説明

車両運行制御システム、車両運行制御方法、車載装置、センタ装置およびプログラム

【課題】運転者、車種、ルートの組合せ数が膨大であっても燃費を向上させること。
【解決手段】個々の車両2に係る情報を収集してセンタ装置3に送信する情報収集部4と、個々の車両2に係るパラメータをセンタ装置3から受信して車両2の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定部5と、を備える車載装置6と、複数の車両2係る情報を管理する管理部7と、情報収集部4を介して収集した車両2に係る情報に基づき当該車両2を低燃費で運転するために適した車両2に係るパラメータを算出するパラメータ算出部12と、を備えるセンタ装置3を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運行制御システム、車両運行制御方法、車載装置、センタ装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転者の異常なアクセルペダルの操作に対してアクセル開度を適正な状態に保つ技術が開示されている。これによれば、運転者が車両の加速および制動を小刻みに繰り返す、いわゆる「波状運転」を行っても車両の燃費を低下させないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−133671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、アクセルペダルの操作が所定条件を越えたことを検出すると然るべきアクセル制御が開始されるようになっている。すなわち、運転者が異常なアクセルペダルの操作を行ったことを検出したときから後に然るべきアクセル制御が開始される。しかし、これではこの運転者に対し、毎回、運行開始時には異常なアクセルペダルの操作を行う機会を与えることになる。したがって、毎回、車両の燃費は若干悪くなる。その結果、このような運転者による車両の燃費は「波状運転」を行わない運転者による燃費に比べ、どうしても悪くなる。
【0005】
一方で、異常なアクセルペダルの操作などを一切行わない優良運転者に対しては、特許文献1に開示されているようなアクセル制御装置の存在は煩わしいものである。例えば、この運転者が路上において、ごく正当な追い越し動作を行うような場合に、アクセル制御装置によって急加速が制限されているとする。このような場合には、この運転者の予想に反し、必要な車速に達するまでに時間を要する。これにより、この運転者が安全な追い越しの機会を失うなどの不都合が発生する。
【0006】
また、車種が異なった場合には、同じアクセル制御を行う場合でもその設定パラメータは異なる。しかし、特許文献1のアクセル制御装置には、その点の開示はない。さらに、ルートによっても特許文献1のアクセル制御が必要なルートと不必要なルートがある。例えば、高速道路や郊外の一般道路のように、走行状態を継続できるようなルートである場合には「波状運転」を行う機会が多く、特許文献1のアクセル制御を行うことがよい。一方で、市街地を主に走行するルートでは、多数の信号機があり、停車発車を頻繁に繰り返すため、「波状運転」を行う機会は殆ど無い。したがって、特許文献1のアクセル制御は行わなくてもよい。
【0007】
このときに、一般家庭用の乗用車のように、1台の車両を数人の家族で利用するのであれば、運転者、車種、ルートの組合せ数は少ない。すなわち、車種は1種類であるから家族数分のパラメータを用意し、少数のパターンのルートを考慮して設定すればよい。これに対し、バスやトラックなどの商用車では、多数の車両を多数の運転者で多数のパターンのルートを用いて利用する。このため、運転者、車種、ルートの組合せ数は膨大になる。よって、膨大な組合せのそれぞれについてパラメータの設定を人手によって変更することはきわめて困難である。
【0008】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、運転者、車種、ルートの組合せ数が膨大であっても燃費を向上させることができる車両運行制御システム、車両運行制御方法、車載装置、センタ装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両運行制御システムは、個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集手段と、個々の車両に係るパラメータをセンタ装置から受信して車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定手段と、を備える車載装置と、複数の車両に係る情報を管理する手段と、情報収集手段を介して収集した車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した車両に係るパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備えるセンタ装置を有するものである。
【0010】
また、情報収集手段は、車両に係る情報として運転者識別情報を収集する手段を備え、パラメータ算出手段は、運転者毎にパラメータを算出する手段を備え、さらに、パラメータ設定手段は、パラメータを運転者毎に設定する手段を備えることができる。
【0011】
例えば、パラメータ算出手段は、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料供給量に関するパラメータを算出することができる。
【0012】
本発明のプログラムは、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の車両運行制御システムにおけるセンタ装置または車載装置の演算機能および制御機能に相応する機能を実現するものである。
【0013】
本発明の車両運行制御方法は、車載装置が、個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集ステップと、個々の車両に係るパラメータをセンタ装置から受信して車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定ステップと、を実行し、センタ装置が、複数の車両に係る情報を一元的に管理するステップと、情報収集ステップの処理により収集した車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した車両に係るパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、を実行するものである。
【0014】
本発明の車載装置は、個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集手段と、個々の車両に係るパラメータをセンタ装置から受信して車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定手段と、を備え、本発明の車両運行制御システムに適用されるものである。
【0015】
本発明のセンタ装置は、複数の車両に係る情報を管理する手段と、車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した車両に係るパラメータを算出するパラメータ算出手段と、を備え、本発明の車両運行制御システムに適用されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運転者、車種、ルートの組合せ数が膨大であっても燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両運行制御システムの全体構成図である。
【図2】図1の車両運行制御システム中のパラメータ算出部における「波状運転」検出手順を示すフローチャートである。
【図3】図1の車両運行制御システム中のパラメータ算出部におけるパラメータ算出手順を示すフローチャートである。
【図4】図1の車両運行制御システム中のデータベースの一部を示す図で、データ格納テーブルの構成を示す図である。
【図5】図1の車両運行制御システム中のデータベースの一部を示す図で、車種とその自重との対応関係が記録されたテーブルを示す図である。
【図6】図1の車両運行制御システム中のデータベースの一部を示す図で、メモリに記録された運転パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本発明の実施の形態に係る車両運行制御システム1の構成について)
本発明の実施の形態に係る車両運行制御システム1の構成について図1を参照して説明する。車両運行制御システム1は、図1に示すように、個々の車両2に係る情報を収集してセンタ装置3に送信する情報収集部4と、個々の車両2に係るパラメータをセンタ装置3から受信して車両2の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定部5と、を備える車載装置6を有する。また、車両運行制御システム1は、複数の車両2に係る情報を管理する管理部7を備えるセンタ装置3を有する。車載装置6とセンタ装置3とは送信部8、10、受信部9、11を介して無線通信によって接続される。
【0019】
さらに、センタ装置3の管理部7は、車載装置6の情報収集部4を介して収集した車両2に係る情報に基づき車両2を低燃費で運転するために適した車両2に係るパラメータを算出するパラメータ算出部12を備える。また、管理部7は、各種情報を格納するデータベース13を備える。なお、図1の例では、パラメータ算出部12、データベース13を管理部7内に備えたが、変形例として、これらをそれぞれ独立して備えることもできる。
【0020】
(車両運行制御システム1の動作について)
車両運行制御システム1の動作について説明する。車載装置6の情報収集部4は、運転者識別情報、車両各部情報、ルート情報をそれぞれ収集する。情報収集部4による運転者識別情報の収集は、運転者自身がキー操作(不図示)によって自己のID(Identification number)や名前を入力することにより行うことができる。その他にも情報収集部4は、指紋照合、顔画像照合、声紋照合、手の静脈照合および網膜照合などの様々な方法によって運転者識別情報の収集を行うことができる。あるいは、情報収集部4は、運転者が所持する携帯電話端末やIC(Integrated Circuit)カードのIDを認識することによって運転者識別情報を収集してもよい。
【0021】
また、情報収集部4は、車両各部情報として、アクセル操作情報、車速情報、ブレーキ操作情報、燃料噴射量情報、ステアリング操作情報などの情報を車両2の各種センサ(不図示)、各種スイッチ(不図示)またはECU(Electric Control Unit)(不図示)の出力を監視することによって収集する。
【0022】
また、情報収集部4は、運転者自身がキー操作によって入力する車両2の運行の目的地情報や経由地情報および/またはカーナビゲーション装置(不図示)の出力などによってルート情報を収集する。
【0023】
情報収集部4が収集した各種の情報は、車載装置6の送信部8によって無線信号として送信され、センタ装置3の受信部11によって受信される。さらに、受信部11によって受信された各種の情報は管理部7に入力されてデータベース13に格納される。
【0024】
センタ装置3のパラメータ算出部12は、データベース13に格納されている各種の情報に基づいて車両2に係るパラメータを運転者毎に算出する。そして、車載装置6のパラメータ設定部5は、センタ装置3から運転者毎に算出されたパラメータを受け取ってそのパラメータを設定する。パラメータの種類は、車両各部に係るパラメータ、アクセル制御に係るパラメータ、カーナビゲーションに係るパラメータなどである。
【0025】
このときに、パラメータ設定部5は、情報収集部4から運転者交替情報を受け取ると、センタ装置3からの新たなパラメータの受信を行う。なお、パラメータ設定部5は、情報収集部4からの運転者交替情報を受け取ったにも関わらず所定時間以内にセンタ装置3からの新たなパラメータの受信が行えないときには、センタ装置3に対してパラメータの更新要求を行うことができる。
【0026】
(パラメータ算出部12におけるパラメータ算出の概要について)
(1)運転者の事前情報の収集
運転者に係る情報が事前に存在していない場合には、運転者の情報の収集が必要である。以下では、特許文献1に記載の「波状運転」を例にして説明する。すなわち、特許文献1の説明によれば、いわゆる「波状運転」とは「リターダあるいは排気ブレーキなどの補助ブレーキのスイッチを動作状態に操作設定したまま、アクセルペダルを使って急な加速および急な減速を繰り返す」というものである。
【0027】
このような「波状運転」を行う運転者であるか否かの情報を収集する場合について説明する。パラメータ算出部12は、情報収集部4によって収集される情報のうち、運転者識別情報、車両各部情報としての補助ブレーキの動作状態情報、アクセルペダルの操作情報および車速情報に基づき運転者が「波状運転」を行うか否かを判定する。このパラメータ算出部12の判定手順を図2のフローチャートに示す。
【0028】
すなわち、図2に示すように、パラメータ算出部12は、データベース13を参照することにより、現在、車両2に搭乗している運転者を確認する(ステップS1)。そして、その運転者に関する事前情報の有無を確認する(ステップS2)。その結果、当該運転者に関する事前情報が無ければ(ステップS2でYes)、パラメータ算出部12は、当該運転者によるアクセルペダルの操作(ステップS3)、補助ブレーキの動作状態(ステップS4)、車速変動(ステップS5)を確認する。このときに、パラメータ算出部12は、当該運転者によるアクセルペダルの操作が断続的であり(ステップS3でYes)、かつ補助ブレーキが動作状態であり(ステップS4でYes)、かつ車速変動が頻繁であれば(ステップS5でYes)、当該運転者は「波状運転」を行っていると判定する(ステップS6)。なお、ステップS3およびS4の操作が行われると必然的に車速変動が頻繁になるのでステップS5の判断については省略してもよい。また、「波状運転」の定義を単なるアクセルペダルによって加速をし、各種のブレーキによって減速する加速減速の比率が一定以上とする場合は、ステップS4、S5の判断についても省略してよい。
【0029】
(2)パラメータ算出
パラメータ算出部12は、「波状運転」を行う可能性のある運転者が搭乗している車両2に対し、「波状運転」を防止するためのパラメータを算出する。特許文献1によれば「波状運転」を防止するためには「アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応を遅らせると共に、アクセルペダルが解放されたときに、補助ブレーキが間欠的に作動するようにした」とのことである。すなわち、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応が鈍くなると、アクセルペダルを解放したときに補助ブレーキが作動しても、短い時間の後に補助ブレーキは解放され、また時間を経過すると補助ブレーキが作動するように構成する。
【0030】
このような制御において、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応をどの程度遅らせるかについては車体重量、運転者、ルートによってそれぞれ異なる。なお、車体重量とは、車種毎に定まる車体の自重に対し、積載する貨物の重量あるいは乗客の重量を加算した重量である。以下では、積載する貨物の重量を例にとって説明するがこれを乗客の重量に置き換えることもできる。よって、パラメータ算出部12は、運転者情報、車種情報、積載重量情報、ルート情報をそれぞれ取得する必要がある。これらの情報は、取得された後、データベース13に格納されているものとする。
【0031】
すなわち、車体の重量が比較的大きな車両2は、車体の重量が比較的小さな車両2よりもアクセルペダルの踏み込み量に対する車速の増加は遅くなる。よって、車体の重量が比較的大きな車両2は、車体の重量が比較的小さな車両2よりもアクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応をさほど遅らせる必要はない。反対に、車体の重量が比較的小さな車両2は、車体の重量が比較的大きな車両2よりもアクセルペダルの踏み込み量に対する車速の増加は速くなる。よって、車体の重量が比較的小さな車両2は、車体の重量が比較的大きな車両2よりもアクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応をより遅らせる必要がある。
【0032】
また、アクセルペダルを解放したときに補助ブレーキが作動しても、短い時間の後に補助ブレーキは解放され、また時間を経過すると補助ブレーキが作動するように構成する場合の時間設定についても車体の重量毎に異なる。すなわち、車体の重量が比較的大きな車両2は、車体の重量が比較的小さな車両2よりも補助ブレーキが動作した場合の車速の減少は遅くなる。よって、車体の重量が比較的大きな車両2は、車体の重量が比較的小さな車両2よりも補助ブレーキの動作時間の設定については長めの時間設定でよい。反対に、車体の重量が比較的小さな車両2は、車体の重量が比較的大きな車両2よりも補助ブレーキが動作した場合の車速の減少は速くなる。よって、車体の重量が比較的小さな車両2は、車体の重量が比較的大きな車両2よりも補助ブレーキの動作時間の設定については短めの時間設定になる。
【0033】
また、「波状運転」のパターンは運転者毎に異なる。すなわち、アクセルペダルの操作を断続的に行うことが「波状運転」の特徴であるが、その踏み込み量および断続間隔については運転者毎に異なる。例えば、「波状運転」時のアクセルペダルの踏み込み量がきわめて大きい運転者であれば、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の割合を通常よりも小さくする。一方で、「波状運転」はするもののアクセルペダルの踏み込み量が比較的小さい運転者であれば、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の割合は通常どおりでよい。
【0034】
また、「波状運転」時のアクセルペダルの操作の断続間隔が比較的短い運転者であれば、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応の遅れは比較的短い遅延時間でよい。一方で、「波状運転」時のアクセルペダルの操作の断続間隔が比較的長い運転者であれば、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料噴射量の反応の遅れは比較的長い遅延時間を要する。
【0035】
また、ルートによっても設定すべきパラメータは異なる。例えば、高速道路や郊外の一般道路などのように走行状態を継続できるようなルートである場合には「波状運転」を行う機会は多い。一方で、市街地を主に走行するルートでは、多数の信号機によって頻繁に停車発車が繰り返される。このため「波状運転」を行う機会は殆ど無い。よって、過去に「波状運転」を行った経歴のある運転者であってもその運行ルートが市街地であれば「波状運転」を防止するためのパラメータを設定する必要性は低い。
【0036】
特に、空気抵抗は車両2の速度の2乗に比例するため、高速走行になるほど燃費が悪化する。そのため、高速道路での「波状運転」は燃費の面では非常に良くない運転である。したがって、高速道路での「波状運転」を防止することは燃費の改善に大きな効果がある。なお、以下の説明では、「波状運転」を行い易いルートとして高速道路を例示するが、その他にも郊外の一般道路など、走行状態を継続できる道路全般を含むものとする。
【0037】
このように、パラメータ算出部12は、パラメータを設定する車両2の運転者情報、車種情報、積載重量情報、ルート情報をデータベース13から取得し、取得した情報に基づいてパラメータの算出を行う。このパラメータ算出部12の処理手順を図3のフローチャートに示す。
【0038】
すなわち、図3に示すように、パラメータ算出部12は、データベース13を参照することにより、現在、車両2に搭乗している運転者を確認する(ステップS10)。その結果、パラメータ算出部12は、当該運転者が制御対象であり(ステップS11でYes)、「波状運転」をし易いルートを走行予定であれば(ステップS12でYes)、データベース13を参照することによりアクセル制御のための必要情報を取得する(ステップS13)。パラメータ算出部12は、アクセル制御のための必要情報を取得するとその情報に適合するように燃費をできる限り向上させるまたは燃費の悪化をできる限り減少させるパラメータを算出する(ステップS14)。さらに、パラメータ算出部12は、算出したパラメータを車載装置6のパラメータ設定部5に対して送信する(ステップS15)。
【0039】
一方で、パラメータ算出部12は、運転者が制御対象外である場合(ステップS11でNo)、あるいは、運転者が制御対象であっても(ステップS11でYes)、「波状運転」の機会が殆ど無いルートを走行予定であれば(ステップS12でNo)、データベース13を参照することにより通常運転のための必要情報を取得する(ステップS16)。パラメータ算出部12は、通常運転のための必要情報を取得するとその情報に適合するように燃費をできる限り向上させるまたは燃費の悪化をできる限り減少させるパラメータを算出する(ステップS14)。さらに、パラメータ算出部12は、算出したパラメータを車載装置6のパラメータ設定部5に対して送信する(ステップS15)。
【0040】
(車両運行制御システム1の運用例)
次に、車両運行制御システム1の運用例について説明する。車両運行制御システム1をトラックやバスなどの商用車の運行制御に利用する場合について説明する。この場合、センタ装置3は、例えば、商用車の運行管理部門に設置される。データベース13には、運転者のIDに対応して車種、積載重量、ルートの情報がそれぞれ格納されている。また、当該運転者が過去に「波状運転」を行った経歴のある運転者である場合には、その運転者の運転パターンが格納されている。このデータベース13におけるデータ格納テーブル14の構成を図4に示す。なお、データ格納テーブル14の記録内容は、管理者が管理しており、変更があれば最新のものに速やかに更新されるものとする。
【0041】
図4に示すデータ格納テーブル14では、運転者IDとして“0001”、“0002”、“0003”、…が記録されている。また、運転者IDに対応して車種“ABC”、“DEF”、“GHI”、…、積載重量“1.5t”、“2.0t”、“1.0t”、…、ルート“東名高速”、“関越道”、“市街地”、…、運転パターン“♯1”、“…”、“♯2”、…がそれぞれ記録されている。なお、車種、積載重量、ルートのいずれか1つまたは複数については指定しないようにしてもよい。また、逆に、この3種類の他に「運転時間帯」、「同乗者の有無」などを加えるようにしてもよい。すなわち、道路が空いている時間帯であれば「波状運転」を行う機会は多くなるので特許文献1のアクセル制御を行うことがよい。また、同乗者が運転者に対して「波状運転」を行わないように促すことができれば特許文献1のアクセル制御は不要になる。
【0042】
さらに、データベース13には、データ格納テーブル14とは別に、図5に示すように、車種毎の自重が記録されるテーブル15を有する。また、図6に示すように、データベース13は、運転パターン♯1および♯2が記録されるメモリ部16を有する。なお、メモリ部16は、データベース13内ではなく、データベース13とは別個に設けるようにしてもよい。
【0043】
例えば、図4において、運転者ID“0001”の運転者に着目する。運転者ID“0001”の運転者は、車種“ABC”の車両2に搭乗する。図5を参照すると、車種“ABC”の自重は2.0tである。また、運転者ID“0001”の運転者が搭乗する車種“ABC”の車両2には1.5tの貨物が積載される。よって、運転者ID“0001”の運転者が搭乗する車両2の重量は、(2.0t+1.5t=)3.5tである。また、運転者ID“0001”の運転者が搭乗する車両2は主に東名高速道路を走行する予定である。さらに、運転者ID“0001”の運転者は過去に「波状運転」を行った経歴があり、そのときの運転パターンは“♯1”である。パラメータ算出部12は、運転者ID“0001”の運転者について以上のような情報を取得してパラメータを算出する。
【0044】
すなわち、運転者ID“0001”の運転者は過去に運転パターン♯1(図6の上図参照)により「波状運転」を行った経歴がある。よって、図3のフローチャートにおける制御対象(ステップS11でYes)となる。さらに、運転者ID“0001”の運転者の車両2は、運行ルートが「波状運転」を行う機会が多い高速道路である(ステップS12でYes)。このため、パラメータ算出部12は、特許文献1で開示されているアクセル制御用のパラメータを算出する。
【0045】
また、図4において、運転者ID“0002”の運転者に着目する。運転者ID“0002”の運転者は、車種“DEF”の車両2に搭乗する。図5を参照すると、車種“DEF”の自重は2.5tである。また、運転者ID“0002”の運転者が搭乗する車種“DEF”の車両2には2.0tの貨物が積載される。よって、運転者ID“0002”の運転者が搭乗する車両2の重量は、(2.5t+2.0t=)4.5tである。また、運転者ID“0002”の運転者が搭乗する車両2は主に関越自動車道路を走行する予定である。さらに、運転者ID“0002”の運転者は過去に「波状運転」を行った経歴が無い。パラメータ算出部12は、運転者ID“0002”の運転者について以上のような情報を取得してパラメータを算出する。
【0046】
すなわち、運転者ID“0002”の運転者は過去に「波状運転」を行った経歴が無い。よって、図3のフローチャートにおける制御対象外(ステップS11でNo)となる。このため、パラメータ算出部12は、特許文献1で開示されているアクセル制御用のパラメータは算出せず、ステップS16で通常運転のための必要情報を取得し、通常運転のための車両各部のパラメータを算出する。
【0047】
また、図4において、運転者ID“0003”の運転者に着目する。運転者ID“0003”の運転者は、車種“GHI”の車両2に搭乗する。図5を参照すると、車種“GHI”の自重は1.5tである。また、運転者ID“0003”の運転者が搭乗する車種“GHI”の車両2には1.0tの貨物が積載される。よって、運転者ID“0003”の運転者が搭乗する車両2の重量は、(1.5t+1.0t=)2.5tである。また、運転者ID“0003”の運転者が搭乗する車両2は主に市街地を走行する予定である。さらに、運転者ID“0003”の運転者は過去に「波状運転」を行った経歴があり、そのときの運転パターンは“♯2”である。パラメータ算出部12は、運転者ID“0003”の運転者について以上のような情報を取得してパラメータを算出する。
【0048】
すなわち、運転者ID“0003”の運転者は過去に運転パターン♯2により「波状運転」を行った経歴がある。よって、図3のフローチャートにおける規制対象(ステップS11でYes)となる。しかしながら、運転者ID“0003”の運転者の車両2は、運行ルートが頻繁に停車発車を繰り返す市街地である(ステップS12でNo)。このため、当該運行ルート上においては「波状運転」を行う機会は殆ど無い。よって、パラメータ算出部12は、特許文献1で開示されているアクセル制御用のパラメータは算出せず、運転者ID“0002”の運転者と同様に、ステップS16で通常運転のための必要情報を取得し、通常運転のための車両各部のパラメータを算出する。
【0049】
なお、図6に示す運転パターン♯1と運転パターン♯2とを比較すると、運転パターン♯1では、アクセル踏み込み量のピークに平坦部分があるのに対し、運転パターン♯2では、アクセル踏み込み量のピークに平坦部分が無い。また、運転パターン♯1と同じ時間内に運転パターン♯2の方がアクセルペダルの断続回数が多い。すなわち、運転パターン♯1が5回のアクセルペダルの断続操作を行っている時間内に運転パターン♯2は7回のアクセルペダルの断続操作を行っている。よって、運転パターン♯2の方が運転パターン♯1に比べてより激しくアクセルペダルの断続操作を行っていることがわかる。
【0050】
なお、過去に「波状運転」を行った経歴のある運転者であっても管理者に対し、今後「波状運転」を行わない旨の誓約を行うなどにより、データ格納テーブル14上の運転パターンの記録が削除される場合がある。このような場合には、当該運転者は、再度、図2のステップS2において事前情報は無い(ステップS2でYes)として処理が進められる。
【0051】
(プログラムの実施の形態)
また、センタ装置3のパラメータ算出部12および/または車載装置6の情報収集部4、パラメータ設定部5は、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置(CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)など)によって構成されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、センタ装置3のパラメータ算出部12および/または車載装置6の情報収集部4、パラメータ設定部5の機能が実現される。
【0052】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、センタ装置3および/または車載装置6の出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、センタ装置3および/または車載装置6の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、センタ装置3および/または車載装置6の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。センタ装置3および/または車載装置6の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0053】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0054】
(本発明の実施の形態に係る車両運行制御システム1の効果について)
車両運行制御システム1は、センタ装置3と車載装置6とが別体に構成されている。そして、センタ装置3と車載装置6とが無線通信によって接続される。これにより、車両運行制御システム1の構成要素のうち、パラメータ算出部12、データベース13といった大きな情報量を処理する部材については複数の車載装置6に対して共通に1つまたは少数設けることができる。したがって車両2の台数が多い場合でもシステム価格を低く抑えることができる。また、車載装置6には大きな情報量を処理する部材を配置しないので車載装置6の構成を簡素化することができる。
【0055】
このような車両運行制御システム1によって、運転者、車種、ルートの組合せ数が膨大であってもこの組合せのそれぞれについて燃費をできる限り向上させるまたは燃費の悪化をできる限り減少させるパラメータの設定を行うことができる。このパラメータは、車両2を低燃費で運行するために有用なアクセル制御に関するパラメータであり、車両2の運行を低燃費で行うことができる。また、これにより車両2の二酸化炭素排出量についても低減することができる。したがって、地球温暖化防止対策にとって有用な二酸化炭素排出量の低減を安価かつ利便性の高いシステム構成によって実現することができる。
【0056】
また、所定のプログラム(制御プログラム)と汎用の情報処理装置によって、センタ装置3のパラメータ算出部12および/または車載装置6の情報収集部4、パラメータ設定部5が実現できるので、生産コストを安価にできると共に生産期間を短くすることができる。
【0057】
(変形例)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、特許文献1に開示されているアクセル制御に関するパラメータを扱う例を示した。しかしながら、扱うパラメータはどのようなものであってもよい。また、車両2についてはトラックやバスなどの大型の商用車を例示した。しかしながら、車両2についてはどのような車両であってもよい。
【0058】
例えば、車両2はハイブリッド自動車であり、扱うパラメータは当該ハイブリッド自動車を低燃費走行させるためにエンジンと電動機とを協働させるパラメータであってもよい。または、特許文献1のアクセル制御は行わないが、運転者IDに応じて当該運転者の運転の癖を考慮して車両2を低燃費走行させるための車両各部のパラメータを設定するようにしてもよい。
【0059】
あるいは、扱うパラメータは、車両2の各部の制御のためのパラメータではなく、車両2のカーナビゲーション装置のためのパラメータであってもよい。例えば、運転者IDに応じてその日のその運転者の運行ルートをナビゲーションするためのパラメータであって燃費をできる限り向上させるまたは燃費の悪化をできる限り減少させるパラメータを、車載装置6を介してカーナビゲーション装置に自動的に設定するといったことでもよい。これにより燃費効率の良い運行ルートが設定され、結果的に車両2を低燃費で運行させることができる。
【0060】
また、車載装置6とセンタ装置3とは送信部8、10および受信部9、11を介して無線通信によって接続されると説明したが、携帯電話網などの公共のネットワークを介して接続してもよい。なお、この場合には、送信部8、10および受信部9、11は、携帯電話網などの公共のネットワークとの通信手段になる。
【符号の説明】
【0061】
1…車両運行制御システム、2…車両、3…センタ装置、4…情報収集部(情報収集手段)、5…パラメータ設定部(パラメータ設定手段)、6…車載装置、7…管理部、8、10…送信部、9、11…受信部、12…パラメータ算出部(パラメータ算出手段)、13…データベース、14…データ格納テーブル、15…テーブル、16…メモリ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集手段と、
個々の上記車両に係るパラメータを上記センタ装置から受信して上記車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定手段と、
を備える車載装置と、
複数の上記車両に係る情報を管理する手段と、
上記情報収集手段を介して収集した上記車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した上記車両に係る上記パラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を備える上記センタ装置を有する、
ことを特徴とする車両運行制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両運行制御システムにおいて、
前記情報収集手段は、前記車両に係る情報として運転者識別情報を収集する手段を備え、
前記パラメータ算出手段は、運転者毎に前記パラメータを算出する手段を備え、
前記パラメータ設定手段は、前記パラメータを運転者毎に設定する手段を備える、
ことを特徴とする車両運行制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両運行制御システムにおいて、
前記パラメータ算出手段は、アクセルペダルの踏み込み量に対するエンジンへの燃料供給量に関するパラメータを算出する、
ことを特徴とする車両運行制御システム。
【請求項4】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項1から3のいずれか1項記載の車両運行制御システムにおける前記センタ装置または前記車載装置の演算機能および制御機能に相応する機能を実現する、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
車載装置が、
個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集ステップと、
個々の上記車両に係るパラメータを上記センタ装置から受信して上記車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
を実行し、
上記センタ装置が、
複数の上記車両に係る情報を管理するステップと、
上記情報収集ステップの処理により収集した上記車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した上記車両に係る上記パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする車両運行制御方法。
【請求項6】
個々の車両に係る情報を収集してセンタ装置に送信する情報収集手段と、
個々の上記車両に係るパラメータを上記センタ装置から受信して上記車両の運行に係るパラメータを設定するパラメータ設定手段と、
を備え、
請求項1記載の車両運行制御システムに適用される、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項7】
複数の車両に係る情報を管理する手段と、
上記車両に係る情報に基づき当該車両を低燃費で運転するために適した上記車両に係るパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を備え、
請求項1記載の車両運行制御システムに適用される、
ことを特徴とするセンタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−195078(P2010−195078A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39404(P2009−39404)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】