説明

車体側部構造

【課題】側突時のピラーの車幅方向内側への進入量を抑制する。
【解決手段】ロッカ14より上方に位置するセンタピラー12に対して車幅方向内向きの衝突荷重が入力されると、フロアクロスメンバ54の上壁部分の谷線58が下方へ向けて変形し、ロッカインナパネル30との結合側が上方へ持ち上がるような上下の波打ち変形、即ち座屈変形を生ずる。座屈変形が進行すると、下方へ凸となる波の凸部分(谷線58)が下方に延びてガセット46の第3壁部分46Cに干渉し、波打ち変形の波高の増大、即ち、フロアクロスメンバ54の座屈変形が抑制され、ロッカ14及びセンタピラー12の車幅方向内側への進入量が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に係り、側突時のピラーの車幅方向内側への進入量を抑制可能な車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
側突での車体変形方策として、ロッカとピラーとの結合部下方に位置する部分に、車幅方向に延びるフロアクロスを設定している車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―199132号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロアクロスは、車両左右方向の荷重分担を目的としているが、例えば、相手車両のバンパがロッカの上側のBピラーに衝突してBピラーが車室内側に倒れると、Bピラーの下方のロッカに結合されるフロアクロスに応力が作用してフロアクロスが上下に曲げ変形する。フロアクロスが上下に曲げ変形、即ち、座屈すると、部材車幅方向の軸耐力が十分に有効活用できない場合がある。
フロアクロスの部材軸方向の軸耐力を有効活用できない場合には、側突によるBピラーの車幅方向内側への進入量が増大することになる。
【0005】
フロアクロスの上下の曲げ変形を抑制する対策として、フロアクロスの高さを高くすることも考えられるが、フロアクロスの上方に配置される車室内のシート等に干渉する問題があり、フロアクロスの高さを高くするにも限界がある。
また、衝突荷重の伝達経路の部材の厚みを増やして変形を抑えることも考えられるが、必要のない部位の板厚も増加することとなり、重量が大幅に増加する問題がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、側突時のピラーの車幅方向内側への進入量を抑制できる車体側部構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車体側部構造は、車体側部に配置され車両前後方向に沿って延びるロッカと、前記ロッカから車両上方へ延びるピラーと、前記ロッカと前記ピラーとの結合部位から車両幅方向内側へ延び、長手方向直角断面で見た時に下方が開放された開断面形状とされ、車体下部に配置されるフロアパネルの上面に結合されることで閉断面を構成するフロアクロスメンバと、前記フロアパネルと前記フロアクロスメンバとで形成される前記閉断面の内部に配置され、車両側方からの荷重入力によって前記フロアクロスメンバが座屈変形した際に前記フロアクロスメンバの変形部分と干渉して前記座屈変形を抑制する干渉手段と、
を有する。
【0008】
次に、請求項1に記載の車体側部構造の作用を説明する。
ロッカより上方に位置するピラーに対して車幅方向内側へ向かう側突の衝撃荷重(力)が入力すると、該衝撃荷重は、ピラーを介してロッカ、及びフロアクロスメンバへと伝達される。衝突荷重の入力により、ピラーの衝撃荷重入力部分が車両幅方向内側へ凸となる変形を生じると、ピラーに結合されているロッカがピラーの変形に伴って車両幅方向内側斜め上方へ移動するように変形し、ロッカに結合されるフロアクロスメンバに軸方向の衝突荷重が入力して座屈変形する。
【0009】
フロアクロスメンバが座屈変形することで、フロアクロスメンバの上壁部分は上下に波打つように変形するが、波のフロアクロスメンバ閉断面内側へ凸となった部分が干渉手段に干渉して波の高さ(振幅)が増大すること、即ち、フロアクロスメンバの座屈変形が抑えられ、フロアクロスメンバの車両幅方向内側への変形量が抑えられる。その結果、側突時におけるフロアクロスメンバに結合されるロッカ、及びピラーの車両幅方向内側への進入量を小さくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記干渉手段は前記フロアパネルの上面に設けられ、前記フロアクロスメンバの上面が変形して下方に凸となる部分の下端が干渉する干渉部を有する。
【0011】
次に、請求項2に記載の車体側部構造の作用を説明する。
請求項2に記載の車体側部構造によれば、側突の衝撃荷重によりフロアクロスメンバに軸方向の衝突荷重が入力して座屈変形した際、フロアクロスメンバの上面が変形して下方に凸となる部分の下端が干渉手段の干渉部に干渉することで、該座屈変形が抑えられる。
干渉手段は、フロアパネルの上面に設けられており、フロアクロスメンバの凸となる部分が干渉部が干渉した際の上からの荷重をフロアパネルに伝達し、フロアパネルは、該上からの荷重を支持する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記干渉手段は、前記ロッカの上部と前記フロアパネルとを結合すると共に、前記ロッカの上部との結合位置から車両幅方向内側下方へ向けて形成される側面干渉壁と、前記側面干渉壁の下端部から車両幅方向内側へ向けて形成される上面干渉壁と、を備えたガセットである。
【0013】
次に、請求項3に記載の車体側部構造の作用を説明する。
フロアクロスメンバが座屈変形して、フロアクロスメンバの上壁部分が波打つように変形すると、先ず最初に、波の下側へ凸となった部分の下端が干渉手段の上面干渉壁に干渉して座屈変形が抑えられる。衝突荷重がより大きい場合には、該凸となった部分の側部がさらに側面干渉壁側に向けて進行して側面干渉壁側に干渉し、フロアクロスメンバのさらなる座屈変形が抑えられる。
即ち、フロアクロスメンバの上壁部分がガセットの上面干渉壁、及び側面干渉壁に干渉することで新たな荷重が発生し、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率が向上する。
また、請求項3のガセットは、ロッカ上部とフロアパネルとを結合しているため、フロアクロスメンバとロッカとの結合強度が向上し、車両の乗り心地、ノイズ、振動等に対しても有効である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記干渉手段は、前記フロアパネルの上部に配置され、上下方向に延びる側面干渉壁と、前記側面干渉壁の下端から車両幅方向外側または車両幅方向内側に向けて形成される上面干渉壁と、を備えた凸部材である。
【0015】
次に、請求項4に記載の車体側部構造の作用を説明する。
フロアクロスメンバが座屈変形して、フロアクロスメンバの上壁部分が波打つように変形すると、先ず最初に、波の下側へ凸となった部分の下端が凸部材の上面干渉壁に干渉して座屈変形が抑えられる。衝突荷重がより大きい場合には、該凸となった部分の側部がさらに側面干渉壁に干渉してフロアクロスメンバのさらなる座屈変形が抑えられる。
即ち、フロアクロスメンバの上壁部分が凸部材の上面干渉壁、及び側面干渉壁に干渉することで新たな荷重が発生し、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率が向上する。
なお、凸部材はフロアパネルの上面で、かつフロアクロスメンバの内部に配置すれば良いので、従来構造のフロアパネル、及びフロアクロスメンバを有する車両に対し、設計変更せず、凸部材を追加するのみでフロアクロスメンバの軸耐力の稼働率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1に記載の車体側部構造は上記構成としたので、側突時のロッカ、及びピラーの車幅方向内側への進入量を抑えることができる、という優れた効果を有する。
さらに、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率を高めることができるので、フロアクロスの断面高さを低くすることが可能となり、後席の足元スペースの拡大が可能となる。
また、フロアクロスメンバの内部に配置可能な干渉手段でもってフロアクロスメンバの座屈変形を抑制することができるので、側突の入力が伝達されるピラー、ロッカ、フロアクロス等に厚い鋼板を用いて変形を抑制する場合に比較して、コスト低減、及び軽量化を図ることができる。
【0017】
請求項2に記載の車体側部構造は、干渉手段は、フロアクロスメンバの上面が下方に凸となる部分が干渉する干渉部を有する簡単な構成で、フロアクロスメンバの座屈変形を効果的に抑えることができ、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率が向上し、ロッカ、及びピラーの車幅方向の変形量を抑制できる。
【0018】
請求項3に記載の車体側部構造は、上面干渉壁、及び側面干渉壁を備えた簡単な構成のガセットを設けることに、フロアクロスメンバの座屈変形を効果的に抑えることができ、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率が向上し、ロッカ、及びピラーの車幅方向の変形量を抑制できる。
また、フロアクロスメンバとロッカとの結合強度が向上することで、車両の乗り心地の向上、ノイズ及び振動の低減が可能となる。
【0019】
また、請求項4に記載の車体側部構造は、上面干渉壁、及び側面干渉壁を備えた簡単な構成の凸部材を設けることにより、フロアクロスメンバの座屈変形を効果的に抑えることができ、フロアクロスメンバの軸耐力の稼働率が向上し、ロッカ、及びピラーの車幅方向の変形量を抑制できる。
また、設計変更せず、凸部材を追加するのみでフロアクロスメンバの軸耐力の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図2に示す車体の1−1線断面図である。
【図2】車体の要部を示す側面図である。
【図3】(A)は第1の実施形態に係る車体側部構造を車室側から見た斜視図であり、(B)は車室側から見たガットの斜視図である。
【図4】車体側部構造の変形の様子を示す断面図である。
【図5】荷重とセンタピラーの変形量との関係を示すグラフである。
【図6】第2の実施形態に係る車体側部構造の変形の様子を示す断面図である。
【図7】フロアクロスメンバ及び座屈変形抑制凸部材の断面図(図8の7−7線断面図)である。
【図8】第2の実施形態に係る車体側部構造を車室側から見た斜視図である。
【図9】第2の実施形態に係る車体側部構造における荷重とセンタピラーの変形量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車体構造としての車体側部構造10について、図1〜図5に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0022】
図2には、車体側部構造10が適用された自動車の車体11を車両幅方向外側から見た模式的な側面図にて示されており、図3には車体側部構造10が斜視図にて示されており、図1には、車体11が図2の1−1線に沿った断面図にて示されている。
【0023】
これらの図に示される如く、車体11は、センタピラー(Bピラー)12を備えている。センタピラー12は、車両前後方向に長手とされた車幅方向外端の骨格部材であるロッカ14における車両前後方向の略中間部から車両上下方向に沿って立ち上げられた骨格部材とされている。
【0024】
センタピラー12の車両上下方向の上端部は、車両上部の骨格部であるルーフサイドレール16の車両前後方向中間部に連結されている。このセンタピラー12に対する車両前後方向の前側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びフロントピラー18にて囲まれた乗員乗降用のドア開口部20が形成されている。
【0025】
一方、センタピラー12に対する車両前後方向の後側には、該センタピラー12、ロッカ14、ルーフサイドレール16、及びリヤピラー22等にて囲まれたドア開口部24が形成されている。
【0026】
そして、第1の実施形態に係る車体側部構造10は、車体11におけるロッカ14とセンタピラー12とフロアクロスメンバ54との結合部分に適用されている。
具体的には、図1に示される如く、センタピラー12は、センタピラーインナパネル26と、センタピラーアウタリインフォースメント28とが図示しない前後のフランジ部で結合されて形成された閉断面を有する骨格部とされている。
【0027】
一方、ロッカ14は、車幅方向外向きに開口する断面ハット形状のロッカインナパネル30と、車幅方向内向きに開口する断面ハット形状のロッカアウタリインフォースメント32とが結合されて形成された閉断面を有する骨格部とされている。
【0028】
この実施形態では、ロッカインナパネル30の上下のフランジ30A、30Bと、ロッカアウタリインフォースメント32の上下のフランジ32A、32Bとの間に、センタピラーインナパネル26の下端部26Aが挟み込まれて、共に結合されている。
【0029】
さらに、この実施形態では、プレス部品であるサイメンアウタ(サイドアウタパネル)38がセンタピラーアウタリインフォースメント28、ロッカアウタリインフォースメント32を外側から覆うようにして、該センタピラーアウタリインフォースメント28、ロッカアウタリインフォースメント32のフランジに結合されている。
【0030】
サイメンアウタ38の下端部に形成された下フランジ38Aは、ロッカインナパネル30の下フランジ30B、センタピラーインナパネル26の下端部26A、ロッカアウタリインフォースメント32の下フランジ32Bと4枚重ね合わせ状態で、スポット溶接にて結合されている。
【0031】
なお、この実施形態では、ロッカインナパネル30における上下のフランジ30A、30Bに対し車幅方向内側に突出した内側壁30Cには、車体フロアを構成するフロアパネル42の車幅方向外端42Aが結合されている。
【0032】
また、車体側部構造10では、センタピラーアウタリインフォースメント28は、その下端部28Aがロッカアウタリインフォースメント32の外側壁32Cにスポット溶接にて結合されている。
【0033】
(ガセット)
図1、及び図3に示すように、センタピラー12とロッカ14との結合部分の車両幅方向内側には、車幅方向に沿って延びるフロアクロスメンバ54、及びガセット46が設けられている。
【0034】
ガセット46は、ロッカインナパネル30の上壁部30Dから車両幅方向内側へ向けて斜め下方へ比較的小さな角度で傾斜している第1壁部分46A、第1壁部分46Aの車両幅方向内側端部から車両幅方向内側へ向けて斜め下方へ比較的大きな角度で傾斜している側面干渉壁としての第2壁部分46B、第2壁部分46Bの車両幅方向内側端部から車両幅方向内側へ向けて比較的小さな角度で傾斜している上面干渉壁としての第3壁部分46C、第3壁部分46Cの車両幅方向内側端部から、車両幅方向内側へ向けて斜め下方へ比較的大きな角度で傾斜している第4壁部分46D、第1壁部分46A、第2壁部分46B、第3壁部分46C、及び第4壁部分46Dの各々の車両前後方向の端部、フロアパネル42の上面、及びロッカインナパネル30の内側壁30Cに接続される略L字形状の側壁部46E、側壁部46Eのフロアパネル側、ロッカインナパネル側、及び第4壁部分46Dの下端部分から外側に向けて延びるフランジ部46Fを備えている。
【0035】
なお、第1壁部分46Aと第2壁部分46Bとで車幅方向に対して直交する方向に延びる第1稜線48、第2壁部分46Bと第3壁部分46Cとで車幅方向に対して直交する方向に延びる第1谷線50、第3壁部分46Cと第4壁部分46Dとで車幅方向に対して直交する方向に延びる第2稜線52を形成している。
【0036】
(フロアクロスメンバ)
フロアクロスメンバ54は、鋼板のプレス成形品であり、長手方向直角断面形状が、略ハット形状を呈している。フロアクロスメンバ54を長手方向に沿った縦断面で見ると、ガセット46の第1壁部分46Aと平行に配置され、第1壁部分46Aに溶接される第1傾斜壁54A、第1傾斜壁54Aの車両幅方向内側の端部から車両幅方向内側へ向けて斜め下方へ比較的大きな角度で傾斜する第2傾斜壁54B、第2傾斜壁54Bの車両幅方向内側の端部から車両幅方向内側へ向けて斜め下方へ比較的小さな角度で傾斜する第3傾斜壁54C、第1傾斜壁54A、第2傾斜壁54B及び第3傾斜壁54Dの周囲に配置されるフランジ54Eとを有している。
【0037】
なお、第1傾斜壁54Aと第2傾斜壁54Bとで車幅方向に対して直交する方向に延びる稜線56、第2傾斜壁54Bと第3傾斜壁54Cとで車幅方向に対して直交する方向に延びる谷線58を形成している。
【0038】
フロアクロスメンバ54の第2傾斜壁54B及び第3傾斜壁54Cと、ガセット46の第2壁部分46B及び第3壁部分46Cとの間には、予め設定された隙間が設けられている。
フロアクロスメンバ54のフランジ54Eは、フロアパネル42の上面、ガセット46の側壁部46E、ロッカインナパネル30の内側壁30C、及びロッカインナパネル30の上壁部30Dに各々スポット溶接されている。
【0039】
なお、車体側部構造10が適用された車体11では、ロッカ14を構成するロッカインナパネル30、ロッカアウタリインフォースメント32、センタピラーインナパネル26、センタピラーアウタリインフォースメント28、サイメンアウタ38等は、各々鋼板で構成されている。
【0040】
(作用)
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車体側部構造10では、図4に示すように、例えば、車体11に対する側面衝突によって、ロッカ14より上方に位置するセンタピラー12に対して車幅方向内向きの衝突荷重(矢印F)が入力されると、該センタピラー12の下部が車幅方向内向きに倒れ、ロッカ14は車両幅方向内側斜め上方(矢印A方向。おおよそ車両幅方向内側に中心を有する円弧に沿った方向となる。)に変形する。
【0041】
この変形によって、ロッカ14の車両幅方向内側に接続されるフロアクロスメンバ54は、ロッカインナパネル30との結合側が上方へ持ち上がり、下側へ凸となっている上壁部分の谷線58が下方へ向けて変形するような上下の波打ち変形、即ち座屈変形を生ずる。
【0042】
衝突荷重の入力によりフロアクロスメンバ54の座屈変形が進行すると、図4に2点鎖線で示すように、下方へ凸となる波の凸部分(谷線58)が矢印a,b,cで示すように、下方に延びてガセット46の第3壁部分46Cに干渉する。
谷線58を頂点とする波の凸部分の下端がガセット46の第3壁部分46Cに干渉することでフロアクロスメンバ54の上壁部分の波打ち変形の波高の増大、即ち、フロアクロスメンバ54の座屈変形が抑制され、ロッカ14及びセンタピラー12の車幅方向内側への進入量が抑えられる。
【0043】
さらに衝突荷重が大きい場合には、谷線58を頂点とする波の凸部分は、頂点付近が第3壁部分46Cに密着(面接触)するように押し潰され、凸部分の側面がガセット46の第2壁部分46Bに干渉するので、さらなる凸部分の変形、即ち、さらなる座屈変形が抑制される。
なお、フロアクロスメンバ54からガセット46に入力する上からの荷重は、主にフロアパネル42によって支持される。
【0044】
本実施形態の車体側部構造10によれば、このようにしてフロアクロスメンバ54の座屈変形が抑えられるので、フロアクロスメンバ54の車両幅方向外側に配置されるセンタピラー12、及びロッカ14の車両幅方向内側への進入量を抑える事ができる。
【0045】
また、本実施形態の車体側部構造10では、このようにしてフロアクロスメンバ54の軸耐力の稼働率を高めることができるので、フロアクロスメンバ54の断面高さを低くすることも可能となり、例えば、座席下方の足元スペース(高さ方向)を拡大することが可能となる。
【0046】
さらに、本実施形態の車体側部構造10では、ガセット46でフロアクロスメンバ54とロッカ14とを結合しているので、フロアクロスメンバ54とロッカ14との結合強度が向上し、車両の乗り心地(例えば、剛性感)の向上、ノイズ及び振動の低減が可能となる。
【0047】
図5は、センタピラーに入力する衝撃荷重の大きさと、センタピラー12の車両幅方向内側方向の変形量(HP(ヒップポイント)横ストローク。センタピラー12の変形量測定位置(高さ方向)は、乗員のヒップポイント。)との関係を模式的に示したグラフであり、二点鎖線はガセットが設けられていない場合、実線はガセット46を設けた場合を示している。
【0048】
フロアクロスメンバ54が変形してガセット46に干渉することで反力がガセット側に発生し、「荷重×ストローク」のエネルギーはガセット46のある場合と無い場合と同じなので、荷重が増大すればストロークが減少する。
【0049】
「0」〜「ア」は、フロアクロスメンバ54がある程度座屈している部分を示し、「イ」はフロアクロスメンバ54の波型変形した凸部下端がガセット46の第3壁部分46Cに干渉した時、「ウ」はフロアクロスメンバ54の波型変形した凸部側面がガセット46の第2壁部分46Bに干渉した時を示しており、本実施形態の車体側部構造によれば、側突時のセンタピラーの車両幅方向内側への進入量を大幅に減少(図5のS)可能であることが分かる。
【0050】
本実施形態では、フロアクロスメンバ54の内部に配置可能な小型のガセット46でもってフロアクロスメンバ54の座屈変形を抑制することができるので、側突の入力が伝達されるセンタピラー12、ロッカ14、フロアクロスメンバ54等に厚い鋼板を用いて変形を抑制する場合に比較して、コスト低減、及び軽量化を図ることができる。
【0051】
また、ガセット46は、鋼板からなる小型のプレス成形品であり、スポット溶接にて簡単に取り付けることができるため、重量の増加は最小限に抑えることができる。また、軸耐力の稼働率を高めることができるので、フロアクロスメンバ54の薄肉化、及び軽量化も可能となる。
【0052】
ここで、ガセット46の各部の高さ、幅、ガセット46とフロアクロスメンバ54との位置関係、ガセット46とフロアクロスメンバ54との間隔等は、フロアクロスメンバ54の座屈変形を抑えるために、適宜変更されるものであり。コンピュータシミュレーション、試作品による実験等で、これらの最適な値を求めることができる。
【0053】
なお、フロアクロスメンバ54がガセット46に干渉した際、ガセット46が変形しないように、例えば、図3(B)の実線、及び図1の2点鎖線で示すように、ガセット46の第2壁部分46B、及び第3壁部分46Cに、谷線58と交差する方向に延び、かつガセット内方に凸となるビード46Gを形成しても良い。
【0054】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車体構造としての車体側部構造10について、図6〜図8に基づいて説明する。なお、上記した第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分については、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、フロアパネル42の上面に、座屈変形抑制凸部材60が配置されている。座屈変形抑制凸部材60は、下方が開放された略ハット形状を呈した鋼板のプレス成形品であり、フロアパネル42と略平行とされた上面干渉壁60Aと、上面干渉壁60Aの車両幅方向内側に配置されて上面干渉壁60Aよりも車両幅方向内側斜め上方へ向かう側面干渉壁60Bと、外周に配置されるフランジ60Cを備え、フランジ60Cがフロアパネル42の上面に溶接にて結合されている。
【0056】
なお、フランジ60Cの車両前後方向の一部分は、フロアクロスメンバ54とフロアパネル42との間に挟持され、フロアクロスメンバ54のフランジ54E、フランジ60C、及びフロアパネル42の3枚重ねで溶接されている。
【0057】
なお、上面干渉壁60Aは、フロアクロスメンバ54の谷線58の下方に配置されている。
また、フロアクロスメンバ54の第2傾斜壁54B及び第3傾斜壁54Cと、座屈変形抑制凸部材60の上面干渉壁60A及び側面干渉壁60Bとの間には、予め設定された隙間が設けられている。
【0058】
(作用)
本実施形態の車体側部構造10では、図6に示すように、衝突荷重の入力(矢印F)によりフロアクロスメンバ54座屈変形が進行すると、下方へ凸となる波の凸部分(谷線58)が下方に延びて座屈変形抑制凸部材60の上面干渉壁60Aに干渉する。谷線58を頂点とする波の凸部分の下端が座屈変形抑制凸部材60の上面干渉壁60Aに干渉することでフロアクロスメンバ54の上壁部分の波打ち変形の波高の増大、即ち、フロアクロスメンバ54の座屈変形が抑制され、ロッカ14及びセンタピラー12の車幅方向内側への進入量が抑えられる。
【0059】
さらに衝突荷重が大きい場合には、谷線58を頂点とする波の凸部分は、頂点付近が座屈変形抑制凸部材60の上面干渉壁60Aに密着(面接触)するように押し潰され、波の凸部分の側面が座屈変形抑制凸部材60の側面干渉壁60Bに向けて進行して側面干渉壁60Bに干渉するので、さらなる波の凸部分の変形、即ち、さらなる座屈変形が抑制される。
また、本実施形態によれば、車両の設計変更をせず、座屈変形抑制凸部材60を追加するのみでフロアクロスメンバ54の軸耐力の稼働率を向上させることができる。
なお、その他の作用効果は第1の実施形態と同様である。
【0060】
図9は、本実施形態の車体側部構造10におけるセンタピラー12に入力する衝撃荷重の大きさと、センタピラーの車両幅方向内側方向の変形量との関係を模式的に示したグラフであり、2点鎖線は座屈変形抑制凸部材60が設けられていない場合、実線は座屈変形抑制凸部材60を設けた場合を示している。
「0」〜「ア」は、フロアクロスメンバ54がある程度座屈している部分を示し、「イ」はフロアクロスメンバ54の波型変形した凸部下端が座屈変形抑制凸部材60の上面干渉壁60Aに干渉した時、「ウ」はフロアクロスメンバ54の波型変形した凸部側面が座屈変形抑制凸部材60の側面干渉壁60Bに干渉した時を示しており、本実施形態の車体側部構造においても、側突時のセンタピラーの車両幅方向内側への進入量を大幅に減少(図9のS)可能であることが分かる。
【0061】
なお、本実施形態の座屈変形抑制凸部材60では、上面干渉壁60Aの車両幅方向内側に側面干渉壁60Bが形成されていたが、側面干渉壁60Bは上面干渉壁60Aの車両幅方向外側に形成しても良く、両側に形成しても良い。何れの場合もフロアクロスメンバ54の上壁部分の変形を抑制することができる。
【0062】
[その他の実施形態]
上記実施形態では、フロアクロスメンバ54の上壁部分が座屈変形して下方へ凸となる部分に干渉するガセット46又は座屈変形抑制凸部材60をフロアパネル42の上面に配置したが、少なくともフロアクロスメンバ54の上壁部分が下方へ凸となる部分を受けて座屈変形を抑制可能であれば、ガセット46、及び座屈変形抑制凸部材60の形状は上記実施形態のものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の形状変更が可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、フロアクロスメンバ54の上壁部分の変形を抑えることでフロアクロスメンバ54の座屈変形を抑えているが、フロアクロスメンバ54が座屈する際フロアクロスメンバ54の車両前後側の側壁54F、Gが変形するような場合、フロアクロスメンバ54の側壁が内側へ凸となる部分が干渉するように、ガセット46または座屈変形抑制凸部材60の位置、フロアクロスメンバ54の側壁とガセット46の側壁との間隔、またはフロアクロスメンバ54の側壁と座屈変形抑制凸部材60の側壁との間隔を決定することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、センタピラー12、ロッカ14、フロアパネル42、フロアクロスメンバ54、ガセット46、座屈変形抑制凸部材60等の部材が鋼板で形成されていたが、これらの部材は鋼板以外で形成される場合もある。これらの部材は、アルミニューム合金等の、鉄以外の金属、合成樹脂、例えば、CFRP等の繊維強化樹脂等で形成されていても良い。
【符号の説明】
【0065】
10 車体側部構造
11 車体
12 センタピラー
14 ロッカ
54 フロアクロスメンバ
46 ガセット(干渉手段)
46B 第2壁部分(側面干渉壁)
46C 第3壁部分(干渉部。上面干渉壁)
60 座屈変形抑制凸部材(干渉手段)
60A 上面干渉壁(干渉部)
60B 側面干渉壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に配置され車両前後方向に沿って延びるロッカと、
前記ロッカから車両上方へ延びるピラーと、
前記ロッカと前記ピラーとの結合部位から車両幅方向内側へ延び、長手方向直角断面で見た時に下方が開放された開断面形状とされ、車体下部に配置されるフロアパネルの上面に結合されることで閉断面を構成するフロアクロスメンバと、
前記フロアパネルと前記フロアクロスメンバとで形成される前記閉断面の内部に配置され、車両側方からの荷重入力によって前記フロアクロスメンバが座屈変形した際に前記フロアクロスメンバの変形部分と干渉して前記座屈変形を抑制する干渉手段と、
を有する車体側部構造。
【請求項2】
前記干渉手段は前記フロアパネルの上面に設けられ、前記フロアクロスメンバの上面が変形して下方に凸となる部分の下端が干渉する干渉部を有する、請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記干渉手段は、前記ロッカの上部と前記フロアパネルとを結合すると共に、前記ロッカの上部との結合位置から車両幅方向内側下方へ向けて形成される側面干渉壁と、前記側面干渉壁の下端部から車両幅方向内側へ向けて形成される上面干渉壁と、を備えたガセットである、請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記干渉手段は、前記フロアパネルの上部に配置され、上下方向に延びる側面干渉壁と、前記側面干渉壁の下端から車両幅方向外側または車両幅方向内側に向けて形成される上面干渉壁と、を備えた凸部材である、請求項1に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143761(P2011−143761A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4334(P2010−4334)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】