説明

車体下部構造

【課題】ホイールハウスの前後に形成された車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができる車体下部構造を得る。
【解決手段】アンダボディカバー構造10では、ホイールハウス30の後側で車幅方向外側を向くサイメンアウタ下前壁部24Aとフェンダパネル32の後端下部32Bとが、車幅方向に離間して隙間Gを形成している。この隙間Gは、ホイールハウス30において車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから後向きに延設されたアンダカバー部42によって、車体上下方向の下側から覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホイールハウス近傍の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンダパネルにおけるホイールアーチの側縁部とアーチモールとの間にフェンダライナの車幅方向の外端部を挟み込んだ構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−180393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の構造は、ホイールハウス内でのフェンダライナによる被覆構造であり、ホイールハウスの前側又は後側における車体の隙間の被覆について考慮されていなかった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ホイールハウスの前後に形成された車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができる車体下部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車体下部構造は、ホイールハウスの前側又は後側で車幅方向外側を向く壁部と、前記壁部の車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体下部構造では、壁部とフェンダパネルとは、ホイールハウス前側又は後側で、互いの車体上下方向の下端部を車幅方向に離間させて位置している。この壁部とフェンダパネルとの隙間は、フェンダライナに設けられた被覆部にて車体上下方向の下側から被覆されている。これにより、壁部とフェンダパネルとの隙間は、ホイールハウスを車体上下方向の下側(車輪の軸心側)から覆うフェンダライナから連続する被覆部にて覆われるので、別部材にて被覆する構成と比較して見栄えが良い。
【0007】
このように、請求項1記載の車体下部構造では、ホイールハウスの前側又は後側で車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができる。また、例えばフェンダパネルから壁部まで延設した被覆部を備えた構成のように、車体主要部材の形状や製造に制約を与えることがない。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車体下部構造は、乗員乗降用の車体開口部を形成し、該車体開口部とホイールハウスとの間で車幅方向外側を向く壁部を含むアウタ部材と、前記アウタ部材の前記壁部に対し車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、を備えている。
【0009】
請求項2記載の車体下部構造では、乗員乗降用の車体開口部を形成するアウタ部材の壁部が該車体開口部とホイールハウスとの間に位置しており、アウタ部材の壁部とフェンダパネルとは、ホイールハウスの前側又は後側で、互いの車体上下方向の下端部を車幅方向に離間させて位置している。このアウタ部材の壁部とフェンダパネルとの隙間は、フェンダライナに設けられた被覆部にて車体上下方向の下側から被覆されている。これにより、アウタ部材の壁部とフェンダパネルとの隙間は、ホイールハウスを車体上下方向の下側(車輪の軸心側)から覆うフェンダライナから連続する被覆部にて覆われるので、見栄えが良い。
【0010】
このように、請求項2記載の車体下部構造では、ホイールハウスの前側又は後側で車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができる。例えばフェンダパネルから壁部まで延設した被覆部を備えた構成のように、車体主要部材の形状や製造に制約を与えることがない。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車体下部構造は、ホイールハウスの前側又は後側に位置して車幅方向外端の車体骨格を構成する壁部を含むアウタ部材と、前記アウタ部材の前記壁部に対し車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、を備えている。
【0012】
請求項3記載の車体下部構造では、車幅方向外端の車体骨格(例えば、ピラーやロッカ等)を構成するアウタ部材の壁部がホイールハウスの前側又は後側に位置しており、アウタ部材の壁部とフェンダパネルとは、ホイールハウス前側又は後側で、互いの車体上下方向の下端部を車幅方向に離間させて位置している。このアウタ部材の壁部とフェンダパネルとの隙間は、フェンダライナに設けられた被覆部にて車体上下方向の下側から被覆されている。これにより、アウタ部材の壁部とフェンダパネルとの隙間は、ホイールハウスを車体上下方向の下側(車輪の軸心側)から覆うフェンダライナから連続する被覆部にて覆われるので、見栄えが良い。
【0013】
このように、請求項3記載の車体下部構造では、ホイールハウスの前側又は後側で車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができる。例えばフェンダパネルから壁部まで延設した被覆部を備えた構成のように、車体主要部材の形状や製造に制約を与えることがない。
【0014】
請求項4記載の発明に係る車体下部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体下部構造において、前記被覆部は、車幅方向の内端が前記壁部よりも車幅方向内側に位置している。
【0015】
請求項4記載の車体下部構造では、被覆部の車幅方向内端が壁部よりも車幅方向内側に位置するため、該壁部とフェンダパネルとの隙間が一層見栄え良く被覆される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係る車体下部構造は、ホイールハウスの前側又は後側で車体の隙間を車体上下方向の下側から見栄えよく被覆することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車体下部構造としてのアンダボディカバー構造10について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印IN、及び矢印OUTは、それぞれアンダボディカバー構造10が適用された自動車の前方向(進行方向)、上方向、車幅方向内側、及び車幅方向外側を示している。
【0018】
図3には、アンダボディカバー構造10が適用された自動車12の概略構成が側面図にて示されている。この図に示される如く、自動車12は、乗員乗降用の車体開口部14が車幅方向の外端で開口している(図3では、車体開口部14を開閉するためのドアの図示を省略している)。車体開口部14は、それぞれ車体骨格(閉断面)を成すフロントピラー16と、センタピラー18と、ロッカ20と、ルーフサイドレール22とに囲まれて構成されている。
【0019】
この自動車12では、フロントピラー16、センタピラー18、ロッカ20、ルーフサイドレール22の車幅方向外端の外壁が、共通化された大型プレス部品であるアウタ部材としてのサイメンアウタ(サイドアウタパネルともいう)24にて構成されている。すなわち、サイメンアウタ24は、車体開口部14(に対応する孔)が形成された車体骨格要素とされている。また、サイメンアウタ24は、図示しない車体後部(センタピラー18の後方)に位置する車体開口をも形成している。
【0020】
また、自動車12における主にフロントピラー16よりも前側の部分は、フロントフェンダ26とされており、フロントフェンダ26には前輪28が配設されたホイールハウス30が設けられている。そして、フロントフェンダ26の外板(意匠面)を成すフェンダパネル32には、側面視で略円弧状に形成されたホイールアーチ34の下側でホイールハウス30を車幅方向外向きに開口させており、前輪28の転舵(によるホイールハウス30に対する進退)を許容するようになっている。
【0021】
フェンダパネル32の後端部32Aは、サイメンアウタ24の前端部すなわちフロントピラー16の下部であるフロントピラーロア16A(及びロッカ20の前端)を車幅方向外側から覆っている。このフェンダパネル32の後端部32Aにおける後端下部32Bは、車体開口部14とホイールハウス30との間に位置している。したがって、図1に示される如く、サイメンアウタ24におけるフェンダパネル32の後端下部32Bと車幅方向に対向する部分、すなわちサイメンアウタ24における車体開口部14とホイールハウス30との間に位置する部分が、本発明における壁部に相当するサイメンアウタ下前壁部24Aとされている。この実施形態では、サイメンアウタ下前壁部24Aは、フロントピラーロア16Aの下端(ロッカ20との連結部)を構成している。
【0022】
また、この実施形態では、図2に示される如く、フェンダパネル32の後端下部32Bの下部には、意匠部品であるガーニッシュ36が取り付けられている。図1に示される如く、ガーニッシュ36は、樹脂材にて構成され、フェンダパネル32の後端下部32Bにクリップ38にて係止されて該後端下部32Bを車幅方向外側から覆っている。ガーニッシュ36は、その車幅方向外側を向く意匠面36Aが、フェンダパネル32の後端部32Aにおける後端下部32Bを除く部分と連続するような曲面を成す構成とされている。また、ガーニッシュ36の車体前後方向の前縁36Bは、ホイールアーチ34の後下端部を形成している。さらに、図1に示される如く、ガーニッシュ36の下端は、水平面に略沿う下壁36Cとされている。
【0023】
またさらに、アンダボディカバー構造10は、図3に示される如く、ホイールハウス30内に配設されたフェンダライナ40を備えている。フェンダライナ40は、側面視でホイールアーチ34に対応する略円弧状に形成されると共に平面視(図示省略)で前輪28を覆い隠す略矩形状に形成され、前輪28の略上半分を前方、上方、後方から覆い、泥、泥水、小石などが図示しないフェンダエプロン等に当たることを防止するようになっている。この実施形態では、フェンダライナ40は樹脂材にて構成されている。
【0024】
そして、フェンダライナ40の後下端40Aからは、被覆部としてのアンダカバー部42が後向きに延設されている。このアンダカバー部42は、図1に示される如く、サイメンアウタ24のサイメンアウタ下前壁部24Aと、フェンダパネル32の後端下部32Bとの間に形成された隙間Gを車体上下方向の下側から覆っている。具体的には、アンダカバー部42は、車体上下方向の上向きに開口する断面略コ字状に形成されサイメンアウタ下前壁部24Aの下端24Bを入り込ませた凹状部44と、凹状部44における車幅方向外側に位置する立壁44Aの上端から車幅方向外側に延設されガーニッシュ36の下壁36C下部に至る平板部46とを主要部として構成されている。
【0025】
アンダカバー部42は、凹状部44にサイメンアウタ下前壁部24Aの下端24Bを入り込ませることで、その車幅方向内端42Aがサイメンアウタ24よりも車幅方向内側に位置している。また、アンダカバー部42の外端42Bは、上記の通りガーニッシュ36の下壁36C直下方に近接(接触)している。さらに、図2に示される如く、アンダカバー部42の後端42Cは、ガーニッシュ36すなわちフェンダパネル32の後端下部32Bよりも若干後方に張り出している。
【0026】
これにより、アンダボディカバー構造10では、サイメンアウタ下前壁部24Aと後端下部32Bとの間の隙間Gが、車体前後方向の全長に亘ってアンダカバー部42によって車体上下方向の下側から被覆(カバー)されている。以上説明したアンダカバー部42は、樹脂成形によってフェンダライナ40と一体に形成されている。
【0027】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0028】
上記構成のアンダボディカバー構造10では、サイメンアウタ24におけるサイメンアウタ下前壁部24Aとフェンダパネル32における後端下部32Bとの間の隙間Gが、アンダカバー部42によって車体上下方向の下側から被覆されており、隙間Gが目視可能に露出されないので見栄えが良い。
【0029】
ここで、アンダボディカバー構造10では、ホイールハウス30内で前輪28を覆うフェンダライナ40の後下端40Aから延設されたアンダカバー部42が隙間Gを被覆するので、換言すれば、ホイールハウス30の被覆部材と隙間Gの被覆部材とが切れ目なく連続しているため、見栄えが良好である。特に、アンダボディカバー構造10では、アンダカバー部42の内端42Aがサイメンアウタ24の下端24Bよりも車幅方向内側に位置すると共に、アンダカバー部42の外端42Bがガーニッシュ36の下壁36Cにまで至るため、隙間Gの車幅方向両縁部までが被覆されて見栄えが一層良好である。
【0030】
またここで、隙間Gを被覆する構造として、例えば図4(A)に示される第1比較例に係るアンダボディカバー構造100のように、フェンダパネル32の後端下部32Bから延設したアンダカバー部102を設けたり、また例えば図4(B)に示される第2比較例に係るアンダボディカバー構造110のように、ガーニッシュ36の下壁36Cに沿って延設されたアンダカバー部112を設けたりすることができるが、これらの構成に対してアンダボディカバー構造10は、以下に示す有利な効果を有する。
【0031】
すなわち、第1比較例においては、アンダカバー部102を一体に設けたフェンダパネル32の絞り深さが大きくなるので、該フェンダパネル32のプレス加工による成形性が悪化する等の制約が生じするが、アンダボディカバー構造10では、フェンダパネル32の成形性に制約を与えることなく良好な成形性を維持することができる。また、第2比較例においては、比較的に小型部品であるガーニッシュ36が大型化して整形用の金型コストが大幅に増加してしまうが、アンダボディカバー構造10では、アンダカバー部42に対し十分に大型であるフェンダライナ40にアンダカバー部42を一体化したので、金型費用に与える影響が小さい。
【0032】
また、第1及び第2比較例では、何れもアンダカバー部102、112の車幅方向内端102A、112Aとサイメンアウタ下前壁部24Aとの間に見切りが生じてしまうので、見栄えの向上には限界があり、この見切りまで被覆しようとすると上記の成形性や金型費用の問題が一層顕著になるが、アンダボディカバー構造10では、アンダカバー部42の内端42Aを下端24Bよりも車幅方向内側に位置させて上記の通り良好な見栄えを得ることができる。なお、アンダカバー部42の内端42Aを含む凹状部44は、例えば、フェンダライナ40におけるエプロン等へのクリップ係止部分をほぼ同じ断面のまま後方に延設して構成することができる。
【0033】
なお、上記実施形態では、アンダボディカバー構造10がフロントフェンダ26のホイールハウス30と乗員乗降用の車体開口部14との間に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リヤフェンダのホイールハウスと後席への乗降用の車体開口部との間に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係るアンダボディカバー構造の要部を示す正面断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアンダボディカバー構造の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアンダボディカバー構造が適用された自動車の前部を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態との比較例に係るアンダボディカバー構造を示す図であって、(A)は第1比較例を示す正面断面図、(B)は第2比較例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 アンダボディカバー構造(車体下部構造)
14 車体開口部
16 フロントピラー(車体骨格)
24 サイメンアウタ(アウタ部材)
24A サイメンアウタ下前壁部(壁部)
28 前輪(車輪)
30 ホイールハウス
32 フェンダパネル
40 フェンダライナ
42 アンダカバー部(被覆部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスの前側又は後側で車幅方向外側を向く壁部と、
前記壁部の車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、
前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、
を備えた車体下部構造。
【請求項2】
乗員乗降用の車体開口部を形成し、該車体開口部とホイールハウスとの間で車幅方向外側を向く壁部を含むアウタ部材と、
前記アウタ部材の前記壁部に対し車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、
前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、
を備えた車体下部構造。
【請求項3】
ホイールハウスの前側又は後側に位置して車幅方向外端の車体骨格を構成する壁部を含むアウタ部材と、
前記アウタ部材の前記壁部に対し車幅方向外側に位置するフェンダパネルと、
前記ホイールハウスにおいて車輪を車体上下方向の上側から覆うフェンダライナから延設され、前記壁部と前記フェンダパネルとの隙間を車体上下方向の下側から覆う被覆部と、
を備えた車体下部構造。
【請求項4】
前記被覆部は、車幅方向の内端が前記壁部よりも車幅方向内側に位置している請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−13057(P2008−13057A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186601(P2006−186601)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】