説明

車両用駆動装置

【課題】第一係合装置の作動と、第二係合装置の作動と、が重なる場合でも、第一係合装置の油圧と、第二係合装置の油圧とが、互いに干渉することを抑制する。
【解決手段】回転電機を内燃機関に選択的に駆動連結する第一係合装置と、流体継手と、を備えた車両用駆動装置であって、第一係合装置は、第一摩擦部材と、第一ピストンと、第一摩擦部材が収容されるとともに、第一ピストンの背圧を作用させるように形成された第一油室と、を備え、流体継手は、本体部収容室に、継手入力側部材と継手出力側部材とを直結する第二係合装置の係合状態を制御するための第二油室を備え、第一油室油圧を制御する第一油圧制御弁と、これとは独立して第二油室油圧を制御する第二油圧制御弁と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路上に設けられた流体継手と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び回転電機を駆動力源として備えるハイブリッド車両用の車両用駆動装置として、例えば、下記の特許文献1、2に記載された装置が既に知られている。特許文献1、2に記載されたハイブリッド車両の車両用駆動装置には、内燃機関を動力伝達機構に選択的に駆動連結する第一係合装置が備えられている。そして、回転電機のみの駆動力で車両を駆動できるように、第一係合装置に供給する油圧を制御することにより係合装置を解放して、内燃機関を動力伝達機構から分離できるように構成されている。すなわち、特許文献1、2の技術では、ハイブリッド車両化に伴い、内燃機関と動力伝達系とを油圧制御により選択的に駆動連結することができる第一係合装置が設けられている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術には、第一係合装置の摩擦部材に対する油の供給について開示されていない。このため、特許文献1の技術は、第一係合装置の摩擦部材に油を供給して冷却することに対応し得ない。
特許文献2の技術では、第一係合装置の摩擦部材に油を供給するために、流体継手のカバー内に、流体継手の継手入力側部材と継手出力側部材とを直結(ロックアップ)する第二係合装置に加えて、第一係合装置を収容している。詳細には、流体継手のカバー内に、流体継手の本体部を収容する本体部収容室と、第一係合装置の摩擦部材が収容されると共に第一係合装置のピストンにおける作動油の油圧が作用する側とは反対側に油圧を作用させるように形成された差圧形成室とが、連通(共用)して備えられている。また、本体部収容室と差圧形成室とが共用して備えられる場合には、通常、これらに油圧を供給する油圧供給系統も共用されると考えられる。
【0004】
ここで、流体継手の第二係合装置は、少なくとも本体部収容室へ供給される油圧によりその係合状態が制御される。第一係合装置は、第一係合装置の作動油の油圧と、差圧形成室に供給される油圧と、の差圧により、その係合状態が制御される。このとき、第一及び第二係合装置の制御にはそれぞれ独自の狙いがあり、その狙いに適合するように第一及び第二係合装置のそれぞれが制御される。
しかしながら、特許文献2の技術では、本体部収容室と差圧形成室とが連通(共用)されているため、第一及び第二係合装置の一方の制御中には、一方の油室内に生じる油圧変動や、一方の油圧供給系統の作動が、他方に影響し、他方又は双方の制御性が悪化する恐れがある。また、双方の制御が同時に行なわれる場合には、各油室内に生じる油圧変動や、各油圧供給系統の作動が、互いに干渉し、双方の制御性が悪化する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137406号公報
【特許文献2】特開2010−105450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内燃機関を動力伝達機構に選択的に駆動連結する第一係合装置の油圧と、流体継手を直結する第二係合装置の油圧とが、互いに干渉することを抑制し、双方の制御性を向上できる車両用駆動装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路上に設けられた流体継手と、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記第一係合装置は、第一摩擦部材と、当該第一摩擦部材を押圧する第一ピストンと、前記第一摩擦部材が収容されるとともに、油圧が供給されて前記第一ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に油圧を作用させるように形成された第一油室と、を備え、前記流体継手は、当該流体継手の本体部を収容する本体部収容室に、前記入力部材側に駆動連結される継手入力側部材と前記出力部材側に駆動連結される継手出力側部材とを直結する第二係合装置の係合状態を油圧により制御するための第二油室を備え、
前記第一油室に供給する油圧である第一油室油圧を制御する第一油圧制御弁と、前記第二油室に供給する油圧である第二油室油圧を前記第一油室油圧とは独立して制御する第二油圧制御弁と、を備える点にある。
【0008】
なお、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
【0009】
上記の特徴構成によれば、第一係合装置の第一油室と、第二係合装置の第二油室と、を個別に備えると共に、第一油室に供給する第一油室油圧を制御する第一油圧制御弁と、第二油室に供給する第二油室油圧を第一油室油圧とは独立して制御する第二油圧制御弁と、を備えている。すなわち、第一油圧制御弁及び当該第一油圧制御弁から第一油室までの油路を含む第一油室への油圧供給系統と、第二油圧制御弁及び当該第二油圧制御弁から第二油室までの油路を含む第二油室への油圧供給系統と、が独立して備えられている。よって、第一係合装置及び第二係合装置の何れか一方の制御中においても、一方の油室内に生じる油圧変動や、一方の油圧供給系統の作動が、他方に影響し、他方又は双方の制御性が悪化することを抑制できる。また、第一係合装置及び第二係合装置の双方の制御が重なる場合でも、各油室内に生じる油圧変動や、各油圧供給系統の作動が、互いに干渉し、双方の制御性が悪化することを抑制できる。従って、第一油室、及び第二油室への油圧供給の制御精度を向上させることができ、第一係合装置及び第二係合装置の係合状態の制御精度を向上させることができる。そして、第一係合装置を係合又は解放させる際に、車輪に伝達されるトルクの変動を抑制することができる。
【0010】
また、第一油圧供給系統と、第二油圧供給系統とが独立して備えられているので、第一係合装置及び第二係合装置の一方又は双方の制御中においても、相互干渉により、第一油室内に供給される油量が変動することを抑制することができ、第一油室内に備えられた第一摩擦部材の冷却性能の変動を抑制できる。
【0011】
ここで、前記第一油圧制御弁から前記第一油室へ供給された油圧を、当該第一油室から排出するための排出油路に、流量を絞る絞り部を備える構成とすると好適である。
【0012】
この構成のように、第一油室の排出口側に、絞り部を備えているので、絞り部の上流側に位置する第一油室及び第一油圧制御弁から第一油室までの供給油路内の油圧を均一化することができ、第一油室内の油圧の制御精度を向上させることができる。よって、第一係合装置の係合状態の制御精度を向上させることができる。また、第一油室の排出口側に、絞り部を備えているので、絞り部の絞り量を調節することにより、第一油室内を流れる油の流量を調節することができる。よって、第一油室内に収容された第一摩擦部材の冷却を適切にすることができる。
【0013】
ここで、前記第一係合装置は、前記第一ピストンが前記第一摩擦部材を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重で前記第一ピストンを付勢する付勢機構と、を備え、前記第一油圧制御弁は、前記初期係合荷重より大きい荷重で前記第一ピストンを係合解除側に押圧する油圧を前記第一油室に発生させるように、前記第一油室油圧を制御する構成とすると好適である。
【0014】
この構成のように、ピストンが第一摩擦部材を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重でピストンを付勢する付勢機構が備えられているので、第一係合装置の解放状態で回転電機や回転電機の駆動回路等が故障して、回転電機による油圧ポンプの駆動ができなくなった場合でも、内燃機関を始動すれば、第一付勢機構の押圧力により内燃機関のトルクを油圧ポンプに伝達して油圧を発生させ、第一係合装置を係合状態にすることができる。よって、回転電機が動かない場合でも、内燃機関の駆動力を車輪側に伝達して、車輪を駆動することができる。
【0015】
また、上記の構成ように、第一油圧制御弁が、前記初期係合荷重より大きい荷重でピストンを係合解除側に押圧する油圧を第一油室に発生させるように、第一油室油圧を制御するので、どこも故障していない通常状態では、第一油圧制御弁により発生された第一油室油圧により、付勢機構の押圧力による第一係合装置の係合を解除することができる。よって、回転電機による車輪の駆動時(電動走行時)に、付勢機構の押圧力により第一係合装置を介して内燃機関に回転電機のトルクが伝達されることを抑制でき、電動走行時のエネルギ効率の悪化を抑制できる。
【0016】
ここで、油圧ポンプの出力圧を第一ライン圧として制御する第一ライン圧制御弁と、前記第一ライン圧を更に減圧し、第二ライン圧として制御する第二ライン圧制御弁と、を備え、前記第一油圧制御弁は、前記第一ライン圧制御弁により制御された前記第一ライン圧の油の供給を受けて前記第一油室油圧の油を前記第一油室に供給し、前記第二油圧制御弁は、前記第二ライン圧制御弁により制御された前記第二ライン圧の油の供給を受けて前記第二油室油圧の油を前記第二油室に供給する構成とすると好適である。
【0017】
油圧ポンプの出力圧である第一ライン圧は、油圧ポンプの駆動を開始した後、速やかに立ち上がる。一方、第一ライン圧を減圧して生成される第二ライン圧は、油圧ポンプの駆動開始後、第一ライン圧より遅れて立ち上がる。上記の構成のように、油圧ポンプの出力圧である第一ライン圧が、第一油圧制御弁に供給されるので、油圧ポンプの駆動開始後、速やかに、第一油圧制御弁により制御される第一油室油圧を立ち上げることができ、第一油室内に供給することができる。よって、油圧ポンプの駆動開始後、速やかに、第一ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に作用する油圧を生成し、第一係合装置の作動精度を確保することができると共に、第一油室内に収容された第一摩擦部材の冷却性能を確保することができる。また、上記のように、第一摩擦部材を係合側に押圧する付勢機構が備えられている場合は、油圧ポンプの駆動開始後、速やかに、付勢機構の押圧力による第一係合装置の係合を解除できる。
【0018】
一方、第二ライン圧は、第一ライン圧を更に減圧して制御されるので、油圧ポンプの吐出による圧力脈動の影響を受け易い第一ライン圧よりも、当該圧力脈動の影響を受けにくく、圧力が安定している。上記の構成のように、第一ライン圧を更に減圧して生成された第二ライン圧が、第二油圧制御弁に供給されるので、第一ライン圧より安定している第二ライン圧を用いて、安定した第二油室油圧を生成することができる。よって、第二係合装置の作動精度を安定させることができる。
【0019】
特に、第二係合装置に、第二摩擦部材を解放側に押圧する付勢機構が備えられている場合は、第一係合装置のように、油圧ポンプの駆動開始後、速やかに、付勢機構による第二係合装置の係合を解除する必要がないため、第二ライン圧を用いても、油圧ポンプの駆動開始後、第二係合装置を安定して作動させることができる。
【0020】
ここで、前記流体継手は、第二摩擦部材と、当該第二摩擦部材を押圧する第二ピストンとを備え、前記第二油室は、前記第二係合装置の第二摩擦部材及び前記流体継手の前記継手入力側部材及び前記継手出力側部材が収容されるとともに、油圧が供給されて前記第二ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に油圧を作用させるように形成される構成とすると好適である。
【0021】
この構成によれば、第一係合装置と同様に、第二係合装置の第二ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に作用する油圧の制御精度を向上させることができ、第二係合装置の係合状態の制御精度を向上させることができる。また、第二油室内に収容された第二摩擦部材の冷却性能の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の駆動伝達系の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の油圧制御系の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る車両用駆動装置1(以下、駆動装置1と称す)の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、本実施形態に係る駆動装置1は、概略的には、内燃機関IE及び回転電機MGを駆動力源として備え、これらの駆動力源の駆動力を、動力伝達機構を介して車輪Wへ伝達する構成となっている。駆動装置1は、回転電機MGに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、入力軸Iを内燃機関IEに選択的に駆動連結する第一係合装置C1と、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上に設けられた流体継手としてのトルクコンバータTCと、を備えている。本実施形態では、駆動装置1は、トルクコンバータTCと出力軸Oとの間の動力伝達経路上に、変速装置TMを備えている。なお、入力軸Iが、本発明における「入力部材」であり、出力軸Oが、本発明における「出力部材」である。
【0024】
このような構成において、図2及び図3に示すように、第一係合装置C1は、第一摩擦部材101と、当該第一摩擦部材101を押圧する第一ピストン106と、第一摩擦部材101が収容されるとともに、油圧が供給されて第一ピストン106における作動用の油圧が作用する側とは反対側である背圧側に油圧を作用させるように形成された第一油室102と、を備えている。
トルクコンバータTCは、当該トルクコンバータTCの本体部を収容する本体部収容室137に、入力軸I側に駆動連結されるポンプインペラ41と出力軸O側に駆動連結されるタービンランナ51とを直結する第二係合装置C2の係合状態を油圧により制御するための第二油室112を備えている。なお、ポンプインペラ41が、本発明における「継手入力側部材」であり、タービンランナ51が、本発明における「継手出力側部材」である。
【0025】
そして、駆動装置1は、第一油室102に供給する油圧である第一油室油圧103を制御する第一油圧制御弁104と、第二油室112に供給する油圧である第二油室油圧113を第一油室油圧103とは独立して制御する第二油圧制御弁114と、を備える点に特徴を有している。以下、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
【0026】
1.駆動装置の駆動伝達系の構成
まず、本実施形態に係る駆動装置1の駆動伝達系の構成について説明する。図1に示すように、駆動装置1は、車両駆動用の駆動力源として内燃機関IE及び回転電機MGを備え、これらの内燃機関IEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置1となっている。本実施形態では、駆動装置1は、動力伝達機構として、トルクコンバータTCと変速装置TMとを備えており、当該トルクコンバータTC及び変速装置TMにより、駆動力源としての内燃機関IE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。本実施形態に係わる駆動装置1では、内燃機関IEと回転電機MGとトルクコンバータTCと変速装置TMとが同軸上に配置されていると共に、内燃機関IE側から軸方向に沿ってこの順に配列されている。また、内燃機関連結軸EC、入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oも、これと同軸上に配置されている。ここでは、これらの同軸上に配置された駆動装置1の各部材の軸心を装置軸心X1とする。また、実施形態の説明において、単に軸方向、径方向、周方向という場合には、この装置軸心X1を基準とした方向を指すものとする。
【0027】
内燃機関IEは、燃料の燃焼により動力を出力する原動機であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種内燃機関を用いることができる。本例では、内燃機関IEのクランクシャフト等の出力回転軸が、内燃機関連結軸EC及び第一係合装置C1を介して入力軸Iに駆動連結される。これにより、第一係合装置C1は、入力軸Iを内燃機関IEに選択的に駆動連結する。この第一係合装置C1は、第一サーボ油圧制御弁109から供給される作動用の油圧により、係合又は解放する摩擦係合要素である(図2参照)。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。なお、内燃機関IEの出力回転軸が、内燃機関連結軸ECと一体的に駆動連結され、或いはダンパ等の他の部材を介して駆動連結された構成としても好適である。
【0028】
回転電機MGは、ケース3に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有している。この回転電機MGのロータRoは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。すなわち、本実施形態においては、入力軸Iに内燃機関IE及び回転電機MGの双方が駆動連結される構成となっている。回転電機MGは、蓄電装置としてのバッテリ(不図示)に電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、バッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは内燃機関IEや車輪から伝達される回転駆動力により発電した電力をバッテリに蓄電する。なお、バッテリは蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。
【0029】
本実施形態では、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路上に、トルクコンバータTCが備えられている。トルクコンバータTCは、駆動力源としての内燃機関IE及び回転電機MGの回転駆動力を、出力軸O側に伝達する装置である。このトルクコンバータTCは、回転電機MG(入力軸I)に駆動連結された継手入力側部材としてのポンプインペラ41と、変速装置TM(中間軸M)に駆動連結された継手出力側部材としてのタービンランナ51と、これらの間に設けられ、ワンウェイクラッチ57を備えたステータ56と、を備えている。そして、トルクコンバータTCは、内部に充填された油を介して、駆動側のポンプインペラ41と従動側のタービンランナ51との間で駆動力の伝達を行う。
【0030】
トルクコンバータTCは、ロックアップ用の摩擦係合要素として、第二係合装置C2を備えている。この第二係合装置C2は、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間の回転速度差(滑り)を無くして伝達効率を高めるために、ポンプインペラ41とタービンランナ51とを一体回転させるように連結するクラッチである。従って、トルクコンバータTCは、第二係合装置C2が係合されている場合は、油を介さずに、駆動力源の駆動力を直接、変速装置TM(中間軸M)に伝達する。本実施形態では、第二係合装置C2は、第二サーボ油圧制御弁119から供給される作動用の油圧により、係合又は解放する。
【0031】
また、駆動装置1は、トルクコンバータTCのポンプインペラ41側に駆動連結された油圧ポンプOPを備えている。油圧ポンプOPは、駆動力源から伝達された回転駆動力により駆動されて、油貯留部OTに貯留された油を吸引して油圧を生じさせ、油圧制御装置に供給する(図2参照)。
【0032】
トルクコンバータTCの出力軸としての中間軸Mには、変速装置TMが駆動連結されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。変速装置TMは、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と複数の摩擦係合要素とを備えている。本例では、複数の摩擦係合要素は、それぞれ摩擦材を有して構成されるクラッチやブレーキ等の係合要素である。これらの複数の摩擦係合要素のそれぞれには、変速装置TM用の油圧制御装置により調圧された油が供給されて、係合又は解放される。このような摩擦係合要素としては、例えば湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキ等が好適に用いられる。変速装置TMから出力軸Oへ伝達されたトルクは、出力用差動歯車機構DFを介して左右二つの車輪Wに分配されて伝達される。
【0033】
2.油圧制御系
次に、第一係合装置C1及び第二係合装置C2に係わる油圧制御系の構成について図2を参照して説明する。
上記したように、第一係合装置C1は、第一ピストン106を含む第一油圧サーボ機構100と、第一摩擦部材101と、当該第一摩擦部材101を押圧する第一ピストン106と、第一摩擦部材101が収容されるとともに、油圧が供給されて第一ピストン106における作動用の油圧が作用する側とは反対側である背圧側に油圧を作用させるように形成された第一油室102と、を備えている。
【0034】
トルクコンバータTCは、当該トルクコンバータTCの本体部を収容する本体部収容室137に、入力軸I側に駆動連結されるポンプインペラ41と出力軸O側に駆動連結されるタービンランナ51とを直結する第二係合装置C2の係合状態を油圧により制御するための第二油室112を備えている。
本実施形態では、トルクコンバータTCは、図2に示すように、第二ピストン116を含む第二油圧サーボ機構110と、第二摩擦部材111と、当該第二摩擦部材111を押圧する第二ピストン116と、を備えている。また、第二油室112には、第二係合装置C2の第二摩擦部材111及びトルクコンバータTCのポンプインペラ41及びタービンランナ51が収容されるとともに、油圧が供給されて第二ピストン116における作動用の油圧が作用する側とは反対側である背圧側に油圧を作用させるように形成されている。
【0035】
そして、駆動装置1は、第一サーボ油圧制御弁109及び第二サーボ油圧制御弁119を備えている。また、駆動装置1は、第一油室102に供給する油圧である第一油室油圧103を制御する第一油圧制御弁104と、第二油室112に供給する油圧である第二油室油圧113を第一油室油圧103とは独立して制御する第二油圧制御弁114と、を備えている。
【0036】
ここで、第一ピストン106における作動用の油圧が作用する側とは、第一ピストン106における第一サーボ油室108側を指し、第一ピストン106における作動用の油圧が作用する側とは反対側(背圧側)とは、第一ピストン106における第一油室102側を指す。なお、以下の説明では、第一ピストン106における作動用の油圧が作用する側とは反対側(背圧側)に作用する油圧を、第一ピストン106の背圧、或いは第一油圧サーボ機構100の背圧と称する。また、第一油圧サーボ機構100は、第一ピストン106、第一シリンダ105、及び第一シリンダ105と第一ピストン106とに囲まれた第一サーボ油室108により構成されている。
【0037】
また、同様に、第二ピストン116における作動用の油圧が作用する側とは、第二ピストン116における第二サーボ油室118側を指し、第二ピストン116における作動用の油圧が作用する側とは反対側(背圧側)とは、第二ピストン116における第二油室112側を指す。なお、以下の説明では、第二ピストン116における作動用の油圧が作用する側とは反対側(背圧側)に作用する油圧を、第二ピストン116の背圧、或いは第二油圧サーボ機構110の背圧と称する。また、第二油圧サーボ機構110は、第二ピストン116、第二シリンダ115、及び第二シリンダ115と第二ピストン116とに囲まれた第二サーボ油室118により構成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、本体部収容室137は、トルクコンバータTCの本体部として、少なくとも、ポンプインペラ41、タービンランナ51、及びステータ56を収容するように形成されている。また、第二油室112は、トルクコンバータTCのカバー部材内に、本体部収容室137と連通して一体的に形成されている。以下では、本体部収容室137と第二油室112とをまとめて単に第二油室112と称する。
【0039】
本実施形態に係わるハイブリッド車両用の駆動装置1では、内燃機関IEを動力伝達機構に選択的に駆動連結する第一係合装置C1が備えられている。そして、回転電機MGのみの駆動力で車両を駆動する場合は、第一係合装置C1に供給する油圧を制御することにより、第一係合装置C1を解放して、内燃機関IEを動力伝達機構から分離できるように構成されている。一方、内燃機関IEの駆動力を用いて車両を駆動する場合は、第一係合装置C1に供給する油圧を制御することにより、第一係合装置C1を係合して、内燃機関IEを動力伝達機構に駆動連結するように構成されている。
【0040】
この第一係合装置C1を係合する際に、トルクショックが生じ車輪Wに伝達される恐れがある。このため、トルクコンバータTCの第二係合装置C2が係合されており、ポンプインペラ41とタービンランナ51とが直結されている場合は、第一係合装置C1を係合する際に、第二係合装置C2を解放状態又は滑り係合状態に制御する。これにより、第一係合装置C1で生じたトルクショックが、トルクコンバータTCから車輪W側に伝達されることを抑制できる。また、第一係合装置C1を解放する際にも、トルクショックが生じる恐れがあり、同様に第二係合装置C2を解放状態又は滑り係合状態に制御する。従って、第一係合装置C1に供給される油圧を制御する場合に、同時期に第二係合装置C2に供給される油圧を制御する場合が生じる。また、この際、車輪Wに伝達されるトルクの変動を抑制するために、第一係合装置C1及び第二係合装置C2に供給される油圧の制御精度を向上することが課題となる。
【0041】
本実施形態では、第一係合装置C1の第一油圧サーボ機構100(第一ピストン106)の背圧を生成する第一油室102と、第二係合装置C2の第二油圧サーボ機構110(第二ピストン116)の背圧を生成する第二油室112と、が互いに独立して備えられている。よって、第一係合装置C1の第一油圧サーボ機構100と、第二係合装置C2の第二油圧サーボ機構110と、が同時期に作動される場合でも、第一油圧サーボ機構100の作動により生じた第一油室102内の油圧変動と、第二油圧サーボ機構110の作動により生じた第二油室112内の油圧変動と、が互いに干渉することを防止できる。従って、第一油圧サーボ機構100の背圧、及び第二油圧サーボ機構110の背圧の制御精度を向上させることができ、第一係合装置C1及び第二係合装置C2の係合又は解放の制御精度を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、第一油室102に供給する第一油室油圧103を制御する第一油圧制御弁104と、第二油室112に供給する第二油室油圧113を第一油室油圧103とは独立して制御する第二油圧制御弁114と、が備えられている。すなわち、第一油圧制御弁104及び当該第一油圧制御弁104から第一油室102までの油路を含む第一油室102への油圧供給系統(第一油圧供給系統)と、第二油圧制御弁114及び当該第二油圧制御弁114から第二油室112までの油路を含む第二油室112への油圧供給系統(第二油圧供給系統)と、が独立して備えられている。よって、第一係合装置C1の第一油圧サーボ機構100と、第二係合装置C2の第二油圧サーボ機構110と、が同時期に作動される場合に、第一油室102又は第二油室112内の油圧変動や、第一油圧供給系統又は第二油圧供給系統の作動が、互いに干渉することを抑制できる。従って、第一油圧サーボ機構100の背圧、及び第二油圧サーボ機構110の背圧の制御精度を向上させることができ、第一係合装置C1及び第二係合装置C2の係合状態の制御精度を向上させることができる。そして、第一係合装置C1を係合又は解放させる際に、車輪Wに伝達されるトルクの変動を抑制することができる。
【0043】
本実施形態では、駆動装置1は、第一油圧制御弁104から第一油室102へ供給された油圧を、当該第一油室102から排出するための排出油路に、流量を絞る絞り部としての第一絞り部120を備える。なお、第一絞り部120が、本発明における「絞り部」である。
【0044】
このように、第一油室102の排出口側に、第一絞り部120を備えているので、第一絞り部120の上流側に位置する第一油室102及び第一油圧制御弁104から第一油室102までの供給油路内の油圧を均一化することができる。よって、第一油室102内の油圧の制御精度を向上させることができ、第一係合装置C1の係合状態の制御精度を向上させることができる。また、第一油室102の排出口側に、第一絞り部120を備えているので、第一絞り部120の絞り量を調節することにより、第一油室102内を流れる油の流量を調節することができる。よって、第一油室102内に収容された第一摩擦部材101の冷却を適切にすることができる。
【0045】
また、本実施形態では、第一ピストン106が第一摩擦部材101を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重で第一ピストン106を付勢する第一付勢機構107と、を備えている。そして、第一油圧制御弁104は、前記初期係合荷重より大きい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する背圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御する。なお、第一付勢機構107が、本発明における「付勢機構」である。
【0046】
このように、第一ピストン106が第一摩擦部材101を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重で第一ピストン106を付勢する第一付勢機構107が備えられているので、第一係合装置C1の解放状態で回転電機MGや回転電機MGの駆動回路等が故障して、回転電機MGによる油圧ポンプOPの駆動ができなくなった場合でも、スタータにより内燃機関IEを始動すれば、第一付勢機構107の押圧力により内燃機関IEのトルクを油圧ポンプOPに伝達して油圧を発生させ、第一係合装置C1を係合状態にすることができる。よって、回転電機MGが動かない場合でも、内燃機関IEの駆動力を車輪W側に伝達して、車輪Wを駆動することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、第一油圧制御弁104が、前記初期係合荷重より大きい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する油圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御するので、どこも故障していない通常状態では、第一油圧制御弁104により発生された第一油室油圧103により、第一付勢機構107の押圧力による第一係合装置C1の係合を解除することができる。よって、回転電機MGによる車輪Wの駆動時(電動走行時)に、第一付勢機構107の押圧力により第一係合装置C1を介して内燃機関IEに回転電機MGのトルクが伝達されることを抑制でき、電動走行時のエネルギ効率の悪化を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、駆動装置1は、油圧ポンプOPの出力圧を第一ライン圧131として制御する第一ライン圧制御弁130と、第一ライン圧131を更に減圧し、第二ライン圧141として制御する第二ライン圧制御弁140と、を備えている。そして、第一油圧制御弁104は、第一ライン圧制御弁130により制御された第一ライン圧131の油の供給を受けて第一油室油圧103の油を第一油室102に供給する。第二油圧制御弁114は、第二ライン圧制御弁140により制御された第二ライン圧141の油の供給を受けて第二油室油圧113の油を第二油室112に供給する。
【0049】
油圧ポンプOPの出力圧である第一ライン圧131は、駆動装置1を起動するためなどに、油圧ポンプOPの駆動を開始した後、速やかに立ち上がる。一方、第一ライン圧131を減圧して生成させる第二ライン圧141は、油圧ポンプOPの駆動開始後、第一ライン圧131より遅れて立ち上がる。本実施形態では、上記のように、油圧ポンプOPの出力圧である第一ライン圧131が、第一油圧制御弁104に供給されるので、油圧ポンプOPの駆動開始後、速やかに、第一油圧制御弁104により制御される第一油室油圧103が立ち上がり、第一油室102内に供給することができる。よって、油圧ポンプOPの駆動開始後、速やかに、第一油圧サーボ機構100(第一ピストン106)の背圧を生成し、第一係合装置C1の作動精度を確保することができると共に、第一付勢機構107の押圧力による第一係合装置C1の係合を解除できる。また、第一油室102内に収容された第一摩擦部材101の冷却性能を確保することができる。
【0050】
一方、第二ライン圧141は、第一ライン圧131を更に減圧した油圧であるため、油圧ポンプOPの吐出による圧力脈動の影響を受け易い第一ライン圧131よりも、当該圧力脈動の影響を受けにくく、圧力が安定している。本実施形態では、上記のように、第一ライン圧131を更に減圧して生成された第二ライン圧141が、第二油圧制御弁114に供給されるので、第一ライン圧131より安定している第二ライン圧141を用いて、安定した第二油室油圧113を生成することができる。よって、第二係合装置C2の作動精度を安定させることができる。
【0051】
特に、第二係合装置C2に、第二摩擦部材111を解放側に押圧する第二付勢機構117が備えられている場合は、第一係合装置C1のように、油圧ポンプOPの駆動開始後に付勢機構による第二係合装置C2の係合を解除する必要がないため、第二ライン圧141を用いても、油圧ポンプOPの駆動開始後、第二係合装置C2を安定して作動させることができる。
【0052】
2−1.第一ライン圧制御弁の詳細構成
次に、図2に示す油圧制御系の各構成の詳細について説明する。
本実施形態では、油圧ポンプOPの出力圧を第一ライン圧131として制御(調圧)する第一ライン圧制御弁130として、スプール130p及び当該スプール130pを付勢するばね130s等からなる調圧弁の一種であるプレッシャーレギュレータバルブが用いられている。すなわち、第一ライン圧制御弁130は、基準圧室130aに供給された基準圧136及びばね130sによりスプール130pを一方方向(図2における下向き)に押圧する押圧力と、フィードバック圧室130bに供給された第一ライン圧131によりスプール130pを他方方向(図2における上向き)に押圧する押圧力と、のバランスにより、油圧ポンプOPから吐出された油のドレイン量を調節することにより、第一ライン圧131を調圧する。具体的には、第一ライン圧131による他方側への押圧力が、基準圧136及びばね130sによる一方側への押圧力を上回った場合に、スプール130pが他方側へ移動して、第一ライン圧131が供給されている調圧ポート130cと排出ポート130dとの連通開口量が大きくなり、油圧ポンプOPから吐出された油を排出ポート130dからドレインする量が増加し、第一ライン圧131が低下する。逆に、第一ライン圧131による他方側への押圧力が、基準圧136及びばね130sによる一方側への押圧力を下回った場合に、スプール130pが一方側へ移動して、調圧ポート130cと排出ポート130dとの連通開口量が小さくなり、排出ポート130dからのドレイン量が減少し、第一ライン圧131が上昇する。よって、第一ライン圧制御弁130は、第一ライン圧131による他方側への押圧力と、基準圧136及びばね130sによる一方側への押圧力と、がバランスするように、スプール130pが移動して排出ポート130dへの連通開口量を増減することにより、フィードバック的に第一ライン圧131を調圧する。図2に示す油圧制御系では、第一ライン圧131の油は、第一係合装置C1に供給する油圧を制御する第一油圧制御弁104及び第一サーボ油圧制御弁109等に送られる。また、排出ポート130dからドレインされた油は、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。
【0053】
基準圧室130aに供給される基準圧136は、基準圧制御弁135により制御(調圧)される。本実施形態では、基準圧制御弁135として、ソレノイドと調圧弁(減圧弁)との機能を合わせ持った油圧制御弁であるリニアソレノイド弁が用いられている。基準圧制御弁135は、ソレノイドの駆動力に応じて、油圧ポンプOPから供給された油圧の減圧量を制御して、基準圧136を生成する。
【0054】
2−2.第二ライン圧制御弁の詳細構成
本実施形態では、基準圧制御弁135により制御(調圧)された基準圧136は、第二ライン圧制御弁140にも供給される。第二ライン圧制御弁140として、第一ライン圧制御弁130と同様に、スプール140p及び当該スプール140pを付勢するばね140s等からなる調圧弁の一種であるプレッシャーレギュレータバルブが用いられる。すなわち、第二ライン圧制御弁140は、第一ライン圧制御弁130と同様に、基準圧室140aに供給された基準圧136及びばね140sによりスプール140pを他方方向(図2における上向き)に押圧する押圧力と、フィードバック圧室140bに供給された第二ライン圧141によりスプール140pを一方方向(図2における下向き)に押圧する押圧力と、のバランスにより、第一ライン圧制御弁130の出力ポート130eから供給された油のドレイン量を調節することにより、第一ライン圧131を更に減圧して第二ライン圧141を調圧する。図2に示す油圧制御系では、第二ライン圧141の油は、第二係合装置C2に供給する油圧を制御する第二油圧制御弁114及び第二サーボ油圧制御弁119等に送られる。また、排出ポート140dからドレインされた油は、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。
【0055】
2−3.第一油圧制御弁の詳細構成
本実施形態では、第一ライン圧制御弁130により制御(調圧)された第一ライン圧131は、第一油圧制御弁104に供給される。本例では、第一油圧制御弁104として、スプール104p及び当該スプール104pを付勢するばね104s等から構成され、元圧からの油路の開閉とドレインへの油路の開閉とを同時に行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられる。すなわち、第一油圧制御弁104は、ばね104sによりスプール104pを他方方向(図2における上向き)に押圧する押圧力と、フィードバック圧室104bに供給された第一油室油圧103によりスプール104pを一方方向(図2における下向き)に押圧する押圧力と、のバランスにより、第一ライン圧131の油の供給量及び第一油室油圧103の油のドレイン量を調節することにより、第一ライン圧131を更に減圧して第一油室油圧103を調圧する。
【0056】
具体的には、第一油室油圧103による一方側への押圧力が、ばね104sによる他方側への押圧力を上回った場合に、スプール104pが一方側へ移動して、第一油室油圧103を出力する出力ポート104eと排出ポート104dとの連通開口量が大きくなると共に、出力ポート104eと入力ポート104iとの連通開口量が小さくなる。これにより、第一油室油圧103の油が排出ポート104dからドレインされる油量が増加すると共に、入力ポート104iから出力ポート104eに供給される第一ライン圧131の油量が減少し、第一油室油圧103の変化速度が第一油室油圧103の低下方向に変化する。逆に、第一油室油圧103による一方側への押圧力が、ばね104sによる他方側への押圧力を下回った場合に、スプール130pが他方側へ移動して、出力ポート104eと排出ポート104dとの連通開口量が小さくなると共に、出力ポート104eと入力ポート104iとの連通開口量が大きくなる。これにより、第一油室油圧103の油が排出ポート104dからドレインされる油量が減少すると共に、入力ポート104iから出力ポート104eに供給される第一ライン圧131の油量が増加し、第一油室油圧103の変化速度が第一油室油圧103の増加方向に変化する。
【0057】
よって、第一油圧制御弁104は、第一油室油圧103による一方側への押圧力と、ばね104sによる他方側への押圧力と、がバランスするように、スプール104pが移動して、排出ポート104dへの連通開口量及び入力ポート104iへの連通開口量を増減することにより、フィードバック的に第一油室油圧103を調圧する。そして、第一油圧制御弁104により調圧された第一油室油圧103の油は、第一係合装置C1の第一油室102に送られる。また、排出ポート104dからドレインされた油は、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。なお、第一油圧制御弁104として、第二油圧制御弁114のように、ドレインへの油路の開閉のみを行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられるようにしてもよい。
【0058】
また、第一油圧制御弁104は、上記のように、第一付勢機構107による初期係合荷重より大きい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する背圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御する。第一油室102内の油圧は、各種の変動要因により、第一油圧制御弁104により制御された第一油室油圧103に対して変動する。変動要因には、第一油圧制御弁104から第一油室102までの油路の管路抵抗と、油温、ライン圧、及び部材の回転速度などによる静的要因と、油温、ライン圧、及び部材の回転速度などの変動による動的要因と、油圧制御弁及び管路抵抗などのバラツキによる機械的バラツキと、がある。第一油圧制御弁104は、これらの変動要因により最大限の油圧変動が生じたとしても、第一油室油圧103が、第一付勢機構107による初期係合荷重より大きい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する背圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御する。本実施形態では、第一油圧制御弁104は、第一油室油圧103が、これらの変動要因による最大限の油圧変動幅を考慮した所定油圧になるように制御するように構成されている。図2に示す例の第一油圧制御弁104では、第一油圧制御弁104のばね104sの荷重、又はフィードバック圧室104bのスプールpの断面積などの設計により、第一油室油圧103が上記の条件を満たすように、調整されている。
【0059】
2−4.第一油室の詳細構成
第一油圧制御弁104により調圧された第一油室油圧103の油は、第一油室102に供給される。第一油室102は、第一油圧サーボ機構100の背圧を生成すると共に当該第一係合装置C1の第一摩擦部材101を収容している、油密状の油室である。本実施形態では、第一油圧サーボ機構100は、第一シリンダ105、第一ピストン106、及び第一シリンダ105と第一ピストン106とに囲まれた第一サーボ油室108により構成されている。第一ピストン106の背面が、第一油室102の壁面となっており、第一油室油圧103が、第一ピストン106の背圧となっている。また、第一油室102は、第一油室102の第一供給口122に供給された油が、第一油室102内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第一油室102の第一排出口123から排出されるように構成されている。第一油室102の循環路は、第一ピストン106の背面及び第一摩擦部材101に沿って油が流れるように構成されている。この第一油室102に供給された油は、第一油室102内を循環して、第一ピストン106の背圧を生成するとともに、第一摩擦部材101を冷却する。第一油室102内を循環して、第一油室102の第一排出口123から排出された油は、第一絞り部120を介して、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。
【0060】
2−5.第二油圧制御弁の詳細構成
本実施形態では、第二ライン圧制御弁140により制御(調圧)された第二ライン圧141は、第二絞り部125を介して、第二油圧制御弁114に供給される。第二絞り部125により、第二絞り部125を通って、第二油室油圧113側に供給される第二ライン圧141の油量が規制されている。そして、第二油圧制御弁114により、供給された第二ライン圧141の油のドレイン量が調節されて、第二油室油圧113が調圧される。本例では、第二油圧制御弁114として、スプール114p及び当該スプール114pを付勢するばね114s等から構成され、ドレインへの油路の開閉のみを行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられる。すなわち、第二油圧制御弁114は、ばね114sによりスプール114pを他方方向(図2における上向き)に押圧する押圧力と、入力ポート114aに供給された第二油室油圧113によりスプール114pを一方方向(図2における下向き)に押圧する押圧力と、のバランスにより、油のドレイン量を調節することにより、第二ライン圧141を更に減圧して第二油室油圧113を調圧する。
【0061】
具体的には、第二油室油圧113による一方側への押圧力が、ばね114sによる他方側への押圧力を上回った場合に、スプール114pが一方側へ移動して、第二油室油圧113の油が供給される入力ポート114aと排出ポート114bとの連通開口量が大きくなり、第二油室油圧113の油が排出ポート114bからドレインされる油量が増加する。これにより、第二油室油圧113の変化速度が第二油室油圧113の低下方向に変化する。逆に、第二油室油圧113による一方側への押圧力が、ばね114sによる他方側への押圧力を下回った場合に、スプール114pが他方側へ移動して、入力ポート114aと排出ポート114bとの連通開口量が小さくなり、第二油室油圧113の油が排出ポート114bからドレインされる油量が減少する。これにより、第二油室油圧113の変化速度が第二油室油圧113の増加方向に変化する。
【0062】
よって、第二油圧制御弁114は、第二油室油圧113による一方側への押圧力と、ばね114sによる他方側への押圧力と、がバランスするように、スプール114pが移動して、排出ポート114bへの連通開口量を増減することにより、フィードバック的に第二油室油圧113を調圧する。そして、第二油圧制御弁114により調圧された第二油室油圧113の油は、第二係合装置C2の第二油室112に送られる。また、排出ポート114bからドレインされた油は、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。なお、第二油圧制御弁114として、第一油圧制御弁104のように、元圧からの油路の開閉とドレインへの油路の開閉とを同時に行うタイプの調圧弁(減圧弁)が用いられるようにしてもよい。
【0063】
2−6.第二油室の詳細構成
第二油圧制御弁114により調圧された第二油室油圧113の油は、第二油室112に供給される。第二油室112は、第二油圧サーボ機構110の背圧を生成すると共に、第二係合装置C2の第二摩擦部材111及びトルクコンバータTCのポンプインペラ41及びタービンランナ51を収容している、油密状の油室である。本実施形態では、第二油圧サーボ機構110は、第二シリンダ115、第二ピストン116、及び第二シリンダ115と第二ピストン116とに囲まれた第二サーボ油室118により構成されている。第二ピストン116の背面が、第二油室112の壁面となっており、第二油室油圧113が、第二ピストン116の背圧となっている。また、第二油室112は、第二油室112の第二供給口127に供給された油が、第二油室112内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第二油室112の第二排出口128から排出されるように構成されている。第二油室112の循環路は、第二ピストン116の背面、第二摩擦部材111、ポンプインペラ41、及びタービンランナ51に沿って油が流れるように構成されている。この第二油室112に供給された油は、第二油室112内を循環して、第二ピストン116の背圧を生成し、第二摩擦部材111を冷却すると共に、ポンプインペラ41及びタービンランナ51の作動油として供給される。第二油室112内を循環して、第二油室112の第二排出口128から排出された油は、油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。
【0064】
2−7.第一サーボ油圧制御弁の詳細構成
本実施形態では、第一ライン圧制御弁130により制御(調圧)された第一ライン圧131は、第一サーボ油圧制御弁109に供給される。第一サーボ油圧制御弁109として、ソレノイドと調圧弁(減圧弁)との機能を合わせ持った油圧制御弁であるリニアソレノイド弁が用いられている。第一ライン圧制御弁130は、ソレノイドの駆動力に応じて、供給された第一ライン圧131の減圧量を制御して、第一サーボ油圧121を生成する。具体的には、第一サーボ油圧制御弁109は、図示はしていないが、ばね及びソレノイドの駆動力によりスプールを押圧する押圧力と、フィードバック圧室109bに供給された第一サーボ油圧121によりスプールを押圧する押圧力と、のバランスにより、入力ポート109iから供給される第一ライン圧131の油の供給量、及び排出ポート109dから排出される第一サーボ油圧121の油のドレイン量を調節することにより、第一ライン圧131を更に減圧して第一サーボ油圧121を調圧する。なお、第一サーボ油圧制御弁109として、ソレノイドの機能と調圧弁(減圧弁)の機能とが分離された、デューティソレノイド弁と調圧弁(減圧弁)とが用いられるようにしてもよい。
【0065】
よって、本実施形態では、第一係合装置C1の第一油室102及び第一サーボ油室108に供給される油圧は、第一ライン圧131を減圧して調圧されており、上記したように、油圧ポンプOPの駆動を開始した後、速やかに、第一油室油圧103及び第一サーボ油圧121を立ち上げることができる。よって、油圧ポンプOPの駆動開始後、速やかに、第一油圧サーボ機構100の背圧を生成すると共に、第一サーボ油室108へ供給する油圧を制御することができ、速やかに、第一係合装置C1の作動精度を確保することができる。
【0066】
特に、第一係合装置C1に第一摩擦部材101を係合側に押圧する第一付勢機構107が備えられている場合は、油圧ポンプOPの駆動開始後、速やかに、第一油圧サーボ機構100の背圧を立ち上げて、第一付勢機構107による第一係合装置C1の係合を解除することできる。
【0067】
2−8.第二サーボ油圧制御弁の詳細構成
本実施形態では、第二ライン圧制御弁140により制御(調圧)された第二ライン圧141は、第二サーボ油圧制御弁119に供給される。第二サーボ油圧制御弁119として、第一サーボ油圧制御弁109と同様に、ソレノイドと調圧弁(減圧弁)との機能を合わせ持った油圧制御弁であるリニアソレノイド弁が用いられている。第二サーボ油圧制御弁119は、ソレノイドの駆動力に応じて、供給された第二ライン圧141の減圧量を制御して、第二サーボ油圧126を生成する。具体的には、第二サーボ油圧制御弁119は、図示はしていないが、ばね及びソレノイドの駆動力によりスプールを押圧する押圧力と、フィードバック圧室119bに供給された第二サーボ油圧126によりスプールを押圧する押圧力と、のバランスにより、入力ポート119iから供給される第二ライン圧141の油の供給量、及び排出ポート119dから排出される第二サーボ油圧126の油のドレイン量を調節することにより、第二ライン圧141を更に減圧して第二サーボ油圧126を調圧する。なお、第二サーボ油圧制御弁119として、ソレノイドの機能と調圧弁(減圧弁)の機能とが分離された、デューティソレノイド弁と調圧弁(減圧弁)とが用いられるようにしてもよい。
【0068】
よって、本実施形態では、第二係合装置C2の第二油室112及び第二サーボ油室118に供給される油圧は、第二ライン圧141を減圧して調圧されており、上記したように、第一ライン圧131より安定している第二ライン圧141を用いて、第二油室油圧113及び第二サーボ油圧126を生成することができる。よって、安定して、第二油圧サーボ機構110の背圧を生成すると共に、安定して、第二サーボ油室118へ供給する油圧を制御することができ、第一係合装置C1の作動精度を安定的に確保することができる。
【0069】
特に、第二係合装置C2に、第二摩擦部材111を解放側に押圧する第二付勢機構117が備えられている場合は、第一係合装置C1のように、油圧ポンプOPの駆動開始後に付勢機構による第二係合装置C2の係合を解除する必要がないため、第二ライン圧141を用いても、油圧ポンプOPの駆動開始後、第二係合装置C2を安定して作動させることができる。
【0070】
3.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の各部の詳細な構成について、図3及び図4を参照して説明する。図4は、図3の断面図の部分拡大図である。
【0071】
3−1.ケース
図3に示すように、ケース3は、概略的に、円筒状の周壁4と、軸方向における回転電機MGの図3における左側(内燃機関IE側)に設けられた端部支持壁5と、端部支持壁5の径方向中心部から軸方向に突出する筒状突出部11と、軸方向におけるトルクコンバータTCの図3における右側(変速装置TM側)に設けられた中間隔壁6と、を有している。ケース3内における端部支持壁5と中間隔壁6との間の空間に、回転電機MG、第一係合装置C1、及びトルクコンバータTCが収容されている。また、図示は省略しているが、中間隔壁6よりも図3における右側の空間に、変速装置TMが収容されている。なお、端部支持壁5よりも図3における左側には、内燃機関IEが備えられている。
【0072】
端部支持壁5は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、端部支持壁5の径方向中心部には、軸方向にトルクコンバータTC側へ突出する筒状突出部11が設けられている。本例では、筒状突出部11は、端部支持壁5の径方向内側端部からトルクコンバータTC側へ突出する円筒状のボス部とされている。筒状突出部11の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に内燃機関連結軸ECが挿通されている。本実施形態では、筒状突出部11の内周面と内燃機関連結軸ECとの間に第三軸受73が配置されている。内燃機関連結軸ECは、この第三軸受73により、ケース3に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第三軸受73としてニードルベアリングを用いている。筒状突出部11の内周面と内燃機関連結軸ECとの間の空間は、内燃機関IE側で、オイルシール68により円環状の蓋をされ、油密状態にされている。
【0073】
本実施形態では、筒状突出部11には、複数の油路が形成されている。具体的には、図3及び図4に示されているように、筒状突出部11には、第一油圧制御弁104により調圧された油を第一油室102に送る第二油路L2、及び第一油室102から排出された油を油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送る第三油路L3が形成されている。また、図示はされていないが、筒状突出部11には、第一サーボ油圧制御弁109により調圧された油を第一サーボ油室108に送ると共に、第一サーボ油室108から排出された油を第一サーボ油圧制御弁109に送る第一油路が形成されている。
【0074】
中間隔壁6は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略平坦な円板状の壁部とされている。また、本実施形態では、中間隔壁6は、周壁4とは別部材として構成されており、ボルト等の締結部材により周壁4の内周面に形成された段差部に締結固定されている。そして、中間隔壁6に油圧ポンプOPが設けられている。ここでは、中間隔壁6のトルクコンバータTC側の面に油圧ポンプカバー7が取り付けられている。そして、中間隔壁6と油圧ポンプカバー7との間に、油圧ポンプロータを収容する油圧ポンプ室が形成されている。これらの油圧ポンプロータ及び油圧ポンプ室により油圧ポンプOPが構成されている。油圧ポンプカバー7は、中間隔壁6に対してトルクコンバータTC側から当接した状態で、ボルト等の締結部材により中間隔壁6に締結固定されている。中間隔壁6及び油圧ポンプカバー7の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。また、この貫通孔には、油圧ポンプ駆動軸47及びステータ支持軸58も挿通されている。油圧ポンプ駆動軸47は、トルクコンバータTCのカバー部42と一体回転する円筒状の軸部であって、中間軸Mの径方向外側に配置され、油圧ポンプロータに駆動連結されている。ステータ支持軸58は、中間隔壁6に固定されてトルクコンバータTCのステータ56を支持する円筒状の軸部であって、径方向における中間軸Mと油圧ポンプ駆動軸47との間に配置されている。また、中間隔壁6及び油圧ポンプカバー7には、油圧ポンプOPの第一吸入油路L8及び第一吐出油路L9が形成されている。また、図3に一部が示されているように、ケース3の周壁4、端部支持壁5及び中間隔壁6や各軸の内部には、このような油の供給のための油路が設けられている。
【0075】
油圧ポンプOPの油圧ポンプロータは、スプライン係合等により油圧ポンプ駆動軸47に駆動連結されている。よって、油圧ポンプロータは、トルクコンバータTCのポンプインペラ41及び回転電機MGのロータRoと一体回転するように構成されている。本実施形態においては、油圧ポンプOPは、油圧ポンプロータとしてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。また、油圧ポンプOPは、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び変速装置TMと同軸上に配置されており、インナロータがその径方向中心部でトルクコンバータTCのポンプインペラ41と一体回転するように連結されている。従って、ポンプインペラ41の回転に伴い、油圧ポンプOPは油を吐出して油圧を生じさせ、油圧制御装置に供給する。
【0076】
油圧ポンプOPは、図2に示すように、油貯留部OTからストレーナ(不図示)及び第一吸入油路L8を介して油を吸引し、第一吐出油路L9に吐出する。油圧ポンプOPから吐出された油は、第一吐出油路L9を介して第一ライン圧制御弁130へ送られる。そして、第一ライン圧制御弁130は、油圧ポンプOPの出力圧を第一ライン圧131として調圧する。よって、油圧ポンプOPの吐出口と連通している第一吐出油路L9などの各油路の油圧は、第一ライン圧制御弁130により第一ライン圧131として調圧される。そして、図2で示す油圧制御系では、第一ライン圧131の油が、第一油圧制御弁104及び第一サーボ油圧制御弁109に供給される。
【0077】
3−2.回転電機
図3に示すように、回転電機MGは、トルクコンバータTCよりも内燃機関IE側(図3における左側)に配置されている。本実施形態では、回転電機MGは、軸方向における端部支持壁5とトルクコンバータTCとの間に配置されている。また、回転電機MGは、内燃機関連結軸EC及び第一係合装置C1に対して径方向外側に配置されている。回転電機MGのステータStは、ケース3に固定されている。ロータRoは、回転可能な状態でケース3に支持されている。また、ロータRoは、ロータ支持部材22を介してトルクコンバータTCのポンプインペラ41及びカバー部42と一体回転するように連結されている。ロータ支持部材22は、少なくとも径方向に延びてロータRoを支持するように設けられた部材である。本実施形態では、ロータ支持部材22の径方向内側端部に円筒状のボス部22aが設けられており、当該ボス部22aの内周面とケース3の筒状突出部11との間に第一軸受71が配置されている。ロータRo及びロータ支持部材22は、この第一軸受71により、ケース3に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第一軸受71としてボールベアリングを用いている。また、軸方向におけるロータ支持部材22と端部支持壁5との間であって、ボス部22aの径方向外側に、回転センサ13が配置されている。この回転センサ13は、回転電機MGのロータRoの回転位置を検出するセンサであり、レゾルバ等を好適に用いることができる。ここでは、端部支持壁5に回転センサ13のセンサステータ13aが固定され、ロータ支持部材22のボス部22aに回転センサ13のセンサロータ13bが固定されている(図4参照)。
【0078】
3−3.第一係合装置
図3に示すように、第一係合装置C1は、回転電機MGの径方向内側であって、回転電機MGの径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。また、第一係合装置C1は、ロータ支持部材22に対して軸方向でトルクコンバータTC側に配置されている。第一係合装置C1は、内燃機関連結軸ECと回転電機MG及びトルクコンバータTCのポンプインペラ41とを選択的に駆動連結するための係合装置である。本実施形態では、第一係合装置C1は、摩擦係合装置とされている。第一係合装置C1の入力側部材である第一クラッチハブ31は、内燃機関連結軸ECと一体的に設けられている。具体的には、第一クラッチハブ31は、内燃機関連結軸ECと一体的に形成され、当該内燃機関連結軸ECの変速装置TM側端部から径方向外側に延びる円板状部材とされている。また、第一係合装置C1の出力側部材である第一係合装置ドラム32は、トルクコンバータTCのカバー部42及び回転電機MGのロータ支持部材22と一体的に回転するように連結されている。具体的には、第一係合装置ドラム32は、ロータ支持部材22のボス部22aの内周面に接合されているとともに、トルクコンバータTCのカバー部42における径方向中間部分に形成された段差部43bの外周面に接合されている。第一係合装置ドラム32は、第一係合装置C1のハウジング及びシリンダを兼ねており、内側に第一クラッチハブ31、第一ピストン106、及び第一摩擦部材101等を収容している。そして、第一係合装置ドラム32は、内部のオイルが外に漏れないように他の部材との接合部が密閉され、内部を油密状態としている。
【0079】
図4に示すように、第一係合装置C1の第一油圧サーボ機構100に設けられている第一サーボ油室108は、第一シリンダ105として機能する第一係合装置ドラム32と、第一ピストン106とにより囲まれて構成されている。第一サーボ油室108は、シール材により油密状に形成されている。また、第一係合装置C1の第一油室102は、当該第一係合装置C1の第一摩擦部材101等を収容し、油密状に形成されている。そして、第一油室102は、第一油圧サーボ機構100の背圧を生成する。
【0080】
本実施形態では、第一ピストン106の内燃機関IE側の端面が、第一サーボ油室108のピストン内側面(内面)となっている。また、第一ピストン106の変速装置TM側の端面が、第一油室102の内面であって第一サーボ油室108のピストン外側面(背面)となっている。このため、第一油室102内の油圧が、第一ピストン106の背圧となり、第一油室102内の油圧と第一シリンダ105の断面積とを乗じた力で、第一ピストン106を内燃機関IE側、すなわち第一係合装置C1の係合解放側に押圧する。また、第一シリンダ105と第一ピストン106となる第一係合装置ドラム32との間に、第一付勢機構107が備えられており、第一付勢機構107は、第一ピストン106を変速装置TM側、すなわち第一係合装置C1の係合側に押圧する。本実施形態では、第一付勢機構107は皿ばねである。なお、第一付勢機構107は、皿ばね以外のばね、例えばコイルばねであってもよい。また、第一サーボ油室108内の油圧は、当該第一サーボ油室108内の油圧と第一シリンダ105の断面積とを乗じた力で、第一ピストン106を変速装置TM側、すなわち第一係合装置C1の係合側に押圧する。よって、第一サーボ油室108内の油圧及び第一付勢機構107による第一ピストン106の押圧力と、第一油室102内の油圧による第一ピストン106の押圧力とのバランスにより、第一係合装置C1が係合又は解放される。
【0081】
第一油室102は、上記したように、第一油室102の第一供給口122に供給された油が、第一油室102内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第一油室102の第一排出口123から排出されるように構成されている。本実施形態では、第一油室102の第一供給口122は、第一クラッチハブ31と第一係合装置ドラム32の径方向内側端部との隙間により形成されている。第一油圧制御弁104で調圧された油は、ケース3の周壁4、端部支持壁5、及び筒状突出部11の壁面内に設けられた第二油路L2を送られて、第一供給口122から第一油室102に供給される。第一供給口122に供給された油は、第一ピストン106と第一クラッチハブ31との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向外側に流れる。そして、径方向外側に向かって流れた油は、複数の第一摩擦部材101に沿って形成された隙間(循環路)を流れる。この際、第一摩擦部材101が冷却される。その後、第一摩擦部材101に沿って流れた油は、第一クラッチハブ31とトルクコンバータTCの第一カバー部材43との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向内側に向かって流れる。そして、第一油室102の第一排出口123から油が排出される。第一排出口123は、第一クラッチハブ31と第一カバー部材43との間に形成された空間における径方向内側の部分である。そして、第一クラッチハブ31と第一カバー部材43との間に形成された空間において間隔が狭くなっている(絞られている)隙間が、第一絞り部120であり、オリフィスとして働く。第一油室102は、排出側で絞られているので、第一油室102内の油圧は、上記したように、均一化される。
【0082】
第一油室102の第一排出口123から排出された油は、内燃機関連結軸ECと第一カバー部材43との間の油密空間、内燃機関連結軸EC内に設けられた第五油路L5、内燃機関連結軸ECとケース3の筒状突出部11との間の油密状の隙間、ケース3の筒状突出部11及び端部支持壁5に設けられた第三油路L3、管状部材96c、及び周壁4に設けられた第十一油路L11を順に流れて、第一油室102から油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる(図3参照)。
【0083】
第一サーボ油圧制御弁109で調圧された油は、ケース3の周壁4、端部支持壁5、及び筒状突出部11の壁面内に設けられた不図示の供給油路を送られて、第一給排口124から第一サーボ油室108に供給される(図2参照)。
【0084】
3−4.トルクコンバータ
図3に示すように、トルクコンバータTCは、軸方向における回転電機MGと変速装置TMとの間に配置されている。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ41、タービンランナ51、ステータ56、及びこれらを収容するカバー部42を備えている。また、本実施形態では、カバー部42内に、第二係合装置C2及びダンパ54も収容されている。カバー部42は、ポンプインペラ41と一体回転するように構成されている。ここでは、ポンプインペラ41は、カバー部42の内側に一体的に設けられている。
【0085】
本実施形態では、カバー部42は、回転電機MG側の第一カバー部材43と、変速装置TM側の第二カバー部材44とを接合して構成されている。第一カバー部材43は、トルクコンバータTCの回転電機MG側を覆うように形成された円筒状部材であり、本例では径方向中間部分に段差部43bが形成された段付円筒状部材とされている。この段差部43bの外周面には第一係合装置ドラム32の内周面が接合されており、これによりカバー部42が第一係合装置C1の第一係合装置ドラム32と一体的に回転するように連結されている。また、段差部43bの径方向内側には第二係合装置C2が収容されている。第二カバー部材44は、トルクコンバータTCの変速装置TM側を覆うように形成されたカバー部材であり、本例では、径方向中間部分が変速装置TM側に向かって膨出した円弧状の断面形状を有する環状部材とされている。第二カバー部材44の径方向内側の端部には、軸方向に変速装置TM側へ延びる油圧ポンプ駆動軸47が一体的に設けられている。油圧ポンプ駆動軸47は、トルクコンバータTCのカバー部42と一体回転する円筒状の軸部であって、中間軸Mと同軸に中間軸Mの径方向外側に配置されている。油圧ポンプ駆動軸47の外周面と油圧ポンプカバー7の貫通孔の内周面との間に第二軸受72が配置されている。油圧ポンプ駆動軸47及びトルクコンバータTCのカバー部42は、この第二軸受72により、ケース3に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第二軸受72としてニードルベアリングを用いている。油圧ポンプ駆動軸47の変速装置TM側の端部は、油圧ポンプOPの油圧ポンプロータと一体回転するように連結されている。油圧ポンプ駆動軸47と油圧ポンプロータとの連結は、ここではスプライン係合により行われている。
【0086】
第一カバー部材43と第二カバー部材44とは、溶接等により一体的に接合されている。また、駆動装置1全体として見れば、トルクコンバータTCのカバー部42、ロータ支持部材22、及び第一係合装置C1の第一係合装置ドラム32は、一体的に回転し、入力軸Iを構成する。この入力軸Iは、内燃機関連結軸EC側において第一軸受71を介してケース3に回転可能に支持され、変速装置TM側において第二軸受72を介してケース3に回転可能に支持されている。また、入力軸Iは、回転電機MGのロータRo、及びポンプインペラ41と一体回転するように接合されている。
【0087】
トルクコンバータTCのタービンランナ51は、カバー部42の内部におけるポンプインペラ41の回転電機MG側に、ポンプインペラ41と対向して配置されている。このタービンランナ51は、入力軸Iと一体回転するように連結されており、ここでは、タービンランナ51の径方向内側端部が、中間軸Mとスプライン係合されている。トルクコンバータTCのステータ56は、軸方向におけるポンプインペラ41とタービンランナ51との間に配置されている。このステータ56は、ワンウェイクラッチ57を介してステータ支持軸58に支持されている。上記のように、ステータ支持軸58は、円筒状の軸部であって変速装置TM側において中間隔壁6に固定されている。このトルクコンバータTCは、カバー部42の内部に充填された油を介して、駆動側のポンプインペラ41と従動側のタービンランナ51との間のトルクの伝達を行うことが可能となっている。
【0088】
ダンパ54は、軸方向における第二係合装置C2とタービンランナ51との間に配置されている。このダンパ54は、第二係合装置C2の係合状態で、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間で伝達される駆動力の振動を吸収するために設けられている。本実施形態では、ダンパ54は、周方向に相対移動可能に構成された入力側部材54a及び出力側部材54bと、これら入力側部材54aと出力側部材54bとの間に設けられた振動吸収用のばね54c等を有している。そして、ダンパ54の入力側部材54aは第二係合装置C2の第二係合装置ドラム62と一体回転するように連結されている。また、ダンパ54の出力側部材54bはタービンランナ51及び中間軸Mと一体回転するように連結されている。
【0089】
3−5.第二係合装置
図4に示すように、第二係合装置C2は、カバー部42の段差部43bの径方向内側であって、タービンランナ51に対して軸方向で回転電機MG側に配置されている。第二係合装置C2は、ポンプインペラ41とタービンランナ51とを係合することにより、オイルを介した駆動力の伝達を止めてこれらを直結状態(ロックアップ状態)とするための係合装置である。本実施形態では、第二係合装置C2は、摩擦係合装置とされている。第二係合装置C2の入力側部材である第二クラッチハブ61は、カバー部42と一体回転するように設けられている。具体的には、第二クラッチハブ61は、径方向内側においてカバー部42の第一カバー部材43が有する支持円筒状部43aにスプライン係合して連結されている。また、第二係合装置C2の出力側部材である第二係合装置ドラム62は、ダンパ54を介してタービンランナ51及び中間軸Mに駆動連結されている。具体的には、第二係合装置ドラム62は、ダンパ54の入力側部材54aと一体的に形成されている。なお、第二係合装置C2の第二ピストン116及び第二摩擦部材111等も、段差部43bの径方向内側の空間に収容されている。また、本実施形態では、第二係合装置C2は、第一カバー部材43を挟んで第一係合装置C1と軸方向に隣接して配置されている。
【0090】
第一カバー部材43は、第二係合装置C2のハウジング及びシリンダを兼ねており、内側に第二クラッチハブ61、第二ピストン116、及び第二摩擦部材111等を収容している。
図4に示すように、第二係合装置C2の第二油圧サーボ機構110に設けられている第二サーボ油室118は、第二シリンダ115として機能する第一カバー部材43と、第二ピストン116とにより囲まれて構成されている。第二サーボ油室118は、シール材により油密状に形成されている。また、第二係合装置C2の第二油室112は、当該第二係合装置C2の第二摩擦部材111等を収容し、油密状に形成されている。そして、第二油室112は、第二油圧サーボ機構110の背圧を生成する。
【0091】
本実施形態では、第二ピストン116の内燃機関IE側の端面が、第二サーボ油室118のピストン内側面となっている。また、第二ピストン116の変速装置TM側の端面が、第二油室112の内面であって第二サーボ油室118のピストン外側面となっている。このため、第二油室112内の油圧が、第二ピストン116の背圧となり、第二油室112内の油圧と第二シリンダ115の断面積とを乗じた力で、第二ピストン116を内燃機関IE側、すなわち第二係合装置C2の係合解放側に押圧する。また、第二シリンダ115と第二クラッチハブ61との間に、第二付勢機構117が備えられており、第二付勢機構117は、第二ピストン116を内燃機関IE側、すなわち第二係合装置C2の係合解放側に押圧する。本実施形態では、第二付勢機構117はコイルばねである。なお、第二付勢機構117は、コイルばね以外のばね、例えば皿ばねであってもよい。また、第二サーボ油室118内の油圧は、当該第二サーボ油室118内の油圧と第二シリンダ115の断面積とを乗じた力で、第二ピストン116を変速装置TM側、すなわち第二係合装置C2の係合側に押圧する。よって、第二サーボ油室118内の油圧による第二ピストン116の押圧力と、第二油室112内の油圧及び第二付勢機構117による第二ピストン116の押圧力とのバランスにより、第二係合装置C2が係合又は解放される。
【0092】
第二油室112は、上記したように、第二油室112の第二供給口127に供給された油が、第二油室112内の所定経路(循環路)を流れ(循環し)、第二油室112の第二排出口128から排出されるように構成されている。本実施形態では、第二油室112の第二供給口127は、第一カバー部材43の径方向内側部に設けられた支持円筒状部43a内に形成されている。
ここで、支持円筒状部43aは、軸心Xに対して同軸状に配置され、軸方向に変速装置TM側に延在するように形成された円筒状部である。支持円筒状部43aの外周面は、第二シリンダ115の径方向内側側面を構成すると共に、第二クラッチハブ61をスプライン連結している。支持円筒状部43aの内周面には、中間軸Mが配置され、中間軸Mの内燃機関IE側端部を回転可能に支持している。
【0093】
第二油圧制御弁114で調圧された油は、中間軸M内に設けられた第六油路L6を送られて、第二供給口127から第二油室112に供給される。第二供給口127に供給された油は、第二ピストン116と第二クラッチハブ61との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向外側に流れる。そして、径方向外側に向かって流れた油は、複数の第二摩擦部材111に沿って形成された隙間(循環路)を流れる。この際、第二摩擦部材111が冷却される。その後、第二摩擦部材111に沿って流れた油は、第一カバー部材43と第二係合装置ドラム62との間に形成された径方向に広がる空間(循環路)を、径方向外側に向かって流れる。そして、ポンプインペラ41及びタービンランナ51が配置されたカバー部42内を循環した後、第二油室112の第二排出口128(図3参照)から排出される。第二油室112の第二排出口128から排出された油は、中間軸Mの周辺に設けられた油路を流れて油貯留部OT又は油圧ポンプOPの吸入口に送られる。
【0094】
第二サーボ油圧制御弁119で調圧された油は、中間軸M内に設けられた第七油路L7を送られて、第二給排口129から第二サーボ油室118に供給される。
【0095】
3−6.変速装置
図3では省略しているが、中間隔壁6の出力軸O側、すなわち中間隔壁6を挟んでトルクコンバータTCとは反対側(図3における右側)に、変速装置TMが配置されている。本実施形態では、変速装置TMは、変速比の異なる複数の変速段を有する有段の自動変速装置である。
【0096】
4.その他の実施形態
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0097】
(1)上記の実施形態では、油圧ポンプOPが、機械式ポンプにより構成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、油圧ポンプOPは、機械式ポンプ及び電動式ポンプの一方又は双方から構成されてもよい。
【0098】
(2)上記の実施形態では、駆動装置1に、トルクコンバータTCとして、ポンプインペラ41と、タービンランナ51と、ポンプインペラ41とタービンランナ51とを直結する第二係合装置C2と、が備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、駆動装置1に、トルクコンバータTCが備えられず、トルクコンバータTCの代わりに、入力軸Iと中間軸Mとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置などが、第二係合装置C2として備えられるようにしてもよい。この場合にも第二係合装置C2は、第二油圧サーボ機構110の背圧を生成すると共に第二係合装置C2の第二摩擦部材111を収容する第二油室112を備える。そして、上記の実施形態と同様に、第二油室油圧113を第一油室油圧103とは独立して制御する第二油圧制御弁114を備える。
【0099】
(3)上記の実施形態では、第二係合装置C2の第二油圧サーボ機構110として、第二シリンダ115として機能する第一カバー部材43と第二ピストン116とにより囲まれて油密状に構成された第二サーボ油室118が備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二サーボ油室118が油密状に備えられず、第二油室112と連通して一体的に構成されてもよい。この場合、第二ピストン116の第二サーボ油室118側又は第二サーボ油室118と反対側へ供給される油圧が制御されることにより、第二ピストン116が第二摩擦部材111を押圧する押圧力が制御され、第二係合装置C2の係合状態が制御される。すなわち、この場合は、第二油室112は、第二油室112と連通して備えられる第二サーボ油室118を一体的に含み、第二係合装置C2の係合状態は、第二サーボ油室118側の第二油室112に供給する油圧、又は第二サーボ油室118以外の第二油室112に供給する油圧により制御される。
【0100】
(4)上記の実施形態では、第一油圧制御弁104は、第一ライン圧制御弁130により制御された第一ライン圧131の油の供給を受けて第一油室油圧103の油を第一油室102に供給し、第二油圧制御弁114は、第二ライン圧制御弁140により制御された第二ライン圧141の油の供給を受けて第二油室油圧113の油を第二油室112に供給する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第一油圧制御弁104は、第二ライン圧141の油の供給を受けて第一油室油圧103の油を第一油室102に供給するように構成されてもよい。この場合において、第二油圧制御弁114は、第二ライン圧141又は第一ライン圧131の油の供給を受けて第二油室油圧113の油を第二油室112に供給するように構成されてもよい。また、第一油圧制御弁104は、第一ライン圧131の油の供給を受けて、第一油室油圧103の油を第一油室102に供給するように構成されている場合は、第二油圧制御弁114は、第一ライン圧131の油の供給を受けて第二油室油圧113の油を第二油室112に供給するように構成されてもよい。
【0101】
(5)上記の実施形態においては、変速装置TMが有段の自動変速装置である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速装置TMが、連続的に変速比を変更可能な無段の自動変速装置である場合など、有段の自動変速装置以外の変速装置である場合も本発明の好適な実施形態の一つである。
【0102】
(6)上記の実施形態においては、駆動装置1は、第一油室102から排出される油の排出油路に、流量を絞る絞り部としての第一絞り部120を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、駆動装置1は、第一油室102から排出される油の排出油路に、流量を絞る絞り部を備えないように構成されてもよく、あるいは、当該排出油路以外の箇所、例えば、第一油室102内、又は、第一油室102の供給油路に、流量を絞る絞り部が備えられるように構成されてもよい。
【0103】
(7)上記の実施形態においては、第一係合装置C1が、第一摩擦部材101を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重で第一ピストン106を付勢する第一付勢機構107を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一係合装置C1が、第一摩擦部材101を解放側に押圧するように所定の初期係合荷重で第一ピストン106を付勢する第一付勢機構107を備えるようにしてもよい。
【0104】
(8)上記の実施形態においては、第一油圧制御弁104は、初期係合荷重より大きい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する背圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一油圧制御弁104は、初期係合荷重より小さい荷重で第一ピストン106を係合解除側に押圧する背圧を第一油室102に発生させるように、第一油室油圧103を制御するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路上に設けられた流体継手と、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
MG:回転電機
IE:内燃機関
TC:トルクコンバータ(流体継手)
TM:変速装置TM
C1:第一係合装置
C2:第二係合装置
I:入力軸(入力部材)
M:中間軸
O:出力軸(出力部材)
W:車輪
1:駆動装置(車両用駆動装置)
41:ポンプインペラ(継手入力側部材)
51:タービンランナ(継手出力側部材)
100:第一油圧サーボ機構
101:第一摩擦部材
102:第一油室
103:第一油室油圧
104:第一油圧制御弁
105:第一シリンダ
106:第一ピストン
107:第一付勢機構(付勢機構)
108:第一サーボ油室
109:第一サーボ油圧制御弁
110:第二油圧サーボ機構
111:第二摩擦部材
112:第二油室
113:第二油室油圧
114:第二油圧制御弁
115:第二シリンダ
116:第二ピストン
117:第二付勢機構
118:第二サーボ油室
119:第二サーボ油圧制御弁
120:第一絞り部(絞り部)
121:第一サーボ油圧
122:第一供給口
123:第一排出口
124:第一給排口
125:第二絞り部
126:第二サーボ油圧
127:第二供給口
128:第二排出口
129:第二給排口
130:第一ライン圧制御弁
131:第一ライン圧
135:基準圧制御弁
136:基準圧
137:本体部収容室(第二油室)
140:第二ライン圧制御弁
141:第二ライン圧
EX:排出(ドレイン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材を内燃機関に選択的に駆動連結する第一係合装置と、前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路上に設けられた流体継手と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第一係合装置は、第一摩擦部材と、当該第一摩擦部材を押圧する第一ピストンと、前記第一摩擦部材が収容されるとともに、油圧が供給されて前記第一ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に油圧を作用させるように形成された第一油室と、を備え、
前記流体継手は、当該流体継手の本体部を収容する本体部収容室に、前記入力部材側に駆動連結される継手入力側部材と前記出力部材側に駆動連結される継手出力側部材とを直結する第二係合装置の係合状態を油圧により制御するための第二油室を備え、
前記第一油室に供給する油圧である第一油室油圧を制御する第一油圧制御弁と、前記第二油室に供給する油圧である第二油室油圧を前記第一油室油圧とは独立して制御する第二油圧制御弁と、を備える車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第一油圧制御弁から前記第一油室へ供給された油圧を、当該第一油室から排出するための排出油路に、流量を絞る絞り部を備える請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第一係合装置は、前記第一ピストンが前記第一摩擦部材を係合側に押圧するように所定の初期係合荷重で前記第一ピストンを付勢する付勢機構と、を備え、
前記第一油圧制御弁は、前記初期係合荷重より大きい荷重で前記第一ピストンを係合解除側に押圧する油圧を前記第一油室に発生させるように、前記第一油室油圧を制御する請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
油圧ポンプの出力圧を第一ライン圧として制御する第一ライン圧制御弁と、前記第一ライン圧を更に減圧し、第二ライン圧として制御する第二ライン圧制御弁と、を備え、
前記第一油圧制御弁は、前記第一ライン圧制御弁により制御された前記第一ライン圧の油の供給を受けて前記第一油室油圧の油を前記第一油室に供給し、
前記第二油圧制御弁は、前記第二ライン圧制御弁により制御された前記第二ライン圧の油の供給を受けて前記第二油室油圧の油を前記第二油室に供給する請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記流体継手は、第二摩擦部材と、当該第二摩擦部材を押圧する第二ピストンとを備え、
前記第二油室は、前記第二係合装置の第二摩擦部材及び前記流体継手の前記継手入力側部材及び前記継手出力側部材が収容されるとともに、油圧が供給されて前記第二ピストンにおける作動用の油圧が作用する側とは反対側に油圧を作用させるように形成される請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171372(P2012−171372A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31995(P2011−31995)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】