車両用駆動力制御装置
【課題】 走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させるための車両用駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】 微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキペダルが操作されたと判定されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(必要出力)を決定し、エンジンの出力が必要出力となるようにエンジンを自動制御する微量出力モードを実行するので、エンジンの出力を微量とした状態で車両を移動させることができる。
【解決手段】 微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキペダルが操作されたと判定されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(必要出力)を決定し、エンジンの出力が必要出力となるようにエンジンを自動制御する微量出力モードを実行するので、エンジンの出力を微量とした状態で車両を移動させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)や電動モータ等の走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させるための車両用駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の運転操作支援装置では、クリープ現象を利用して車両を前進可能とした状態で自動操舵制御が開始されると、ステアリングホイールが自動的に操作され、車両は自動的に進行方向切り換え位置まで進行する。
【0003】
そして、進行方向切り換え位置で停車した状態では、車両は車両を駐車位置に導入するための操舵が完了した状態となっているので、運転者は、停車した状態から車両を後退させるのみで車両を駐車位置に導入することができる。
【0004】
なお、クリープ現象とは、運転者がアクセルペダル等を操作しなくてもアイドリング状態で車両が移動する現象をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000‐335436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、坂道を上りながら車両を駐車位置に移動させる場合においては、クリープ現象のみでは、エンジン出力が不足し、車両を移動させることができない場合があり、このような場合には、運転者がアクセルペダルを操作してエンジン出力を増大させる必要がある。
【0007】
しかし、運転者がアクセルペダルを踏み過ぎたために車両が急発進してしまい、駐車位置を超えて壁に衝突してしまう場合や、これとは逆に、アクセルペダルの踏み込み量が不足しているために車両が移動しない等の問題が発生し易いことから、走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させることが可能な装置が望まれている。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させるための車両用駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、走行用駆動源(17)、及び制動装置(3)で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部(3A)を有する車両に適用され、走行用駆動源(17)の出力を自動制御する車両用駆動力制御装置であって、ブレーキ操作部(3A)が操作されたか否かを判定するブレーキ操作判定手段(S17)と、乗員により操作される操作部(7)と、操作部(7)が操作されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)を決定し、走行用駆動源(17)の出力が必要出力となるように走行用駆動源(17)を自動制御する微量出力モードを実行させるための制御部(1)と、微量出力モードが乗員により選択されたか否かを判定するモード判定手段(S1)とを備え、制御部(1)は、モード判定手段(S1)により微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキ操作判定手段(S17)によりブレーキ操作部(3A)が操作されたと判定されたときに、微量出力モードを実行することを特徴とする。
【0010】
これにより、請求項1に記載の発明では、走行用駆動源(17)の出力を微量とした状態で車両を移動させることが容易にできる。
請求項2に記載の発明では、操作部(7)の操作量を検出し、その検出された操作量に対応した車両移動量を決定する移動量決定手段(S15)と、車両の現実の移動量を検出するための移動量検出手段(9)とを備え、制御部(1)は、移動量検出手段(9)が検出した現実の移動量(以下、実移動量という。)が移動量決定手段(S15)が決定した車両移動量(以下、目標移動量という。)に到達したときに微量出力モードを停止させることを特徴とする。
【0011】
これにより、請求項2に記載の発明では、確実に車両を適切な位置まで移動させることができる。
請求項3に記載の発明では、制御部(1)は、微量出力モードの実行後、微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を制動装置(3)に発生させることを特徴とする。
【0012】
これにより、請求項3に記載の発明では、車両を適切な位置で確実に駐停車させることができる。
請求項4に記載の発明では、車両の傾斜状態を検出する傾斜量検出手段(5)を備えており、制御部(1)は、少なくとも傾斜量検出手段(5)により検出された車両の傾斜状態に基づいて必要出力を決定することを特徴とする。
【0013】
これにより、請求項4に記載の発明では、適切な必要出力を決定することができるので、車両を確実に移動させることができる。
請求項5に記載の発明では、微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側の画像が表示器(13)に表示されることを特徴とする。
【0014】
これにより、請求項5に記載の発明では、乗員が進行方向前進側の状況を把握することができ得る。
請求項6に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、操作部(7)は、少なくとも微量出力モードが選択されたときには、選択手段(21)により選択された車両を移動させる方向に対応する方向のみに操作可能となり、対応する方向と逆向きの方向は操作不可となることを特徴とする。
【0015】
これにより、請求項6に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合の発生を未然に防止することができる。つまり、運転者が自分の意図する方向と逆方向に操作部(7)を誤操作してしまった場合であっても、誤操作の方向に車両が移動してしまうことを防止できる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、操作部(7)は、少なくとも微量出力モードが選択されたときには、選択手段(21)により選択された車両を移動させる方向に対応する方向の操作のみが有効となり、対応する方向と逆向きの方向の操作は反映されないことを特徴とする。
【0017】
これにより、請求項7に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
請求項8に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、少なくとも微量出力モードの実行時には、操作部(7)の操作方向は反映されず、その操作量のみが反映されることを特徴とする。
【0018】
これにより、請求項8に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
請求項9に記載の発明では、実移動量が目標移動量に到達していない場合には、目標移動量は再設定されないことを特徴とする。
【0019】
これにより、請求項9に記載の発明では、車両用駆動力制御装置の誤作動を未然に防止できる。
請求項10に記載の発明では、制御部(1)は、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しなかったときには、その旨を乗員に報知することを特徴とする。
【0020】
これにより、請求項10に記載の発明では、運転者に対して、例えば「微量出力モードによる車両運転を中止する必要がある」等を検討すべき旨の誘因を与えることができる。
なお、請求項11に記載の発明では、移動量決定手段(S15)は、操作部(7)が操作された回数に基づき操作量を検出することを特徴とするものである。
【0021】
請求項12に記載の発明では、微量出力モード実行時の車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときに車両からその物体までの距離を検出する物体検出手段(22)を備え、制御部(1)は、物体検出手段(22)が検出した物体までの距離(以下、物体距離という。)が目標移動量未満であるときは、実移動量が物体距離に到達する前に微量出力モードの実行を停止させることを特徴とする。
【0022】
これにより、請求項12に記載の発明では、微量出力モード時に車両が障害物等の物体に衝突してしまうことを未然に防止することができる。
請求項13に記載の発明では、移動量決定手段(S15)は、物体距離が小さくなるに応じて小さくなる係数、及び操作部(7)の操作量に基づいて目標移動量を決定することを特徴とする。
【0023】
これにより、請求項13に記載の発明では、微量出力モード時に車両が障害物等の物体に衝突してしまうことを確実に防止することができる。
請求項14に記載の発明では、車輪と面路面との摩擦力を検出する摩擦力検出手段(S201)を備え、制御部(1)は、摩擦力検出手段(S201)により検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知することを特徴とする。
【0024】
これにより、スリップ事故等の発生を未然に防止することができ得る。
そして、請求項15に記載の発明では、制御部(1)は、摩擦力検出手段(S201)により検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを解除することを特徴とする。
【0025】
これにより、請求項15に記載の発明では、安全かつ確実に微量出力モードを実行することができる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動力制御装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る操作機7を示す図である。
【図3】(a)及び(b)はシフトレバーの例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図5】(a)は従来の問題点の説明図であり、(b)は本発明の効果を説明するための図である。
【図6】(a)は従来の問題点の説明図であり、(b)は本発明の効果を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態の特徴を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態の特徴を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態の特徴を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第6実施形態に係る車両用駆動力制御装置のブロック図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第7実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第8実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態は、エンジン(内燃機関)を走行用駆動源とする車両に本発明に係る車両用駆動力制御装置を適用したものであって、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
1.車両用駆動力制御装置の概要
本実施形態に係る車両用駆動力制御装置は、エンジンの出力を微量とした状態で車両を移動(徐行運転)させる微量出力モードが実行可能なものであって、車両用駆動力制御装置は、図1に示すように、走行制御装置1を中心として構成されたものである。
【0029】
因みに、走行制御装置1は、CPU、ROM及びRAM等からなるマイクロコンピュータにて構成された制御部であり、後述する微量出力モード制御を実行するためのプログラム等は、走行制御装置1に設けられたROM等の不揮発性記憶部に記憶されている。
【0030】
そして、走行制御装置1には、ブレーキペダル3Aが操作されたか否かを検出するブレーキセンサ3B、車両の傾斜状態を検出する傾斜量センサ5、乗員により操作される操作機7、及び車輪の回転速を検出する車輪センサ9等からの出力信号が車両内ネットワーク回線を経由して入力されている。
【0031】
なお、ブレーキペダル3Aは、制動装置(ブレーキ)3で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部であり、本実施形態に係る制動装置3は、ブレーキペダル3Aの操作量を電気信号に変換し、その信号に基づいて電気式のアクチュエータ(図示せず。)を作動させてブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けるバイワイヤー方式のブレーキシステムである。
【0032】
因みに、本実施形態では、ブレーキペダル3Aの操作量と制動力とは概ね一致するが、制動装置3のアクチュエータは、走行制御装置1により制御されているため、走行制御装置1の異常が検出されない限り、制動力はブレーキペダル3Aの操作量に基づいて走行制御装置1により制御される。
【0033】
操作機7は、図2に示すように、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたジョグダイヤル状の回転型セレクタであり、円筒状のセレクタ(ジョグダイヤル7A)を乗員が回転操作することにより、ジョグダイヤル7Aの回転の向き及び回転量(操作量)が走行制御装置1に出力される。
【0034】
また、走行制御装置1は、図1に示すように、車両周囲を撮影するカメラ11、各種情報及び映像を表示するためのディスプレイ(表示器)13、及び音声信号等を発するスピーカ15の作動を車両内ネットワーク回線を通じて制御するとともに、燃料噴射装置(図示せず。)を介してエンジン17の出力を制御する。
【0035】
さらに、走行制御装置1には、エンジン17で発生した駆動力を駆動輪に伝達するトランスミッション(変速機)19の状態を示す信号、及びトランスミッション19の運転モードを設定するシフトレバー(セレクター)21の状態を示す信号が車両内ネットワーク回線を経由して入力されている。
【0036】
また、セレクター21は、図3(a)又は図3(b)に示すように、ドライブモード(D)、リバースモード(R)、パーキングモード(P)及び微量出力モード(J)のうちいずれかの運転モードを選択するための選択手段である。そして、微量出力モード(J)には、前進時の微量出力モード(J−D)及び後退時の微量出力モード(J−R)があり、セレクター21によりいずれかのモードを選択することができる。
【0037】
因みに、本実施形態では、安全性等の観点から、車両が停止し、かつ、制動装置3にて制動力が発生している場合に限り、セレクター21による微量出力モードの選択が可能となる。
【0038】
2.車両用駆動力制御装置の作動(図4参照)
図4に示すフローチャートは、本実施形態に係る車両用駆動力制御装置の特徴的作動を示す制御(以下、微量出力モード制御という。)であり、この微量出力モード制御は、車両が走行可能状態となったときに走行制御装置1にて起動・実行され、車両が走行不可状態となったときに、強制終了する。
【0039】
なお、車両が走行可能状態となったときとは、例えば、イグニッションスイッチ(図示せず。)が投入(ON)されて燃料噴射装置や点火装置等の車載機器への電力供給が開始され、エンジン17が始動可能となったとき又は始動したとき等をいい、車両が走行不可状態となったときとは、例えば、イグニッションスイッチが遮断(OFF)されたとき等をいう。
【0040】
そして、微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S1)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S1:NO)、再び、S1が実行される。
【0041】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S1:YES)、前進時微量出力モード(J−D)又は後退時微量出力モード(J−R)のいずれが選択されているかが判定される(S3)。
【0042】
このとき、前進時微量出力モード(J−D)であると判定された場合には(S3:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S5)、一方、後退時微量出力モード(J−R)であると判定された場合には(S3:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S7)。
【0043】
次に、操作機7のジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S9)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S9:NO)、再び、S9が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S9:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S11、S13)。
【0044】
なお、ジョグダイヤル7Aの操作量とは、微量出力モードが選択された時からジョグダイヤル7Aの操作が停止した時までのジョグダイヤル7Aの総回転量であって、前進時微量出力モードが選択されている場合には前進向き回転量の総合計量であり、後退時微量出力モードが選択されている場合には後退向き回転量の総合計量である。
【0045】
また、操作機7には、自らジョグダイヤル7Aの操作が開始され、ジョグダイヤル7Aの操作が停止したか否かを判定する制御部が内蔵されており、操作機7は、操作量を検出したとき、つまり、ジョグダイヤル7Aの操作が停止したと判定したときに、ジョグダイヤル7Aの総回転量を走行制御装置1に出力し、ジョグダイヤル7Aの操作が停止していないと判定しているときには、走行制御装置1に操作量を示す信号を出力しない。
【0046】
次に、S13にて検出された車両の傾斜量に基づいて車両を徐行運転させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)、及びS11にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定される(S15)。
【0047】
つまり、傾斜した坂道を上るように車両を移動させるには、その傾斜量が大きくなるほど、必要出力を大きくする必要がある。そこで、S15では、車両の傾斜量及び車両の移動方向(坂道を上るように車両を移動させる場合又は坂道を下るように車両を移動させる場合のいずれであるか)に基づいて必要出力が決定される。
【0048】
そして、必要出力が決定されると(S15)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作された(踏み込まれた)か否かが判定され(S17)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S17:NO)、再び、S17が実行される。
【0049】
なお、上述したように、微量出力モードが選択された時点では、少なくともブレーキペダル3Aが踏み込まれているが、その後、運転者がブレーキを解除してしまう可能性もあるので、本実施形態では安全性等の観点から、S17にて、再度、ブレーキペダル3Aが踏み込まれているか否かを判定している。
【0050】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S17:YES)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17が自動制御された状態で(S19)、車輪センサ9からの検出信号に基づいて演算された現実の移動量(以下、実移動量という。)が目標移動量に到達したか否かが判定される(S21)。
【0051】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S21:NO)、再び、S21が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S21:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S23)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S25、S27)。
【0052】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S27:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S29)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S29:YES)、再び、S3が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S29:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S31)、再び、S1が実行される。
【0053】
3.本実施形態に係る車両用駆動力制御装置の特徴
本実施形態では、微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定されたときに、微量出力モードを実行するので、エンジン17の出力を微量とした状態で車両を移動させることができる。
【0054】
つまり、図5(a)及び図6(a)に示すように、坂道を上りながら壁に近接させて車両を駐車させる必要がある場合において、クリープ現象のみでは、エンジン出力が不足し、車両を移動させることができない場合があり、このような場合には、運転者がアクセルペダルを操作してエンジン出力を増大させる必要があった。
【0055】
しかし、運転者がアクセルペダルを踏み過ぎたために車両が急発進してしまい、駐車位置を超えて壁に衝突してしまう場合や、これとは逆に、アクセルペダルの踏み込み量が不足しているために車両が移動しない等の問題が発生していた。
【0056】
これに対して、本実施形態係る微量出力モードにおいては、エンジン17の出力が必要出力となるようにエンジン17が自動制御されるので、図5(b)及び図6(b)に示すように、車両を適切な位置まで容易に移動させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、実移動量が目標移動量に到達したときに微量出力モードを停止させるので、確実に車両を適切な位置まで移動させることができる。
また、本実施形態では、微量出力モードの実行後、微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を制動装置3に発生させるので、車両を適切な位置で確実に駐停車させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、傾斜量センサ5により検出された車両の傾斜状態に基づいて必要出力を決定するので、適切な必要出力を決定することができ、車両を確実に移動させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側が表示器13に表示されるので、運転者は安全確認をしながら確実に車両を移動させることができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、前進時微量出力モード及び後退時微量出力モードのいずれがセレクター21により選択されている場合であっても、操作機7のジョグダイヤル7Aを任意の向き(前進側及び後退側)に回転操作することが可能であったが、本実施形態は、図7に示すように、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きのみにジョグダイヤル7Aを回転操作可能としたものである。
【0060】
つまり、前進時微量出力モードが選択されている場合には、ジョグダイヤル7Aは前進の向きにのみ回転することができ、後退の向きに回転することができなくなる。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、ジョグダイヤル7Aは後退の向きにのみ回転することができ、前進の向きに回転することができなくなる。
【0061】
なお、ジョグダイヤル7Aの回転可能な向きは、例えばセレクター21の選択位置に応じて作動する電磁ソレノイド等により制御される。
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
【0062】
(第3実施形態)
第2実施形態は、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きのみにジョグダイヤル7Aを回転操作可能としたものであったが、本実施形態は、図8に示すように、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きの操作のみが有効となるように構成されたものである。
【0063】
つまり、ジョグダイヤル7Aはいずれの微量出力モードが選択されている場合であっても、任意の向きに回転操作することができるものの、前進時微量出力モードが選択されている場合には、前進の向きの回転操作量のみが検出され、後退の向きの回転操作量は検出されなくなる。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、後退の向きの回転操作量のみが検出され、前進の向きの回転操作量は検出されなくなる。
【0064】
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
(第4実施形態)
第3実施形態は、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きの操作のみが有効となるように構成されたものであったが、本実施形態は、微量出力モードの実行時には、ジョグダイヤル7Aの操作方向は反映されず、回転操作量の絶対値のみが反映される構成としたものである。
【0065】
つまり、ジョグダイヤル7Aはいずれの微量出力モードが選択されている場合であっても、任意の向きに回転操作することができるものの、前進時微量出力モードが選択されている場合には、いずれの向きにジョグダイヤル7Aが回転操作された場合であっても、その操作量の絶対値が、前進時の操作量として検出される。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、いずれの向きにジョグダイヤル7Aが回転操作された場合であっても、その操作量の絶対値が、後退時の操作量として検出される。
【0066】
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
(第5実施形態)
図10に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S41)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S41:NO)、再び、S41が実行される。
【0067】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S41:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S43)。
【0068】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S43:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S45)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S43:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S47)。
【0069】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S49)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S49:NO)、再び、S49が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S49:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S51、S53)。
【0070】
なお、S50は所定時間後に割り込み処理される制御ステップであり、このS50により、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が走行制御装置1に入力される。
【0071】
つまり、S49では、実移動量が前回決定された目標移動量に到達して車両移動が完了したと判定されるまで(S77)、又は前回決定された必要出力にてエンジン17が作動し始めた後、所定時間相当内に実移動量が前回決定された目標移動量に到達しなかったと判定されるまで(S77)は、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定されない。
【0072】
次に、S53にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS51にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S55)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S57)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S57:NO)、再び、S57が実行される。
【0073】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S57:YES)、計時計数値(図10では「Time」と表示)として、初期値(本実施形態では、3)が設定されて初期化された後、計時計数値が走行制御装置1のRAMに記憶される(S59)。
【0074】
なお、本実施形態に係る計時計数値(Time)とは、時間を意味するパラメータであり、その値が大きくなるほど長い時間を意味する。
そして、計時計数値が初期化されると(S59)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始された後(S61)、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新される(S63)。
【0075】
次に、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S65)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S65:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S67)。
【0076】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S67:NO)、再び、S61が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S67:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S69)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S71、S73)。
【0077】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S73:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S75)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S75:YES)、再び、S43が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S75:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S77)、再び、S41が実行される。
【0078】
また、S65にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S65:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S79)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S77)、再び、S41が実行される。
【0079】
以上により本実施形態では、実移動量が目標移動量に到達していない場合には、その目標移動量の再設定がされないこととなるので、車両用駆動力制御装置の誤作動を未然に防止できる。
【0080】
また、各制御ステップは所定時間間隔で実行されるので、S65にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しなかった場合に相当する。
【0081】
そして、このような場合には、その旨を乗員に報知するので、運転者に対して、例えば「微量出力モードによる車両運転を中止する必要がある」等を検討すべき旨の誘因を与えることができる。因みに、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しない場合とは、例えば、車輪がスリップしている場合等である。
【0082】
(第6実施形態)
本実施形態では、図11に示すように、超音波を利用したソナー又はレーザ光を利用したレーザレーダ等のレーダ装置22を備えるとともに、このレーダ装置22と走行制御装置1とが協働して車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときには、車両からその物体までの距離を検出可能としている。
【0083】
そして、図12に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S81)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S81:NO)、再び、S81が実行される。
【0084】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S81:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S83)。
【0085】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S83:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S85)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S83:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S87)。
【0086】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S89)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S89:NO)、再び、S89が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S89:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S91、S93)。
【0087】
なお、S90は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0088】
次に、S93にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS91にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S95)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S97)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S97:NO)、再び、S97が実行される。
【0089】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S97:YES)、計時計数値(Time)が初期化(本実施形態では、3)された後(S99)、車両進行方向前進側に存在する物体(障害物)までの距離(以下、障害物距離という。)が検出される(S101)。
【0090】
なお、本実施形態では、検出可能な範囲に障害物を検出することができなかった場合には、十分に大きな距離(例えば、検出可能な最大距離より大きな距離)が障害物距離としてRAMに記憶される(S101)。
【0091】
次に、目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であるか否かが判定され(S103)、目標移動量が障害物距離未満であると判定された場合には(S103:NO)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始された後(S105)、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新される(S107)。
【0092】
次に、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S109)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S109:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S111)。
【0093】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S111:NO)、再び、S105が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S111:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S113)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S115、S117)。
【0094】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S117:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S119)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S119:YES)、再び、S83が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S119:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S121)、再び、S81が実行される。
【0095】
また、S103にて目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であると判定された場合(S103:YES)、又はS109にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S109:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S123)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S121)、再び、S81が実行される。
【0096】
以上により本実施形態では、微量出力モード時に車両が障害物と衝突してしまうことを未然に防止することができる。
(第7実施形態)
本実施形態は、障害物距離が小さくなるに応じて小さくなる係数(以下、物体距離係数という。)、及び操作機7の操作量に基づいて目標移動量を決定するものである。
【0097】
すなわち、図13に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S131)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S131:NO)、再び、S131が実行される。
【0098】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S131:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S133)。
【0099】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S133:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S135)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S133:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S137)。
【0100】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S139)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S139:NO)、再び、S139が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S139:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S141、S143)。
【0101】
なお、S140は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0102】
次に、S143にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS141にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された仮目標移動量が決定された後(S145)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S147)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S147:NO)、再び、S147が実行される。
【0103】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S147:YES)、計時計数値(Time)が初期化された後(S149)、車両進行方向前進側に存在する障害物までの距離(障害物距離)が検出される(S151)。
【0104】
次に、S145にて決定された仮目標移動量に物体距離係数を乗じた値が目標移動距離として設定された後(S153)、目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であるか否かが判定され(S155)、目標移動量が障害物距離未満であると判定された場合には(S155:NO)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始される(S157)。
【0105】
そして、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新された後(S159)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S161)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S161:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S163)。
【0106】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S163:NO)、再び、S157が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S163:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S165)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S167、S169)。
【0107】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S169:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S171)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S171:YES)、再び、S133が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S171:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S173)、再び、S131が実行される。
【0108】
また、S155にて目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であると判定された場合(S155:YES)、又はS161にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S161:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S175)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S173)、再び、S131が実行される。
【0109】
以上により本実施形態では、微量出力モード時に車両が障害物と衝突してしまうことを確実に防止することができる。
(第8実施形態)
本実施形態は、車輪と面路面との摩擦力を検出し、その検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知するとともに、微量出力モードを解除するものである。
【0110】
車輪と面路面との摩擦力を検出手法は、例えば特開昭60−35646号公報又は特開平3−128755号公報等に記載された手法と同様である。
すなわち、図14に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S181)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S181:NO)、再び、S181が実行される。
【0111】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S181:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S183)。
【0112】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S183:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S185)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S183:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S187)。
【0113】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S189)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S189:NO)、再び、S189が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S189:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S191、S193)。
【0114】
なお、S190は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0115】
次に、S193にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS191にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S195)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S197)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S197:NO)、再び、S197が実行される。
【0116】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S197:YES)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始される(S199)。
【0117】
次に、車輪と面路面との摩擦力が検出され(S201)、その検出された摩擦力が予めROM等に記憶されている目標摩擦力より大きいか否かが判定され(S203)、摩擦力が目標摩擦力より大きいと判定された場合には(S203:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S205)。
【0118】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S205:NO)、再び、S199が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S205:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S207)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S209、S211)。
【0119】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S211:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S213)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S213:YES)、再び、S183が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S213:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S215)、再び、S181が実行される。
【0120】
また、S203にて摩擦力が目標摩擦力以下であると判定された場合には(S203:NO)、S207と同様にエンジン出力が略0とされて微量出力モードが解除(停止)されるとともに(S217)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S219)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S215)、再び、S181が実行される。
【0121】
以上により本実施形態では、安全かつ確実に微量出力モードを実行することができる。
(第9実施形態)
上述の実施形態(例えば、第1実施形態)では、操作機7の操作量、つまりジョグダイヤル7Aの回転量を検出し、その検出された操作量に対応した目標移動量を決定したが、本実施形態では、操作機7をレバー状のジョイスティックにて構成するとともに、操作機7(ジョイススティック)が操作された回数に基づき操作機7の検出量を検出し、その検出された操作量に対応した目標移動量を決定するものである。
【0122】
なお、本実施形態では、操作機7は、ジョイスティックの操作が開始された時からジョイスティックの操作が停止した時までの回数を操作機7の操作量として走行制御装置1に出力する。因みに、本実施形態に係る操作機7は、ジョイスティックの操作が停止した状態が所定時間(例えば、1秒)以上、継続したときに、ジョイスティックの操作が停止したとみなして、それまでの総操作回数を出力する。
【0123】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1〜第9実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、内燃機関を走行用駆動源とした車両に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電動モータを走行用駆動源とした車両にも適用できる。
【0125】
また、上述の実施形態では、操作機7としてジョグダイヤル7Aを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばジョイスティックを用いてもよい。また、ブレーキペダルや駐車ブレーキの操作(踏み込み)回数、又はジョイスティックの操作回数等に基づいて操作機7の操作量を検出してもよい。
【0126】
また、上述の実施形態では、バイワイヤー方式の制動装置3であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば油圧方式の制動装置であってもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0127】
1…走行制御装置、3…制動装置、3A…ブレーキペダル、3B…ブレーキセンサ、
5…傾斜量センサ、7…操作機、7A…ジョグダイヤル、9…車輪センサ、
11…カメラ、13…表示器、15…スピーカ、17…エンジン、
19…トランスミッション、21…セレクター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)や電動モータ等の走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させるための車両用駆動力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の運転操作支援装置では、クリープ現象を利用して車両を前進可能とした状態で自動操舵制御が開始されると、ステアリングホイールが自動的に操作され、車両は自動的に進行方向切り換え位置まで進行する。
【0003】
そして、進行方向切り換え位置で停車した状態では、車両は車両を駐車位置に導入するための操舵が完了した状態となっているので、運転者は、停車した状態から車両を後退させるのみで車両を駐車位置に導入することができる。
【0004】
なお、クリープ現象とは、運転者がアクセルペダル等を操作しなくてもアイドリング状態で車両が移動する現象をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000‐335436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、坂道を上りながら車両を駐車位置に移動させる場合においては、クリープ現象のみでは、エンジン出力が不足し、車両を移動させることができない場合があり、このような場合には、運転者がアクセルペダルを操作してエンジン出力を増大させる必要がある。
【0007】
しかし、運転者がアクセルペダルを踏み過ぎたために車両が急発進してしまい、駐車位置を超えて壁に衝突してしまう場合や、これとは逆に、アクセルペダルの踏み込み量が不足しているために車両が移動しない等の問題が発生し易いことから、走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させることが可能な装置が望まれている。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、走行用駆動源の出力を微量とした状態で車両を移動させるための車両用駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、走行用駆動源(17)、及び制動装置(3)で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部(3A)を有する車両に適用され、走行用駆動源(17)の出力を自動制御する車両用駆動力制御装置であって、ブレーキ操作部(3A)が操作されたか否かを判定するブレーキ操作判定手段(S17)と、乗員により操作される操作部(7)と、操作部(7)が操作されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)を決定し、走行用駆動源(17)の出力が必要出力となるように走行用駆動源(17)を自動制御する微量出力モードを実行させるための制御部(1)と、微量出力モードが乗員により選択されたか否かを判定するモード判定手段(S1)とを備え、制御部(1)は、モード判定手段(S1)により微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキ操作判定手段(S17)によりブレーキ操作部(3A)が操作されたと判定されたときに、微量出力モードを実行することを特徴とする。
【0010】
これにより、請求項1に記載の発明では、走行用駆動源(17)の出力を微量とした状態で車両を移動させることが容易にできる。
請求項2に記載の発明では、操作部(7)の操作量を検出し、その検出された操作量に対応した車両移動量を決定する移動量決定手段(S15)と、車両の現実の移動量を検出するための移動量検出手段(9)とを備え、制御部(1)は、移動量検出手段(9)が検出した現実の移動量(以下、実移動量という。)が移動量決定手段(S15)が決定した車両移動量(以下、目標移動量という。)に到達したときに微量出力モードを停止させることを特徴とする。
【0011】
これにより、請求項2に記載の発明では、確実に車両を適切な位置まで移動させることができる。
請求項3に記載の発明では、制御部(1)は、微量出力モードの実行後、微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を制動装置(3)に発生させることを特徴とする。
【0012】
これにより、請求項3に記載の発明では、車両を適切な位置で確実に駐停車させることができる。
請求項4に記載の発明では、車両の傾斜状態を検出する傾斜量検出手段(5)を備えており、制御部(1)は、少なくとも傾斜量検出手段(5)により検出された車両の傾斜状態に基づいて必要出力を決定することを特徴とする。
【0013】
これにより、請求項4に記載の発明では、適切な必要出力を決定することができるので、車両を確実に移動させることができる。
請求項5に記載の発明では、微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側の画像が表示器(13)に表示されることを特徴とする。
【0014】
これにより、請求項5に記載の発明では、乗員が進行方向前進側の状況を把握することができ得る。
請求項6に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、操作部(7)は、少なくとも微量出力モードが選択されたときには、選択手段(21)により選択された車両を移動させる方向に対応する方向のみに操作可能となり、対応する方向と逆向きの方向は操作不可となることを特徴とする。
【0015】
これにより、請求項6に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合の発生を未然に防止することができる。つまり、運転者が自分の意図する方向と逆方向に操作部(7)を誤操作してしまった場合であっても、誤操作の方向に車両が移動してしまうことを防止できる。
【0016】
請求項7に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、操作部(7)は、少なくとも微量出力モードが選択されたときには、選択手段(21)により選択された車両を移動させる方向に対応する方向の操作のみが有効となり、対応する方向と逆向きの方向の操作は反映されないことを特徴とする。
【0017】
これにより、請求項7に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
請求項8に記載の発明では、乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段(21)を備え、少なくとも微量出力モードの実行時には、操作部(7)の操作方向は反映されず、その操作量のみが反映されることを特徴とする。
【0018】
これにより、請求項8に記載の発明では、操作部(7)の誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
請求項9に記載の発明では、実移動量が目標移動量に到達していない場合には、目標移動量は再設定されないことを特徴とする。
【0019】
これにより、請求項9に記載の発明では、車両用駆動力制御装置の誤作動を未然に防止できる。
請求項10に記載の発明では、制御部(1)は、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しなかったときには、その旨を乗員に報知することを特徴とする。
【0020】
これにより、請求項10に記載の発明では、運転者に対して、例えば「微量出力モードによる車両運転を中止する必要がある」等を検討すべき旨の誘因を与えることができる。
なお、請求項11に記載の発明では、移動量決定手段(S15)は、操作部(7)が操作された回数に基づき操作量を検出することを特徴とするものである。
【0021】
請求項12に記載の発明では、微量出力モード実行時の車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときに車両からその物体までの距離を検出する物体検出手段(22)を備え、制御部(1)は、物体検出手段(22)が検出した物体までの距離(以下、物体距離という。)が目標移動量未満であるときは、実移動量が物体距離に到達する前に微量出力モードの実行を停止させることを特徴とする。
【0022】
これにより、請求項12に記載の発明では、微量出力モード時に車両が障害物等の物体に衝突してしまうことを未然に防止することができる。
請求項13に記載の発明では、移動量決定手段(S15)は、物体距離が小さくなるに応じて小さくなる係数、及び操作部(7)の操作量に基づいて目標移動量を決定することを特徴とする。
【0023】
これにより、請求項13に記載の発明では、微量出力モード時に車両が障害物等の物体に衝突してしまうことを確実に防止することができる。
請求項14に記載の発明では、車輪と面路面との摩擦力を検出する摩擦力検出手段(S201)を備え、制御部(1)は、摩擦力検出手段(S201)により検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知することを特徴とする。
【0024】
これにより、スリップ事故等の発生を未然に防止することができ得る。
そして、請求項15に記載の発明では、制御部(1)は、摩擦力検出手段(S201)により検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを解除することを特徴とする。
【0025】
これにより、請求項15に記載の発明では、安全かつ確実に微量出力モードを実行することができる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動力制御装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る操作機7を示す図である。
【図3】(a)及び(b)はシフトレバーの例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図5】(a)は従来の問題点の説明図であり、(b)は本発明の効果を説明するための図である。
【図6】(a)は従来の問題点の説明図であり、(b)は本発明の効果を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態の特徴を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態の特徴を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態の特徴を示す図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第6実施形態に係る車両用駆動力制御装置のブロック図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第7実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第8実施形態に係る微量出力モード制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態は、エンジン(内燃機関)を走行用駆動源とする車両に本発明に係る車両用駆動力制御装置を適用したものであって、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
1.車両用駆動力制御装置の概要
本実施形態に係る車両用駆動力制御装置は、エンジンの出力を微量とした状態で車両を移動(徐行運転)させる微量出力モードが実行可能なものであって、車両用駆動力制御装置は、図1に示すように、走行制御装置1を中心として構成されたものである。
【0029】
因みに、走行制御装置1は、CPU、ROM及びRAM等からなるマイクロコンピュータにて構成された制御部であり、後述する微量出力モード制御を実行するためのプログラム等は、走行制御装置1に設けられたROM等の不揮発性記憶部に記憶されている。
【0030】
そして、走行制御装置1には、ブレーキペダル3Aが操作されたか否かを検出するブレーキセンサ3B、車両の傾斜状態を検出する傾斜量センサ5、乗員により操作される操作機7、及び車輪の回転速を検出する車輪センサ9等からの出力信号が車両内ネットワーク回線を経由して入力されている。
【0031】
なお、ブレーキペダル3Aは、制動装置(ブレーキ)3で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部であり、本実施形態に係る制動装置3は、ブレーキペダル3Aの操作量を電気信号に変換し、その信号に基づいて電気式のアクチュエータ(図示せず。)を作動させてブレーキパッドをブレーキディスクに押し付けるバイワイヤー方式のブレーキシステムである。
【0032】
因みに、本実施形態では、ブレーキペダル3Aの操作量と制動力とは概ね一致するが、制動装置3のアクチュエータは、走行制御装置1により制御されているため、走行制御装置1の異常が検出されない限り、制動力はブレーキペダル3Aの操作量に基づいて走行制御装置1により制御される。
【0033】
操作機7は、図2に示すように、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたジョグダイヤル状の回転型セレクタであり、円筒状のセレクタ(ジョグダイヤル7A)を乗員が回転操作することにより、ジョグダイヤル7Aの回転の向き及び回転量(操作量)が走行制御装置1に出力される。
【0034】
また、走行制御装置1は、図1に示すように、車両周囲を撮影するカメラ11、各種情報及び映像を表示するためのディスプレイ(表示器)13、及び音声信号等を発するスピーカ15の作動を車両内ネットワーク回線を通じて制御するとともに、燃料噴射装置(図示せず。)を介してエンジン17の出力を制御する。
【0035】
さらに、走行制御装置1には、エンジン17で発生した駆動力を駆動輪に伝達するトランスミッション(変速機)19の状態を示す信号、及びトランスミッション19の運転モードを設定するシフトレバー(セレクター)21の状態を示す信号が車両内ネットワーク回線を経由して入力されている。
【0036】
また、セレクター21は、図3(a)又は図3(b)に示すように、ドライブモード(D)、リバースモード(R)、パーキングモード(P)及び微量出力モード(J)のうちいずれかの運転モードを選択するための選択手段である。そして、微量出力モード(J)には、前進時の微量出力モード(J−D)及び後退時の微量出力モード(J−R)があり、セレクター21によりいずれかのモードを選択することができる。
【0037】
因みに、本実施形態では、安全性等の観点から、車両が停止し、かつ、制動装置3にて制動力が発生している場合に限り、セレクター21による微量出力モードの選択が可能となる。
【0038】
2.車両用駆動力制御装置の作動(図4参照)
図4に示すフローチャートは、本実施形態に係る車両用駆動力制御装置の特徴的作動を示す制御(以下、微量出力モード制御という。)であり、この微量出力モード制御は、車両が走行可能状態となったときに走行制御装置1にて起動・実行され、車両が走行不可状態となったときに、強制終了する。
【0039】
なお、車両が走行可能状態となったときとは、例えば、イグニッションスイッチ(図示せず。)が投入(ON)されて燃料噴射装置や点火装置等の車載機器への電力供給が開始され、エンジン17が始動可能となったとき又は始動したとき等をいい、車両が走行不可状態となったときとは、例えば、イグニッションスイッチが遮断(OFF)されたとき等をいう。
【0040】
そして、微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S1)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S1:NO)、再び、S1が実行される。
【0041】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S1:YES)、前進時微量出力モード(J−D)又は後退時微量出力モード(J−R)のいずれが選択されているかが判定される(S3)。
【0042】
このとき、前進時微量出力モード(J−D)であると判定された場合には(S3:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S5)、一方、後退時微量出力モード(J−R)であると判定された場合には(S3:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S7)。
【0043】
次に、操作機7のジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S9)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S9:NO)、再び、S9が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S9:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S11、S13)。
【0044】
なお、ジョグダイヤル7Aの操作量とは、微量出力モードが選択された時からジョグダイヤル7Aの操作が停止した時までのジョグダイヤル7Aの総回転量であって、前進時微量出力モードが選択されている場合には前進向き回転量の総合計量であり、後退時微量出力モードが選択されている場合には後退向き回転量の総合計量である。
【0045】
また、操作機7には、自らジョグダイヤル7Aの操作が開始され、ジョグダイヤル7Aの操作が停止したか否かを判定する制御部が内蔵されており、操作機7は、操作量を検出したとき、つまり、ジョグダイヤル7Aの操作が停止したと判定したときに、ジョグダイヤル7Aの総回転量を走行制御装置1に出力し、ジョグダイヤル7Aの操作が停止していないと判定しているときには、走行制御装置1に操作量を示す信号を出力しない。
【0046】
次に、S13にて検出された車両の傾斜量に基づいて車両を徐行運転させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)、及びS11にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定される(S15)。
【0047】
つまり、傾斜した坂道を上るように車両を移動させるには、その傾斜量が大きくなるほど、必要出力を大きくする必要がある。そこで、S15では、車両の傾斜量及び車両の移動方向(坂道を上るように車両を移動させる場合又は坂道を下るように車両を移動させる場合のいずれであるか)に基づいて必要出力が決定される。
【0048】
そして、必要出力が決定されると(S15)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作された(踏み込まれた)か否かが判定され(S17)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S17:NO)、再び、S17が実行される。
【0049】
なお、上述したように、微量出力モードが選択された時点では、少なくともブレーキペダル3Aが踏み込まれているが、その後、運転者がブレーキを解除してしまう可能性もあるので、本実施形態では安全性等の観点から、S17にて、再度、ブレーキペダル3Aが踏み込まれているか否かを判定している。
【0050】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S17:YES)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17が自動制御された状態で(S19)、車輪センサ9からの検出信号に基づいて演算された現実の移動量(以下、実移動量という。)が目標移動量に到達したか否かが判定される(S21)。
【0051】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S21:NO)、再び、S21が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S21:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S23)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S25、S27)。
【0052】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S27:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S29)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S29:YES)、再び、S3が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S29:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S31)、再び、S1が実行される。
【0053】
3.本実施形態に係る車両用駆動力制御装置の特徴
本実施形態では、微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定されたときに、微量出力モードを実行するので、エンジン17の出力を微量とした状態で車両を移動させることができる。
【0054】
つまり、図5(a)及び図6(a)に示すように、坂道を上りながら壁に近接させて車両を駐車させる必要がある場合において、クリープ現象のみでは、エンジン出力が不足し、車両を移動させることができない場合があり、このような場合には、運転者がアクセルペダルを操作してエンジン出力を増大させる必要があった。
【0055】
しかし、運転者がアクセルペダルを踏み過ぎたために車両が急発進してしまい、駐車位置を超えて壁に衝突してしまう場合や、これとは逆に、アクセルペダルの踏み込み量が不足しているために車両が移動しない等の問題が発生していた。
【0056】
これに対して、本実施形態係る微量出力モードにおいては、エンジン17の出力が必要出力となるようにエンジン17が自動制御されるので、図5(b)及び図6(b)に示すように、車両を適切な位置まで容易に移動させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、実移動量が目標移動量に到達したときに微量出力モードを停止させるので、確実に車両を適切な位置まで移動させることができる。
また、本実施形態では、微量出力モードの実行後、微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を制動装置3に発生させるので、車両を適切な位置で確実に駐停車させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、傾斜量センサ5により検出された車両の傾斜状態に基づいて必要出力を決定するので、適切な必要出力を決定することができ、車両を確実に移動させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側が表示器13に表示されるので、運転者は安全確認をしながら確実に車両を移動させることができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、前進時微量出力モード及び後退時微量出力モードのいずれがセレクター21により選択されている場合であっても、操作機7のジョグダイヤル7Aを任意の向き(前進側及び後退側)に回転操作することが可能であったが、本実施形態は、図7に示すように、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きのみにジョグダイヤル7Aを回転操作可能としたものである。
【0060】
つまり、前進時微量出力モードが選択されている場合には、ジョグダイヤル7Aは前進の向きにのみ回転することができ、後退の向きに回転することができなくなる。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、ジョグダイヤル7Aは後退の向きにのみ回転することができ、前進の向きに回転することができなくなる。
【0061】
なお、ジョグダイヤル7Aの回転可能な向きは、例えばセレクター21の選択位置に応じて作動する電磁ソレノイド等により制御される。
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
【0062】
(第3実施形態)
第2実施形態は、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きのみにジョグダイヤル7Aを回転操作可能としたものであったが、本実施形態は、図8に示すように、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きの操作のみが有効となるように構成されたものである。
【0063】
つまり、ジョグダイヤル7Aはいずれの微量出力モードが選択されている場合であっても、任意の向きに回転操作することができるものの、前進時微量出力モードが選択されている場合には、前進の向きの回転操作量のみが検出され、後退の向きの回転操作量は検出されなくなる。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、後退の向きの回転操作量のみが検出され、前進の向きの回転操作量は検出されなくなる。
【0064】
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
(第4実施形態)
第3実施形態は、セレクター21により選択された車両を移動させる向きに対応する向きの操作のみが有効となるように構成されたものであったが、本実施形態は、微量出力モードの実行時には、ジョグダイヤル7Aの操作方向は反映されず、回転操作量の絶対値のみが反映される構成としたものである。
【0065】
つまり、ジョグダイヤル7Aはいずれの微量出力モードが選択されている場合であっても、任意の向きに回転操作することができるものの、前進時微量出力モードが選択されている場合には、いずれの向きにジョグダイヤル7Aが回転操作された場合であっても、その操作量の絶対値が、前進時の操作量として検出される。逆に、後退時微量出力モードが選択されている場合には、いずれの向きにジョグダイヤル7Aが回転操作された場合であっても、その操作量の絶対値が、後退時の操作量として検出される。
【0066】
これにより、ジョグダイヤル7Aの誤操作に起因する不具合(誤操作の方向に車両が移動してしまう等)の発生を未然に防止することができる。
(第5実施形態)
図10に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S41)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S41:NO)、再び、S41が実行される。
【0067】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S41:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S43)。
【0068】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S43:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S45)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S43:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S47)。
【0069】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S49)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S49:NO)、再び、S49が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S49:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S51、S53)。
【0070】
なお、S50は所定時間後に割り込み処理される制御ステップであり、このS50により、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が走行制御装置1に入力される。
【0071】
つまり、S49では、実移動量が前回決定された目標移動量に到達して車両移動が完了したと判定されるまで(S77)、又は前回決定された必要出力にてエンジン17が作動し始めた後、所定時間相当内に実移動量が前回決定された目標移動量に到達しなかったと判定されるまで(S77)は、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定されない。
【0072】
次に、S53にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS51にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S55)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S57)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S57:NO)、再び、S57が実行される。
【0073】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S57:YES)、計時計数値(図10では「Time」と表示)として、初期値(本実施形態では、3)が設定されて初期化された後、計時計数値が走行制御装置1のRAMに記憶される(S59)。
【0074】
なお、本実施形態に係る計時計数値(Time)とは、時間を意味するパラメータであり、その値が大きくなるほど長い時間を意味する。
そして、計時計数値が初期化されると(S59)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始された後(S61)、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新される(S63)。
【0075】
次に、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S65)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S65:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S67)。
【0076】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S67:NO)、再び、S61が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S67:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S69)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S71、S73)。
【0077】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S73:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S75)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S75:YES)、再び、S43が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S75:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S77)、再び、S41が実行される。
【0078】
また、S65にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S65:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S79)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S77)、再び、S41が実行される。
【0079】
以上により本実施形態では、実移動量が目標移動量に到達していない場合には、その目標移動量の再設定がされないこととなるので、車両用駆動力制御装置の誤作動を未然に防止できる。
【0080】
また、各制御ステップは所定時間間隔で実行されるので、S65にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しなかった場合に相当する。
【0081】
そして、このような場合には、その旨を乗員に報知するので、運転者に対して、例えば「微量出力モードによる車両運転を中止する必要がある」等を検討すべき旨の誘因を与えることができる。因みに、予め設定された時間内に実移動量が目標移動量に到達しない場合とは、例えば、車輪がスリップしている場合等である。
【0082】
(第6実施形態)
本実施形態では、図11に示すように、超音波を利用したソナー又はレーザ光を利用したレーザレーダ等のレーダ装置22を備えるとともに、このレーダ装置22と走行制御装置1とが協働して車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときには、車両からその物体までの距離を検出可能としている。
【0083】
そして、図12に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S81)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S81:NO)、再び、S81が実行される。
【0084】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S81:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S83)。
【0085】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S83:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S85)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S83:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S87)。
【0086】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S89)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S89:NO)、再び、S89が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S89:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S91、S93)。
【0087】
なお、S90は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0088】
次に、S93にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS91にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S95)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S97)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S97:NO)、再び、S97が実行される。
【0089】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S97:YES)、計時計数値(Time)が初期化(本実施形態では、3)された後(S99)、車両進行方向前進側に存在する物体(障害物)までの距離(以下、障害物距離という。)が検出される(S101)。
【0090】
なお、本実施形態では、検出可能な範囲に障害物を検出することができなかった場合には、十分に大きな距離(例えば、検出可能な最大距離より大きな距離)が障害物距離としてRAMに記憶される(S101)。
【0091】
次に、目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であるか否かが判定され(S103)、目標移動量が障害物距離未満であると判定された場合には(S103:NO)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始された後(S105)、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新される(S107)。
【0092】
次に、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S109)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S109:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S111)。
【0093】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S111:NO)、再び、S105が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S111:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S113)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S115、S117)。
【0094】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S117:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S119)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S119:YES)、再び、S83が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S119:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S121)、再び、S81が実行される。
【0095】
また、S103にて目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であると判定された場合(S103:YES)、又はS109にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S109:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S123)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S121)、再び、S81が実行される。
【0096】
以上により本実施形態では、微量出力モード時に車両が障害物と衝突してしまうことを未然に防止することができる。
(第7実施形態)
本実施形態は、障害物距離が小さくなるに応じて小さくなる係数(以下、物体距離係数という。)、及び操作機7の操作量に基づいて目標移動量を決定するものである。
【0097】
すなわち、図13に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S131)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S131:NO)、再び、S131が実行される。
【0098】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S131:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S133)。
【0099】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S133:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S135)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S133:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S137)。
【0100】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S139)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S139:NO)、再び、S139が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S139:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S141、S143)。
【0101】
なお、S140は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0102】
次に、S143にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS141にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された仮目標移動量が決定された後(S145)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S147)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S147:NO)、再び、S147が実行される。
【0103】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S147:YES)、計時計数値(Time)が初期化された後(S149)、車両進行方向前進側に存在する障害物までの距離(障害物距離)が検出される(S151)。
【0104】
次に、S145にて決定された仮目標移動量に物体距離係数を乗じた値が目標移動距離として設定された後(S153)、目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であるか否かが判定され(S155)、目標移動量が障害物距離未満であると判定された場合には(S155:NO)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始される(S157)。
【0105】
そして、現在、RAMに記憶されている計時計数値から1だけ減じられた値が新たな計時計数値として更新された後(S159)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいか否かが判定され(S161)、現在、RAMに記憶されている計時計数値が0より大きいと判定された場合には(S161:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S163)。
【0106】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S163:NO)、再び、S157が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S163:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S165)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S167、S169)。
【0107】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S169:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S171)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S171:YES)、再び、S133が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S171:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S173)、再び、S131が実行される。
【0108】
また、S155にて目標移動量がRAMに記憶されている障害物距離以上であると判定された場合(S155:YES)、又はS161にて現在、RAMに記憶されている計時計数値が0以下であると判定された場合には(S161:NO)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S175)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S173)、再び、S131が実行される。
【0109】
以上により本実施形態では、微量出力モード時に車両が障害物と衝突してしまうことを確実に防止することができる。
(第8実施形態)
本実施形態は、車輪と面路面との摩擦力を検出し、その検出された摩擦力が所定値以下のときには、微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知するとともに、微量出力モードを解除するものである。
【0110】
車輪と面路面との摩擦力を検出手法は、例えば特開昭60−35646号公報又は特開平3−128755号公報等に記載された手法と同様である。
すなわち、図14に示すフローチャートは、本実施形態に係る微量出力モード制御であり、この微量出力モード制御が起動されると、先ず、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが判定され(S181)、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S181:NO)、再び、S181が実行される。
【0111】
一方、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S181:YES)、前進時微量出力モード又は後退時微量出力モードのいずれが選択されているかが判定される(S183)。
【0112】
このとき、前進時微量出力モードであると判定された場合には(S183:D)、前方に設けられたカメラ11にて車両前方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示され(S185)、一方、後退時微量出力モードであると判定された場合には(S183:R)、後方に設けられたカメラ11にて車両後方側が撮影されるとともに、その撮影された画像が表示器13に表示される(S187)。
【0113】
次に、ジョグダイヤル7Aが操作されたか否かが判定され(S189)、ジョグダイヤル7Aが操作されていないと判定された場合には(S189:NO)、再び、S189が実行され、一方、ジョグダイヤル7Aが操作されたと判定された場合には(S189:YES)、ジョグダイヤル7Aの操作量及び傾斜量センサ5による車両の傾斜量が検出される(S191、S193)。
【0114】
なお、S190は、S50(図10参照)と同様に、前回決定された目標移動量及び必要出力に基づく微量出力モードが終了した場合に限り、ジョグダイヤル7Aから出力される信号が入力可能な状態とする。
【0115】
次に、S193にて検出された車両の傾斜量に基づいて必要出力、及びS191にて検出されたジョグダイヤル7Aの総回転量に応じて決定された目標移動量が決定された後(S195)、ブレーキセンサ3Bの検出信号に基づいてブレーキペダル3Aが操作されたか否かが判定され(S197)、ブレーキペダル3Aが操作されていないと判定された場合には(S197:NO)、再び、S197が実行される。
【0116】
一方、ブレーキペダル3Aが操作されたと判定された場合には(S197:YES)、車両が移動(徐行運転)できる程度まで制動装置3の制動力が緩められるとともに、必要出力が出力されるようにエンジン17の自動制御が開始される(S199)。
【0117】
次に、車輪と面路面との摩擦力が検出され(S201)、その検出された摩擦力が予めROM等に記憶されている目標摩擦力より大きいか否かが判定され(S203)、摩擦力が目標摩擦力より大きいと判定された場合には(S203:YES)、実移動量が目標移動量に到達したか否かが判定される(S205)。
【0118】
このとき、実移動量が目標移動量に到達していないと判定された場合には(S205:NO)、再び、S199が実行され、一方、実移動量が目標移動量に到達したと判定された場合には(S205:YES)、エンジン17を停止又はアイドリング状態としてエンジン出力が略0とされるとともに(S207)、車両が停止するように制動装置3が制御される(S209、S211)。
【0119】
そして、車両が停止した(車速が0であると)と判定されると(S211:YES)、微量出力モードがセレクター21により選択されているか否かが再び判定され(S213)、微量出力モードが選択されていると判定された場合には(S213:YES)、再び、S183が実行される。一方、微量出力モードが選択されていないと判定された場合には(S213:NO)、カメラ11による撮影及びその表示が停止された後(S215)、再び、S181が実行される。
【0120】
また、S203にて摩擦力が目標摩擦力以下であると判定された場合には(S203:NO)、S207と同様にエンジン出力が略0とされて微量出力モードが解除(停止)されるとともに(S217)、微量出力モードの実行が困難である旨のエラー通知が乗員に対して報知された後(S219)、カメラ11による撮影及びその表示が停止され(S215)、再び、S181が実行される。
【0121】
以上により本実施形態では、安全かつ確実に微量出力モードを実行することができる。
(第9実施形態)
上述の実施形態(例えば、第1実施形態)では、操作機7の操作量、つまりジョグダイヤル7Aの回転量を検出し、その検出された操作量に対応した目標移動量を決定したが、本実施形態では、操作機7をレバー状のジョイスティックにて構成するとともに、操作機7(ジョイススティック)が操作された回数に基づき操作機7の検出量を検出し、その検出された操作量に対応した目標移動量を決定するものである。
【0122】
なお、本実施形態では、操作機7は、ジョイスティックの操作が開始された時からジョイスティックの操作が停止した時までの回数を操作機7の操作量として走行制御装置1に出力する。因みに、本実施形態に係る操作機7は、ジョイスティックの操作が停止した状態が所定時間(例えば、1秒)以上、継続したときに、ジョイスティックの操作が停止したとみなして、それまでの総操作回数を出力する。
【0123】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1〜第9実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。
【0124】
また、上述の実施形態では、内燃機関を走行用駆動源とした車両に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電動モータを走行用駆動源とした車両にも適用できる。
【0125】
また、上述の実施形態では、操作機7としてジョグダイヤル7Aを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばジョイスティックを用いてもよい。また、ブレーキペダルや駐車ブレーキの操作(踏み込み)回数、又はジョイスティックの操作回数等に基づいて操作機7の操作量を検出してもよい。
【0126】
また、上述の実施形態では、バイワイヤー方式の制動装置3であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば油圧方式の制動装置であってもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0127】
1…走行制御装置、3…制動装置、3A…ブレーキペダル、3B…ブレーキセンサ、
5…傾斜量センサ、7…操作機、7A…ジョグダイヤル、9…車輪センサ、
11…カメラ、13…表示器、15…スピーカ、17…エンジン、
19…トランスミッション、21…セレクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動源、及び制動装置で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部を有する車両に適用され、前記走行用駆動源の出力を自動制御する車両用駆動力制御装置であって、
前記ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定するブレーキ操作判定手段と、
乗員により操作される操作部と、
前記操作部が操作されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)を決定し、前記走行用駆動源の出力が前記必要出力となるように前記走行用駆動源を自動制御する微量出力モードを実行させるための制御部と、
前記微量出力モードが乗員により選択されたか否かを判定するモード判定手段とを備え、
前記制御部は、前記モード判定手段により前記微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、前記ブレーキ操作判定手段により前記ブレーキ操作部が操作されたと判定されたときに、前記微量出力モードを実行することを特徴とする車両用駆動力制御装置。
【請求項2】
前記操作部の操作量を検出し、その検出された操作量に対応した車両移動量を決定する移動量決定手段と、
車両の現実の移動量を検出するための移動量検出手段とを備え、
前記制御部は、前記移動量検出手段が検出した現実の移動量(以下、実移動量という。)が前記移動量決定手段が決定した車両移動量(以下、目標移動量という。)に到達したときに前記微量出力モードを停止させることを特徴とする請求項1に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記微量出力モードの実行後、前記微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を前記制動装置に発生させることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項4】
車両の傾斜状態を検出する傾斜量検出手段を備えており、
前記制御部は、少なくとも前記傾斜量検出手段により検出された車両の傾斜状態に基づいて前記必要出力を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項5】
前記微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側の画像が表示器に表示されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項6】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
前記操作部は、少なくとも前記微量出力モードが選択されたときには、前記選択手段により選択された車両を移動させる方向に対応する方向のみに操作可能となり、前記対応する方向と逆向きの方向は操作不可となることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項7】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
前記操作部は、少なくとも前記微量出力モードが選択されたときには、前記選択手段により選択された車両を移動させる方向に対応する方向の操作のみが有効となり、前記対応する方向と逆向きの方向の操作は反映されないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項8】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
少なくとも前記微量出力モードの実行時には、前記操作部の操作方向は反映されず、その操作量のみが反映されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項9】
前記実移動量が前記目標移動量に到達していない場合には、前記目標移動量は再設定されないことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、予め設定された時間内に前記実移動量が前記目標移動量に到達しなかったときには、その旨を乗員に報知することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項11】
前記移動量決定手段は、前記操作部が操作された回数に基づき前記操作量を検出することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項12】
前記微量出力モード実行時の車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときに車両からその物体までの距離を検出する物体検出手段を備え、
前記制御部は、前記物体検出手段が検出した物体までの距離(以下、物体距離という。)が前記目標移動量未満であるときは、前記実移動量が前記物体距離に到達する前に前記微量出力モードの実行を停止させることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項13】
前記移動量決定手段は、前記操作部の操作量、及び前記物体距離が小さくなるに応じて小さくなる係数に基づいて前記目標移動量を決定することを特徴とする請求項12に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項14】
車輪と面路面との摩擦力を検出する摩擦力検出手段を備え、
前記制御部は、前記摩擦力検出手段により検出された摩擦力が所定値以下のときには、前記微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知することを特徴とすることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記摩擦力検出手段により検出された摩擦力が所定値以下のときには、前記微量出力モードを解除することを特徴とする請求項14に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項1】
走行用駆動源、及び制動装置で発生する制動力を調整するために乗員により操作されるブレーキ操作部を有する車両に適用され、前記走行用駆動源の出力を自動制御する車両用駆動力制御装置であって、
前記ブレーキ操作部が操作されたか否かを判定するブレーキ操作判定手段と、
乗員により操作される操作部と、
前記操作部が操作されたときに、車両を移動させるために必要とする出力(以下、必要出力という。)を決定し、前記走行用駆動源の出力が前記必要出力となるように前記走行用駆動源を自動制御する微量出力モードを実行させるための制御部と、
前記微量出力モードが乗員により選択されたか否かを判定するモード判定手段とを備え、
前記制御部は、前記モード判定手段により前記微量出力モードが選択されていると判定され、かつ、前記ブレーキ操作判定手段により前記ブレーキ操作部が操作されたと判定されたときに、前記微量出力モードを実行することを特徴とする車両用駆動力制御装置。
【請求項2】
前記操作部の操作量を検出し、その検出された操作量に対応した車両移動量を決定する移動量決定手段と、
車両の現実の移動量を検出するための移動量検出手段とを備え、
前記制御部は、前記移動量検出手段が検出した現実の移動量(以下、実移動量という。)が前記移動量決定手段が決定した車両移動量(以下、目標移動量という。)に到達したときに前記微量出力モードを停止させることを特徴とする請求項1に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記微量出力モードの実行後、前記微量出力モードを停止させたときに、車両を停止させるに必要な制動力を前記制動装置に発生させることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項4】
車両の傾斜状態を検出する傾斜量検出手段を備えており、
前記制御部は、少なくとも前記傾斜量検出手段により検出された車両の傾斜状態に基づいて前記必要出力を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項5】
前記微量出力モードの実行時に車両の進行方向前進側の画像が表示器に表示されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項6】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
前記操作部は、少なくとも前記微量出力モードが選択されたときには、前記選択手段により選択された車両を移動させる方向に対応する方向のみに操作可能となり、前記対応する方向と逆向きの方向は操作不可となることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項7】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
前記操作部は、少なくとも前記微量出力モードが選択されたときには、前記選択手段により選択された車両を移動させる方向に対応する方向の操作のみが有効となり、前記対応する方向と逆向きの方向の操作は反映されないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項8】
乗員により操作され、前進方向及び後退方向のうちいずれの方向に前記微量出力モードで車両を移動させるかを選択するための選択手段を備え、
少なくとも前記微量出力モードの実行時には、前記操作部の操作方向は反映されず、その操作量のみが反映されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項9】
前記実移動量が前記目標移動量に到達していない場合には、前記目標移動量は再設定されないことを特徴とする請求項2に記載の車両駆動力制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、予め設定された時間内に前記実移動量が前記目標移動量に到達しなかったときには、その旨を乗員に報知することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項11】
前記移動量決定手段は、前記操作部が操作された回数に基づき前記操作量を検出することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項12】
前記微量出力モード実行時の車両進行方向前進側に物体が存在するか否かを検出し、物体の存在を検出したときに車両からその物体までの距離を検出する物体検出手段を備え、
前記制御部は、前記物体検出手段が検出した物体までの距離(以下、物体距離という。)が前記目標移動量未満であるときは、前記実移動量が前記物体距離に到達する前に前記微量出力モードの実行を停止させることを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項13】
前記移動量決定手段は、前記操作部の操作量、及び前記物体距離が小さくなるに応じて小さくなる係数に基づいて前記目標移動量を決定することを特徴とする請求項12に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項14】
車輪と面路面との摩擦力を検出する摩擦力検出手段を備え、
前記制御部は、前記摩擦力検出手段により検出された摩擦力が所定値以下のときには、前記微量出力モードを実行できない旨を乗員に報知することを特徴とすることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の車両用駆動力制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記摩擦力検出手段により検出された摩擦力が所定値以下のときには、前記微量出力モードを解除することを特徴とする請求項14に記載の車両用駆動力制御装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1】
【図11】
【公開番号】特開2012−97647(P2012−97647A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245314(P2010−245314)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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