説明

車両連結装置

【課題】前後に並ぶ自走車両を所定の間隔に保持可能な車両連結装置を提供する。
【解決手段】隊列先頭の自走車両7の後端に接続した外筒2にボールスクリュー3を枢支し、このボールスクリュー3に螺合したナット5を、後続の自走車両9の前部に接続した内筒4に固着し、ボールスクリュー3の回転を拘束し得るディスクブレーキ6、及び前後の自走車両7,9の間隔が変動したときに、車速を調整するコントローラ14を装備している。
すなわち、ディスクブレーキ6によりボールスクリュー3の回転を拘束してナット5の移動を抑え、自走車両7,9の間隔を固定する。
あるいは、コントローラ14により車速を調整して自走車両7,9の間隔の変動を直ちに止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のトラックを一列に並べて連結し、先頭の車両のみに運転者が搭乗して後続の車両を遠隔操縦する隊列走行を主に遠距離区間で行ない、貨物を集荷配送時には、連結を解いて各車両を個別に運行する輸送システム(デュアルモードトランスポーテーション/DMT)の研究開発が、鋭意進められている。
【0003】
従来、軌条を用いない自走車両を複数連結して、上記のように隊列走行をさせた具体例はないが、被牽引車に連結した外筒、自走車両に連結器を介して接続した内筒、及び一端を外筒に連係し且つ他端が緩衝器を介して内筒に連係したブラケットを備えた連結装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−109872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のものを隊列走行を行なう自走車両に適用した場合には、緩衝器の伸縮のために、前後の車両の間隔が最大になる状態と最小になる状態とが繰り返され、各車両が衝撃を受け続けることになる。
【0005】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、前後に並ぶ自走車両を所定の間隔に保持可能な車両連結装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、前後に並ぶ自走車両の一方に対して枢支され且つ他方の自走車両へ向けて延びるボールスクリューと、当該ボールスクリューに螺合し且つ他方の自走車両に付帯するナットと、前記ボールスクリューの回転を拘束し得る規制手段とを備え、例えば、規制手段を摩擦ブレーキ機構とする。
【0007】
前後に並ぶ自走車両の一方に対して枢支され且つ他方の自走車両へ向けて延びるボールスクリューと、当該ボールスクリューに螺合し且つ他方の自走車両に付帯するナットと、前記ボールスクリューの回転を抑制し得る規制手段とを備え、例えば、調整機構を発電機とする。
【0008】
更に、車両の間隔が変動したとき、車速を調整するコントローラを装備する。
【0009】
本発明においては、規制手段によりボールスクリューの回転を拘束してナットの移動を抑え、前後に並ぶ自走車両の間隔を固定する。
【0010】
また、規制手段によりボールスクリューの回転を抑制してナットの動きを遅くし、前後に並ぶ自走車両の間隔の拡縮を緩やかにする。
【0011】
更に、コントローラにより車速を調整して車両間隔の変動を直ちに止める。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両連結装置によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0013】
(1)ボールスクリューの回転を拘束可能な規制手段により前後に並ぶ自走車両を所定の間隔に保持すると、当該自走車両の一方が発揮する駆動力や制動力を他方の自走車両へ伝えることができるので、隊列走行を効率よく且つ安全に行なえる。
【0014】
(2)ボールスクリューの回転を抑制可能な規制手段により前後に並ぶ自走車両の間隔の拡縮を緩やかにすると、自走車両の一方の挙動が直ちに他方の自走車両へ影響を与えることを防げるので、隊列走行を安全に行なえる。
【0015】
(3)コントローラを装備した場合は、車速の調整によって車両間隔の変動を解消するので、ボールスクリュー及びナットなどに過大な引張力や圧縮力が作用せず、これら部材の損傷を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0017】
図1及び図2は本発明の車両連結装置の実施の形態の第1の例を示すもので、前端部にハウジング1に締結した外筒2と、該外筒2内に同軸に枢支したボールスクリュー3と、外筒2に後端部から同軸に且つ前後へ移動可能に入り込む内筒4と、該内筒4の前端部に固着され且つボールスクリュー3に螺合したナット5と、前記ハウジング1に組み込まれ且つボールスクリュー3の回転を拘束し得るディスクブレーキ6と、自走車両7の後端にハウジング1を接続するユニバーサルジョイント8と、別の自走車両9の前端に内筒4を接続するユニバーサルジョイント10と、ディスクブレーキ6に付帯し且つそのディスクロータ11の回転変位を検出するエンコーダ12と、自走車両7に装備され且つ手動操作に応じて指令を発信するスイッチ13と、同じく自走車両7に装備したコントローラ14とを備えている。
【0018】
ボールスクリュー3を枢支しているベアリング15は、ホルダ16により外筒2に拘束され、外筒2の後端部にはベアリング17が、内筒4の外周面に当接するように嵌装してある。
【0019】
内筒4の内方に位置するボールスクリュー3の後端部には、ストッパ18が取り付けてあり、ボールスクリュー3の前端部には、ジョイント19を介してディスクブレーキ6のディスクロータ11が接続してある。
【0020】
コントローラ14は、
A.スイッチ13から指令を受けたときにディスクブレーキ6を作動させる機能、
B.隊列走行時に、エンコーダ12により得られるディスクロータ11の回転変位の情報に基づき前後の自走車両7,9の間隔の拡縮を判定する機能、
C.上記B項での判定に応じて後続の自走車両9の車速を調整する機能、
を具備している。
【0021】
B項の機能とC項の機能について説明すると、ディスクロータ11の回転方向と変位量に基づきボールスクリュー3に螺合しているナット5の前後方向への移動量、すなわち、自走車両7,9の間隔の拡縮を判定し、間隔拡大が認められた場合は、後続の自走車両9のエンジンに対する燃料噴射量を増加させて自走車両9の車速を高め、反対に間隔縮小が認められた場合は、後続の自走車両9のエンジンに対する燃料噴射量を減少させ且つ適宜に制動力を生じさせて自走車両9の車速を低め、いずれの状況であっても車両間隔の変動を直ちに止めて元の状態に回復させるようになっている(図2参照)。
【0022】
つまり、コントローラ14が後続の自走車両9の車速を調整して隊列走行中の自走車両7,9の間隔の変動を解消するので、ボールスクリュー3、ナット5、及びユニバーサルジョイント8,10などに過大な引張力や圧縮力が作用せず、これらの損傷を回避できる。
【0023】
また、A項の機能では、先頭の自走車両7に搭乗した運転者自らの意志で、前後の自走車両7,9の間隔を固定することにより、当該自走車両7,9の一方が発揮する駆動力や制動力が他方へ伝わる状態になって、特に坂路を登り降りするときの隊列走行を効率よく且つ安全に行なえる。
【0024】
更に、ディスクロータ11の拘束を解除した状態で自走車両7,9の一方だけを前後に小移動させれば、車両隊列の全長を調整することができる。
【0025】
図3及び図4は本発明の車両連結装置の実施の形態の第2の例を示すもので、前述したディスクブレーキ6とコントローラ14の代わりに発電機20とコントローラ21を備えており、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0026】
発電機20はハウジング1に組み込んであり、ロータがジョイント19を介してボールスクリュー3の前端部に接続され、また、ロータの回転変位を検出するエンコーダ12が付帯している。
【0027】
コントローラ21は自走車両7に装備してあり、
D.隊列走行時に、エンコーダ12により得られる発電機20のロータの回転変位の情報に基づき前後の自走車両7,9の間隔の拡縮を判定する機能、
E.上記D項での判定に応じて発電機20のステータを励磁したうえ、後続の自走車両9の車速を調整する機能、
を具備している。
【0028】
D項の機能とE項の機能について説明すると、発電機20のロータの回転方向と変位量に基づきボールスクリュー3に螺合しているナット5の前後方向への移動量、すなわち、自走車両7,9の間隔の拡縮を判定し、間隔拡大が認められた場合は、直ちに発電機20のステータを励磁してボールスクリュー3の回転を抑制するとともに、後続の自走車両9のエンジンに対する燃料噴射量を増加させて自走車両9の車速を高め、反対に間隔縮小が認められた場合は、直ちに発電機20のステータを励磁してボールスクリュー3の回転を抑制するとともに、後続の自走車両9のエンジンに対する燃料噴射量を減少させ且つ適宜に制動力を生じさせて自走車両9の車速を低め、いずれの状況であっても車両間隔の変動を直ちに止めて元の状態に回復させるようになっている(図4参照)。
【0029】
つまり、コントローラ21が前後に並ぶ自走車両7,9の間隔の拡縮を緩やかにして、自走車両7,9の一方の挙動が直ちに他方へ影響を与えることを防ぎ、更に、後続の自走車両9の車速を調整して自走車両7,9の間隔の変動を解消するので、ボールスクリュー3、ナット5、及びユニバーサルジョイント8,10などに過大な引張力や圧縮力が作用せず、これらの損傷を回避でき、また、隊列走行を安全に行なえる。
【0030】
なお、本発明の車両連結装置は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の車両連結装置は、様々な車種に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の車両連結装置の実施の形態の第1の例を示す概念図である。
【図2】図1に関連するコントローラのフローチャートである。
【図3】本発明の車両連結装置の実施の形態の第2の例を示す概念図である。
【図4】図3に関連するコントローラのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
3 ボールスクリュー
5 ナット
6 ディスクブレーキ
7 自走車両
9 自走車両
14 コントローラ
20 発電機
21 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に並ぶ自走車両の一方に対して枢支され且つ他方の自走車両へ向けて延びるボールスクリューと、当該ボールスクリューに螺合し且つ他方の自走車両に付帯するナットと、前記ボールスクリューの回転を拘束し得る規制手段とを備えてなることを特徴とする車両連結装置。
【請求項2】
規制手段を摩擦ブレーキ機構とした請求項1に記載の車両連結装置。
【請求項3】
前後に並ぶ自走車両の一方に対して枢支され且つ他方の自走車両へ向けて延びるボールスクリューと、当該ボールスクリューに螺合し且つ他方の自走車両に付帯するナットと、前記ボールスクリューの回転を抑制し得る規制手段とを備えてなることを特徴とする車両連結装置。
【請求項4】
規制手段を発電機とした請求項3に記載の車両連結装置。
【請求項5】
車両の間隔が変動したときに、車速を調整するコントローラを装備した請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1525(P2006−1525A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264897(P2004−264897)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】