車両用電子キーシステム
【課題】送信アンテナを車両のピラーの内部に配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】送信アンテナ13は、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両を側方から見たとき、送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPaの軸線に直交するように当該送信アンテナ13をフロントピラーPaの内部に配設するようにした。このため、送信アンテナ13の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に最も近接した状態となる。したがって、送信アンテナ13の両端から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。
【効果】車室外において、電子キー15の検知領域Eを好適に確保することができる。
【解決手段】送信アンテナ13は、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両を側方から見たとき、送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPaの軸線に直交するように当該送信アンテナ13をフロントピラーPaの内部に配設するようにした。このため、送信アンテナ13の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に最も近接した状態となる。したがって、送信アンテナ13の両端から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。
【効果】車室外において、電子キー15の検知領域Eを好適に確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子キーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが電子キーを携帯して車両に接近又は離間するに際して、電子キーと車両との間の無線通信を通じてドアの解錠又は施錠を行う車両用電子キーシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両用電子キーシステムにあっては、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアのドアハンドルノブに設けられた複数個の送信アンテナを備え、各送信アンテナを通じて応答要求信号が発信されることにより、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアの周辺に電子キーの検知領域を形成するようになっている。そして、ユーザが電子キーを携帯して車両に接近して前記検知領域内に入ると、電子キーは前記応答要求信号を受けて所定の識別コードを含む応答信号を返信する。この返信された応答信号が車室内に設けられた受信アンテナを介して受信されると、車両の制御装置は、前記受信した応答信号に含まれる所定の識別コードの妥当性を判断し、妥当である旨判断したときには、車両のドアを電子的に解錠又は解錠許可する。なお、運転席側ドア及び助手席側ドアのドアハンドルノブに代えて、左右のドアミラーに送信アンテナを搭載するようにした電子キーシステムも知られている。
【特許文献1】特開2000−160897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来の電子キーシステムでは、送信アンテナをドアハンドルノブに搭載するようにしていたので、次のような問題があった。すなわち、ドアハンドルノブはユーザが把持するものであるので、その使用態様に応じた体格に設定される。このため、ドアハンドルノブの体格の拡大にはある程度限界がある。また、ドアハンドルノブの形状及びサイズは、メーカ及び車種等によって異なるという実情もある。このため、送信アンテナは、必要とされる通信特性を確保しつつドアハンドルノブに確保される搭載スペースに合わせて、また、ドアハンドルノブは、搭載される送信アンテナに合わせて設計する必要があった。したがって、送信アンテナの設計作業を単独で進めることは困難であり、しかもメーカ及び車種毎に設計する必要があった。
【0004】
近年では、前述の電子キーシステムは、車両に標準搭載されつつある。このため、電子キーシステム、ひいてはその構成部品である送信アンテナの生産性の向上も強く求められている。しかし、前述のことから、送信アンテナとして、メーカ及び車種等によらず使用可能な汎用品(汎用アンテナ)を採用することが困難であった。そしてこのことは、送信アンテナ、ひいては車両用電子キーシステムの生産性を高める上での阻害要因となっていた。さらに、送信アンテナとして汎用品が使用できないことは、送信アンテナ、ひいては電子キーシステムの製品コストの増大の一因ともなっていた。なお、こうした問題は、左右のドアミラーに送信アンテナを配設するようにした電子キーシステムにおいても同様に存在していた。
【0005】
この問題を解決するために、本願出願人は、前記送信アンテナを車両のピラーに配設することを検討している。これは、次のような理由による。すなわち、一般に、車両のピラーは、例えばドアノブ及びドアミラー等に比べて、内部スペースに余裕がある。このため、ピラーの内部には、送信アンテナの搭載スペースの確保が容易である。したがって、その比較的大きな搭載スペースを確保することができるピラーに送信アンテナを配設するようにすれば、送信アンテナのサイズにはある程度の自由度を持たせることが可能となる。このため、メーカ及び車種によって形状及びサイズ等が異なるドアノブ及びドアミラー等に合わせて、専用の送信アンテナを設計する必要がない。すなわち、送信アンテナとして、メーカ及び車種毎に専用に設計されたアンテナではなく、同一規格のアンテナを汎用することができる。したがって、送信アンテナの設計が簡素化されるとともに、車両用電子キーシステムの生産性が高められ、ひいては製品コストを抑えることができる。
【0006】
送信アンテナのピラーへの配設態様としては、図10に示されるように、例えば送信アンテナ51をピラー(フロントピラー)52の軸線に沿うように配設することが考えられる。詳述すると、図11に示されるように、送信アンテナ51は、棒状の鉄心51aと、その鉄心51aに螺旋状に巻回されたコイル51bとを備えたいわゆるバーアンテナが採用されることが多い。このため、送信アンテナ51は、ピラー52の延びる方向に沿うように配設するのが自然である。
【0007】
また、図11に示されるように、ピラー52は、磁性体により形成されたピラー本体52a及び合成樹脂材料により例えば断面コの字状に形成されたピラーカバー52bを備えるとともに、例えば両者間に形成された収容空間53に送信アンテナ51を配設することが考えられる。しかし、この場合には、次のような問題が懸念される。すなわち、送信アンテナ51の指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。このため、前述したように、送信アンテナ51をピラー52の軸線に沿うように配設した場合には、当該送信アンテナ51の両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束の多くは、磁性体であるピラー本体52aにより車外への伝播が阻害される。したがって、車外への電波放射が小さくなり、十分な検知領域を確保することができないおそれがあった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、送信アンテナを車両のピラーの内部に配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ユーザに所持される電子キーと、車両に搭載されるとともに、当該車両側の送信アンテナ及び受信アンテナを通じて前記電子キーとの間で双方向無線通信を行い、当該通信結果に基づいて車両のドアを解錠又は解錠を許可する制御装置とを備えた車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、その軸線方向の両端部間において磁束が生じるように構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーにおける前記送信アンテナの軸線方向の両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにしたことをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、送信アンテナの軸線方向の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁に近接する。このため、送信アンテナの両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、送信アンテナの両端部に対応するように設けられた開放部を通じて、ピラーを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、送信アンテナを車両のピラーに配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性が好適に確保される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に直交するように配設するようにしたことをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、送信アンテナの軸線方向の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁にいっそう近接する。このため、送信アンテナの両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、ピラーを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。すなわち、電子キーとの間の通信特性がいっそう好適に確保される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、車両の前部側に設けられるフロントピラー、車両の後部側に設けられるリヤピラー、並びにフロントピラー及びリヤピラーの中間部に設けられるセンタピラーのうち少なくとも1つに設けるようにし、前記送信アンテナを前記フロントピラーに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナの後端部が車両の外方を向くように、同じく前記リヤピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの前端部が車両の外方を向くように、同じく前記センタピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナを配設するようにしたことをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、送信アンテナの指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナから生じる磁束は、ピラー、正確には送信アンテナの軸線(より正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する2つの楕円を描くように分布する。このため、送信アンテナをフロントピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその後端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の後方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の後方へ拡大する。また、送信アンテナをリヤピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその前端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の前方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の前方へ拡大する。さらに、送信アンテナをセンタピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の前方及び後方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の前後方向において好適に確保される。したがって、送信アンテナをフロントピラー、リヤピラー及びセンタピラーのいずれに配設するようにした場合であれ、車両と電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる。なお、送信アンテナへ供給する電流を増大させる必要はない。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記ピラーは、磁性体により形成されたピラー本体と、当該ピラー本体の車室内側の側面を覆うように設けられるピラーカバーとを備え、前記ピラーカバーのピラー本体側の側面には、前記送信アンテナを収容可能とした収容部を形成するとともに、当該収容部に前記送信アンテナを配設するようにし、前記ピラーカバーは、合成樹脂材料により形成することにより前記開放部として機能するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、送信アンテナから生じる磁束に対する磁性体の影響が抑制される。すなわち、送信アンテナから出る磁束のうち、ピラー本体側へ向かう磁束は磁性体であるピラー本体により阻害されるものの、それ以外の磁束の分布は何ら阻害されることはない。このため、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記ピラーは、磁性体により中空状に形成されたピラー本体を備え、前記送信アンテナは、前記ピラー本体の内部に配設するとともに、当該ピラー本体において、送信アンテナの両端部に対応する側壁には、前記開放部として透孔を形成することにより、送信アンテナからの磁束を開放するようにしたことをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、送信アンテナの両端部から出る磁束は、磁性体であるピラー本体に阻害されることなく、透孔を通じて好適に車外に伝播する。このため、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、送信アンテナを車両のピラーの内部に配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を、車両用電子キーシステムに具体化した第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、車両用電子キーシステム11は、車両に搭載される制御装置12、車両の屋根を支えるフロントピラーPaの内部に配設される送信アンテナ13、車室内に配設される受信アンテナ14、及びユーザに所持される電子キー15を備えている。制御装置12は、電子キー15に応答を要求する応答要求信号Sreqを生成するとともに、当該信号を所定の制御周期で送信アンテナ13を通じて車外に発信する。これにより、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアの周辺には、電子キー15の検知領域Eが形成される。
【0022】
そして、ユーザが電子キー15を所持して施錠状態の車両に接近して前記検知領域E内に入ると、電子キー15は前記応答要求信号Sreqを受けて所定の識別コードを含む応答信号Srepを返信する。この返信された応答信号Srepが車室内に設けられた受信アンテナ14を介して受信されると、制御装置12は、当該受信した応答信号Srepに含まれる所定の識別コードの妥当性を判断し、妥当である旨判断したときには、車両のドアを電子的に解錠する。なお、前記識別コードの妥当性は、当該識別コードと車両(正確には、制御装置12)に登録された識別コードとが一致するかどうかにより判断される。一方、ユーザが電子キー15を所持して解錠状態の車両から離間して前記検知領域E外に出ると、このことを制御装置12は、電子キー15からの応答信号Srepが途絶えることにより検知して車両のドアを電子的に施錠する。
【0023】
次に、前記送信アンテナ13のフロントピラーPaにおける配設の態様について、詳細に説明する。
図3に示すように、送信アンテナ13は、例えばフェライトにより棒状に形成された鉄心13aと、その鉄心13aに螺旋状に巻回されたコイル13bとを備えたいわゆるバーアンテナが採用されている。そして、当該送信アンテナ13は、合成樹脂材料により角柱状に形成された図示しないアンテナケースに収容されるとともに、当該ケースに設けられた図示しない取付部を介して車両側(後述するピラー本体21の車室内側の側面)に固定される。
【0024】
同図に示すように、フロントピラーPaは、鉄材等の磁性体金属により角筒状に形成されたピラー本体21及び当該ピラー本体21の車室内側の側面を覆うように配設された装飾用のピラーカバー22を備えている。ピラーカバー22は、合成樹脂材料の射出成型等により断面コの字状に形成されるとともに、当該ピラーカバー22の内部は、送信アンテナ13の収容部22aとされている。そして、当該収容部22a、正確には、当該収容部22aの内面と前記ピラー本体21の車室内側の側面とで囲まれることにより形成される収容空間Spには、前記送信アンテナ13が次のように配設されている。
【0025】
すなわち、図1に示されるように、送信アンテナ13は、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の後端部が車両の外方を向くように配設されている。ここで、送信アンテナ13の指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナ13から生じる磁束は、当該送信アンテナ13の軸線(正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する楕円を描くように分布する。このため、車両を上から見たときに、送信アンテナ13をその後端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナ13からの磁束は、車室外の後方へ向かい、電子キー15の検知領域Eは車両の後方へ拡大する。
【0026】
また、図2に示されるように、送信アンテナ13は、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線に直交するように配設されている。このため、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、フロントピラーPaの互いに反対側の2つの側縁部(正確には、ピラーカバー22の互いに対向する2つの側壁)に近接する。したがって、図3に併せ示されるように、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)を回り込むようにして、車両の外側において好適に分布する。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)送信アンテナ13は、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両を側方から見たとき、送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPaの軸線に直交するように当該送信アンテナ13をフロントピラーPaの内部に配設するようにした。
【0028】
このため、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に最も近接した状態となる。このため、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。すなわち、送信アンテナ13を車両のフロントピラーPaの内部に配設するようにした場合であれ、車室外において、電子キー15の検知領域Eを好適に確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を好適に確保することができる。
【0029】
(2)送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するにあたって、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13はその後端部が車両の外方を向くように配設するようにした。ここで、コイル状のアンテナの指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナ13から生じる磁束は、フロントピラーPa、正確には送信アンテナ13の軸線(より正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する2つの楕円を描くように分布する。このため、送信アンテナ13からの磁束は、車室外の後方へ向かい、検知領域Eを車両の後部側へ拡大させることができる。したがって、送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するようにした場合において、車両と電子キー15との間の通信特性を好適に確保することができる。なお、送信アンテナ13へ供給する電流を増大させる必要はない。
【0030】
(3)フロントピラーPaは、磁性体により形成されたピラー本体21と、当該ピラー本体21の車室内側の側面を覆うように設けられたピラーカバー22とを備えてなる。そして、ピラーカバー22は、合成樹脂材料により形成するとともに、当該ピラーカバー22のピラー本体側の側面には、送信アンテナ13を収容可能とした収容部22aを形成し、当該収容部22aに送信アンテナ13を配設するようにした。
【0031】
ピラーカバー22は合成樹脂材料により形成されるので、送信アンテナ13の収容部22aを射出成型等により簡単に形成することができる。また、送信アンテナ13から生じる磁束に対する磁性体の影響が抑制される。すなわち、送信アンテナ13から出る磁束のうち、ピラー本体21側へ向かう磁束は磁性体であるピラー本体により阻害(遮断)されるものの、それ以外の磁束の分布は何ら阻害されることはない。このため、車室外において、検知領域Eの形成が可能となる。ちなみに、ピラー本体21内に、送信アンテナ13を単に収容するようにした場合には、送信アンテナ13の周りは磁性体であるピラー本体21の側壁に囲まれることとなり、磁束の車室外への伝播は困難となる。
【0032】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図4に示されるように、送信アンテナ13は、前記第1の実施の形態と同様に、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の後端部が車両の外方を向くように配設されている。また、図5に併せて示すように、送信アンテナ13は、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線に交差するように配設されている。具体的には、送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPaの軸線とのなす角度θが、例えば20°〜30°となるように、当該送信アンテナ13はフロントピラーPa内(正確には、収容空間Sp内)に配設されている。
【0033】
したがって、本実施の形態によれば、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に近接した状態となる。このため、図6に示されるように、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、車室外において、電子キー15の検知領域Eを確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を確保することができる。
【0034】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図7に示されるように、送信アンテナ13は、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線とが平行をなすように配設されている。また、図2に併せて示すように、送信アンテナ13は、第1の実施の形態と同様に、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線と直角をなすように配設されている。このようにした場合であれ、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、車室外において、電子キー15の検知領域Eを確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を確保することができる。
【0035】
なお、車両を上からみたときに、送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPaの軸線とが一致するように、送信アンテナ13を配設するようにしてもよい。また、送信アンテナ13は、第2の実施の形態と同様に、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線と交差するように配設するようにしてもよい。
【0036】
以上詳述した第1〜第3の実施の形態のうち、第1の実施の形態に示されるように送信アンテナ13を配設した場合に、最も好適な検知領域Eを確保することができる。
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
【0037】
・第1〜第3の実施の形態において、送信アンテナ13は、ピラーカバー22側に固定するようにしてもよい。
・第1〜第3の実施の形態においては、電子キー15と車両との識別コードの照合が成立した場合には、車両のドア錠を電子的に解錠するようにしたが、次のようにしてもよい。すなわち、識別コードの照合が成立した場合にはドアの解錠を許可するとともに、例えばドアハンドルノブに設けられたタッチセンサによりユーザによるドアの開動作が検出されたときにドア錠を電子的に解錠するようにしてもよい。
【0038】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するようにしたが、図1に二点鎖線で示されるように、送信アンテナ13は、車両の後部側に設けられるリヤピラーPcに配設してもよいし、フロントピラーPaとリヤピラーPcとの中間部に設けられるセンタピラーPbに配設してもよい。また、送信アンテナ13は、フロントピラーPa、リヤピラーPc及びセンタピラーPbの少なくとも1つ(正確には、左右の一対)に設ければよいので、次のような態様で送信アンテナ13を配設するようにしてもよい。すなわち、フロントピラーPa及びセンタピラーPb、フロントピラーPa及びリヤピラーPc、センタピラーPb及びリヤピラーPcのいずれかの組み合わせで、送信アンテナ13を配設する。また、フロントピラーPa、リヤピラーPc及びセンタピラーPbのそれぞれに送信アンテナ13を配設する。このように、複数箇所に送信アンテナ13を設けるようにした場合には、車室外に形成される検知領域Eが相互に補完される。その結果、車両と電子キー15との間の無線通信を好適に行うことができる。なお、リヤピラーPc及びセンタピラーPbの構成は、フロントピラーPaと同様の構成とされるので、その詳細な説明を省略する。また、送信アンテナ13を、各ピラーのうちどのピラーに設けるのか、又は前述した各ピラーの組み合わせのうちどの組み合わせを採用するのかは、車種等に応じて適宜設定される。
【0039】
そしてさらに、送信アンテナ13をリヤピラーPcに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の前端部が車両の外方を向くように設けることが好ましい。このようにすれば、車室外の前方へ向かう磁束の量、すなわち検知領域Eが車両の前部側へ拡大する。同じくセンタピラーPbに設ける場合には、当該送信アンテナ13の軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナ13を配設することが好ましい。このようにすれば、車室外の前方及び後方へ向かって伝播する磁束の量、すなわち検知領域Eが車両の前後方向において好適に確保される。
【0040】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13として鉄心13aに導線を螺旋状に巻回してなるコイル13bを備えたいわゆるバーアンテナを採用するようにしたが、鉄心13aを省略するようにしてもよい。すなわち、送信アンテナ13として、いわゆる空心コイルアンテナを採用する。また、送信アンテナ13として、コイル13bを備える型式のアンテナ以外にも、例えば平面アンテナ等、他の型式のアンテナを採用するようにしてもよい。
【0041】
・ピラーは、車両の前部側からA、B、C、D等のアルファベットを冠して呼ばれることもある。第1〜第3の実施の形態においては、フロントピラーPaがAピラーに、センタピラーPbがBピラーに、そしてリヤピラーPcがCピラーに相当する。ここで、図1に示される車両よりも車長の大きいバン等の車両においては、Cピラーよりもさらに車両の後部側に、4番目のピラー、すなわちDピラーが設けられる場合がある。本明細書では、このDピラーはリヤピラーに包含される。
【0042】
・送信アンテナ13の両端からの磁束を、ピラー本体21を回り込ませるという観点から、送信アンテナ13を、次のように設けるようにしてもよい。例えば、第1の実施の形態において、図8(a)に示すように、送信アンテナ13の両端面と、車両の前後方向において互いに反対側に位置するピラー本体21の2つの側面とが面一となるように、送信アンテナ13を設けるようにしてもよい。また、図8(b)に示すように、ピラーカバー22の互いに対向する側壁に、2つの孔31,31を形成するとともに、それら孔31,31に送信アンテナ13の両端部を内側から挿入することにより、当該送信アンテナ13の両端部を外部に露出させるようにしてもよい。さらに、図8(c)に示すように、ピラーカバー22の互いに対向する側壁に形成された2つの孔31,31を通じて、送信アンテナ13の両端部を外部に突出させるようにしてもよい。このようにすれば、ピラー本体21を回り込んで車室外に伝播する送信アンテナ13からの磁束の量が確保されるとともに、車室外における検知領域Eが好適に確保される。なお、送信アンテナ13はなるべくピラー本体21に近接させるように配設することが好ましい。
【0043】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13は、ピラー本体21とピラーカバー22との間に配設するようにしたが、ピラー本体21の内部に設けるようにしてもよい。この場合、図9に示すように、ピラー本体21の車両の前後方向において互いに対向する2つの側壁に例えば透孔41を設ける等して、送信アンテナ13からの磁束を開放する。この透孔41は、送信アンテナ13のコイル開口端に対応するように形成する。このようにすれば、送信アンテナ13の2つのコイル開口端から出る磁束は、磁性体であるピラー本体21に阻害されることなく、好適に車室外に伝播する。したがって、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【0044】
<他の技術的思想>
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ユーザに所持される電子キーを備え、当該電子キーは、車両側の送信アンテナを介して送信される応答要求信号を受信した場合には所定の識別コードを含む応答信号を返信し、当該返信された応答信号が車両側の受信アンテナを介して車両に受信された場合、当該車両の制御装置は、前記受信した応答信号に含まれる所定の識別コードの妥当性を判断するとともに、妥当である旨判断したときには車両のドアを電子的に解錠又は解錠許可する車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーの送信アンテナの両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにした車両用電子キーシステム。
【0045】
この構成によれば、送信アンテナの両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁に近接する。このため、送信アンテナの2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、送信アンテナの両端部に対応するように設けられた開放部を通じて、ピラーを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、送信アンテナを車両のピラーに配設するようにした場合であれ、車外において電子キーの検知領域が好適に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図2】同じく車両を側方から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す側面図。
【図3】図2の1−1線断面図。
【図4】第2の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図5】同じく車両を側方から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す側面図。
【図6】図5の2−2線断面図。
【図7】第3の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図8】(a),(b),(c)は、他の実施の形態における図2の1−1線断面図。
【図9】他の実施の形態における図2の1−1線断面図。
【図10】車両を側方から見たときの送信アンテナのフロントピラーに対する従来の配設の態様を示す側面図。
【図11】図10の3−3線断面図。
【符号の説明】
【0047】
11…車両用電子キーシステム、12…制御装置、13…送信アンテナ、14…受信アンテナ、15…電子キー、21…ピラー本体、22…磁束の開放部として機能するピラーカバー、22a…収容部、31…開放部を構成する孔、41…開放部を構成する透孔、Pa…フロントピラー、Pb…センタピラー、Pc…リヤピラー、Srep…応答信号、Sreq…応答要求信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子キーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが電子キーを携帯して車両に接近又は離間するに際して、電子キーと車両との間の無線通信を通じてドアの解錠又は施錠を行う車両用電子キーシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この車両用電子キーシステムにあっては、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアのドアハンドルノブに設けられた複数個の送信アンテナを備え、各送信アンテナを通じて応答要求信号が発信されることにより、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアの周辺に電子キーの検知領域を形成するようになっている。そして、ユーザが電子キーを携帯して車両に接近して前記検知領域内に入ると、電子キーは前記応答要求信号を受けて所定の識別コードを含む応答信号を返信する。この返信された応答信号が車室内に設けられた受信アンテナを介して受信されると、車両の制御装置は、前記受信した応答信号に含まれる所定の識別コードの妥当性を判断し、妥当である旨判断したときには、車両のドアを電子的に解錠又は解錠許可する。なお、運転席側ドア及び助手席側ドアのドアハンドルノブに代えて、左右のドアミラーに送信アンテナを搭載するようにした電子キーシステムも知られている。
【特許文献1】特開2000−160897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記従来の電子キーシステムでは、送信アンテナをドアハンドルノブに搭載するようにしていたので、次のような問題があった。すなわち、ドアハンドルノブはユーザが把持するものであるので、その使用態様に応じた体格に設定される。このため、ドアハンドルノブの体格の拡大にはある程度限界がある。また、ドアハンドルノブの形状及びサイズは、メーカ及び車種等によって異なるという実情もある。このため、送信アンテナは、必要とされる通信特性を確保しつつドアハンドルノブに確保される搭載スペースに合わせて、また、ドアハンドルノブは、搭載される送信アンテナに合わせて設計する必要があった。したがって、送信アンテナの設計作業を単独で進めることは困難であり、しかもメーカ及び車種毎に設計する必要があった。
【0004】
近年では、前述の電子キーシステムは、車両に標準搭載されつつある。このため、電子キーシステム、ひいてはその構成部品である送信アンテナの生産性の向上も強く求められている。しかし、前述のことから、送信アンテナとして、メーカ及び車種等によらず使用可能な汎用品(汎用アンテナ)を採用することが困難であった。そしてこのことは、送信アンテナ、ひいては車両用電子キーシステムの生産性を高める上での阻害要因となっていた。さらに、送信アンテナとして汎用品が使用できないことは、送信アンテナ、ひいては電子キーシステムの製品コストの増大の一因ともなっていた。なお、こうした問題は、左右のドアミラーに送信アンテナを配設するようにした電子キーシステムにおいても同様に存在していた。
【0005】
この問題を解決するために、本願出願人は、前記送信アンテナを車両のピラーに配設することを検討している。これは、次のような理由による。すなわち、一般に、車両のピラーは、例えばドアノブ及びドアミラー等に比べて、内部スペースに余裕がある。このため、ピラーの内部には、送信アンテナの搭載スペースの確保が容易である。したがって、その比較的大きな搭載スペースを確保することができるピラーに送信アンテナを配設するようにすれば、送信アンテナのサイズにはある程度の自由度を持たせることが可能となる。このため、メーカ及び車種によって形状及びサイズ等が異なるドアノブ及びドアミラー等に合わせて、専用の送信アンテナを設計する必要がない。すなわち、送信アンテナとして、メーカ及び車種毎に専用に設計されたアンテナではなく、同一規格のアンテナを汎用することができる。したがって、送信アンテナの設計が簡素化されるとともに、車両用電子キーシステムの生産性が高められ、ひいては製品コストを抑えることができる。
【0006】
送信アンテナのピラーへの配設態様としては、図10に示されるように、例えば送信アンテナ51をピラー(フロントピラー)52の軸線に沿うように配設することが考えられる。詳述すると、図11に示されるように、送信アンテナ51は、棒状の鉄心51aと、その鉄心51aに螺旋状に巻回されたコイル51bとを備えたいわゆるバーアンテナが採用されることが多い。このため、送信アンテナ51は、ピラー52の延びる方向に沿うように配設するのが自然である。
【0007】
また、図11に示されるように、ピラー52は、磁性体により形成されたピラー本体52a及び合成樹脂材料により例えば断面コの字状に形成されたピラーカバー52bを備えるとともに、例えば両者間に形成された収容空間53に送信アンテナ51を配設することが考えられる。しかし、この場合には、次のような問題が懸念される。すなわち、送信アンテナ51の指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。このため、前述したように、送信アンテナ51をピラー52の軸線に沿うように配設した場合には、当該送信アンテナ51の両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束の多くは、磁性体であるピラー本体52aにより車外への伝播が阻害される。したがって、車外への電波放射が小さくなり、十分な検知領域を確保することができないおそれがあった。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、送信アンテナを車両のピラーの内部に配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ユーザに所持される電子キーと、車両に搭載されるとともに、当該車両側の送信アンテナ及び受信アンテナを通じて前記電子キーとの間で双方向無線通信を行い、当該通信結果に基づいて車両のドアを解錠又は解錠を許可する制御装置とを備えた車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、その軸線方向の両端部間において磁束が生じるように構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーにおける前記送信アンテナの軸線方向の両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにしたことをその要旨とする。
【0010】
本発明によれば、送信アンテナの軸線方向の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁に近接する。このため、送信アンテナの両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、送信アンテナの両端部に対応するように設けられた開放部を通じて、ピラーを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、送信アンテナを車両のピラーに配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性が好適に確保される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に直交するように配設するようにしたことをその要旨とする。
【0012】
本発明によれば、送信アンテナの軸線方向の両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁にいっそう近接する。このため、送信アンテナの両端部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、ピラーを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。すなわち、電子キーとの間の通信特性がいっそう好適に確保される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、車両の前部側に設けられるフロントピラー、車両の後部側に設けられるリヤピラー、並びにフロントピラー及びリヤピラーの中間部に設けられるセンタピラーのうち少なくとも1つに設けるようにし、前記送信アンテナを前記フロントピラーに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナの後端部が車両の外方を向くように、同じく前記リヤピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの前端部が車両の外方を向くように、同じく前記センタピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナを配設するようにしたことをその要旨とする。
【0014】
本発明によれば、送信アンテナの指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナから生じる磁束は、ピラー、正確には送信アンテナの軸線(より正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する2つの楕円を描くように分布する。このため、送信アンテナをフロントピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその後端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の後方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の後方へ拡大する。また、送信アンテナをリヤピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその前端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の前方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の前方へ拡大する。さらに、送信アンテナをセンタピラーに配設する場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナをその軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように配設することにより、送信アンテナからの磁束は、車室外の前方及び後方へ向かい、電子キーの検知領域は車両の前後方向において好適に確保される。したがって、送信アンテナをフロントピラー、リヤピラー及びセンタピラーのいずれに配設するようにした場合であれ、車両と電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる。なお、送信アンテナへ供給する電流を増大させる必要はない。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記ピラーは、磁性体により形成されたピラー本体と、当該ピラー本体の車室内側の側面を覆うように設けられるピラーカバーとを備え、前記ピラーカバーのピラー本体側の側面には、前記送信アンテナを収容可能とした収容部を形成するとともに、当該収容部に前記送信アンテナを配設するようにし、前記ピラーカバーは、合成樹脂材料により形成することにより前記開放部として機能するようにしたことをその要旨とする。
【0016】
本発明によれば、送信アンテナから生じる磁束に対する磁性体の影響が抑制される。すなわち、送信アンテナから出る磁束のうち、ピラー本体側へ向かう磁束は磁性体であるピラー本体により阻害されるものの、それ以外の磁束の分布は何ら阻害されることはない。このため、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記ピラーは、磁性体により中空状に形成されたピラー本体を備え、前記送信アンテナは、前記ピラー本体の内部に配設するとともに、当該ピラー本体において、送信アンテナの両端部に対応する側壁には、前記開放部として透孔を形成することにより、送信アンテナからの磁束を開放するようにしたことをその要旨とする。
【0018】
本発明によれば、送信アンテナの両端部から出る磁束は、磁性体であるピラー本体に阻害されることなく、透孔を通じて好適に車外に伝播する。このため、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、送信アンテナを車両のピラーの内部に配設するようにした場合であれ、電子キーとの間の通信特性を好適に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、本発明を、車両用電子キーシステムに具体化した第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、車両用電子キーシステム11は、車両に搭載される制御装置12、車両の屋根を支えるフロントピラーPaの内部に配設される送信アンテナ13、車室内に配設される受信アンテナ14、及びユーザに所持される電子キー15を備えている。制御装置12は、電子キー15に応答を要求する応答要求信号Sreqを生成するとともに、当該信号を所定の制御周期で送信アンテナ13を通じて車外に発信する。これにより、運転席側ドア、助手席側ドア、後席右側ドア及び後席左側ドアの周辺には、電子キー15の検知領域Eが形成される。
【0022】
そして、ユーザが電子キー15を所持して施錠状態の車両に接近して前記検知領域E内に入ると、電子キー15は前記応答要求信号Sreqを受けて所定の識別コードを含む応答信号Srepを返信する。この返信された応答信号Srepが車室内に設けられた受信アンテナ14を介して受信されると、制御装置12は、当該受信した応答信号Srepに含まれる所定の識別コードの妥当性を判断し、妥当である旨判断したときには、車両のドアを電子的に解錠する。なお、前記識別コードの妥当性は、当該識別コードと車両(正確には、制御装置12)に登録された識別コードとが一致するかどうかにより判断される。一方、ユーザが電子キー15を所持して解錠状態の車両から離間して前記検知領域E外に出ると、このことを制御装置12は、電子キー15からの応答信号Srepが途絶えることにより検知して車両のドアを電子的に施錠する。
【0023】
次に、前記送信アンテナ13のフロントピラーPaにおける配設の態様について、詳細に説明する。
図3に示すように、送信アンテナ13は、例えばフェライトにより棒状に形成された鉄心13aと、その鉄心13aに螺旋状に巻回されたコイル13bとを備えたいわゆるバーアンテナが採用されている。そして、当該送信アンテナ13は、合成樹脂材料により角柱状に形成された図示しないアンテナケースに収容されるとともに、当該ケースに設けられた図示しない取付部を介して車両側(後述するピラー本体21の車室内側の側面)に固定される。
【0024】
同図に示すように、フロントピラーPaは、鉄材等の磁性体金属により角筒状に形成されたピラー本体21及び当該ピラー本体21の車室内側の側面を覆うように配設された装飾用のピラーカバー22を備えている。ピラーカバー22は、合成樹脂材料の射出成型等により断面コの字状に形成されるとともに、当該ピラーカバー22の内部は、送信アンテナ13の収容部22aとされている。そして、当該収容部22a、正確には、当該収容部22aの内面と前記ピラー本体21の車室内側の側面とで囲まれることにより形成される収容空間Spには、前記送信アンテナ13が次のように配設されている。
【0025】
すなわち、図1に示されるように、送信アンテナ13は、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の後端部が車両の外方を向くように配設されている。ここで、送信アンテナ13の指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナ13から生じる磁束は、当該送信アンテナ13の軸線(正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する楕円を描くように分布する。このため、車両を上から見たときに、送信アンテナ13をその後端部が車両の外方を向くように配設することにより、送信アンテナ13からの磁束は、車室外の後方へ向かい、電子キー15の検知領域Eは車両の後方へ拡大する。
【0026】
また、図2に示されるように、送信アンテナ13は、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線に直交するように配設されている。このため、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、フロントピラーPaの互いに反対側の2つの側縁部(正確には、ピラーカバー22の互いに対向する2つの側壁)に近接する。したがって、図3に併せ示されるように、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)を回り込むようにして、車両の外側において好適に分布する。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)送信アンテナ13は、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両を側方から見たとき、送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPaの軸線に直交するように当該送信アンテナ13をフロントピラーPaの内部に配設するようにした。
【0028】
このため、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に最も近接した状態となる。このため、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に好適に伝播する。すなわち、送信アンテナ13を車両のフロントピラーPaの内部に配設するようにした場合であれ、車室外において、電子キー15の検知領域Eを好適に確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を好適に確保することができる。
【0029】
(2)送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するにあたって、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13はその後端部が車両の外方を向くように配設するようにした。ここで、コイル状のアンテナの指向性は、その軸線に対して直交する8の字状をなす。すなわち、送信アンテナ13から生じる磁束は、フロントピラーPa、正確には送信アンテナ13の軸線(より正確には、その中点)を中心として互いに反対側に位置する2つの楕円を描くように分布する。このため、送信アンテナ13からの磁束は、車室外の後方へ向かい、検知領域Eを車両の後部側へ拡大させることができる。したがって、送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するようにした場合において、車両と電子キー15との間の通信特性を好適に確保することができる。なお、送信アンテナ13へ供給する電流を増大させる必要はない。
【0030】
(3)フロントピラーPaは、磁性体により形成されたピラー本体21と、当該ピラー本体21の車室内側の側面を覆うように設けられたピラーカバー22とを備えてなる。そして、ピラーカバー22は、合成樹脂材料により形成するとともに、当該ピラーカバー22のピラー本体側の側面には、送信アンテナ13を収容可能とした収容部22aを形成し、当該収容部22aに送信アンテナ13を配設するようにした。
【0031】
ピラーカバー22は合成樹脂材料により形成されるので、送信アンテナ13の収容部22aを射出成型等により簡単に形成することができる。また、送信アンテナ13から生じる磁束に対する磁性体の影響が抑制される。すなわち、送信アンテナ13から出る磁束のうち、ピラー本体21側へ向かう磁束は磁性体であるピラー本体により阻害(遮断)されるものの、それ以外の磁束の分布は何ら阻害されることはない。このため、車室外において、検知領域Eの形成が可能となる。ちなみに、ピラー本体21内に、送信アンテナ13を単に収容するようにした場合には、送信アンテナ13の周りは磁性体であるピラー本体21の側壁に囲まれることとなり、磁束の車室外への伝播は困難となる。
【0032】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図4に示されるように、送信アンテナ13は、前記第1の実施の形態と同様に、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の後端部が車両の外方を向くように配設されている。また、図5に併せて示すように、送信アンテナ13は、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線に交差するように配設されている。具体的には、送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPaの軸線とのなす角度θが、例えば20°〜30°となるように、当該送信アンテナ13はフロントピラーPa内(正確には、収容空間Sp内)に配設されている。
【0033】
したがって、本実施の形態によれば、送信アンテナ13の互いに反対側の端部である2つのループ開口部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置するフロントピラーPaの2つの側縁部に近接した状態となる。このため、図6に示されるように、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、車室外において、電子キー15の検知領域Eを確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を確保することができる。
【0034】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図7に示されるように、送信アンテナ13は、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線とが平行をなすように配設されている。また、図2に併せて示すように、送信アンテナ13は、第1の実施の形態と同様に、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線と直角をなすように配設されている。このようにした場合であれ、送信アンテナ13の2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、フロントピラーPaを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、車室外において、電子キー15の検知領域Eを確保することができる。ひいては、電子キー15との間の通信特性を確保することができる。
【0035】
なお、車両を上からみたときに、送信アンテナ13の軸線とフロントピラーPaの軸線とが一致するように、送信アンテナ13を配設するようにしてもよい。また、送信アンテナ13は、第2の実施の形態と同様に、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナ13の軸線がフロントピラーPa(正確には、ピラー本体21)の軸線と交差するように配設するようにしてもよい。
【0036】
以上詳述した第1〜第3の実施の形態のうち、第1の実施の形態に示されるように送信アンテナ13を配設した場合に、最も好適な検知領域Eを確保することができる。
<他の実施の形態>
なお、各実施の形態は、次のように変更して実施してもよい。
【0037】
・第1〜第3の実施の形態において、送信アンテナ13は、ピラーカバー22側に固定するようにしてもよい。
・第1〜第3の実施の形態においては、電子キー15と車両との識別コードの照合が成立した場合には、車両のドア錠を電子的に解錠するようにしたが、次のようにしてもよい。すなわち、識別コードの照合が成立した場合にはドアの解錠を許可するとともに、例えばドアハンドルノブに設けられたタッチセンサによりユーザによるドアの開動作が検出されたときにドア錠を電子的に解錠するようにしてもよい。
【0038】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13をフロントピラーPaに配設するようにしたが、図1に二点鎖線で示されるように、送信アンテナ13は、車両の後部側に設けられるリヤピラーPcに配設してもよいし、フロントピラーPaとリヤピラーPcとの中間部に設けられるセンタピラーPbに配設してもよい。また、送信アンテナ13は、フロントピラーPa、リヤピラーPc及びセンタピラーPbの少なくとも1つ(正確には、左右の一対)に設ければよいので、次のような態様で送信アンテナ13を配設するようにしてもよい。すなわち、フロントピラーPa及びセンタピラーPb、フロントピラーPa及びリヤピラーPc、センタピラーPb及びリヤピラーPcのいずれかの組み合わせで、送信アンテナ13を配設する。また、フロントピラーPa、リヤピラーPc及びセンタピラーPbのそれぞれに送信アンテナ13を配設する。このように、複数箇所に送信アンテナ13を設けるようにした場合には、車室外に形成される検知領域Eが相互に補完される。その結果、車両と電子キー15との間の無線通信を好適に行うことができる。なお、リヤピラーPc及びセンタピラーPbの構成は、フロントピラーPaと同様の構成とされるので、その詳細な説明を省略する。また、送信アンテナ13を、各ピラーのうちどのピラーに設けるのか、又は前述した各ピラーの組み合わせのうちどの組み合わせを採用するのかは、車種等に応じて適宜設定される。
【0039】
そしてさらに、送信アンテナ13をリヤピラーPcに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナ13の前端部が車両の外方を向くように設けることが好ましい。このようにすれば、車室外の前方へ向かう磁束の量、すなわち検知領域Eが車両の前部側へ拡大する。同じくセンタピラーPbに設ける場合には、当該送信アンテナ13の軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナ13を配設することが好ましい。このようにすれば、車室外の前方及び後方へ向かって伝播する磁束の量、すなわち検知領域Eが車両の前後方向において好適に確保される。
【0040】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13として鉄心13aに導線を螺旋状に巻回してなるコイル13bを備えたいわゆるバーアンテナを採用するようにしたが、鉄心13aを省略するようにしてもよい。すなわち、送信アンテナ13として、いわゆる空心コイルアンテナを採用する。また、送信アンテナ13として、コイル13bを備える型式のアンテナ以外にも、例えば平面アンテナ等、他の型式のアンテナを採用するようにしてもよい。
【0041】
・ピラーは、車両の前部側からA、B、C、D等のアルファベットを冠して呼ばれることもある。第1〜第3の実施の形態においては、フロントピラーPaがAピラーに、センタピラーPbがBピラーに、そしてリヤピラーPcがCピラーに相当する。ここで、図1に示される車両よりも車長の大きいバン等の車両においては、Cピラーよりもさらに車両の後部側に、4番目のピラー、すなわちDピラーが設けられる場合がある。本明細書では、このDピラーはリヤピラーに包含される。
【0042】
・送信アンテナ13の両端からの磁束を、ピラー本体21を回り込ませるという観点から、送信アンテナ13を、次のように設けるようにしてもよい。例えば、第1の実施の形態において、図8(a)に示すように、送信アンテナ13の両端面と、車両の前後方向において互いに反対側に位置するピラー本体21の2つの側面とが面一となるように、送信アンテナ13を設けるようにしてもよい。また、図8(b)に示すように、ピラーカバー22の互いに対向する側壁に、2つの孔31,31を形成するとともに、それら孔31,31に送信アンテナ13の両端部を内側から挿入することにより、当該送信アンテナ13の両端部を外部に露出させるようにしてもよい。さらに、図8(c)に示すように、ピラーカバー22の互いに対向する側壁に形成された2つの孔31,31を通じて、送信アンテナ13の両端部を外部に突出させるようにしてもよい。このようにすれば、ピラー本体21を回り込んで車室外に伝播する送信アンテナ13からの磁束の量が確保されるとともに、車室外における検知領域Eが好適に確保される。なお、送信アンテナ13はなるべくピラー本体21に近接させるように配設することが好ましい。
【0043】
・第1〜第3の実施の形態では、送信アンテナ13は、ピラー本体21とピラーカバー22との間に配設するようにしたが、ピラー本体21の内部に設けるようにしてもよい。この場合、図9に示すように、ピラー本体21の車両の前後方向において互いに対向する2つの側壁に例えば透孔41を設ける等して、送信アンテナ13からの磁束を開放する。この透孔41は、送信アンテナ13のコイル開口端に対応するように形成する。このようにすれば、送信アンテナ13の2つのコイル開口端から出る磁束は、磁性体であるピラー本体21に阻害されることなく、好適に車室外に伝播する。したがって、車室外において、検知領域の形成が可能となる。
【0044】
<他の技術的思想>
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ユーザに所持される電子キーを備え、当該電子キーは、車両側の送信アンテナを介して送信される応答要求信号を受信した場合には所定の識別コードを含む応答信号を返信し、当該返信された応答信号が車両側の受信アンテナを介して車両に受信された場合、当該車両の制御装置は、前記受信した応答信号に含まれる所定の識別コードの妥当性を判断するとともに、妥当である旨判断したときには車両のドアを電子的に解錠又は解錠許可する車両用電子キーシステムにおいて、前記送信アンテナは、導線をらせん状に巻いてなるコイル状のアンテナとして構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーの送信アンテナの両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにした車両用電子キーシステム。
【0045】
この構成によれば、送信アンテナの両端部は、車両の前後方向において互いに反対側に位置する、ピラーの2つの側壁に近接する。このため、送信アンテナの2つのループ開口部から出る磁束のうち、車両の外側へ向かうように生じる磁束は、送信アンテナの両端部に対応するように設けられた開放部を通じて、ピラーを回り込むようにして車両の外側に伝播する。すなわち、送信アンテナを車両のピラーに配設するようにした場合であれ、車外において電子キーの検知領域が好適に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図2】同じく車両を側方から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す側面図。
【図3】図2の1−1線断面図。
【図4】第2の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図5】同じく車両を側方から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す側面図。
【図6】図5の2−2線断面図。
【図7】第3の実施の形態において、車両を上から見たときの送信アンテナの配設の態様を示す平面図。
【図8】(a),(b),(c)は、他の実施の形態における図2の1−1線断面図。
【図9】他の実施の形態における図2の1−1線断面図。
【図10】車両を側方から見たときの送信アンテナのフロントピラーに対する従来の配設の態様を示す側面図。
【図11】図10の3−3線断面図。
【符号の説明】
【0047】
11…車両用電子キーシステム、12…制御装置、13…送信アンテナ、14…受信アンテナ、15…電子キー、21…ピラー本体、22…磁束の開放部として機能するピラーカバー、22a…収容部、31…開放部を構成する孔、41…開放部を構成する透孔、Pa…フロントピラー、Pb…センタピラー、Pc…リヤピラー、Srep…応答信号、Sreq…応答要求信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに所持される電子キーと、車両に搭載されるとともに、当該車両側の送信アンテナ及び受信アンテナを通じて前記電子キーとの間で双方向無線通信を行い、当該通信結果に基づいて車両のドアを解錠又は解錠を許可する制御装置とを備えた車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、その軸線方向の両端部間において磁束が生じるように構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、
さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーにおける前記送信アンテナの軸線方向の両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにした車両用電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に直交するように配設するようにした車両用電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、車両の前部側に設けられるフロントピラー、車両の後部側に設けられるリヤピラー、並びにフロントピラー及びリヤピラーの中間部に設けられるセンタピラーのうち少なくとも1つに設けるようにし、
前記送信アンテナを前記フロントピラーに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナの後端部が車両の外方を向くように、同じく前記リヤピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの前端部が車両の外方を向くように、同じく前記センタピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナを配設するようにした車両用電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記ピラーは、磁性体により形成されたピラー本体と、当該ピラー本体の車室内側の側面を覆うように設けられるピラーカバーとを備え、
前記ピラーカバーのピラー本体側の側面には、前記送信アンテナを収容可能とした収容部を形成するとともに、当該収容部に前記送信アンテナを配設するようにし、
前記ピラーカバーは、合成樹脂材料により形成することにより前記開放部として機能するようにした電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記ピラーは、磁性体により中空状に形成されたピラー本体を備え、
前記送信アンテナは、前記ピラー本体の内部に配設するとともに、当該ピラー本体において、送信アンテナの両端部に対応する側壁には、前記開放部として透孔を形成することにより、送信アンテナからの磁束を開放するようにした電子キーシステム。
【請求項1】
ユーザに所持される電子キーと、車両に搭載されるとともに、当該車両側の送信アンテナ及び受信アンテナを通じて前記電子キーとの間で双方向無線通信を行い、当該通信結果に基づいて車両のドアを解錠又は解錠を許可する制御装置とを備えた車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、その軸線方向の両端部間において磁束が生じるように構成するとともに、車両のピラーの内部に設けるようにし、
さらに、前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該送信アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に交差するように配設するとともに、前記ピラーにおける前記送信アンテナの軸線方向の両端部に対応する部位には、当該送信アンテナの両端部から出る磁束を開放する開放部を設けるようにした車両用電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、車両を側方から見たとき、当該アンテナの軸線が前記ピラーの軸線に直交するように配設するようにした車両用電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用電子キーシステムにおいて、
前記送信アンテナは、車両の前部側に設けられるフロントピラー、車両の後部側に設けられるリヤピラー、並びにフロントピラー及びリヤピラーの中間部に設けられるセンタピラーのうち少なくとも1つに設けるようにし、
前記送信アンテナを前記フロントピラーに設ける場合には、車両を上から見たときに、当該送信アンテナの後端部が車両の外方を向くように、同じく前記リヤピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの前端部が車両の外方を向くように、同じく前記センタピラーに設ける場合には、当該送信アンテナの軸線が車両の前後方向へ延びる軸線に沿うように、当該送信アンテナを配設するようにした車両用電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記ピラーは、磁性体により形成されたピラー本体と、当該ピラー本体の車室内側の側面を覆うように設けられるピラーカバーとを備え、
前記ピラーカバーのピラー本体側の側面には、前記送信アンテナを収容可能とした収容部を形成するとともに、当該収容部に前記送信アンテナを配設するようにし、
前記ピラーカバーは、合成樹脂材料により形成することにより前記開放部として機能するようにした電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記ピラーは、磁性体により中空状に形成されたピラー本体を備え、
前記送信アンテナは、前記ピラー本体の内部に配設するとともに、当該ピラー本体において、送信アンテナの両端部に対応する側壁には、前記開放部として透孔を形成することにより、送信アンテナからの磁束を開放するようにした電子キーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−309027(P2007−309027A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140936(P2006−140936)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]