説明

車両盗難抑止装置

【課題】1回の操作でセキュリティシステムの機能を切り替えることができ、しかも誤動作を生じさせない車両盗難抑止装置を提供する。
【解決手段】車両盗難抑止装置1は、車両Vのセキュリティシステム21にオプションで付加的に装備され、操作部であるリモコン2と制御部であるオプションユニット3とを備えて構成される。そしてオプションユニット3は、リモコン2のワンプッシュ操作によって発生するコマンド信号を判別し、セキュリティシステム21にそのコマンド信号に対応した操作仕様の疑似操作信号を、車両V側で生成される操作信号のメインスイッチ入力ライン32’やブレーキスイッチ出力ライン34’に割り込み出力して、セキュリティシステム21を所望のモードに機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両などの各種車両に用いられる車両盗難抑止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難抑止を図るために、送信手段を携帯した運転者がアクセススイッチの操作ボタンを操作すると、車両の電源をオンすると共に、受信手段で受信した認証コードの認証を開始し、正規の認証コードであると判定された場合に限り、スタータボタンを押動操作すればエンジンを始動するように構成したセキュリティシステムが知られている。
【0003】
しかし、セキュリティ機能を解除してエンジンを始動させるためには、アクセススイッチの操作ボタンを押した後、車両の不用意な発進を回避するのにブレーキレバーまたはクラッチレバーを把持しつつ、スタータスイッチを押す必要があり、操作性が悪い。そこで特許文献1では、ブレーキスイッチをアクセススイッチと兼用させ、ブレーキレバーを操作してブレーキスイッチをオンにすると、車両の電源をオンすると共に、受信手段で受信した認証コードの認証を開始する車両盗難抑止装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来技術では、セキュリティ機能の設定や解除を行なう場合、ブレーキレバーを握りながらスタータスイッチをオンまたはオフしなければならず、やはり操作が大変で誤った操作により意図しない動作が行われる虞がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み、1回の操作でセキュリティシステムの機能を切り替えることができ、しかも誤動作を生じさせない車両盗難抑止装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両のセキュリティシステムにオプションで装備される車両盗難抑止装置であって、操作部と制御部とを備えて構成され、前記制御部は、前記操作部から発生するコマンド信号を判別し、前記セキュリティシステムに疑似操作信号を割り込み出力して、当該セキュリティシステムを機能させるものであり、前記疑似操作信号の割り込みにより生じる当該疑似操作信号の回り込みを防止する回り込み防止回路を備えている。
【0008】
また、請求項2に係る発明において、前記制御部は、前記操作部からのコマンド信号を判別して、前記車両に備えたスイッチの出力を擬似的にシミュレートさせた擬似操作信号を発生させ、前記セキュリティシステムに入力できる構成を有する。
【0009】
また、請求項3に係る発明において、前記制御部は、前記擬似操作信号を前記セキュリティシステムに割り込ませることによって、前記セキュリティシステムのアラーム機能と連動させる構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、オプションとなる操作部と制御部を車両のセキュリティシステムへ付加するだけで、一度の操作により操作部から制御部にコマンド信号を送出し、そのコマンド信号に対応した疑似操作信号を車両側で生成される操作信号の代わりに割り込ませて、セキュリティシステムに出力することができる。これにより操作者は、車両に備えたセキュリティシステムの機能を、1回の操作で切り替えることができると共に、複雑な操作を要しないため、セキュリティシステムの誤動作を生じさせないようにすることができる。
【0011】
また、車両に割り込ませた疑似操作信号が意図しない部位に回り込まないように、回り込み防止回路を備えていることから、割り込み出力に起因する車両の不要な動作を防いで、操作者の混乱を防止でき、効率よくしかも無駄な消費電力を発生させることなく、セキュリティシステムの必要とする機能だけを切り替えることが可能になる。
【0012】
請求項2の発明では、セキュリティシステムは制御部からの疑似操作信号を、恰も車両に備えたスイッチの出力として認識することができるので、セキュリティシステムに一切手を加えることなく、セキュリティシステムの必要とする機能だけを切り替えることが可能になる。
【0013】
請求項3の発明では、車両のセキュリティシステムによるアラーム機能と、オプションの車両盗難抑止装置による疑似操作信号を利用したアラーム機能とを連動させることができ、より効果的なアラーム機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例の一実施例における車両盗難抑止装置を含むシステム全体の概要を示す説明図である。
【図2】同上、システムの要部回路図である。
【図3】同上、オプションユニットの特徴部分を示す要部回路図である。
【図4】同上、セキュリティシステムに備えた作動モードの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明で提案する車両盗難抑止装置の好適な一実施例について説明する。
【0016】
まず、車両盗難抑止装置1を含むシステム全体の概要を図1に基づいて説明する。同図において、本実施例の車両盗難抑止装置1は、遠隔操作器としてのリモコン2と制御ユニットとしてのオプションユニット3とにより構成され、鞍乗り型の車両Vに予め搭載されるユニット群14の一つのオプションシステムとして、後付けで装備される。リモコン2は、押し釦式のスイッチ4A〜4Cを複数種備えており、これらのスイッチ4A〜4Cの何れか一つを押動操作することによって、そのスイッチ4A〜4Cに対応したコマンド信号が発生するようになっている。
【0017】
また、車両Vの利用者が操作可能な操作体12として、利用者が普段携帯するリモコン2の他に、車両Vに予め装備されたスイッチ群6を備えている。スイッチ群6は、例えばメインキー(イグニッションキー)に連動したメインスイッチ6Aや、ブレーキレバーに連動したブレーキスイッチ6Bや、ハンドル部に設けられたハンドルスイッチ6Cや、パネル部に設けられたパネルスイッチ6Dなどにより構成され、車両Vの仕様毎に異なる。これらのスイッチ群6による操作の組合せ,回数および時間(状態)によって、当該スイッチ群6から様々な操作信号が送出されるようになっている。
【0018】
車両Vには、前記操作信号を受けて所望の条件で各種の制御信号を生成するユニット群14と、エンジン,表示器,鳴動手段などの負荷15をそれぞれ備え、車両Vをシステムとして見た場合に、オプションユニット3やユニット群14からの制御信号を受け、また前記スイッチ群6からの操作信号を直接受けて、負荷15に対する起動および遮断や、それ以外の各種設定を行なったり、またはこれに付随して、光,音,熱などの応答を負荷15に行わせたりする構成となっている。ここでいうユニット群14とは、例えば車両Vの盗難抑止を目的としたセキュリティシステム(図示せず)などを含んでいる。
【0019】
ユニット群14にオプションで装備されるオプションユニット3は、前記スイッチ群6による煩雑な操作仕様(操作するスイッチ6A〜6Dの種類,位置,操作方法)を記憶する記憶部17と、操作信号リモコン2からのコマンド信号を受けて、そのコマンド信号に対応した操作仕様を記憶部17から読み出して判別し、その操作仕様に対応した作動モードの疑似操作信号を、スイッチ群6からユニット群14や負荷15に至る操作信号の出力ラインに割り込ませるコマンドシミュレート用の処理手段18と、を備えている。ここでいう煩雑な操作とは、例えばスイッチ6A〜6Dの何れかを1回だけ操作するだけの単純操作ではなく、少なくとも2つ以上のスイッチ6A〜6Dを組み合わせて操作したり、或いは1つのスイッチ6A〜6Dであっても、何回かの回数を操作したりするものを指し、記憶部17にはそうしたスイッチ群6による複数の操作が必要な各仕様が、集約して記憶保存されている。
【0020】
図2は、システムのより具体的な回路構成を示したものである。オプションユニット3は、前述のように車両Vに組み込まれたセキュリティシステム21に付属して、車両Vに後付けで装着される。車両Vとオプションユニット3は、電源入力ライン31と、メインスイッチ入力ライン32と、メインスイッチ出力ライン33と、ブレーキスイッチ出力ライン34と、イモビ入出力ライン35と、アラーム制御入力とウィンカー制御出力の兼用ライン(アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン)36と、グランドレベルの接地ライン37とにより電気的に連結される。これらの各ライン31〜37の途中には、それぞれ着脱可能なコネクタ(図示せず)が設けられており、オプションユニット3を車両Vに組み込む際には、そのコネクタによって各ライン31〜37をワンタッチで簡単に連結できるようになっている。またこの図では示していないが、オプションユニット3には前記リモコン2からのコマンド信号を受信する受信部を備えている。
【0021】
一方、車両Vは前述したスイッチ群6として、メインスイッチ6Aやブレーキスイッチ6Bの他にウィンカースイッチ6Eなどを備え、表示器として左右のウィンカーランプ38Aやストップランプ38Bなどを備え、鳴動手段としてホーン39などを備えている。車両Vには前述のセキュリティシステム21の他に、電源としてのバッテリ41や、動力を出力するエンジン42や、ウィンカーランプ38Aを強制動作させるリレー43や、ホーン39を強制動作させるリレー44などを備えている。
【0022】
バッテリ41は周知のように、負極を接地して正極より所望の直流電源電圧を出力するもので、この電源電圧はメインスイッチ6Aやブレーキスイッチ6Bの操作に拘らず、セキュリティシステム21に供給されると共に、電源入力ライン31を通してオプションユニット3に供給される。また、バッテリ41の正極にはメインスイッチ6Aの一端(常開端子)が接続され、このメインスイッチ6Aの他端(共通端子)にメインスイッチ入力ライン32が接続される。オプションユニット3を装着しない状態では、メインスイッチ6Aの他端からセキュリティシステム21に至るメインスイッチ入力ライン32’が形成されるが、オプションユニット3を装着すると、セキュリティシステム21へのメインスイッチ入力ライン32’はカット部46にて遮断され、代わりにメインスイッチ6Aの他端からオプションユニット3に至るメインスイッチ入力ライン32が形成されると共に、オプションユニット3からセキュリティシステム21に至るメインスイッチ出力ライン33が形成される。ここでのカット部46は、メインスイッチ入力ライン32’を直接カッターで切断するのではなく、メインスイッチ6Aの他端とセキュリティシステム21とをつなぐコネクタどうしを外して、メインスイッチ6Aの他端に接続するコネクタに、オプションユニット3からのメインスイッチ入力ライン32の先端に設けたコネクタを接続し、セキュリティシステム21に接続するコネクタに、オプションユニット3からのメインスイッチ出力ライン33の先端に設けたコネクタを接続して、間にオプションユニット3を連結することで形成される。
【0023】
また、メインスイッチ6Aの他端にはブレーキスイッチ6Bの一端(常開端子)が接続され、ブレーキスイッチ6Bの他端(共通端子)と接地ライン37との間に、ストップランプ38Bが接続される。ブレーキスイッチ6Bの他端は、ストップランプ38Bの他にセキュリティシステム21にも接続され、このブレーキスイッチ6Bの他端からセキュリティシステム21に至るブレーキスイッチ出力ライン34’に、オプションユニット3からのブレーキスイッチ出力ライン34’が接続される。
【0024】
オプションユニット3は、車両Vに設けられたメインスイッチ6Aやブレーキスイッチ6Bの動作を代行するために、何れも制御端子付きの半導体スイッチからなるバイポーラトランジスタやMOS型FETなどのスイッチ素子51,52を備えている。スイッチ素子51は、メインスイッチ入力ライン32とメインスイッチ出力ライン33との間に接続され、図示しない制御部から制御端子に与えられる制御信号によってオン,オフするようになっている。また、別なスイッチ素子52は、電源入力ライン31とブレーキスイッチ出力ライン34との間に接続され、制御端子に与えられる制御信号によってオン,オフするようになっている。
【0025】
また、メインスイッチ出力ライン33とブレーキスイッチ出力ライン34との間には、スイッチ素子52のスイッチング動作により生成された疑似操作信号が、ブレーキスイッチ出力ライン34からメインスイッチ出力ライン33に出力されるのを許容する一方で、スイッチ素子51のスイッチング動作により生成された疑似操作信号が、メインスイッチ出力ライン33からブレーキスイッチ出力ライン34に出力されるのを阻止するダイオード53が接続される。
【0026】
オプションユニット3は、さらにオプションのイモビライザ機能として、イモビ入出力ライン35の一端にその接点55Aを接続するリレー55を備えている。イモビ入出力ライン35の他端は、車両Vのエンジン42に接続されており、特定の条件でのみエンジン42の始動を許可する作動モードに移行し、制御部からの駆動電流がリレー55のコイル55Bに流れると、接点55Aが閉じてエンジン42を始動できるようになっている。
【0027】
その他、オプションユニット3は、ウィンカーランプ38Aを利用して車両Vのアラーム状態を認識させるアラーム検知回路61と、ウィンカーランプ38Aの出力を制御するウィンカー制御回路62と、ホーン39のオプションとして設けられた鳴動手段としてのサイレン63をそれぞれ備えている。アラーム検知回路61やウィンカー制御回路62は、前述したスイッチ素子51,52や、ダイオード53や、リレー55と共に、図1に示すオプションユニット3の処理手段18に相当するものである。制御部からの制御信号によって、バッテリ41からの電流が、リレー43のコイル43B,アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36およびウィンカー制御回路62に流れ込むようになると、リレー43の接点43Aが閉じて、バッテリ41からウィンカーランプ38Aに電流が流れ、当該ウィンカーランプ38Aが点灯する。このウィンカー制御回路62は、制御端子付きの半導体スイッチからなるバイポーラトランジスタやMOS型FETなどのスイッチ素子からなる。また、アラーム検知回路61は、制御部から制御端子に与えられる制御信号によって当該スイッチ素子がオンし、バッテリ41からの電流が、リレー43のコイル43B,アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36およびウィンカー制御回路62に流れ込んで、ウィンカーランプ38Aを点灯させたときに、アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36の電圧値が降下するのを検知して、車両Vのアラームを認識するようになっている。
【0028】
ウィンカー制御回路62は、車両Vに組み込まれたウィンカースイッチ6Eと同様の機能を、オプションユニット3で行なわせるためのものであり、車両V側でウィンカースイッチ6Eをオンすることにより、このウィンカースイッチ6Eを通してウィンカーランプ38Aに電流を流すことで、当該ウィンカーランプ38Aを点灯させることもできる。またウィンカー制御回路は、セキュリティシステム21にも同様の機能が組み込まれている。セキュリティシステム21にはスイッチ素子からなるウィンカー制御回路65が内蔵され、このウィンカー制御回路65によって、バッテリ41からの電流がリレー43のコイル43Bからセキュリティシステム21に流れ込むと、ウィンカーランプ38Aが点灯するようになる。このときにもアラーム検知回路61は、アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36の電圧値が降下するのを検知して、車両Vのアラームを認識するようになっている。
【0029】
オプションユニット3に装備されたサイレン63は、サイレン出力ライン38と接地ライン37との間に接続される。これにより、サイレン出力ライン38からサイレン63に電流が流れ込むと、車両Vの盗難を抑止するためにサイレン63が鳴動する。また、セキュリティシステム21にもホーン39を鳴動させるためのホーン制御回路66が組み込まれている。ホーン制御回路66は、ウィンカー制御回路62,65と同じくスイッチ素子により構成され、バッテリ41からの電流がリレー44のコイル44Bからセキュリティシステム21に流れ込むと、リレー44の接点44Aが閉じて、バッテリ41からホーン39に電流が流れ、当該ホーン39が鳴動するようになっている。
【0030】
次に上記回路構成において、特にオプションユニット3の特徴部分について、図3を参照しながら説明する。先ず第1の特徴として、本実施例ではオプションユニット3を車両Vに装着する際に、コネクタの付け替えによってメインスイッチ6Aからセキュリティシステム21への接続がカットされて、メインスイッチ入力ライン32’の途中にカット部46が形成され、その代わりにメインスイッチ6Aからオプションユニット3へのメインスイッチ入力ライン32が形成され、オプションユニット3からセキュリティシステム21へのメインスイッチ出力ライン33が形成される。これにより、メインスイッチ6Aから車両V内のメインスイッチ入力ライン32’を通して出力される操作信号ではなく、オプションユニット3からメインスイッチ入力ライン32を通して割り込み出力される疑似操作信号によって、セキュリティシステム21を制御できる。なお、ここでの疑似操作信号は、オプションユニット3のスイッチ素子51とメインスイッチ6Aが何れもオンした時に、バッテリ41からメインスイッチ6A,メインスイッチ入力ライン32,スイッチ素子51,メインスイッチ出力ライン33を順に経て、セキュリティシステム21に流れ込む電流として生成される。
【0031】
第2の特徴として、オプションユニット3は、セキュリティシステム21への制御出力であるメインスイッチ出力ライン33とブレーキスイッチ出力ライン34とを別系統で設けている。これにより、車両Vのメインスイッチ6Aやブレーキスイッチ6Bの操作に拘らず、スイッチ素子51,52をそれぞれ独立してスイッチング動作させることで、メインスイッチ出力ライン33とブレーキスイッチ出力ライン34を通して疑似操作信号を各々割り込み出力させて、セキュリティシステム21を制御できるように構成している。
【0032】
第3の特徴として、スイッチ素子51,52のスイッチング動作により生成される疑似操作信号が、意図しないラインに侵入してセキュリティシステム21などを誤作動させないために、オプションユニット3にはスイッチ素子51,52やダイオード53などの整流回路Cを効果的に設けている。
【0033】
上記回路構成において、リモコン2からのコマンド信号を受けて、そのコマンド信号に対応した操作仕様がオプションユニット3の記憶部17から読み出され、処理手段18がスイッチ群6と同じ操作仕様のタイミングでスイッチ素子51をスイッチング動作させると、バッテリ41からメインスイッチ6A,メインスイッチ入力ライン32,スイッチ素子51,メインスイッチ出力ライン33を順に経て、セキュリティシステム21に流れ込むメインスイッチ6Aの疑似操作信号Aが生成される。また同様に、処理手段18がスイッチ群6と同じ操作仕様のタイミングでスイッチ素子52をスイッチング動作させると、バッテリ41から電源入力ライン31,スイッチ素子52,ブレーキスイッチ出力ライン34を順に経て、セキュリティシステム21に流れ込むブレーキスイッチ6Bの疑似操作信号Bが生成される。
【0034】
ブレーキスイッチ6Bの疑似操作信号Bは、ブレーキスイッチ出力ライン34からダイオード53を通してメインスイッチ出力ライン33にも流れ込み、メインスイッチ6Aの疑似操作信号Aと同じ経路でセキュリティシステム21に供給されるが、スイッチ素子51によってメインスイッチ入力ライン32への回り込みが阻止される。またメインスイッチ6Aの疑似操作信号Aは、スイッチ素子52とダイオード53によって、電源入力ライン31やブレーキスイッチ出力ライン34への回り込みが阻止される。このように、スイッチ素子51,52やダイオード53は、オプションユニット3で生成された疑似操作信号A,Bが、セキュリティシステム3の各作動モードで意図しないラインに侵入し、それにより誤作動するのを防止する整流回路として効果的に設けられている。
【0035】
図4は、セキュリティシステム21に備えた作動モードの一例を示したものである。セキュリティシステム21は、2つのメインスイッチ6Aとブレーキスイッチ6Bの操作を組み合わせることで、特定の作動モードが設定される。図4に示す「セットモード」とは、セキュリティシステム21による車両Vの盗難を監視するモードで、セキュリティシステム21がセットモードに設定されると、車両Vの振動を検知する振動センサー(図示せず)がオン状態になり、当該振動センサーからの検知信号を受け入れるようになる。セットモードは、車両Vのブレーキスイッチ6Bを何も操作しないオフ状態で、メインスイッチ6Aがオフの場合に設定される動作モードで、使用者がメインキーを持ったまま車両Vから離れると、自動的に設定される。
【0036】
「解除モード」は、前記セットモードを解除するためのモードで、セキュリティシステム21が解除モードに設定されると、振動センサーからの検知信号を受け入れないように、当該振動センサーがオフ状態になる。解除モードは、車両Vのブレーキスイッチ6Bをオンにした状態で、メインスイッチ6Aがオンの状態から、このメインスイッチ6Aをオフ→オン→オフの順に操作することで設定される。
【0037】
「全無効モード」は、前記車両Vの盗難監視を含めて、セキュリティシステム21が備えた全てのセキュリティ機能を無効にするモードである。解除モードは、車両Vのブレーキスイッチ6Bをオンにした状態で、メインスイッチ6Aがオンの状態から、このメインスイッチ6Aをオフ→オン→オフ→オン→オフ→オン→オフの順に操作することで設定される。つまり解除モードと全無効モードは、メインスイッチ6Aの操作手順(オフ→オンの繰り返し回数)が異なる。
【0038】
上記各作動モードでは、メインスイッチ6Aやブレーキスイッチ6Bの操作に対応した操作信号が、車両V内のバッテリ41からメインスイッチ入力ライン32’やブレーキスイッチ出力ライン34’を通してセキュリティシステム21に送出される。
【0039】
そしてセキュリティシステム21は、セットモードに設定された状態で車両Vの盗難を監視し、振動センサーによって必要以上の振動が検知されると、セキュリティシステム21にトリガー信号が送出されて、セキュリティシステム21をアラーム状態に移行させようとする。このときウィンカー制御回路65のスイッチ素子に制御信号が断続的に出力され、当該スイッチ素子がオン・オフ動作を繰り返すことで、ウィンカーランプ38Aを強制点滅させ、および/またはホーン制御回路66のスイッチ素子に制御信号が出力され、ホーン39を強制鳴動させて、車両Vの周辺にいる者へのアラーム報知を行なう。
【0040】
こうしたセキュリティシステム21本来の機能に対して、リモコン2を含むオプションユニット3を付加すると、リモコン2のスイッチ4A〜4Cによる簡単なワンプッシュの操作で、前記「セットモード」,「解除モード」,「全無効モード」の設定が行えるようになる。
【0041】
具体的には図4に示すように、セットモードはリモコン2のスイッチ4A〜4Cを何も操作しなければ自動的に設定され、または特定の例えばスイッチ4Aを操作することで強制的に設定される。このときの処理手段17は、記憶部18から読み出した操作仕様に基づき、スイッチ素子51,52を何れもオフのままにし、2つの疑似操作信号A,Bを共に送出しないようにすることで、セキュリティシステム21をセットモードに設定する。
【0042】
解除モードでは、特定の例えばスイッチ4Bをオンからオフに操作する。この操作に伴うコマンド信号をオプションユニット3が受信すると、処理手段17は前述した車両Vの操作仕様を記憶部18から読み出し、スイッチ素子51,52を共にオフ→オン→オフの順に動作させる。これにより、車両V側の操作に伴い出力される操作信号と同じ疑似操作信号A,Bが、オプションユニット3からセキュリティシステム21に送出され、セキュリティシステム21が解除モードに設定される。
【0043】
全無効モードでは、特定の例えばスイッチ4Bをオフ状態からオン→オフの順に操作する。この操作に伴うコマンド信号をオプションユニット3が受信すると、処理手段17は前述した車両Vの操作仕様を記憶部18から読み出し、スイッチ素子51,52を共にオフ→オン→オフ→オン→オフ→オン→オフの順に動作させる。これにより、車両V側の操作に伴い出力される操作信号と同じ疑似操作信号A,Bが、オプションユニット3からセキュリティシステム21に送出され、セキュリティシステム21が全無効モードに設定される。
【0044】
なお、図4に示す車両Vの操作やリモコン2の操作は、あくまでも一例に過ぎず、どのような操作仕様にするのかは、適宜選定すればよい。
【0045】
その他にオプションユニット3は、セキュリティシステム21に代行して、車両Vに装備されたウィンカーランプ38Aを強制点滅させたり、サイレン63を強制鳴動させたりするアラーム機能を備えている。具体的には、前記ウィンカー制御回路65のオン・オフ動作に伴って、アラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36の電圧値が断続的に降下するのをアラーム検知回路61が検知すると、オプションユニット3の処理手段18はアラーム状態を認識する。このとき、ウィンカー制御回路62のスイッチ素子に制御信号が断続的に出力され、当該スイッチ素子がオン・オフ動作を繰り返すことで、ウィンカーランプ38Aを強制点滅させることができる。また、サイレン出力ライン38からサイレン63に電流を供給することで、サイレン63を強制鳴動させることができる。
【0046】
以上のように本実施例では、車両Vのセキュリティシステム21にオプションで付加的に装備される車両盗難抑止装置1であって、この車両盗難抑止装置1は、操作部であるリモコン2と制御部であるオプションユニット3とを備えて構成される。そして、オプションユニット3は、リモコン2のワンプッシュ操作によって発生するコマンド信号を判別し、セキュリティシステム21にそのコマンド信号に対応した操作仕様の疑似操作信号を、車両V側で生成される操作信号のライン(メインスイッチ入力ライン32’,ブレーキスイッチ出力ライン34’)に割り込み出力して、セキュリティシステム21を所望のモードに機能させる構成となっている。
【0047】
このようにすると、オプションとなるリモコン2とオプションユニット3を車両Vのセキュリティシステム21へ付加するだけで、一度の操作(ワンプッシュ)によりリモコン2からオプションユニット3にコマンド信号を送出し、そのコマンド信号に対応した疑似操作信号を車両V側で生成される操作信号の代わりに割り込ませて、セキュリティシステム21に出力することができる。これにより操作者は、車両Vに備えたセキュリティシステム21の機能を、1回の操作で切り替えることができると共に、複雑な操作を要しないため、セキュリティシステム21の誤動作を生じさせないようにすることができる。
【0048】
また本実施例の車両盗難抑止装置1は、疑似操作信号の割り込みにより生じる疑似操作信号の回り込みを防止するために、回り込み防止回路となる整流回路Cを備えている。そのため、オプションユニット3からの割り込み出力に起因する車両Vの不要な動作を整流回路Cが防いで、操作者の混乱を防止でき、効率よくしかも無駄な消費電力を発生させることなく、セキュリティシステム21の必要とする機能だけを切り替えることが可能になる。
【0049】
本実施例のオプションユニット3は、リモコン2からのコマンド信号を判別して、車両Vに備えたスイッチたるスイッチ群6からの出力を擬似的にシミュレートさせた擬似操作信号を発生させ、その疑似操作信号をセキュリティシステム21に入力できるように構成している。
【0050】
このようにすると、セキュリティシステム21はオプションユニット3からの疑似操作信号を、恰も車両Vに備えたスイッチ群6の出力である操作信号として認識することができるので、セキュリティシステム21に一切手を加えることなく、セキュリティシステム21の必要とする機能だけを切り替えることが可能になる。
【0051】
また本実施例のオプションユニット3は、例えば振動センサーなどからの検知出力によって、車両Vが異常であると判断した時に、車両Vのウィンカーランプ38Aを点灯させる擬似操作信号を、ウィンカー制御回路62からリレー43に至るアラーム制御入力/ウィンカー制御出力ライン36を通してセキュリティシステム21に割り込ませることによって、セキュリティシステム21によるウィンカーランプ38Aのアラーム報知機能と連動させたり、メインスイッチ出力ライン33やブレーキスイッチ出力ライン34を通してセキュリティシステム3に疑似操作信号を割り込ませたりして、オプションユニット3のアラーム機能である各モードの設定と連動させたりする構成としている。
【0052】
このようにすれば、車両Vのセキュリティシステム21によるアラーム機能と、オプションユニット3による疑似操作信号を利用したアラーム機能とを連動させることができ、より効果的なアラーム機能を実現できる。
【0053】
なお本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、リモコン2などの操作部をオプションユニット3と一体に備えてもよく、またセキュリティシステム21として、スイッチ群6ではワンプッシュの操作で所望の機能が得られないような切り替え操作に対しても、本発明の車両盗難抑止装置1を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両盗難抑止装置
2 リモコン(操作部)
3 オプションユニット(制御部)
6 スイッチ群(スイッチ)
21 セキュリティシステム
C 整流回路(回り込み防止回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のセキュリティシステムにオプションで装備される車両盗難抑止装置であって、
操作部と制御部とを備えて構成され、
前記制御部は、前記操作部から発生するコマンド信号を判別し、前記セキュリティシステムに疑似操作信号を割り込み出力して、当該セキュリティシステムを機能させるものであり、
前記疑似操作信号の割り込みにより生じる当該疑似操作信号の回り込みを防止する回り込み防止回路を備えたことを特徴とする車両盗難抑止装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部からのコマンド信号を判別して、前記車両に備えたスイッチの出力を擬似的にシミュレートさせた擬似操作信号を発生させ、前記セキュリティシステムに入力できる構成を有することを特徴とする請求項1に記載の車両盗難抑止装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記擬似操作信号を前記セキュリティシステムに割り込ませることによって、前記セキュリティシステムのアラーム機能と連動させる構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両盗難抑止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171547(P2012−171547A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37397(P2011−37397)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】