説明

車両衝突検出システム、乗員拘束システム、車両、車両衝突検出方法

【課題】車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて検出し、車両の衝突を適正に判定するのに有効な技術を提供する。
【解決手段】側突センサから出力された出力信号を受信して信号処理する信号処理部と、制御装置300を備え、制御装置300は、送信部によって駆動された側突センサから出力される出力信号のうち2種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ有効性の有無を判定する第1判定部301,302と、第1判定部301,302の判定結果からデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両ドア構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する第2判定部303,304と、第1判定部301,302及び第2判定部303,304にて判定された判定結果に基づいて、車両の衝突事象の評価を行うセンサ判断構成部305とを含む構成とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突を検出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両事故の際の衝突発生を検出する種々の車両衝突センサが知られている。例えば、下記特許文献1には、磁気センサコイル(電磁インピーダンスセンサ)を用いることによって、車両の側面衝突時における車両構成部材の変位情報を検出する技術が開示されている。ところで、車両構成部材の変位情報を磁気センサコイルのように電磁波を用いて検出するこの種の検出センサにおいては、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受ける場合が想定され、このような場合には側面衝突に関する情報の適正な検出の妨げになる。
【特許文献1】特開2008−203240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて検出し、車両の衝突を適正に判定するのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明が構成される。本発明は、典型的には自動車において発生した衝突に関する情報を検出し、車両の衝突を判定する技術に対し適用することができるが、自動車以外の車両において発生した衝突に関する情報を検出し、車両の衝突を判定する技術に対しても同様に、本発明を適用することが可能である。ここでいう「車両」には、自動車、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両が包含される。
【0005】
本発明にかかる車両衝突検出システムは、車両に搭載されるシステムであって、検出センサ、駆動装置及び信号処理装置を少なくとも備える。
【0006】
検出センサは、車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出するセンサとして構成される。この検出センサによって、車両衝突時における車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出することが可能となる。なお、車両衝突に関しては、車両の側面衝突をはじめ、車両のフロント側やリア側の衝突が、ここでいう車両衝突の範疇に広く包含される。ここでいう「車両構成部材」として、車両を構成する導電体ないし磁性体の材料からなる部材を用いることができ、典型的には乗員乗降用の車両ドアのドアアウタパネルやドアインナパネル、またこれらドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される区画領域に配設される補強部材(ドアビーム)、或いは当該補強部材に取付けられた部材等が挙げられる。またここでいう、電磁波を用いた「検出センサ」として典型的には、磁気センサコイルによるコイルセンサ、レーダーセンサ、レーザーセンサ等を用いることができる。
【0007】
駆動装置は、検出センサを複数種類の周波数にて駆動する装置として構成される。この場合、検出センサが本来センシングに使用する周波数と、当該周波数とは異なる種類の少なくとも1つの周波数によって、複数種類の周波数が構成されるのが好ましい。
【0008】
信号処理装置は、検出センサから出力された出力信号を受信して信号処理する装置として構成される。この信号処理装置は、特に第1判定部、第2判定部及び評価部を含む構成を特徴とする。第1判定部は、駆動装置によって駆動された検出センサから出力される出力信号のうち複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ有効性の有無を判定する機能を果たす。第2判定部は、検出センサから出力された出力信号に基づく車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する機能を果たす。評価部は、第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて車両の衝突事象の評価を行なう機能を果たす。評価部にて評価された情報は、車両側の制御対象の制御に好適に用いられる。第1判定部、第2判定部及び評価部に関する処理は、単一の処理部によって実施してもよいし、或いは別個の処理部によって実施してもよい。
【0009】
なお、出力信号のデータ有効性の有無を判定する第1判定部と、車両の衝突を判定する第2判定部との間の判定手順に関しては、第1判定部の判定後に第2判定部の判定を行なう形態、第2判定部の判定後に第1判定部の判定を行なう形態、更には第1判定部の判定と第2判定部の判定を並行して行なう形態を適宜採用することができる。これら各形態では、いずれも第1判定部ないし第2判定部の判定結果に基づいて、評価部が車両の衝突事象の評価を行なう。
【0010】
また、第1判定部におけるデータ有効性の評価に際しては、異なる複数の周波数のそれぞれの周波数の出力信号単独で、「当該出力信号が本来得られる規定範囲内にあるか否か」を判定する第1の方法や、異なる複数の周波数のそれぞれの周波数の出力信号単独で、「過去の出力信号と現在の出力信号とに基づいて当該出力信号の安定性」を判定する第2の方法、また異なる複数の周波数のうちの第1及び第2の周波数の両方の出力信号で、「相互の過去の出力信号の差に基づいて、或いは相互の現在の出力信号の差に基づいて、当該出力信号の安定性」を判定する第3の方法のうちの1または複数を用いることができる。
【0011】
本発明にかかる車両衝突検出システムのこのような構成によれば、検出センサを複数種類の周波数で駆動したときに出力された各出力信号のデータ有効性の有無を判定する処理によって、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる。これにより、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて適正に検出することができ、また電磁波を用いて適正に検出された出力信号に基づいて、車両側の制御対象を適正に制御することが可能となる。
【0012】
また、本発明にかかる車両衝突検出システムの更なる形態では、前記の第2判定部は、第1判定部の判定結果からデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第1判定部において各出力信号のデータ有効性の有無が判定され、更に第2判定部においてはデータ有効性が有ると判定された出力信号について制御対象を駆動するのに適した衝突事象であるか否かが判定されるため合理的である。
【0013】
また、本発明にかかる車両衝突検出システムの更なる形態では、前記の信号処理装置の第1判定部は、検出センサから出力された出力信号が規定範囲内にある場合、或いは当該出力信号のノイズが規定範囲内にある場合に、当該出力信号のデータ有効性が有ると判定する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第1判定部における出力信号のデータ有効性の判定を適正に行なうことが可能となる。
【0014】
本発明にかかる別の車両衝突検出システムは、前記構成の検出センサ及び駆動装置と、更に前記構成の信号処理装置とは異なる信号処理装置を備える。
この信号処理装置は、駆動装置によって駆動された検出センサから出力される出力信号のうち複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ安定性を判定する第1判定部と、検出センサから出力された出力信号に基づく車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する第2判定部と、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて前記車両の衝突事象の評価を行なう評価部とを含む構成とされる。評価部にて評価された情報は、車両側の制御対象の制御に好適に用いられる。第1判定部、第2判定部及び評価部に関する処理は、単一の処理部によって実施してもよいし、或いは別個の処理部によって実施してもよい。
【0015】
なお、出力信号のデータ安定性の有無を判定する第1判定部と、車両の衝突を判定する第2判定部との間の判定手順に関しては、第1判定部の判定後に第2判定部の判定を行なう形態、第2判定部の判定後に第1判定部の判定を行なう形態、更には第1判定部の判定と第2判定部の判定を並行して行なう形態を適宜採用することができる。これら各形態では、いずれも第1判定部ないし第2判定部の判定結果に基づいて、評価部が車両の衝突事象の評価を行なう。
【0016】
このような構成によれば、検出センサを複数種類の周波数で駆動したときに出力された各出力信号のデータ安定性を判定する処理によって、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる。これにより、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて適正に検出することができ、また電磁波を用いて適正に検出された出力信号に基づいて、車両側の制御対象を適正に制御することが可能となる。
【0017】
また、本発明にかかる車両衝突検出システムの更なる形態では、前記の第2判定部は、第1判定部の判定結果からデータ安定性が高いと判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、第1判定部において各出力信号のデータ安定性が判定され、更に第2判定部においてはデータ安定性が高いと判定された出力信号について制御対象を駆動するのに適した衝突事象であるか否かが判定されるため合理的である。
【0018】
また、本発明にかかる車両衝突検出システムの更なる形態では、前記の駆動装置は、検出センサを第1及び第2の周波数の2種類のみの周波数にて駆動し、前記の信号処理装置は、第1及び第2の周波数のそれぞれに対応した出力信号を受信して信号処理する構成であるのが好ましい。このような構成によれば、検出センサを駆動する周波数の数を抑えることによって、システム構成を簡素化するのに有効とされる。
【0019】
本発明にかかる乗員拘束システムは、上記の各構成の車両衝突検出システムと、車両の衝突の際、乗員拘束領域にエアバッグを展開膨張させて車両乗員を拘束するエアバッグモジュールと、を含む構成とされる。そして、この車両衝突検出システムの評価部にて評価された情報に基づいてこのエアバッグモジュールが制御される。このような構成の乗員拘束システムによれば、適正に検出された出力信号に基づいて、エアバッグモジュールを適正に制御することが可能となる。
【0020】
本発明にかかる車両は、エンジン走行系統、電装系統、車両制御装置、乗員乗降用の車両ドア、センサ装置、制御対象を少なくとも備える車両として構成される。
エンジン走行系統は、エンジン及び車両の走行に関与する系統として構成される。電装系統は、車両に使われる電機部品に関与する系統として構成される。車両制御装置は、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う機能を有する装置として構成される。センサ装置は、車両ドアの側面衝突を検出するセンサとして構成される。制御対象は、センサ装置において検出された情報に基づいて制御される要素として構成される。このセンサ装置が、前記の車両衝突検出システムによって構成される。ここでいう「制御対象」には、車両の衝突の際に車両乗員の拘束を行うべく作動するエアバッグモジュールやシートベルト装置などの乗員拘束装置、車両衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置などの制御対象が包含される。
このような構成によれば、電磁波を用いて適正に検出された出力信号に基づいて、車両側の制御対象を適正に制御することが可能な車両衝突検出システムを搭載した車両が提供されることとなる。
【0021】
本発明にかかる車両衝突検出方法は、車両の衝突を適正に検出する方法であり、車両において、乗員乗降用の車両ドアを構成する車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出する検出センサを用い、前記検出センサを複数種類の周波数にて駆動し、前記検出センサから出力された出力信号を受信して処理する信号処理ステップを有する。この信号処理ステップは、特に第1〜第3の処理ステップを含むことを特徴とする。第1の処理ステップでは、駆動装置によって駆動された検出センサから出力される出力信号のうち複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ有効性の有無が判定される。第2の処理ステップでは、検出センサから出力された出力信号に基づく車両構成部材の変位情報により車両の衝突が判定される。そして、第3の処理ステップでは、第1の処理ステップの判定結果及び第2の処理ステップの判定結果に基づいて、車両側の制御対象に対し制御信号が出力される。
【0022】
このような方法によれば、検出センサを複数種類の周波数で駆動したときに出力された各出力信号のデータ有効性の有無を判定する処理によって、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる。これにより、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて検出し、車両の衝突を適正に判定することが可能となる。
【0023】
本発明にかかる車両衝突検出方法の更なる形態では、前記の第2の処理ステップは、第1の処理ステップの判定結果からデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する処理ステップとされるのが好ましい。このような方法によれば、第1の処理ステップにおいて各出力信号のデータ有効性の有無が判定され、更に第2の処理ステップにおいては、データ有効性が有ると判定された出力信号について制御対象を駆動するのに適した衝突事象であるか否かが判定されるため合理的である。
【0024】
また、本発明にかかる更なる形態の車両衝突検出方法において、前記の第1の処理ステップでは、検出センサから出力された出力信号が規定範囲内にある場合、或いは当該出力信号のノイズが規定範囲内にある場合に、当該出力信号のデータ有効性が有ると判定されるのが好ましい。このような方法によれば、第1の処理ステップにおける出力信号のデータ有効性の判定を適正に行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて検出し、車両の衝突を適正に判定することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の「検出センサ」の一実施の形態である側突センサ100、及び本発明の「車両衝突検出システム」及び「センサ装置」の一実施の形態である側突検出システム10について説明する。
【0027】
本実施の側突センサ100は、自動車(車両)に搭載されるセンサであって、典型的には乗員乗降用の車両ドアを構成するドアアウタパネル及びドアインナパネルによって区画される区画領域に配設される。この側突センサ100は、電磁波を用いて導電体ないし磁性体の材料からなる車両ドア構成部材120の変位に関する情報、具体的には変位距離及び変位速度を検出する構成とされる。そして、検出されたこの変位に関する情報に基づいて、車両の側面衝突に関する判定が行なわれる。ここでいう車両ドア構成部材120として、典型的には導電体ないし磁性体の材料からなるドアアウタパネルやドアインナパネル、またこれらドアアウタパネルとドアインナパネルとで区画される区画領域に配設される導電体ないし磁性体の材料からなる補強部材(ドアビーム)、或いは当該補強部材に取付けられる導電体ないし磁性体の材料からなる部材等が挙げられる。ここでいう側突センサ100が本発明における「検出センサ」に相当し、ここでいう車両ドア構成部材120が、本発明における「車両構成部材」に相当する。
【0028】
この側突センサ100の概略構成に関しては図1が参照される。図1に示すように、本実施の形態の側突センサ100は、センサハウジング101内に円形状に1または複数回巻かれた磁気センサコイル110を収容するコイルセンサとして構成されている。この場合、車両ドア構成部材120の被検出面と、磁気センサコイル110の延在平面が概ね平行となるように、側突センサ100を配設するのが好ましい。そして、交流電源装置(図示省略)の駆動によって、この磁気センサコイル110に交流電流(正弦波電流)が通電され、その周辺の車両ドア構成部材120(導電体ないし磁性体)に交流磁場が与えられると、電磁誘導の法則によって車両ドア構成部材120に渦電流が発生する。この渦電流によっても磁界を生じ、その磁界の一部が磁気センサコイル110にも錯交する。結局、磁気センサコイル110には、交流電源装置で流した電流による磁束に、車両ドア構成部材120に流れた渦電流による磁束が加算され、これらの磁束によって磁気センサコイル110に誘起電圧が発生することとなる。側突センサ100は、このときに磁気センサコイル110に流れる電流の変化に基づいて、金属体との間の変位挙動(変位及び変位速度)を検出することが可能となる。この場合の車両ドア構成部材120は、コイルセンサの検出対象物として、典型的には鋼、アルミニウム、フェライトなどを含む、導電体ないし磁性体として構成される。
【0029】
ところで、この側突センサ100のように、電磁波を用いてセンシングを行なうシステムにおいては、センシングに使用している周波数の過大な入力ノイズに影響を受ける場合があり、このような場合には、車両の側面衝突に関する適正な判定に影響を及ぼすことが想定される。そこで、本発明者らは、このような問題に対処するべく、側突センサ100によって検出された出力信号を、複数種類の周波数(典型的には、側突センサ100が本来センシングに使用する周波数と、当該周波数とは異なる種類の少なくとも1つの周波数)を用いて多重化し、それぞれの周波数において出力信号の判定を行なう技術を想到したのである。この技術を実施するに際しては、上記構成の側突センサ100に対し入力される入力信号(側突センサ100を駆動する「駆動信号」ともいう)、及び側突センサ100から出力される出力信号を処理する、本実施の形態の側突検出システム10を用いることが可能である。
【0030】
本実施の形態の側突検出システム10のシステム構成に関しては図2が参照される。図2に示すように、本実施の形態の側突検出システム10は、前記構成の側突センサ100、信号処理部200及び制御装置300を含む構成とされる。また、信号処理部200は、側突センサ100に対応した送信部(トランスミッター)201、外部の制御装置300との間に介在するインターフェース202、第1の受信部(レシーバー)210及び第2の受信部(レシーバー)220を含む構成とされる。
【0031】
送信部201は、インターフェース202を介して制御装置300に接続されており、制御装置300からの駆動制御信号にしたがって、側突センサ100に対し異なる2種類の周波数の電気信号を側突センサ100に対し送信する構成とされる。これにより、側突センサ100は、送信部201によって異なる2種類の周波数にて駆動される。ここでいう送信部201によって、本発明における「駆動装置」が構成される。第1の受信部210は、側突センサ100から出力された出力信号のうち、分離された第1の周波数に関する出力信号を受信し、当該出力信号を信号処理する構成とされる。同様に、第2の受信部220は、側突センサ100から出力された出力信号のうち、分離された第2の周波数に関する出力信号を受信して信号処理する構成とされる。
【0032】
第1の受信部210は、検出部211、演算部212及び出力部213を含む構成とされる。同様に、第2の受信部220は、検出部221、演算部222及び出力部223を含む構成とされる。検出部211,221は、それぞれに対応した固有の周波数に関する出力信号を検出する検出部分として構成される。演算部212,222は、検出部211,221にて検出された検出情報を演算処理する演算部分として構成される。これら演算部212,222では、検出部211,221にて検出された出力信号に基づいて、車両ドア構成部材120の変位距離に関するデータを演算する処理が行なわれる。当該データは、出力部213,223に伝送されたのち、インターフェース202を介して後述する制御装置300に対し出力される。この制御装置300は、制御対象としてのエアバッグモジュール310に接続されている。
【0033】
エアバッグモジュール310は、特に図示しないものの、エアバッグ及びガス供給装置を少なくとも備える構成とされ、運転席、助手席、後部座席等に着座した車両乗員をエアバッグを介して拘束する機能を果たす。エアバッグは、膨張及び収縮が可能であり、車両ドアの側面衝突を検出したときに、ガス供給装置からのガス供給によって乗員拘束領域に展開膨張する構成とされる。これにより、車両ドアの側面衝突の際、エアバッグモジュール310のエアバッグを介して車両乗員を拘束する制御が可能となる。ここでいうエアバッグモジュール310が、本発明における「エアバッグモジュール」及び「制御対象」に相当する。
【0034】
なお、制御装置300に接続される制御対象としては、前記のエアバッグモジュール310に代えて或いは加えて、当該エアバッグモジュール310とは別の乗員拘束装置、例えばシートベルトを介して乗員を拘束するシートベルト装置や、側面衝突の報知などを行うべく表示出力や音声出力を行う報知装置を採用することができる。
【0035】
また、特に図示しないものの、この側突検出システム10が搭載される車両(本発明における「車両」)は、側突検出システム10以外に、当該車両を構成する多数の車両構成部材、エンジン及び車両の走行に関与する系統であるエンジン走行系統、車両に使われる電機部品に関与する系統である電装系統、エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う車両制御装置等を備える。ここでいう「エンジン走行系統」、「電装系統」及び「車両制御装置」がそれぞれ、本発明における「エンジン走行系統」、「電装系統」及び「車両制御装置」に相当する。
【0036】
ここで、上記制御装置300の具体的な構成を図3を参照しつつ説明する。図3には、本実施の形態の制御装置300のシステム構成が示されている。この図3に示すように、本実施の形態の制御装置300は、第1判定部301,302、第2判定部303,304、センサ判断構成部305、別センサ判断構成部306及びエアバッグシステム判断構成部307を少なくとも含む構成とされる。
【0037】
第1判定部301は、第1の周波数を使用した出力信号aのデータ有効性の有無を判定する機能を有し、また第1判定部302は、第2の周波数を使用した出力信号bのデータ有効性の有無を判定する機能を有する。第2判定部303,304は、第1判定部301,302においてデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両ドア構成部材120の変位情報より車両の衝突を判定する機能を有する。なお、周波数の数に応じて第1判定部及び第2判定部の数を適宜増やすこともできる。ここでいう第1判定部301,302及び第2判定部303,304がそれぞれ、本発明における「第1判定部」及び「第2判定部」に相当する。
【0038】
センサ判断構成部305は、第1判定部301,302及び第2判定部303,304にて判定された判定結果をマトリックス評価することによって、車両の衝突事象の評価を行う機能を有する。別センサ判断構成部306は、側突センサ100とは別にエアバッグモジュール310の制御に関する情報を検出するセンサによって衝突事象の評価を行う機能を有する。ここでいうセンサ判断構成部305によって、本発明における「評価部」が構成される。エアバッグシステム判断構成部307は、センサ判断構成部305における車両の衝突事象の評価結果と、別センサ判断構成部306における車両の衝突事象の評価結果の双方に基づいて、エアバッグモジュール310に対し作動信号を出力するか否かを判断する機能を有する。
【0039】
次に、上述のデータ有効性評価について説明する。ここでは、2種類の周波数で構成されたシステムでのデータ有効性評価についての例で説明する。このデータ有効性の評価に際しては、第1及び第2の周波数のそれぞれの周波数の出力信号単独で、「当該出力信号が本来得られる規定範囲内にあるか否か」を判定する第1の方法Aや、第1及び第2の周波数のそれぞれの周波数の出力信号単独で、「過去の出力信号と現在の出力信号とに基づいて当該出力信号の安定性」を判定する第2の方法B、また第2の方法で安定性が優位な周波数の出力信号を基準とし、もう一方の信号出力が、「過去の出力信号と現在の出力信号とに基づく安定性」を確認する第3の方法Cのうちの1または複数を用いることができる。
【0040】
第1の方法Aにおいて、出力信号が本来得られる規定範囲内にあるか否かを判定する際には、側突センサ100の車両搭載時における車両ドア構成部材120との間の距離Da、或いは当該距離Daを示す信号(「基準信号」ともいう)を基準として、側面衝突時に変位する側突センサ100と車両ドア構成部材120との間の距離Db(<Da)と、側突センサ100に関するシステム上の誤差eとを勘案することによって本来得られる出力信号が演算される。この誤差eには、側突センサ100が持つ計測誤差(例えば計測温度の影響による誤差)や、側突センサ100の取り付け位置精度などが包含される。
具体的には、変位距離に関する出力信号については、本来得られる出力信号は、最大で(Da+e)、最小で(Db−e)とされ、この範囲以外の出力信号は、本来得られるはずのない信号として判定される。また、変位速度に関する出力信号については、側面衝突時に時間tで距離Daが距離Dbの変化した場合に、本来得られる出力信号は、最大で{(Da+e)−(Db−e)}/tとされ、これを上回る出力信号は、本来得られるはずのない信号として判定される。
【0041】
第2の方法Bにおいて、出力信号の安定性を判定する際には、現在の出力信号Dと過去のn個の出力信号Dm−n(n=1,2,3‥)の平均値との差をそれぞれ積算した値が、予め設定された閾値以下である場合に安定性が有ると判定され、それ以外の範囲にある場合に安定性が無いと判定される。その他の方法として、出力信号Dm−k(k=1,2,3‥,n)と出力信号Dm−k+1の差をそれぞれ積算した値が、予め設定された閾値以下である場合に安定性が有ると判定してもよい。或いは、過去の出力信号Dm−2と現在の出力信号Dの中間の出力信号Dm−1が取り得る中間の範囲内、すなわち(D+Dm−1)/2±αにある場合に安定性が有ると判定され、それ以外の範囲にある場合に安定性が無いと判定される。ここでいうαは、典型的には、計測上で実際の上限速度、センサの持つ計算誤差等を含めて得るはずの信号幅を示す値として定義される。
【0042】
第3の方法Cにおいて、出力信号の安定性を判定する際には、現在の出力信号Dと過去のn個の出力信号Dm−n(n=1,2,3‥)の平均値との差をそれぞれ積算した値が、小さいとされる周波数の出力信号側を基準とし、現在及び過去の同時刻に出力されたそれぞれの信号出力の差が閾値以内である場合に両方の信号は安定性があると判定され、それ以外の場合は、基準とした周波数の出力信号側のみ安定性があると判定される。
【0043】
ここで、上記構成の第1判定部301,302が、上述の第1の方法A及び第2の方法Bを用いてデータ有効性を判定する「第1の判定処理」の処理フローが図4に示されている。ここでいう第1の判定処理が、本発明における「第1の処理ステップ」を構成している。
【0044】
図4に示すように、第1の判定処理では、まずステップS10によって、第1及び第2の周波数の出力信号の両方が本来得られる規定範囲(「正常範囲」ともいう)内にあるか否かを判定する。第1及び第2の周波数の出力信号の両方が本来得られる規定範囲内にあると判定した場合(ステップS10のYESの場合)にはステップS12にすすみ、そうでない場合(ステップS10のNOの場合)にはステップS20にすすむ。
【0045】
ステップS12では、第1及び第2の周波数の出力信号の両方の安定性(出力信号のノイズレベルが規定範囲(「正常範囲」ともいう)にあるか否か)を判定する。第1及び第2の周波数の出力信号の両方が安定していると判定した場合(ステップS12のYESの場合)にはステップS14にすすみ、ステップS14にて第1及び第2の周波数の出力信号の両方が有効であると判定する。一方、第1及び第2の周波数の出力信号の両方が安定していないと判定した場合(ステップS12のNOの場合)にはステップS16にすすむ。ステップS16では、第1及び第2の周波数の出力信号のいずれか一方が安定しているか否かを判定する。第1及び第2の周波数の出力信号のいずれか一方が安定していると判定した場合(ステップS16のYESの場合)にはステップS18にすすみ、ステップS18では、ステップS16において安定していると判定された方の周波数の出力信号が有効であると判定する。一方、第1及び第2の周波数の出力信号のいずれか一方が安定していないと判定した場合(ステップS16のNOの場合)にはステップS24にすすみ、ステップS24では、第1及び第2の周波数の出力信号の安定度を比較し、安定している方の周波数の出力信号が有効であると判定する。
【0046】
ステップS20では、第1及び第2の周波数の出力信号のいずれか一方が本来得られる規定範囲内にあるか否かを判定する。第1及び第2の周波数の出力信号のいずれか一方が規定範囲内にあると判定した場合(ステップS20のYESの場合)にはステップS22にすすみ、そうでない場合(ステップS20のNOの場合)にはステップS26にすすむ。ステップS22では、ステップS20において規定範囲内にあると判定された方の周波数の出力信号が安定しているか否かを判定する。当該出力信号が安定していると判定した場合(ステップS22のYESの場合)にはステップS18にすすみ、ステップS18では、ステップS22において安定していると判定された方の周波数の出力信号が有効であると判定する。一方、当該出力信号が安定していないと判定した場合(ステップS22のNOの場合)にはステップS26にすすむ。ステップS26では、データが異常な状態であると判断し、系統が故障していないか故障診断を行なう。
【0047】
また、上記構成の第2判定部303,304が、車両ドア構成部材120の変位距離及び変位速度が規定範囲内にあるか否かを判定する「第2の判定処理」の処理フローが図5に示されている。ここでいう第2の判定処理が、本発明における「第2の処理ステップ」を構成している。
【0048】
図5に示す第2の判定処理は、図4に示す第1の判定処理のステップS14、ステップS18及びステップS24のそれぞれに引き続いて遂行される処理であり、まずステップS30によって、衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理を開始したか否かを判定する。衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理を開始したと判定した場合(ステップS30のYESの場合)には、ステップS34にすすみ、そうでない場合(ステップS30のNOの場合)には、ステップS32によって通常処理に戻る。
【0049】
ステップS34では、衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理を終了するか否かを判定する。衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理を終了すると判定した場合(ステップS34のYESの場合)には、ステップS36によって衝突判断処理のアルゴリズムの計算終了処理後に通常処理に戻り、そうでない場合(ステップS34のNOの場合)には、ステップS38において、衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理が終了するまで、データ有効性の判定を継続した後、ステップS40にすすむ。なお、ステップS40における衝突判断処理のアルゴリズムの計算処理は、データ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両ドア構成部材120の変位情報より、エアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態(オン状態)であるか否かを判定する処理とされる。そして、この判定結果が、センサ判断構成部305からエアバッグシステム判断構成部307に対し出力される。この出力処理が、本発明における「第3の処理ステップ」を構成している。
【0050】
なお、ここでいうエアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態(オン状態)の一例としては、車両ドア構成部材120の変位距離及び変位速度の相関に基づき、車両ドア構成部材120を変形させるのに十分な力を有する物体が側面衝突し、これにより実際に車両ドア構成部材120の明らかな変形が生じて車両ドアが潰れた場合、車両ドアを変形させた物体の衝突速度が一定値以上であり変形が進行している場合、或いは大きく重い物体が車両ドアを所定以上変形させ、更に所定以上の速度で変形が進行している場合等を想定している。これに対し、エアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態ではない(オフ状態)とは、変位速度が相対的に小さく且つ変位距離が相対的に大きい場合、例えば車両ドアが路上ないし路側物体以外の衝突、例えばキャスター付買い物かご、ボール、バット等に衝突して可逆的に変位した場合等を想定している。
【0051】
ステップS40では、第1及び第2の周波数の出力信号の両方のデータ有効性があるか否かを判定し、第1及び第2の周波数の出力信号の両方のデータ有効性があると判定した場合(ステップS40のYESの場合)には、ステップS42にすすみ、そうでない場合(ステップS40のNOの場合)には、ステップS46にすすむ。
ステップS42では、データ有効性があると判定した両方の周波数の出力信号に関し、衝突判断処理のアルゴリズムがエアバッグモジュール310の駆動(エアバッグの展開)を両方とも許可したか否かを判定する。エアバッグモジュール310の駆動を許可したと判定された場合(ステップS42のYESの場合)には、ステップS44にすすみ、そうでない場合には(ステップS42のNOの場合)には、ステップS30に戻る。ステップS44では、エアバッグモジュール310を駆動する衝突事象であると判断する。
【0052】
上記の第1判定部及び第2判定部における判定ステップS46では、データ有効性があると判定した周波数側の出力信号に関し、衝突判断処理のアルゴリズムがエアバッグモジュール310の駆動(エアバッグの展開)を許可したか否かを判定する。エアバッグモジュール310の駆動を許可したと判定された場合(ステップS46のYESの場合)には、ステップS44にすすみ、そうでない場合(ステップS46のNOの場合)には、ステップS30に戻る。
【0053】
上記の第1判定部301,302及び第2判定部303,304における判定結果、及びセンサ判断構成部305における車両の衝突事象の評価結果(Case 1〜Case 8)については図6が参照される。図6に示す例では、「F1」が第1の周波数を示し、また「F2」が第2の周波数を示している。また、第1判定部301,302による第1の判定結果の「Pass」がデータ有効性が有りとの判定を示し、また第1判定部301,302による第1の判定結果の「Not Pass」がデータ有効性無しとの判定を示している。また、第2判定部303,304による第2の判定結果の「ON」が、車両ドア構成部材120の変位情報より、エアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態であるとの判定を示し、また第2判定部303,304による第2の判定結果の「OFF」が、車両ドア構成部材120の変位情報より、エアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態ではないとの判定を示している。更に、センサ判断構成部305による評価結果の「ON」が、エアバッグモジュール310を駆動させる必要がある衝突事象であるとの評価を示し、またセンサ判断構成部305による評価結果の「OFF」が、エアバッグモジュール310を駆動させる必要がない衝突事象であるとの評価を示している。そして、センサ判断構成部305が「ON」のとき、更に別センサ判断構成部306も同様にエアバッグモジュール310を駆動させる必要がある衝突事象であると判断している場合には、エアバッグシステム判断構成部307は、エアバッグモジュール310に対し駆動信号を出力する。これによりエアバッグモジュール310のガス供給装置からのガス供給によってエアバッグが乗員拘束領域に展開膨張し、展開膨張した当該エアバッグが、車両乗員の側部(頭部、首部、肩部、胸部、腹部、膝部、下肢部など)に作用する衝撃力を緩和しつつ乗員拘束を行う。
【0054】
以上のように、本実施の形態の側突検出システム10によれば、側突センサ100を複数種類の周波数で駆動したときに出力された各出力信号のデータ有効性の有無を制御装置300の第1判定部301,302において判定する処理によって、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる。これにより、車両の側面衝突に関する情報として車両ドア構成部材120の変位情報を側突センサ100を用いて検出し、車両の衝突を適正に判定することが可能となる。また、特に第2判定部303,304では、第1判定部301,302においてデータ有効性が有ると判定された出力信号についてのみ、エアバッグモジュール310を駆動するのに適した衝突事象であるか否かが判定されるため合理的である。
【0055】
また、本実施の形態によれば、側突センサ100を用いて適正に検出された出力信号に基づいて、車両側のエアバッグモジュール310を適正に制御することが可能となり、これによって車両乗員の拘束徹底が図られる。なお、本発明では、側突センサ100を用いて検出された出力信号を用い適正に判定した車両の衝突を、エアバッグモジュール310をはじめ、車両に関する種々の制御対象の制御に用いることが可能とされる。
【0056】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0057】
上記実施の形態では、異なる2種類の周波数にて側突センサ100を駆動する場合について記載したが、本発明では、異なる複数種類の周波数にて側突センサ100を駆動することができる。例えば、異なる3種類の周波数にて側突センサ100を駆動する場合については図7及び図8が参照される。
【0058】
図7は、図2に関連して、異なる3種類の周波数にて側突センサ100を駆動する場合の別実施の形態の側突検出システム20のシステム構成を示している。図7では、図2に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付しており、更に検出部231、演算部232及び出力部233を含む第3の受信部230が付加される。また、送信部201は、制御装置300からの駆動制御信号にしたがって、側突センサ100に対し異なる3種類の周波数の電気信号を側突センサ100に対し送信する構成とされる。
【0059】
図8は、図7に示す側突検出システム20を用いる場合の、第1判定部及び第2判定部における判定結果、及びセンサ判断構成部における衝突事象の評価結果(Case 1〜Case 14)を示している。図8に示す例では、「F1」が第1の周波数を示し、「F2」が第2の周波数を示し、また「F3」が第3の周波数を示している。また、第1判定部による第1の判定結果の「Pass」がデータ有効性が有りとの判定を示し、また第1判定部による第1の判定結果の「Not Pass」がデータ有効性無しとの判定を示している。また、第2判定部による第2の判定結果の「ON」が、車両ドア構成部材120の変位情報よりエアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態であるとの判定を示し、また第2判定部による第2の判定結果の「OFF」が、車両ドア構成部材120の変位情報よりエアバッグモジュール310を駆動すべき車両の衝突が発生した状態でないとの判定を示している。更に、センサ判断構成部による評価結果の「ON」が、エアバッグモジュール310を駆動させる必要がある衝突事象であるとの評価を示し、またセンサ判断構成部による評価結果の「OFF」が、エアバッグモジュール310を駆動させる必要がない衝突事象であるとの評価を示している。
このような側突検出システム20を用いた場合でも、上記構成の側突検出システム10を用いる場合と同様に、車両の側面衝突に関する情報として車両ドア構成部材120の変位情報を磁気センサコイルを用いて検出し、車両の衝突を適正に判定することが可能となる。
【0060】
また、上記実施の形態の衝突判定に関し、上述の第1の方法A、第2の方法B及び第3の方法Cの1または複数によって出力信号の安定性を判定し、最も安定性が高いと判断された出力信号を用いることもできる。この場合には図9が参照される。図9には、別実施の形態の制御装置320のシステム構成が示されている。この図9に示すように、別実施の形態の制御装置320は、第1判定部321,322、安定性比較部323、第2判定部324、センサ判断構成部305、別センサ判断構成部306及びエアバッグシステム判断構成部307を少なくとも含む構成とされる。なお、この図9において図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付しており、当該同一の構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0061】
第1判定部321は、第1の周波数を使用した出力信号aのデータ安定性(安定度度合いないし揺らぎ度合い)を判定する機能を有し、また第1判定部322は、第2の周波数を使用した出力信号bのデータ安定性(安定度度合いないし揺らぎ度合い)を判定する機能を有する。これら第1判定部321,322では、上述の第1の方法A、第2の方法B及び第3の方法Cの1または複数によって出力信号の安定性が判定される。なお、周波数の数に応じて第1判定部の数を適宜増やすこともできる。ここでいう第1判定部321,322が、本発明における「第1判定部」に相当する。
【0062】
安定性比較部323は、第1判定部321において判定された出力信号aのデータ安定性と、第1判定部322において判定された出力信号bのデータ安定性とを比較して、2種類の出力信号のうちデータ安定性の高い方の出力信号を選択する機能を有する。第2判定部324は、安定性比較部323においてデータ安定性が高いと判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく車両ドア構成部材120の変位情報より車両の衝突を判定する機能を有する。ここでいう安定性比較部323及び第2判定部324によって、本発明における「第2判定部」が構成される。
【0063】
このような構成の制御装置320を用いる場合であっても、上記実施の形態の制御装置300を用いる場合と同様に、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる。これにより、車両の衝突に関する情報として車両構成部材の変位情報を電磁波を用いて適正に検出することができ、また電磁波を用いて適正に検出された出力信号に基づいて、車両側の制御対象を適正に制御することが可能となる。
【0064】
また、上記実施の形態では、図3に示すように、第1判定部301,302の判定後に第2判定部303,304の判定を行なう形態のシステム構成を有する制御装置300について説明したが、本発明では、第1判定部301,302と第2判定部303,304との間の判定手順に関しては、図3に示す実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更が可能である。ここで、別実施の形態の制御装置330及び制御装置340にシステム構成については図10及び図11が参照される。
【0065】
図10に示す形態の制御装置330では、第2判定部303,304の判定後に第1判定部301,302の判定を行なうシステム構成が採用されている。また、図11に示す形態の制御装置334では、第1判定部の判定301,302と第2判定部303,304の判定を並行して行なうシステム構成が採用されている。これら制御装置330,340の場合であっても、前述の制御装置300と同様に、第1判定部301,302及び第2判定部303,304にて判定された判定結果は、例えば図6に示すような表によってマトリックス評価される。従って、制御装置330,340のシステム構成を用いる場合であって、制御装置300のシステム構成を用いる場合と同様に、側突センサ100を複数種類の周波数で駆動したときに出力された各出力信号のデータ有効性の有無を第1判定部301,302において判定する処理によって、センシングに用いる周波数と同一の周波数のノイズによる影響を受けた出力信号を排除することが可能となる
【0066】
また、上記実施の形態では、車両構成部材の変位情報を、磁気センサコイルによる側突センサを用いて検出する場合について記載したが、本発明では、車両構成部材の変位情報を電磁波による各種の検出センサによって検出することができ、例えば磁気センサコイルによるセンサにかえて、レーダーセンサ、レーザーセンサ等を用いることもできる。
【0067】
また、上記実施の形態では、車両の側面衝突の際の車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定するシステムについて記載したが、車両の側面衝突のみならず、車両のフロント側ないしリア側の衝突の際の車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定するシステムに関し、本発明を適用することもできる。
【0068】
また、上記実施の形態では、自動車に装着される乗員拘束システムの構成について記載したが、自動車をはじめ、航空機、船舶、電車、バス、トラック等の各種の車両に装着される乗員拘束システムの構成に対し本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施の形態の側突センサ100の概略構成を示す図である。
【図2】本実施の形態の側突検出システム10のシステム構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の制御装置300のシステム構成を示す図である。
【図4】本実施の形態の第1の判定処理の処理フローである。
【図5】本実施の形態の第2の判定処理の処理フローである。
【図6】本実施の形態の側突検出システム10による衝突事象の評価結果(Case 1〜Case 8)を示す図である。
【図7】別実施の形態の側突検出システム20のシステム構成を示す図である。
【図8】図6に示す側突検出システム20による衝突事象の評価結果(Case 1〜Case 14)を示す図である。
【図9】別実施の形態の制御装置320のシステム構成を示す図である。
【図10】別実施の形態の制御装置330のシステム構成を示す図である。
【図11】別実施の形態の制御装置340のシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10,20…側突検出システム
100…側突センサ
101…センサハウジング
110…磁気センサコイル
120…車両ドア構成部材
200…信号処理部
201…送信部(トランスミッター)
202…インターフェース
210…第1の受信部
211,221,231…検出部
212,222,232…演算部
213,223,233…出力部
220…第2の受信部
230…第3の受信部
300…制御装置
301,302…第1判定部
303,304…第2判定部
305…センサ判断構成部
306…別センサ判断構成部
307…エアバッグシステム判断構成部
310…エアバッグモジュール
320,330,340…制御装置
321,322…第1判定部
323…安定性比較部
324…第2判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両衝突検出システムであって、
車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出する検出センサと、
前記検出センサを複数種類の周波数にて駆動する駆動装置と、
前記検出センサから出力された出力信号を受信して信号処理する信号処理装置と、
を備え、
前記信号処理装置は、前記駆動装置によって駆動された前記検出センサから出力される出力信号のうち、前記複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ有効性の有無を判定する第1判定部と、前記検出センサから出力された前記出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する第2判定部と、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて前記車両の衝突事象の評価を行なう評価部と、
を含む構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両衝突検出システムであって、
前記第2判定部は、前記第1判定部の判定結果からデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より車両の衝突を判定する構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両衝突検出システムであって、
前記信号処理装置の前記第1判定部は、前記検出センサから出力された出力信号が規定範囲内にある場合、或いは当該出力信号のノイズが規定範囲内にある場合に、当該出力信号のデータ有効性が有ると判定する構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項4】
車両に搭載される車両衝突検出システムであって、
車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出する検出センサと、
前記検出センサを複数種類の周波数にて駆動する駆動装置と、
前記検出センサから出力された出力信号を受信して信号処理する信号処理装置と、
を備え、
前記信号処理装置は、前記駆動装置によって駆動された前記検出センサから出力される出力信号のうち、前記複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ安定性を判定する第1判定部と、前記検出センサから出力された前記出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する第2判定部と、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて前記車両の衝突事象の評価を行なう評価部と、
を含む構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両衝突検出システムであって、
前記第2判定部は、前記第1判定部の判定結果からデータ安定性が高いと判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の車両衝突検出システムであって、
前記駆動装置は、前記検出センサを第1及び第2の周波数の2種類のみの周波数にて駆動し、前記信号処理装置は、前記第1及び第2の周波数のそれぞれに対応した出力信号を受信して信号処理する構成であることを特徴とする車両衝突検出システム。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の車両衝突検出システムと、
車両の衝突の際、乗員拘束領域にエアバッグを展開膨張させて車両乗員を拘束するエアバッグモジュールと、を含み、
前記車両衝突検出システムの前記評価部にて評価された情報に基づいて前記エアバッグモジュールが制御される構成であることを特徴とする乗員拘束システム。
【請求項8】
エンジン走行系統と、
電装系統と、
前記エンジン走行系統及び電装系統の駆動制御を行う車両制御装置と、
乗員乗降用の車両ドアと、
前記車両ドアの側面衝突を検出するセンサ装置と、
前記センサ装置において検出された情報に基づいて制御される制御対象と、
を備える車両であって、
前記センサ装置は、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の車両衝突検出システムによって構成されていることを特徴とする車両。
【請求項9】
車両において、乗員乗降用の車両ドアを構成する車両構成部材の変位に関する変位情報を電磁波を用いて検出する検出センサを用い、前記検出センサを複数種類の周波数にて駆動し、前記検出センサから出力された出力信号を受信して処理する信号処理ステップを有し、
前記信号処理ステップは、前記駆動装置によって駆動された前記検出センサから出力される出力信号のうち前記複数種類の周波数のそれぞれに対応した出力信号の経時変化に基づいて、各出力信号のデータ有効性の有無を判定する第1の処理ステップと、前記検出センサから出力された前記出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する第2の処理ステップと、前記第1の処理ステップの判定結果及び前記第2の処理ステップの判定結果に基づいて前記車両の衝突事象の評価を行なう第3の処理ステップとを含むことを特徴とする車両衝突検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の車両衝突検出方法であって、
前記第2の処理ステップは、前記第1の処理ステップの判定結果からデータ有効性が有ると判定された出力信号につき、当該出力信号に基づく前記車両構成部材の変位情報より前記車両の衝突を判定する処理ステップとされることを特徴とする車両衝突検出方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の車両衝突検出方法であって、
前記第1の処理ステップでは、前記検出センサから出力された出力信号が規定範囲内にある場合、或いは当該出力信号のノイズが規定範囲内にある場合に、当該出力信号のデータ有効性が有ると判定することを特徴とする車両衝突検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−155498(P2010−155498A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333941(P2008−333941)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】