説明

車両走行支援装置、車両、車両走行支援プログラム

【課題】車両が走行中の道路において複数の並列する人工溝の有無を高精度で認識する。
【解決手段】車両走行支援装置によれば、カメラを通じて得られた画像において、実空間における車両の第1予測走行領域を表わす指定画像領域QAの横方向の濃淡変化態様が高速フーリエ変換処理の実行により生成された周波数スペクトルとして認識される。車両が走行している道路に複数の並列する人工溝Gが設けられている場合、指定画像領域QAにはその横方向に特徴的な濃淡変化態様(スペクトルにおけるピーク)が現われる。したがって、この濃淡変化態様に基づき、第1予測走行領域における複数の並列する人工溝Gの有無が高精度で認識されうる。さらに、道路に複数の並列する人工溝Gが存在しないと認識されたことを要件としてエッジ抽出処理およびハフ変換処理の実行結果に基づいて車両の第2予測走行領域における積雪の有無等、道路の状態が認識される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた画像に基づいてこの車両の走行を支援する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
道路に向けて投影されたレーザ光の輝点パターンを撮像し、撮像画像に基づいてこの道路に存在する溝を検出する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平05−201298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、道路に水はけ用の溝等、人工溝が等間隔に並列されて設けられている場合、車載カメラにより撮像された画像においてこの溝の部分に偽色が発生する可能性がある。このため、この画像が処理されることにより、道路に多数の轍が存在する等、道路の状態が誤認識されてしまう可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、車両が走行中の道路において複数の並列する人工溝の有無を高精度で認識することができる装置等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両走行支援装置は、車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた前記車両の進行方向の状況を表わす画像に基づき、前記車両の走行環境を認識する車両走行支援装置であって、前記画像において実空間における前記車両の第1予測走行領域を表わす指定画像領域における横方向の濃淡変化態様に基づき、前記第1予測走行領域における複数の並列する人工溝の有無を認識する第1処理要素と、前記画像においてエッジを顕在化するエッジ抽出処理を実行することによりエッジ画像を生成し、前記エッジ画像に対してハフ変換処理を実行し、前記ハフ変換処理の実行結果に基づき、前記車両が走行中の道路の状態を認識する第2処理要素とを備え、前記第2処理要素が、前記第1処理要素により前記複数の人工溝がないと認識されたことを要件として前記道路の状態を認識することを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両走行支援装置によれば、撮像装置を通じて得られた画像において、実空間における車両の第1予測走行領域を表わす指定画像領域の横方向の濃淡変化態様が認識される。車両が走行している道路に複数の並列する人工溝が設けられている場合、指定画像領域にはその横方向に特徴的な濃淡変化態様が現われる。したがって、この濃淡変化態様に基づき、第1予測走行領域における複数の並列する人工溝の有無が高精度で認識されうる。さらに、道路に複数の並列する人工溝が存在しないと認識されたことを要件として、エッジ抽出処理およびハフ変換処理の実行結果に基づいて道路の状態が認識される。これにより、複数の並列する人工溝が存在するために道路の状態が誤認識される事態が回避される。
【0007】
なお、本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、当該構成要素が情報をデータベースから検索すること、メモリ等の記憶装置から情報を読み取ること、センサ等の出力信号に基づき情報を測定、算定、推定、判定すること、測定等された情報をメモリに格納すること等、当該情報をさらなる情報処理のために準備または用意するために必要なあらゆる情報処理を実行することを意味する。
【0008】
第2発明の車両走行支援装置は、第1発明の車両走行支援装置において、前記第1処理要素が、前記画像に対して前記指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表わす周波数スペクトルを生成するためにフーリエ変換処理を実行し、前記周波数スペクトルにおいて実空間における前記複数の人口溝の間隔に相当する指定周波数範囲に含まれる、強度が閾値以上のピークの有無に応じて、前記第1予測走行領域における複数の並列する人工溝の有無を認識することを特徴とする。
【0009】
第2発明の車両走行支援装置によれば、画像に対してフーリエ変換処理が実行されることにより、指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表わす周波数スペクトルが生成される。指定画像領域により表わされている第1予測走行領域に複数の並列する人口溝が存在する場合、周波数スペクトルにおいて実空間における人口溝の横方向の間隔または空間的周期に相当する指定周波数範囲に含まれる、強度が閾値以上のピークが現われる。したがって、周波数スペクトルにおけるこのようなピークの有無に応じて複数の並列する人口溝の有無が認識されうる。
【0010】
第3発明の車両走行支援装置は、第1または第2発明の車両走行支援装置において、前記第2処理要素が、ρ−θ空間において前記車両の第2予測走行領域を表わす指定領域における直線成分の指定投票値に対する投票数を評価し、前記投票数が閾値以上であることを要件として、前記車両が走行中の道路における積雪の有無を認識することを特徴とする。
【0011】
第3発明の車両走行支援装置によれば、エッジ画像がハフ変換処理された結果に基づき、ρ−θ空間(ハフ空間)において実空間における車両の第2予測走行領域を表わしている指定領域における直線成分の指定投票値に対する投票数が評価される。なお、第2予測走行領域および第1予測走行領域は同一であってもよく、異なっていてもよい。道路に積雪がある場合には第2予測走行領域において、道路に積雪がない場合よりも多くの直線成分が現われるため、ハフ空間において直線成分の指定投票値に対する投票数が閾値以上となる。したがって、直線成分の指定投票値に対する投票数が閾値以上であるか否かに応じて積雪の有無が高精度で認識される。また、道路に複数の並列する人口溝が存在する場合、この道路における積雪の有無は認識されない。したがって、道路に積雪がないにもかかわらず、この道路に複数の並列する人口溝があるためにハフ空間において直線成分の指定投票値に対する投票数が閾値以上となって、道路に積雪があると誤認識される事態が回避されうる。
【0012】
第4発明の車両は、撮像装置と、第1発明の車両走行支援装置を備えていることを特徴とする。
【0013】
第4発明の車両によれば、車両走行支援装置により車両が走行中の道路における複数の並列する人工溝の有無が高精度で認識され、さらには、この道路の状態が高精度で認識されうるので、当該認識結果に基づき車両の安全走行等の観点から車載機器の動作が適当に制御されうる。
【0014】
第5発明の走行支援プログラムは、車両に搭載されているコンピュータを第1発明の車両走行支援装置として機能させることを特徴とする。
【0015】
第5発明の走行支援プログラムによれば、車載のコンピュータを、車両が走行中の道路における複数の並列する人工溝の有無を高精度で認識する車両走行支援装置として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の車両走行支援装置等の実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
図1および図2に示されている車両(四輪自動車)1には、CCDカメラや近赤外線カメラ等のカメラ(撮像装置)12と、車両走行支援装置10とが搭載されている。カメラ12は車両1の前方の様子をフロントウィンドウ越しに撮像するように車内空間に取り付けられている。なお、カメラ12の配置箇所は車両1のフロント部分等に適宜変更されてもよい。車両1には図2に示されているように車速センサ122、加速度センサ124およびヨーレートセンサ126等のセンサと、操舵装置14と、制動装置16とがさらに搭載されている。車速センサ122、加速度センサ124およびヨーレートセンサ126のそれぞれは車両1の速度、加速度およびヨーレートのそれぞれに応じた信号を出力する。
【0018】
車両走行支援装置10はコンピュータまたはECU(電子制御ユニット)(CPU,ROM,RAMならびにI/O回路およびA/D変換回路等の電子回路等により構成されている。)により構成されている。車両走行支援装置10にはカメラ12および速度センサ122等からの出力信号が入力される。CPUにより「車両走行支援プログラム」がメモリから読み出され、かつ、読み出されたプログラムにしたがって後述する種々の処理が実行される。なお、プログラムは任意のタイミングでサーバからネットワークや衛星を介して車両1に配信または放送され、車載コンピュータのRAM等の記憶装置に格納されてもよい。車両走行支援装置10は操舵装置14および制動装置16のうち一方または両方の動作を制御することにより、車両1が走行領域から逸脱しないように車両1の走行を支援する走行支援制御を実行する。車両走行支援装置10は第1処理要素110および第2処理要素120を備えている。
【0019】
第1処理要素110はカメラ12を通じて得られた画像に対して指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表わす周波数スペクトルを生成するためにフーリエ変換処理(高速フーリエ変換処理)を実行する。指定画像領域は、画像において実空間における車両1の第1予測走行領域(たとえば、車両1の左右に一対のレーンマークが存在すると仮定した場合、当該一対のレーンマークにより挟まれる領域の一部または全部)を表わしている。第1処理要素110は指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表わす周波数スペクトルに基づき、このスペクトルにおける指定周波数範囲に含まれる、強度が閾値以上のピークの有無に応じて、第1予測走行領域における複数の並列する水はけ用の溝等、人工溝の有無を認識する。
【0020】
第2処理要素120はカメラ12を通じて得られた画像においてエッジを抽出または顕在化するエッジ抽出処理を実行することによりエッジ画像を生成する。第2処理要素120はエッジ画像にハフ変換処理を実行し、ハフ変換処理の実行結果に基づいてρ−θ空間における直線成分の指定投票値に対する投票数を評価する。第2処理要素120はρ−θ空間において定義されている指定領域における指定投票値の投票数が閾値以上であることを要件として、車両1が走行中の道路における積雪の有無を認識する。第2処理要素120は第1処理要素110により道路(詳細には第1予測走行領域)に複数の並列する人口溝が存在しないと認識されたことを要件として、この道路における積雪の有無を認識する。指定領域は、ρ−θ空間において実空間における車両1の第2予測走行領域(第1予測走行領域と同じく、たとえば車両1の左右に一対のレーンマークがあると仮定した場合、当該一対のレーンマークにより挟まれる領域の一部または全部)を表わしている。指定領域の境界は無積雪状態の道路について指定領域における指定投票値の投票数が閾値未満となるように設定されている。
【0021】
前記構成の車両1および車両走行支援装置10の機能について説明する。
【0022】
まず、カメラ12を通じて車両1の前方または走行方向の状況を表わすディジタル画像が取得される(図3/S002)。これにより、たとえば図4(a)、図5(a)(=図7(a))または図6(a)に示されているような車両1の前方に延びる道路の画像が取得される。なお、図4(a)は道路に積雪がなく、かつ、道路に複数の並列する人口溝Gが設けられている状態における撮像画像であり、図5(a)は道路に積雪がある状態における撮像画像であり、図6(a)は道路に積雪がなく、かつ、道路に複数の人口溝が設けられていない状態における撮像画像である。
【0023】
また、第1処理要素110により、ディジタル画像に対して高速フーリエ変換処理が実行される(図3/S004)。これにより、たとえば図4(a)に示されている矩形状の指定画像領域QAの横方向の濃淡変化態様を表わす、図4(b)に示されているような周波数スペクトルが生成される。同様に、図5(a)に示されている矩形状の指定画像領域QAの横方向の濃淡変化態様を表わす、図5(b)に示されているような周波数スペクトルが生成される。なお、指定画像領域は矩形状のほか、円形状、楕円形状、三角形状および台形状など、さまざまな形状に設定されていてもよい。また、高速フーリエ変換処理に代えて、通常のフーリエ変換処理または離散フーリエ変換処理が実行されてもよい。
【0024】
さらに、第2処理要素120により、ディジタル画像に対してエッジ抽出処理が実行されることにより、エッジが顕在化されたエッジ画像が生成される(図3/S006)。たとえば、図6(a)および図7(a)のそれぞれに示されている画像に対してエッジ抽出処理が実行されることにより、図6(b)および図7(b)のそれぞれに示されているように、エッジ(白抜き部分)が抽出または顕在化されたエッジ画像が生成される。なお、エッジは一定の走査方向について輝度が閾値を超えて変化する点または画素により構成される線分を意味しており、特開2005−332104号公報および特開2006−012191号公報等に開示されている画像処理方法にしたがって認識されうる。
【0025】
また、第2処理要素120によりエッジ画像に対してハフ変換処理が実行される(図3/S008)。たとえば図6(b)および図7(b)のそれぞれに示されているエッジ画像に対してハフ変換処理が実行されることにより、図6(c)および図7(c)のそれぞれに示されているように、ハフ変換されたエッジの直線成分がρ−θ空間の任意の座標に出現する頻度が投票値として評価される。
【0026】
さらに、第1処理要素110により、指定画像領域により表わされている、第1予測走行領域における複数の並列する人口溝の有無が認識される(図3/S010)。具体的には、周波数スペクトルにおいて指定周波数範囲に含まれる強度が閾値以上のピークの有無が認識されることにより、並列する人口溝の有無が認識される。指定周波数範囲は、実空間における標準的な人口溝の間隔に相当する空間周波数範囲を意味する。たとえば、図4(b)に示されているように指定周波数範囲に含まれる、強度が閾値(一点鎖線)以上であるピークが存在する場合、指定画像領域QAにより表わされている、第1予測走行領域に複数の並列する人口溝Gが存在すると認識される(図4(a)参照)。その一方、図5(b)に示されているように強度が閾値(一点鎖線)以上であるピークが存在しない場合、指定画像領域QAにより表わされている、第1予測走行領域に複数の並列する人口溝Gが存在しないと認識される(図5(a)参照)。なお、強度が閾値以上であるピークが存在することに加えて、このピークが人口溝の横方向の標準的な間隔に相当する指定周波数範囲に存在することが要件とされて、複数の人口溝が存在すると認識されてもよい。
【0027】
第1処理要素110により、道路の第1予測走行領域に複数の並列する人口溝が存在すると判定された場合(図3/S010‥NO)、第2処理要素120により、ディジタル画像に対してエッジ抽出処理等が実行されることにより、後述するようにレーンマークが探索され(図3/S016)、この探索結果に基づいて走行領域の設定可否が判定され(図3/S018)、走行領域が設定された場合には車両1がその走行領域に収まるように操舵装置14および青銅装置16の動作が制御される(図3/S020)。
【0028】
その一方、第1処理要素110により、道路の第1予測走行領域に複数の並列する人口溝が存在しないと判定された場合(図3/S010‥YES)、第2処理要素120により、ρ−θ空間において定義されている指定領域Sにおける投票値と、投票値が出現する頻度としての投票数との関係を表現するヒストグラムが生成される(図3/S012)。これにより、たとえば図8に示されている閾値ライン(実線)よりも高投票値かつ多投票数側の第1投票領域U1および閾値ラインよりも低投票値かつ少投票数側の第2投票領域U2のうちいずれかに一部または全部が包含されるように、投票値と投票数との関係を表わす第1曲線(一点鎖線)L1または第2曲線(二点鎖線)L2が描かれる。指定領域Sとしては、図6(c)および図7(c)のそれぞれに示されている、ρの値により画定されている第1指定領域(一点鎖線で囲まれている)S1=[ρ1,ρ2]と、θの値により画定されている第2指定領域(二点鎖線により囲まれている)S2=[θ1,θ2]との重なり領域(斜線が付されている)S1∩S2が定義されている。図6(c)および図7(c)のそれぞれにおいて後述する第1指定領域S1および第2指定領域S2から外れた領域において投票値が高い一対の箇所があるが、これは主に一対のレーンマークまたは轍などのエッジがハフ変換された結果を表わしている。なお、第1指定領域S1または第2指定領域S2が単独で指定領域Sとして定義されてもよい。また、指定領域Sの形状としては矩形状ではなく円形状、楕円形状、三角形状または台形状など、さまざまな形状が採用されてもよい。
【0029】
指定領域Sの境界値は、積雪状態の道路についてはこの指定領域Sにおける指定投票値が閾値以上となる一方、無積雪状態の道路についてこの指定領域Sにおける指定投票値の投票数が閾値未満となるように設定されている。
【0030】
具体的には、積雪がない状態の道路については図6(c)に示されているように第1指定領域S1において投票値が高い箇所が比較的少なくなる一方、積雪がある状態の道路については図7(c)に示されているように第1指定領域S1において投票値が高い箇所が比較的多くなるように第1指定領域S1の下限値ρ1および上限値ρ2が設定されている。すなわち、前記のように主に一対のレーンマークまたは轍などのエッジがハフ変換された結果を表わしている投票値が高い一対の箇所が包含されないように第1指定領域S1の下限値ρ1および上限値ρ2が設定されている(たとえばρ1=0,ρ2=0.3ρmax)。ρ−θ空間における第1指定領域S1は、図6(a)および図7(a)のそれぞれに示されているカメラ12の撮像画像における半円形状の第1指定画像領域Q1を通過する直線(線分)に相当し、ひいては、第1指定画像領域Q1に相当する実空間領域(車両1の前側近傍領域)に相当している。
【0031】
同様に、積雪がない状態の道路については図6(c)に示されているように第2指定領域S2において投票値が高い箇所が比較的少なくなる一方、積雪がある状態の道路については図7(c)に示されているように第2指定領域S2において投票値が高い箇所が比較的多くなるように第2指定領域S2の境界値θ1およびθ2が設定されている(たとえばθ1=π/6,θ2=5π/6)。すなわち、前記のように主に一対のレーンマークまたは轍などのエッジがハフ変換された結果を表わしている投票値が高い一対の箇所が包含されないように第2指定領域S2の境界値θ1およびθ2が設定されている。ρ−θ空間における第2指定領域S2は図6(a)および図7(a)のそれぞれに示されているカメラ12の撮像画像における三角形状の第2指定画像領域Q2を通過する直線(線分)に相当しており、ひいては、第2指定画像領域Q2に相当する実空間領域(左右一対のレーンマークが存在すると仮定した場合、当該一対のレーンマークの間に大部分が含まれる領域)に相当している。
【0032】
このため、積雪がある状態の道路では、図8に示されている閾値ラインよりも高投票値かつ多投票数側の第1投票領域U1に一部または全部が包含されるように、投票値と投票数との関係を表わす曲線が描かれる。その一方、積雪がない状態の道路では、図8に示されている閾値ラインよりも高投票値かつ多投票数側の第2投票領域U2に一部または全部が包含されるように、投票値と投票数との関係を表わす曲線が描かれる。
【0033】
さらに、第2処理要素120により、指定投票値の投票数が閾値以下であるか否かを認識することにより、車両1が走行中の道路における積雪の有無が認識される(図3/S014)。たとえば、図8に示されている指定投票値における投票数N1が閾値Nth以上である場合には積雪があると認識される一方、投票数N2が閾値Nth未満である場合には積雪がないと認識される。なお、1つの指定投票値の投票数が閾値以上であるか否かに応じてではなく、複数の指定投票値のうちそれぞれの投票数が閾値以上であるか否かに応じて積雪の有無が認識されてもよい。
【0034】
そして、道路において積雪がないと認識された場合(図3/S014‥YES)、エッジ抽出処理の実行結果等に基づき、車線(白線もしくは黄線など)または道路鋲(ボッツドッツ)等のレーンマークが探索される(図3/S016)。なお、レーンマークの探索方法としては、特開2006−309605号公報、特開2006−331193号公報、特開2007−018154号公報または特開2007−026106号公報等に開示されている方法が採用されうる。さらに、当該レーンマークの探索結果に基づき、一対のレーンマークにより左右が画定された走行領域の設定可否が判定される(図3/S018)。走行領域が設定可能であると判定された場合(図3/S018‥YES)、操舵装置14および制動装置16のうち一方または両方の動作が制御されることにより、車両1がこの走行領域から逸脱しないように車両1の走行を支援する走行支援制御が実行される(図3/S020)。その一方、道路において積雪があると認識された場合(図3/S014‥NO)、または、レーンマークの探索失敗等のために走行領域が設定不可能であると判定された場合(図3/S018‥NO)、走行領域の設定および走行支援制御が省略される。
【0035】
前記機能を発揮する車両走行支援装置10によれば、カメラ(撮像装置)12を通じて得られた画像において、実空間における車両1の第1予測走行領域を表わす指定画像領域の横方向の濃淡変化態様が認識される。具体的には、ディジタル画像に皇族フーリエ変換処理が実行されることにより、指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表す周波数スペクトルが生成される(図3/S004,図4(b)および図5(b)参照)。図4(a)に示されているように車両1が走行している道路に複数の並列する人工溝Gが設けられている場合、指定画像領域QAにはその横方向に特徴的な濃淡変化態様が、図4(b)に示されているように周波数スペクトルにおける指定周波数範囲に含まれる強度が閾値以上のピークとして現われる。したがって、この濃淡変化態様に基づき、第1予測走行領域における複数の並列する人工溝の有無が高精度で認識されうる。さらに、道路に複数の並列する人工溝が存在しないと認識されたことを要件として、エッジ抽出処理およびハフ変換処理の実行結果に基づいて道路の状態が認識される(図3/S010‥YES,S014参照)。これにより、複数の並列する人工溝が存在するために道路の状態が誤認識される事態が回避される。
【0036】
さらに、カメラ(撮像装置)12を通じて得られた画像においてエッジが抽出または顕在化されることによりエッジ画像が生成される(図3/S006,図6(b)および図7(b)参照)。また、エッジ画像がハフ変換されることにより、ρ−θ空間(ハフ空間)の任意の点において直線成分の投票値が評価される(図3/S006,図6(c)および図7(c)参照)。そして、ρ−θ空間の指定領域S(図6(c)参照)における指定投票値の投票数が閾値以上であるか否かが認識されることにより、車両1が走行中の道路における積雪の有無が認識される(図3/S014,図8参照)。これは、ρ−θ空間の指定領域Sは、車両1の左側および右側のそれぞれにある一対のレーンマーク等により画定される第2予測走行領域に相当しているので、第2予測走行領域における積雪の有無に応じて、指定領域における指定投票値の投票数が顕著に相違するからである。具体的には、前記のようにρ−θ空間における第1指定領域S1は、図6(a)に示されているカメラ12の撮像画像における半円形状の第1指定画像領域Q1を通過する直線(線分)に相当し、ひいては、第1指定画像領域Q1に相当する実空間領域に相当している。また、ρ−θ空間における第2指定領域S2は、図6(a)に示されているカメラ12の撮像画像における三角形状の第2指定画像領域Q2を通過する直線(線分)に相当し、ひいては、第2指定画像領域Q2に相当する実空間領域に相当している。したがって、カメラ12による同一位置からの撮像履歴の有無にかかわらず、積雪の有無を判定する際の特徴は図6(c)の指定領域Sの投票値に表われ、車両1が走行中の道路における積雪の有無を高精度で認識することができる。
【0037】
また、道路に複数の並列する人口溝が存在する場合、この道路における積雪の有無は認識されない(図3/S010‥NO参照)。したがって、道路に積雪がないにもかかわらず、この道路に複数の並列する人口溝があるためにハフ空間において直線成分の指定投票値に対する投票数が閾値以上となって、道路に積雪があると誤認識される事態が回避されうる。
【0038】
前記実施形態では指定画像領域の横方向の濃淡変化態様が高速フーリエ変換処理により生成された周波数スペクトルとして認識されたが、他の実施形態としてエッジ抽出処理によりエッジ(たとえば画像横方向について輝度が低くなる負エッジ)が抽出され、指定画像領域の横方向の濃淡変化態様が当該エッジの画像横方向の出現周期として認識されてもよい。そして、エッジの画像横方向の出現頻度が一定値以上であり、かつ、出現周期が指定範囲に包含されるか否かに応じて人口溝の有無が認識されてもよい。
【0039】
また、前記実施形態では道路における積雪の有無が道路の状態として認識されたが(図3/S014,図6および図7参照)、他の実施形態として路面にできた細かなひび割れの有無、道路における散乱物の有無等が道路の状態として認識されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の車両の構成説明図
【図2】本発明の車両走行支援装置の構成説明図
【図3】本発明の車両走行支援装置の機能を示すフローチャート
【図4】フーリエ変換処理によるスペクトル生成方法に関する説明図
【図5】フーリエ変換処理によるスペクトル生成方法に関する説明図
【図6】無積雪時のエッジ抽出処理およびハフ変換処理に関する説明図
【図7】積雪時のエッジ抽出処理およびハフ変換処理に関する説明図
【図8】直線成分の投票値および投票数の関係に関する説明図
【符号の説明】
【0041】
1‥車両、10‥車両走行支援装置、12‥カメラ(撮像装置)、110‥第1処理要素、120‥第2処理要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている撮像装置を通じて得られた前記車両の進行方向の状況を表わす画像に基づき、前記車両の走行環境を認識する車両走行支援装置であって、
前記画像において実空間における前記車両の標準走行領域を表わす指定画像領域における横方向の濃淡変化態様に基づき、前記標準走行領域における複数の並列する人工溝の有無を認識する第1処理要素と、
前記画像においてエッジを顕在化するエッジ抽出処理を実行することによりエッジ画像を生成し、前記エッジ画像に対してハフ変換処理を実行し、前記ハフ変換処理の実行結果に基づき、前記車両が走行中の道路の状態を認識する第2処理要素とを備え、
前記第2処理要素が、前記第1処理要素により前記複数の人工溝がないと認識されたことを要件として前記道路の状態を認識することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両走行支援装置において、
前記第1処理要素が、前記画像に対して前記指定画像領域の横方向の濃淡変化態様を表わす周波数スペクトルを生成するためにフーリエ変換処理を実行し、前記周波数スペクトルにおいて実空間における前記複数の人口溝の間隔に相当する指定周波数範囲に含まれる、強度が閾値以上のピークの有無に応じて、前記標準走行領域における複数の並列する人工溝の有無を認識することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両走行支援装置において、
前記第2処理要素が、ρ−θ空間において前記標準走行領域を表わす指定領域における直線成分の指定投票値に対する投票数を評価し、前記投票数が閾値以上であることを要件として、前記車両が走行中の道路における積雪の有無を認識することを特徴とする車両走行支援装置。
【請求項4】
撮像装置と、請求項1記載の車両走行支援装置とを備えていることを特徴とする車両。
【請求項5】
車両に搭載されているコンピュータを請求項1記載の車両走行支援装置として機能させることを特徴とする車両走行支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−230372(P2009−230372A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73843(P2008−73843)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】