車両走行路の湾曲傾向検出装置およびこれを用いた車両の動作応答制御装置
【課題】車両走行路の湾曲傾向(湾曲変化頻度)を、左右輪間で有効タイヤ半径が異なる場合においても、これによる影響を受けて誤検出することなく正確に検出する。
【解決手段】演算部21は、左右車輪速VL,VRと、左右輪間トレッドWの半値とから、横加速度Gy=(VR−VL)・(VR+VL)}・(1/2)Wを演算し、このGyをバタワースフィルタ22に通過させてノイズを除去する。演算部23は、横加速度Gyのフィルタ処理値からその時間変化割合である横加速度微分値|dGy|を求め、算出部24は、走行状態に応じて異なる有効周波数帯の横加速度微分値|dGy|を抽出して、その平均出力レベルから車両走行路の湾曲傾向βを求める。上記抽出すべき横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は車速VSPが高いほど高周波域になることから、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタ係数をフィルタ係数設定部25により高車速ほど高くする。
【解決手段】演算部21は、左右車輪速VL,VRと、左右輪間トレッドWの半値とから、横加速度Gy=(VR−VL)・(VR+VL)}・(1/2)Wを演算し、このGyをバタワースフィルタ22に通過させてノイズを除去する。演算部23は、横加速度Gyのフィルタ処理値からその時間変化割合である横加速度微分値|dGy|を求め、算出部24は、走行状態に応じて異なる有効周波数帯の横加速度微分値|dGy|を抽出して、その平均出力レベルから車両走行路の湾曲傾向βを求める。上記抽出すべき横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は車速VSPが高いほど高周波域になることから、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタ係数をフィルタ係数設定部25により高車速ほど高くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行路の湾曲変化頻度や湾曲程度などの湾曲傾向を検出する装置、および、これにより検出した湾曲傾向を用いて車両の動作応答を好適に制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行路の湾曲傾向を検出する装置としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが提案されている。
この湾曲傾向検出装置は、自動変速機の変速制御に際して用いるもので、車両に作用する車幅方向の横加速度から車両がコーナリング走行中であるのを検知するものである。
【0003】
そして特許文献1は、当該コーナリング走行中を検知する間、自動変速機のアップシフトを抑制して自動変速機がロー側変速比選択傾向となるようにし、コーナリング走行の走破性を向上させる技術も開示している。
【特許文献1】特開平11−311325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来のように、車両に作用する横加速度から車両走行路の湾曲傾向を検出するのでは以下のような問題を生ずる。
つまり、車両の横加速度はコーナリング走行による以外にも、左右輪間でタイヤ摩耗や空気圧が異なったり、左右輪の一方がパンクするなどに起因して、左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合にも発生する。
【0005】
従って、従来のように車両横加速度から車両走行路の湾曲傾向を検出するのでは、上記のように左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度をも、車両走行路の湾曲傾向に基づくものであると誤判定して、湾曲傾向の検出が誤差をもったものになるという問題を生ずる。
【0006】
本発明は、上記のように左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度は、当該左右輪タイヤ有効径の異なる状態が解消されない限り継続的に発生し続けると共に理論上は同じ値に保たれるとの事実認識に基づき、従って、当該車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値は0であって、走行路湾曲傾向の検出誤差から除外されるとの観点から、
車両横加速度に代えその時間変化割合である車両横加速度微分値をもとに湾曲傾向を検出するようにした車両走行路の湾曲傾向検出装置を提供して、
左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度を湾曲傾向と誤判定するような従来の問題を解消することを目的とする。
【0007】
本発明は更に、上記のような車両走行路の湾曲傾向検出装置により検出した湾曲傾向に基づき、運転操作に対する車両の動作が好適な応答となるよう車両状態を制御し得るようにした車両の動作応答制御装置をも提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前者の目的のため、本発明による車両走行路の湾曲傾向検出装置は、請求項1に記載のごとく、
車両に作用する車幅方向の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出する装置を前提とし、
前記車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値を求めるための横加速度微分値演算手段と、
該手段で求めた車両横加速度微分値をもとに前記車両走行路の湾曲傾向を推定する湾曲傾向推定手段とを具備してなることを特徴とするものである。
【0009】
また後者の目的のため、本発明による車両の動作応答制御装置は、請求項5に記載のごとく、
上記の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
前者の本発明による車両走行路の湾曲傾向検出装置によれば、
車両の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出するが、この横加速度をそのまま用いず、その時間変化割合である車両横加速度微分値をもとに車両走行路の湾曲傾向を推定するため、
そして、左右輪タイヤ有効径が異なることで発生している横加速度の微分値は理論上0に保たれて走行路湾曲傾向の検出に影響しないから、
左右輪タイヤ有効径が異なることで発生している横加速度を湾曲傾向と誤判定する前記した従来の問題を解消することができ、湾曲傾向検出精度を向上させることができる。
【0011】
また後者の本発明による車両の動作応答制御装置によれば、
上記の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するため、
運転操作に対する車両の動作が湾曲傾向に応じた好適な応答となり、湾曲傾向が強い時は湾曲路の走破性を向上させ、湾曲傾向が強くない時は不要に高い車両の動作応答で乗り心地が悪くなる弊害を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる車両走行路の湾曲傾向検出装置を具えた車両の運転傾向(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)判定装置を示し、
図2は、図1の車両運転傾向判定装置による判定結果を用いる無段変速機の変速制御システム(本発明による車両動作応答制御装置の一実施例)である。
【0013】
先ず図1の車両運転傾向判定装置を説明するに、この判定装置は、
車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ1からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ2からの信号と、
右車輪速VRを検出する右車輪速センサ3からの信号と、
左車輪速VLを検出する左車輪速センサ4からの信号と、
アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ5からの信号を入力信号とし、
以下のようにして、運転者による車両の運転傾向(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)を判定する。
【0014】
これがため図1の車両運転傾向判定装置は、運転者による車両の加減速操作傾向を検出する加減速傾向検出部10と、本発明の湾曲傾向検出装置に相当する湾曲傾向検出部20と、検出部10からの加減速傾向信号αおよび検出部20からの湾曲傾向信号βのうち大きい方を選択して運転状態信号γとするセレクトハイ・スイッチ30とより成る車両運転状態信号生成部40を具えるほか、
該生成部40からの運転状態信号γをフィルタリング処理して該信号γの平均出力レベルから運転傾向を判定する運転傾向判定部50と、
この判定部50で行うフィルタリング処理に際して用いる時定数を選択するための時定数選択部60とを具える。
【0015】
加減速傾向検出部10は図3に示すごときもので、前後加速度Gxおよび車速VSPをもとに車両の加減速度合を検出して加減速傾向信号αを以下のように求める。
上記のGxが加速度(正値)である場合は、加速度基準値設定部11において予定のマップを基に車速VSPから、車両の可能最大加速度を加速度基準値Gaとして設定する。
次いで除算器12において、前後加速度Gxを加速度基準値Gaにより除算することにより、今の前後加速度Gxが最大加速度(加速度基準値)Gaに対してどの程度のものかを正規化(0〜1の信号に変換)した加速度正規化値αa=Gx/Gaを求める。
【0016】
上記のGxが減速度(負値)である場合は、減速度基準値設定部13において予定のマップを基に車速VSPから、車両の可能最大減速度を減速度基準値Gbとして設定する。
次いで、減速度Gxを極性合わせのため極性反転器14により極性反転させ、除算器15において、減速度Gxの極性反転値を減速度基準値Gbにより除算することにより、今の減速度Gxが最大減速度(減速度基準値)Gbに対してどの程度のものかを正規化(0〜1の信号に変換)した減速度正規化値αb=|Gx|/Gbを求める。
この減速度正規化値αbを、加算器16で前記の加速度正規化値αaと合計して、両者の和値を、正規化した加減速傾向信号α=αa+αbとして図1のセレクトハイ・スイッチ30に供給する。
【0017】
図1における湾曲傾向検出部20は本発明における湾曲傾向検出装置に相当し、図4に示すごとく、横加速度演算部21と、バタワースフィルタ22と、横加速度微分値演算部23と、ローパスフィルタで構成した湾曲傾向算出部24とよりなり、該ローパスフィルタのフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定部25を付加して構成する。
【0018】
横加速度演算部21は、右車輪速VRおよび左車輪速VLから、図5につき以下に説明する理論に基づき車両に作用する横加速度Gyを算出するものである。
【0019】
先ず図5の理論を説明するに、図中、6Lは左車輪、6Rは右車輪である。
ここで、右車輪速VRおよび左車輪速VLの平均値Vwは、Vw=(VR+VL)/2で表され、これに車両旋回半径Rを乗算して得られる値は、右車輪速VRおよび左車輪速VL間の車輪速差(VR−VL)を左右輪間トレッドWで除算して得られる値に等しく、
{(VR+VL)/2}R=(VR−VL)/W
であり、この式から次式が得られる。
{(VR+VL)/(VR−VL)}W/2=R
ところで横加速度Gyは、Gy=Vw×2/Rであり、従って、横加速度Gyは、
Gy=Vw×2/R
=(VR−VL)・(VR+VL)}・(1/2)W
で表される。
【0020】
図4における横加速度演算部21は、右車輪速VRおよび左車輪速VLと、左右輪間トレッドWの半値とから、上式の演算により横加速度Gyを求める。
なお横加速度Gyは、かように演算により求めるのが経済的であるが、この代わりに、横加速度センサにより直接検出してもよいことは言うまでもない。
【0021】
上記の演算により求めた横加速度Gyはバタワースフィルタ22に通過させ、これにより、後述するごとく不整地走行などに伴う左右輪速差に起因して横加速度Gyの演算値に含まれる横加速度演算誤差を除去する。
図4における横加速度微分値演算部23は、かようにバタワースフィルタ22に通過させた後における横加速度(Gy)フィルタ処理値の時間変化割合である横加速度微分値dGyを求めて、その絶対値|dGy|を出力する。
従って横加速度微分値演算部23は、本発明における横加速度微分値演算手段に相当する。
【0022】
その後、かかる横加速度微分値|dGy|を湾曲傾向算出部24に通過させて車両走行路の湾曲傾向βを求める。
ここで湾曲傾向算出部24は、車速VSPが40km/hである場合について説明すると、図6に例示するごとく低い周波数領域で振幅ゲインが大きなフィルタゲイン特性を持ったローパスフィルタとし、走行状態に応じて異なる有効周波数帯の横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し、当該ローパスフィルタを通過して抽出された横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルから、前述したと同様にして0〜1の数値に正規化した車両走行路の湾曲傾向βを求める。
従って湾曲傾向算出部24はは、本発明における湾曲傾向推定手段に相当する。
【0023】
ところで、上記のように抽出すべき横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は、車速VSPなどの走行状態に応じて異なり、車速VSPが40km/hの時は横加速度微分値|dGy|が図7(a),(b)に波線(図6と同じもの)で示すごとく低周波数域で発生するが、車速VSPが80km/hの時は横加速度微分値|dGy|が図7(a),(b)に実線で示すごとく高周波数域で発生し、上記横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は車速VSPが高いほど高周波数域となる。
【0024】
この事実から、図4に示すようにフィルタ係数設定部25を設け、これにより、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタ係数を、車速VSP(図5につき前述した車輪速平均値Vwでもよい)に応じ、高車速ほど高周波数域の横加速度微分値|dGy|を抽出し得るフィルタゲイン特性となるよう制御可能にする。
【0025】
従って、車速VSP=40km/hの時は、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性が図6および図7(a)に示すごときものとなって、車速VSP=40km/h時の有効周波数帯における横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し得ることとなり、また、
車速VSP=80km/hの時は、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性が図7(b)に示すごときものとなって、車速VSP=80km/h時の有効周波数帯における横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し得ることとなる。
【0026】
なお、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタとしては、車速VSPに応じて有効周波数帯が異なる横加速度微分値|dGy|を抽出できれば、上記の単一のローパスに限らず、図8に例示するようなフィルタゲイン特性を持ったバンドパスフィルタでもよいし、図9に例示するようなローパスフィルおよびハイパスフィルタの組み合わせにより構成してもよいことは言うまでもない。
【0027】
図4における演算部21で前記のようにして演算した横加速度Gyをバタワースフィルタ22に通過させ、当該横加速度Gyの演算値に含まれる横加速度演算誤差を除去することによる効果を、図10に基づき以下に説明する。
図10(a)は、図4におけるバタワースフィルタ22が存在せず、横加速度演算値Gyをそのまま横加速度微分値演算部23に入力して横加速度微分値|dGy|の演算に資する場合における、直進走行時の動作タイムチャート、
図10(b)は、図4に示すようにバタワースフィルタ22を設け、横加速度演算値Gyをバタワースフィルタ22に通過させた後に横加速度微分値演算部23へ入力して横加速度微分値|dGy|の演算に資する場合における、直進走行時の動作タイムチャートである。
【0028】
図10(a),(b)に示すように、左右車輪速VL,VRがそれぞれ不整地などに起因して振動的に変化する場合(図では左右車輪速VL,VRの一方のみを示す)、両者の変動が同期せず位相ずれをもって変動することから、両者間の車輪速差(VL-VR)が直進走行時なのに図示のごとくに発生する。
このため、図4の演算部21で車輪速差(VL-VR)を用いて前記のごとくに演算した横加速度演算値Gyは、横加速度発生原因でないにもかかわらず、位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)をも横加速度発生原因として内包し、図10(a),(b)に示すごときものとなる。
【0029】
バタワースフィルタ22を設けない場合、図10(a)に示すように横加速度フィルタ処理値が横加速度演算値Gyと同じであり、これがそのまま図4の横加速度微分値演算部23に入力され、横加速度微分値|dGy|の演算に供される。
【0030】
よって横加速度微分値|dGy|が、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分をも内包する横加速度演算値Gyに基づくものであることから、直進走行時なのに図10(a)に示すように大きくなる。
従って、この横加速度微分値|dGy|を基に図4の算出部24で前記のごとくに求める車両走行路の湾曲傾向βが、直進走行中であるにもかかわらず、図10(a)に示すように発生し、この湾曲傾向βから後述するように求める車両運転傾向δも、本来なら加減速傾向のみを持った波線で示すごときものであるところ、実線で示すように誤差を持ったものになる。
【0031】
これに対し図4のようにバタワースフィルタ22を設けた場合、図10(b)に示すように横加速度フィルタ処理値が、横加速度演算値Gyをバタワースフィルタ22に通過させて得られたもの、つまり、横加速度演算値Gyから、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分を除去したものとなり、かかるフィルタ処理後の横加速度演算値Gyが図4の横加速度微分値演算部23に入力され、横加速度微分値|dGy|の演算に供される。
【0032】
よって横加速度微分値|dGy|が、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分を含まない横加速度演算値Gyに基づくものとなり、横加速度微分値|dGy|が直進走行に符合して図10(b)に示すごとく略0に保たれる。
従って、この横加速度微分値|dGy|を基に図4の算出部24で前記のごとくに求める車両走行路の湾曲傾向βが、直進走行に符合して図10(b)に示すように0に保たれ、この湾曲傾向βから後述するように求める車両運転傾向δも、加減速傾向のみを持った図示するごとき誤差のないものになる。
【0033】
図11は、図1における湾曲傾向検出部20の他の実施例で、図4におけると同様の部分を同一符号にて示す。
本実施例においては、バタワースフィルタ22に通過させた横加速度演算値Gyをそのまま横加速度微分値演算部23へ入力せず、横加速度補正ゲイン設定部26で設定した補正ゲインにより、特に低車速時において横加速度演算値Gyを小さくなるよう補正し、低車速時はこの補正した横加速度演算値Gyを横加速度微分値演算部23へ入力するようになす。
【0034】
これがため横加速度補正ゲイン設定部26は、車速VSP(図5につき前述した車輪速平均値Vwでもよい)を基に予定のマップから、低車速で小さくなる横加速度補正ゲイン(1より小さな正値)を検索して設定し、これを乗算器27において、バタワースフィルタ22に通過させた横加速度演算値Gyに乗算し、低車速で小さくなる補正済横加速度演算値Gyを求める。
【0035】
従って、横加速度微分値演算部23が補正済横加速度演算値Gyから前記したごとくに求める横加速度微分値|dGy|は、車速VSP=10km/h時について述べると、横加速度演算値Gyを補正しない場合の図12(a)に示す大きな値に対し、同図(b)に示すごとき小さなものとなり、低車速時に横加速度微分値|dGy|のピークを抑制することができる。
かようにすることにより、湾曲傾向算出部24が横加速度微分値|dGy|から前記したごとくに求める湾曲傾向βは低車速ほど小さくなって、これを用いた後述する車両の動作応答制御が低車速では行われないようにすることができる。
ちなみに、同じ湾曲傾向βを持った湾曲路でも、低車速では高車速時のような車両の動作応答制御が不要であり、このような時に不要な車両の動作応答制御がなされる愚を避けることができる。
【0036】
ところで、上記した各実施例による湾曲傾向の検出方式においては、車両の横加速度Gyに基づき車両走行路の湾曲傾向βを検出するに当たり、この横加速度Gyをそのまま用いず、その時間変化割合である車両横加速度微分値|dGy|を基に湾曲傾向βの検出を行うため、以下の作用効果が得られる。
図13は、車両走行イメージにより示すように車両が直進路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示し、この図から明らかなように直進路走行のため、横加速度演算値Gyは継続的に0であり、横加速度微分値|dGy|も継続的に0であり、横加速度微分値|dGy|を基に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも当然0に保たれる。
【0037】
図14は、車両走行イメージにより示すように車両が湾曲路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示し、この図から明らかなように湾曲路走行のため、横加速度演算値Gyは湾曲路の湾曲状況に応じた0を基準とするサイン波形となり、その時間変化割合である横加速度微分値|dGy|は図示のごとく正値を保って連続的に変化するサイン波形となり、この横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルを前述したと同様に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βは、横加速度微分値|dGy|の振幅および変化頻度に応じたレベルとなり、このレベルが高いほど車両走行路の湾曲傾向が強い(湾曲変化頻度が高い)と判定することができる。
【0038】
図15は、左右輪間でタイヤ摩耗や空気圧が異なったり、左右輪の一方がパンクするなどして、左右輪タイヤ有効径の異なる異径タイヤ車両が、車両走行イメージにより示すように直進路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示す。
この場合、図15から明らかなように直進路走行とはいえ、左右輪タイヤ有効径が異なることに起因して横加速度演算値Gyは0でなくなり、左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値となる。
しかし、左右輪タイヤ有効径が異なることで発生する左右車輪速差は一定であり、横加速度演算値Gyも図15に示すように一定値である。
よって横加速度微分値|dGy|は継続的に0に保たれ、横加速度微分値|dGy|を基に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも当然0に保たれる。
従って、左右輪タイヤ有効径が異なったことで横加速度演算値Gyが発生しても、これが走行路湾曲傾向βの検出に影響せず、左右輪タイヤ有効径が異なった時に湾曲傾向βが誤検出されるのを防止することができる。
【0039】
図16は、左右輪タイヤ有効径の異なる異径タイヤ車両が、車両走行イメージにより示すように湾曲路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示す。
この場合、図16から明らかなように湾曲路走行のため、横加速度演算値Gyは湾曲路の湾曲状況に応じたサイン波形となるが、この波形が、波線で示す左右同径タイヤ時における横加速度演算値Gyのサイン波形(図14におけると同じ)よりも、左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値だけ図示のごとくに嵩上げされたものとなる。
しかし同じ湾曲傾向であれば、横加速度演算値Gyのサイン波形は、左右同径タイヤである場合の波形(波線図示)も、左右異径タイヤである場合の波形(実線図示)も、同じ形となり、その時間変化割合である横加速度微分値|dGy|は図示のごとく、図14におけると同様な、正値を保った連続的に変化するサイン波形となり、この横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルを0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも図14におけると同様なものとなる。
従って、左右輪タイヤ有効径が異なったことで横加速度演算値Gyが左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値だけ嵩上げされても、この嵩上げ分が走行路湾曲傾向βの検出に影響せず、左右輪タイヤ有効径が異なった時に湾曲傾向βが誤検出されるのを防止することができる。
【0040】
図1のセレクトハイ・スイッチ30は、検出部10で前記のごとくに検出した車両の加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)、および、検出部20で前記各実施例につき前述したごとくに検出した車両走行路の湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)のうち、大きい方MAX(α,β)を運転状態信号γ(0〜1間の正規化した値)として出力する。
セレクトハイ・スイッチ30から(車両運転状態信号生成部40から)の運転状態信号γ=MAX(α,β)は運転傾向判定部50に入力し、この運転傾向判定部50は運転状態信号γをフィルタリング処理して該信号γの平均出力レベルから0〜1間の値に正規化した運転傾向δ(スポーティー運転傾向、ラグジュアリー運転傾向)を判定する。
【0041】
なお、運転傾向判定部50で行う運転状態信号γのフィルタリング処理に際して用いる時定数は、時定数選択部60が前後加速度Gxと、車速VSPと、アクセル開度APOとから判る車両の運転状態に応じて定め、あらゆる運転状態で運転傾向δ(スポーティー運転傾向、ラグジュアリー運転傾向)の判定を確実、且つ、正確に行い得るようになすものとする。
【0042】
図1による運転傾向δの検出処理を、左右車輪速VL,VRがそれぞれ図17に示すごときものである場合につき説明するに、
左右車輪速VL,VR間における車輪速差(VR-VL)を基に横加速度演算部21(図4参照)で前記したごとくに演算される横加速度演算値Gy、
これを図4のバタワースフィルタ22に通過させた後の横加速度フィルタ処理値、
これを基に横加速度微分値演算部23(図4参照)で前記したごとくに演算される横加速度微分値|dGy|、および、
これを基に湾曲傾向算出部24(図4参照)で前記したごとくに演算される路面湾曲傾向(横加速度変化頻度)βはそれぞれ図17に示すように経時変化する。
【0043】
ところで図1による運転傾向δの検出処理が、検出部10からの加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)と、検出部20からの湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)との大きい方を運転状態信号γとし、運転傾向δの演算に資することから、以下の作用効果を奏し得る。
つまり、加減速傾向信号αのみを用いて運転傾向δの演算を行うと、湾曲路であっても加減速傾向信号αがそれほど大きくない運転を行う場合、運転傾向δは図17の最下段に波線で示すように小さなものとなって、湾曲路であるにもかかわらずラグジュアリー運転傾向と判定する。
これに対し図1による運転傾向δの検出処理によれば、加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)と、湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)との大きい方を運転状態信号γとし、運転傾向δの演算に資するため、湾曲路なのに加減速傾向信号αが大きくならない運転を行ったとしても、運転傾向δは湾曲路相応の湾曲傾向βに呼応して、図17の最下段に実線で示すように大きなものとなり、湾曲路では確実にこれに応じたスポーティー運転傾向と判定することができる。
【0044】
図1の運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成する場合、その制御プログラムは図18や、図19に示すごときものとなり、図18は、図1における湾曲傾向検出部20が図4に示すようなものである場合の運転傾向判定プログラム、図19は、図1における湾曲傾向検出部20が図11に示すようなものである場合の運転傾向判定プログラムである。
【0045】
先ず図18の運転傾向判定プログラムを説明するに、
ステップS11において、左右車輪速VL,VRを読み込み、
ステップS12において、図4の演算部21で行ったと同様な処理により横加速度Gyを演算する。
次いでステップS13において、横加速度演算値Gyに内包されるノイズを図4のバタワースフィルタ22によると同様なフィルタ処理により除去し、
ステップS14において、図4の演算部23で行ったと同様な処理により横加速度Gyの時間変化割合である横加速度微分値|dGy|を演算する。
【0046】
ステップS15においては、図4の算出部24で行ったと同様な処理により横加速度微分値|dGy|から湾曲傾向(湾曲変化頻度)βを求め、
ステップS16において、この湾曲傾向(湾曲変化頻度)βを前述したと同様の処理により0〜1の数値に正規化し、
ステップS17においては、図4の検出部10(詳細は図3参照)で行ったと同様な処理により前後加速度Gxおよび車速VSPから、0〜1の数値に正規化された加減速傾向αを算出する。
【0047】
次のステップS18においては、ともに正規化された加減速傾向αと湾曲傾向(湾曲変化頻度)βとを比較し、
α<βであればステップS19において、大きい方の湾曲傾向(湾曲変化頻度)βに基づき、図1の判定部50で行ったと同様な処理により運転傾向δを求め、
α>βであればステップS20において、大きい方の加減速傾向αに基づき、図1の判定部50で行ったと同様な処理により運転傾向δを求める。
【0048】
次に図19の運転傾向判定プログラムを説明するに、これは、図18のステップS13およびステップS14間にステップS21を追加したものである。
追加したステップS21においては、ステップS13で図11のバタワースフィルタ22によると同様なフィルタ処理によりノイズ除去した後の横加速度演算値Gyを、図11の横加速度補正ゲイン設定部26および乗算器27によると同様な処理により、低車速ほど小さくなるよう補正し、
ステップS14で前記したごとくに横加速度微分値|dGy|を演算するに当たっては、当該補正した横加速度演算値Gyを用い、これにより、低車速では横加速度微分値|dGy|のピークを図12(b)につき前述したごとくに抑制する。
【0049】
前記各実施例のようにして求めた車両の運転傾向β(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)は、例えば図2に示すように無段変速機の変速制御に用いて、車両の動作応答制御に供することができる。
図2において、71は、無段変速機の目標入力回転数Niを表した変速制御マップを示し、72は、無段変速機のスポーティ運転時における目標入力回転数の下限値NLim(Sporty)を表したスポーティ運転時目標入力回転数下限値マップを示し、73は、無段変速機のラグジュアリー運転時における目標入力回転数の下限値NLim(Luxuary)を表したラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップを示す。
【0050】
変速制御マップ71は、アクセル開度APOおよび車速VSPをもとに、現在の運転状態に最適な無段変速機の目標入力回転数Niを検索し、
スポーティ運転時目標入力回転数下限値マップ72は、無段変速機のスポーティ運転時における比較的高い目標入力回転数の下限値NLim(Sporty)を車速VSPごとに求め、
ラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップ73は、無段変速機のラグジュアリー運転時における比較的低い(変速制御マップ71のハイ側目標入力回転数に同じ)目標入力回転数の下限値NLim(Luxuary)を車速VSPごとに求める。
【0051】
補間計算部74は、前記した運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、現在の運転傾向δおよび車速VSPのもとでは目標入力回転数の下限値NLimを、スポーティ運転時の目標入力回転数下限値NLim(Sporty)と、ラグジュアリー運転時の目標入力回転数下限値NLim(Luxuary)との間の如何なる値にすべきかを補間計算により求める。
セレクトハイ・スイッチ75では、変速制御マップ71からの目標入力回転数Niと、補間計算部74からの目標入力回転数下限値NLimとのうち大きい方を制限済み目標入力回転数Ni(Lim)として選択し、無段変速機の実入力回転数がこの制限済み目標入力回転数Ni(Lim)に一致するよう無段変速機を変速制御する。
【0052】
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じたかかる無段変速機の変速制御によれば、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、制限済み目標入力回転数Ni(Lim)がスポーティ運転時の比較的高い目標入力回転数下限値NLim(Sporty)に接近し、結果として無段変速機は入力回転数を高く保たれるロー側変速比選択傾向となり、運転者のアクセル操作に対する車両の動作応答を高めて、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0053】
なお、運転傾向δに応じた車両の動作応答制御は、図2につき上述したような無段変速機の変速制御に限らず、図20に示すようなショックアブソーバの減衰力制御や、図21に示すローリング抑止用スタビライザの剛性切り替え制御や、図22に示すパワーステアリング用操舵シスト力制御とすることもできる。
【0054】
図20に示すショックアブソーバの減衰力制御にあっては、ショックアブソーバコントローラ76が基本的には車速VSPやブレーキスイッチ信号などの車両情報に応じてショックアブソーバの目標減衰力を決定し、ショックアブソーバの減衰力がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置77を介してショックアブソーバの減衰力調整オリフィス78を開度制御するが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標減衰力を大きくして減衰力調整オリフィス78の開度を小さくすることにより、
運転者のステアリング操作に対する車両の挙動応答を高めて、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0055】
図21に示すローリング抑止用スタビライザの剛性切り替え制御にあっては、スタビライザコントローラ79が基本的には車速VSPや操舵角θなどの車両情報に応じてスタビライザの目標剛性を決定し、スタビライザの剛性がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置80を介してスタビライザの剛性切り替え機構91を作動させるが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標剛性を大きくしてスタビライザの剛性を大きくすることにより、
運転者のステアリング操作時に車両がローリングするのを抑制して、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0056】
図22に示すパワーステアリングの操舵シスト力制御にあっては、パワーステアリングコントローラ92が基本的には車速VSPや操舵角θなどの車両情報に応じてパワーステアリングの目標アシスト力を決定し、パワーステアリングのアシスト力がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置93を介してパワーステアリングのアシスト機構94を作動させるが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標アシスト力を小さくして操舵力を重くすることにより、
スポーティー運転時に好まれる安定した操舵特性と、車両の動作応答を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例になる車両走行路の湾曲傾向検出装置を具えた、車両の運転傾向判定装置の概略を示すブロック線図である。
【図2】図1に示す運転傾向判定装置による判定結果を用いた無段変速機の変速制御装置を示すブロック線図である。
【図3】図1における加減速傾向検出部の詳細を示すブロック線図線図である。
【図4】図1における湾曲傾向検出部の詳細を示すブロック線図である。
【図5】車両の横加速度演算式を求めるのに用いた原理説明図である。
【図6】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性を示す特性線図である。
【図7】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタのフィルタ係数を車速に応じて異なせた場合のフィルタ特性を示し、 (a)は、車速が40km/hの時におけるフィルタ特性を示す特性線図、 (b)は、車速が80km/hの時におけるフィルタ特性を示す特性線図である。
【図8】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタの他の例を示すフィルタ特性線図である。
【図9】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタの更に他の例を示すフィルタ特性線図である。
【図10】図4におけるバタワースフィルタがある場合と、ない場合とで比較して示す、図4における湾曲傾向検出部の動作タイムチャートで、 (a)は、バタワースフィルタがない場合の動作タイムチャート、 (b)は、バタワースフィルタがある場合の動作タイムチャートである。
【図11】図1における湾曲傾向検出部の他の例を示す詳細ブロック線図である。
【図12】図11における横加速度補正ゲイン設定部で設定した補正ゲインによる横加速度補正効果を示すもので、 (a)は、補正前の横加速度から求めた横加速度微分値のレベルを示す線図、 (b)は、補正後の横加速度から求めた横加速度微分値のレベルを示す線図である。
【図13】車両が直進路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図14】車両が湾曲路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図15】左右輪タイヤ有効径の異なる車両が直進路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図16】左右輪タイヤ有効径の異なる車両が湾曲路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図17】図1に示す運転傾向判定装置による動作タイムチャートである。
【図18】図1に示す運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成した場合における運転傾向判定プログラムのフローチャートである。
【図19】図1に示す運転傾向判定装置における湾曲傾向検出部を図11のものに置き換え、該運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成した場合における運転傾向判定プログラムのフローチャートである。
【図20】図1に示す運転傾向判定装置をショックアブソーバの減衰力制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【図21】図1に示す運転傾向判定装置をスタビライザの剛性制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【図22】図1に示す運転傾向判定装置をパワーステアリングのアシスト力制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【符号の説明】
【0058】
1 前後加速度センサ
2 車速センサ
3 右車輪速センサ
4 左車輪速センサ
5 アクセル開度センサ
10 加減速傾向検出部
11 加速度基準値設定部
12 除算器
13 減速度基準値設定部
14 極性反転器
20 湾曲傾向検出部(湾曲傾向検出装置)
21 横加速度演算部
22 バタワースフィルタ
23 横加速度微分値演算部(横加速度微分値演算手段)
24 湾曲傾向算出部(湾曲傾向推定手段:フィルタ手段)
25 フィルタ係数設定部
26 横加速度補正ゲイン設定部
27 乗算器
30 セレクトハイ・スイッチ
40 車両運転状態信号生成部
50 運転傾向判定部
60 時定数選択部
71 変速制御マップ
72 スポーティ運転時目標入力回転数下限値マップ
73 ラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップ
74 補間計算部
75 セレクトハイ・スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行路の湾曲変化頻度や湾曲程度などの湾曲傾向を検出する装置、および、これにより検出した湾曲傾向を用いて車両の動作応答を好適に制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行路の湾曲傾向を検出する装置としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが提案されている。
この湾曲傾向検出装置は、自動変速機の変速制御に際して用いるもので、車両に作用する車幅方向の横加速度から車両がコーナリング走行中であるのを検知するものである。
【0003】
そして特許文献1は、当該コーナリング走行中を検知する間、自動変速機のアップシフトを抑制して自動変速機がロー側変速比選択傾向となるようにし、コーナリング走行の走破性を向上させる技術も開示している。
【特許文献1】特開平11−311325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来のように、車両に作用する横加速度から車両走行路の湾曲傾向を検出するのでは以下のような問題を生ずる。
つまり、車両の横加速度はコーナリング走行による以外にも、左右輪間でタイヤ摩耗や空気圧が異なったり、左右輪の一方がパンクするなどに起因して、左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合にも発生する。
【0005】
従って、従来のように車両横加速度から車両走行路の湾曲傾向を検出するのでは、上記のように左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度をも、車両走行路の湾曲傾向に基づくものであると誤判定して、湾曲傾向の検出が誤差をもったものになるという問題を生ずる。
【0006】
本発明は、上記のように左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度は、当該左右輪タイヤ有効径の異なる状態が解消されない限り継続的に発生し続けると共に理論上は同じ値に保たれるとの事実認識に基づき、従って、当該車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値は0であって、走行路湾曲傾向の検出誤差から除外されるとの観点から、
車両横加速度に代えその時間変化割合である車両横加速度微分値をもとに湾曲傾向を検出するようにした車両走行路の湾曲傾向検出装置を提供して、
左右輪タイヤ有効径が異なることとなった場合に発生する横加速度を湾曲傾向と誤判定するような従来の問題を解消することを目的とする。
【0007】
本発明は更に、上記のような車両走行路の湾曲傾向検出装置により検出した湾曲傾向に基づき、運転操作に対する車両の動作が好適な応答となるよう車両状態を制御し得るようにした車両の動作応答制御装置をも提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前者の目的のため、本発明による車両走行路の湾曲傾向検出装置は、請求項1に記載のごとく、
車両に作用する車幅方向の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出する装置を前提とし、
前記車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値を求めるための横加速度微分値演算手段と、
該手段で求めた車両横加速度微分値をもとに前記車両走行路の湾曲傾向を推定する湾曲傾向推定手段とを具備してなることを特徴とするものである。
【0009】
また後者の目的のため、本発明による車両の動作応答制御装置は、請求項5に記載のごとく、
上記の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するよう構成したものである。
【発明の効果】
【0010】
前者の本発明による車両走行路の湾曲傾向検出装置によれば、
車両の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出するが、この横加速度をそのまま用いず、その時間変化割合である車両横加速度微分値をもとに車両走行路の湾曲傾向を推定するため、
そして、左右輪タイヤ有効径が異なることで発生している横加速度の微分値は理論上0に保たれて走行路湾曲傾向の検出に影響しないから、
左右輪タイヤ有効径が異なることで発生している横加速度を湾曲傾向と誤判定する前記した従来の問題を解消することができ、湾曲傾向検出精度を向上させることができる。
【0011】
また後者の本発明による車両の動作応答制御装置によれば、
上記の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するため、
運転操作に対する車両の動作が湾曲傾向に応じた好適な応答となり、湾曲傾向が強い時は湾曲路の走破性を向上させ、湾曲傾向が強くない時は不要に高い車両の動作応答で乗り心地が悪くなる弊害を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる車両走行路の湾曲傾向検出装置を具えた車両の運転傾向(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)判定装置を示し、
図2は、図1の車両運転傾向判定装置による判定結果を用いる無段変速機の変速制御システム(本発明による車両動作応答制御装置の一実施例)である。
【0013】
先ず図1の車両運転傾向判定装置を説明するに、この判定装置は、
車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ1からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ2からの信号と、
右車輪速VRを検出する右車輪速センサ3からの信号と、
左車輪速VLを検出する左車輪速センサ4からの信号と、
アクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ5からの信号を入力信号とし、
以下のようにして、運転者による車両の運転傾向(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)を判定する。
【0014】
これがため図1の車両運転傾向判定装置は、運転者による車両の加減速操作傾向を検出する加減速傾向検出部10と、本発明の湾曲傾向検出装置に相当する湾曲傾向検出部20と、検出部10からの加減速傾向信号αおよび検出部20からの湾曲傾向信号βのうち大きい方を選択して運転状態信号γとするセレクトハイ・スイッチ30とより成る車両運転状態信号生成部40を具えるほか、
該生成部40からの運転状態信号γをフィルタリング処理して該信号γの平均出力レベルから運転傾向を判定する運転傾向判定部50と、
この判定部50で行うフィルタリング処理に際して用いる時定数を選択するための時定数選択部60とを具える。
【0015】
加減速傾向検出部10は図3に示すごときもので、前後加速度Gxおよび車速VSPをもとに車両の加減速度合を検出して加減速傾向信号αを以下のように求める。
上記のGxが加速度(正値)である場合は、加速度基準値設定部11において予定のマップを基に車速VSPから、車両の可能最大加速度を加速度基準値Gaとして設定する。
次いで除算器12において、前後加速度Gxを加速度基準値Gaにより除算することにより、今の前後加速度Gxが最大加速度(加速度基準値)Gaに対してどの程度のものかを正規化(0〜1の信号に変換)した加速度正規化値αa=Gx/Gaを求める。
【0016】
上記のGxが減速度(負値)である場合は、減速度基準値設定部13において予定のマップを基に車速VSPから、車両の可能最大減速度を減速度基準値Gbとして設定する。
次いで、減速度Gxを極性合わせのため極性反転器14により極性反転させ、除算器15において、減速度Gxの極性反転値を減速度基準値Gbにより除算することにより、今の減速度Gxが最大減速度(減速度基準値)Gbに対してどの程度のものかを正規化(0〜1の信号に変換)した減速度正規化値αb=|Gx|/Gbを求める。
この減速度正規化値αbを、加算器16で前記の加速度正規化値αaと合計して、両者の和値を、正規化した加減速傾向信号α=αa+αbとして図1のセレクトハイ・スイッチ30に供給する。
【0017】
図1における湾曲傾向検出部20は本発明における湾曲傾向検出装置に相当し、図4に示すごとく、横加速度演算部21と、バタワースフィルタ22と、横加速度微分値演算部23と、ローパスフィルタで構成した湾曲傾向算出部24とよりなり、該ローパスフィルタのフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定部25を付加して構成する。
【0018】
横加速度演算部21は、右車輪速VRおよび左車輪速VLから、図5につき以下に説明する理論に基づき車両に作用する横加速度Gyを算出するものである。
【0019】
先ず図5の理論を説明するに、図中、6Lは左車輪、6Rは右車輪である。
ここで、右車輪速VRおよび左車輪速VLの平均値Vwは、Vw=(VR+VL)/2で表され、これに車両旋回半径Rを乗算して得られる値は、右車輪速VRおよび左車輪速VL間の車輪速差(VR−VL)を左右輪間トレッドWで除算して得られる値に等しく、
{(VR+VL)/2}R=(VR−VL)/W
であり、この式から次式が得られる。
{(VR+VL)/(VR−VL)}W/2=R
ところで横加速度Gyは、Gy=Vw×2/Rであり、従って、横加速度Gyは、
Gy=Vw×2/R
=(VR−VL)・(VR+VL)}・(1/2)W
で表される。
【0020】
図4における横加速度演算部21は、右車輪速VRおよび左車輪速VLと、左右輪間トレッドWの半値とから、上式の演算により横加速度Gyを求める。
なお横加速度Gyは、かように演算により求めるのが経済的であるが、この代わりに、横加速度センサにより直接検出してもよいことは言うまでもない。
【0021】
上記の演算により求めた横加速度Gyはバタワースフィルタ22に通過させ、これにより、後述するごとく不整地走行などに伴う左右輪速差に起因して横加速度Gyの演算値に含まれる横加速度演算誤差を除去する。
図4における横加速度微分値演算部23は、かようにバタワースフィルタ22に通過させた後における横加速度(Gy)フィルタ処理値の時間変化割合である横加速度微分値dGyを求めて、その絶対値|dGy|を出力する。
従って横加速度微分値演算部23は、本発明における横加速度微分値演算手段に相当する。
【0022】
その後、かかる横加速度微分値|dGy|を湾曲傾向算出部24に通過させて車両走行路の湾曲傾向βを求める。
ここで湾曲傾向算出部24は、車速VSPが40km/hである場合について説明すると、図6に例示するごとく低い周波数領域で振幅ゲインが大きなフィルタゲイン特性を持ったローパスフィルタとし、走行状態に応じて異なる有効周波数帯の横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し、当該ローパスフィルタを通過して抽出された横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルから、前述したと同様にして0〜1の数値に正規化した車両走行路の湾曲傾向βを求める。
従って湾曲傾向算出部24はは、本発明における湾曲傾向推定手段に相当する。
【0023】
ところで、上記のように抽出すべき横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は、車速VSPなどの走行状態に応じて異なり、車速VSPが40km/hの時は横加速度微分値|dGy|が図7(a),(b)に波線(図6と同じもの)で示すごとく低周波数域で発生するが、車速VSPが80km/hの時は横加速度微分値|dGy|が図7(a),(b)に実線で示すごとく高周波数域で発生し、上記横加速度微分値|dGy|の有効周波数帯は車速VSPが高いほど高周波数域となる。
【0024】
この事実から、図4に示すようにフィルタ係数設定部25を設け、これにより、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタ係数を、車速VSP(図5につき前述した車輪速平均値Vwでもよい)に応じ、高車速ほど高周波数域の横加速度微分値|dGy|を抽出し得るフィルタゲイン特性となるよう制御可能にする。
【0025】
従って、車速VSP=40km/hの時は、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性が図6および図7(a)に示すごときものとなって、車速VSP=40km/h時の有効周波数帯における横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し得ることとなり、また、
車速VSP=80km/hの時は、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性が図7(b)に示すごときものとなって、車速VSP=80km/h時の有効周波数帯における横加速度微分値|dGy|を抽出すると共にそれ以外の周波数帯におけるノイズ成分を除去し得ることとなる。
【0026】
なお、湾曲傾向算出部24を成すローパスフィルタとしては、車速VSPに応じて有効周波数帯が異なる横加速度微分値|dGy|を抽出できれば、上記の単一のローパスに限らず、図8に例示するようなフィルタゲイン特性を持ったバンドパスフィルタでもよいし、図9に例示するようなローパスフィルおよびハイパスフィルタの組み合わせにより構成してもよいことは言うまでもない。
【0027】
図4における演算部21で前記のようにして演算した横加速度Gyをバタワースフィルタ22に通過させ、当該横加速度Gyの演算値に含まれる横加速度演算誤差を除去することによる効果を、図10に基づき以下に説明する。
図10(a)は、図4におけるバタワースフィルタ22が存在せず、横加速度演算値Gyをそのまま横加速度微分値演算部23に入力して横加速度微分値|dGy|の演算に資する場合における、直進走行時の動作タイムチャート、
図10(b)は、図4に示すようにバタワースフィルタ22を設け、横加速度演算値Gyをバタワースフィルタ22に通過させた後に横加速度微分値演算部23へ入力して横加速度微分値|dGy|の演算に資する場合における、直進走行時の動作タイムチャートである。
【0028】
図10(a),(b)に示すように、左右車輪速VL,VRがそれぞれ不整地などに起因して振動的に変化する場合(図では左右車輪速VL,VRの一方のみを示す)、両者の変動が同期せず位相ずれをもって変動することから、両者間の車輪速差(VL-VR)が直進走行時なのに図示のごとくに発生する。
このため、図4の演算部21で車輪速差(VL-VR)を用いて前記のごとくに演算した横加速度演算値Gyは、横加速度発生原因でないにもかかわらず、位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)をも横加速度発生原因として内包し、図10(a),(b)に示すごときものとなる。
【0029】
バタワースフィルタ22を設けない場合、図10(a)に示すように横加速度フィルタ処理値が横加速度演算値Gyと同じであり、これがそのまま図4の横加速度微分値演算部23に入力され、横加速度微分値|dGy|の演算に供される。
【0030】
よって横加速度微分値|dGy|が、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分をも内包する横加速度演算値Gyに基づくものであることから、直進走行時なのに図10(a)に示すように大きくなる。
従って、この横加速度微分値|dGy|を基に図4の算出部24で前記のごとくに求める車両走行路の湾曲傾向βが、直進走行中であるにもかかわらず、図10(a)に示すように発生し、この湾曲傾向βから後述するように求める車両運転傾向δも、本来なら加減速傾向のみを持った波線で示すごときものであるところ、実線で示すように誤差を持ったものになる。
【0031】
これに対し図4のようにバタワースフィルタ22を設けた場合、図10(b)に示すように横加速度フィルタ処理値が、横加速度演算値Gyをバタワースフィルタ22に通過させて得られたもの、つまり、横加速度演算値Gyから、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分を除去したものとなり、かかるフィルタ処理後の横加速度演算値Gyが図4の横加速度微分値演算部23に入力され、横加速度微分値|dGy|の演算に供される。
【0032】
よって横加速度微分値|dGy|が、不整地などのため位相ずれをもって振動的に変化する左右車輪速VL,VR間の上記車輪速差(VL-VR)に起因した演算値成分を含まない横加速度演算値Gyに基づくものとなり、横加速度微分値|dGy|が直進走行に符合して図10(b)に示すごとく略0に保たれる。
従って、この横加速度微分値|dGy|を基に図4の算出部24で前記のごとくに求める車両走行路の湾曲傾向βが、直進走行に符合して図10(b)に示すように0に保たれ、この湾曲傾向βから後述するように求める車両運転傾向δも、加減速傾向のみを持った図示するごとき誤差のないものになる。
【0033】
図11は、図1における湾曲傾向検出部20の他の実施例で、図4におけると同様の部分を同一符号にて示す。
本実施例においては、バタワースフィルタ22に通過させた横加速度演算値Gyをそのまま横加速度微分値演算部23へ入力せず、横加速度補正ゲイン設定部26で設定した補正ゲインにより、特に低車速時において横加速度演算値Gyを小さくなるよう補正し、低車速時はこの補正した横加速度演算値Gyを横加速度微分値演算部23へ入力するようになす。
【0034】
これがため横加速度補正ゲイン設定部26は、車速VSP(図5につき前述した車輪速平均値Vwでもよい)を基に予定のマップから、低車速で小さくなる横加速度補正ゲイン(1より小さな正値)を検索して設定し、これを乗算器27において、バタワースフィルタ22に通過させた横加速度演算値Gyに乗算し、低車速で小さくなる補正済横加速度演算値Gyを求める。
【0035】
従って、横加速度微分値演算部23が補正済横加速度演算値Gyから前記したごとくに求める横加速度微分値|dGy|は、車速VSP=10km/h時について述べると、横加速度演算値Gyを補正しない場合の図12(a)に示す大きな値に対し、同図(b)に示すごとき小さなものとなり、低車速時に横加速度微分値|dGy|のピークを抑制することができる。
かようにすることにより、湾曲傾向算出部24が横加速度微分値|dGy|から前記したごとくに求める湾曲傾向βは低車速ほど小さくなって、これを用いた後述する車両の動作応答制御が低車速では行われないようにすることができる。
ちなみに、同じ湾曲傾向βを持った湾曲路でも、低車速では高車速時のような車両の動作応答制御が不要であり、このような時に不要な車両の動作応答制御がなされる愚を避けることができる。
【0036】
ところで、上記した各実施例による湾曲傾向の検出方式においては、車両の横加速度Gyに基づき車両走行路の湾曲傾向βを検出するに当たり、この横加速度Gyをそのまま用いず、その時間変化割合である車両横加速度微分値|dGy|を基に湾曲傾向βの検出を行うため、以下の作用効果が得られる。
図13は、車両走行イメージにより示すように車両が直進路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示し、この図から明らかなように直進路走行のため、横加速度演算値Gyは継続的に0であり、横加速度微分値|dGy|も継続的に0であり、横加速度微分値|dGy|を基に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも当然0に保たれる。
【0037】
図14は、車両走行イメージにより示すように車両が湾曲路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示し、この図から明らかなように湾曲路走行のため、横加速度演算値Gyは湾曲路の湾曲状況に応じた0を基準とするサイン波形となり、その時間変化割合である横加速度微分値|dGy|は図示のごとく正値を保って連続的に変化するサイン波形となり、この横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルを前述したと同様に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βは、横加速度微分値|dGy|の振幅および変化頻度に応じたレベルとなり、このレベルが高いほど車両走行路の湾曲傾向が強い(湾曲変化頻度が高い)と判定することができる。
【0038】
図15は、左右輪間でタイヤ摩耗や空気圧が異なったり、左右輪の一方がパンクするなどして、左右輪タイヤ有効径の異なる異径タイヤ車両が、車両走行イメージにより示すように直進路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示す。
この場合、図15から明らかなように直進路走行とはいえ、左右輪タイヤ有効径が異なることに起因して横加速度演算値Gyは0でなくなり、左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値となる。
しかし、左右輪タイヤ有効径が異なることで発生する左右車輪速差は一定であり、横加速度演算値Gyも図15に示すように一定値である。
よって横加速度微分値|dGy|は継続的に0に保たれ、横加速度微分値|dGy|を基に0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも当然0に保たれる。
従って、左右輪タイヤ有効径が異なったことで横加速度演算値Gyが発生しても、これが走行路湾曲傾向βの検出に影響せず、左右輪タイヤ有効径が異なった時に湾曲傾向βが誤検出されるのを防止することができる。
【0039】
図16は、左右輪タイヤ有効径の異なる異径タイヤ車両が、車両走行イメージにより示すように湾曲路を走行している間における、前記横加速度演算値Gy、横加速度微分値|dGy|、および湾曲傾向βの経時変化を示す。
この場合、図16から明らかなように湾曲路走行のため、横加速度演算値Gyは湾曲路の湾曲状況に応じたサイン波形となるが、この波形が、波線で示す左右同径タイヤ時における横加速度演算値Gyのサイン波形(図14におけると同じ)よりも、左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値だけ図示のごとくに嵩上げされたものとなる。
しかし同じ湾曲傾向であれば、横加速度演算値Gyのサイン波形は、左右同径タイヤである場合の波形(波線図示)も、左右異径タイヤである場合の波形(実線図示)も、同じ形となり、その時間変化割合である横加速度微分値|dGy|は図示のごとく、図14におけると同様な、正値を保った連続的に変化するサイン波形となり、この横加速度微分値|dGy|の平均出力レベルを0〜1の値に正規化して求めた湾曲傾向βも図14におけると同様なものとなる。
従って、左右輪タイヤ有効径が異なったことで横加速度演算値Gyが左右輪タイヤ有効径の差(左右車輪速差)に応じた横加速度分の値だけ嵩上げされても、この嵩上げ分が走行路湾曲傾向βの検出に影響せず、左右輪タイヤ有効径が異なった時に湾曲傾向βが誤検出されるのを防止することができる。
【0040】
図1のセレクトハイ・スイッチ30は、検出部10で前記のごとくに検出した車両の加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)、および、検出部20で前記各実施例につき前述したごとくに検出した車両走行路の湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)のうち、大きい方MAX(α,β)を運転状態信号γ(0〜1間の正規化した値)として出力する。
セレクトハイ・スイッチ30から(車両運転状態信号生成部40から)の運転状態信号γ=MAX(α,β)は運転傾向判定部50に入力し、この運転傾向判定部50は運転状態信号γをフィルタリング処理して該信号γの平均出力レベルから0〜1間の値に正規化した運転傾向δ(スポーティー運転傾向、ラグジュアリー運転傾向)を判定する。
【0041】
なお、運転傾向判定部50で行う運転状態信号γのフィルタリング処理に際して用いる時定数は、時定数選択部60が前後加速度Gxと、車速VSPと、アクセル開度APOとから判る車両の運転状態に応じて定め、あらゆる運転状態で運転傾向δ(スポーティー運転傾向、ラグジュアリー運転傾向)の判定を確実、且つ、正確に行い得るようになすものとする。
【0042】
図1による運転傾向δの検出処理を、左右車輪速VL,VRがそれぞれ図17に示すごときものである場合につき説明するに、
左右車輪速VL,VR間における車輪速差(VR-VL)を基に横加速度演算部21(図4参照)で前記したごとくに演算される横加速度演算値Gy、
これを図4のバタワースフィルタ22に通過させた後の横加速度フィルタ処理値、
これを基に横加速度微分値演算部23(図4参照)で前記したごとくに演算される横加速度微分値|dGy|、および、
これを基に湾曲傾向算出部24(図4参照)で前記したごとくに演算される路面湾曲傾向(横加速度変化頻度)βはそれぞれ図17に示すように経時変化する。
【0043】
ところで図1による運転傾向δの検出処理が、検出部10からの加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)と、検出部20からの湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)との大きい方を運転状態信号γとし、運転傾向δの演算に資することから、以下の作用効果を奏し得る。
つまり、加減速傾向信号αのみを用いて運転傾向δの演算を行うと、湾曲路であっても加減速傾向信号αがそれほど大きくない運転を行う場合、運転傾向δは図17の最下段に波線で示すように小さなものとなって、湾曲路であるにもかかわらずラグジュアリー運転傾向と判定する。
これに対し図1による運転傾向δの検出処理によれば、加減速傾向信号α(0〜1間の正規化した値)と、湾曲傾向信号β(0〜1間の正規化した値)との大きい方を運転状態信号γとし、運転傾向δの演算に資するため、湾曲路なのに加減速傾向信号αが大きくならない運転を行ったとしても、運転傾向δは湾曲路相応の湾曲傾向βに呼応して、図17の最下段に実線で示すように大きなものとなり、湾曲路では確実にこれに応じたスポーティー運転傾向と判定することができる。
【0044】
図1の運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成する場合、その制御プログラムは図18や、図19に示すごときものとなり、図18は、図1における湾曲傾向検出部20が図4に示すようなものである場合の運転傾向判定プログラム、図19は、図1における湾曲傾向検出部20が図11に示すようなものである場合の運転傾向判定プログラムである。
【0045】
先ず図18の運転傾向判定プログラムを説明するに、
ステップS11において、左右車輪速VL,VRを読み込み、
ステップS12において、図4の演算部21で行ったと同様な処理により横加速度Gyを演算する。
次いでステップS13において、横加速度演算値Gyに内包されるノイズを図4のバタワースフィルタ22によると同様なフィルタ処理により除去し、
ステップS14において、図4の演算部23で行ったと同様な処理により横加速度Gyの時間変化割合である横加速度微分値|dGy|を演算する。
【0046】
ステップS15においては、図4の算出部24で行ったと同様な処理により横加速度微分値|dGy|から湾曲傾向(湾曲変化頻度)βを求め、
ステップS16において、この湾曲傾向(湾曲変化頻度)βを前述したと同様の処理により0〜1の数値に正規化し、
ステップS17においては、図4の検出部10(詳細は図3参照)で行ったと同様な処理により前後加速度Gxおよび車速VSPから、0〜1の数値に正規化された加減速傾向αを算出する。
【0047】
次のステップS18においては、ともに正規化された加減速傾向αと湾曲傾向(湾曲変化頻度)βとを比較し、
α<βであればステップS19において、大きい方の湾曲傾向(湾曲変化頻度)βに基づき、図1の判定部50で行ったと同様な処理により運転傾向δを求め、
α>βであればステップS20において、大きい方の加減速傾向αに基づき、図1の判定部50で行ったと同様な処理により運転傾向δを求める。
【0048】
次に図19の運転傾向判定プログラムを説明するに、これは、図18のステップS13およびステップS14間にステップS21を追加したものである。
追加したステップS21においては、ステップS13で図11のバタワースフィルタ22によると同様なフィルタ処理によりノイズ除去した後の横加速度演算値Gyを、図11の横加速度補正ゲイン設定部26および乗算器27によると同様な処理により、低車速ほど小さくなるよう補正し、
ステップS14で前記したごとくに横加速度微分値|dGy|を演算するに当たっては、当該補正した横加速度演算値Gyを用い、これにより、低車速では横加速度微分値|dGy|のピークを図12(b)につき前述したごとくに抑制する。
【0049】
前記各実施例のようにして求めた車両の運転傾向β(スポーティー運転傾向や、ラグジュアリ運転傾向)は、例えば図2に示すように無段変速機の変速制御に用いて、車両の動作応答制御に供することができる。
図2において、71は、無段変速機の目標入力回転数Niを表した変速制御マップを示し、72は、無段変速機のスポーティ運転時における目標入力回転数の下限値NLim(Sporty)を表したスポーティ運転時目標入力回転数下限値マップを示し、73は、無段変速機のラグジュアリー運転時における目標入力回転数の下限値NLim(Luxuary)を表したラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップを示す。
【0050】
変速制御マップ71は、アクセル開度APOおよび車速VSPをもとに、現在の運転状態に最適な無段変速機の目標入力回転数Niを検索し、
スポーティ運転時目標入力回転数下限値マップ72は、無段変速機のスポーティ運転時における比較的高い目標入力回転数の下限値NLim(Sporty)を車速VSPごとに求め、
ラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップ73は、無段変速機のラグジュアリー運転時における比較的低い(変速制御マップ71のハイ側目標入力回転数に同じ)目標入力回転数の下限値NLim(Luxuary)を車速VSPごとに求める。
【0051】
補間計算部74は、前記した運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、現在の運転傾向δおよび車速VSPのもとでは目標入力回転数の下限値NLimを、スポーティ運転時の目標入力回転数下限値NLim(Sporty)と、ラグジュアリー運転時の目標入力回転数下限値NLim(Luxuary)との間の如何なる値にすべきかを補間計算により求める。
セレクトハイ・スイッチ75では、変速制御マップ71からの目標入力回転数Niと、補間計算部74からの目標入力回転数下限値NLimとのうち大きい方を制限済み目標入力回転数Ni(Lim)として選択し、無段変速機の実入力回転数がこの制限済み目標入力回転数Ni(Lim)に一致するよう無段変速機を変速制御する。
【0052】
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じたかかる無段変速機の変速制御によれば、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、制限済み目標入力回転数Ni(Lim)がスポーティ運転時の比較的高い目標入力回転数下限値NLim(Sporty)に接近し、結果として無段変速機は入力回転数を高く保たれるロー側変速比選択傾向となり、運転者のアクセル操作に対する車両の動作応答を高めて、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0053】
なお、運転傾向δに応じた車両の動作応答制御は、図2につき上述したような無段変速機の変速制御に限らず、図20に示すようなショックアブソーバの減衰力制御や、図21に示すローリング抑止用スタビライザの剛性切り替え制御や、図22に示すパワーステアリング用操舵シスト力制御とすることもできる。
【0054】
図20に示すショックアブソーバの減衰力制御にあっては、ショックアブソーバコントローラ76が基本的には車速VSPやブレーキスイッチ信号などの車両情報に応じてショックアブソーバの目標減衰力を決定し、ショックアブソーバの減衰力がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置77を介してショックアブソーバの減衰力調整オリフィス78を開度制御するが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標減衰力を大きくして減衰力調整オリフィス78の開度を小さくすることにより、
運転者のステアリング操作に対する車両の挙動応答を高めて、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0055】
図21に示すローリング抑止用スタビライザの剛性切り替え制御にあっては、スタビライザコントローラ79が基本的には車速VSPや操舵角θなどの車両情報に応じてスタビライザの目標剛性を決定し、スタビライザの剛性がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置80を介してスタビライザの剛性切り替え機構91を作動させるが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標剛性を大きくしてスタビライザの剛性を大きくすることにより、
運転者のステアリング操作時に車両がローリングするのを抑制して、スポーティー運転時に好まれる車両の動作応答を実現することができる。
【0056】
図22に示すパワーステアリングの操舵シスト力制御にあっては、パワーステアリングコントローラ92が基本的には車速VSPや操舵角θなどの車両情報に応じてパワーステアリングの目標アシスト力を決定し、パワーステアリングのアシスト力がこの目標に一致するようモータや油圧ソレノイドなどの駆動装置93を介してパワーステアリングのアシスト機構94を作動させるが、
運転傾向δ(スポーティー運転傾向と、ラグジュアリー運転傾向との間の値)に応じ、運転傾向δがスポーティー運転傾向であればあるほど、上記の目標アシスト力を小さくして操舵力を重くすることにより、
スポーティー運転時に好まれる安定した操舵特性と、車両の動作応答を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例になる車両走行路の湾曲傾向検出装置を具えた、車両の運転傾向判定装置の概略を示すブロック線図である。
【図2】図1に示す運転傾向判定装置による判定結果を用いた無段変速機の変速制御装置を示すブロック線図である。
【図3】図1における加減速傾向検出部の詳細を示すブロック線図線図である。
【図4】図1における湾曲傾向検出部の詳細を示すブロック線図である。
【図5】車両の横加速度演算式を求めるのに用いた原理説明図である。
【図6】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタのフィルタゲイン特性を示す特性線図である。
【図7】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタのフィルタ係数を車速に応じて異なせた場合のフィルタ特性を示し、 (a)は、車速が40km/hの時におけるフィルタ特性を示す特性線図、 (b)は、車速が80km/hの時におけるフィルタ特性を示す特性線図である。
【図8】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタの他の例を示すフィルタ特性線図である。
【図9】図4における湾曲傾向算出部を成すローパスフィルタの更に他の例を示すフィルタ特性線図である。
【図10】図4におけるバタワースフィルタがある場合と、ない場合とで比較して示す、図4における湾曲傾向検出部の動作タイムチャートで、 (a)は、バタワースフィルタがない場合の動作タイムチャート、 (b)は、バタワースフィルタがある場合の動作タイムチャートである。
【図11】図1における湾曲傾向検出部の他の例を示す詳細ブロック線図である。
【図12】図11における横加速度補正ゲイン設定部で設定した補正ゲインによる横加速度補正効果を示すもので、 (a)は、補正前の横加速度から求めた横加速度微分値のレベルを示す線図、 (b)は、補正後の横加速度から求めた横加速度微分値のレベルを示す線図である。
【図13】車両が直進路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図14】車両が湾曲路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図15】左右輪タイヤ有効径の異なる車両が直進路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図16】左右輪タイヤ有効径の異なる車両が湾曲路を走行している時における図4および図11に示す湾曲傾向検出部の動作タイムチャートである。
【図17】図1に示す運転傾向判定装置による動作タイムチャートである。
【図18】図1に示す運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成した場合における運転傾向判定プログラムのフローチャートである。
【図19】図1に示す運転傾向判定装置における湾曲傾向検出部を図11のものに置き換え、該運転傾向判定装置をマイクロコンピュータで構成した場合における運転傾向判定プログラムのフローチャートである。
【図20】図1に示す運転傾向判定装置をショックアブソーバの減衰力制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【図21】図1に示す運転傾向判定装置をスタビライザの剛性制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【図22】図1に示す運転傾向判定装置をパワーステアリングのアシスト力制御に用いた場合の機能別ブロック線図である。
【符号の説明】
【0058】
1 前後加速度センサ
2 車速センサ
3 右車輪速センサ
4 左車輪速センサ
5 アクセル開度センサ
10 加減速傾向検出部
11 加速度基準値設定部
12 除算器
13 減速度基準値設定部
14 極性反転器
20 湾曲傾向検出部(湾曲傾向検出装置)
21 横加速度演算部
22 バタワースフィルタ
23 横加速度微分値演算部(横加速度微分値演算手段)
24 湾曲傾向算出部(湾曲傾向推定手段:フィルタ手段)
25 フィルタ係数設定部
26 横加速度補正ゲイン設定部
27 乗算器
30 セレクトハイ・スイッチ
40 車両運転状態信号生成部
50 運転傾向判定部
60 時定数選択部
71 変速制御マップ
72 スポーティ運転時目標入力回転数下限値マップ
73 ラグジュアリー運転時目標入力回転数下限値マップ
74 補間計算部
75 セレクトハイ・スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に作用する車幅方向の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出する装置において、
前記車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値を求めるための横加速度微分値演算手段と、
該手段で求めた車両横加速度微分値をもとに前記車両走行路の湾曲傾向を推定する湾曲傾向推定手段とを具備してなることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記湾曲傾向推定手段は、車両走行状態に応じた有効周波数帯の前記車両加速度微分値を抽出するフィルタ手段を具え、該フィルタ手段を通過した車両横加速度微分値の平均出力レベルから車両走行路の湾曲傾向を推定するものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記フィルタ手段は、前記有効周波数帯を高車速であるほど高周波数帯とするものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記横加速度微分値演算手段は、低車速であるほど前記車両横加速度微分値のピークを抑制するものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するよう構成したことを特徴とする車両の動作応答制御装置。
【請求項1】
車両に作用する車幅方向の横加速度に基づき車両走行路の湾曲傾向を検出する装置において、
前記車両横加速度の時間変化割合である車両横加速度微分値を求めるための横加速度微分値演算手段と、
該手段で求めた車両横加速度微分値をもとに前記車両走行路の湾曲傾向を推定する湾曲傾向推定手段とを具備してなることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記湾曲傾向推定手段は、車両走行状態に応じた有効周波数帯の前記車両加速度微分値を抽出するフィルタ手段を具え、該フィルタ手段を通過した車両横加速度微分値の平均出力レベルから車両走行路の湾曲傾向を推定するものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記フィルタ手段は、前記有効周波数帯を高車速であるほど高周波数帯とするものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両走行路の湾曲傾向検出装置において、
前記横加速度微分値演算手段は、低車速であるほど前記車両横加速度微分値のピークを抑制するものであることを特徴とする車両走行路の湾曲傾向検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の湾曲傾向検出装置により検出した車両走行路の湾曲傾向が強いほど、運転者の運転操作に対する車両の動作応答が速くなるよう車両状態を制御するよう構成したことを特徴とする車両の動作応答制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−245897(P2007−245897A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71354(P2006−71354)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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