説明

車両用支持構造

【課題】テーブル等の物品を支持する支持部を使用状態としたときに支持部がドアの移動とともに移動することのない車両用支持構造を提供する。
【解決手段】本構造1は、物品を支持する支持部(支持テーブル2)と、支持部をドアに係止する第1係止部4と、支持部をドア以外の内装品に係止する第2係止部7と、を備え、支持部は、第1係止部によりドアに係止されてドアに収容された収容状態とされ、第1係止部によるドアに対する係止が解除され且つ第2係止部により内装品に係止されて使用状態とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の車内に装備して着座者がテーブル等として使用する車両用支持構造に関する。更に詳しくは、テーブル等の支持部が不使用時にはドアトリムに収容されると共に、使用時にはドアトリムから取り外される車両用支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車内において着座者が使用する車両用テーブルが開発されている。この種の車両用テーブルとしては、例えば、天板がヒンジによってドアトリムに回転可能且つ着脱不能に取り付けられ、使用時には天板を回転させて着座者の前に位置させる構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−27349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した車両用テーブルでは、天板がドアトリムに対して着脱不能に取り付けられているので、テーブル使用時においても天板はドアトリムに一体的に係止されている。このため、例えば、ドアがスイング式の場合、テーブル使用時にドアを開けると天板も一緒に旋回するので、天板が着座者に当接したり、あるいは天板上に載置された物品が落下したりしてしまう。また、ドアがスライド式の場合、テーブル使用時にドアを開けると天板も一緒にスライドするので、天板が着座者、座席、または車体等に引っ掛かり、ドアの開閉ができなくなってしまう。これらの理由により車両用テーブルの普及が妨げられていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、テーブル等の物品を支持する支持部を使用状態としたときに支持部がドアの移動とともに移動することのない車両用支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.物品を支持する支持部と、
前記支持部をドアに係止する第1係止部と、
前記支持部を前記ドア以外の内装品に係止する第2係止部と、を備え、
前記支持部は、前記第1係止部により前記ドアに係止されて該ドアに収容された収容状態とされ、前記第1係止部による前記ドアに対する係止が解除され且つ前記第2係止部により前記内装品に係止されて使用状態とされることを特徴とする車両用支持構造。
2.前記第1係止部は、前記支持部を前記ドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の前後方向に移動可能に支持し、
前記第2係止部は、前記支持部を車両の前後方向に移動可能に支持する上記1.記載の車両用支持構造。
3.前記第1係止部は、前記支持部及び前記ドアのうちの一方に設けられ且つ車両の前後方向に延びる支持軸と、他方に設けられ且つ該支持軸に回転及び摺動可能に支持される孔部と、を有し、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記支持軸に対する前記孔部の摺動により前記支持部を車両の前後方向に移動させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する上記2.記載の車両用支持構造。
4.前記第1係止部は、前記支持部及び前記ドアのうちの一方に設けられる係止ピンと、他方に設けられ且つ該係止ピンに案内される案内溝と、を有し、該係止ピンは、前記案内溝の溝幅より大きな頭部を有し、該案内溝は、車両の前後方向と交差する方向に延びる第1案内溝と、該第1案内溝の一端側に連なり且つ車両の前後方向に延びる第2案内溝と、を有し、該第2案内溝の一端側には、該第2案内溝から前記頭部を脱出させる脱出部が設けられており、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記係止ピンに対する前記第2案内溝の案内により前記支持部を車両の前後方向に移動させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する上記2.記載の車両用支持構造。
5.前記第1係止部は、前記支持部を車両の前後方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第1回転支持手段と、前記支持部を車両の上下方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第2回転支持手段と、を有し、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記第2回転支持手段により前記支持部を車両の上下方向を軸心として回転させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する上記1.記載の車両用支持構造。
6.前記支持部の裏側には、車両の前後方向を軸心として自重により回転可能に支持される補強部材が設けられており、該補強部材は、前記支持部が使用状態とされたときに該支持部の裏側から吊り下げられて下端部が前記内装品に当接し、前記支持部が収容状態とされたときに該支持部とともに前記ドアに収容される上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の車両用支持構造。
7.前記係合部は、前記支持部の前端縁及び側端縁であり、
前記係合溝は、前記内装品に設けられ且つ車両の左右方向に延び且つ前記支持部の前端縁が係合する第1係合溝と、前記内装品に設けられ且つ車両の前後方向に延び且つ前記支持部の側端縁が係合する第2係合溝と、を有する上記3.乃至5.のいずれか一項に記載の車両用支持構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用支持構造によれば、支持部は、第1係止部によりドアに係止されてドアに収容された収容状態とされ、第1係止部によるドアに対する係止が解除され且つ第2係止部により内装品に係止されて使用状態とされる。このように、支持部の使用状態では、第1係止部による支持部とドアとの係止が解除されるので、ドアを開けてドアを移動させても支持部は移動しない。そのため、従来のようにドアの開放動作に伴って支持部が着座者に当接したり、ドアの開閉が困難になったりするという事態の発生を防止することができる。
また、前記第1係止部が、前記支持部を前記ドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の前後方向に移動可能に支持し、前記第2係止部が、前記支持部を車両の前後方向に移動可能に支持する場合は、収納状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させてから車両の前後方向に移動させれば、支持部は、第1係止部によるドアに対する係止が解除されるとともに第2係止部により内装品に係止されて使用状態とされる。一方、使用状態の支持部を車両の前後方向に移動させれば、支持部は、第2係止部による内装品に対する係止が解除されるとともに第1係止部によりドアに係止される。そして、この状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持部の収容状態と使用状態との変換動作を簡便に行うことができ、操作性を高めることができる。
また、前記第1係止部が、支持軸と、孔部と、を有し、第2係止部が、係合部と、係合溝と、を有する場合は、収容状態の支持部は、支持軸に対する孔部の支持により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ車両の前後方向に移動可能とされる。そして、支持軸に対する孔部の支持により、収容状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させてから車両の前後方向に移動させると、支持軸に対する孔部の支持が解除されるとともに、係合部が係合溝に係合して支持部は使用状態とされる。一方、使用状態の支持部を車両の前後方向に移動させれば、支持部は、係合部と係合溝との係合が解除されて内装品に対する係止が解除されるとともに、支持軸に対して孔部が支持される。そして、支持軸に対する孔部の支持により、この状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持部の収容状態と使用状態との変換動作をより簡便に行うことができ、操作性をより高めることができる。
また、前記第1係止部が、係止ピンと、案内溝と、を有し、該係止ピンが頭部を有し、前記案内溝が、第1案内溝と、第2案内溝と、を有し、該第2案内溝の一端側には脱出部が設けられており、前記第2係止部が、係合部と、係合溝と、を有する場合は、収容状態の支持部は、係止ピンに対する第1案内溝の案内により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ係止ピンに対する第2案内溝の案内により車両の前後方向に移動可能とされる。そして、係止ピンに対する第1及び第2案内溝の案内により、収容状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させてから車両の前後方向に移動させれば、係止ピンの頭部が脱出部に位置するとともに、係合部が係合溝に係合して支持部は使用状態とされる。一方、使用状態の支持部を車両の前後方向に移動させれば、支持部は、係合部と係合溝との係合が解除されて内装品に対する係止が解除されるとともに、係止ピンに対して第2案内溝が案内される。そして、係止ピンに対する第1案内溝の案内により、この状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持部の収容状態と使用状態との変換動作をより簡便に行うことができ、操作性をより高めることができる。
また、前記第1係止部が、第1回転支持手段と、第2回転支持手段と、を有し、前記第2係止部が、係合部と、係合溝と、を有する場合は、収容状態の支持部は、第1回転支持手段により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ第2回転支持手段により車両の上下方向を軸心として回転可能とされる。そして、収容状態の支持部を第1回転支持手段により車両の前後方向を軸心として回転させてから第2回転支持手段により車両の上下方向を軸心として回転させれば、第1回転支持手段による支持が解除されるとともに、係合部が係合溝に係合して支持部は使用状態とされる。一方、使用状態の支持部を第2回転支持手段により車両の上下方向を軸心に回転させれば、支持部は、係合部と係合溝との係合が解除されて内装品に対する係止が解除されるとともに、第1回転支持手段により支持される。そして、第1回転支持手段によって、この状態の支持部を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持部の収容状態と使用状態との変換動作をより簡便に行うことができ、操作性をより高めることができる。
また、前記支持部の裏側には補強部材が設けられている場合、補強部材は、支持部が使用状態とされたときに支持部の裏側から吊り下げられてその下端部が内装品に当接し、支持部が収容状態とされたときに支持部とともにドアに収容される。これにより、補強部材により使用状態の支持部が裏側から補強されるため、支持部の耐荷重性や安定性を高めることができる。しかも、補強部材は自重により支持部の使用状態で吊り下げられるので、支持部の収容状態と使用状態との変換動作における操作性を損ねることがない。
さらに、前記係合部が、前記支持部の前端縁及び側端縁であり、前記係合溝が、第1係合溝と、第2係合溝と、を有する場合は、使用状態の支持部は、その前端縁が第1係合溝に係合されるとともにその側端縁が第2係合溝に係合される。これにより、支持部の耐荷重性や安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】第1実施例の車両用支持構造の動作を示す概略の斜視図であり、(A)は支持テーブルをドアトリムに収容した収容状態を示し、(B)は支持テーブルを水平まで回転させた状態を示し、(C)は支持テーブルを前方に摺動させた使用状態を示す。
【図2】上記支持テーブルをドアトリムに収容した収容状態を示す分解斜視図である。
【図3】上記支持テーブルを水平まで回転させた状態を示す斜視図である。
【図4】上記支持テーブルと補強部材との関係を示す正面図であり、実線が支持テーブルの収容状態を示し、想像線が支持テーブルの使用状態を示す。
【図5】上記支持テーブルを前方に摺動させた使用状態を示す斜視図である。
【図6】上記支持テーブルと係合溝との関係を示す縦断面側面図である。
【図7】第2実施例の車両用支持構造の支持テーブルを水平まで回転させた状態を示す分解斜視図である。
【図8】上記車両用支持構造の動作を示す主要部の正面図であり、(A)は支持テーブルをドアトリムに収容した収容状態を示し、(B)は支持テーブルを水平まで回転させた状態を示し、(C)は支持テーブルを前方に摺動させた使用状態を示す。
【図9】第3実施例の車両用支持構造の支持テーブルを水平まで回転させた状態を示す分解斜視図である。
【図10】上記車両用支持構造の動作を示す概略の平面図であり、(A)は支持テーブルをドアトリムに収容した収容状態を示し、(B)は支持テーブルを水平まで回転させた状態を示し、(C)は支持テーブルを前方に回転させた使用状態を示す。
【図11】その他の形態の車両用支持構造の動作を示す概略の斜視図であり、(A)は支持テーブルをドアトリムに収容した収容状態を示し、(B)は支持テーブルを前方に回転させた使用状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
本実施形態に係る車両用支持構造は、物品を支持する支持部と、支持部をドアに係止する第1係止部と、支持部をドア以外の内装品に係止する第2係止部と、を備え、支持部は、第1係止部によりドアに係止されてドアに収容された収容状態とされ、第1係止部によるドアに対する係止が解除され且つ第2係止部により内装品に係止されて使用状態とされることを特徴とする。
【0011】
なお、上記「車両用支持構造」の用途等は特に問わないが、例えば、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両用支持構造として広く利用される。
【0012】
上記「支持部」は、物品を支持する限り、その構造、形状、支持形態等は特に問わない。この支持部としては、例えば、テーブル、袋状又は籠状の物入れ、ドリンクホルダ、地図やカード等の小物入れ、傘や釣竿等の長尺物を入れて立てかける枠等を挙げることができる。この支持部の裏側には、例えば、車両の前後方向を軸心として自重により回転可能に支持される補強部材が設けられており、この補強部材は、支持部が使用状態とされたときに支持部の裏側から吊り下げられて下端部が内装品に当接し、支持部が収容状態とされたときに支持部とともにドアに収容されることができる(例えば、図4参照)。
【0013】
上記「第1係止部」は、支持部をドアに係止する限り、その構造、形状、係止形態等は特に問わない。この第1係止部は、例えば、支持部とドアとの間に設けられていることができる。なお、上記「第1係止部によるドアに対する係止が解除され」とは、支持部を使用状態としたときにドアとの係止が解除される状態の他に、支持部を使用状態としてドアを開けてドアを移動させたときにドアとの係止が解除される状態も含む。
【0014】
上記「第2係止部」は、支持部をドア以外の内装品に係止する限り、その構造、形状、係止形態等は特に問わない。この第2係止部は、例えば、支持部とドアとの間に設けられていることができる。また、上記内装品としては、例えば、例えば、インストルメントパネル、コンソール、シート等を挙げることができる。ここで、上記支持部は、例えば、第1係止部によりドアに係止され且つ第2係止部による内装品に対する係止が解除されてドアに収容された収容状態とされることができる。なお、上記「第2係止部による内装品に対する係止が解除され」とは、支持部を収容状態としたとき又は使用状態とする途中に内装品との係止が解除される状態の他に、支持部を収容状態としてドアを開けてドアを移動させたときに内装品との係止が解除される状態も含む。
【0015】
ここで、上記実施形態の車両用支持構造としては、例えば、(1)第1係止部は、支持部をドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の前後方向に移動可能に支持し、第2係止部は、支持部を車両の前後方向に移動可能に支持する形態(例えば、図1及び図7参照)、(2)第1係止部は、支持部をドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の上下方向を軸心として回転可能に支持し、第2係止部は、車両の上下方向を軸心として回転される支持部を車両の前後方向に移動可能に支持する形態(例えば、図10参照)等を挙げることができる。
【0016】
上記(1)形態としては、例えば、以下に述べる(a)(b)形態等を挙げることができる。
(a)第1係止部は、支持部及びドアのうちの一方に設けられ且つ車両の前後方向に延びる支持軸と、他方に設けられ且つ支持軸に回転及び摺動可能に支持される孔部と、を有し、第2係止部は、支持部及び内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ支持軸に対する孔部の摺動により支持部を車両の前後方向に移動させたときに係合部が係合する係合溝と、を有する形態(例えば、図2参照)。
(b)第1係止部は、支持部及びドアのうちの一方に設けられる係止ピンと、他方に設けられ且つ係止ピンにより案内される案内溝と、を有し、係止ピンは、案内溝の溝幅より大きな頭部を有し、案内溝は、車両の前後方向と交差する方向に延びる第1案内溝と、第1案内溝の一端側に連なり且つ車両の前後方向に延びる第2案内溝と、を有し、第2案内溝の一端側には、第2案内溝から頭部を脱出させる脱出部が設けられており、第2係止部は、支持部及び内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ係止ピンに対する第2案内溝の案内により支持部を車両の前後方向に移動させたときに係合部が係合する係合溝と、を有する形態(例えば、図8参照)。
【0017】
上記(2)形態としては、例えば、(c)第1係止部は、支持部を車両の前後方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第1回転支持手段と、支持部を車両の上下方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第2回転支持手段と、を有し、第2係止部は、支持部及び内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ第2回転支持手段により支持部を車両の上下方向を軸心として回転させたときに係合部が係合する係合溝と、を有する形態(例えば、図10参照)を挙げることができる。
【0018】
上記(a)〜(c)形態の第2係止部としては、例えば、係合部は、支持部の前端縁及び側端縁であり、係合溝は、内装品に設けられ且つ車両の左右方向に延び且つ支持部の前端縁が係合する第1係合溝と、内装品に設けられ且つ車両の前後方向に延び且つ支持部の側端縁が係合する第2係合溝と、を有する形態(例えば、図5参照)を挙げることができる。この場合、支持部を使用状態とするときに、支持部の側縁端が第2係合溝に係合してから支持部の前縁端が第1係合部に係合することが好ましい。支持部の前縁端の第1係合部への挿入をより円滑にできるためである。また、支持部の側縁端の車両の前方側にはテーパ面、カット面、曲面等の案内面が形成されていることが好ましい。支持部と内装品との干渉を防止するとともに、支持部の第2係合溝への挿入をより円滑にできるためである。
【0019】
上記(b)形態の第1係止部としては、例えば、支持部及びドアのうちの一方に設けられ且つ車両の前後方向に延びる支持軸と、他方に設けられ且つ支持軸に回転及び摺動可能に支持される孔部と、支持部及びドアのうちの一方に設けられる係止ピンと、他方に設けられ且つ係止ピンにより案内される案内溝と、を有し、係止ピンは、案内溝の溝幅より大きな頭部を有し、案内溝は、車両の前後方向と交差する方向に延びる第1案内溝と、第1案内溝の一端側に連なり且つ車両の前後方向に延びる第2案内溝と、を有し、第2案内溝の一端側には、第2案内溝から頭部を脱出させる脱出部が設けられている形態(例えば、図7参照)を挙げることができる。
【0020】
さらに、上記実施形態の車両用支持構造としては、例えば、支持部の裏側には、支持部が使用状態とされたときに支持部に対して立設して支持部を支持する状態となり且つ支持部が収容状態とされたときに支持部に対して折畳まれて支持部とともにドアに収容される状態となる脚部が設けられている形態(例えば、図11(A)(B)参照)を挙げることができる。これにより、使用状態の支持部は、第2係止部により内装品に支持されるとともに脚部により床面に対して支持されるため、支持部の安定性を高めることができる。上述の形態の場合、例えば、第2係止部の係止の際の支持部の移動力をリンク機構等の動力伝達機構を介して脚部に伝達して脚部を立設及び折畳みさせたり、手動により脚部を立設及び折畳みさせたりすることができる。
【実施例】
【0021】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。尚、これらの実施例では車両用支持構造を乗用車の助手席に設けた場合について説明している。
【0022】
<第1実施例>
(1)車両用支持構造の構成
第1実施例に係る車両用支持構造1は、図1に示すように、車内において物品を支持する支持テーブル2(本発明に係る「支持部」として例示する。)と、支持テーブル2をドアトリム3に対して着脱可能に係止する第1係止部4と、支持テーブル2を内装品としてのインストルメントパネル5及びコンソール6に着脱可能に係止する第2係止部7と、を備えている。
【0023】
上記支持テーブル2は、平面長方形状に形成されており、使用時は着座者の前で水平に横長状態に位置し(図1(C)参照)、不使用時は縦長状態でドアトリム3に収容される(図1(A)参照)。また、ドアトリム3には支持テーブル2を収容する凹形状の収容部8が設けられている。
【0024】
上記第1係止部4は、図2、図3及び図5に示すように、ドアトリム3に設けられ且つ車両の前後方向の前方が開放されたヒンジ軸9(本発明に係る「支持軸」として例示する。)と、支持テーブル2に設けられ且つヒンジ軸9に回転及び摺動可能に着脱可能なヒンジブロック10(本発明に係る「孔部」として例示する。)と、を有している。このヒンジ軸9は収容部8の上部の前後に各々L型金具11によって取り付けられている。また、ヒンジブロック10は中心部にヒンジ軸9が摺動及び回転可能に挿入される支持孔12を有し、不使用時の支持テーブル2の上端縁の前後部に配置されている。このため、不使用時の支持テーブル2は、上端縁を中心に車内側上方へ回転可能となっている。
【0025】
また、不使用時における支持テーブル2の後端縁の下部にはロック用の凹部13が形成されている。一方、収容部8の凹部13の対向位置には、圧縮ばね(図示せず)で前方向に付勢されたプランジャ機構のストッパ14が設けられている。これら凹部13とストッパ14とにより、収容部8に収容された支持テーブル2をロックするロック機構が形成されている。
【0026】
上記第2係止部7は、支持テーブル2の前端縁及び側端縁(本発明に係る「係合部」として例示する。)と、インストルメントパネル5に形成され且つ支持テーブル2の前端縁が係合して支持可能な車両の左右方向に延びる第1係合溝15と、コンソール6に形成され且つ支持テーブル2の側端縁が係合して支持可能な車両の前後方向に延びる第2係合溝16と、を有している。また、使用時における支持テーブル2の右側端縁の前部には、コンソール6との干渉防止及びコンソール6の第2係合溝16への挿入を容易にするための面カット部17(図2参照)が形成されている。
【0027】
これらの第1及び第2係合溝15,16は車両の前方に向かって縦幅が大きくなるように設けられている。そして、インストルメントパネル5の第1係合溝15の上面の一部には、係止爪18が形成されている。一方、支持テーブル2の先端縁の上面の係止爪18に対向する位置には係止溝19が形成されている。そして、図6に示すように、支持テーブル2を第1係合溝15に差し入れたとき、支持テーブル2の自重で前端部が上方に持ち上げられ、これにより係止爪18と係止溝19が係合して支持テーブル2が脱落することが防止される。また、支持テーブル2を取り外す際は後端部を持ち上げて係止爪18と係止溝19との係合を解除して引き抜くようにする。
【0028】
また、上述した第1係止部4及び第2係止部7の配置は、不使用状態から使用状態に変更する際には、支持テーブル2のヒンジブロック10がドアトリム3のヒンジ軸9から離脱すると同時に支持テーブル2の側端縁がコンソール6の第2係合溝16に入り込むと共に、使用状態から不使用状態に変更する際には、支持テーブル2の側端縁がコンソール6の第2係合溝16から離脱すると同時に支持テーブル2のヒンジブロック10がドアトリム3のヒンジ軸9に嵌合するようになっている。
【0029】
一方、支持テーブル2のヒンジブロック10の近傍には、車両の前後方向を中心に自重により回転可能に支持される補強部材20が設けられている。この補強部材20は、図4に示すように、ヒンジ21により支持テーブル2の裏側に取り付けられている。また、この補強部材20は、支持テーブル2の使用時には、支持テーブル2から略垂直に吊り下げられると共に、インストルメントパネル5に当接して支持テーブル2を裏側から補強する。また、補強部材20は、支持テーブル2の不使用時には、支持テーブル2に沿って吊り下げられると共に支持テーブル2とともに収容部8に収容される。
【0030】
(2)車両用支持構造の作用
次に、上記構成の車両用支持構造1の作用について説明する。不使用時の支持テーブル2は、第1係止部4の係止によりドアトリム3の収容部8に収容されている(図1(A)及び図2参照)。このとき、ストッパ14が凹部13に係合しているので、車両の揺れ等によって支持テーブル2が収容部8から飛び出すことが防止される。
【0031】
そして、支持テーブル2を使用状態にする際には、支持テーブル2を収容部8から引き出し、ヒンジ軸9を中心に上方に向けて水平位置まで回転させる(図1(B)及び図3参照)。このとき、補強部材20が自重で鉛直に吊り下げられている。次に、水平位置の支持テーブル2を前方に摺動させる。これにより、ヒンジブロック10がヒンジ軸9から離脱すると共に、支持テーブル2の側端縁がコンソール6の第2係合溝16に係合する。このとき、支持テーブル2の面カット部17が第2係合溝16に案内される。
【0032】
その後、支持テーブル2の前方への摺動を更に進めると、支持テーブル2の前端縁がインストルメントパネル5の第1係合溝15に係合する。そして、支持テーブル2の自重で前端部が上方に持ち上げられ、係止爪18と係止溝19が係合する(図6(B)参照)。また、補強部材20が支持テーブル2から略垂直に吊り下げられると共に、インストルメントパネル5に当接して支持テーブル2を裏側から補強する(図1(C)及び図5参照)。
【0033】
使用時には支持テーブル2は、第2係止部7のみによってインストルメントパネル5及びコンソール6に支持されると共に、第1係止部4による係止が解除されてドアトリム3からは完全に離脱されている。したがって、使用状態の支持テーブル2は、ドアを開閉してもドアとともに移動することはない。
【0034】
一方、使用状態から不使用状態にする際は、支持テーブル2の後端部を持ち上げて係止爪18と係止溝19との係合を解除して引き抜く。そして、支持テーブル2を第1及び第2係合溝15,16に沿って引き抜くことによって、ヒンジブロック10がヒンジ軸9に嵌合する。そして、最後方まで嵌合させてから支持テーブル2を下方に回転させると、支持テーブル2は収容部8に収容される。このとき、補強部材20は支持テーブル2から下方に吊り下げられたまま収容部8に収容される。そして、ストッパ14を凹部13に係合させる。
【0035】
(3)実施例の効果
本実施例の車両用支持構造1によると、支持テーブル2は、第1係止部4によりドアトリム3に係止されてドアに収容された収容状態とされる一方、第1係止部4によるドアトリム3に対する係止が解除され且つ第2係止部7によりインストルメントパネル5に係止されて使用状態とされる。このように、支持テーブル2の使用状態では、第1係止部4による支持テーブル2とドアトリム3との係止が解除されるので、ドアを開けてドアを移動させても支持テーブル2は移動しない。そのため、従来のようにドアの開放動作に伴って支持テーブルが着座者に当接したり、ドアの開閉が困難になったりするという事態の発生を防止することができる。
【0036】
また、本実施例では、第1係止部4を、ヒンジ軸9とヒンジブロック10とを有して構成し、第2係止部7を、支持テーブル2の前端縁と第1係合溝15とを有して構成したので、収容状態の支持テーブル2は、ヒンジ軸9に対するヒンジブロック10の支持により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ車両の前後方向に移動可能とされる。そして、ヒンジ軸9に対するヒンジブロック10の支持により、収容状態の支持テーブル2を車両の前後方向を軸心として回転させてから車両の前後方向に移動させると、ヒンジ軸9に対するヒンジブロック10の支持が解除されるとともに、支持テーブル2の前端縁が第1係合溝15に係合して支持テーブル2は使用状態とされる。一方、使用状態の支持テーブル2を車両の前後方向に移動させれば、支持テーブル2は、支持テーブル2の前端縁と第1係合溝15との係合が解除されるとともに、ヒンジ軸9に対してヒンジブロック10が支持される。そして、ヒンジ軸9に対するヒンジブロック10の支持により、この状態の支持テーブル2を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持テーブル2の収容状態と使用状態との変換動作を簡便に行うことができ、操作性を高めることができる。
【0037】
また、本実施例では、支持テーブル2の裏側に補強部材20を設け、この補強部材20を、支持テーブル2が使用状態とされたときに支持テーブル2の裏側から吊り下げられてその下端部がインストルメントパネル5に当接し、支持テーブル2が収容状態とされたときに支持テーブル2とともにドアに収容されるようにしたので、補強部材20により使用状態の支持テーブル2が裏側から補強され、支持テーブル2の耐荷重性や安定性を高めることができる。しかも、補強部材20は自重により支持テーブル2の使用状態で吊り下げられるので、支持テーブル2の収容状態と使用状態との変換動作における操作性を損ねることがない。
【0038】
また、本実施例では、第2係止部7を、第1係合溝15と、第2係合溝16と、を有して構成したので、使用状態の支持テーブル2は、その前端縁が第1係合溝15に係合されるとともにその側端縁が第2係合溝16に係合される。これにより、支持テーブル2の耐荷重性や安定性を向上させることができる。特に、本実施例では、支持テーブル2を使用状態とするときに、支持テーブル2の側縁端が第2係合溝16に係合してから支持テーブル2の前縁端が第1係合溝15に係合するようにしたので、支持テーブル2の前縁端の第1係合溝15への挿入をより円滑にできる。さらに、本実施例では、支持テーブル2の側縁端の車両の前方側に面カット部17を形成したので、支持テーブル2とコンソール6との干渉を防止するとともに、支持テーブル2の第2係合溝16への挿入を円滑にできる。
【0039】
また、本実施例では、第1係止部4による支持テーブル2とドアトリム3との係止の解除と第2係止部7による支持テーブル2とコンソール6との係止とを連動させるとともに、第2係止部7による支持テーブル2とコンソール6との係止の解除と第1係止部4による支持テーブル2とドアトリム3との係止を連動させるようにしたので、支持テーブル2の収容状態と使用状態との変換動作を簡便に行うことができるようになる。これにより、良好な使用性及び操作性を得ることができる。
【0040】
さらに、本実施例では、支持テーブル2と第1係合溝15とを係止爪18及び係止溝19を介して係合するようにしたので、使用時の支持テーブル2の脱落を簡易な構成で防止することができる。
【0041】
<第2実施例>
(1)車両用支持構造の構成
第2実施例に係る車両用支持構造1は、第1実施例の第1係止部4を変更したものとしている。このため、第1係止部4以外の構成については符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0042】
第1係止部4は、図7及び図8に示すように、ドアトリム3側に設けられたヒンジ軸22及び係止ピン23と、支持テーブル2側に設けられたヒンジパイプ24及び案内溝25と、を有している。
【0043】
上記ヒンジ軸22は、収容部8の上端後部に配置され、前後方向を軸方向として前方が開放されている。また、係止ピン23は、ヒンジ軸22の前方に配置され、車内側に突出すると共に先端部には拡径した頭部26を有する。また、ヒンジパイプ24は不使用時における支持テーブル2の上端縁に沿って埋め込まれ、後端部は開放され、ヒンジ軸22に回転及び摺動可能に着脱可能とされている。また、案内溝25は、ヒンジパイプ24の前部に形成され、係止ピン23の頭部26より小さな溝幅とされている。
【0044】
上記案内溝25は、車両の前後方向と交差する方向に延び且つ係止ピン23によりヒンジ軸22と同軸を軸心として回転可能に案内される第1案内溝29と、この第1案内溝29の一端側に連なり且つ車両の前後方向に延び且つ係止ピン23により車両の前後方向に移動可能に案内される第2案内溝28と、を有している。この第2案内溝28の車両の後方端側には、この第2案内溝28から頭部26を脱出させる脱出部27が設けられている。
【0045】
(2)車両用支持構造の作用
次に、上記構成の車両用支持構造1の作用について説明する。支持テーブル2が収容部8に収容されているときは、ヒンジパイプ24がヒンジ軸22に嵌合すると共に係止ピン23が案内溝25に係合して第1案内溝29の先端に位置している(図8(A)参照)。そして、不使用状態の支持テーブル2を使用状態にする際には、支持テーブル2を収容部8から引き出し、ヒンジ軸22を中心に上方に向けて水平位置まで回転させる。これにより、ヒンジパイプ24がヒンジ軸22を中心に回転すると共に、第1案内溝29が係止ピン23に案内される(図8(B)参照)。
【0046】
そして、水平位置の支持テーブル2を前方に摺動させる。これにより、ヒンジパイプ24がヒンジ軸22から離脱すると共に、第2案内溝28が係止ピン23に案内されて係止ピン23の頭部26が脱出部27に位置する(図8(C)参照)。また、支持テーブル2の右側端縁がコンソール6の第2係合溝16に係合されてから、支持テーブル2の前端縁がインストルメントパネル5の第1係合溝15に係合される。
【0047】
使用時には、支持テーブル2は第2係止部7のみにより支持され、第1係止部4においては、ヒンジパイプ24はヒンジ軸22から完全に離脱すると共に、係止ピン23は案内溝25の脱出部27に位置する。このため、この時にドアを開いても係止ピン23が脱出部27から抜け出るので、支持テーブル2がドアとともに移動することはない。
なお、上記実施例において、係止ピン23の頭部26が脱出部27に位置することによって、本発明に係る「前記第1係止部により前記ドアに対する係止が解除され」た状態が構成されている。
【0048】
一方、使用状態から不使用状態にする際には、支持テーブル2を第1及び第2係合溝15,16に沿って引き抜くことにより、ヒンジパイプ24の後端がヒンジ軸22に嵌合すると同時に、係止ピン23が第2案内溝28に案内される。そして、最後方まで摺動させてから支持テーブル2を下方に回転させ、収容部8に収容させる。このとき、係止ピン23は第1案内溝29に案内される。
【0049】
(3)実施例の効果
本実施例の車両用支持構造1によると、上記第1実施例と略同様の作用・効果を奏することに加えて、第1係止部4を、頭部26を有する係止ピン23と、案内溝25と、を有して構成し、この案内溝25を、第1案内溝29と、第2案内溝28と、を有して構成し、この第2案内溝28の一端側には脱出部27を設け、第2係止部7を、支持テーブル2の前端縁と、第1係合溝15と、を有して構成したので、収容状態の支持テーブル2は、第1案内溝29に対する係止ピン23の案内により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ第2案内溝28に対する係止ピン23の案内により車両の前後方向に移動可能とされる。そして、係止ピン23に対する第1及び第2案内溝29,28の案内により、収容状態の支持テーブル2を車両の前後方向を軸心として回転させてから車両の前後方向に移動させると、係止ピン23の頭部26が脱出部27に位置するとともに、支持テーブル2の前端縁が第1係合溝15に係合して支持テーブル2は使用状態とされる。一方、使用状態の支持テーブル2を車両の前後方向に移動させれば、支持テーブル2は、支持テーブル2の前端縁と第1係合溝15との係合が解除されて内装品に対する係止が解除されるとともに、係止ピン23に対して第2案内溝28が案内される。そして、係止ピン23に対する第1案内溝29の案内により、この状態の支持テーブル2を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持テーブル2の収容状態と使用状態との変換動作を簡便に行うことができ、操作性を高めることができる。
【0050】
<第3実施例>
(1)車両用支持構造の構成
第3実施例に係る車両用支持構造1は、図9及び図10に示すように、車内において物品を支持する支持テーブル2と、支持テーブル2をドアトリム3に対して着脱可能に係止する第1係止部4と、支持テーブル2を内装品としてのインストルメントパネル5及びコンソール6に着脱可能に係止する第2係止部7と、を備えている。
【0051】
上記支持テーブル2は、平面長方形状に形成されており、使用時は着座者の前で水平に横長状態に位置し(図10(C)参照)、不使用時は縦長状態でドアトリム3に収容される(図10(A)参照)。
【0052】
上記第1係止部4は、不使用時における支持テーブル2の上縁部を車両の前後方向を中心に回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第1回転支持手段30と、支持テーブル2の上縁部の前端部を車両の上下方向を中心に回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第2回転支持手段31と、を有している。
【0053】
上記第1回転支持手段30は、ドアトリム3の収容部8の上端前部に設けられた車両の前後方向を軸方向とする前ヒンジ軸32及び上端後部に設けられた後ヒンジ軸受け33と、不使用時における支持テーブル2の上端縁前部に設けられた車両の前後方向を軸方向とする前ヒンジ軸受け34及び上端縁後部に設けられた後ヒンジ軸35と、を有している。この後ヒンジ軸受け33と後ヒンジ軸35とは側方に向けて着脱可能とされ、装着時には後ヒンジ軸35が回転可能に支持される。また、この前ヒンジ軸32と前ヒンジ軸受け34とは常に係合している。このため、不使用時の支持テーブル2は、上端縁を中心に車内側上方へ回転可能となっている。
【0054】
上記第2回転支持手段31は、ドアトリム3の収容部8の上端前部に設けられた車両の上下方向を軸方向とする縦ヒンジ軸受け36と、前ヒンジ軸32と一体化された車両の上下方向を軸方向とする縦ヒンジ軸37と、を有している。この縦ヒンジ軸受け36と縦ヒンジ軸37とは側方に向けて着脱可能とされ、装着時には縦ヒンジ軸37が後方から側方までの90度に亘って回転可能に支持される。このため、第1回転支持手段30により水平にまで回転された支持テーブル2は、後ヒンジ軸35が後ヒンジ軸受け33から外れることで縦ヒンジ軸37を中心に前方に回転可能になっている。
【0055】
上記第2係止部7は、図10(C)に示すように、支持テーブル2の前端縁及び側端縁(本発明に係る「係合部」として例示する。)と、インストルメントパネル5に形成され且つ支持テーブル2の前端縁が係合して支持可能な車両の左右方向に延びる第1係合溝15と、コンソール6に形成され且つ支持テーブル2の側端縁が係合して支持可能な車両の前後方向に延びる第2係合溝16と、を有している。また、コンソール6の第2係合溝16の後端部には、支持テーブル2の後ヒンジ軸35が着脱可能な固定フック38が設けられている。
【0056】
(3)車両用支持構造の作用
次に、上記構成の車両用支持構造1の作用について説明する。不使用時の支持テーブル2はドアトリム3の収容部8に収容され、前ヒンジ軸32及び前ヒンジ軸受け34と後ヒンジ軸35及び後ヒンジ軸受け33とにより吊り下げられている(図10(A)参照)。
【0057】
そして、使用状態にする際には、支持テーブル2を収容部8から引き出し、前ヒンジ軸32及び後ヒンジ軸35を中心に上方に向けて水平位置まで回転させる(図10(B)参照)。その後、後ヒンジ軸35を後ヒンジ軸受け33から外し、水平位置の支持テーブル2を縦ヒンジ軸37を中心に前方に回転させる(図10(C)の想像線参照)。
【0058】
すると、支持テーブル2の右側端縁がコンソール6の第2係合溝16に係合してから、支持テーブル2の前端縁がインストルメントパネル5の第1係合溝15に係合する。そして、支持テーブル2の後ヒンジ軸35がコンソール6の固定フック38に係合してロックされる(図10(C)の実線参照)。
【0059】
使用時には、支持テーブル2は第2係止部7のみにより支持され、第1係止部4においては、後ヒンジ軸35は後ヒンジ軸受け33から完全に離脱すると共に、縦ヒンジ軸37は縦ヒンジ軸受け36から側方に離脱可能となっている。このため、この時にドアを開いても縦ヒンジ軸37が縦ヒンジ軸受け36から外されるので、支持テーブル2が移動することはない。
なお、上記実施例において、縦ヒンジ軸37が縦ヒンジ軸受け36から側方に離脱可能とされることによって、本発明に係る「前記第1係止部により前記ドアに対する係止が解除され」た状態が構成されている。
【0060】
一方、使用状態から不使用状態にする際には、後ヒンジ軸35を固定フック38から外して、支持テーブル2を縦ヒンジ軸37を中心に後方に回転させる。そして、後ヒンジ軸35を後ヒンジ軸受け33に係合し、そのまま前ヒンジ軸32及び後ヒンジ軸35を中心に支持テーブル2を下方に回転させ、収容部8に収容させる。
【0061】
(3)実施例の効果
本実施例の車両用支持構造1によると、上記第1実施例と略同様の作用・効果を奏し得ることに加えて、第1係止部4を、第1回転支持手段30と、第2回転支持手段31と、を有して構成し、第2係止部7を、支持テーブル2の前端縁と、第1係合溝15と、を有して構成したので、収容状態の支持テーブル2は、第1回転支持手段30により車両の前後方向を軸心として回転可能とされ且つ第2回転支持手段31により車両の上下方向を軸心として回転可能とされる。そして、収容状態の支持テーブル2を第1回転支持手段30により車両の前後方向を軸心として回転させてから第2回転支持手段31により車両の上下方向を軸心として回転させれば、第1回転支持手段30による支持が解除されるとともに、支持テーブル2の前端縁が第1係合溝15に係合して支持テーブル2は使用状態とされる。一方、使用状態の支持テーブル2を第2回転支持手段31により車両の上下方向を軸心に回転させれば、支持テーブル2は、支持テーブル2の前端縁と第1係合溝15との係合が解除されて内装品に対する係止が解除されるとともに、第1回転支持手段30により支持される。そして、第1回転支持手段30によって、この状態の支持テーブル2を車両の前後方向を軸心として回転させれば収容状態とされる。これにより、支持テーブル2の収容状態と使用状態との変換動作を簡便に行うことができ、操作性を高めることができる。特に、本実施例では、直交する2軸を中心とする回転動作により支持テーブル2の使用状態と不使用状態とを変更することができるので、着座者の使用時に支持テーブル2を横長形状とした場合に、支持テーブル2をドアに対して横長の向きで収容することができるようになる。このため、ドアにおける収容部8の収容の制約が小さくなり、収容性を高めることができる。
【0062】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、支持テーブル2の裏側に1枚の補強部材20を設けたが、これに限定されず、補強部材20を2枚以上設けてもよい。あるいは、補強部材20は設けなくてもよい。
【0063】
また、上記実施例では、車両用支持構造1を乗用車の助手席に設けたが、これに限定されず、例えば、後部座席に設けたり、運転席に設けたりしてもよい。後部座席に設ける場合には、内装品として前部座席やセンターコンソール等を適用することができる。具体的には、図11(A)(B)に示すように、センターピラー51及びセンターコンソール52に形成された係合溝53に支持テーブル2の前端側に設けた係合突起54を係合させて支持テーブル2を使用状態とすることができる。なお、この支持テーブルは、第1及び第2実施例と同様の構成の第1係止部4によりドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の前後方向に移動可能に支持されている。
【0064】
さらに、上記実施例において、例えば、図11(A)(B)に示すように、支持テーブル2の裏面側に、支持テーブル2が使用状態とされたときに立設して支持テーブル2を支持する状態となり且つ支持テーブル2が収容状態とされたときに折畳まれて支持テーブル2とともにドアに収容される状態となる脚部55を設けるようにしてもよい。
【0065】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0066】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
車両に搭載して使用する車両用支持構造に関する技術として広く利用される。特に、テーブル等の支持部が、不使用時にはドアトリムに収容されると共に、使用時にはドアトリムから取り外すことができる車両用支持構造として好適に利用される。
【符号の説明】
【0068】
1;車両用支持構造、2;支持テーブル、3;ドアトリム、4;第1係止部、5;インストルメントパネル、6;コンソール、7;第2係止部、9;ヒンジ軸、10;ヒンジブロック、15;第1係合溝、16;第2係合溝、20;補強部材、22;ヒンジ軸、23;係止ピン、24;ヒンジパイプ、25;案内溝、26;係止ピンの頭部、27;脱出部、28;第2案内溝、29;第1案内溝、30;第1回転支持手段、31;第2回転支持手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を支持する支持部と、
前記支持部をドアに係止する第1係止部と、
前記支持部を前記ドア以外の内装品に係止する第2係止部と、を備え、
前記支持部は、前記第1係止部により前記ドアに係止されて該ドアに収容された収容状態とされ、前記第1係止部による前記ドアに対する係止が解除され且つ前記第2係止部により前記内装品に係止されて使用状態とされることを特徴とする車両用支持構造。
【請求項2】
前記第1係止部は、前記支持部を前記ドアに対して車両の前後方向を軸心として回転可能に且つ車両の前後方向に移動可能に支持し、
前記第2係止部は、前記支持部を車両の前後方向に移動可能に支持する請求項1記載の車両用支持構造。
【請求項3】
前記第1係止部は、前記支持部及び前記ドアのうちの一方に設けられ且つ車両の前後方向に延びる支持軸と、他方に設けられ且つ該支持軸に回転及び摺動可能に支持される孔部と、を有し、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記支持軸に対する前記孔部の摺動により前記支持部を車両の前後方向に移動させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する請求項2記載の車両用支持構造。
【請求項4】
前記第1係止部は、前記支持部及び前記ドアのうちの一方に設けられる係止ピンと、他方に設けられ且つ該係止ピンに案内される案内溝と、を有し、該係止ピンは、前記案内溝の溝幅より大きな頭部を有し、該案内溝は、車両の前後方向と交差する方向に延びる第1案内溝と、該第1案内溝の一端側に連なり且つ車両の前後方向に延びる第2案内溝と、を有し、該第2案内溝の一端側には、該第2案内溝から前記頭部を脱出させる脱出部が設けられており、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記係止ピンに対する前記第2案内溝の案内により前記支持部を車両の前後方向に移動させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する請求項2記載の車両用支持構造。
【請求項5】
前記第1係止部は、前記支持部を車両の前後方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第1回転支持手段と、前記支持部を車両の上下方向を軸心として回転可能に支持し且つその支持を解除可能な第2回転支持手段と、を有し、
前記第2係止部は、前記支持部及び前記内装品のうちの一方に設けられる係合部と、他方に設けられ且つ前記第2回転支持手段により前記支持部を車両の上下方向を軸心として回転させたときに前記係合部が係合する係合溝と、を有する請求項1記載の車両用支持構造。
【請求項6】
前記支持部の裏側には、車両の前後方向を軸心として自重により回転可能に支持される補強部材が設けられており、該補強部材は、前記支持部が使用状態とされたときに該支持部の裏側から吊り下げられて下端部が前記内装品に当接し、前記支持部が収容状態とされたときに該支持部とともに前記ドアに収容される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用支持構造。
【請求項7】
前記係合部は、前記支持部の前端縁及び側端縁であり、
前記係合溝は、前記内装品に設けられ且つ車両の左右方向に延び且つ前記支持部の前端縁が係合する第1係合溝と、前記内装品に設けられ且つ車両の前後方向に延び且つ前記支持部の側端縁が係合する第2係合溝と、を有する請求項3乃至5のいずれか一項に記載の車両用支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−79356(P2011−79356A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230999(P2009−230999)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】