説明

車両走行ルート表示装置

【課題】消防車両の過去の走行ルートを時系列で視認しやすく表示する。
【解決手段】本発明は、特定の場所に向かい走行する車両に関連付けて車両の位置を時系列で記憶した車両位置情報と、車両が走行し得る道路に関連付けて道路の位置を記憶した道路位置情報と、に対しアクセス可能な車両走行ルート表示装置であって、車両の位置に基づいて、道路位置情報から車両が走行する道路を抽出し、抽出した道路を表示し、表示した道路に沿って、車両を示す図形を時系列で移動させて表示する制御部を有すること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行ルート表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自治体の消防業務においては、災害現場からの通報を受けると、消防車両及び救急車両が、消防署を出発し、当該災害現場に到着し、消火活動や救助活動を行ったのち、もとの消防署に戻る。当然のことながら、これらの車両が消防署を出発してから災害現場に到着するまでの時間が短いほど、人的・物的被害は少なくて済む。一般的に、当該時間は、消防署から災害現場までの距離に比例する。しかし、消防署から災害現場までのルートは、一般道路であることが殆どであり、地域・季節・時間帯による一般車両の混雑度によって、到着するまでの時間は大きく変化する。そこで、災害が発生した場合にどのルートを通って災害現場に到着するかを、過去の例を分析し日頃よりシミュレーションしておくことは非常に重要である。
例えば、特許文献1には、被介護者を介護施設へ送迎する車両が、乗車中の被介護者が発病した場合、被介護者の掛かりつけの病院まで運搬するルートを車載器に表示することと、最寄りの消防署から出発する救急車両と途中で落ち合うルートを車載器に表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−50183号公報(請求項2〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、まさに被介護者が発病しているその時に、一刻もはやく被介護者を病院に運ぶためには有効である。しかし、過去の走行ルートを履歴情報として保有していない。よって、災害発生前から、災害現場に最も早く到着できる消防署やルートを計画するために、さらには、交通規制や都市計画を含めた社会インフラ自体を計画しておくために、多くのルートを比較検討するようなシミュレーションには向いていない。
【0005】
そこで、本発明は、消防車両の過去の走行ルートを時系列で視認しやすく表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特定の場所に向かい走行する車両に関連付けて車両の位置を時系列で記憶した車両位置情報と、車両が走行し得る道路に関連付けて道路の位置を記憶した道路位置情報と、に対しアクセス可能な車両走行ルート表示装置であって、車両の位置に基づいて、道路位置情報から車両が走行する道路を抽出し、抽出した道路を表示し、表示した道路に沿って、車両を示す図形を時系列で移動させて表示する制御部を有すること、を特徴とする。その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消防車両の過去の走行ルートを時系列で視認しやすく表示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る消防車両走行ルート管理システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る位置情報履歴データの一例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る位置情報を説明する図である。
【図4】本実施形態に係る道路情報データの一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る「ノード」、「道路」及び「施設」の関係を説明する図である。
【図6】本実施形態に係るルート補完の考え方を説明する図である。
【図7】本実施形態に係る位置情報履歴データ作成処理手順のフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る走行ルート表示処理手順のフローチャートである。
【図9】本実施形態に係る走行ルート表示処理手順のフローチャート(続き)である。
【図10】本実施形態に係る対象レコードの一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係る背景レコードの一例を示す図である。
【図12】本実施形態に係る走行ルート表示画面の一例を示す図である。
【図13】本実施形態に係る走行ルート表示画面の一例を示す図である。
【図14】本実施形態に係る走行ルート表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための形態(「本実施形態」という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(消防車両走行ルート管理システム)
図1の消防車両走行ルート管理システム1は、データ格納サーバ2、Webサーバ3、車両端末装置4及びユーザ端末装置5を有する。これらは、有線及び/又は無線のネットワーク6を介して相互に接続されている。データ格納サーバ2及びWebサーバ3は、地域の複数の消防署を統括する本部等に通常1台ずつ設置される。車両端末装置4は、当該地域の複数の消防署に所属する複数の消防車両及び救急車両に通常1台ずつ搭載される。ユーザ端末装置5は、特に設置される場所は限定されないが、消防署及び本部の管理者が使用可能な場所に1又は複数台設置されているものとする。
【0011】
(データ格納サーバ)
データ格納サーバ2は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、主記憶装置12、補助記憶装置13、通信装置14、入力装置15及び出力装置16を有する。これらはバスによって相互に接続されている。補助記憶装置13は、位置情報履歴データ31及び道路情報データ32を格納している(いずれも詳細後記)。位置情報管理部21及び道路情報管理部22はプログラムである。以降、「○○部は」と主体を記した場合は、中央制御装置11が、補助記憶装置13から各プログラムを読み出し、主記憶装置12にロードしたうえで、各プログラムの機能(詳細後記)を実現するものとする(後記するWebサーバ3についても同様である)。
なお、「車両位置情報」及び「道路位置情報」には、それぞれ、位置情報履歴データ31及び道路情報データ32が相当する。
【0012】
(Webサーバ)
Webサーバ3もまた、一般的なコンピュータであり、中央制御装置41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信装置44、入力装置45及び出力装置46を有する。これらはバスによって相互に接続されている。位置情報・道路情報取得部51、マッチング部52、ルート補完処理部53及び表示処理部54はプログラムである。
なお、「車両走行ルート表示装置」には、Webサーバ3が相当する。
【0013】
車両端末装置4及びユーザ端末装置5もまた、一般的なコンピュータであり、中央制御装置、主記憶装置、補助記憶装置、通信装置、入力装置及び出力装置を有する。これらはバスによって相互に接続されている(図示せず)。車両端末装置4は、消防車に搭乗する消防士が災害現場において操作しやすい携帯型であることが望ましい。
【0014】
(位置情報履歴データ)
図2に沿って、位置情報履歴データ31を説明する。
位置情報履歴データ31においては、車両ID欄101に記憶された車両IDに関連付けて、事案ID欄102は事案IDが、登録時刻欄103には登録時刻が、位置欄104には位置情報が、動態欄105には動態情報が記憶されている。
【0015】
車両ID欄101の車両IDは、地域の1又は複数の消防署に所属する、消防車両及び救急車両を含む車両を一意に特定する識別子である。ここでは、消防車両についての車両IDには「消」の文字を、救急車両についての車両IDには「救」の文字を、その冒頭部分に付している。なお、消防車両及び救急車両をまとめて、以降単に「車両」と呼ぶことがある。
事案ID欄102の事案IDは、当該地域における個々の事案を一意に特定する識別子である。事案とは、火災、事故、犯罪、自然災害等を含む、車両が出動した機会である。
登録時刻欄103の登録時刻は、個々のレコード(行)が位置情報履歴データ31として記憶された時刻である。登録時刻の間隔は任意である。さらに、ある事案において、登録時刻の間隔が均等である必要はない。ここでは、説明の単純化のために、登録時刻は2分間隔であるとしている。
【0016】
位置欄104の位置情報は、車両が存在する位置を示す2次元座標値であり、ここでは、経度を示す「X」及び緯度を示す「Y」の組合せである。一般的なGPS(Global Positioning System)技術によって車両のリアルタイムの位置情報が取得できるものとする。なお、位置情報として、さらに高さ「Z」を加えた3次元座標値を採用してもよい。以降では、2次元座標値の例を説明する。
図3においては、横軸である経度及び縦軸である緯度を座標軸とする平面上に、「災害現場」、「消防署1」、「消防署2」、「消防署3」及び「病院」がプロットされている。災害現場の位置情報は(X,Y)であり、消防署1の位置情報は(X,Y)であり、消防署2の位置情報は(X,Y)であり、消防署3の位置情報は(X,Y)であり、病院の位置情報は(X,Y)である。さらに、「消防署1」から「災害現場」に向かう道路上のある点の位置情報は(X,Y)である。図2の位置欄104の位置情報は、このように図3において説明される位置情報である。
【0017】
図2に戻り、動態欄105の動態情報は、車両の活動状況を端的に示す文字列である。ここでは、消防車両についての動態情報として、消防車両が消防署を出発したことを示す「出動」、消防車両が災害現場に向かう道路上にあることを示す「往路」、消防車両が災害現場に到着したことを示す「現着」、消防車両が消火活動中であることを示す「消火中」、消防車両が消火活動を終了し災害現場を出発したことを示す「現発」、消防車両が消防署に戻る道路上にあることを示す「復路」及び消防車両が消防署に到着したことを示す「引揚」が例として存在する。
【0018】
また、救急車両についての動態情報として、救急車両が消防署を出発したことを示す「出動」、救急車両が災害現場に向かう道路上にあることを示す「往路」、救急車両が災害現場に到着したことを示す「現着」、救急車両が救命活動中であることを示す「処置中」、救急車両が病人等を収容して災害現場を出発したことを示す「現発」、救急車両が病人等を病院に搬送する道路上にあることを示す「搬送中」、救急車両が病院に到着したことを示す「病院着」、救急車両が消防署に戻る道路上にあることを示す「復路」及び救急車両が消防署に到着したことを示す「引揚」が例として存在する。
位置情報履歴データ31のレコードは、車両ID、事案ID及び登録時刻の組合せの数だけ存在する。なお、位置情報履歴データ31については、車両ごとに異なるテーブルが作成されてもよい。
【0019】
図2を参照しつつ、事案「A001」における車両の動きを大まかに説明する。
救急車両「救001」は、「20100101 10:00」に、消防署1(X,Y)を「出動」し(レコード201)、「20100101 10:02」においては、災害現場に向かう道路上のある点(X,Y)を走行中である(レコード204)。その後、「20100101 10:04」に、災害現場(X,Y)に到着し(レコード207)、「20100101 10:06」においては、災害現場(X,Y)で「処置中」である(レコード210)。「20100101 10:08」に、災害現場(X,Y)を出発し(レコード213)、「20100101 10:10」においては、病院に向かう道路上のある点(X,Y)を走行中である(レコード216)。「20100101 10:12」に、病院(X,Y)に到着し(レコード219)、「20100101 10:14」においては、消防署1に戻る道路上のある点(X,Y)を走行中であり(レコード222)、20100101 10:16」に、消防署1(X,Y)に到着している(レコード225)。
【0020】
消防車両「消001」についても、図2のレコード202、205、208、211、214、217、220及び223を参照すれば、(詳細は省略するが)消防署2(X,Y)を「20100101 10:00」に「出動」した後、消防署2(X,Y)に「20100101 10:14」に「引揚」げた経過が確認できる。消防車両「消002」についても、図2のレコード203、206、209、212、215、218、221及び224を参照すれば、(詳細は省略するが)消防署3(X,Y)を「20100101 10:00」に「出動」した後、消防署3(X,Y)に「20100101 10:14」に「引揚」げた経過が確認できる。
【0021】
(道路情報データ)
図4に沿って、道路情報データ32を説明する。
道路情報データ32においては、オブジェクトID欄111に記憶されたオブジェクトIDに関連付けて、種類欄112には種類が、位置欄113には位置情報が、端点欄114には端点情報が、幅員欄115には幅員が、範囲欄116には範囲が記憶されている。
【0022】
オブジェクトID欄111のオブジェクトIDは、地図上のオブジェクトを一意に特定する識別子である。オブジェクトとは、地図上の、点及び図形(地物)である。
種類欄112の種類は、オブジェクトの種類である。本来地図には、多くの種類の図形が存在するが、ここでは、単純化のため、オブジェクトの種類として「ノード」、「道路」及び「施設」が存在するものとする。「ノード」とは位置情報のみを有する点であり、典型的には交差点(の中心点)である。「道路」(「リンク」ともいう)とは、2つのノードを両端に有し、ある幅員を有する道路(図形としては長方形)である。「施設」とは、1つのノードを中心に有する建物等(図形としては長方形)である。
【0023】
位置欄113の位置情報は、ノードが存在する位置を示す2次元座標値である。ここでは、経度を示す「X」及び緯度を示す「Y」の組合せである。一般的なGPS技術によって位置情報が取得できるものとする。位置欄113の値として、すべて「(X,Y)」が便宜的に記載されているが、実際には、別々の値が記憶されているものとする。
端点欄114の端点情報は、道路の両端のノードのオブジェクトIDの組み合わせ、又は、施設の中心のノードのオブジェクトIDである。
幅員欄115の幅員は、道路の幅、又は施設の縦横の長さである。
【0024】
範囲欄116の範囲は、オブジェクトが地図上に占める長方形の4つの頂点の位置情報の組合せである。4つの位置情報のそれぞれが、経度及び緯度の組合せとなっている。図4においては、範囲欄116の値として、すべて「(x,y),(x,y),(x,y),(x,y)」が便宜的に記載されているが、実際には、別々の値が記憶されているものとする。
なお、種類欄112に「ノード」が記憶されているレコードの端点欄114、幅員欄115及び範囲欄116は空欄である。種類欄112に「道路」又は「施設」が記憶されているレコードの位置欄113は空欄である。
道路情報データ32のレコードのうち、種類欄112に「道路」を有するレコードは、更に欄を設けて、例えば、一方通行等の規制、高架橋の高さ、道路工事の申請の有無等に関する情報を記憶するようにしてもよい。
【0025】
図5に沿って、「ノード」、「道路」及び「施設」の関係を説明する。
図5のノード「B001」は、図4のレコード231を平面上に表示したものである。図5のノード「B002」は、図4のレコード232を平面上に表示したものである。図5の道路「B101」は、ノード「B001」及び「B002」を端点に有する線分である。そして当該道路「B101」は、幅員「10」を有している。すなわち、図5の破線の長方形251は、図4のレコード236を平面上に表示したものに他ならない。そして、図5の長方形251の幅員が、図4のレコード236の幅員に対応し、図5の長方形251の4つの頂点が、図4のレコード236の範囲欄116に記憶された4つの位置情報に相当する。同様に、図5の破線の長方形252及び253は、図4のそれぞれレコード237及び238を平面上に表示したものである。
【0026】
同様に、図5の破線の長方形254は、図4の道路情報データ32のレコード239を、平面に表示した結果である。図4の道路情報データ32のうち「施設」に関するレコード(行)については、別途欄を設けて、その欄に、例えば図5の破線の長方形の辺が横軸(縦軸)に対しなす角度を記憶させてもよいし、破線の長方形に付して表示する文字列(建物名等を示す)を記憶させてもよい。要するに、図4の道路情報データ32は、道路及び建物を有する地図を作成し、表示するためのデータである。
【0027】
(処理手順)
以降、本実施形態の処理手順を説明する。処理手順には、(1)位置情報履歴データ作成処理手順及び(2)走行ルート表示処理手順がある。(1)の処理手順は、車両が出動するたびに実行される。(2)の処理手順は、消防車両走行ルート管理システム1の管理者が指定する任意のタイミングで実行される。(2)の処理手順が実行されるためには、少なくとも1度(1)の処理手順が実行され、位置情報履歴データ31が作成されていることが前提となる。
【0028】
(位置情報履歴データ作成処理手順)
図6については後記することとし、図7に沿って、位置情報履歴データ作成処理手順を説明する。
ステップS301において、車両端末装置4は、起動指示を受け付ける。具体的には、車両端末装置4は、ユーザ(車両の運転手、消防士等)が、車両の位置情報処理用のアプリケーション(図示せず)を起動させる指示を、入力装置を介して入力するのを受け付ける。以降において、車両端末装置4の動作主体は、当該アプリケーションである。
なお、車両端末装置4が、データ通信カードを利用したモバイル回線等を介して、119番通報を受ける指令システム(図示せず)から出動指令情報を受け付けてもよい。この場合は、ユーザからの手動の指示がなくとも、車両端末装置4は、自動的に起動指示を受け付けることができる。
【0029】
ステップS302において、車両端末装置4は、事案IDを受け付ける。具体的には、車両端末装置4は、ユーザが、事案IDを、入力装置を介して入力するのを受け付ける。例えば、災害の通報を受信した本部等が、事案IDを採番し、当該事案IDを当該災害が発生した地域の消防署の任意の装置に送信し、当該消防署の任意の装置は、車両が出動する直前に、ユーザに知らしめてもよい。さらに、当該消防署の任意の装置は、車両端末装置4に対し、事案IDを無線等で直接送信してもよい。
【0030】
ステップS303において、車両端末装置4は、位置情報等を送信する。具体的には、車両端末装置4は、第1に、位置情報(車両の存在する緯度及び経度)を、GPS技術を使用して取得する。
第2に、ユーザが、動態情報を、入力装置を介して入力するのを受け付ける。アプリケーションが起動した後最初に入力される動態情報は、「出動」である。パネル上に表示された「出動」等のアイコンをユーザが選択することによって入力を受け付けてもよいし、ユーザの肉声を車両端末装置4が「出動」等の文字列に変換してもよい。
第3に、ステップS302において受け付けた事案ID、ステップS303の「第1」において取得した位置情報、及び、ステップS303の「第2」において受け付けた動態情報に、車両ID及び登録時刻(現在の時刻)を付して、データ格納サーバ2に送信する。
【0031】
ステップS304において、データ格納サーバ2の位置情報管理部21は、位置情報履歴データ31のレコードを作成する。具体的には、位置情報管理部21は、第1に、ステップS303の「第3」において送信された事案ID、位置情報、動態情報、車両ID及び登録時刻を受信する。
第2に、位置情報履歴データ31(図2)の新たなレコードを作成する。
第3に、作成したレコードの車両ID欄101、事案ID欄102、登録時刻欄103、位置欄104及び動態欄105に、ステップS304の「第1」において受信した、車両ID、事案ID、登録時刻、位置情報及び動態情報を、それぞれ記憶する。
【0032】
ステップS305において、車両端末装置4は、最後に送信した動態情報が「引揚」であるか否かを判断する。具体的には、車両端末装置4は、ステップS303の「第3」において送信した動態情報が「引揚」である場合(ステップS305“YES”)は、位置情報履歴データ作成処理手順を終了し、それ以外の場合(ステップS305“NO”)は、ステップS303に戻る。
【0033】
ステップS303は繰り返し実行されることになる。2回目以降のステップS303の「第2」においては、動態情報として、消防車両については、「往路」、「現着」、「消火中」、「現発」、「復路」及び「引揚」が、救急車両については、「往路」、「現着」、「処置中」、「現発」、「搬送中」、「病院着」、「復路」及び「引揚」が、この順序で入力されることになる。「往路」、「消火中」、「復路」、「処置中」及び「搬送中」については、連続して複数回入力されることもある。
また、車両端末装置4は、位置情報等をデータ格納サーバ2に前回送信した時刻を記憶しており、当該時刻から所定の時間(例えば2分)を経過した時点で、ユーザに対し、音声等で、動態情報の入力を促してもよい。
【0034】
さらに、車両端末装置4は、消防署の位置情報、病院の位置情報及び災害現場の位置情報(通報を受け付けた際に特定できる)を記憶しているものとし、ステップS303の「第2」において以下の規則にしたがって動態情報を自動的に生成してもよい。そして、生成した動態情報を、ステップS303の「第3」以降の処理において、ユーザから入力を受け付けた動態情報に代替して取り扱うものとしてもよい。
【0035】
すなわち、車両が消防車両である場合は、当該規則は以下の通りである。
(1)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている消防署の位置情報と同じ(又は所定の誤差範囲内にある)場合は、「出動」(初回)又は「引揚」(2回目)を生成する。
(2)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている災害現場の位置情報と同じ(又は所定の誤差範囲内にある)場合は、「現着」(初回)、「消火中」(2回目以降)又は「現発」(最終回)を生成する。
(3)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている消防署の位置情報とも災害現場の位置情報とも異なる(又は所定の誤差範囲外にある)場合は、「往路」(「現着」が生成される前)又は「復路」(「現発」が生成された後)を生成する。
【0036】
また、車両が救急車両である場合は、当該規則は以下の通りである。
(1)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が記憶されている消防署の位置情報と同じ(又は所定の誤差範囲内にある)場合は、「出動」(初回)又は「引揚」(2回目)を生成する。
(2)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている災害現場の位置情報と同じ(又は所定の誤差範囲内にある)場合は、「現着」(初回)、「処置中」(2回目以降)又は「現発」(最終回)を生成する。
(3)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている病院の位置情報と同じ(又は所定の誤差範囲内にある)場合は、「病院着」を生成する。
(4)GPS技術を用いて取得した車両の位置情報が、記憶されている消防署の位置情報とも災害現場の位置情報とも異なる(又は所定の誤差範囲外にある)場合は、「往路」(「現着」が生成される前)、「搬送中」(「現発」が生成された後)又は「復路」(「病院着」が生成された後)を生成する。
【0037】
(走行ルート表示処理)
図8及び図9に沿って、走行ルート表示処理を説明する。
ステップS401において、ユーザ端末装置5は、事案を選択する。具体的には、ユーザ端末装置5は、第1に、ユーザ(管理者)が事案IDを、入力装置を介して入力するのを受け付ける。
第2に、受け付けた事案IDをWebサーバ3に送信する。
【0038】
ステップS402において、Webサーバ3の位置情報・道路情報取得部51は、選択された事案に関するデータを要求する。具体的には、位置情報・道路情報取得部51は、第1に、ステップS401の「第2」において送信された事案IDを受信する。
第2に、受信した事案IDをデータ格納サーバ2に送信する。
【0039】
ステップS403において、データ格納サーバ2の位置情報管理部21は、位置情報履歴データ31を検索する。具体的には、位置情報管理部21は、第1に、ステップS402の「第2」において送信された事案IDを受信する。
第2に、事案IDを検索キーとして、位置情報履歴データ31(図2)を検索し、該当したレコード(行)をすべて取得する。ここで取得されたレコードを以降「対象レコード」と呼ぶことがある。図2の位置情報履歴データ31は、複数の事案IDについての多くのレコードを有する。ここでは例として、事案ID「A001」を検索キーとして検索した結果、「A001」を事案ID欄102に有するレコード、すなわち図2のレコード201〜225が、対象レコードとして取得されたものとする。
【0040】
ステップS404において、データ格納サーバ2の道路情報管理部22は、道路情報データ32を検索する。具体的には、道路情報管理部22は、第1に、すべての対象レコードに含まれる位置情報のうち最大の緯度、最小の緯度、最大の経度及び最小の経度によって四辺が区画される長方形の領域を特定する。当該領域を以降「表示予定領域」と呼ぶことがある。このとき、上下左右にそれぞれ所定の緯度(経度)を余裕として加え、表示予定領域を特定してもよい。
第2に、道路情報データ32(図4)を検索し、種類欄112に「ノード」を有し、かつ、位置欄113の位置情報が表示予定領域内に属するレコードを取得する。ここでは、レコード231〜235を含むレコード群が取得されたものとする。
【0041】
第3に、ステップS404の「第2」において取得されたレコードのすべてのオブジェクトIDを検索キーとして、道路情報データ32(図4)を検索し、種類欄112に「道路」を有し、かつ、検索キーとしたオブジェクトIDと同じオブジェクトIDを端点欄114に少なくとも1つ有するレコードをすべて取得する。ここでは、レコード236〜238を含むレコード群が取得されたものとする。
第4に、ステップS404の「第2」において取得されたレコードのすべてのオブジェクトIDを検索キーとして、道路情報データ32(図4)を検索し、種類欄112に「施設」を有し、かつ、検索キーとしたオブジェクトIDと同じオブジェクトIDを端点欄114に有するレコードをすべて取得する。ここでは、レコード239、240を含むレコード群が取得されたものとする。
なお、ステップS404の「第2」、「第3」及び「第4」において取得されたレコード群を以降「背景レコード」と呼ぶことがある。この時点での背景レコードは、車両が走行した可能性のある道路に対応するレコード、車両が走行した地点の付近にある施設に対応するレコード及びこれらの道路及び施設を特定するために必要な「ノード」についてのレコードである。
【0042】
ステップS405において、データ格納サーバ2の道路情報管理部22は、検索したデータを送信する。具体的には、道路情報管理部22は、背景レコード及び対象レコードをWebサーバ3に送信する。
【0043】
ステップS406において、Webサーバ3のマッチング部52は、選択された事案に関するデータを受信する。具体的には、マッチング部52は、ステップS405において送信された背景レコード及び対象レコードを受信する。
【0044】
ステップS407において、Webサーバ3のマッチング部52は、位置情報履歴データ31と道路情報データ32とをマッチングする。
具体的には、マッチング部52は、第1に、対象レコードに含まれる車両IDのうち任意の1つを選択する。当該選択された車両IDを、以降「対象車両ID」と呼ぶことがある。ここでは、例えば、「救001」が選択されたとする。
第2に、対象レコードから対象車両IDを有するレコードをすべて取得し、登録時刻の順に並び替える。「救001」を有するレコード(図2)が、レコード201、204、207、210、213、216、219、222及び225の順に並ぶことになる。
【0045】
第3に、並び替えられた対象レコードのうちn番目のレコードの位置情報が、種類「道路」を有する背景レコードのうちm番目のレコードの範囲欄116に記憶された範囲内に存在するか否かを判断し、存在する場合は、種類「道路」を有する背景レコードのうちm番目のレコードに「#」のようなフラグを立てる。当該処理は、n=1を基準に、m=1,2,3,4,・・・について実行し、その後、n=2を基準に、m=1,2,3,4,・・・について実行し、・・・のように繰り返し実行される。
第4に、フラグ「#」が立てられたレコードのみを抽出し、さらにフラグ「#」が立てられた順に並び替える。このように抽出され並び替えられたレコードを、以降「表示予定道路レコード」と呼ぶことがある。
当該繰り返し処理が終了した時点で、車両IDが「救001」である車両が走行した道路に対応する背景レコードが、当該車両が走行した順に、表示予定道路レコードとして並んでいることになる。なお「ノード」又は「施設」を含む背景レコードはそのまま残る。
このとき、表示予定道路レコードは、図4のレコード236〜238であったとする。
【0046】
ステップS408において、Webサーバ3のルート補完処理部53は、ルートが連続するか否かを判断する。
具体的には、ルート補完処理部53は、第1に、表示予定道路レコードの端点欄114に記憶されているオブジェクトIDが連続しているか否かを判断する。例えば、図4のレコード236の端点欄114の「B002」は、レコード237の端点欄114にも記憶されている。このような場合、オブジェクトIDは連続していると判断される。つまり、レコード236及び237に対応する道路は、連続して繋がったものとして表示されることが可能である。さらに、レコード237の端点欄114の「B003」は、レコード238の端点欄114にも記憶されている。このような場合、オブジェクトIDは連続していると判断される。つまり、レコード237及び238に対応する道路も、連続して繋がったものとして表示されることが可能である。
ルート補完処理部53は、このように表示予定道路レコードを2つずつ対比して、それらのオブジェクトIDが連続しているか否か(すなわち共通するオブジェクトIDを有するか否か)を判断することができる。
【0047】
第2に、連続していないと判断された前後(レコードの位置としては上下)2つのレコードの組のオブジェクトID(欄111)を保持する。図4の例では、保持すべきオブジェクトIDは存在しない。しかしながら、仮に図4において、レコード238の端点欄114に「B004,B005」が記憶されていた場合、ルート補完処理部53は、レコード237及び238を、オブジェクトIDが連続していない前後2つのレコードの組であると判断することになる。
第3に、連続していないと判断された前後2つのレコードの組が存在する場合(ステップS408“NO”)は、ステップS409に進み、それ以外の場合(ステップS408“YES”)は、ステップS410に進む。
【0048】
次に説明するステップS409の処理に関連し、図6に沿ってルート補完の考え方を説明する。
表示予定道路レコードが、例えば3つ存在するとする。そして、第1のレコードと第2のレコードの組は、オブジェクトIDが連続していない前後2つのレコードの組であるとする。同様に、第2のレコードと第3のレコードの組もオブジェクトIDが連続していない前後2つのレコードの組であるとする。図6は、第1のレコード、第2のレコード及び第3のレコードを平面に表示した図である。破線の長方形261、262及び263は、それぞれ、第1のレコード、第2のレコード及び第3のレコードに対応する。車両端末装置4が位置情報等をデータ格納サーバ2に送信する(図7のステップS303)間隔が長い場合、ステップS407の「第3」において、実際に車両が走行した道路に対応する背景レコードのすべてに対して、フラグ「#」を立てることは不可能になる。その結果、図6の円形の領域264及び265のような、破線の長方形が連続しない「ルート未確定領域」が発生する。このようなルート未確定領域ごとに、車両が走行したであろう1又は複数の道路を推定することが、ルート補完の処理に他ならない。
【0049】
図9に戻って、ステップS409において、Webサーバ3のルート補完処理部53は、ルートを補完する。具体的には、ルート補完処理部53は、第1に、ステップS408の「第1」において、オブジェクトIDが連続していないと判断された前後2つのレコードの組のうち、任意の組を選択する。
第2に、選択した組の2つのレコードの端点欄114に記憶されている4つのオブジェクトID(端点である「ノード」を示す)のうちから、同一のレコードに属さない2つを特定する。このとき、4つのノードのうち、当該組に属さない他のレコードと連続しているノードは除外される。例えば、今、図6のルート未確定領域264の道路を推定するとする。仮に、ノード269とノード270とが一致している場合は、ノード269は無視し、ノード266及びノード268の組、又はノード267及びノード268の組が、特定される候補となり得る。
このように複数の候補がある場合、表示予定道路レコードの端点欄114のオブジェクトIDを検索キーとして、種類「ノード」を有する背景レコードの位置情報を取得することによって、ノード266及びノード268の間の距離、並びに、ノード267及びノード268の間の距離を計算する。そして、最も距離が短いノード同士に対応するオブジェクトIDを2つ特定する。この場合、ノード267及びノード268に対応するオブジェクトIDが特定される。
【0050】
第3に、特定した2つのオブジェクトIDを検索キーとして、背景レコード検索し、種類欄112に「道路」を有し、かつ、検索キーとした2つのオブジェクトIDを端点欄114に有するレコードを取得する。当該取得したレコードを、以降「補完レコード」と言うことがある。このとき、補完レコードが存在しない場合がありうる。例えば、図6のルート未確定領域265において、ノード269及びノード270の間の道路を推定しようとするものの、符号272の道路が存在しない場合である。
このような場合は、ルート補完処理部53は、以下の処理を実行する。
【0051】
(1):2つの「道路」によって補完する。
すなわち、種類「道路」を有する背景レコードから、ノード269に対応するオブジェクトIDを有する複数の背景レコード群と、ノード270に対応するオブジェクトIDを有する複数の背景レコード群とを抽出する。その後、ある1つのノードに対応するオブジェクトIDを共有する2つのレコードを、それぞれの群から1つずつ抽出し、補完レコードとする。このような2つのレコードの組が複数存在する場合は、ノード269から「ある1つの点」を経由してノード270に至る距離が最短であるような2つのレコードを、それぞれの群から1つずつ抽出し、補完レコードとする。このような補完レコードは、図6における、例えば破線274及び275に対応している。
【0052】
(2):(1)の処理によっても補完レコードが存在しない場合は、3つの「道路」によって補完する。
すなわち、(1)の処理において、例えばノード269に対応するオブジェクトIDを有する複数の背景レコード群の内の任意の1つのレコードをレコード(a)とする。そしてレコード(a)の他方のオブジェクトIDを有する複数の背景レコード群(b)と、ノード270に対応するオブジェクトIDを有する複数の背景レコード群(c)とを抽出する。その後、ある1つの点に対応するオブジェクトIDを共有する2つのレコードを、(1)の処理と同様に、レコード群(b)及びレコード群(c)から1つずつ抽出し、任意のレコード(a)とあわせて3つの補完レコードとする。つまり、例えばノード273とノード270との間を補完するような2つの補完レコードを(1)の処理に準じて実行する。このような補完レコードは、図6における、例えば破線276、277及び278に対応している。
また、レコード(a)を他の候補に代替し、3つの補完レコードの組の候補を取得し、合計距離が最短であるような組の3つのレコードを補完レコードとしてもよい。
【0053】
(3):(2)の処理によっても補完レコードが存在しない場合は、p個(p=4,5,・・・)の「道路」によって補完する。処理の内容は、(2)に準ずる。ある閾値を設定して、pの値が当該閾値以上となってもなお補完レコードが存在しない場合は、「補完すべき道路がありません」のようなメッセージを生成する。そして、次の「第4」の処理は実行しない。ただし、このようなことは、当該事案が発生した後、道路情報データ32が変更された場合(道路の付け替えのような場合)等を除けば、通常はあり得ない。
【0054】
第4に、補完レコードを、ステップS408の「第1」において、オブジェクトIDが連続していないと判断された前後2つのレコードの組の間に挿入する。「補完すべき道路がありません」のようなメッセージが生成されたときは、当該メッセージを有するダミーのレコードを挿入する。
【0055】
ステップS407〜S409の処理は、対象レコードに含まれるすべての車両IDについて繰り返される。ステップS409の処理から抜けた段階で、Webサーバ3は、例えば、図10のような対象レコード及び図11のような背景レコードを一時的に記憶していることになる。
【0056】
図10の対象レコードは、前記したように、位置情報履歴データ31(図2)の一部に基づいて作成されたものである。したがって、各欄の名称と符号は図2と同じである。しかしながら、レコードは、ステップS401において入力を受け付けた事案ID「A001」を有するものだけに限定されている。
なお、以降の説明の単純化のために、図10のデータは、以前に説明した例とは直接関係を有さない(整合性を無視する)ものとする。例えば、事案ID「A001」を有する対象レコードは、車両IDが「救001」であるもの(レコード281a〜281dを含む)、及び車両IDが「消001」であるもの(レコード282a〜282cを含む)だけであるとする。そして、対象レコードは、実際には図10に示されるより多く存在するが、単純化のために、以降では、動態情報として「出動」、「往路」及び「現着」を有するレコードについてのみを説明する。
【0057】
図10を参照すると、車両IDが「救001」である救急車両及び車両IDが「消001」である消防車両は、何れも、「20100102 12:00」に「出動」している(レコード281a、282a)。しかしながら、「現着」の時刻は、「消001」については「20100102 12:04」である(レコード282c)のに対し、「救001」については「20100102 12:06」である(レコード281d)。ユーザ(管理者)は、なぜ当該救急車両が災害現場に到着するのが遅れたのか知りたくなる(詳細後記)。
【0058】
図11の背景レコードは、前記したように、道路情報データ32(図4)の一部に基づいて作成されたものである。したがって、各欄の名称と符号は図4と同じである。
図11の背景レコードは、大きくわけて、種類「ノード」を有するもの(レコード283a〜283cを含む)、種類「道路」を有するもの(レコード284a〜284d、285a、285bを含む)及び種類「施設」を有するもの(レコード286a〜286cを含む)の3つの群に分かれる。
【0059】
種類「道路」を有するレコードは、当初取得された背景レコードのうちから、実際に車両が走行した道路に対応するレコードに絞り込まれた「表示予定道路レコード」である。さらに、レコード284a〜284dは、車両IDが「救001」である救急車両についてのものであり、さらに、そのうちレコード284cは、当該車両が実際に走行したか否かが不明であるが、前後関係を基に、走行しているものと推定した道路に対応する「補完レコード」である(左欄外に「補完」と記載)。レコード285a及び285dは、車両IDが「消001」である消防車両についてのものである。
【0060】
図9に戻る。ステップS410において、Webサーバ3の表示処理部54は、画面表示用のデータを送信する。具体的には、表示処理部54は、図10の対象レコード及び図11の背景レコードを、動画表示用のアプリケーション(図示せず)とともにユーザ端末装置5に送信する。
【0061】
ステップS411において、ユーザ端末装置5は、走行ルートを表示する。具体的には、ユーザ端末装置5は、第1に、ステップS410において送信された対象レコード、背景レコード及び動画表示用のアプリケーションを受信する。(以降の動作主体は当該アプリケーションである。但し他例について詳細後記。)
第2に、受信した背景レコードに基づき、走行ルート表示画面61(図12)を出力装置に表示する。例えば、図11のレコード284aの範囲欄116の範囲を図形表示すると、図12の破線の長方形291dとなる。同様に、図12の破線の長方形のうち、道路を表す長方形291e、291f及び291gは、それぞれ、図11のレコード284b、284c及び284dに対応している。このうち太線で示した長方形291fは、「補完レコード」(図11のレコード284c)が作成されてはじめて表示され得る。図12の破線の長方形のうち、道路を表す長方形291i及び291hは、それぞれ、図11のレコード285a及び285bに対応している。図12の破線の長方形のうち、施設を表す長方形291a、291b及び291cは、それぞれ、図11のレコード286a、286b及び286cに対応している。
なお、ユーザ端末装置5は、メッセージを有するダミーレコードに基づいて、前後の表示予定道路レコードに対応する道路の間の領域に、メッセージの文言を表示する。
【0062】
図12における「消防署1」等の文字は、例えば、道路情報データ32の種別が「施設」であるレコードに欄を設け記憶しておくことによって、走行ルート表示画面61に表示することができる。
なお、前記の例では、表示される道路は「表示予定道路レコード」に対応する道路のみである。しかしながら、表示処理部54は、種類「道路」を有する背景レコードすべてを表示し、そのうち、表示予定道路レコードに対応する道路を強調表示してもかまわない。
【0063】
第3に、受信した対象レコードのすべてのレコードの位置情報、登録時刻及び動態情報の組を、走行ルート表示画面61に重ねて表示する。この段階での走行ルート表示画面61は、図13に示した通りである。
例えば、図10のレコード281aの、位置情報、登録時刻のうちの時分及び動態情報を表示すると、それぞれ、図13の「×」292a、「12:00」292b及び「出動」292cとなる。同様に、図10のレコード281bの位置情報、登録時刻のうちの時分及び動態情報は、それぞれ、図13の「×」293a、「12:02」293b及び「往路」293cに対応している。以下同様に、図10のレコード281c、281d、282a、282b及び282cは、それぞれ、図13の符号294a〜c、295a〜c、296a〜c、297a〜c及び298a〜cに対応している。
【0064】
第4に、受信した対象レコードのすべてのレコードに基づき、車両を示すアイコンを、走行ルート表示画面61に重ねて表示する。この段階での走行ルート表示画面61は、図14に示した通りである。図14においては、車両IDが「救001」である救急車両を示すアイコン299aが、図13の「×」292aに置き換わって表示されている。同じ救急車両を示すアイコン299bが、図13の「×」293aに置き換わって表示されている。同様に、車両IDが「消001」である消防車両を示すアイコン299cが、図13の「×」296aに置き換わって表示されている。同じ消防車両を示すアイコン299dが、図13の「×」297aに置き換わって表示されている。
アイコンは、すべての登録時刻について一度に表示されてもよいし、登録時刻が早い順に、1ずつ表示されてもよい(図14の例)。そして、ある登録時刻のアイコンが表示されてから次の登録時刻のアイコンが表示されるまでの時間は、両者の登録時刻の差分に基づいて決定されてもよい。
【0065】
なお、前記したような、対象レコードの数だけ離散的にアイコンを表示する方法に替わって、アイコンを動的に表示してもよい。例えば、「車両が1分間に進む実際の道路上の距離を、対応する画面上では1秒でアイコンが進む」のような換算率を設定しておき、当該率で、アイコンを移動させてもよい。このようにすると、走行ルート表示画面61上では、2秒間の間に、救急車両を示すアイコンは符号299aの位置から符号299bの位置へ移動し、消防車両を示すアイコンは符号299cの位置から符号299dの位置へ移動する。
以上の処理の後、走行ルート表示処理を終了する。
【0066】
なお、前記の実施形態では、Webサーバ3はユーザ端末装置5に、対象レコード、背景レコード及び動画表示用のアプリケーションを渡し切ることとした。しかしながら、Webサーバ3とユーザ端末装置5との間で連続的に通信を確保しながら、Webサーバ3の表示処理部54が主体となって、前記ステップS411の処理(走行ルート表示画面61をユーザ端末装置5の出力装置に表示させる)を実行してもよい。
【0067】
走行ルート表示画面61(図14)視認したユーザ(管理者)は、例えば、救急車両を示すアイコンの移動速度、消防署1から災害現場へ至る道路の幅員等から、以下のことを容易に理解できる。すなわち、「もし、当該災害現場の付近で災害が頻発し、消防署1の支援を受けざるを得ないのであれば、消防署1から当該災害現場へ至る道路の幅員を拡大することが有効である」と言うことである。
【0068】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 消防車両走行ルート管理システム
2 データ格納サーバ
3 Webサーバ
4 車両端末装置
5 ユーザ端末装置
11、41 中央制御装置(制御部)
12、42 主記憶装置(記憶部)
13、43 補助記憶装置(記憶部)
14、44 通信装置
15、45 入力装置
16、46 出力装置
21 位置情報管理部
22 道路情報管理部
31 位置情報履歴データ
32 道路情報データ
51 位置情報・道路情報取得部
52 マッチング部
53 ルート補完処理部
54 表示処理部
61 走行ルート表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の場所に向かい走行する車両に関連付けて前記車両の位置を時系列で記憶した車両位置情報と、
前記車両が走行し得る道路に関連付けて前記道路の位置を記憶した道路位置情報と、
に対しアクセス可能な車両走行ルート表示装置であって、
前記車両の位置に基づいて、前記道路位置情報から前記車両が走行する道路を抽出し、
前記抽出した道路を表示し、
前記表示した道路に沿って、前記車両を示す図形を時系列で移動させて表示する制御部を有すること、
を特徴とする車両走行ルート表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記抽出した道路が連続するか否かを判断し、
連続しない場合は、連続しない区間の前後の道路の位置に基づき、前記連続しない区間の道路を推定すること、
を特徴とする請求項1に記載の車両走行ルート表示装置。
【請求項3】
前記車両位置情報は、
前記車両に関連付けて、前記車両の活動状況を示す動態情報を記憶しており、
前記制御部は、
前記車両を示す図形に対応付けて、前記動態情報を表示すること、
を特徴とする請求項1に記載の車両走行ルート表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記車両を示す図形を動画として表示すること、
を特徴とする請求項1に記載の車両走行ルート表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−118700(P2012−118700A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267063(P2010−267063)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】