説明

車両用駆動装置

【課題】装置の大型化やコストの増加を抑制しつつ車輪をロックする車輪ロック機構を設けることが可能な車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】係合装置21は、駆動ギヤ側係合部41と回転電機側係合部51と状態切替部材31とを備えた噛み合い式の係合装置であり、状態切替部材31は、駆動ギヤ側係合部41と回転電機側係合部51とが連結しない状態を実現するための第一位置P1と、駆動ギヤ側係合部41と回転電機側係合部51とが連結した状態を実現するための第二位置P2と、駆動ギヤ側係合部41の回転が規制される状態を実現するための第三位置P3と、を選択可能に構成され、状態切替部材31は、第三位置P3にある状態で、駆動ギヤ側係合部41及びケース3に設けられたケース側係合部60の双方に対して係合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に駆動連結される駆動ギヤと、係合装置と、当該係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される回転電機と、ケースと、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の従来技術として、例えば特開平6−153325号公報(特許文献1)に記載された技術がある。この特許文献1には、複数の回転電機を備えるとともに、回転電機と駆動ギヤ(特許文献1の例では減速機16内のギヤ)との間の動力伝達経路に係合装置を備えた構成が記載されている。そして、駆動力を発生していない回転電機の連れ回りを回避すべく、係合装置を利用して当該回転電機を駆動ギヤから切り離す構成が記載されている。
【0003】
ところで、車両には、一般的に、パーキングロック機構のような車輪をロックする車輪ロック機構が備えられる。しかし、特許文献1には、このような車輪ロック機構について言及した記載はなく、当然ながら、装置の大型化やコストの増加を抑制しつつ車輪ロック機構を設けるための技術について一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−153325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、装置の大型化やコストの増加を抑制しつつ車輪をロックする車輪ロック機構を設けることが可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、車輪に駆動連結される駆動ギヤと、係合装置と、当該係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される回転電機と、ケースと、を備えた車両用駆動装置の特徴構成は、前記係合装置は、前記駆動ギヤに駆動連結された駆動ギヤ側係合部と、前記回転電機に駆動連結された回転電機側係合部と、前記駆動ギヤ側係合部及び前記回転電機側係合部に対して選択的に係合することで当該係合装置の状態を切り替える状態切替部材と、を備えた噛み合い式の係合装置であり、前記状態切替部材は、前記駆動ギヤ側係合部と前記回転電機側係合部とが連結しない状態を実現するための第一位置と、前記駆動ギヤ側係合部と前記回転電機側係合部とが連結した状態を実現するための第二位置と、前記駆動ギヤ側係合部の回転が規制される状態を実現するための第三位置と、を選択可能に構成され、前記状態切替部材は、前記第三位置にある状態で、前記駆動ギヤ側係合部及び前記ケースに設けられたケース側係合部の双方に対して係合するように構成されている点にある。
【0007】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0008】
上記の特徴構成によれば、状態切替部材の位置を第三位置とすることで、駆動ギヤ側係合部を非回転部材であるケースに固定することができ、当該駆動ギヤ側係合部に駆動ギヤを介して駆動連結された車輪をロックすることが可能となる。この際の車輪をロックするための車輪ロック機構は、係合装置が備える状態切替部材や駆動ギヤ側係合部を利用して実現されるため、係合装置とは別に車輪ロック機構を設ける場合に比べて、部品の共通化により装置の大型化やコストの増加を抑制することができる。このように、上記の特徴構成によれば、装置の大型化やコストの増加を抑制しつつ車輪ロック機構を設けることが可能となる。
【0009】
ここで、前記回転電機が第一回転電機であり、前記係合装置が第一係合装置であり、
第二係合装置と、当該第二係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を更に備え、前記エアコンディショナ用のコンプレッサが、前記第二回転電機に駆動連結されていると好適である。
【0010】
この構成によれば、エアコンディショナ用のコンプレッサを駆動するための回転電機を、車輪ロック機構が備えられる係合装置である第一係合装置とは別の第二係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結された第二回転電機とすることができる。これにより、状態切替部材が車輪をロックすべく第三位置にある状態で、回転電機側係合部が当該状態切替部材に対して係合する構成とすることも係合しない構成とすることもできる。よって、第一係合装置の設計の自由度が高まり、本発明に係る車両用駆動装置を広範囲に適用することが可能となる。
【0011】
また、前記状態切替部材は、前記駆動ギヤの軸方向に沿って移動可能に構成され、前記軸方向の一方側から他方側に向かって、前記回転電機側係合部、前記駆動ギヤ側係合部、前記ケース側係合部の順に配置され、前記第三位置にある状態の前記状態切替部材と前記回転電機側係合部とが、前記駆動ギヤの径方向視で重複する部分を有するように構成されていると好適である。
【0012】
本願において、2つの部材の配置に関して、「所定方向視で重複する部分を有する」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0013】
この構成によれば、状態切替部材と回転電機側係合部とが重複する分だけ、これらが占有する空間の軸方向Lの長さを短縮することができるため、装置の軸方向の長さを短く抑えることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る第一状態切替部材が第三位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第一状態切替部材が第一位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第一状態切替部材が第二位置にある状態での車両用駆動装置の一部断面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図6】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図7】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図8】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【図9】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、「周方向」は、駆動ギヤ10の軸心(回転軸心)を基準として定義している。そして、「軸第一方向L1」は、軸方向Lに沿って駆動ギヤ10から第一回転電機11側へ向かう方向(図1及び図2における左方向)を表し、「軸第二方向L2」は、軸第一方向L1とは反対方向(図1及び図2における右方向)を表す。なお、各部材についての方向は、当該部材が車両用駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態も含む概念として用いている。
【0016】
1.車両用駆動装置の全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、駆動ギヤ10と、第一回転電機11と、第二回転電機12と、第一係合装置21と、第二係合装置22と、ケース3と、を備えている。第一回転電機11は、第一係合装置21を介するとともに第二係合装置22を介することなく駆動ギヤ10に駆動連結されており、第二回転電機12は、第二係合装置22を介するとともに第一係合装置21を介することなく駆動ギヤ10に駆動連結されている。そして、駆動ギヤ10は、車輪7に駆動連結されている。これにより、この車両用駆動装置1は、第一回転電機11及び第二回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪7に伝達して車両を走行させる。なお、このような車両用駆動装置1は、例えばハイブリッド車両や電動車両に備えられる。そして、このような車両用駆動装置1が前輪及び後輪の何れか一方側の車輪を駆動するために備えられる場合において、他方側の車輪を駆動するための別の駆動装置が備えられる構成とすることもできる。
【0017】
第一回転電機11は、ケース3に固定された第一ステータ11aと、当該第一ステータ11aに対して回転自在に配置された第一ロータ本体11bとを有している。本例では、第一ロータ本体11bは、第一ステータ11aの径方向Rの内側に配置されるとともに、当該第一ロータ本体11bから軸方向Lの両側に突出するように配置された第一回転軸71と一体回転するように、当該第一回転軸71に固定されている。第二回転電機12は、第一回転電機11と同様に構成されており、第一ステータ11aに対応する第二ステータ12aと、第一ロータ本体11bに対応する第二ロータ本体12bとを備え、第二ロータ本体12bは、第一回転軸71に対応する第二回転軸72に固定されている。
【0018】
そして、車両用駆動装置1はエアコンディショナ用のコンプレッサ9(補機の一例)を備え、このコンプレッサ9は、本実施形態では、第二回転電機12に駆動連結されている。具体的には、図1に示すように、コンプレッサ9は、第三係合装置23(例えば電磁クラッチ等)を介して第二回転電機12(第二回転軸72)に駆動連結されている。また、詳しくは後述するが、車輪7がロックされた状態においても第二回転電機12によりコンプレッサ9を駆動可能とすべく、コンプレッサ9は、駆動ギヤ10並びに当該駆動ギヤ10と常時連動して回転(例えば一体回転)する回転部材を介することなく、第二回転電機12に駆動連結されている。
【0019】
図1に示す例では、第一回転電機11は第二回転電機12より寸法(具体的には軸方向Lの寸法)が大きな回転電機とされているが、第一回転電機11と第二回転電機12とが互いに等しい大きさ(寸法)の回転電機とされた構成や、第二回転電機12が第一回転電機11より寸法が大きな回転電機とされた構成とすることもできる。また、トルクを出力可能な回転速度の上限値や出力可能なトルクの最大値について、第一回転電機11と第二回転電機12とで互いに異なる構成としても、互いに等しい構成としても良い。
【0020】
本実施形態では、車両用駆動装置1は、駆動ギヤ10と車輪7との間の動力伝達経路に、カウンタギヤ機構5と出力用差動歯車装置6とを備えている。すなわち、駆動ギヤ10は、本例ではカウンタドライブギヤとされている。これにより、車両の走行時には、駆動ギヤ10の回転方向と同方向のトルク、言い換えれば、第一回転電機11や第二回転電機12の回転と同方向のトルクが、車輪7に伝達される。なお、本実施形態では、出力用差動歯車装置6は、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構により構成されている。また、本実施形態では、駆動ギヤ10、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6は、互いに平行な異なる3つの軸上に分かれて配置されており、第一回転電機11、第二回転電機12、第一係合装置21、及び第二係合装置22は、駆動ギヤ10と同軸上に配置されている。
【0021】
2.係合装置の構成
次に、本実施形態に係る第一係合装置21及び第二係合装置22の構成について説明する。図1及び図2に示すように、第一係合装置21は噛み合い式の係合装置とされている。この第一係合装置21は、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に備えられており、第一係合装置21の状態(係合の状態)を切り替えることで、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の連結の状態が切り替わる。
【0022】
具体的には、第一係合装置21は、第一駆動ギヤ側係合部41と、第一回転電機側係合部51と、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51に対して選択的に係合することで当該第一係合装置21の状態を切り替える第一状態切替部材31と、を備えている。ここで、第一回転電機側係合部51は、第一回転電機11に駆動連結された係合部であり、本実施形態では、第一回転軸71と一体回転する外歯の係合部とされている。また、第一駆動ギヤ側係合部41は、駆動ギヤ10に駆動連結された係合部であり、本実施形態では、駆動ギヤ10と一体回転する外歯の係合部とされている。本実施形態では、第一駆動ギヤ側係合部41、第一回転電機側係合部51、及び第一状態切替部材31が、それぞれ、本発明における「駆動ギヤ側係合部」、「回転電機側係合部」、及び「状態切替部材」に相当する。
【0023】
本実施形態では、図2に示すように、駆動ギヤ10の回転軸である駆動ギヤ軸13は、軸方向Lにおける第一回転軸71と第二回転軸72との間に配置されており、中軸14と外軸15とを備えて構成されている。中軸14は、軸第一方向L1側の端部にフランジ部を備えた軸部材とされ、当該フランジ部の外周部に第一駆動ギヤ側係合部41が一体的に形成されている。外軸15は、径方向Rの内側が中空の円筒状部材とされ、外周部に駆動ギヤ10が一体的に形成されている。そして、中軸14と外軸15とは、中軸14が外軸15の上記中空の部分に挿入された状態で、スプライン係合により一体回転するように連結されている。また、本実施形態では、第一回転軸71は、軸第二方向L2側の端部にフランジ部を備え、当該フランジ部の外周部に第一回転電機側係合部51が一体的に形成されている。
【0024】
第一状態切替部材31は、軸方向Lに沿って移動可能な円筒状(スリーブ状)部材とされている。そして、第一状態切替部材31は、互いに同径に形成された第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51の双方に外嵌可能な形状の本体部を備え、この本体部の内周部に第一係合部31aが形成されている。第一係合部31aは、内歯の係合部とされ、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51に対して選択的に係合する。
【0025】
第一状態切替部材31は、第一位置P1と、第二位置P2と、を選択可能に構成されているとともに、更に第三位置P3も選択可能に構成されている。ここで、第一位置P1は、第一駆動ギヤ側係合部41と第一回転電機側係合部51とが連結しない状態(以下、「第一状態」という。)を実現するための位置であり、第二位置P2は、第一駆動ギヤ側係合部41と第一回転電機側係合部51とが連結した状態(以下、「第二状態」という。)を実現するための位置である。また、第三位置P3は、第一駆動ギヤ側係合部41の回転が規制される状態(以下、「第三状態」という。)を実現するための位置である。ここで、第一位置P1、第二位置P2、及び第三位置P3のそれぞれは、軸方向Lの位置を表す。本実施形態に係る各図面(図1〜図4)、並びに、以下で参照するその他の実施形態に係る各図面(図5〜図9)では、第一位置P1、第二位置P2、及び第三位置P3のそれぞれを、後述する係合部材8の軸方向Lの位置として表している。
【0026】
第一状態切替部材31は、図3に示すように第一位置P1にある状態で、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51のいずれか一方(本例では、第一回転電機側係合部51)のみに係合することで、第一状態を実現する。この第一状態では、第一回転電機11と駆動ギヤ10とが連結しない状態(すなわち、切り離された状態)となり、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間でトルクの伝達が行われない。よって、第一状態では第一回転電機11の出力トルクは車輪7に伝達されない。
【0027】
第一状態切替部材31は、図4に示すように第二位置P2にある状態で、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51の双方に係合することで、第二状態を実現する。この第二状態では、第一回転電機11と駆動ギヤ10とが連結した状態(本例では一体回転する状態)となり、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間でトルクの伝達が行われる。よって、第二状態では第一回転電機11の出力トルクが車輪7に伝達される。第三位置P3や第三状態についての詳細は後述する。
【0028】
本例では、第一状態切替部材31の本体部の外周部には、当該第一状態切替部材31を軸方向Lに移動(スライド)させるための移動機構の係合部材8が係合されている。そして、アクチュエータにより当該係合部材8の軸方向L位置を切り替えることで、第一状態切替部材31の軸方向L位置が切り替わり、結果、第一係合装置21の係合の状態が切り替わる。
【0029】
第二係合装置22は、本実施形態では、図1及び図2に示すように、第一係合装置21と同様、噛み合い式の係合装置とされている。この第二係合装置22は、第二回転電機12と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に備えられており、第二係合装置22の状態(係合の状態)を切り替えることで、第二回転電機12と駆動ギヤ10との間の連結の状態が切り替わる。
【0030】
第二係合装置22は、第一係合装置21と同様に構成されており、第一駆動ギヤ側係合部41に対応する第二駆動ギヤ側係合部42と、第一回転電機側係合部51に対応する第二回転電機側係合部52と、第一状態切替部材31に対応する第二状態切替部材32とを備えている。図2に示すように、第二係合装置22を構成する各部は、概ね、第一係合装置21の対応する部分を、駆動ギヤ軸13を通る軸方向Lに直交する面に関して対称移動させた位置に配置されている。
【0031】
なお、第二回転電機側係合部52は、第二回転軸72に形成されており、第二回転電機12と一体回転する。また、第二駆動ギヤ側係合部42は、第一駆動ギヤ側係合部41とは異なり、駆動ギヤ軸13が備える係合部形成部材16に形成されている。この係合部形成部材16は、外軸15より大径の円筒状部材とされている。そして、係合部形成部材16の軸第一方向L1側端部の内周面(径方向Rの内側を向く面)は、外軸15の軸第二方向L2側端部の外周面(径方向Rの外側を向く面)に嵌合(外嵌)した状態で、外軸15に対して固定(本例では溶接固定)されている。そして、係合部形成部材16の軸第二方向L2側端部の外周部に、第二駆動ギヤ側係合部42が一体的に形成されている。
【0032】
第二状態切替部材32は、第二駆動ギヤ側係合部42と第二回転電機側係合部52とが連結しない状態を実現するための位置(第一位置P1に相当する位置)を選択可能に構成され、第二状態切替部材32が当該位置にある状態では、第二回転電機12の出力トルクは車輪7に伝達されない。また、第二状態切替部材32は、第二駆動ギヤ側係合部42と第二回転電機側係合部52とが連結した状態を実現するための位置(第二位置P2に相当する位置)を選択可能に構成され、第二状態切替部材32が当該位置にある状態では、第二回転電機12の出力トルクが車輪7に伝達される。なお、第二状態切替部材32の本体部の外周部にも、第一状態切替部材31と同様に、係合部材8が係合されており、第一係合装置21と第二係合装置22とは、互いに独立に係合の状態を切り替えることが可能に構成されている。
【0033】
3.ケースの構成
ケース3は、少なくとも駆動ギヤ10と第一係合装置21とを収容する。本実施形態では、図1に示すように、第二係合装置22、第一回転電機11、第二回転電機12、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6も、ケース3に収容されている。
【0034】
本実施形態では、ケース3は、図1に示すように、第一回転電機11や第二回転電機12の外周を覆うケース周壁90と、当該ケース周壁90の軸第一方向L1側の開口を覆う第一端壁91と、当該ケース周壁90の軸第二方向L2側の開口を覆う第二端壁92とを備えている。本実施形態では、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、同軸上に、第一回転電機11、第一係合装置21、駆動ギヤ10、第二係合装置22、第二回転電機12の順に配置されている。そして、ケース3は、軸方向Lにおける第一回転電機11と第二回転電機12との間に、第一支持部81と、第二支持部82と、第三支持部83とを備えている。これら第一支持部81、第二支持部82、及び第三支持部83のそれぞれは、径方向Rに加えて周方向にも延在しており、径方向Rの中央部に軸方向Lの貫通孔(後述する第一貫通孔81a、第二貫通孔82a、第三貫通孔83a)を備えている(図2参照)。
【0035】
具体的には、第一支持部81は、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と第一回転電機11との間に配置されている。本実施形態では、第一支持部81は、図1に示すように、ケース周壁90と一体的に形成された支持壁である第三支持部83に固定されており、当該第三支持部83から軸第一方向L1側に延びた後、軸方向Lにおける第一回転電機11と第一係合装置21との間を径方向Rの内側に延びる形状に形成されている。図2に示すように、第一支持部81が有する第一貫通孔81aには、第一回転軸71の第一ロータ本体11bに対して軸第二方向L2側の部分が挿通されており、第一貫通孔81aの内周面に、第一回転軸71を径方向Rの外側から支持する第一軸受61が配置されている。なお、図1に示すように、第一回転軸71は、第一ロータ本体11bに対して軸第一方向L1側においては、第一端壁91に配置された第四軸受64により支持されている。
【0036】
第二支持部82は、軸方向Lにおける駆動ギヤ10と第二回転電機12との間に配置されている。本実施形態では、図1に示すように、第二支持部82は、ケース周壁90と一体的に形成された支持壁とされており、ケース周壁90から径方向Rの内側に延びる形状に形成されている。図2に示すように、第二支持部82が有する第二貫通孔82aには、第二回転軸72の第二ロータ本体12bに対して軸第一方向L1側の部分が挿通されており、第二貫通孔82aの内周面に、第二回転軸72を径方向Rの外側から支持する第二軸受62が配置されている。なお、図1に示すように、第二回転軸72は、第二ロータ本体12bに対して軸第二方向L2側においては、第二端壁92に配置された第五軸受65により支持されている。
【0037】
第三支持部83は、軸方向Lにおける第一支持部81と第二支持部82との間に配置されている。本実施形態では、図1に示すように、第三支持部83は、ケース周壁90と一体的に形成された支持壁とされており、ケース周壁90から径方向Rの内側に延びる形状に形成されている。図2に示すように、第三支持部83が有する第三貫通孔83aには、駆動ギヤ軸13が挿通されており、第三貫通孔83aの内周面に、駆動ギヤ軸13を径方向Rの外側から支持する第三軸受63が配置されている。この第三軸受63は、駆動ギヤ10に対して軸第一方向L1側に配置され、駆動ギヤ軸13における駆動ギヤ10に対して軸第一方向L1側の部分が、第三軸受63により支持されている。すなわち、本実施形態では、駆動ギヤ軸13は、駆動ギヤ10に対して軸方向Lの片側のみにおいてケース3に対して支持されている。本実施形態では、図2に示すように、第一軸受61、第二軸受62、及び第三軸受63は、全て、玉軸受とされており、第三軸受63は、軸方向Lの長さが他の軸受に比べて大きい複列アンギュラ型の玉軸受とされている。
【0038】
ところで、上述したように、第一状態切替部材31は、第一駆動ギヤ側係合部41の回転が規制される第三状態を実現するための第三位置P3を選択可能に構成されている。このような構成を実現すべく、ケース3にはケース側係合部60が設けられているとともに、第一状態切替部材31は、ケース側係合部60と係合する第二係合部31bを備えている。そして、第一状態切替部材31は、図2に示すように第三位置P3にある状態で、第一駆動ギヤ側係合部41及びケース側係合部60の双方に対して係合することで、第三状態を実現する。第三状態では、第一駆動ギヤ側係合部41が非回転部材であるケース3に固定されるため、第一駆動ギヤ側係合部41(駆動ギヤ10)に駆動連結された車輪7の回転が規制される。すなわち、第三状態では、ケース側係合部60に係合した状態の第一状態切替部材31、及び第一駆動ギヤ側係合部41が、それぞれ、パーキングロック機構のパーキングポール及びパーキングギヤの如く機能し、車輪7がロックされた状態となる。
【0039】
本実施形態では、図2に示すように、ケース側係合部60は、ケース3が備える第三支持部83に形成されている。具体的には、第三支持部83は、第三貫通孔83aを区画する内周面を備えるとともに当該第三支持部83における径方向Rの外側部分より軸方向Lの長さが大きいボス部83bを備え、当該ボス部83bの軸第一方向L1側端部の外周部に、ケース側係合部60が一体的に形成されている。本例では、ケース側係合部60は外歯の係合部とされ、このケース側係合部60に係合する第一状態切替部材31の第二係合部31bは内歯の係合部とされている。本実施形態では、図2に示すように、第一状態切替部材31は、本体部の軸第二方向L2側に、ケース側係合部60に外嵌可能な形状の軸方向延在部を備え、当該軸方向延在部の内周部に第二係合部31bが形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、図2に示すように、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51は、ボス部83bの内周面より径方向Rの内側に配置されている。これにより、ボス部83bの外周部に形成されたケース側係合部60は、第一駆動ギヤ側係合部41及び第一回転電機側係合部51よりも大径となり、これらよりも径方向Rの外側に位置する。このような配置構成に合わせて、第一状態切替部材31は、第一係合部31aを内周部に有する本体部よりも、第二係合部31bを内周部に有する軸方向延在部が径方向Rの外側に位置するような段付円筒状に形成されている。なお、本例では、第一状態切替部材31は、内周部に加えて外周部も、軸第一方向L1側が小径で軸第二方向L2側が大径となる段付形状に形成されているが、内周部のみが段付形状に形成された構成とすることもできる。
【0041】
4.第一係合装置の配置構成
図1に示すように、第一係合装置21は、軸方向Lにおける第一回転電機11(第一ロータ本体11b)と駆動ギヤ10との間であって、且つ、第一支持部81と第三支持部83との間に配置されている。そして、本実施形態では、図2に示すように、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、ケース側係合部60の順に配置されている。上述したように、本実施形態では、第一状態切替部材31は、第一位置P1において、第一回転電機側係合部51のみに係合する。よって、本実施形態では、第一位置P1は第二位置P2に対して軸第一方向L1側の位置に設定されているとともに、第三位置P3は第二位置P2に対して軸第二方向L2側に位置に設定されている。すなわち、軸第一方向L1側から、第一位置P1、第二位置P2、第三位置P3の順となっており、第一状態を介することなく第二状態と第三状態との間での切替が可能となっている。
【0042】
図3及び図4に示すように、第一状態切替部材31は、第一位置P1や第二位置P2にある状態で、ケース側係合部60には係合しない。これにより、図3に示す第一状態においては、第一回転電機側係合部51に駆動連結された第一回転電機11と、第一駆動ギヤ側係合部41に駆動連結された駆動ギヤ10とのそれぞれを、互いに独立に回転させることができる。また、図4に示す第二状態においては、第一回転電機11と駆動ギヤ10とを連動させた状態(本例では一体回転する状態)で回転させることができる。
【0043】
一方、図2に示すように、第一状態切替部材31は、第三位置P3にある状態で、第一駆動ギヤ側係合部41及びケース側係合部60の双方に対して係合する。そして、本実施形態では、第三位置P3にある状態の第一状態切替部材31(本例では本体部)と第一回転電機側係合部51とが、径方向R視で重複する部分を有するように構成されている。言い換えれば、第一状態切替部材31は、第三位置P3にある状態で、第一回転電機側係合部51にも係合する。これにより、第一状態切替部材31と第一回転電機側係合部51とが重複する分だけ、これらが占有する空間の軸方向Lの長さを短縮することができ、結果、車両用駆動装置1の軸方向Lの長さを短く抑えることが容易となっている。なお、本実施形態では、図2に示すように、第三位置P3にある状態の第一状態切替部材31の軸第一方向L1側の一部と、第一回転電機側係合部51の軸第二方向L2側の一部とが、径方向R視で重複するように構成されている。
【0044】
なお、上記のような構成を備えるため、本実施形態では、車輪7がロックされる第三状態において第一回転電機11を回転させることはできないが、第二駆動ギヤ側係合部42と第二回転電機側係合部52とが連結しない状態を第二係合装置22に実現させることで、駆動ギヤ10から分離された第二回転電機12を自由に回転させることができる。本実施形態では、このような第二回転電機12にエアコンディショナ用のコンプレッサ9が第三係合装置23を介して駆動連結されているため、第二回転電機12とコンプレッサ9とが連結された状態を第三係合装置23に実現させる(すなわち、第三係合装置23を非係合状態ではなく係合状態にする)ことで、第三状態においても第二回転電機12の駆動力により当該コンプレッサ9を駆動することが可能となっている。
【0045】
本実施形態では、第三支持部83のボス部83bが、駆動ギヤ10に対して第一係合装置21が配置された軸第一方向L1側に配置されている。そして、駆動ギヤ軸13における第三支持部83による被支持部(第三貫通孔83aに挿通されている部分)が、軸方向Lにおける第一駆動ギヤ側係合部41と駆動ギヤ10との間に位置している。これにより、ボス部83bに形成されるケース側係合部60を、第一駆動ギヤ側係合部41に対して軸方向Lに近接して配置することが可能となり、第一係合装置21が占有する空間の軸方向Lの長さを短く抑えることが可能となっている。
【0046】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
【0047】
(1)上記の実施形態では、駆動ギヤ軸13が、軸方向Lにおける第一回転軸71と第二回転軸72との間に配置されるとともに、第三軸受63により径方向Rの外側から支持される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、駆動ギヤ軸13が、当該駆動ギヤ軸13を軸方向Lに貫通して配置された部材により径方向Rの内側から支持される構成とすることもできる。このような構成の例を図5に示す。なお、図5並びに以下で参照する図6〜図9の各図面では、第一状態切替部材31が第三位置P3にある状態を示している。
【0048】
図5に示す例では、第二回転軸72が駆動ギヤ軸13を軸方向Lに貫通して配置されており、駆動ギヤ軸13は、第二回転軸72によって径方向Rの内側から支持されている。この場合、駆動ギヤ軸13を支持する第三軸受63は、駆動ギヤ軸13と第二回転軸72との径方向Rの間に配置され、第三軸受63は、ころがり軸受ではなく滑り軸受(ブッシュ部材等)とすることもできる。
【0049】
なお、図5に示す構成では、駆動ギヤ10に対する第一係合装置21及び第二係合装置22の軸方向Lの位置関係が、図1に示す構成に対して入れ替わっており、図5における右方向が軸第一方向L1となり、図5における左方向が軸第二方向L2となっている。そして、この例では、第二回転軸72は、互いに相対回転可能な形態で第一回転軸71を貫通するように配置されているため、第二回転軸72を第二ロータ本体12bに対して軸第一方向L1側で支持する第二軸受62は、上記実施形態のように軸方向Lにおける第一回転電機11と第二回転電機12との間ではなく、第一回転電機11に対して軸第一方向L1側に配置されている。これにより、図5に示す例では、第二軸受62を配置するための第二支持部82が不要となっている。また、この例では、第一支持部81は、第三支持部83に固定されるのではなく、ケース周壁90と一体的に形成されている。
【0050】
このような構成では、第二回転軸72が比較的長軸の回転軸となるため、図6に示すように、第二回転軸72が、軸方向Lに連結された2つの軸部材(第一軸部72a及び第二軸部72b)により形成される構成とすることも可能である。図6に示す例では、第一軸部72aと第二軸部72bとの連結部は、軸方向Lにおける第二ロータ本体12bと駆動ギヤ軸13との間に位置する。この連結部を支持すべく、図6に示す構成では上記実施形態と同様、第二支持部82が備えられ、第二支持部82に配置された軸受により当該連結部が径方向Rの外側から支持されている。
【0051】
なお、図示は省略するが、第二回転軸72ではなく第一回転軸71が駆動ギヤ軸13を軸方向Lに貫通して配置され、駆動ギヤ軸13が、第一回転軸71によって径方向Rの内側から支持される構成とすることも可能である。
【0052】
(2)上記の実施形態では、駆動ギヤ10、カウンタギヤ機構5、及び出力用差動歯車装置6が、互いに平行な異なる3つの軸上に分かれて配置されるとともに、第一回転電機11、第二回転電機12、第一係合装置21、及び第二係合装置22が、駆動ギヤ10と同軸上に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図7に示すような構成とすることができる。
【0053】
図7に示す例は、上記の実施形態(図1)と同様、各部材が3つの軸上に分かれて配置されているが、図1に示す例とは異なり、第一回転電機11が出力用差動歯車装置6と同軸上に配置されている。また、駆動ギヤ10がカウンタギヤ機構5を構成するギヤであって出力用差動歯車装置6と噛み合うギヤ(カウンタ出力ギヤ)となっており、駆動ギヤ軸13がカウンタ軸として機能する。すなわち、図7に示す例では、第二回転電機12が配置される軸と、カウンタギヤ機構5が配置される軸と、第一回転電機11及び出力用差動歯車装置6が配置される軸と、の3つの軸を有する。そして、この例では、第一回転電機11と駆動ギヤ10との間の動力伝達経路に配置される第一係合装置21と、第二回転電機12と駆動ギヤ10との動力伝達経路に配置される第二係合装置22とが、カウンタギヤ機構5において一体的な一体係合装置24として構成されている。そのため、本例では、第一駆動ギヤ側係合部41が、上記の実施形態の第二駆動ギヤ側係合部42としても機能するとともに、第一状態切替部材31が、上記の実施形態の第二状態切替部材32としても機能する。
【0054】
図7に示す例では、一体係合装置24を構成する各係合部は、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、ケース側係合部60、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、第二回転電機側係合部52の順に配置されている。そのため、本例では、第一回転電機側係合部51の軸方向Lの全域が、第三位置P3にある状態の第一状態切替部材31に対して径方向R視で重複する構成となる。また、本例では、第一回転電機側係合部51と第一回転軸71とは歯車機構を介して駆動連結されているとともに、第二回転電機側係合部52と第二回転軸72とは歯車機構を介して駆動連結されている。そして、この例では、上記実施形態とは異なり、第一状態切替部材31は、第一位置P1にある状態で、第一回転電機側係合部51ではなく第一駆動ギヤ側係合部41に係合する。更に、この状態で、第一状態切替部材31は第二回転電機側係合部52にも係合し、第二回転電機12の出力トルクが車輪7に伝達される状態となる。
【0055】
このように、本例では、第一状態切替部材31が、第一位置P1にある状態で、第一回転電機側係合部51ではなく第一駆動ギヤ側係合部41に係合するが、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、及びケース側係合部60の軸方向Lにおける配列順序が上記実施形態とは異なっているため、図7に示すように、本例においても上記実施形態と同様、軸方向Lに沿って(但し本例では軸第二方向L2側から)、第一位置P1、第二位置P2、第三位置P3の順となる。図示は省略するが、図1に示す上記実施形態の構成において、各部材の軸方向L長さや軸方向Lの配置間隔を変更することで、第一状態切替部材31が第一駆動ギヤ側係合部41のみに係合することで第一状態を実現する構成とした場合には、軸第一方向L1側から、第二位置P2、第一位置P1、第三位置P3の順となる。
【0056】
(3)上記の実施形態では、車両用駆動装置1を構成する各部材が、3つの軸上に分かれて配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば図8に示す構成のように、当該各部材が2つの軸上に分かれて配置された構成とすることもできる。
【0057】
図8に示す構成では、第二回転電機12、第二係合装置22、第一回転電機11、第一係合装置21、駆動ギヤ10、及び出力用差動歯車装置6が、軸第一方向L1側から記載の順に同軸上に配置されており、カウンタギヤ機構5のみが別軸上に配置されている。この例では、上記の各実施形態とは異なり、第二係合装置22が、第二駆動ギヤ側係合部42と第二回転電機側係合部52とに加えて、エアコンディショナ用のコンプレッサ9に駆動連結されたコンプレッサ側係合部9aを備えている。これにより、上記の実施形態のように第三係合装置23を備えることなく、第二係合装置22を用いて、エアコンディショナ用のコンプレッサ9と第二回転電機12とが連結した状態と、これらが連結しない状態とを切り替えることができる。
【0058】
図8に示す構成において第一回転電機11及び第一係合装置21と、第二回転電機12及び第二係合装置22との、軸方向Lの位置を入れ替えて、図9に示すような構成とすることもできる。この図9に示す例では、上記の実施形態とは異なり、エアコンディショナ用のコンプレッサ9が、第一回転電機11に駆動連結されている。具体的には、第一係合装置21が、第一回転電機側係合部51に対して軸第一方向L1側にエアコンディショナ用のコンプレッサ9に駆動連結されたコンプレッサ側係合部9aを備えている。そして、第一状態切替部材31は、第一位置P1にある状態で、第一回転電機側係合部51に加えて当該コンプレッサ側係合部9aに係合する。これにより、第一状態において第一回転電機11によりコンプレッサ9を駆動することができる。なお、図9に示す例では、第一状態切替部材31は、第二位置P2にある状態で、コンプレッサ側係合部9aに係合しないが、第二位置P2にある第一状態切替部材31がコンプレッサ側係合部9aにも係合する構成とすることも可能である。
【0059】
なお、図9に示す例では、上記の実施形態とは異なり、第二係合装置22は、噛み合い式の係合装置ではなく、摩擦係合装置とされている。図1、図5、図6に示す例でも同様に、第二係合装置22を摩擦係合装置とすることができる。また、図1、図5、図6、図9に示す例において、第二係合装置22を、一方向にのみトルクを伝達し、逆方向には空転してトルクを伝達しない一方向係合装置(ワンウェイクラッチ)とすることも可能である。
【0060】
(4)上記の実施形態では、第三位置P3にある状態の第一状態切替部材31と第一回転電機側係合部51とが、径方向R視で重複する部分を有するような構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第三位置P3にある状態の第一状態切替部材31と第一回転電機側係合部51とが、径方向R視で重複することなく軸方向Lに分離して配置される(軸方向Lに異なる位置に配置される)構成とすることも可能である。この場合、第一状態切替部材31は、第三位置P3にある状態で、第一回転電機側係合部51には係合しないため、車輪7がロックされた状態で第一回転電機11を回転させることが可能となる。
【0061】
(5)上記の実施形態では、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、及びケース側係合部60が、全て、外歯の係合部とされ、第一状態切替部材31の第一係合部31a及び第二係合部31bの双方が、内歯の係合部とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、及びケース側係合部60の少なくとも何れかが内歯の係合部とされ、第一状態切替部材31が有する対応する係合部が外歯の係合部とされた構成とすることもできる。ケース側係合部60が内歯の係合部とされる構成では、ケース側係合部60を、例えば、第三支持部83ではなくケース3の内周面(ケース周壁90の内周面)に形成することができる。
【0062】
(6)上記の実施形態では、第一回転電機側係合部51、第一駆動ギヤ側係合部41、及びケース側係合部60が、軸方向Lに並べて配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これら3つの係合部のいずれか2つが、径方向R視で重複する部分を有するように配置された構成とすることもできる。例えば、図1に示す構成において、ケース側係合部60の位置を変更し、第一駆動ギヤ側係合部41に対して径方向Rの外側であって、径方向R視で当該第一駆動ギヤ側係合部41と重複する部分を有するようにケース側係合部60が配置された構成とすることができる。このような構成では、第一状態切替部材31は、内周部に第一係合部31aを備え
外周部に第二係合部31bを備えた構成となる。
【0063】
(7)上記の実施形態では、駆動ギヤ10の回転軸である駆動ギヤ軸13が、複数の部材(具体的には、中軸14、外軸15、及び係合部形成部材16)を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、駆動ギヤ軸13として、単一の部材により形成されたものを用いることも可能である。
【0064】
(8)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が、第一回転電機11及び第二回転電機12の2つの回転電機を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1が、第一回転電機11のみを備え、第二回転電機12や第二係合装置22を備えない構成とすることも可能である。
【0065】
(9)上記の実施形態では、車両用駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1がカウンタギヤ機構5を備えず、駆動ギヤ10が直接、出力用差動歯車装置6に駆動連結された構成、すなわち、駆動ギヤ10と出力用差動歯車装置6が備えるギヤ(差動入力ギヤ)とが直接噛み合う構成とすることもできる。
【0066】
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、車輪に駆動連結される駆動ギヤと、係合装置と、当該係合装置を介して駆動ギヤに駆動連結される回転電機と、ケースと、を備えた車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:車両用駆動装置
3:ケース
7:車輪
9:コンプレッサ
10:駆動ギヤ
11:第一回転電機(回転電機)
12:第二回転電機
21:第一係合装置(係合装置)
22:第二係合装置
31:第一状態切替部材(状態切替部材)
41:第一駆動ギヤ側係合部(駆動ギヤ側係合部)
51:第一回転電機側係合部(回転電機側係合部)
60:ケース側係合部
P1:第一位置
P2:第二位置
P3:第三位置
L:軸方向
R:径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に駆動連結される駆動ギヤと、係合装置と、当該係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される回転電機と、ケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記係合装置は、前記駆動ギヤに駆動連結された駆動ギヤ側係合部と、前記回転電機に駆動連結された回転電機側係合部と、前記駆動ギヤ側係合部及び前記回転電機側係合部に対して選択的に係合することで当該係合装置の状態を切り替える状態切替部材と、を備えた噛み合い式の係合装置であり、
前記状態切替部材は、前記駆動ギヤ側係合部と前記回転電機側係合部とが連結しない状態を実現するための第一位置と、前記駆動ギヤ側係合部と前記回転電機側係合部とが連結した状態を実現するための第二位置と、前記駆動ギヤ側係合部の回転が規制される状態を実現するための第三位置と、を選択可能に構成され、
前記状態切替部材は、前記第三位置にある状態で、前記駆動ギヤ側係合部及び前記ケースに設けられたケース側係合部の双方に対して係合するように構成されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転電機が第一回転電機であり、前記係合装置が第一係合装置であり、
第二係合装置と、当該第二係合装置を介して前記駆動ギヤに駆動連結される第二回転電機と、エアコンディショナ用のコンプレッサと、を更に備え、
前記エアコンディショナ用のコンプレッサが、前記第二回転電機に駆動連結されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記状態切替部材は、前記駆動ギヤの軸方向に沿って移動可能に構成され、
前記軸方向の一方側から他方側に向かって、前記回転電機側係合部、前記駆動ギヤ側係合部、前記ケース側係合部の順に配置され、
前記第三位置にある状態の前記状態切替部材と前記回転電機側係合部とが、前記駆動ギヤの径方向視で重複する部分を有するように構成されている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68248(P2013−68248A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206146(P2011−206146)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】