説明

車両走行制御装置

【課題】交差点や分岐点でもカーブ情報を用いて適切な走行制御を行うことができる車両走行制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】車両走行制御装置1であって、走行路前方のカーブに関するパラメータを検出するカーブパラメータ検出手段31aと、カーブパラメータ検出手段31aで検出したカーブパラメータ(カーブRなど)に基づいて自車の走行状態を制御する走行制御手段20,21,22と、走行路前方の道路形状(交差点、分岐点など)を検出する道路形状検出手段10と、道路形状検出手段10で検出した道路形状に基づいてカーブパラメータの走行制御への影響度を設定する影響度設定手段31aとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブRを用いて車両の走行制御を行う車両走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行制御装置には、自車の走行路前方のカーブRに基づいて走行制御を行うものがある。例えば、衝突警報装置では、カーブRに基づいて自車前方に存在する障害物(歩行者、車両など)を検出し、障害物との衝突の可能性を判定する。車間距離制御装置では、カーブRに基づいて自車前方に存在する先行車を推定する。
【0003】
カーブRを推定する方法としては、例えば、ミリ波レーダなどによるレーダ情報に基づいて検出した前方に存在する路側物(ガードレールのポールなど)を利用する方法、カメラによる画像情報に基づいて認識した一対の白線(車線)を利用する方法、ナビゲーションシステムのナビ情報(ノードとリンク情報など)を利用する方法がある。
【特許文献1】特開2001−84499号公報
【特許文献2】特開2006−98407号公報
【特許文献3】特開2003−256999号公報
【特許文献4】特開2004−355474号公報
【特許文献5】特開平8−194896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交差点や分岐点では、カーブRの推定精度が低下する虞がある。例えば、交差点の場合、白線や路側物も途切れるので、カーブRを高精度に推定できない。また、分岐点の場合、自車の走行する側の道路が分らないときには、間違ったカーブRを推定する。したがって、上記した各装置では、交差点や分岐点において推定したカーブRを用いて適切な走行制御をできない場合がある。
【0005】
特許文献1に記載のカーブ進入制御装置では、ナビゲーションシステムの道路情報を用いて前方カーブに対する警報制御や減速制御を行うが、前方カーブにおいて交差点がある場合に運転者の直進の意志があると判定したときには警報制御や減速制御を中止する。しかし、上記したような衝突警報装置、車間距離制御装置では、交差点などで制御を一時的に中止した場合、適切な運転支援を行うことができない。例えば、交差点内に障害物が存在する場合、適切なタイミングで警報出力やブレーキ制御などを行う必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、交差点や分岐点などでもカーブ情報を用いて適切な走行制御を行うことができる車両走行制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両走行制御装置は、走行路前方のカーブに関するパラメータを検出するカーブパラメータ検出手段と、カーブパラメータ検出手段で検出したカーブパラメータに基づいて自車の走行状態を制御する走行制御手段と、走行路前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、道路形状検出手段で検出した道路形状に基づいてカーブパラメータの走行制御への影響度を設定する影響度設定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この車両走行制御装置では、カーブパラメータ検出手段により走行路前方のカーブパラメータ(例えば、カーブR、カーブRの逆数)を検出する。カーブパラメータを検出する場合、道路形状によって検出精度が変わる。そこで、車両走行制御装置では、道路形状検出手段により走行路前方の道路形状(例えば、交差点、分岐点、高速道路)を検出し、影響度設定手段により道路形状に基づいてカーブパラメータの走行制御への影響度を設定する。そして、車両走行制御装置では、走行制御手段により影響度に応じてカーブパラメータに基づいて自車の走行状態を制御する。このようにカーブパラメータの走行制御への影響度を設定することにより、例えば、交差点などでカーブパラメータの検出精度が低下すると予測される場合にはカーブパラメータの走行制御への影響度合いを小さくすることができ、高速道路などでカーブパラメータの検出精度が向上すると予測される場合にはカーブパラメータの走行制御への影響度合いを大きくする(あるいは、通常度合いとする)ことができる。したがって、この車両走行制御装置では、どのような道路形状でもカーブパラメータを用いて適切な走行制御を継続して行うことができる。
【0009】
なお、走行制御手段での走行制御には、駆動力制御、制動力制御、操舵制御などの通常の走行に関する各種制御の他に、車両内における警報制御、表示制御、音声制御、シートベルト制御、ヘッドレスト制御などの各種制御も含むものとする。
【0010】
本発明の上記車両走行制御装置では、影響度設定手段は、道路形状検出手段で検出した道路形状が交差点又は分岐点の場合にカーブパラメータの走行制御への影響度を小さくすると好適である。
【0011】
交差点又は分岐点ではカーブパラメータの検出精度が低下すると予測される。そこで、車両走行制御装置では、道路形状検出手段で交差点又は分岐点を検出した場合、影響度設定手段によりカーブパラメータの走行制御への影響度を小さくする。これによって、車両走行制御装置では、交差点や分岐点でも、走行制御を中止することなく、カーブパラメータの制御への影響を落としつつ走行制御を継続して行うことができる。
【0012】
本発明の上記車両走行制御装置では、影響度設定手段は、カーブパラメータ検出手段によるカーブパラメータの検出方法を変更する検出方法変更手段を有する構成としてもよい。
【0013】
この車両走行制御装置では、道路形状検出手段で走行路前方の道路形状を検出すると、検出方法変更手段により道路形状に基づいてカーブパラメータの検出方法を変更し、各検出方法でカーブパラメータを検出する。これによって、道路形状に応じて走行制御への影響度を変えたカーブパラメータを検出できる。
【0014】
本発明の上記車両走行制御装置では、カーブパラメータ検出手段は、前回までに検出したカーブパラメータを加味して今回のカーブパラメータを検出し、検出方法変更手段は、カーブパラメータ検出手段で前回までに検出したカーブパラメータの加味度合いを変更する構成としてもよい。
【0015】
この車両走行制御装置では、カーブパラメータ検出手段により、前回までに検出したカーブパラメータを所定の割合で保持し、前回までに検出したカーブパラメータを加味して今回のカーブパラメータを検出している。車両走行制御装置では、道路形状検出手段で走行路前方の道路形状を検出すると、検出方法変更手段により道路形状に基づいて前回までに検出したカーブパラメータの加味度合いを変更し、その加味度合いによって検出方法を変更する。例えば、走行制御への影響度を小さくする場合、加味度合いを大きくし、前回までに検出したカーブパラメータを保持され易くする。これによって、今回のカーブパラメータにおいて、今回瞬時的に検出されたカーブパラメータの影響度合いが低下する。
【0016】
本発明の上記車両走行制御装置では、影響度設定手段は、道路形状検出手段で検出した道路形状が交差点又は分岐点の場合にカーブパラメータ検出手段で検出したカーブパラメータの信頼度を下げると好適である。
【0017】
この車両走行制御装置では、カーブパラメータ検出手段により走行路前方のカーブパラメータを検出すると、影響度設定手段によりそのカーブパラメータに対する信頼度を求める。信頼度は、カーブパラメータの検出精度が高いと高くなり、検出精度が低いと低くなる。交差点又は分岐点ではカーブパラメータの検出精度が低下すると予測されるので、車両走行制御装置では、道路形状検出手段で交差点又は分岐点を検出した場合、影響度設定手段によりカーブパラメータの信頼度を下げる。そして、車両走行制御装置では、走行制御手段によりその信頼度に応じてカーブパラメータに基づいて自車の走行状態を制御する。これによって、車両走行制御装置では、交差点や分岐点でも、走行制御を中止することなく、カーブパラメータの制御への影響を落としつつ走行制御を継続して行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、どのような道路形状でもカーブパラメータを用いて適切な走行制御を継続して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両走行制御装置の実施の形態を説明する。
【0020】
本実施の形態では、本発明に係る車両走行制御装置を、衝突警報装置、車間距離制御装置、レーン逸脱警報/車線維持支援装置を含む運転支援システムに適用する。本実施の形態に係る運転支援システムは、ナビ情報、走行路前方の画像情報、走行路前方のレーダ情報を基づいて走行路前方のカーブRを推定し、カーブRを用いて障害物情報、先行車情報、レーン情報を認識し、認識した各情報に基づいて衝突警報、車間距離制御、レーン逸脱警報/車線維持支援を行う。本実施の形態には、カーブRの各運転支援制御への影響度の設定方法の違いによって2つの形態があり、第1の実施の形態が前回のカーブRの加味度合い(保持度合い)によって影響度を設定する形態であり、第2の実施の形態がカーブRの信頼度によって影響度を設定する形態である。
【0021】
図1を参照して、第1の実施の形態に係る運転支援システム1について説明する。図1は、本実施の形態に係る運転支援システムの構成図である。
【0022】
運転支援システム1では、時系列でフィルタ処理してカーブRを推定するために、前回のカーブRaと今回の瞬時カーブRを用いて今回のカーブRaを演算する。特に、運転支援システム1では、前方カーブRの推定精度の低下する交差点や分岐点においても適切な運転支援制御を継続して行うために、交差点や分岐点を検出すると前回のカーブRaの保持度合いを大きくする。運転支援システム1は、ナビゲーションシステム10、前方カメラ11、前方ミリ波レーダ12、衝突警報装置20、車間距離制御装置[Electronic Control Unit]21、レーン逸脱警報/車線維持支援装置22及び認識用ECU31を備えている。
【0023】
なお、第1の実施の形態では、認識用ECU31のカーブR推定部31aが特許請求の範囲に記載するカーブパラメータ検出手段、影響度設定手段及び検出方法変更手段に相当し、衝突警報装置20、車間距離制御装置21及びレーン逸脱警報/車線維持支援装置22が特許請求の範囲に記載する走行制御手段に相当し、ナビゲーションシステム10が特許請求の範囲に記載する道路形状検出手段に相当する。
【0024】
ナビゲーションシステム10は、自車の現在位置や走行方向の検出及び目的地までの経路案内などを行うシステムである。特に、ナビゲーションシステム10では、自車の現在位置から走行路前方のノードとリンク情報、自車の現在位置から走行路前方の交差点及び分岐点情報、自車の前方に交差点又は分岐点が存在する場合には現在位置から交差点又は分岐点までの距離情報などからなるナビ情報を認識用ECU31に送信する。なお、ナビゲーションシステム10においてノードとリンクからカーブRを推定している場合、ノードとリンク情報の代わりにカーブRをナビ情報として送信する。
【0025】
前方カメラ11は、自車の前方を撮像するためのカメラである。前方カメラ11は、自車の前側の中央に取り付けられる。前方カメラ11では、自車の前方を撮像し、画像情報を認識用ECU31に送信する。
【0026】
前方ミリ波レーダ12は、ミリ波を利用して自車の前方に存在する物体を検出するためのレーダである。前方ミリ波レーダ12は、自車の前側の中央に取り付けられる。前方ミリ波レーダ12では、ミリ波を水平面内でスキャンしながら自車から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、前方ミリ波レーダ12では、そのミリ波の送受信データをレーダ情報として認識用ECU31に送信する。
【0027】
衝突警報装置20は、自車の前方の障害物(歩行者、車両など)との衝突の可能性が高くなると各種警報を行う。衝突警報装置20では、障害物情報認識部31bで認識した障害物の情報を用いて、自車の前方に障害物が存在する場合には自車が障害物に衝突する可能性が高くなると警報出力制御や警報ブレーキ制御を行う。
【0028】
車間距離制御装置21は、自車と前方の先行車との車間距離を制御する。車間距離制御装置21では、先行車情報認識部31cで認識した先行車の情報を用いて、自車の前方に先行車が存在する場合には自車と先行車との車間距離が目標車間距離になるように車速制御を行い、先行車が存在しない場合には自車が目標車速を維持するように車速制御を行う。
【0029】
レーン逸脱警報/車線維持支援装置22は、自車が走行中の車線内を走行するように操舵制御するとともに、車線から逸脱する可能性が高くなると各種制御を行う。レーン逸脱警報/車線維持支援装置22では、レーン情報認識部31dで認識したレーン(車線)の情報を用いて、自車が走行中の車線(一対の白線)の中心付近を走行するように操舵制御を行い、自車が車線から逸脱する可能性が高くなると警報出力を行う。
【0030】
認識用ECU31は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなり、衝突警報装置20、車間距離制御装置21、レーン逸脱警報/車線維持支援装置22で用いる各情報を認識するためのECUである。認識用ECU31では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることによってカーブR推定部31a、障害物情報認識部31b、先行車情報認識部31c及びレーン情報認識部31dが構成される。
【0031】
カーブR推定部31aでは、ナビゲーションシステム10からのナビ情報、前方カメラ11からの画像情報、前方ミリ波レーダ12からのレーダ情報を取得する。そして、カーブR推定部31aでは、レーダ情報に基づいて自車の走行路に沿って存在する路側物(ガードレールのポールなど)を検出する。また、カーブR推定部31aでは、画像情報に基づいて左右一対の白線(車線)を検出する。さらに、カーブR推定部31aでは、一定時間毎に、ナビ情報における自車の走行路前方のノードとリンク情報、路側物情報、白線情報に基づいて自車の走行路前方の瞬時カーブRの逆数IR(=1/R)を推定する。この推定方法については、どのような方法でもよく、従来の方法を用いる。
【0032】
カーブR推定部31aでは、ナビ情報に基づいて自車の走行路前方に交差点又は分岐点が存在するか否かを判断する。そして、カーブR推定部31aでは、交差点又は分岐点が存在しない場合にはカーブR演算時の係数CにC1を設定し、交差点又は分岐点が存在する場合にはカーブR演算時の係数CにC2を設定する。
【0033】
そして、カーブR推定部31aでは、カーブR演算時の係数C、前回求めたカーブRの逆数IRa(i−1)、今回推定した瞬時カーブRの逆数IRを用いて、式(1)により今回のカーブRの逆数IRa(i)を演算する。さらに、カーブR推定部31aでは、今回のカーブRの逆数IRa(i)を用いて、式(2)により今回のカーブRa(i)を演算する。
【0034】
【数1】

【0035】
式(1)、式(2)から判るように、カーブRの今回値は、カーブRを時系列でフィルタ処理するために今回の瞬時値と前回値から求められ、カーブR演算時の係数Cによって今回の瞬時値と前回値との加味度合いを変えている。
【0036】
カーブR演算時の係数Cは、今回のカーブRa(i)における今回の瞬時カーブRの加味度合いを決める係数であるとともに、前回のカーブRa(i−1)の保持度合い(加味度合い)を決める係数である。カーブR演算時の係数Cが小さい値ほど、今回のカーブRa(i)における前回のカーブRa(i−1)の加味度合いが大きくなる(保持されやすくなる)とともに今回の瞬時カーブRの加味度合いが小さくなる。カーブR演算時の係数Cは、0以上1未満の値であり、C2<C1である。C1,C2は、実験などによって予め設定される。
【0037】
交差点の場合、白線や路側物も途切れるので、これらの情報から瞬時カーブRを推定できない。また、分岐点の場合、自車の走行する側の道路が分らないときには、間違った瞬時カーブRを推定する虞がある。したがって、交差点や分岐点では、瞬時カーブRの推定精度が低下する。そこで、自車前方に交差点又は分岐点が存在する場合、今回のカーブRa(i)における今回の瞬時カーブRの加味度合いを小さくし、前回のカーブRa(i−1)の加味度合いを大きくする。つまり、交差点や分岐点では、瞬時カーブRの信頼度が低下するので、瞬時カーブRの影響度を小さくする。
【0038】
障害物情報認識部31bでは、レーダ情報及び画像情報に基づいて自車の前方に存在する障害物を認識し、障害物が存在する場合には自車と障害物との距離、障害物の方向、障害物との相対速度などを演算する。そして、障害物情報認識部31bでは、その障害物の有無情報、距離情報、方向情報、相対速度情報などを障害物情報として衝突警報装置20に送信する。特に、障害物情報認識部31bでは、カーブR推定部31aで推定したカーブRaを考慮し、自車の走行路前方に障害物が存在するか否かを判定する。
【0039】
先行車情報認識部31cでは、レーダ情報に基づいて自車の前方に存在する先行車を認識し、先行車が存在する場合には自車と先行車との距離、先行車との相対速度などを演算する。そして、先行車情報認識部31cでは、その先行車の有無情報、距離情報、相対速度情報などを先行車情報として車間距離制御装置21に送信する。特に、先行車情報認識部31cでは、カーブR推定部31aで推定したカーブRaを考慮し、自車の走行路前方に先行車が存在するか否かを判定する。
【0040】
レーン情報認識部31dでは、画像情報に基づいて左右一対の白線を検出し、車線中心からの自車のオフセット、車線中心に対する自車のヨー角などを演算する。そして、レーン情報認識部31dでは、その白線情報、オフセット、ヨー角などをレーン情報としてレーン逸脱警報/車線維持支援装置22に送信する。特に、レーン情報認識部31dでは、カーブR推定部31aで推定したカーブRaを考慮し、自車が走行する車線の白線を認識する。なお、画像情報に基づいて左右一対の白線の検出処理については、カーブR推定部31aでも行う処理なので、どちらか一方で行えばよい。
【0041】
図1を参照して、運転支援システム1におけるカーブR推定部31aにおける動作を図2のフローチャートに沿って説明する。図2は、第1の実施の形態に係るカーブR推定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
ナビゲーションシステム10では、ナビ情報を認識用ECU31に送信している。前方カメラ11では、自車の前方を撮像し、画像情報を認識用ECU31に送信している。前方ミリ波レーダ12では、自車の前方にミリ波を送信するとともに反射したミリ波を受信し、レーダ情報を認識用ECU31に送信している。
【0043】
一定時間(認識用ECU31における演算周期)毎に、カーブR推定部31aでは、ナビゲーションシステム10からナビ情報を受信し(S10)、前方カメラ11から画像情報を受信し(S11)、前方ミリ波レーダ12からレーダ情報を受信する(S12)。そして、カーブR推定部31aでは、ナビ情報、画像情報、レーダ情報に基づいて自車前方の瞬時カーブRの逆数IRを推定する(S13)。
【0044】
カーブR推定部31aでは、ナビ情報から自車前方の交差点又は分岐点の有無を検出する(S14)。そして、カーブR推定部31aでは、カーブR演算時の係数CにC1を設定する(S15)。さらに、カーブR推定部31aでは、S14での検出結果に基づいて自車前方が交差点又は分岐点か否かを判定する(S16)。S16にて自車前方が交差点又は分岐点と判定した場合、カーブR推定部31aでは、カーブR演算時の係数CにC2(<C1)を設定する(S17)。
【0045】
そして、カーブR推定部31aでは、係数C、前回のカーブRの逆数IRa(i−1)、瞬時カーブRの逆数IRを用いて、式(1)により今回のカーブRの逆数IRa(i)を演算する(S18)。さらに、カーブR推定部31aでは、今回のカーブRの逆数IRa(i)を用いて、式(2)により今回のカーブRa(i)を演算する(S18)。そして、カーブR推定部31aでは、今回のカーブRa(i)を各認識部31b,31c,31dに出力する。
【0046】
カーブR推定部31aでは、一定時間毎に、上記したS10〜S18の処理を繰り返し行う。
【0047】
この運転支援システム1によれば、自車前方が交差点又は分岐点の場合には今回のカーブRa(i)における今回の瞬時カーブRの影響を小さくして前回のカーブRa(i−1)の保持度合いを大きくすることにより、カーブRの推定精度の低下する交差点や分岐点でも適切なカーブRを継続して求めることができる。その結果、交差点や分岐点でも、そのカーブRを用いて障害物情報、先行車情報、レーン情報も継続して認識でき、衝突警報、車間距離制御、レーン逸脱警報/車線維持支援も継続して行うことができる。
【0048】
運転支援システム1では、カーブR演算時の係数CをC1とC2で変えることにより、今回の瞬時カーブRの影響度合い及び前回のカーブRa(i−1)の保持度合いを簡単に変えることができる。さらに、運転支援システム1では、自車前方が交差点又は分岐点の場合には係数CにC2を設定するだけで、今回のカーブRa(i)における瞬時カーブRの影響度合いを簡単に小さくでき、ひいては、瞬時カーブRの各運転支援制御への影響度合いを小さくできる。
【0049】
図1を参照して、第2の実施の形態に係る運転支援システム2について説明する。運転支援システム2では、第1の実施の形態に係る運転支援システム1における構成と同様の構成について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
運転支援システム2では、カーブRを推定するとともにその推定したカーブRの信頼度を演算し、信頼度を考慮してカーブRを各運転支援制御で利用する。運転支援システム2では、時系列でフィルタ処理して信頼度を求めるために、前回の信頼度Saと今回の瞬時信頼度Sを用いて今回の信頼度Saを演算する。特に、運転支援システム2では、前方カーブRの推定精度の低下する交差点や分岐点においても適切な運転支援制御を継続するために、交差点や分岐点を検出すると前回の信頼度Saの保持度合いを大きくする。運転支援システム2は、ナビゲーションシステム10、前方カメラ11、前方ミリ波レーダ12、衝突警報装置20、車間距離制御装置21、レーン逸脱警報/車線維持支援装置22及び認識用ECU32を備えている。
【0051】
なお、第2の実施の形態では、認識用ECU32のカーブR推定部32aが特許請求の範囲に記載するカーブパラメータ検出手段及び影響度設定手段に相当する。
【0052】
認識用ECU32は、第1の実施の形態に係る認識用ECU31と同様のECUであり、認識用ECU31と比較するとカーブR推定部32aにおける処理だけが異なる。
【0053】
カーブR推定部32aでは、第1の実施の形態に係るカーブR推定部31aと同様に、ナビ情報、画像情報、レーダ情報を取得する。そして、カーブR推定部32aでは、ナビ情報、レーダ情報、画像情報に基づいてカーブRを推定する。この推定方法については、どのような方法でもよく、例えば、カーブR推定部31aと同様の方法を用いる。
【0054】
また、カーブR推定部32aでは、ナビ情報、レーダ情報、画像情報に基づいて推定したカーブRの瞬時信頼度Sを演算する。この演算方法としては、どのような方法でもよく、従来の方法を用いる。例えば、ナビ情報の場合、ナビゲーションシステムにおいて自車位置精度やマップマッチングの一致度合いなどから信頼度を演算し、ナビゲーションシステムから送信された信頼度をそのまま用いる。レーダ情報の場合、カーブRの推定に利用した路側体などの物標数に比例した信頼度を演算する。画像情報の場合、カーブRの推定に利用した白線のエッジ数に比例した信頼度を演算する。
【0055】
カーブR推定部32aでは、ナビ情報に基づいて自車の走行路前方に交差点又は分岐点が存在するか否かを判断する。そして、カーブR推定部32aでは、交差点又は分岐点が存在しない場合には信頼度演算時の係数CにC3を設定し、交差点又は分岐点が存在する場合には信頼度演算時の係数CにC4を設定するとともに瞬時信頼度SにS0を設定する。
【0056】
カーブR推定部32aでは、信頼度演算時の係数C、前回求めた信頼度Sa(i−1)、今回の瞬時信頼度Sを用いて、式(3)により今回のカーブRに対する信頼度Sa(i)を演算する。
【0057】
【数2】

【0058】
式(3)から判るように、信頼度の今回値は、信頼度を時系列でフィルタ処理するために今回の瞬時値と前回値から求められ、信頼度演算時の係数Cによって今回の瞬時値と前回値との加味度合いを変えている。
【0059】
信頼度演算時の係数Cは、今回の信頼度Sa(i)における今回の瞬時信頼度Sの加味度合いを決める係数であるとともに、前回の信頼度Sa(i−1)の保持度合い(加味度合い)を決める係数である。信頼度演算時の係数Cが小さい値ほど、今回の信頼度Sa(i)における前回の信頼度Sa(i−1)の加味度合いが大きくなる(保持されやすくなる)とともに今回の瞬時信頼度Sの加味度合いが小さくなる。信頼度演算時の係数Cは、0以上1未満の値であり、C4<C3である。C3,C4は、実験などによって予め設定される。
【0060】
第1の実施の形態で説明したように、交差点や分岐点では、瞬時カーブRの推定精度が低下し、瞬時カーブRの信頼度が低下する。そこで、その瞬時信頼度Sを小さい値であるS0とするとともに信頼度演算時の係数Cも小さい値であるC4とし、今回の信頼度Sa(i)における今回の瞬時信頼度Sの加味度合いを小さくし、前回の信頼度Sa(i−1)の加味度合いを大きくする。信頼度は、0〜100%(あるいは、0〜1)であり、値が大きいほどカーブRの推定精度が高いことを示す。S0は、信頼度として小さい値であり、実験などによって予め設定される。
【0061】
なお、衝突警報装置20、車間距離制御装置21、レーン逸脱警報/車線維持支援装置22では、カーブRの信頼度Saを取得すると、例えば、以下のような処理を行う。衝突警報装置20では、信頼度Saが所定値以下の場合には自車前方を「最急カーブ路」とみなし、不要作動し難い側になる。車間距離制御装置21、レーン逸脱警報/車線維持支援装置22では、信頼度Saが所定値以下の場合には自車前方を「直線路」とみなし、誤作動し難い側になる。
【0062】
図1を参照して、運転支援システム2におけるカーブR推定部32aにおける動作を図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、第2の実施の形態に係るカーブR推定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
ナビゲーションシステム10では、ナビ情報を認識用ECU32に送信している。前方カメラ11では、自車の前方を撮像し、画像情報を認識用ECU32に送信している。前方ミリ波レーダ12では、自車の前方にミリ波を送信するとともに反射したミリ波を受信し、レーダ情報を認識用ECU32に送信している。
【0064】
一定時間(認識用ECU32における演算周期)毎に、カーブR推定部32aでは、ナビゲーションシステム10からナビ情報を受信し(S20)、前方カメラ11から画像情報を受信し(S21)、前方ミリ波レーダ12からレーダ情報を受信する(S22)。そして、カーブR推定部32aでは、ナビ情報、画像情報、レーダ情報に基づいて自車前方のカーブRを推定する(S23)。また、カーブR推定部32aでは、ナビ情報、画像情報、レーダ情報に基づいて推定したカーブRの瞬時信頼度Sを演算する(S24)。
【0065】
カーブR推定部32aでは、ナビ情報から自車前方の交差点又は分岐点の有無を検出する(S25)。そして、カーブR推定部32aでは、信頼度演算時の係数CにC3を設定する(S26)。さらに、カーブR推定部32aでは、S25での検出結果に基づいて自車前方が交差点又は分岐点か否かを判定する(S27)。S27にて自車前方が交差点又は分岐点と判定した場合、カーブR推定部32aでは、信頼度演算時の係数CにC4(<C3)を設定するとともに瞬時信頼度SにS0を設定する(S28)。
【0066】
そして、カーブR推定部32aでは、係数C、前回の信頼度Sa(i−1)、瞬時信頼度Sを用いて、式(3)により今回の信頼度Sa(i)を演算する(S29)。そして、カーブR推定部32aでは、今回のカーブRと今回の信頼度Sa(i)を各認識部31b,31c,31dに出力する。
【0067】
カーブR推定部32aでは、一定時間毎に、上記したS20〜S29の処理を繰り返し行う。
【0068】
この運転支援システム2によれば、自車前方が交差点又は分岐点の場合には今回の信頼度Sa(i)における今回の瞬時信頼度Sの影響を小さくして前回の信頼度Sa(i−1)の保持度合いを大きくすることにより、カーブRの推定精度の低下する交差点や分岐点における適切な信頼度を求めることができる。その結果、交差点や分岐点でも、その信頼度を用いて衝突警報、車間距離制御、レーン逸脱警報/車線維持支援を継続して行うことができる。
【0069】
運転支援システム2では、信頼度演算時の係数CをC3とC4で変えることにより、今回の瞬時信頼度Sの加味度合い及び前回の信頼度Sa(i−1)の保持度合いを簡単に変えることができる。さらに、運転支援システム2では、自車前方が交差点又は分岐点の場合には係数CにC4を設定しかつ瞬時信頼度SにS0を設定するだけで、瞬時カーブRの各運転支援制御への影響度合いを小さくできる。
【0070】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0071】
例えば、本実施の形態では衝突警報装置、車間距離制御装置、レーン逸脱警報/車線維持支援装置を含む運転支援システムに適用したが、これらの装置にいずれかの装置だけに適用してもよいし、あるいは、カーブRを用いる他の車両走行制御装置に適用してもよい。
【0072】
また、本実施の形態では前方ミリ波レーダのレーダ情報、前方カメラによる画像情報、ナビゲーションシステムのナビ情報を用いてカーブRを推定する構成としたが、これらのいずれか1つ又は2つの情報を用いてカーブRを推定する構成としてもよいし、あるいは、他の情報を用いてカーブRを推定する構成としてもよい。
【0073】
また、本実施の形態ではナビ情報を用いて交差点や分岐点を検出する構成としたが、インフラ情報などの他の情報から交差点や分岐点を検出する構成としてもよい。
【0074】
また、本実施の形態では交差点や分岐点を検出した場合にはカーブRの走行制御への影響度を通常より低くする構成としたが、カーブパラメータの検出に影響のある他の道路形状がある場合についてはその道路形状に基づいて走行制御への影響度を設定する構成としてもよい。例えば、高速道路ではカーブRを推定し易いので、影響度を通常より高くするようにしてもよい。
【0075】
また、第1の実施の形態ではカーブR演算時の係数CをC1(通常値)とC2(通常値より小さい値)の2段階とし、瞬時カーブRの影響度合い(前回のカーブRa(i−1)の保持度合い)を2段階としたが、3段階以上で設定してもよい。例えば、交差点と分岐点とでカーブRの推定精度が異なる場合には交差点と分岐点で異なる係数値を設定してもよいし、あるいは、交差点の大きさなどでカーブRの推定精度が変わる場合には交差点の大きさなどに応じて係数値を複数設定してもよい。同様に、第2の実施の形態では信頼度演算時の係数CをC3(通常値)とC4(通常値より小さい値)の2段階としたが、3段階以上で設定してもよい。また、交差点又は分岐点の場合の瞬時信頼度Sについても、S0(一定の小さな値)の1段階ではなく、複数段階で設定してもよいし、あるいは、演算した瞬時信頼度Sに1未満の値を乗算した値として小さくしてもよい。
【0076】
また、第2の実施の形態では交差点又は分岐点の場合にはカーブRの信頼度を演算するための瞬時信頼度と信頼度演算時の係数Cの両方を変える構成としたが、どちらか一方だけを変えるようにしてもよい。
【0077】
また、交差点又は分岐点の場合にはカーブRの演算式(カーブR演算時の係数C)と信頼度の演算式(信頼度演算時の係数Cと瞬時信頼度)の両方を変えるようにしてもよい。
【0078】
また、ナビゲーションシステムでは、経路案内中の場合、自車が分岐点や交差点において進行する方向が判っている。しかし、経路案内中でない場合、自車が分岐点や交差点において進行する方向が判っていない。そのため、経路案内中でない場合の方がカーブRの推定精度が低下する虞がある。そこで、経路案内中でない場合、経路案内中の場合より、第1の実施の形態におけるカーブ演算値の係数Cの値を小さくしたり、第2の実施の形態における信頼度演算時の係数Cや瞬時信頼度を小さくし、カーブRの走行制御への影響度をより低下させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施の形態に係る運転支援システムの構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るカーブR推定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第2の実施の形態に係るカーブR推定部の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1,2…運転支援システム、10…ナビゲーションシステム、11…前方カメラ、12…前方ミリ波レーダ、20…衝突警報装置、21…車間距離制御装置、22…レーン逸脱警報/車線維持支援装置、31,32…認識用ECU、31a,32a…カーブR推定部、31b…障害物情報認識部、31c…先行車情報認識部、31d…レーン情報認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路前方のカーブに関するパラメータを検出するカーブパラメータ検出手段と、
前記カーブパラメータ検出手段で検出したカーブパラメータに基づいて自車の走行状態を制御する走行制御手段と、
走行路前方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、
前記道路形状検出手段で検出した道路形状に基づいてカーブパラメータの走行制御への影響度を設定する影響度設定手段と
を備えることを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
前記影響度設定手段は、前記道路形状検出手段で検出した道路形状が交差点又は分岐点の場合にカーブパラメータの走行制御への影響度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載する車両走行制御装置。
【請求項3】
前記影響度設定手段は、前記カーブパラメータ検出手段によるカーブパラメータの検出方法を変更する検出方法変更手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する車両走行制御装置。
【請求項4】
前記カーブパラメータ検出手段は、前回までに検出したカーブパラメータを加味して今回のカーブパラメータを検出し、
前記検出方法変更手段は、前記カーブパラメータ検出手段で前回までに検出したカーブパラメータの加味度合いを変更することを特徴とする請求項3に記載する車両走行制御装置。
【請求項5】
前記影響度設定手段は、前記道路形状検出手段で検出した道路形状が交差点又は分岐点の場合に前記カーブパラメータ検出手段で検出したカーブパラメータの信頼度を下げることを特徴とする請求項1に記載する車両走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−1157(P2009−1157A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164040(P2007−164040)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】