説明

車両用荷台支持装置

【課題】 簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、車両用荷台支持装置2であって、フレーム側部材2Bと、荷台側部材2Cと、の間に介装される弾性要素2Aを含んで構成され、フレーム側部材2Bにはフレーム1を挟んで両側に一対のボルト穴が開口され、フレーム1の下側でフレーム1と略直交して配設される固定部材4に一対のボルト穴が開口され、これら一対のボルト穴に挿通される一対のボルト3を介して、フレーム側部材2Bをフレーム1に締結固定するものにおいて、弾性要素2Aが、車両前後方向において複数に分割されていると共に、この分割された弾性要素2A間を通過して、フレーム側部材2Bに開口される一対のボルト穴間に延在されてボルト3により共締めされる補強部材5が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持する車両用荷台支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密機械などの振動に対してデリケートな物品の輸送に関し、その輸送品質の向上を図ることが望まれており、かかる観点から、車両のフレームと、荷台と、の間にスプリングやエアスプリングなどを介装したものが、特許文献1や特許文献2において提案されている。
【0003】
また、特許文献3には、車両のフレームと、荷台と、の間にエアスプリングを備え、積載荷重が変化しても支持高さを一定に維持でき、かつ、ばね定数を低く維持できると共に、水平方向における位置決めも行なえるようにした制振支持装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−271873号公報
【特許文献2】実開昭57−154575号公報
【特許文献3】特開2006−105223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら特許文献1〜3に記載のものは、荷台に積載される物品の輸送時における具体的な状態などが十分に考慮されておらず、輸送される物品によっては、振動の影響を受けて損傷等が生じ商品価値を低下させてしまうといったことが想定される。
また、特許文献1〜3に記載のものは、スプリング、ショックアブソーバー、ラテラルロッド、エアスプリング等の比較的複雑で高価な構成要素が必要であり、製品コストや取付工数の低減が難しく、また設置スペース等に多くの制限が課されるなどといった実情もある。
【0006】
このような実情に鑑みて、本出願人は、特願2008−54304号において、車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持構造であって、車両のフレームと、荷台と、の間に、弾性要素が介装されると共に、当該弾性要素により、少なくとも10Hzから30Hzの周波数領域の荷台の振動を、当該弾性要素を介装しない場合と比較して低減したことを特徴とする車両用荷台支持構造などを提案した。
【0007】
本発明者等は、引き続き種々の研究実験を行っており、その結果、特願2008−54304号において提案した構造及び装置に対して、更なる変形や改良等についての新たな知見を得た。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係る車両用荷台支持装置は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに取り付けられるフレーム側部材と、荷台に取り付けられる荷台側部材と、の間に介装される弾性要素を含んで構成され、
前記フレーム側部材には、フレームを挟んで両側に一対のボルト穴が開口され、
フレーム下側でフレームと略直交して配設される固定部材に、前記一対のボルト穴に対応する一対のボルト穴が開口され、
これら一対のボルト穴に挿通される一対のボルトを介して、前記フレーム側部材をフレームに締結固定するものにおいて、
前記弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていると共に、
この分割された弾性要素間を通過して、前記フレーム側部材に開口される一対のボルト穴間に延在され、当該一対のボルトにより共締めされる補強部材が配設されることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記補強部材が中空状に形成されたことを特徴とすることができる。
【0011】
本発明において、前記フレーム側部材が、フレームとの間でヨー方向における位置決めを行う位置決め要素を含んで構成されたことを特徴とすることができる。
【0012】
本発明において、前記位置決め要素は、フレーム側部材からフレームに沿って下側に伸びて形成される要素であることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る車両用荷台支持装置は、
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに取り付けられるフレーム側部材と、荷台に取り付けられる荷台側部材と、の間に介装される弾性要素を含んで構成され、
前記フレーム側部材が、フレームとの間でヨー方向における位置決めを行う位置決め要素を含んで構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記位置決め要素は、フレーム側部材からフレームに沿って下側に伸びて形成される要素であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成で、取り付けなども容易でありながら、荷台等を車体等に振動等を抑制しつつ支持することができる車両用荷台支持装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施例により、本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る車両用荷台支持構造及び装置は、図1に示すように、例えば輸送用車両の車体フレーム1にマウンティング2が載置され、このマウンティング2は、一対のラバー要素2A、2Aの図1中下側と係合する下側プレート2Bを介して車体フレーム1に、固定用ボルト3、固定部材4、補強部材5等により取り付けられている。なお、マウンティング2は、例えば、車両前後方向に延在される左右のそれぞれのフレーム1の車両前後方向において少なくとも2つ備えられることができる。
【0018】
前記マウンティング2の構成要素である一対のラバー要素2A、2Aの図1中上側と係合する上側プレート2Cには、木等からなる縦根太6が前記フレーム1に沿って載置され、固定部材7、固定用ボルト8等を介して、当該上側プレート2Cと前記縦根太6とが締結固定されている。
なお、前記縦根太6には、例えば、当該縦根太6と交差する方向に延在される金属製等の横根太9が載置され、この横根太9の上に荷台(図示せず)が載置されるようになっている。
【0019】
前記マウンティング2は、図2〜図5に示すように、例えば車両の前後方向に一対のラバー要素2A、2Aが並んで配設され、当該一対のラバー要素2A、2Aの下面には下側プレート2Bが接合され、当該一対のラバー要素2A、2Aの上面には上側プレート2Cが接合されている。
【0020】
下側プレート2Bの車両前後方向の両端部は図2中上向きに折曲され、当該下側プレート2Bの折曲部を上側プレート2Cの車両前後方向の両端部が覆うように、上側プレート2Cは図2中下向きに折曲されている。すなわち、車両前後方向から見たときに、下側プレート2Bの折曲部と、上側プレーと2Cの折曲部と、は所定に重畳するようになっている。
【0021】
そして、この重畳部分の例えば下側プレート2の折曲部側にラバー2Dが接合されており、例えば車両の制動時に上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して比較的大きな減速加速度を受けて前方に相対変位するような場合に、上側プレート2Cの折曲部がラバー2D延いては下側プレート2の折曲部に当接することで、上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して所定以上に相対変位するのを規制し、ラバー2Aが損傷等するような惧れを抑制するように構成されている。
【0022】
また、図3に示すように、マウンティング2の下側プレート2Bの車両左右方向の一端部は図3中上向きに折曲され、当該下側プレート2Bの折曲部を上側プレート2Cの前記一端部に対応する一端部が覆うように、上側プレート2Cは図2中下向きに折曲されている。すなわち、車両左右方向から見たときに、下側プレート2Bの折曲部と、上側プレート2Cの折曲部と、は所定に重畳するようになっている。
【0023】
そして、この重畳部分の例えば下側プレート2の折曲部側にラバー2Eが接合されており、例えば車両の旋回時に上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して比較的大きな旋回加速度を受けて図2中左方に相対変位するような場合に、上側プレート2Cの折曲部がラバー2E延いては下側プレート2の折曲部に当接することで、上側プレート2C(荷台側)が下側プレート2B(フレーム1側)に対して所定以上に相対変位するのを規制し、ラバー2Aが損傷等するような惧れを抑制するように構成されている。
【0024】
ここで、ラバー要素2A、2Aを2分割しているのは、補強部材5を車両左右方向に貫通させることができ、かつ、既述したように上側プレート2C(荷台側)は下側プレート2B(フレーム1側)に対して図2中前後方向或いは図3中左右方向に相対変位するが、その相対変位方向に略直交するラバー要素表面の面積を2分割することで大きくすることができるため、ラバー要素に所望の弾性係数を持たせた場合においても、比較的大きな加速或いは減速Gが作用する方向におけるラバー要素の劣化等を効果的に抑制することができるからである。
【0025】
なお、本実施例のような構成とすれば、車両用荷台支持装置をフレーム1に取り付けるためにフレーム1に対して特別な加工等が必要ないため、当該車両用荷台支持装置の要求されない車両と共通のフレーム1を用いることができ、以って製品コストの低減等を図ることができる。
【0026】
また、例えば車両の出荷後に荷台(所謂平ボディー、ウィングタイプ、アルミバン、保冷車等の荷台など)を要求に応じて取り付けたり変更することも容易であり、ユーザーフレンドリーな車両用荷台支持装置を提供することができるものである。
【0027】
ところで、マウンティング2のフレーム1への取り付けは、フレーム1を挟んで両側に配設される固定用ボルト3を、図4、図5に示すような下側プレート2Bのボルト穴に挿通し、ナット等を上下方向に締め付けていくことによりなされるが、かかる方法の場合、図6(B)に示すように、下側プレート2Bを反り変形させてしまう惧れがあった。
【0028】
このような下側プレート2Bの反り変形は、経時と共に塑性変形量が増えて弾性が失われるため、固定用ボルト3の締結力の低下を招き、その結果、フレーム1と下側プレート2Bとの間で滑り・遊動等の相対移動が生じるようになるため、このような反り変形は抑制する必要がある。
【0029】
このため、下側プレート2Bの厚みを厚くして変形を抑制することも想定されるが、これでは、荷台の高さを増加させてしまうと共に、重量も増加してしまうといった事態を招くことになる。
【0030】
そこで、本実施例では、補強部材5により、下側プレート2Bの厚みを薄く維持しつつ、効果的に下側プレート2Bの反り変形を防止することが可能にしている。
【0031】
補強部材5は、図1、図7に示されるように、一対の固定用ボルト3間に延在され、一対の固定用ボルト3により下側プレート2Bやフレーム1と共締めされる部材で、例えば、中空状の部材とすることができ、断面略四角状の部材や断面略コ字状(開放側が下向き)の部材などを採用することができる。
【0032】
本実施例に係る補強部材5によれば、重量の増加と荷台の高さの増加を共に低く抑えつつ、下側プレート2Bの変形を確実に抑制して、耐久性・信頼性を高く維持することができる。
【実施例2】
【0033】
本発明に係る車両用荷台支持構造及び装置は、実施例1で説明したように、シャーシ側(フレーム1)も、荷台側も、長ボルト(固定用ボルト3、固定用ボルト8)とブラケットなどを用いて締結固定する構成であるため、車両側に改造(穴明け、切断、溶接等)を施すことなく、取り付けすることができる。
【0034】
また、本発明に係る車両用荷台支持構造及び装置は、車両前後方向の取り付け位置に関して、従来のUボルトで単純に縦根太6をフレーム1に締結固定する固定方法と同様の自由度があり、組み付け性に優れている。
【0035】
しかし、車幅方向における取り付け位置と、車両上方から見たときのフレーム1に対する下側プレート2Bの傾斜方向(ヨー方向、所謂Z軸(垂直軸)廻りの回転方向)に対する取り付け位置に関しては、取り付け位置の自由度が高いが故に、位置ズレや取り付けバラツキなどが生じ易いといった傾向がある。
【0036】
このため、実施例2では、図8に示すように、下側プレート2Bと、これを載置して支持するフレーム1と、の間で、車幅方向及びヨー方向(Z軸廻りの回転方向)における位置決めを行う位置決め要素10が設けられている。
【0037】
位置決め要素10は、下側プレート2Bから伸びてフレーム1に沿って下方に延在するように構成される。例えば、下側プレート2Bから折り曲げられて構成されたり、溶接などにより下側プレート2Bに接続されることができる。
【0038】
このような位置決め要素10を備えた実施例2によれば、フレーム1に対する下側プレート2Bの車幅方向及びヨー方向(Z軸廻りの回転方向)における位置決めを行うことができるので、組み付け時のバラツキなどを抑制することができ、安定した品質を提供することができる。
【実施例3】
【0039】
実施例3は、フレーム1にボルト穴が明いている場合や穴明け加工等が可能な場合に適用され、図9に示すように、位置決め要素11が、下側プレート2Bから伸びてフレーム1に沿って下方に延在するように構成される。
【0040】
更に、位置決め要素11にはボルト穴が開口されており、フレーム1のボルト穴と位置合わせされて、固定用ボルト12が挿通されるようになっている。そして、図9に示すように、ナット等を介して固定用ボルト12を締結することで、位置決め要素11、下側プレート2B延いてはマウンティング2がフレーム1へ締結固定されるようになっている。
【0041】
かかる実施例3によれば、フレーム1に対する下側プレート2Bの車幅方向及びヨー方向(Z軸廻りの回転方向)における位置決めを行いつつ、下側プレート2B延いてはマウンティング2をフレーム1に締結固定することができるので、構成の簡略化や軽量化をより一層促進しながら、組み付け時のバラツキなどを抑制することができ安定した品質を提供することができる。
【0042】
なお、実施例2や実施例3においても、実施例1と同様に、ラバー要素2Aを車両前後方向において複数に分割した構成とすることができる。
【0043】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用荷台支持構造及び装置の全体的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の車両用荷台支持構造及び装置を車両前後方向で切断した断面図である。
【図3】図1の車両用荷台支持構造及び装置を車両前後方向から見た側面図である。
【図4】図1の車両用荷台支持構造及び装置を荷台方向から見た上面図である。
【図5】同上実施例の車両用荷台支持装置を抜き出して示す斜視図である。
【図6】従来の課題について説明をする図である。
【図7】同上実施例に係る補強部材についての説明をする図である。
【図8】実施例2に係る車両用荷台支持構造及び装置の構成例を示す図である。
【図9】実施例3に係る車両用荷台支持構造及び装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 フレーム
2 マウンティング(本発明に係る支持装置)
2A ラバー要素(本発明に係る弾性要素)
2B 下側プレート(本発明に係るフレーム側部材)
2C 上側プレート(本発明に係る荷台側部材)
5 補強部材
10 位置決め要素
11 位置決め要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに取り付けられるフレーム側部材と、荷台に取り付けられる荷台側部材と、の間に介装される弾性要素を含んで構成され、
前記フレーム側部材には、フレームを挟んで両側に一対のボルト穴が開口され、
フレーム下側でフレームと略直交して配設される固定部材に、前記一対のボルト穴に対応する一対のボルト穴が開口され、
これら一対のボルト穴に挿通される一対のボルトを介して、前記フレーム側部材をフレームに締結固定するものにおいて、
前記弾性要素が、車両前後方向において複数に分割されていると共に、
この分割された弾性要素間を通過して、前記フレーム側部材に開口される一対のボルト穴間に延在され、当該一対のボルトにより共締めされる補強部材が配設されることを特徴とする車両用荷台支持装置。
【請求項2】
前記補強部材が中空状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用荷台支持装置。
【請求項3】
前記フレーム側部材が、フレームとの間でヨー方向における位置決めを行う位置決め要素を含んで構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用荷台支持構造。
【請求項4】
前記位置決め要素は、フレーム側部材からフレームに沿って下側に伸びて形成される要素であることを特徴とする請求項3に記載の車両用荷台支持装置。
【請求項5】
車両のフレームに荷台を支持させるための車両用荷台支持装置であって、
車両のフレームに取り付けられるフレーム側部材と、荷台に取り付けられる荷台側部材と、の間に介装される弾性要素を含んで構成され、
前記フレーム側部材が、フレームとの間でヨー方向における位置決めを行う位置決め要素を含んで構成されたことを特徴とする車両用荷台支持装置。
【請求項6】
前記位置決め要素は、フレーム側部材からフレームに沿って下側に伸びて形成される要素であることを特徴とする請求項5に記載の車両用荷台支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25772(P2011−25772A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171572(P2009−171572)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】