説明

車両用組電池及び車両

【課題】車両用電池の使用時における出力を維持しつつ、電解液の分解を抑制する装置を提供することを目的とする。
【解決手段】単電池2を複数積層した電池群3と、電池群3を単電池2の積層方向の両側から挟み込んで拘束するエンドプレート4と、エンドプレート4による拘束力を調整する拘束力調整部10と、拘束力調整部10を制御するコントローラ100と、を有し、コントローラ100は、拘束力調整部10を制御することにより、車両のイグニッションスイッチがオンであるとき、第1の拘束力により電池群3を拘束し、前記イグニッションスイッチがオフであるとき、前記第1の拘束力よりも低い第2の拘束力により電池群3を拘束することを特徴とする車両用組電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池を構成する電池群を拘束する拘束力を調整する車両用組電池等に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な二次電池を動力源として搭載したハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)、電気自動車(Electric Vehicle)が知られている。ハイブリッド自動車や電気自動車に用いる車両用二次電池は、複数の単電池が積層され電気的に接続された電池群によって構成される。電池群を構成する各電池は、例えば、正極体と負極体とセパレータと電解液などから構成される。
【0003】
特許文献1には、車両用二次電池として、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、セパレータと、非水溶媒中に電解質塩を有する非水電解質と、を備える非水電解質二次電池であって、正極活物質の電位がリチウム基準で4.4〜5.1Vであり、セパレータが所定の数値範囲の透気度である非水電解質二次電池が開示されている。このような車両用二次電池により、サイクル特性及び高温充電保存特性のバランスが良好な車両用二次電池が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123861号公報
【特許文献2】特開2010−160981号公報
【特許文献3】特開2008−147010号公報
【特許文献4】特開2010−009978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような車両用二次電池においては、車両用二次電池の使用時及び不使用時に関わらず、電極の正極体表面にて接触する液体あるいは固体の電解質が分解する反応が進行する。分解反応が進行すると車両用二次電池の寿命が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両用電池の入出力特性の低下を抑制しつつ、車両用電池の未使用時における電解質の分解を抑制する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明に係る車両用組電池は、(1)単電池を複数積層した電池群と、前記電池群を前記単電池の積層方向の両側から挟み込んで拘束するエンドプレートと、前記エンドプレートによる拘束力を調整する拘束力調整部と、前記拘束力調整部を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、車両のイグニッションスイッチがオンであるとき、第1の拘束力により前記電池群を拘束し、前記イグニッションスイッチがオフであるとき、前記第1の拘束力よりも低い第2の拘束力により前記電池群を拘束することを特徴とする車両用組電池。
【0008】
(2)上記(1)の車両用組電池において、前記単電池は、前記正極体及び前記負極体を電解質を介して前記積層方向に積層した発電要素を備える。(2)の構成によれば、正極体及び電解質をその積層方向に圧縮する圧縮力をより効果的に調整することができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群が第1の蓄電量である場合には第3の拘束力により前記電池群を拘束し、前記電池群が前記第1の蓄電量よりも高い第2の蓄電量である場合には前記第3の拘束力よりも低い第4の拘束力により前記電池群を拘束してもよい。(3)の構成によれば、蓄電量がより高い場合に促進される電解質の分解を効果的に抑制することができる。
【0010】
(4)上記(3)の構成において、車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群の蓄電量が高いほど前記電池群に対する拘束力を小さくすることができる。(4)の構成によれば、SOCに応じた細かな拘束力の調整が可能となり、より効果的に電解質の分解を抑制することができる。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、前記単電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2V以上とすることができる。(5)の構成によれば、電解質の分解を抑制する効果がより顕著となる。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれかの構成において、前記拘束力調整部は、圧電素子と、この圧電素子を駆動する駆動回路とを含むように構成することができる。(6)の構成によれば、簡易な構成で拘束力を調整することができる。また、圧電素子に印加される電圧を調整することにより、電池群に対する拘束力の設定を容易に行うことができる。
【0013】
本願発明の参考例である車両用組電池は、(7)単電池を複数積層した電池群と、前記電池群を前記単電池の積層方向の両側から挟み込んで拘束するエンドプレートと、前記エンドプレートによる拘束力を調整する拘束力調整部と、前記拘束力調整部を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群が動作状態である場合には、第1の拘束力により前記電池群を拘束し、前記電池群が非動作状態である場合には、前記第1の拘束力よりも低い第2の拘束力により前記電池群を拘束することを特徴とする。
【0014】
(8)上記(7)の車両用組電池において、前記単電池は、前記正極体及び前記負極体を電解質を介して前記積層方向に積層した発電要素を備える。(9)上記(7)又は(8)の構成において、前記電池群が非動作状態であるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群が第1の蓄電量である場合には第3の拘束力により前記電池群を拘束し、前記電池群が前記第1の蓄電量よりも高い第2の蓄電量である場合には前記第3の拘束力よりも低い第4の拘束力により前記電池群を拘束してもよい。
【0015】
(10)上記(9)の構成において、前記電池群が非動作状態であるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群の蓄電量が高いほど前記電池群に対する拘束力を小さくすることができる。
【0016】
(11)上記(7)から(10)のいずれかの構成において、前記単電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2V以上とすることができる。(12)上記(7)から(11)のいずれかの構成において、前記拘束力調整部は、圧電素子と、この圧電素子を駆動する駆動回路とを含むように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両用電池の入出力特性の低下を抑制しつつ、車両用電池の未使用時における電解質の分解を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】組電池の断面図である。
【図2】単電池の断面図である。
【図3】圧力調整部及びその駆動制御に関わる要素のブロック図である。
【図4】拘束力を変化させた際の単電池の内部の挙動を示す模式図である。
【図5】圧電素子の制御方法を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2の圧電素子の制御方法を示すフローチャートである。
【図7】変形例1の圧力調整部及びその駆動制御に関わる要素のブロック図である。
【図8】組電池の断面図である(拘束力が小さい状態を示す)。
【図9】組電池の断面図である(拘束力が大きい状態を示す)。
【図10】参考例の圧力調整部及びその駆動制御に関わる要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用組電池の実施形態について図面に基づき説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の組電池の断面図であり、X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する異なる三軸を示す。図2は、単電池をX−Z面で切断した断面図であり、単電池の内部構造を模式的に示している。図3は、圧力調整部及びその駆動制御に関わる要素のブロック図である。
【0021】
本実施形態の組電池1は、複数の単電池2からなる電池群3と、エンドプレート4と、拘束バンド6と、隣接する単電池2の間に配置されるスペーサ8と、圧電素子10Aと、を備える。
【0022】
これらの単電池2はX軸方向に積層される。X軸方向は車幅方向であってもよい。スペーサ8は櫛歯状に形成されている。スペーサ8は単電池2の外面に当接することにより、隣接する単電池2の間に流れる冷却風の冷却通路を形成する。この冷却通路は、Y軸方向に延びる。冷却通路内を流れる冷却風によって各単電池2は冷却される。これにより、各単電池2の温度上昇による電池劣化が抑制される。
【0023】
電池群3の両端部には、電池群3を積層方向から挟み込むエンドプレート4が位置する。拘束バンド6は、電池群3の上側の外面及び下側の外面に沿って設けられている。拘束バンド6の両端部には、約90度に折れ曲がった曲げ部6aが形成されている。曲げ部6aは、エンドプレート4のX軸方向の端面に固定されている。固定方法には、締結部材を用いることができる。
【0024】
図2を参照して、単電池2は、ケース22とケース22の上面に位置する一対の端子電極21とを備える。一対の端子電極21は凸状に形成されており、Y軸方向に並んで位置する。隣接する単電池2は不図示のバスバーを介して直列に接続されている。該バスバーは端子電極21に固定される。固定方法は締結手段であってもよい。
【0025】
単電池2のケース22は角型に形成されている。ケース22の内部には、発電要素20が収容されている。発電要素20は、正極体20aと、負極体20bと、正極体20aと負極体20bとの間に配置されるセパレータ20cと、セパレータ20cに含浸される電解質としての電解液を含む。発電要素20は、帯状に形成されており、巻かれた状態でケース22の内部に収容されている。
【0026】
ここで、単電池2がニッケル−水素電池である場合には、正極体20aの活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極体20bの活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlMnCo(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、単電池2がリチウムイオン電池である場合には、正極体20aの活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極体20bの活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0027】
圧電素子10Aは、一方のエンドプレート4とX軸方向の端部に位置する単電池2との間に挟まれた状態で位置する。圧電素子10Aは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)であってもよい。圧電素子10Aは、電池群3の拘束力を変えることが可能な他の位置に配置することもできる。例えば、圧電素子10Aは隣接する単電池2の間に配置することができる。
【0028】
図1を参照して、圧電素子10Aは、電圧の印加に応じてX軸方向に伸縮する。圧電素子10AがX軸方向に伸びると、各単電池2は他方のエンドプレート4が位置する側に向かって押圧される。一対のエンドプレート4は拘束バンド6によってX軸方向への移動が規制されている。したがって、各単電池2は、一対のエンドプレート4から受ける押圧力によってX軸方向に圧縮される。他方、圧電素子10AがX軸方向に縮むと、エンドプレート4から受ける各単電池2に対する圧縮力が低下する。
【0029】
次に、圧電素子10Aを駆動する要素について説明する。図3を参照して、圧力調整部10は圧電素子10A及び駆動回路10Bを備える。コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10Aに印加される電圧を制御する。組電池1には電流センサ11が接続されており、コントローラ100は電流センサ11から出力される電流値を積算することにより、組電池1の蓄電量(State of charge、以下「SOC」と省略する)を推定する。コントローラ100は、図示しない電圧センサによって検出される組電池1の開放端電圧からSOCを推定してもよい。
【0030】
コントローラ100は、車両のIGスイッチ200のON/OFFを検出する。コントローラ100は、IGスイッチ200がOFFからONに切り替わったことを検知すると、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10AをX軸方向に伸びる方向に動作させる。これにより、エンドプレート4から受ける電池群3に対する拘束力が増加される。コントローラ100は、IGスイッチ200がONからOFFに切り替わったことを検知すると、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10AをX軸方向に縮む方向に動作させる。これにより、エンドプレート4から受ける電池群3に対する拘束力が低下される。
【0031】
次に、拘束力に応じた単電池2内部における正極体20a及びセパレータ20cの接触状態について説明する。図4は単電池に対する拘束力を変化させたときの単電池2内部の挙動を模式的に示した模式図であり、図4(a)はIGスイッチ200がONであるときの状態を示し、図4(b)はIGスイッチ200がOFFであるときの状態を示す。
【0032】
IGスイッチ200がONになると、コントローラ100により圧電素子10AがX軸方向に伸長するため、一対のエンドプレート4から単電池2に加わる拘束力が増加する。その結果、図4(a)に示すように、正極体20aとセパレータ20cとが密着して接触面積が増加する。
【0033】
一方、IGスイッチ200がOFFになると、コントローラ100により圧電素子10AがX軸方向に縮小するため、一対のエンドプレート4から単電池2に加わる拘束力が低下する。その結果、図4(b)に示すように、正極体20aとセパレータ20cとの接触面積が低下する。正極体20aとセパレータ20cとの接触面積が低下すると、組電池1の出力特性は低下するが、正極体20aと電解液とが接することによって進行する電解液の分解を抑制することができる。
【0034】
以上の構成により、組電池1が充放電動作をする際に、電池群3に対する拘束力を高めることができる。これにより、組電池1を放電する際に、組電池1の出力低下を抑制することができる。また、正極体20aとセパレータ20cとが密着することにより内部抵抗が減少するため、組電池1の充電特性の低下を抑制することができる。他方、IGスイッチ200がOFFの場合には、電池群3に加わる拘束力を弱めることができる。これにより、組電池1を使用しない場合に電解液の酸化分解を抑制することができ、電池の寿命をより長くすることができるという効果が得られる。
【0035】
次に、本実施形態の圧電素子10Aの制御方法について説明する。図5は、圧電素子の制御方法を示すフローチャートである。ステップS101において、コントローラ100は、IGスイッチ200のON/OFFを判別する。IGスイッチ200がONである場合にはステップS102に進み、IGスイッチ200がOFFである場合にはステップS103に進む。
【0036】
ステップS102において、コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10AをX軸方向に伸長させる。これにより、一対のエンドプレート4から電池群3に加わる拘束力をより高い拘束力(第1の拘束力)に設定することができる。その結果、正極体20a及びセパレータ20cの接触面積が増大し、組電池1の出力低下を抑制することができる。
【0037】
ステップS103において、コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10AをX軸方向に縮ませる。これにより、一対のエンドプレート4から電池群3に加わる拘束力をより低い拘束力(第2の拘束力)に設定することができる。その結果、正極体20a及びセパレータ20cの接触面積が低下し、電解液の酸化分解が抑制されることにより、組電池1の寿命をより長くすることができる。
【0038】
ここで、本実施形態の単電池2における正極の正極電位は、金属リチウム基準で4.2V以上であってもよい。この種のリチウムイオン電池においては、未使用時の拘束力を低下させることにより、より効果的に電解質の分解を抑制することができる。
【0039】
以上、本実施形態の構成によれば、IGスイッチ200がOFFの場合における電解液の分解を抑制し、組電池1の寿命をより長くすることができる。また、組電池1を使用する際(IGスイッチ200がONの場合)には、組電池1の入出力特性の低下を抑制することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
単電池2には、SOCが高いほど正極と電解質との接触により生じる電解液の酸化分解が促進される、という特性がある。そのため、本発明の第2の実施形態においては、組電池1のSOCに応じて、単電池2に対する拘束力を変化させる。
【0041】
本実施形態の圧電素子の制御方法について説明する。図6は、圧電素子の制御方法を示すフローチャートである。ステップS201において、コントローラ100は、IGスイッチ200のON/OFFを判別する。IGスイッチ200がONである場合にはステップS202に進み、IGスイッチ200がOFFである場合にはステップS203に進む。
【0042】
ステップS202において、コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、圧電素子10AをX軸方向に伸長させる。これにより、一対のエンドプレート4から電池群3に加わる拘束力をより高い拘束力(第1の拘束力)に設定することができる。その結果、正極体20a、負極体20b及びセパレータ20cの接触面積が増大し、組電池1の入出力特性の低下を抑制することができる。
【0043】
ステップS203において、コントローラ100は、組電池1に流れる電流値を積算することによりSOCを推定する。ステップS204において、コントローラ100は、SOCが閾値以下であるか否かを判別する。当該閾値は、組電池1が目標とする電池寿命を達成し得るような値に設定すればよく、シミュレーションなどにより実験的に求めることができる。
【0044】
ステップS204において、SOCが閾値以下である場合には、ステップS205に進む。ステップS205において、コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、エンドプレート4による拘束力が第3の拘束力となるように圧電素子10Aを駆動する。
【0045】
ステップS204において、SOCが閾値以下でない場合には、ステップS206に進む。ステップS206において、コントローラ100は、駆動回路10Bを制御することにより、エンドプレート4による拘束力が第3の拘束力よりも低い第4の拘束力となるように圧電素子10Aを駆動する。
【0046】
以上の制御方法によれば、組電池1が使用されない未使用状態であって、かつ、電解液の酸化分解が促進される高SOCの状態において、電池群3に対する拘束力をより小さくすることができる。これにより、正極体20aとセパレータ20cとの接触面積を小さくすることができる。その結果、より効果的に電解液の分解が抑制され、電池の寿命を長くすることができる。
【0047】
本実施形態では、閾値を境としてエンドプレート4による拘束力を二段階で切り替える構成とした。そのため、圧電素子10Aの制御を煩雑化することなく、電池の寿命をより延ばすことができる。ただし、エンドプレート4による拘束力を二段階よりも多い多段階で切り替えるように構成することもできる。この場合、SOCに応じた細かな拘束力の調整が可能となり、より効果的に電解液の分解を抑制することができる。
【0048】
(変形例1)
上述の実施形態では、圧力調整部10を圧電素子10A及び駆動回路10Bから構成したが、本発明はこれに限られるものではなく、他の構成であってもよい。当該他の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。図7は変形例1の圧力調整部及びその駆動制御に関わる要素のブロック図であり、図3に対応する。実施形態と同一の構成要素については、同一符合を付すことにより説明を省略する。
【0049】
図7を参照して、圧力調整部30は、膨張シート30A及びエア供給部30Bを含む。膨張シート30Aは図示しないエア取り込み口を有し、このエア取り込み口を介してエアが取り込まれることにより膨張する。膨張シート30Aはナイロン66であってもよい。エア供給部30Bは膨張シート30Aにエアを供給し、或いは膨張シート30A内のエアを吸気する。コントローラ100は、エア供給部30Bの駆動を制御する。上述の構成において、膨張シート30Aが膨張すると電池群3に対する拘束力が高まり、単電池2の入出力特性の低下を抑制することができる。膨張シート30Aが収縮すると電池群3に対する拘束力が弱まり、電解液の酸化分解が抑制されることにより、各単電池2の寿命をより長くすることができる。エア供給部30Bの駆動方法(駆動タイミング)については、上記実施形態と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0050】
(変形例2)
圧力調整部は、一方のエンドプレートを単電池2の積層方向に移動させる構成であってもよい。図8及び図9は組電池1をX−Z面で切断した断面図であり、X軸、Y軸及びZ軸は互いに異なる直交する三軸である。図8は拘束力が小さい状態を示し、図9は拘束力が高い状態を示す。
【0051】
変形例2の圧力調整部は、ボールネジ41、伝達機構42及びモータ43を含む。モータ43は、ステッピングモータ、パルスモータであってもよい。コントローラ100は、モータ43の駆動を制御する。モータ伝達機構42は、モータ43の回転力をボールネジ41に伝達する。
【0052】
ボールネジ41は一対のエンドプレート4a、4bを貫通してX軸方向に延びている。一方のエンドプレート4bの貫通孔部41bの内周面にはネジ溝が形成されており、他方のエンドプレート4aの貫通孔部41aの内面にはネジ溝が形成されていない。一方のエンドプレート4bの貫通孔部41bはボールネジ41に係合している。ボールネジ41が回転すると、貫通孔部41b及びボールネジ41の係合作用により、一方のエンドプレート4bがX軸方向に進退する。
【0053】
一方のエンドプレート4bが他方のエンドプレート4aに接近する方向に移動すると、電池群3に対する拘束力が高まり、単電池2の入出力特性の低下を抑制することができる。一方のエンドプレート4bが他方のエンドプレート4aから離間する方向に移動すると、電池群3に対する拘束力が弱まり、電解液の酸化分解が抑制されることにより、各単電池2の寿命をより長くすることができる。
【0054】
(変形例3)
上述の実施形態では、単電池2のセパレータ20cに電解液を含浸させたが、本発明はこれに限られるものではなく、固体電解質を用いることができる。電解質が固体であっても、IGスイッチ200がOFFの場合に拘束力を小さくすることで、正極体20aと固体電解質との接触面積が小さくなり、電解質の分解を抑制することができる。
【0055】
(変形例4)
また、本実施形態においては、発電要素20が巻かれた状態でケース22に収容されているが、本発明はこれに限られるものではなく、シート状の正極体20a、セパレータ20c及び負極体20bをX軸方向に単に積層することにより発電要素20としてもよい。
【0056】
(参考例)
次に、本願発明の参考例について説明する。参考例の車両用組電池は、正極体と負極体とを電解質を介して積層して構成される単電池が積層された電池群と、前記電池群を前記単電池の積層方向の両側から挟み込んで拘束するエンドプレートと、前記エンドプレートによる拘束力を調整する拘束力調整部と、前記拘束力調整部を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、車両の走行状態を判別し、車両が走行中であると判定した場合には、前記拘束力調整部を制御して、前記エンドプレートによる拘束力を第1の状態に増加させ、車両が停止していると判定した場合には、前記エンドプレートによる拘束力を前記第1の状態よりも拘束力が低い第2の状態に低下させることを特徴とする。
【0057】
本参考例を図面に基づき説明する。図10は、本参考例に係る車両用組電池(以下、単に組電池とも呼ぶ。)の制御に関わる要素を含む組電池制御システムのブロック図である。上記実施形態と同一の機能を備える構成要素については同一符合を付して説明を省略する。
【0058】
コントローラ100は、電池群3の充放電動作及び圧力調整部10の圧力調整動作を制御する。コントローラ100は、電池群3に対して充放電動作を指示する際に、圧力調整部10を制御することにより、電池群3に対するエンドプレート4の拘束力を第1の拘束力に設定する。コントローラ100は、電池群3に対して充放電動作を指示しない場合、つまり、電池群3を非動作状態とする場合には、圧力調整部10を制御することにより、電池群3に対するエンドプレート4の拘束力を第1の拘束力よりも低い第2の拘束力に設定する。
【0059】
上述の参考例によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 組電池 2 単電池 3 電池群
4 エンドプレート 10 圧力制御部 10A 圧電素子
10B 駆動回路 11 電流センサ
100 コントローラ 200 IGスイッチ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
単電池を複数積層した電池群と、
前記電池群を前記単電池の積層方向の両側から挟み込んで拘束するエンドプレートと、
前記エンドプレートによる拘束力を調整する拘束力調整部と、
前記拘束力調整部を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、車両のイグニッションスイッチがオンであるとき、第1の拘束力により前記電池群を拘束し、前記イグニッションスイッチがオフであるとき、前記第1の拘束力よりも低い第2の拘束力により前記電池群を拘束することを特徴とする車両用組電池。
【請求項2】
前記単電池は、前記正極体及び前記負極体を電解質を介して前記積層方向に積層した発電要素を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用組電池。
【請求項3】
車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群が第1の蓄電量である場合には第3の拘束力により前記電池群を拘束し、前記電池群が前記第1の蓄電量よりも高い第2の蓄電量である場合には前記第3の拘束力よりも低い第4の拘束力により前記電池群を拘束することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用組電池。
【請求項4】
車両のイグニッションスイッチがオフであるとき、前記コントローラは、前記拘束力調整部を制御することにより、前記電池群の蓄電量が高いほど前記電池群に対する拘束力を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の車両用組電池。
【請求項5】
前記単電池の正極電位が金属リチウムを基準としたときに4.2V以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用組電池。
【請求項6】
前記拘束力調整部は、圧電素子と、この圧電素子を駆動する駆動回路とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の車両用組電池。
【請求項7】
前記コントローラは、前記イグニッションスイッチのオン/オフを検知することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の車両用組電池。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか一つに記載の車両用組電池を備えた車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89446(P2012−89446A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237642(P2010−237642)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】