。しかし、これに限らず、操舵角θsの符号が変化したことのみをもって、切り返し信号Skを出力するようにしてもよい。同様に、上記第2実施形態において、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことのみをもって切り返し信号Skを出力するようにしてもよい。
【0086】
・上記第1実施形態では、適正転舵角推定部81は、操舵角θsのピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として推定し、該適正操舵角θs*に対応する転舵角θtを適正転舵角θt*としたが、これに限らず、基準操舵角であるステアリング中立位置のときの操舵角を適正転舵角としてもよい。
【0087】
・上記第1実施形態では、直進状態判定部45が、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定し、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合には、直進判定信号βを「0」として出力することで、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにした。しかし、これに限らず、例えば修正判定信号出力部62が、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定し、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合には、カウンタNをクリア(N=0)して、修正判定信号αを「0」として出力することで、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにしてもよい。また、その他の制御態様で、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合に、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにしてもよい。
【0088】
・上記第2実施形態では、修正操舵判定部75は、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵され、且つ、操舵角θsのピーク値θpが収束する場合に修正操舵が行われていると判定するようにした。しかし、これに限らず、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことのみをもって修正操舵が行われていると判定するようにしてもよい。また、上記第1実施形態において、操舵角θsのピーク値θpが収束することを修正操舵が行われていると判定する条件に加えてもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、EPSアクチュエータ17を所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータとして構成したが、これに限らず、所謂コラムアシスト型のEPSアクチュエータ等、その他型式のEPSアクチュエータに適用してもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、ギヤ比可変アクチュエータ7のACT角θtaを変更することにより、転舵輪6の転舵角θtを変更するようにしたが、これに限らず、EPSアクチュエータ17にて発生するアシスト力を変更することにより、ラック5を往復動させて転舵輪6の転舵角θtを変更するようにしてもよい。この場合には、ステアリング操作を補助するアシスト力を変更することにより、転舵輪6の転舵角θtが変更されるため、運転者に転舵輪6の舵角が変更されたことを認識させて、修正操舵が行われていることを報知できる。
【0091】
・上記各実施形態では、本発明をギヤ比可変アクチュエータ7のACT角θtaを変更することにより、転舵輪6の転舵角θtを変更可能な車両用操舵装置1に具体化したが、これに限らない。駆動手段としてその他のアクチュエータを用いるもの、例えば転舵輪とステアリングとが機械的に分離された所謂ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置等に具体化してもよい。
【0092】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(ア)請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記駆動手段は、前記操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により前記操舵伝達系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であることを特徴とする車両用操舵装置。上記構成によれば、ステアリング操作を補助するアシスト力を変更することにより、転舵輪の転舵角が変更されるため、運転者に転舵輪の舵角が変更されたことを認識させて、修正操舵が行われていることを報知できる。
【符号の説明】
【0093】
1…車両用操舵装置、2…ステアリング、6…転舵輪、7…ギヤ比可変アクチュエータ、8…IFSECU、17…EPSアクチュエータ、25…トルクセンサ、41,72…修正操舵制御演算部、42,74…基礎修正操舵指令角演算部、43,75…修正操舵判定部、45…直進状態判定部、51,81…適正転舵角推定部、61,82…切り返し判定部、62…修正判定信号出力部、65,83…操舵角データ蓄積部、66…ピーク値演算部、71…カメラ、73…基準操舵角演算部、84…収束判定信号出力部、85…回数判定信号出力部、α…修正判定信号、α_n…回数判定信号、α_p…収束判定信号、β…直進判定信号、γ…補正修正判定信号、τ…操舵トルク、θad*…修正操舵指令角、θad_e*…基礎修正操舵指令角、θb…基準操舵角、θp…ピーク値、θs…操舵角、θs*…適正操舵角、θt…転舵角、θt*…適正転舵角、ωs…操舵速度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置がある。このような駆動手段としては、例えばステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく転舵輪の第2の舵角(ACT角)を上乗せすることにより、ステアリングの舵角(操舵角)と転舵輪の舵角(転舵角)との間の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置がある(例えば特許文献1参照)。そして、このような伝達比可変装置を採用することで、低車速時においてはステアリング操作に対する転舵角の変更量を大として運転者の負担を軽減し、高車速時にはその変更量を小として高い操舵安定性を確保するといった、優れたステアリング特性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行時において、例えば障害物を避けるために操舵した後に、或いは運転者の癖等により、所望の車両進行方向に対応した基準操舵角(例えば直進状態であれば、ステアリング中立位置のときの操舵角)を跨いでステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われることがある。そして、このような修正操舵が行われる場合には、本来不必要な転舵輪の転舵が行われることにより車輪が路面から受ける走行抵抗が増大し、燃費が悪化する等の問題が生じる。
【0005】
しかしながら、上記伝達比可変装置を採用した構成において、修正操舵に伴う燃費の悪化を考慮した制御はなされておらず、この点においてなお改善の余地があった。なお、上記駆動手段として、例えば操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により操舵伝達系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置等の他の駆動手段を採用した構成においても、同様に修正操舵に伴う燃費の悪化を考慮した制御はなされておらず、同様に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制することができる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられモータ駆動により前記転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置において、修正操舵判定手段と、前記適正転舵角推定手段とを備え、前記修正操舵判定手段は、所定車両進行方向に対応する基準操舵角を跨いで前記ステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定し、前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角に対応した適正転舵角を推定するものであり、前記制御手段は、前記修正操舵判定手段により修正操舵が行われていると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、修正操舵が行われている場合には、制御手段により転舵輪の転舵角が適正転舵角となるように駆動手段の作動が制御されるため、転舵輪の不必要な転舵が行われることを抑制し、車輪が路面から受ける走行抵抗が増大することを防いで燃費の悪化を抑制できる。また、例えば障害物を避けるために操舵した後等に修正操舵が行われる場合には、速やかに車両を所望の進行方向に向かって走行させることができ、運転者の負担を軽減できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用操舵装置において、前記修正操舵判定手段は、所定時間内に前記ステアリングが前記基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサにより検出される操舵トルクの方向と前記ステアリングの操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定することを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、修正操舵発生手段は、所定時間内にステアリングが基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵されなければ、修正操舵が行われていると判定しないため、例えば車両が旋回している場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。また、修正操舵発生手段は、操舵トルクの方向とステアリングの操舵方向とが一致する場合、すなわち運転者により修正操舵が行われる場合に修正操舵が発生したと判定する。そのため、操舵トルクの方向とステアリングの操舵方向とが一致しない場合、すなわち転舵輪に対する逆入力の印加によって修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用操舵装置において、直進状態判定手段を備え、該直進状態判定手段は車両が直進状態であるか否かを判定するものであり、前記基準操舵角は、ステアリング中立位置のときの操舵角であり、前記制御手段は、前記直進状態判定手段により直進状態であると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、路面の車線を撮像する撮像手段等の特別な構成を設けずとも、車両が直進状態において修正操舵が行われる場合には、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制でき、コストの増大を抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用操舵装置において、前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角を前記適正転舵角とすることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角が適正転舵角とされるため、車両の直進状態において、運転者の意志を反映したより適切な進行方向に向かって車両を走行させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の車両用操舵装置において、撮像手段を備え、該撮像手段は路面に描かれた車線を撮像するものであり、前記基準操舵角は、前記撮像手段により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角であることを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、路面に描かれた車線に沿って車両を進行させる操舵角が基準操舵角とされるため、車両が直進状態である場合に限らず、例えば車両が旋回状態である場合に修正操舵が行われたときでも、その旨の判定をすることができ、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記修正操舵判定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値が該基準操舵角に収束する場合に前記修正操舵が行われていると判定することを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、操舵角のピーク値が基準操舵角に収束する場合に修正操舵が行われていると判定されるため、例えば蛇行するカーブ路を走行する場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記駆動手段は、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記転舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置であることを要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、駆動手段はモータ駆動に基づく転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより、転舵輪の転舵角が変更されるため、運転者に転舵輪の舵角が変更されたことを認識させることなく、車両を所望の進行方向に走行させることが可能になり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制することが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両用操舵装置の概略構成図。
【図2】(a),(b)伝達比可変制御の作用説明図。
【図3】車両用操舵装置の制御ブロック図。
【図4】第1実施形態の修正操舵制御演算部の制御ブロック図。
【図5】第1実施形態の切り返し判定部による切り返し判定の処理手順を示すフローチャート。
【図6】第1実施形態の修正判定信号出力部による修正判定の処理手順を示すフローチャート。
【図7】第1実施形態の修正判定信号補正部による修正判定信号の補正の処理手順を示すフローチャート。
【図8】操舵角を連続値として変換したデータを説明する説明図。
【図9】第1実施形態の適正転舵角演算部による適正転舵角演算の処理手順を示すフローチャート。
【図10】第1実施形態の直進状態判定部による直進状態判定の処理手順を示すフローチャート。
【図11】修正操舵抑制制御を実行した場合の操舵角の変化を示すグラフ。
【図12】第2実施形態の修正操舵制御演算部の制御ブロック図。
【図13】第2実施形態の切り返し判定部による切り返し判定の処理手順を示すフローチャート。
【図14】第2実施形態の収束判定信号出力部による収束判定の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明を電動パワーステアリング装置(EPS)及び伝達比可変装置を備えた車両用操舵装置に具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0024】
図1に示すように、車両用操舵装置1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラック&ピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラック&ピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により転舵輪6の舵角、すなわち転舵角が可変することにより、車両の進行方向が変更される。従って、本実施形態では、ステアリングシャフト3、ラック&ピニオン機構4、及びラック5(並びに詳述しないタイロッドやナックルアーム等)により、ステアリング2と転舵輪6とを連結する操舵伝達系が構成されている。
【0025】
車両用操舵装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する転舵輪6の伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置としてのギヤ比可変アクチュエータ7と、該ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するIFSECU8とを備えている。
【0026】
詳述すると、ステアリングシャフト3は、ステアリング2が連結された第1シャフト9とラック&ピニオン機構4に連結される第2シャフト10とからなり、ギヤ比可変アクチュエータ7は、第1シャフト9及び第2シャフト10を連結する差動機構11と、該差動機構11を駆動するモータ12とを備えている。そして、ギヤ比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に伴う第1シャフト9の回転に、モータ駆動に基づく回転を上乗せして第2シャフト10に伝達することにより、ラック&ピニオン機構4に入力される同第2シャフト10の回転を増速(又は減速)する。
【0027】
つまり、図2(a)(b)に示すように、ギヤ比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に基づく転舵輪6の舵角(ステア転舵角θts)にモータ駆動に基づく転舵輪6の舵角(ACT角θta)を上乗せすることにより、操舵角θsに対する転舵輪6の転舵角θtの比率、すなわち伝達比(ギヤ比)を可変させる。そして、制御手段としてのIFSECU8は、モータ12に対する駆動電力の供給を通じてギヤ比可変アクチュエータ7を制御し、これにより操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比(ギヤ比)を制御する(伝達比可変制御)。このように、ギヤ比可変アクチュエータ7は、モータ12の駆動により転舵角θtを変更可能な駆動手段として機能する。
【0028】
なお、この場合における「上乗せ」とは、加算する場合のみならず減算する場合をも含むものと定義し、以下同様とする。また、「操舵角θsに対する転舵角θtのギヤ比」をオーバーオールギヤ比(操舵角θs/転舵角θt)で表した場合、ステア転舵角θtsと同方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は小さくなる(転舵角θt大、図2(a)参照)。そして、逆方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は大きくなる(転舵角θt小、図2(b)参照)。そして、本実施形態では、ステア転舵角θtsが第1の舵角を構成し、ACT角θtaが第2の舵角を構成する。
【0029】
また、図1に示すように、車両用操舵装置1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置としてのEPSアクチュエータ17と、該EPSアクチュエータ17の作動を制御するEPSECU18とを備えている。
【0030】
EPSアクチュエータ17は、その駆動源であるモータ22がラック5に設けられた所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータであり、モータ22が発生するアシストトルクは、ボール螺子機構(図示略)を介してラック5に伝達される。そして、EPSECU18は、このモータ22が発生するアシストトルクを制御することにより、操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0031】
本実施形態では、上記のギヤ比可変アクチュエータ7を制御するIFSECU8、及びEPSアクチュエータ17を制御するEPSECU18は、車内ネットワーク(CAN:Controller Area Network)23を介して接続されており、該車内ネットワーク23には、車両状態量を検出するための複数のセンサが接続されている。具体的には、車内ネットワーク23には、ステアリングセンサ24、トルクセンサ25及び車速センサ26が接続されており、これら各センサにより検出される操舵角θs、操舵トルクτ及び車速Vは、車内ネットワーク23を介してIFSECU8及びEPSECU18に入力される。なお、トルクセンサ25には、周知のツインレゾルバ型が採用されており、同トルクセンサ25は、ラック&ピニオン機構4近傍の第2シャフト10(ピニオンシャフト)に設けられている。そして、IFSECU8及びEPSECU18は、車内ネットワーク23を介して相互通信を行うことにより、上記の伝達比可変制御及びパワーアシスト制御を統合的に実行する。
【0032】
次に、本実施形態の車両用操舵装置(ギヤ比可変アクチュエータ)の電気的構成及び制御態様について説明する。
図3に示すように、IFSECU8は、モータ制御信号を出力するマイコン31と、モータ制御信号に基づいてモータ12に駆動電力を供給する駆動回路32とを備えている。なお、同図に示す各制御ブロックは、IFSECU8に備えられたマイコン31が所定周期毎に実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。
【0033】
マイコン31は、ギヤ比可変制御演算部33及び微分ステア制御演算部34を備えており、ギヤ比可変制御演算部33には、操舵角θs及び車速Vが入力され、微分ステア制御演算部34には、車速V及び操舵速度ωsが入力される。そして、ギヤ比可変制御演算部33は、車速Vに応じてギヤ比(伝達比)を可変させるための制御目標成分であるギヤ比可変指令角θgr*を演算し、微分ステア制御演算部34は、操舵速度ωsに応じて車両の応答性を向上させるための制御目標成分である微分ステア指令角θls*を演算する。
【0034】
ギヤ比可変制御演算部33及び微分ステア制御演算部34により演算されたギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*は、加算器35に入力され、この加算器35において、これらギヤ比可変指令角θgr*及び微分ステア指令角θls*が重畳されることによりACT指令角θta*が演算される。そして、ACT指令角θta*は、加算器36に入力され、この加算器36において、後述する修正操舵制御演算部41により演算された修正操舵指令角θad*がさらに重畳されることにより、補正ACT指令角θta**が演算される。
【0035】
また、マイコン31には、モータ12に設けられた回転角センサ37の出力するモータ回転角θmが入力されるようになっており、加算器36において演算された補正ACT指令角θta**は、そのモータ回転角θmに基づき演算されるACT角θtaとともに、位置制御演算部38に入力される。そして、位置制御演算部38は、指令値であるACT指令角θta*と実際値であるACT角θtaとの偏差に基づくフィードバック演算により電流指令εを演算してモータ制御信号出力部39に出力する。
【0036】
そして、モータ制御信号出力部39は、電流指令εに基づき生成されたモータ制御信号を駆動回路32に出力し、そのモータ制御信号に基づく駆動電力がモータ12に供給されることにより、同モータ12、すなわちギヤ比可変アクチュエータ7の作動が制御されるようになっている。
【0037】
(修正操舵抑制制御)
次に、本実施形態の車両用操舵装置における修正操舵抑制制御の態様について説明する。
【0038】
上述のように、車両の走行時において、所定車両進行方向に対応した基準操舵角θbを跨いでステアリング2を繰り返し操舵する修正操舵が行われると、本来不必要な転舵輪6の転舵が行われることにより、例えば燃費の悪化等を招くといった問題が生じる。なお、本実施形態の基準操舵角θbは、ステアリング中立位置のときの操舵角(「θs=0」)であるように予め設定している。
【0039】
この点を踏まえ、マイコン31は、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵を抑制させるための制御目標成分である修正操舵指令角θad*を演算する修正操舵制御演算部41を備えている。修正操舵制御演算部41には、操舵角θs、車速V、操舵トルクτ及びACT角θtaが入力され、修正操舵制御演算部41はこれらの値に基づいて修正操舵指令角θad*を演算する。
【0040】
詳述すると、図4に示すように、修正操舵制御演算部41は、基礎修正操舵指令角θad_e*を演算する基礎修正操舵指令角演算部42を備えており、この基礎修正操舵指令角演算部42には操舵角θs、車速V及びACT角θtaが入力される。また、修正操舵制御演算部41は、修正操舵判定手段としての修正操舵判定部43と、直進状態判定手段としての直進状態判定部45とを備えている。この修正操舵判定部43には操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτが入力され、直進状態判定部45には操舵角θs及び操舵トルクτが入力される。
【0041】
基礎修正操舵指令角演算部42は、適正転舵角推定手段としての適正転舵角推定部51を備えており、適正転舵角推定部51には操舵角θs及び車速Vが入力される。この適正転舵角推定部51は、転舵角θtが前記基準操舵角θb(ステアリング中立位置)に対応した値となるよう、操舵角θs及び車速Vに基づいて転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定(演算)し、減算器52に出力する。また、基礎修正操舵指令角演算部42は、ACT角θtaに基づいて転舵輪6の転舵角θtを演算する転舵角演算部53を備えている。この転舵角演算部53は、操舵角θsにラック&ピニオン機構4のベースギヤ比を乗じた値、すなわちステア転舵角θtsにACT角θtaを加算することにより転舵角θtを演算し、減算器52に出力する。続いて、減算器52は、適正転舵角θt*と、転舵角演算部53により演算された転舵角θtとの偏差Δθtを演算し、F/B演算部54に出力する。そして、F/B演算部54は偏差Δθtに基づくフィードバック演算により基礎修正操舵指令角θad_e*を演算して乗算器55に出力する。
【0042】
修正操舵判定部43は、操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτに基づいて、修正操舵が行われているか否かを表す修正判定信号αを出力する。なお、修正操舵が行われている状態では修正判定信号αとして「1」が出力され、修正操舵が行われていない状態では修正判定信号αとして「0」が出力される。また、本実施形態では、修正操舵判定部43から出力された修正判定信号αは、修正判定信号補正部57に入力される。この修正判定信号補正部57には、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。
【0043】
直進状態判定部45は、操舵角θs及び操舵トルクτに基づいて、車両が直進状態であるか否かを表す直進判定信号βを出力する。なお、車両が直進状態である場合には直進判定信号βとして「1」が出力され、車両が直進状態でない場合には修正判定信号αとして「0」が出力される。また、本実施形態では、車両の直進状態とは厳密な直進(操舵角θsが「0」)ではなく、操舵角θsが小さい範囲の状態も含む。
【0044】
そして、乗算器55において、基礎修正操舵指令角演算部42により演算された基礎修正操舵指令角θad_e*に、修正判定信号補正部57から出力された補正修正判定信号γ及び直進状態判定部45から出力された直進判定信号βが乗算されることにより、修正操舵指令角θad*が演算される。つまり、修正操舵制御演算部41は、補正修正判定信号γ及び直進判定信号βがともに「1」の場合、すなわち車両が直進状態であり、修正操舵が行われている場合に、ゼロでない修正操舵指令角θad*(基礎修正操舵指令角θad_e*の値)を加算器36(図2参照)に出力する。これにより、車両が直進状態であり、修正操舵が行われている場合に、ゼロでない修正操舵指令角θad*がACT指令角θta*に重畳され、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵が抑制されるようになっている。
【0045】
以下、修正操舵判定部43(修正判定信号補正部57)、適正転舵角推定部51及び直進状態判定部45に分けて、それぞれの制御ブロックが行う処理を詳細に説明する。
(修正操舵判定)
修正操舵判定部43は、所定時間内にステアリング2がステアリング中立位置を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定する。詳述すると、修正操舵判定部43は、切り返し判定部61と、修正判定信号出力部62と、タイマ63とを備えている。この切り返し判定部61には、操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτが入力され、切り返し判定部61はこれらの値に基づいてステアリング中立位置を跨いでステアリング2が操舵されたことを表す切り返し信号Skを、修正判定信号出力部62及び後述する適正転舵角推定部51の操舵角データ蓄積部65に出力する。具体的には、切り返し判定部61は、ステアリング2の操舵方向と操舵トルクτの方向とが一致している場合において、操舵角θsの符号が変化したときに、切り返し信号Skを出力する。そして、修正判定信号出力部62は、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力された場合に、修正判定信号αとして「1」を出力する。なお、タイマ63は、修正判定信号出力部62の要求に応じて時間を計測し、その計測時間を示す計測タイマ値Tを同修正判定信号出力部62に出力する。
【0046】
また、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。具体的には、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αが「0」として入力された場合には、補正修正判定信号γを「0」として出力する。一方、修正判定信号αが「1」として入力された場合には、偏差Δθtがゼロになるまで補正修正判定信号γを「1」として出力し、偏差Δθtがゼロになると補正修正判定信号γを「0」として出力する。
【0047】
次に、切り返し判定部61による切り返し判定の処理手順を図5に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、切り返し判定部61は、センサ値として操舵角θs、操舵速度ωs及び操舵トルクτを取得すると(ステップ101)、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ102:YES)には、ステップ103に移行する。なお、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一でない場合には(ステップ102:NO)には、ステップ103以降の処理を実行しない。
【0048】
そして、切り返し判定部61は、ステップ103において、操舵角θsの前回値θs_b(1つ前の周期での操舵角θs)がゼロ以下であり、且つ操舵角θsがゼロよりも大きいか否かを判定し、この条件を満たす場合には(ステップ103:YES)切り返し信号Skを出力する(ステップ104)。一方、前回値θs_bがゼロよりも大きい場合、又は操舵角θsがゼロ以下の場合には(ステップ103:NO)、前回値θs_bがゼロよりも大きく、且つ操舵角θsがゼロ以下であるか否かを判定する(ステップ105)。そして、前回値θs_bがゼロよりも大きく、且つ操舵角θsがゼロ以下である場合には(ステップ105:YES)、ステップ104に移行して切り返し信号Skを出力する。
【0049】
なお、操舵角θsの前回値θs_bがゼロ以下の場合、又操舵角θsがゼロより大きい場合には(ステップ105:NO)、ステップ104の処理を実行しない。このように、切り返し判定部61は、所定周期毎に上記ステップ101〜105の処理を実行し、切り返しが発生した場合には切り返し信号Skを出力する。
【0050】
次に、修正判定信号出力部62による修正判定の処理手順を図6に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、修正判定信号出力部62は、切り返し判定部61から切り返し信号Skが入力されたか否かを判定し(ステップ201)、切り返し信号Skが入力された場合には(ステップ201:YES)、タイマ63による計測が開始されていることを示す計測フラグFtがセットされているか否かを判定する(ステップ202)。続いて、計測フラグFtがセットされていない場合には(ステップ202:NO)、タイマ63による時間計測を開始させ(ステップ203:T=0)、計測フラグFtをセットする(ステップ204)。そして、タイマ63の時間計測開始後における切り返し信号Skの入力回数を示すカウンタNをクリアし(ステップ205:N=0)、タイマ63から計測タイマ値Tを取得する(ステップ206)。なお、計測フラグFtがセットされている場合には(ステップ202:YES)、ステップ203〜205の処理を実行せず、ステップ206に移行する。
【0051】
続いて、修正判定信号出力部62は、ステップ206において計測タイマ値Tを取得すると、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth未満である否かを判定し(ステップ:207)、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth未満である場合には(ステップ207:YES)、カウンタNをインクリメントする(ステップ208:N=N+1)。そして、カウンタNが所定カウンタNthよりも大きいか否かを判定し(ステップ209)、カウンタNが所定カウンタNth未満である場合には(ステップ209:NO)、修正判定信号αを「0」として出力する(ステップ210)。一方、カウンタNが所定カウンタNthよりも大きい場合には(ステップ209:YES)、修正判定信号αを「1」として出力し(ステップ211)、計測フラグFtをリセットし(ステップ212)、カウンタNをクリアする(ステップ213:N=0)。
【0052】
なお、計測タイマ値Tが所定タイマ値Tth以上である場合には(ステップ207:NO)、ステップ208〜211の処理を実行せず、修正判定信号αを「0」として出力し(ステップ214)、ステップ212に移行する。また、切り返し信号Skが入力されない場合には(ステップ201:NO)、ステップ202以降の処理を実行しない。このように、修正判定信号出力部62は、所定周期毎に上記ステップ201〜214の処理を実行し、修正判定信号αを出力する。
【0053】
次に、修正判定信号補正部57による修正判定信号αの補正の処理手順を図7に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、修正判定信号補正部57は、修正判定信号αが「1」として入力された状態であることを示す修正フラグFαがセットされているか否かを判定し(ステップ301)、修正フラグFαがセットされていない場合には(ステップ301:NO)、修正判定信号αが「1」であるか否かを判定する(ステップ302)。続いて、修正判定信号αが「1」である場合には(ステップ302:YES)、修正フラグFαをセットし(ステップ303)、偏差Δθtがゼロであるか否かを判定する(ステップ304)。なお、修正フラグFαがセットされている場合には(ステップ301:YES)、ステップ302,303の処理を実行せず、ステップ304に移行する。
【0054】
続いて、偏差Δθtがゼロでない場合には(ステップ304:NO)、修正判定信号補正部57は、補正修正判定信号γを「1」として出力する(ステップ305)。一方、偏差Δθtがゼロである場合には(ステップ304:YES)、修正フラグFαをリセットし(ステップ306)、補正修正判定信号γを「0」として出力する(ステップ307)。なお、ステップ302において、修正判定信号αが「0」である場合には(ステップ302:NO)、ステップ303〜306の処理を実行せず、ステップ307に移行し、補正修正判定信号γを「0」として出力する。このように、修正判定信号補正部57は、所定周期毎に上記ステップ301〜307の処理を実行し、補正修正判定信号γを出力する。
【0055】
(適正転舵角演算)
図4に示すように、適正転舵角推定部51は、操舵角データ蓄積部65と、ピーク値演算部66とを備えており、操舵角データ蓄積部65には、操舵角θs及び切り返し信号Skが入力される。そして、操舵角データ蓄積部65は切り返し信号Skが入力されてから、次の切り返し信号Skが入力されるまでの間に入力される操舵角θsを、例えば図8に示すような連続値の操舵角データDsに変換する。なお、本実施形態では、図8における基準操舵角θbはゼロである。また、操舵角データ蓄積部65は、切り返し信号Skが入力されるごとに該操舵角データDsをピーク値演算部66に出力する。
【0056】
ピーク値演算部66には、車速V及び操舵角データ蓄積部65から操舵角データDsが入力される。そして、ピーク値演算部66は操舵角データDsが入力されると、該操舵角データDs基づいて操舵角のピーク値θpを演算する。具体的には、図8に示すような操舵角データDsの最大値(絶対値)をピーク値θpとして演算する。また、図4に示すように、ピーク値演算部66は、複数(本実施形態では偶数)のピーク値θpを記憶するメモリ67を備えており、ピーク値θpを演算すると、メモリ67に記憶された最も過去のピーク値θp1を削除するとともに、最新のピーク値θpnをメモリ67に記憶することで、メモリ67に記憶されるピーク値θpを更新する。そして、ピーク値演算部66は、メモリ67に記憶された複数のピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として演算し、同適正操舵角θs*及び車速Vに応じた換算係数Aに基づいて適正転舵角θt*を演算する。
【0057】
次に、適正転舵角推定部51(ピーク値演算部66)による適正転舵角演算の処理手順を図9に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、ピーク値演算部66は、操舵角データDsが入力されたか否かを判定し(ステップ401)、操舵角データDsが入力された場合には(ステップ401:YES)、該操舵角データDsに基づいてピーク値θpを演算し(ステップ402)、メモリ67内に記憶された複数のピーク値θpを更新する(ステップ403)。続いて、ピーク値演算部66は、メモリ67内に記憶された複数のピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として演算し(ステップ404)、車速Vに応じた操舵角θsと転舵角θtとの換算係数(ギヤ比)Aを演算する(ステップ405)。そして、ピーク値演算部66は、ステップ404において演算した適正操舵角θs*にステップ405において演算した換算係数Aを乗算することにより、適正転舵角θt*を演算する(ステップ406)。なお、操舵角データDsが入力されない場合には(ステップ401:NO)、ステップ402以降の処理を実行しない。このように、適正転舵角推定部51は、所定周期毎に上記ステップ401〜406の処理を実行し、適正転舵角θt*を演算する。
【0058】
(直進状態判定)
直進状態判定部45は、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であり、且つ操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτthの絶対値未満である場合に、車両が直進状態であると判定し、直進判定信号βを「1」として出力する。一方、直進状態判定部45は、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合、又は操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値以上である場合に、車両が直進状態でないと判定し、直進判定信号βを「0」として出力する。
【0059】
次に、直進状態判定部45による直進状態判定の処理手順を図10に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、直進状態判定部45は、センサ値として操舵角θs及び操舵トルクτを取得すると(ステップ501)、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定する(ステップ502)。続いて、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満である場合には(ステップ502:YES)、操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値未満であるか否かを判定する(ステップ503)。そして、直進状態判定部45は、操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値未満である場合には(ステップ503:YES)、車両が直進状態であると判定し、直進判定信号βを「1」として出力する(ステップ504)。一方、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合(ステップ502:NO)、又は操舵トルクτの絶対値が所定操舵トルクτの絶対値以上である場合には(ステップ503:NO)、車両が直進状態でないと判定し、直進判定信号βを「0」として出力する(ステップ505)。このように、直進状態判定部45は、所定周期毎に上記ステップ501〜505の処理を実行し、直進判定信号βを出力する。
【0060】
以上のように構成された車両用操舵装置1では、図11に示すように、車両の直進時において、例えば障害物を避けるために操舵した後(時刻t以降)に修正操舵が行われた場合であっても、修正操舵抑制制御の実行により、修正操舵に伴う不必要な転舵輪6の転舵が抑制される。その結果、車両が速やかに所望の進行方向に向かって走行するようになり、例えば運転者が未熟者である場合であっても、同図において実線で示すように速やかに修正操舵が抑制される。なお、修正操舵抑制制御が実行されない従来の操舵角θsの変化を同図において破線で示す。
【0061】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するIFSECU8は、基準操舵角θbを跨いでステアリング2を繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定する修正操舵判定部43と、転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定する適正転舵角推定部51とを有する修正操舵制御演算部41を備えた。そして、修正操舵制御演算部41は、修正操舵判定部43により修正操舵が行われていると判定された場合に、転舵輪6の転舵角θtを適正転舵角θt*とすべく、ゼロでない修正操舵指令角θad*を出力するようにした。
【0062】
上記構成によれば、修正操舵が行われている場合には、IFSECU8により転舵輪6の転舵角θtが適正転舵角θt*となるように、ギヤ比可変アクチュエータ7の作動が制御されるため、転舵輪6の不必要な転舵が行われることを抑制し、車輪が路面から受ける走行抵抗が増大することを防いで燃費の悪化を抑制できる。また、例えば障害物を避けるために操舵した後等に修正操舵が行われる場合には、速やかに車両を所望の進行方向に向かって走行させることができ、運転者の負担を軽減できる。
【0063】
(2)修正操舵判定部43は、所定時間内にステアリング2が基準操舵角θb(ステアリング中立位置のときの操舵角)を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサ25により検出される操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向(操舵速度ωs)とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定するようにした。上記構成によれば、所定時間内にステアリング2が基準操舵角θbを所定回数以上跨いで繰り返し操舵されなければ、修正操舵が行われていると判定されないため、例えば車両が旋回している場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。また、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合、すなわち運転者により修正操舵が行われる場合に修正操舵が行われている判定される。そのため、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致しない場合、すなわち転舵輪6に対する逆入力の印加によって修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0064】
(3)基準操舵角θbをステアリング中立位置のときの操舵角とし、IFSECU8は、直進状態判定部45により直進状態であると判定された場合に、転舵輪6の転舵角θtを適正転舵角θt*とすべく、ギヤ比可変アクチュエータ7の作動を制御するようにした。上記構成によれば、路面の車線を撮像する撮像手段等の特別な構成を設けずとも、車両が直進状態において修正操舵が行われる場合には、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制でき、コストの増大を抑制できる。
【0065】
(4)適正転舵角推定部51は、基準操舵角θb(ステアリング中立位置のときの操舵角)を跨いでからステアリング2の操舵方向が変化し、再び基準操舵角θbを超えるまでの間における操舵角θsのピーク値θpの平均値に対応する転舵角θtを適正転舵角θt*とするようにした。上記構成によれば、車両の直進状態において、運転者の意志を反映したより適切な進行方向に向かって車両を走行させることができる。
【0066】
(5)ステアリング操作に基づく転舵輪6のステア転舵角θtsにモータ駆動に基づく転舵輪6のACT角θtaを上乗せすることにより操舵角θsと転舵角θtとの間の伝達比を可変させるギヤ比可変アクチュエータ7により、転舵輪6の舵角を変更可能な駆動手段として構成した。上記構成によれば、モータ駆動に基づく転舵輪6のACT角θtaを上乗せすることにより、転舵輪6の転舵角θtが変更されるため、運転者に転舵輪6の舵角が変更されたことを認識させることなく、車両を所望の進行方向に走行させることが可能になり、操舵フィーリングの悪化を防止できる。
【0067】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
なお、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、その修正操舵制御演算部の構成及び修正操舵抑制制御の態様についてのみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0068】
図12に示すように、本実施形態の車両用操舵装置1は、車両進行方向の路面に描かれた車線(走行路を規定する白線)を撮像する撮像手段としてのカメラ71を備え、修正操舵制御演算部72は、カメラ71により撮像された画像データDgが入力される基準操舵角演算部73を備えている。この基準操舵角演算部73は、カメラ71から入力された画像データDgを解析して車線を抽出し、該車線に沿った方向に車両を進行させる操舵角を基準操舵角θbとして演算する。なお、画像データの解析(車線の抽出)は、周知の解析方法であるため詳細な説明は省略するが、その解析方法についての詳細は、例えば特開2008−123348号公報の記述を参照されたい。
【0069】
また、修正操舵制御演算部72は、基礎修正操舵指令角θad_e*を演算する基礎修正操舵指令角演算部74と、修正操舵判定手段としての修正操舵判定部75とを備えている。この基礎修正操舵指令角演算部74には、基準操舵角演算部73により演算された基準操舵角θb及び車速Vが入力され、修正操舵判定部75には操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbが入力される。
【0070】
基礎修正操舵指令角演算部74は、適正転舵角推定手段としての適正転舵角推定部81を備えており、適正転舵角推定部81には基準操舵角θb及び車速Vが入力される。この適正転舵角推定部81は、基準操舵角θb及び車速Vに基づいて転舵角θtの目標となる適正転舵角θt*を推定(演算)し、減算器52に出力する。具体的には、適正転舵角推定部81は、基準操舵角θbに車速Vに応じた操舵角θsと転舵角θtとの換算係数Aを乗算することにより、適正転舵角θt*を演算する。続いて、減算器52は、適正転舵角θt*と、転舵角演算部53により演算された転舵角θtとの偏差Δθtを演算し、F/B演算部54に出力する。そして、F/B演算部54は偏差Δθtに基づくフィードバック演算により基礎修正操舵指令角θad_e*を演算して乗算器55に出力する。
【0071】
修正操舵判定部75は、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbに基づいて、修正操舵が行われているか否かを表す修正判定信号αを出力する。なお、修正操舵が行われている状態では修正判定信号αとして「1」が出力され、修正操舵が行われていない状態では修正判定信号αとして「0」が出力される。また、修正操舵判定部75から出力された修正判定信号αは、修正判定信号補正部57に入力される。この修正判定信号補正部57には、修正判定信号αとともに上記偏差Δθtが入力され、修正判定信号補正部57は、上記第1実施形態と同様に、これら修正判定信号α及び偏差Δθtに基づいて「0」又は「1」の補正修正判定信号γを乗算器55に出力する。
【0072】
詳述すると、修正操舵判定部75は、切り返し判定部82と、操舵角データ蓄積部83と、収束判定信号出力部84と、回数判定信号出力部85と、タイマ86とを備えている。この切り返し判定部82には、操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ及び基準操舵角θbが入力され、切り返し判定部82はこれらの値に基づいて基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことを表す切り返し信号Skを、操舵角データ蓄積部83及び回数判定信号出力部85に出力する。なお、切り返し判定部82は、上記第1実施形態と同様の処理を実行することにより、切り返し信号Skを出力する。
【0073】
操舵角データ蓄積部83には、操舵角θs及び切り返し信号Skが入力され、操舵角データ蓄積部83は切り返し信号Skが入力されてから次の切り返し信号Skが入力されるまでの間に入力される操舵角θsを操舵角データDsに変換し(図8参照)、切り返し信号Skが入力される毎に該操舵角データDsを収束判定信号出力部84に出力する。
【0074】
収束判定信号出力部84は操舵角データDsが入力されると、該操舵角データDsに基づいて操舵角θsのピーク値θpを演算し(図8参照)、該ピーク値θpが収束しているか否かを示す収束判定信号α_pを乗算器87に出力する。具体的には、ピーク値θpがその前回値θp_b未満である場合には、ピーク値θpが収束していると判定し、収束判定信号α_pを「1」として出力する。一方、ピーク値θpがその前回値θp_b以上である場合には、ピーク値θpが収束していないと判定し、収束判定信号α_pを「0」として出力する。
【0075】
回数判定信号出力部85には、切り返し判定部82から切り返し信号Skが入力される。そして、回数判定信号出力部85は、所定時間内の切り返しの回数が、修正操舵が行われていると考えられる所定回数以上であるか否かを表す回数判定信号α_nを乗算器87に出力する。具体的には、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力された場合には、修正操舵か行われていると判定し、回数判定信号α_nとして「1」を出力する。一方、所定時間内に切り返し信号Skが所定回数以上繰り返し入力されない場合には、修正操舵が行われていないと判定し、回数判定信号α_nとして「0」を出力する。なお、タイマ86は、回数判定信号出力部85の要求に応じて時間を計測し、その計測時間を示す計測タイマ値Tを同回数判定信号出力部85に出力する。
【0076】
そして、乗算器87において、収束判定信号α_pと回数判定信号α_nとが乗算された値が修正判定信号αとして修正判定信号補正部57に出力される。従って、修正操舵判定部75は、収束判定信号α_p及び回数判定信号α_nがともに「1」の場合、すなわち操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵され、且つ、操舵角θsのピーク値θpが収束する場合に修正操舵が行われていると判定する。
【0077】
次に、切り返し判定部82による切り返し判定の処理手順を図13に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、切り返し判定部82は、センサ値として操舵角θs、操舵速度ωs、操舵トルクτ、基準操舵角θbを取得すると(ステップ601)、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一であるか否かを判定する(ステップ602)。そして、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ602:YES)、ステップ603に移行する。なお、操舵速度ωsと操舵トルクτの符号が同一である場合には(ステップ602:NO)には、ステップ603以降の処理を実行しない。
【0078】
そして、切り返し判定部82は、ステップ603において、操舵角θsの前回値θs_b(1つ前の周期での操舵角θs)が基準操舵角θb以下であり、且つ操舵角θsが基準操舵角θbよりも大きいか否かを判定し、この条件を満たす場合には(ステップ603:YES)、切り返し信号Skを出力する(ステップ604)。一方、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きい場合、又は操舵角θsが基準操舵角θb以下の場合には(ステップ603:NO)、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きく、且つ操舵角θsが基準操舵角θb以下であるか否かを判定する(ステップ605)。そして、前回値θs_bが基準操舵角θbよりも大きく、且つ操舵角θsが基準操舵角θb以下である場合には(ステップ605:YES)、ステップ604に移行して切り返し信号Skを出力する。
【0079】
なお、前回値θs_bが基準操舵角θb以下の場合、又操舵角θsが基準操舵角θbより大きい場合には(ステップ605:NO)、ステップ604の処理を実行しない。このように、切り返し判定部82は、所定周期毎に上記ステップ601〜605の処理を実行し、切り返しが発生した場合には切り返し信号Skを出力する。
【0080】
次に、収束判定信号出力部84による収束判定の処理手順を図14に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、収束判定信号出力部84は、操舵角データDsが入力されたか否かを判定し(ステップ701)、操舵角データDsが入力された場合には(ステップ701:YES)、該操舵角データDsに基づいてピーク値θpを演算する(ステップ702)。続いて、収束判定信号出力部84は、ピーク値θpがその前回値θp_b未満であるか否かを判定し(ステップ703)、ピーク値θpがその前回値θp_b未満である場合には(ステップ703:YES)、ピーク値θpが収束していると判定し、収束判定信号α_pを「1」として出力する(ステップ704)。一方、ピーク値θpがその前回値θp_b以上である場合には(ステップ703:NO)、ピーク値θpが収束していないと判定し、収束判定信号α_pを「0」として出力する(ステップ705)。なお、収束判定信号出力部84は、操舵角データDsが入力されない場合には(ステップ701:NO)、ステップ702〜705の処理を実行しない。このように、収束判定信号出力部84は、所定周期毎に上記ステップ701〜705の処理を実行し、収束判定信号α_pを出力する。
【0081】
なお、回数判定信号出力部85による回数判定の処理手順は、上記第1実施形態の修正判定信号出力部62の修正判定の処理手順と同様であり、修正判定信号αに代えて回数判定信号α_nを出力するのみである(図6参照)ため、その詳細は省略する。また、修正判定信号補正部57による修正判定信号αの補正の処理手順は、上記第1実施形態と同様である(図7参照)ため、その詳細は省略する。
【0082】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2),(5)の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏することができる。
(6)路面に描かれた車線を撮像するカメラ71を備え、基準操舵角θbをカメラ71により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角とした。上記構成によれば、カメラ71により路面に描かれた車線に沿って車両を進行させる操舵角が基準操舵角θbとされるため、車両が直進状態である場合に限らず、例えば車両が旋回状態である場合に修正操舵が行われたときでも、その旨の判定をすることができ、同修正操舵に伴う燃費の悪化を抑制できる。
【0083】
(7)修正操舵判定部75は、操舵角θsのピーク値θpが基準操舵角θbに収束する場合に修正操舵が行われていると判定するようにしたため、例えば蛇行するカーブ路を走行する場合等に、修正操舵が行われていると誤判定することを防止できる。
【0084】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記各実施形態では、修正操舵判定部43,75から出力された修正判定信号αを修正判定信号補正部57に入力し、補正修正判定信号γを乗算器55に出力するようにしたが、これに限らず、修正判定信号αをそのまま乗算器55に出力するようにしてもよい。
【0085】
・上記第1実施形態では、切り返し判定部82は、ステアリング2の操舵方向と操舵トルクτの方向とが一致している場合において、操舵角θsの符号が変化したときに、切り返し信号Skを出力するようにした。しかし、これに限らず、操舵角θsの符号が変化したことのみをもって、切り返し信号Skを出力するようにしてもよい。同様に、上記第2実施形態において、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことのみをもって切り返し信号Skを出力するようにしてもよい。
【0086】
・上記第1実施形態では、適正転舵角推定部81は、操舵角θsのピーク値θpの平均値を適正操舵角θs*として推定し、該適正操舵角θs*に対応する転舵角θtを適正転舵角θt*としたが、これに限らず、基準操舵角であるステアリング中立位置のときの操舵角を適正転舵角としてもよい。
【0087】
・上記第1実施形態では、直進状態判定部45が、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定し、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合には、直進判定信号βを「0」として出力することで、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにした。しかし、これに限らず、例えば修正判定信号出力部62が、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値未満であるか否かを判定し、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合には、カウンタNをクリア(N=0)して、修正判定信号αを「0」として出力することで、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにしてもよい。また、その他の制御態様で、操舵角θsの絶対値が所定操舵角θthの絶対値以上である場合に、修正操舵指令角θad*がゼロとなるようにしてもよい。
【0088】
・上記第2実施形態では、修正操舵判定部75は、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵され、且つ、操舵角θsのピーク値θpが収束する場合に修正操舵が行われていると判定するようにした。しかし、これに限らず、操舵トルクτの方向とステアリング2の操舵方向とが一致する場合において、所定時間内に所定回数以上、基準操舵角θbを跨いでステアリング2が操舵されたことのみをもって修正操舵が行われていると判定するようにしてもよい。また、上記第1実施形態において、操舵角θsのピーク値θpが収束することを修正操舵が行われていると判定する条件に加えてもよい。
【0089】
・上記各実施形態では、EPSアクチュエータ17を所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータとして構成したが、これに限らず、所謂コラムアシスト型のEPSアクチュエータ等、その他型式のEPSアクチュエータに適用してもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、ギヤ比可変アクチュエータ7のACT角θtaを変更することにより、転舵輪6の転舵角θtを変更するようにしたが、これに限らず、EPSアクチュエータ17にて発生するアシスト力を変更することにより、ラック5を往復動させて転舵輪6の転舵角θtを変更するようにしてもよい。この場合には、ステアリング操作を補助するアシスト力を変更することにより、転舵輪6の転舵角θtが変更されるため、運転者に転舵輪6の舵角が変更されたことを認識させて、修正操舵が行われていることを報知できる。
【0091】
・上記各実施形態では、本発明をギヤ比可変アクチュエータ7のACT角θtaを変更することにより、転舵輪6の転舵角θtを変更可能な車両用操舵装置1に具体化したが、これに限らない。駆動手段としてその他のアクチュエータを用いるもの、例えば転舵輪とステアリングとが機械的に分離された所謂ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置等に具体化してもよい。
【0092】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(ア)請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、前記駆動手段は、前記操舵伝達系の途中に設けられ、モータ駆動により前記操舵伝達系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置であることを特徴とする車両用操舵装置。上記構成によれば、ステアリング操作を補助するアシスト力を変更することにより、転舵輪の転舵角が変更されるため、運転者に転舵輪の舵角が変更されたことを認識させて、修正操舵が行われていることを報知できる。
【符号の説明】
【0093】
1…車両用操舵装置、2…ステアリング、6…転舵輪、7…ギヤ比可変アクチュエータ、8…IFSECU、17…EPSアクチュエータ、25…トルクセンサ、41,72…修正操舵制御演算部、42,74…基礎修正操舵指令角演算部、43,75…修正操舵判定部、45…直進状態判定部、51,81…適正転舵角推定部、61,82…切り返し判定部、62…修正判定信号出力部、65,83…操舵角データ蓄積部、66…ピーク値演算部、71…カメラ、73…基準操舵角演算部、84…収束判定信号出力部、85…回数判定信号出力部、α…修正判定信号、α_n…回数判定信号、α_p…収束判定信号、β…直進判定信号、γ…補正修正判定信号、τ…操舵トルク、θad*…修正操舵指令角、θad_e*…基礎修正操舵指令角、θb…基準操舵角、θp…ピーク値、θs…操舵角、θs*…適正操舵角、θt…転舵角、θt*…適正転舵角、ωs…操舵速度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられモータ駆動により前記転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置において、
修正操舵判定手段と、適正転舵角推定手段とを備え、
前記修正操舵判定手段は、所定車両進行方向に対応する基準操舵角を跨いで前記ステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定し、
前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角に対応した適正転舵角を推定するものであり、
前記制御手段は、前記修正操舵判定手段により修正操舵が行われていると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記修正操舵判定手段は、所定時間内に前記ステアリングが前記基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサにより検出される操舵トルクの方向と前記ステアリングの操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用操舵装置において、
直進状態判定手段を備え、該直進状態判定手段は車両が直進状態であるか否かを判定するものであり、
前記基準操舵角は、ステアリング中立位置のときの操舵角であり、
前記制御手段は、前記直進状態判定手段により直進状態であると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用操舵装置において、
前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角を前記適正転舵角とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用操舵装置において、
撮像手段を備え、該撮像手段は路面に描かれた車線を撮像するものであり、
前記基準操舵角は、前記撮像手段により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角であることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、
前記修正操舵判定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値が該基準操舵角に収束する場合に前記修正操舵が行われていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、
前記駆動手段は、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記転舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置であることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項1】
ステアリングと転舵輪とを連結する操舵伝達系の途中に設けられモータ駆動により前記転舵輪の転舵角を変更可能な駆動手段と、前記駆動手段の作動を制御する制御手段とを備えた車両用操舵装置において、
修正操舵判定手段と、適正転舵角推定手段とを備え、
前記修正操舵判定手段は、所定車両進行方向に対応する基準操舵角を跨いで前記ステアリングを繰り返し操舵する修正操舵が行われているか否かを判定し、
前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角に対応した適正転舵角を推定するものであり、
前記制御手段は、前記修正操舵判定手段により修正操舵が行われていると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記修正操舵判定手段は、所定時間内に前記ステアリングが前記基準操舵角を所定回数以上跨いで繰り返し操舵され、且つ、トルクセンサにより検出される操舵トルクの方向と前記ステアリングの操舵方向とが一致する場合に、修正操舵が行われていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用操舵装置において、
直進状態判定手段を備え、該直進状態判定手段は車両が直進状態であるか否かを判定するものであり、
前記基準操舵角は、ステアリング中立位置のときの操舵角であり、
前記制御手段は、前記直進状態判定手段により直進状態であると判定された場合に、前記転舵輪の転舵角を前記適正転舵角とすべく、前記駆動手段の作動を制御することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用操舵装置において、
前記適正転舵角推定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値の平均値に対応する転舵角を前記適正転舵角とすることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両用操舵装置において、
撮像手段を備え、該撮像手段は路面に描かれた車線を撮像するものであり、
前記基準操舵角は、前記撮像手段により撮像された車線に沿って車両を進行させる操舵角であることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、
前記修正操舵判定手段は、前記基準操舵角を跨いでから前記ステアリングの操舵方向が変化し、再び前記基準操舵角を超えるまでの間における操舵角のピーク値が該基準操舵角に収束する場合に前記修正操舵が行われていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用操舵装置において、
前記駆動手段は、ステアリング操作に基づく転舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記転舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記操舵角と前記転舵角との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置であることを特徴とする車両用操舵装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−143776(P2011−143776A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4745(P2010−4745)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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