説明

車体フロア構造

【課題】 車両前面衝突時におけるエクステンションサイドメンバの耐衝撃特性を高める。
【解決手段】 燃料電池スタック13およびその補機類15からなるフロア下ユニット部品17を搭載するユニットフレーム11を、左右のエクステンションサイドメンバ5の下壁に沿って、これら各下壁に跨って結合配置するとともに、ユニットフレーム11の車体前方側の端部11bを、フロントサイドメンバ1とエクステンションサイドメンバ5との互い結合部である重ね合わせ部10に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロア下に、フロア下ユニット部品を搭載するユニットフレームを備えた車体フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車体フロア構造としては、例えば下記特許文献1に記載されているように、フロア下ユニット部品を搭載するユニットフレームを、フロントサイドメンバの車体後方に連続する左右のエクステンションサイドメンバの車幅方向内側の側壁に沿って配置しているものがある。
【特許文献1】特開2003−226267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の車体フロア構造では、ユニットフレームをエクステンションサイドメンバの車幅方向内側の側壁に沿って配置しているため、車両の前面衝突時には、エクステンションサイドメンバの車体前方側のフロントサイドメンバとの結合部付近が車両上下方向に折れ曲がり、かつエクステンションサイドメンバ自身についても車両上下方向に折れ曲がる虞があり、耐衝撃特性が悪化するという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、車両前面衝突時におけるエクステンションサイドメンバの耐衝撃特性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フロントコンパートメントの左右両側部にて車体前後方向に延在配置したフロントサイドメンバの車体後側部に、フロアパネルの車幅方向両側部の下面に廻り込んで接合されて車体前後方向に延在するエクステンションサイドメンバを設けた車体フロア構造において、フロア下ユニット部品を搭載するユニットフレームを、左右の前記エクステンションサイドメンバの下壁に沿って、これら各下壁に跨って結合配置するとともに、前記ユニットフレームの車体前方側の端部を、前記フロントサイドメンバと前記エクステンションサイドメンバとの結合部に配置したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両前面衝突時におけるエクステンションサイドメンバとフロントサイドメンバとの結合部付近の車両上下方向の強度および、エクステンションサイドメンバ自身の車両上下方向の強度が高まり、車両前面衝突時におけるエクステンションサイドメンバの耐衝撃特性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態を示す車体フロア構造の側面図、図2は同底面図、図3は同斜視図である。なお、図1,2,3中の矢印FRで示す方向が車体前方である。
【0009】
フロントコンパートメントFCの左右両側部に、車体前後方向に延在する車体骨格部材であるフロントサイドメンバ1を設けている。フロントサイドメンバ1の車体後側部は、図1に示すように下方に屈曲する屈曲部1aを備え、屈曲部1aの端部をエクステンションサイドメンバ5に接続している。エクステンションサイドメンバ5は、フロントパネル3(図4参照)の左右両側部の下面に廻り込んで接合されて車体前後方向に延在するフロア骨格メンバを構成している。
【0010】
上記したエクステンションサイドメンバ5は、図3に示すように逆ハット形断面に形成してあって、上部両側縁のフランジ5aを介してフロアパネル3の下面に接合してある。
【0011】
本実施形態では、フロントサイドメンバ1とエクステンションサイドメンバ5とを、ジョイントメンバ7を介して連結している。
【0012】
ジョイントメンバ7は、エクステンションサイドメンバ5と同様に逆ハット形断面に形成してあって、上部両側縁のフランジ7aを介してフロアパネル3の下面に接合してあり、フロントサイドメンバ1の屈曲部1aの後端部とエクステンションサイドメンバ5の前端部とを互いに重ね合わせた状態で、この重ね合わせ部10(図1参照)の上に接合してある。
【0013】
図1,2に示すように左右の各エクステンションサイドメンバ5の下面には、その下壁に沿って、これら各下壁に跨ってユニットフレーム11を結合配置している。ユニットフレーム11は、図3に示すように、燃料電池スタック13やその補機類15を有するフロア下ユニット部品17を、左右のエクステンションサイドメンバ5相互間に搭載している。なお、このフロア下ユニット部品17は、図1,2では省略している。
【0014】
ユニットフレーム11は、図2に示すように、左右のエクステンションサイドメンバ5に沿って配置するサイドフレーム17を備えている。サイドフレーム17は、その車体前方側がエクステンションサイドメンバ5の形状に沿って内側に屈曲している屈曲フレーム17aを備え、この左右の屈曲フレーム17a相互を補機搭載フレーム19で連結している。
【0015】
補機搭載フレーム19は、車幅方向に延びて屈曲フレーム17aの前端相互を連結する前フレーム19aと、その後方の後フレーム19bと、前,後各フレーム19a,19b相互を連結する複数の連結フレーム19cとをそれぞれ備え、前記図3に示した補機類15を図示しないボルトなどにより締結固定して搭載する。
【0016】
上記した屈曲フレーム17a後方のサイドフレーム17の内側には、燃料電池スタック13を受けるユニット取付ブラケット21を設けている。また、左右のサイドフレーム17の車体後端部相互は、後端連結フレーム23によって連結している。
【0017】
図4は、図3のA−A断面図で、フロアパネル3の下面に取り付けたエクステンションサイドメンバ5のさらに下面に、ユニットフレーム11を締結ボルト25により締結固定した状態を示す。締結ボルト25は、ユニットフレーム11の下面に設けたボルト挿入孔11aから挿入する。
【0018】
ユニットフレーム11の車幅方向内側には、断面L字形の前記したユニット取付ブラケット21を取り付け、ユニット取付ブラケット21の上に燃料電池スタック13の側部に設けたブラケット29を載せた状態でボルト・ナット31を用いて締結固定する。
【0019】
図5は、図3の車体フロア構造を、図2と同様に車体下面から見た底面図で、アンダカバー33により下面が覆われているユニットフレーム11の車体前方側の端部11bは、サスペンションメンバ35より車体後方側に位置している。サスペンションメンバ35は、図1に示すように、その車体後端側を、後方連結部37を介してフロントサイドメンバ1の車体後端部付近に連結し、その車体前端部付近を、前方連結部39を介してフロントサイドメンバ1の屈曲部1aより車体前方側に連結している。
【0020】
上記した燃料電池スタック13は、燃料である水素と空気の供給を受けて発電するが、その発電時に排出する排出ガスの排出口に接続する排出配管41を、図5に示すようにユニットフレーム11とサスペンションメンバ35との間からユニットフレーム11の車幅方向側方に沿って配置している。
【0021】
また、図5のB−B断面図である図6に示すように、ユニットフレーム11とその車体前方に位置する排出配管41との間には、強電ハーネス43を配置している。強電ハーネス43は、燃料電池スタック13と前記したフロントコンパートメントFCに配置する電気部品とを接続する電線の一部である。
【0022】
上記した強電ハーネス43を、ユニットフレーム11および排出配管41にそれぞれ取り付けた断面L字形のブラケット45,47の内側に配置する。すなわち、これら各ブラケット45,47は、車体前後方向の長さ寸法が強電ハーネス43の同方向寸法(直径)より長い取付具を構成しており、また強電ハーネス43に沿って車幅方向に延長して設けている。
【0023】
また、車体前方のフロントコンパートメントFCから排出配管41の後方に配索する強電ハーネス43aは、図6に示すように、排出配管41の上部を通っている。
【0024】
上記した排出配管41は、図5に示すようにユニットフレーム11の車両前方側部分49と車幅方向側方部分51との間の屈曲部位53を、着脱可能な別配管とするとともに、弾性部材で構成したゴムホースとしている。
【0025】
上記した実施形態による車体フロア構造によれば、ユニットフレーム11を、左右のエクステンションサイドメンバ5の下壁に沿って、これら各下壁に跨って結合配置しているので、エクステンションサイドメンバ5は、車体上下方向の折れ曲がりに対して剛性が高まっている。このため車両の前面衝突時にて衝突入力があっても、エクステンションサイドメンバ5が車両上下方向に折れ曲がり変形するのを防止することができる。
【0026】
また、ユニットフレーム11の車体前方側の端部11bを、フロントサイドメンバ1とエクステンションサイドメンバ5との結合部である重ね合わせ部10に配置しているので、この結合部付近での上記衝突時による車両上下方向および車幅方向の折れ曲がり変形を防止することができる。
【0027】
以上より、エクステンションサイドメンバ11自身の車両上下方向の折れ曲がり強度および、エクステンションサイドメンバ5とフロントサイドメンバ11との結合部付近の車両上下方向および車幅方向の折れ曲がり強度が高まり、車両前面衝突時におけるエクステンションサイドメンバ11の耐衝撃特性を高めることができる。
【0028】
また、ユニットフレーム11をサスペンションメンバ35より車体後方側に配置しているので、ユニットフレーム11の車体前端側を、サスペンションメンバ35に干渉させないように屈曲させるなど形状を変化させる必要がなくなり、ユニットフレーム11の形状を簡素化することができる。
【0029】
さらに、燃料電池スタック13からの排出ガスを流す排出配管41を、ユニットフレーム11とサスペンションメンバ35との間に配置した上で、この配置スペースを利用して強電ハーネス43を、ブラケット45,47相互間に配置したので、前記した前面衝突時での強電ハーネス43の損傷を、専用の保護部材を設けることなく、すなわち質量およびコストの上昇を抑えつつ防止することができる。
【0030】
また、フロントコンパートメントFCから排出配管41の後方に配索する強電ハーネス43aは、排出配管41の上部を通っているので、車両走行時での路上から跳ね上がる小石などの異物や、障害物との干渉を排出配管41によって防止することができる。ユニットフレーム11とサスペンションメンバ35との間の排出配管43についても、上記した異物や障害物から、ブラケット45,47が保護する。
【0031】
また、排出配管41は、その車両前方側部分49と車幅方向側方部分51との間の屈曲部位53を、着脱可能な別配管としているので、排出配管41の脱着作業が、1本の連続した配管を用いる場合に比較して容易となり、排出配管41を取り外さないと作業ができない燃料電池スタック13内のフィルタなどの部品交換作業性が向上する。
【0032】
さらに、上記した別配管とした屈曲部位53をゴムホースとすることで、排出配管41を取り付ける際の車両前方側部分49と車幅方向側方部分51との間の位置ずれを吸収することができ、取り付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を示す車体フロア構造の側面図である。
【図2】図1の車体フロア構造の底面図である。
【図3】図1の車体フロア構造の斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3の車体フロア構造を車体下面から見た底面図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0034】
FC フロントコンパートメント
1 フロントサイドメンバ
3 フロアパネル
5 エクステンションサイドメンバ
10 重ね合わせ部(フロントサイドメンバとエクステンションサイドメンバとの結合部)
11 ユニットフレーム
13 燃料電池スタック(フロア下ユニット部品)
15 補機類(フロア下ユニット部品)
17 フロア下ユニット部品
35 サスペンションメンバ
41 排出配管
43,43a 強電ハーネス(電線)
45,47 ブラケット(取付具)
49 排出配管の車両前方側部分
51 排出配管の車幅方向側方部分
53 屈曲部位(排出配管の別配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントコンパートメントの左右両側部にて車体前後方向に延在配置したフロントサイドメンバの車体後側部に、フロアパネルの車幅方向両側部の下面に廻り込んで接合されて車体前後方向に延在するエクステンションサイドメンバを設けた車体フロア構造において、フロア下ユニット部品を搭載するユニットフレームを、左右の前記エクステンションサイドメンバの下壁に沿って、これら各下壁に跨って結合配置するとともに、前記ユニットフレームの車体前方側の端部を、前記フロントサイドメンバと前記エクステンションサイドメンバとの結合部に配置したことを特徴とする車体フロア構造。
【請求項2】
前記ユニットフレームの車体前方側の端部を、前記フロントサイドメンバに取り付けたサスペンションメンバより車体後方側に配置したことを特徴とする請求項1に記載の車体フロア構造。
【請求項3】
前記フロア下ユニット部品は燃料電池を含み、この燃料電池の排出ガス出口に接続する排出配管を、前記サスペンションメンバと前記ユニットフレームとの間から前記ユニットフレームの車幅方向側方に沿って配置したことを特徴とする請求項2に記載の車体フロア構造。
【請求項4】
前記ユニットフレームと前記排出配管との間に、前記燃料電池と前記フロントコンパートメントに配置する電気部品とを接続する電線を、車体前後方向の長さ寸法が電線の同方向寸法より長い取付具に取り付けた状態で前記排出配管に沿って配索したことを特徴とする請求項3に記載の車体フロア構造。
【請求項5】
前記サスペンションメンバと前記ユニットフレームとの間に設けた前記電線は、前記排出配管の上部を通って前記フロントコンパートメントの電気部品に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の車体フロア構造。
【請求項6】
前記排出配管は、前記ユニットフレームの車両前方側部分と車幅方向側方部分との間の屈曲部位が、着脱可能な別配管であることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の車体フロア構造。
【請求項7】
前記着脱可能な別配管は、弾性部材で構成したことを特徴とする請求項6に記載の車体フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−224877(P2006−224877A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42949(P2005−42949)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】