車両用標識灯
【課題】 半導体発光素子を用い、使用環境の温度によって発光特性が変動することが無く、また半導体発光素子の発光層の温度上昇を抑える工夫も不要な、車両用標識灯を提供する。
【解決手段】 380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュール6を有することを特徴とし、蛍光体としては、下記一般式で表されるものが好ましい。
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【解決手段】 380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュール6を有することを特徴とし、蛍光体としては、下記一般式で表されるものが好ましい。
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用標識灯に関し、詳細には、半導体発光素子を光源とし、アンバー色の光を発する発光モジュールを有し、ターンシグナルランプ等に用いられる車両用標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用標識灯は、テール&ストップの赤色、ターンシグナルのアンバー、及びバックライトの白色、の3色の発光が使用されている。
これらの車両用標識灯は、従来、白熱電球を光源として各色のカバー(レンズ)を取り付けその機能を確保していた。
近年、省スペース・低消費電力・意匠性の向上等の目的で、各色で発光するLED等の半導体発光素子を光源とし、無色透明カバーで構成され、有色カバーによる透過率低減のない製品が構成されている。例えば、特許文献1及び2には、ターンシグナルランプとしてLED素子自体が橙色または黄色の光を発するものを使用することが記載されている。なお、LED素子自体が橙色または黄色の光を発するものとしては、AlInGaPで構成されるものが知られている。
【0003】
一方、車載灯具は厳しい環境下でその性能を発揮しなくてはならない。特に雰囲気温度としては、氷点下〜80℃の環境下での動作が要求され、実際に車載灯具としてLED素子を使用した場合、該LED素子の発光層の温度は氷点下〜100℃に変動する。
しかしながら、AlInGaPで構成されるアンバー色で発光するLED素子は、温度上昇に伴い、発光色度の変動及び光束の低下が大きく、車載用光源として十分な性能が得られていなかった。
AlInGaPで構成されるLED素子は、発光層の温度が0℃から100℃の状況で点灯すると、色度がドミナント波長で10nm以上変動し、車両用灯具の規格範囲を逸脱する。また、光束も雰囲気温度60℃以上になると、室温(25℃)の1/5程度で著しく視認性が低下し、やはり車両用灯具の規格範囲を逸脱するものであった。
したがって、AlInGaPで構成されるアンバー色光を発するLED素子を車両用灯具に採用するには、LED素子の発光層の温度上昇がないように慎重な検討が必要であり、灯具設計の自由度が狭かった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−96808号公報
【特許文献2】特開2000−149615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、半導体発光素子を用い、使用環境の温度によって発光特性が変動することが無く、また半導体発光素子の発光層の温度上昇を抑える工夫も不要な、車両用標識灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することによって、上記目的が達成され、本発明を成すに至った。
【0007】
(1)380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを有することを特徴とする車両用標識灯。
(2)前記蛍光体が下記一般式で表されることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
【0008】
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
【0009】
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【0010】
(3)前記一般式のMeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることを特徴とする前記(2)記載の車両用標識灯。
(4)半導体発光素子が発する光が405nm以下の波長であることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
(5)前記半導体発光素子が発する光が、ほぼ全て、前記蛍光体の励起光として使われることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
(6)透明の前面カバーを有することを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
【0011】
車両用標識灯のターンシグナルに用いるアンバー色は、規格上に定められた狭い色度範囲で発光しなければならない。該規格上に定められた色度範囲とは、詳細には、図11に示す色度座標上の網掛部(y≧0.39、y≧0.79−0.67x、y≧x−0.120に相当するものである。
アンバー色の波長域で発光する4元化合物半導体AlInGaP系(比較例)は、図8および図10に示すように発光層の温度上昇により、色度変動、光束低下が激しく起こる。そこで、アンバー色発光のLED素子を車両用標識灯に使用するためには、60℃以上にLED素子発光層の温度が上昇しないように、灯具容積の確保・LED投入電力の制限等の検討が必要であり、灯具設計の自由度を抑制するものであった。
【0012】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、殆ど視感度がない380〜420nmの光を良好な発光効率で発するInGaN系LEDチップと酸窒化物由来のα−サイアロンを母体としEu2+を発光中心にした蛍光体とを組み合わせることによって、使用環境の温度によって発光特性が変動することなくアンバー色を発することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用標識灯は、熱的に安定な発光特性を示す近紫外から短波長可視光(380〜420nm)の光を発する半導体発光素子を用いてアンバー色の発光を実現でき、また、熱によって半導体発光素子の発光スペクトルが変化しても、蛍光体が発する光のスペクトルは変化が無いので、熱的に色変化の少ないものとすることができる。また、半導体発光素子が発する光を450nm以下とする、または、発光素子が発する光がほぼ全て(好ましくは80%以上)蛍光体の励起光として使うことにより、発光素子からの発光と、蛍光体からの発光が混色せず、適切なアンバー色の光を得ることができる。また、透明の前面カバーを有することにより、光の利用効率をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の車両用標識灯は、380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを用いることを特徴とする。
本発明の車両用標識灯に用いるアンバー色光を発する蛍光体としては、380〜420nmの光で励起し、ピーク波長が580〜620nmの蛍光を発する、酸窒化物由来のα−サイアロンを母体としEu2+を発光中心にしたものであり、より詳細には、下記一般式で表されるものである。
【0015】
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
【0016】
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【0017】
また、上記一般式において、MeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の車両用標識灯に用いる半導体発光素子は、380〜420nm、好ましくは405nm以下の光を発するものであれば、特に限定されないが、InGaN系のLED素子が好ましい。
【0019】
本発明の車両用標識灯に用いられる発光モジュールは、前記の半導体発光素子とアンバー色発光蛍光体とから構成されるものであるが、より具体的には、該半導体発光素子上に該蛍光体の層を設ける構成が挙げられる。
上記半導体発光素子上に蛍光体層を設ける形態としては、半導体発光素子の表面を被覆するコーティング部材に蛍光体を混合する形態、モールド部材に蛍光体を混合する形態、或いはモールド部材に被せる被覆体に蛍光体を混合する形態、更には半導体発光素子ランプの投光側前方に蛍光体を混合した透光可能なプレートを配置する形態等が挙げられる。
【0020】
また、半導体発光素子上のモールド部材に、前述の蛍光体の少なくとも1種以上が添加されていても良い。更に、前述の蛍光体の少なくても1種以上からなる蛍光体層を、発光モジュールの外側に設けても良い。発光モジュールの外側に設ける形態としては、発光モジュールのモールド部材の外側表面に蛍光体を層状に塗布する形態、或いは蛍光体をゴム、樹脂、エラストマー等に分散させた成形体(例えば、キャップ状)を作製し、これを半導体発光素子に被覆する形態、又は前記成形体を平板状に加工し、これを半導体発光素子の前方に配置する形態等が挙げられる。
【0021】
本発明の車両用標識灯に用いる発光モジュールの具体的な形態の1例を図3に示す。図3に示す発光モジュール6は、61のチップはInGaN活性層を有する中心波長が405nm付近の短波長可視光LEDチップであり、この短波長可視光LEDチップ61は接着剤層を介してリードフレーム62に固定されている。短波長可視光LEDチップ61とリードフレーム62は金線ワイヤー63により電気的に接続されている。前記短波長可視光LEDチップ61は、バインダー樹脂にアンバー色に発光するEu2+を賦活剤としたCa−αサイアロン蛍光体粉末を混練した蛍光体ペースト64で覆われている。この蛍光体ペースト64のバインダー樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、金属アルコキシド、ポリシラザン、アクリル樹脂等が挙げられる。また、この発光モジュールは、この蛍光体ペースト64の周囲を覆う封止材(モールド)65を有している。封止材65には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、低融点ガラス等の可視光に対し透明な材料が挙げられる。
なお、発光モジュール用の形態はこの発光モジュール構造に限定されるものではなく、例えば短波長可視光LEDチップ61の発光面に蛍光体層としてコーティングする等など、種々の形態がある。
【0022】
本発明の車両用標識灯の形状の具体例を、図1および図2を用いて以下に説明する。
図1および図2は、本発明の車両用標識灯の形状の1例を示すものであるが、自動車後部の左コーナ部に取り付けられるもので、その全体形状が車体幅方向中央部寄りから車体左側方にかけて水平方向に回り込んだ形状に形成されている。ランプボディ1の前面開口部には、自動車外板の三次面に倣った三次元形状に形成された前面レンズ(アウターレンズ)2が組み付け一体化されて、ランプボディ1と前面レンズ2とで灯室が画成されている。なお、前面レンズ2は、その周縁部において、ランプボディ1の前面開口部周縁部1aに熱溶着等によって固定されている。
【0023】
そして、灯室内には、図2に示すように前面レンズ2にほぼ沿った形状のリフレクタ8が収容されており、リフレクタ8のエクステンション部83は、前面レンズ2と同様な三次面形状に形成されている。また、リフレクタ8は、ベース4に組み立てられた各発光モジュール6に対向する回転放物面形状の複数のリフレクタ部84を有している。
【0024】
また、リフレクタ8は、ベース4と同じ材質の樹脂を用いた樹脂成形によって一体に成形されるとともに、その前面側は、アルミニウム蒸着膜等が形成されて反射面として構成されている。特に、リフレクタタ部84の反射面は、微小凹凸が設けられたシボ加工処理反射面で構成されて、発光モジュール6の発光が拡散反射される。アウターレンズ2は無色透明で、発光モジュール6のアンバー色は、アウターレンズ2を透過する。
【0025】
また、リフレクタ8は、ランプボディ1の内側にすっぽりと収まり、前面レンズ2をランプボディ1に溶着することで、前面レンズ2とランプボディ1間にがたなく固定される。
【0026】
また、リフクレタ8の各リフレクタ部84の背面には開口部84aが設けられ、この開口部84a内には、ベース4に支持された発光モジュール6のモールドが臨んで配置されて、発光モジュール6のモールドがリフクレタ8(リフレクタ部84)で囲繞された形態に保持されている。
【0027】
ベース4に支持された発光モジュール6のモールドがリフクレタ8の開口部84aから突出するとともに、ベース4の周縁部がリフレクタ8の背面側に当接して、リフレクタ8とベース4が上下左右前後方向に互いに位置決めされてがたなく固定一体化される。
【0028】
また、ランプボディ1に組み付けられたリフクレタ8の右端部寄りの背後には、ベース4に支持された制御回路基板9が配置されているが、リフレクタ8の制御回路基板9に対応する位置には、車体後方から前面レンズ2を介して入射した光を入射方向に向けて反射する再帰反射面で構成されたリフレックスリフレクター100が設けられている。
【0029】
また、リフクレタ8の左側端部寄りには、前面レンズ2を介して入射した車体側方からの光を入射方向に向けて反射する再帰反射面で構成されたサイドリフレックスリフレクター102が設けられている。
ベース4は、三次元方向に階段配置した複数の段部41で構成されており、各段部41はほぼ前面レンズ2の三次面形状に沿って配列され、ランプボディ1に固定されている。ベース4の右側縁部の前面側には、発光モジュール6の発光を制御するための電気回路を構成する制御回路基板9が取着されている。
【0030】
段部41は車体の上下方向及び左右方向に向けて階段状に形成され、各段部41は、これらを包絡したときに前面レンズ2にほぼ平行する三次曲面を構成するように樹脂成形によって一体に形成されている。
発光モジュール6の発光は、リフレクタ8のリフレクタ部84によって集光され、レンズ2を通してランプの前方に出射される。
【0031】
そして、このランプの組み付け手順としては、まず、リフレクタ8に光源ユニット3を組み付け一体化する。このリフレクタ・光源ユニット組み付け体をランプボディ内に収容し、前面レンズ2をランプボディに溶着一体化した後、ランプボディの背面側からランプボディ背面壁と光源ユニット3のベース4とを固定する。なお、前面レンズ2のランプボディへの溶着と、ランプボディ背面壁とベース4との固定とは、どちらが先でもよい。
【0032】
また、ベース4に一体的に取り付けられたリフレクタ8は、ベース4と同じ材質で形成されていてもよく、その場合、発光モジュール6の発光によりベース4及びリフレクタ8が加熱された場合でも、ベース4とリフレクタ8は等しく熱膨張されるため、ベース4に対してリフレク8の相対位置変化が生じることがなく、リフレクタ部84における発光モジュール6の光軸位置の位置ずれが防止できる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔アンバー色発光蛍光体(Ca0.75Si9.375O0.875N15.125:Eu0.083)の調整〕
アンバー色に発光するEu2+を付活剤としたCa−αサイアロン蛍光体は、次のように調整した。
平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムとを、各々68.96重量%、16.92重量%、11.81重量%、2.3重量%となるように秤量し、n−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。ロータリーエバポレータによりn−ヘキサンを除去し、混合粉末の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後に500μmのふるいを通すことにより流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製の坩堝に自然落下させて入れ、この坩堝を黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1600℃まで昇温し、1600℃で8時間保持した。焼成後、得られたものの一部をメノウ乳鉢に移して粉砕し、X線回析パターンを調べた。その結果、αサイアロンが生成していることがわかった。この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製のポットとボールを用いたボールミル中で、n−ヘキサン中で2時間粉砕を施した。粒度分布を測定したところ、平均粒径は4.5μmであった。この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、黄色に発光することを確認した。
【0034】
このようにして得られた酸窒化物蛍光体は、図4に示すような発光スペクトルを有しておりアンバー色を示した。また、励起スペクトルおよび吸収を示す反射率をそれぞれ図5および図6に示す。これより、得られた蛍光体は、395nm〜435nmに励起のピークを持っていることがわかった。
【0035】
〔アンバー色LED発光モジュールの作製〕
半導体発光素子として、発光波長が395nm、外部量子効率が18%のInGaN/GaN系LEDチップを、アンバー色発光蛍光体として前記の調製をしたものを用いて、図3に示す形態の発光モジュールを作製した。
蛍光体ペースト64は、バインダー樹脂に前記の調製したアンバー色発光蛍光体粉末を混練したもので、前記短波長可視光LEDチップ61を覆うものである。この蛍光体ペースト64におけるバインダー樹脂としては、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン(株)製JCR−6125)を用い、前記蛍光体と1:1で混合した。なお、蛍光体ペースト64は、カップ状に賦型したリードフレーム内に固定した前記LEDチップ61を覆うようにポッティングし、150℃・1時間で硬化させ前記LEDチップ61上に前記蛍光体を固定化した。さらに、この蛍光体ペースト64の周囲を脂環タイプのエポキシ樹脂で封止した。
【0036】
〔発光モジュールの発光〕
作製した発光モジュールを、駆動電流20mA、駆動電圧3.5VでLEDチップに通電し、発光させた。
【0037】
〔発光モジュールの特性〕
比較例としてAlInGaP系の半導体素子を透明エポキシ樹脂にモールドしたアンバー色発光の発光モジュール(LED発光素子;Lumileds製スナップ)を用いた。まず、実施例と比較例の発光モジュールの発光層の温度に対する発光色(ドミナント波長)を、それぞれの図7および図8に示す。図8からわかるように、比較例は1℃当たり0.1nmドミナント波長がずれるのに対し、図7より、本実施例のドミナント波長の温度ずれは、1℃当たり0.02nmと低く、温度による色ずれが殆どないことが確認された。
【0038】
また発光層の温度に対する光束低下を調べた結果を図9および図10に示す。この2つのグラフは、横軸に発光層の温度、縦軸に発光層が25℃のとき光束を1としたときの各温度の相対光束を示したものである。図10からわかるように、比較例は発光層の温度が100℃近くなると常温(25℃)で発光したときの1/5程度しか光束が得られない。それに対し本実施例は、図9より100℃付近でも常温発光の60%以上の光束を維持でき、温度変化にも安定した発光を維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の車両用標識灯はターンシグナルに採用することができ、LED用ターンシグナルランプの設計条件が広がり、小型・薄型で高発光のランプの光性が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例である車両用標識灯の正面図である。
【図2】同車両用標識灯の水平断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】本発明の車両用標識灯に用いる発光モジュールの形態の1例を示す図である。
【図4】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図6】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の吸収を示す反射率を示す図である。
【図7】実施例の発光モジュールのドミナント波長を示す図である。
【図8】比較例の発光モジュールのドミナント波長を示す図である。
【図9】実施例の発光モジュールの温度に対する光束変動を示す図である。
【図10】比較例の発光モジュールの温度に対する光束変動を示す図である。
【図11】ターンシグナルに用いるアンバー色の規格上に定められた色度範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ランプボディ
1a 前面開口部周縁部
2 前面レンズ
3 光源ユニット
4 ベース
6 発光モジュール
8 リフレクタ
9 制御回路基板
41 段部
61 LEDチップ
62 リードフレーム
63 金線ワイヤー
64 蛍光体ペースト
65 封止材
83 エクステンション部
84 リフレクタ部
100 リフレックスリフレクター
102 サイドリフレックスリフレクター
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用標識灯に関し、詳細には、半導体発光素子を光源とし、アンバー色の光を発する発光モジュールを有し、ターンシグナルランプ等に用いられる車両用標識灯に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用標識灯は、テール&ストップの赤色、ターンシグナルのアンバー、及びバックライトの白色、の3色の発光が使用されている。
これらの車両用標識灯は、従来、白熱電球を光源として各色のカバー(レンズ)を取り付けその機能を確保していた。
近年、省スペース・低消費電力・意匠性の向上等の目的で、各色で発光するLED等の半導体発光素子を光源とし、無色透明カバーで構成され、有色カバーによる透過率低減のない製品が構成されている。例えば、特許文献1及び2には、ターンシグナルランプとしてLED素子自体が橙色または黄色の光を発するものを使用することが記載されている。なお、LED素子自体が橙色または黄色の光を発するものとしては、AlInGaPで構成されるものが知られている。
【0003】
一方、車載灯具は厳しい環境下でその性能を発揮しなくてはならない。特に雰囲気温度としては、氷点下〜80℃の環境下での動作が要求され、実際に車載灯具としてLED素子を使用した場合、該LED素子の発光層の温度は氷点下〜100℃に変動する。
しかしながら、AlInGaPで構成されるアンバー色で発光するLED素子は、温度上昇に伴い、発光色度の変動及び光束の低下が大きく、車載用光源として十分な性能が得られていなかった。
AlInGaPで構成されるLED素子は、発光層の温度が0℃から100℃の状況で点灯すると、色度がドミナント波長で10nm以上変動し、車両用灯具の規格範囲を逸脱する。また、光束も雰囲気温度60℃以上になると、室温(25℃)の1/5程度で著しく視認性が低下し、やはり車両用灯具の規格範囲を逸脱するものであった。
したがって、AlInGaPで構成されるアンバー色光を発するLED素子を車両用灯具に採用するには、LED素子の発光層の温度上昇がないように慎重な検討が必要であり、灯具設計の自由度が狭かった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−96808号公報
【特許文献2】特開2000−149615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決することであり、半導体発光素子を用い、使用環境の温度によって発光特性が変動することが無く、また半導体発光素子の発光層の温度上昇を抑える工夫も不要な、車両用標識灯を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を採用することによって、上記目的が達成され、本発明を成すに至った。
【0007】
(1)380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを有することを特徴とする車両用標識灯。
(2)前記蛍光体が下記一般式で表されることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
【0008】
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
【0009】
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【0010】
(3)前記一般式のMeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることを特徴とする前記(2)記載の車両用標識灯。
(4)半導体発光素子が発する光が405nm以下の波長であることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
(5)前記半導体発光素子が発する光が、ほぼ全て、前記蛍光体の励起光として使われることを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
(6)透明の前面カバーを有することを特徴とする前記(1)記載の車両用標識灯。
【0011】
車両用標識灯のターンシグナルに用いるアンバー色は、規格上に定められた狭い色度範囲で発光しなければならない。該規格上に定められた色度範囲とは、詳細には、図11に示す色度座標上の網掛部(y≧0.39、y≧0.79−0.67x、y≧x−0.120に相当するものである。
アンバー色の波長域で発光する4元化合物半導体AlInGaP系(比較例)は、図8および図10に示すように発光層の温度上昇により、色度変動、光束低下が激しく起こる。そこで、アンバー色発光のLED素子を車両用標識灯に使用するためには、60℃以上にLED素子発光層の温度が上昇しないように、灯具容積の確保・LED投入電力の制限等の検討が必要であり、灯具設計の自由度を抑制するものであった。
【0012】
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、殆ど視感度がない380〜420nmの光を良好な発光効率で発するInGaN系LEDチップと酸窒化物由来のα−サイアロンを母体としEu2+を発光中心にした蛍光体とを組み合わせることによって、使用環境の温度によって発光特性が変動することなくアンバー色を発することができることを見出し、本発明を成すに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用標識灯は、熱的に安定な発光特性を示す近紫外から短波長可視光(380〜420nm)の光を発する半導体発光素子を用いてアンバー色の発光を実現でき、また、熱によって半導体発光素子の発光スペクトルが変化しても、蛍光体が発する光のスペクトルは変化が無いので、熱的に色変化の少ないものとすることができる。また、半導体発光素子が発する光を450nm以下とする、または、発光素子が発する光がほぼ全て(好ましくは80%以上)蛍光体の励起光として使うことにより、発光素子からの発光と、蛍光体からの発光が混色せず、適切なアンバー色の光を得ることができる。また、透明の前面カバーを有することにより、光の利用効率をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の車両用標識灯は、380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを用いることを特徴とする。
本発明の車両用標識灯に用いるアンバー色光を発する蛍光体としては、380〜420nmの光で励起し、ピーク波長が580〜620nmの蛍光を発する、酸窒化物由来のα−サイアロンを母体としEu2+を発光中心にしたものであり、より詳細には、下記一般式で表されるものである。
【0015】
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
【0016】
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【0017】
また、上記一般式において、MeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の車両用標識灯に用いる半導体発光素子は、380〜420nm、好ましくは405nm以下の光を発するものであれば、特に限定されないが、InGaN系のLED素子が好ましい。
【0019】
本発明の車両用標識灯に用いられる発光モジュールは、前記の半導体発光素子とアンバー色発光蛍光体とから構成されるものであるが、より具体的には、該半導体発光素子上に該蛍光体の層を設ける構成が挙げられる。
上記半導体発光素子上に蛍光体層を設ける形態としては、半導体発光素子の表面を被覆するコーティング部材に蛍光体を混合する形態、モールド部材に蛍光体を混合する形態、或いはモールド部材に被せる被覆体に蛍光体を混合する形態、更には半導体発光素子ランプの投光側前方に蛍光体を混合した透光可能なプレートを配置する形態等が挙げられる。
【0020】
また、半導体発光素子上のモールド部材に、前述の蛍光体の少なくとも1種以上が添加されていても良い。更に、前述の蛍光体の少なくても1種以上からなる蛍光体層を、発光モジュールの外側に設けても良い。発光モジュールの外側に設ける形態としては、発光モジュールのモールド部材の外側表面に蛍光体を層状に塗布する形態、或いは蛍光体をゴム、樹脂、エラストマー等に分散させた成形体(例えば、キャップ状)を作製し、これを半導体発光素子に被覆する形態、又は前記成形体を平板状に加工し、これを半導体発光素子の前方に配置する形態等が挙げられる。
【0021】
本発明の車両用標識灯に用いる発光モジュールの具体的な形態の1例を図3に示す。図3に示す発光モジュール6は、61のチップはInGaN活性層を有する中心波長が405nm付近の短波長可視光LEDチップであり、この短波長可視光LEDチップ61は接着剤層を介してリードフレーム62に固定されている。短波長可視光LEDチップ61とリードフレーム62は金線ワイヤー63により電気的に接続されている。前記短波長可視光LEDチップ61は、バインダー樹脂にアンバー色に発光するEu2+を賦活剤としたCa−αサイアロン蛍光体粉末を混練した蛍光体ペースト64で覆われている。この蛍光体ペースト64のバインダー樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、金属アルコキシド、ポリシラザン、アクリル樹脂等が挙げられる。また、この発光モジュールは、この蛍光体ペースト64の周囲を覆う封止材(モールド)65を有している。封止材65には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、低融点ガラス等の可視光に対し透明な材料が挙げられる。
なお、発光モジュール用の形態はこの発光モジュール構造に限定されるものではなく、例えば短波長可視光LEDチップ61の発光面に蛍光体層としてコーティングする等など、種々の形態がある。
【0022】
本発明の車両用標識灯の形状の具体例を、図1および図2を用いて以下に説明する。
図1および図2は、本発明の車両用標識灯の形状の1例を示すものであるが、自動車後部の左コーナ部に取り付けられるもので、その全体形状が車体幅方向中央部寄りから車体左側方にかけて水平方向に回り込んだ形状に形成されている。ランプボディ1の前面開口部には、自動車外板の三次面に倣った三次元形状に形成された前面レンズ(アウターレンズ)2が組み付け一体化されて、ランプボディ1と前面レンズ2とで灯室が画成されている。なお、前面レンズ2は、その周縁部において、ランプボディ1の前面開口部周縁部1aに熱溶着等によって固定されている。
【0023】
そして、灯室内には、図2に示すように前面レンズ2にほぼ沿った形状のリフレクタ8が収容されており、リフレクタ8のエクステンション部83は、前面レンズ2と同様な三次面形状に形成されている。また、リフレクタ8は、ベース4に組み立てられた各発光モジュール6に対向する回転放物面形状の複数のリフレクタ部84を有している。
【0024】
また、リフレクタ8は、ベース4と同じ材質の樹脂を用いた樹脂成形によって一体に成形されるとともに、その前面側は、アルミニウム蒸着膜等が形成されて反射面として構成されている。特に、リフレクタタ部84の反射面は、微小凹凸が設けられたシボ加工処理反射面で構成されて、発光モジュール6の発光が拡散反射される。アウターレンズ2は無色透明で、発光モジュール6のアンバー色は、アウターレンズ2を透過する。
【0025】
また、リフレクタ8は、ランプボディ1の内側にすっぽりと収まり、前面レンズ2をランプボディ1に溶着することで、前面レンズ2とランプボディ1間にがたなく固定される。
【0026】
また、リフクレタ8の各リフレクタ部84の背面には開口部84aが設けられ、この開口部84a内には、ベース4に支持された発光モジュール6のモールドが臨んで配置されて、発光モジュール6のモールドがリフクレタ8(リフレクタ部84)で囲繞された形態に保持されている。
【0027】
ベース4に支持された発光モジュール6のモールドがリフクレタ8の開口部84aから突出するとともに、ベース4の周縁部がリフレクタ8の背面側に当接して、リフレクタ8とベース4が上下左右前後方向に互いに位置決めされてがたなく固定一体化される。
【0028】
また、ランプボディ1に組み付けられたリフクレタ8の右端部寄りの背後には、ベース4に支持された制御回路基板9が配置されているが、リフレクタ8の制御回路基板9に対応する位置には、車体後方から前面レンズ2を介して入射した光を入射方向に向けて反射する再帰反射面で構成されたリフレックスリフレクター100が設けられている。
【0029】
また、リフクレタ8の左側端部寄りには、前面レンズ2を介して入射した車体側方からの光を入射方向に向けて反射する再帰反射面で構成されたサイドリフレックスリフレクター102が設けられている。
ベース4は、三次元方向に階段配置した複数の段部41で構成されており、各段部41はほぼ前面レンズ2の三次面形状に沿って配列され、ランプボディ1に固定されている。ベース4の右側縁部の前面側には、発光モジュール6の発光を制御するための電気回路を構成する制御回路基板9が取着されている。
【0030】
段部41は車体の上下方向及び左右方向に向けて階段状に形成され、各段部41は、これらを包絡したときに前面レンズ2にほぼ平行する三次曲面を構成するように樹脂成形によって一体に形成されている。
発光モジュール6の発光は、リフレクタ8のリフレクタ部84によって集光され、レンズ2を通してランプの前方に出射される。
【0031】
そして、このランプの組み付け手順としては、まず、リフレクタ8に光源ユニット3を組み付け一体化する。このリフレクタ・光源ユニット組み付け体をランプボディ内に収容し、前面レンズ2をランプボディに溶着一体化した後、ランプボディの背面側からランプボディ背面壁と光源ユニット3のベース4とを固定する。なお、前面レンズ2のランプボディへの溶着と、ランプボディ背面壁とベース4との固定とは、どちらが先でもよい。
【0032】
また、ベース4に一体的に取り付けられたリフレクタ8は、ベース4と同じ材質で形成されていてもよく、その場合、発光モジュール6の発光によりベース4及びリフレクタ8が加熱された場合でも、ベース4とリフレクタ8は等しく熱膨張されるため、ベース4に対してリフレク8の相対位置変化が生じることがなく、リフレクタ部84における発光モジュール6の光軸位置の位置ずれが防止できる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔アンバー色発光蛍光体(Ca0.75Si9.375O0.875N15.125:Eu0.083)の調整〕
アンバー色に発光するEu2+を付活剤としたCa−αサイアロン蛍光体は、次のように調整した。
平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93重量%、α型含有率92%の窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末と炭酸カルシウムと酸化ユーロピウムとを、各々68.96重量%、16.92重量%、11.81重量%、2.3重量%となるように秤量し、n−ヘキサンを用いて湿式ボールミルにより2時間混合した。ロータリーエバポレータによりn−ヘキサンを除去し、混合粉末の乾燥物を得た。得られた混合物をメノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕した後に500μmのふるいを通すことにより流動性に優れる粉体凝集体を得た。この粉体凝集体を直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製の坩堝に自然落下させて入れ、この坩堝を黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の速度で加熱し、800℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃で1600℃まで昇温し、1600℃で8時間保持した。焼成後、得られたものの一部をメノウ乳鉢に移して粉砕し、X線回析パターンを調べた。その結果、αサイアロンが生成していることがわかった。この得られた焼成体を粗粉砕の後、窒化ケイ素焼結体製のポットとボールを用いたボールミル中で、n−ヘキサン中で2時間粉砕を施した。粒度分布を測定したところ、平均粒径は4.5μmであった。この粉末に、波長365nmの光を発するランプで照射した結果、黄色に発光することを確認した。
【0034】
このようにして得られた酸窒化物蛍光体は、図4に示すような発光スペクトルを有しておりアンバー色を示した。また、励起スペクトルおよび吸収を示す反射率をそれぞれ図5および図6に示す。これより、得られた蛍光体は、395nm〜435nmに励起のピークを持っていることがわかった。
【0035】
〔アンバー色LED発光モジュールの作製〕
半導体発光素子として、発光波長が395nm、外部量子効率が18%のInGaN/GaN系LEDチップを、アンバー色発光蛍光体として前記の調製をしたものを用いて、図3に示す形態の発光モジュールを作製した。
蛍光体ペースト64は、バインダー樹脂に前記の調製したアンバー色発光蛍光体粉末を混練したもので、前記短波長可視光LEDチップ61を覆うものである。この蛍光体ペースト64におけるバインダー樹脂としては、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン(株)製JCR−6125)を用い、前記蛍光体と1:1で混合した。なお、蛍光体ペースト64は、カップ状に賦型したリードフレーム内に固定した前記LEDチップ61を覆うようにポッティングし、150℃・1時間で硬化させ前記LEDチップ61上に前記蛍光体を固定化した。さらに、この蛍光体ペースト64の周囲を脂環タイプのエポキシ樹脂で封止した。
【0036】
〔発光モジュールの発光〕
作製した発光モジュールを、駆動電流20mA、駆動電圧3.5VでLEDチップに通電し、発光させた。
【0037】
〔発光モジュールの特性〕
比較例としてAlInGaP系の半導体素子を透明エポキシ樹脂にモールドしたアンバー色発光の発光モジュール(LED発光素子;Lumileds製スナップ)を用いた。まず、実施例と比較例の発光モジュールの発光層の温度に対する発光色(ドミナント波長)を、それぞれの図7および図8に示す。図8からわかるように、比較例は1℃当たり0.1nmドミナント波長がずれるのに対し、図7より、本実施例のドミナント波長の温度ずれは、1℃当たり0.02nmと低く、温度による色ずれが殆どないことが確認された。
【0038】
また発光層の温度に対する光束低下を調べた結果を図9および図10に示す。この2つのグラフは、横軸に発光層の温度、縦軸に発光層が25℃のとき光束を1としたときの各温度の相対光束を示したものである。図10からわかるように、比較例は発光層の温度が100℃近くなると常温(25℃)で発光したときの1/5程度しか光束が得られない。それに対し本実施例は、図9より100℃付近でも常温発光の60%以上の光束を維持でき、温度変化にも安定した発光を維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の車両用標識灯はターンシグナルに採用することができ、LED用ターンシグナルランプの設計条件が広がり、小型・薄型で高発光のランプの光性が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例である車両用標識灯の正面図である。
【図2】同車両用標識灯の水平断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)である。
【図3】本発明の車両用標識灯に用いる発光モジュールの形態の1例を示す図である。
【図4】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
【図5】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の励起スペクトルを示す図である。
【図6】実施例で調製された酸窒化物蛍光体の吸収を示す反射率を示す図である。
【図7】実施例の発光モジュールのドミナント波長を示す図である。
【図8】比較例の発光モジュールのドミナント波長を示す図である。
【図9】実施例の発光モジュールの温度に対する光束変動を示す図である。
【図10】比較例の発光モジュールの温度に対する光束変動を示す図である。
【図11】ターンシグナルに用いるアンバー色の規格上に定められた色度範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ランプボディ
1a 前面開口部周縁部
2 前面レンズ
3 光源ユニット
4 ベース
6 発光モジュール
8 リフレクタ
9 制御回路基板
41 段部
61 LEDチップ
62 リードフレーム
63 金線ワイヤー
64 蛍光体ペースト
65 封止材
83 エクステンション部
84 リフレクタ部
100 リフレックスリフレクター
102 サイドリフレックスリフレクター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを有することを特徴とする車両用標識灯。
【請求項2】
前記蛍光体が下記一般式で表されることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【請求項3】
前記一般式のMeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることを特徴とする請求項2記載の車両用標識灯。
【請求項4】
半導体発光素子が発する光が405nm以下の波長であることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項5】
前記半導体発光素子が発する光が、ほぼ全て、前記蛍光体の励起光として使われることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項6】
透明の前面カバーを有することを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項1】
380〜420nmの光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子が発する光を励起光としてアンバー色光を発する蛍光体とから構成される発光モジュールを有することを特徴とする車両用標識灯。
【請求項2】
前記蛍光体が下記一般式で表されることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
MexSi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-n:Eu2+y
(式中、MeはLi、Ca、Mg、Y又はLaとCeとEuを除くランタニド金属の1種以上であり、x、y、mおよびnは、それぞれ正の数である。)
【請求項3】
前記一般式のMeがCaであり、0.6≦x≦1.2、1.2≦m≦2.4、0.1≦n≦2.4、0.0001≦y≦0.1であることを特徴とする請求項2記載の車両用標識灯。
【請求項4】
半導体発光素子が発する光が405nm以下の波長であることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項5】
前記半導体発光素子が発する光が、ほぼ全て、前記蛍光体の励起光として使われることを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【請求項6】
透明の前面カバーを有することを特徴とする請求項1記載の車両用標識灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−142293(P2012−142293A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−33770(P2012−33770)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−30050(P2006−30050)の分割
【原出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【分割の表示】特願2006−30050(P2006−30050)の分割
【原出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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