説明

車体前部構造

【課題】剛性を確保することができ、さらに、軽量化を図ることができ、加えて、生産性を確保することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、上梁部材31が車体前側の前L形板材51および車体後側の後L形板材52を組み合わせて閉断面に形成され、左右のサイド梁部材18,19が車体外側のコ形板材91および車体内側のI形板材92を組み合わせて閉断面に形成され、後L形板材52の端部にコ形板材91まで張り出された水平張出部66および鉛直張出部62が設けられている。そして、水平張出部66および鉛直張出部62で上梁部材31および左右のサイド梁部材18,19の連結部20,21を補強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、左右のフロントサイドフレームにバルクヘッドが支持され、バルクヘッドの左上端部から左サイド梁部材が車体後方に向けて左アッパメンバーまで延出され、バルクヘッドの右上端部から右サイド梁部材が車体後方に向けて右アッパメンバーまで延出されている。
そして、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンション(ダンパ)を介して左右の前輪が支持されている。
【0003】
バルクヘッドの上梁部材は、下部が開口した状態で断面略コ字状に形成されている。また、左右のサイド梁部材は、下部が開口した状態で断面略コ字状に形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−290224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンションを介して左右の前輪が支持されているので、左右のフロントサイドフレームにはホイールハウスやサスペンションを介して上下方向や車体幅方向の荷重が作用する。
作用した荷重は、左右のフロントサイドフレームからバルクヘッドや左右のサイド梁部材に伝わる。
しかし、上梁部材や左右のサイド梁部材はそれぞれ断面略コ字状に形成されている。よって、上梁部材や左右のサイド梁部材の剛性を十分に確保することは難しい。
【0005】
このため、左右のフロントサイドフレームから上梁部材や左右のサイド梁部材に上下方向や車体幅方向の荷重が伝わると、伝わった荷重で上梁部材や左右のサイド梁部材が変形することが考えられる。
よって、特許文献1の上梁部材や左右のサイド梁部材では、左右のフロントサイドフレームの上下方向や車体幅方向の変形を抑え難い。
【0006】
上梁部材や左右のサイド梁部材に所望の剛性を持たせる方法として、それぞれのメンバーを補強部材で補強することが考えられる。
しかし、上梁部材や左右のサイド梁部材を補強部材で補強すると、部材数が増えてしまい、そのことがバルクヘッドなどの軽量化を図る妨げる要因になる。
さらに、部材数が増えるために、組立工数が増し、そのことが生産性の向上を妨げる要因になる。
【0007】
本発明は、剛性を確保することができ、さらに、軽量化を図ることができ、加えて、生産性を確保することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、フロントサイドフレームでバルクヘッドが支持され、前記バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された車体前部構造において、前記上梁部材が車体前側の前L形板材および車体後側の後L形板材を組み合わせて閉断面に形成され、前記サイド梁部材が車体外側のコ形板材および車体内側のI形板材を組み合わせて閉断面に形成され、前記後L形板材を形成する水平部および鉛直部のそれぞれの端部が前記車体外側のコ形板材まで張り出され、張り出された各部位で前記上梁部材および前記サイド梁部材の連結部を補強することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明は、上梁部材およびサイド梁部材をそれぞれ閉断面に形成した。
上梁部材およびサイド梁部材をそれぞれ閉断面に形成することで、上梁部材およびサイド梁部材の剛性を高めることができる。
さらに、後L形板材の水平部および鉛直部を外側のコ形板材まで張り出し、張り出した各部位で上梁部材およびサイド梁部材の連結部を補強するようにした。
張り出した各部位で連結部を補強することで、連結部の剛性を高めることができる。
【0010】
このように、上梁部材およびサイド梁部材の剛性を高めるとともに、連結部の剛性を高めることで、バルクヘッドの剛性を高めることができる。
よって、フロントサイドフレームにホイールハウスやサスペンションを介して上下方向や車体幅方向の荷重が作用した際に、作用した荷重をバルクヘッドで支えることができる。
これにより、フロントサイドフレームが上下方向や車体幅方向に変形することを良好に抑えて、走行安定性を一層良好に確保することができる。
【0011】
また、後L形板材の水平部および鉛直部を外側のコ形板材まで張り出し、張り出した各部位を補強部材(スチフナ)とした。補強部材を後L形板材と一体形成することで、部材数を増やすことなく連結部を補強することができる。
これにより、補強部材を新たに増やす場合と比較して、補強部材を簡素化することが可能になり、軽量化を図ることができる。
【0012】
さらに、部材数の増加をなくすことで、組立工数が増すことを抑え、生産性を良好に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0014】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側にそれぞれ設けられた左右のフロントサイドフレーム11,12と、左右のフロントサイドフレーム11,12の上方にそれぞれ設けられた左右のアッパメンバー13,14と、左右のフロントサイドフレーム11,12に支持されたバルクヘッド15と、バルクヘッド15の左上端部15aから車体後方に延出された左サイド梁部材(サイド梁部材)18と、バルクヘッド15の右上端部15bから車体後方に延出された右サイド梁部材(サイド梁部材)19とを備える。
【0015】
バルクヘッド15の左上端部15aに左サイド梁部材18を連結した部位が左連結部(連結部)20となる。
バルクヘッド15の右上端部15bに右サイド梁部材19を連結した部位が右連結部(連結部)21となる。
【0016】
さらに、車体前部構造10は、左アッパメンバー13の前端部13aから車体前方に向けて延出された左ロアメンバー22と、右アッパメンバー14の前端部14aから車体前方に向けて延出された右ロアメンバー23とを備える。
【0017】
左フロントサイドフレーム11は、車体前部の左側に配置され、車体前後方向に延びる部材である。
右フロントサイドフレーム12は、車体前部の右側に配置され、車体前後方向に延びる部材である。
【0018】
左アッパメンバー13は、左フロントサイドフレーム11の上方で、かつ、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、後端部13bが左フロントピラー25に連結されている。
右アッパメンバー14は、右フロントサイドフレーム12の上方で、かつ、右フロントサイドフレーム12の外側に設けられ、後端部14bが右フロントピラー26に連結された部材である。
【0019】
バルクヘッド15は、ラジエータやコンデンサなどの冷却系部品(図示せず)を支持する枠体である。コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
バルクヘッド15は、車体幅方向に延出された上梁部材31と、上梁部材31の下方において車幅方向に延出された下梁部材32と、上下の梁部材31,32の各左端部に連結された左脚部材33と、上下の梁部材31,32の各右端部に連結された右脚部材34とを備える。
【0020】
左サイド梁部材18は、上梁部材31の左端部(端部)31aから左アッパメンバー13まで車体後方に向けるとともに、車体外側に向けて傾斜状に延出されている。
左サイド梁部材18は、前端部18aが上梁部材31の左端部31aおよび左脚部材33の上端部33aに連結されている。
【0021】
右サイド梁部材19は、上梁部材31の右端部(端部)31bから右アッパメンバー14まで車体後方に向けるとともに、車体外側に向けて傾斜状に延出されている。
右サイド梁部材19は、前端部19aが上梁部材31の右端部31bおよび右脚部材34の上端部34aに連結されている。
【0022】
左フロントサイドフレーム11および左アッパメンバー13に左ホイールハウス36が設けられている。
左ホイールハウス36の頂部36aには、図示しない左サスペンション(左ダンパ)が支持されている。この左サスペンションには左前輪(図示せず)が支持されている。
【0023】
右フロントサイドフレーム12および右アッパメンバー14に右ホイールハウス41が設けられている。
右ホイールハウス41の頂部41aには、図示しない右サスペンション(右ダンパ)が支持されている。この右サスペンションには右前輪(図示せず)が支持されている。
【0024】
左ロアメンバー22は、左アッパメンバー13の前端部13aから左フロントサイドフレーム11の前端部11a外側まで下り勾配で延出されている。
この左ロアメンバー22は、前端部22aが左フロントサイドフレーム11の前端部11aに左支持部45を介して連結されている。
【0025】
右ロアメンバー23は、右アッパメンバー14の前端部14aから右フロントサイドフレーム12の前端部12a外側まで下り勾配で延出されている。
右ロアメンバー23は、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに右支持部46を介して連結されている。
【0026】
なお、車体前部構造10は略左右対称な構造なので、以下、車体前部構造10の左側部材のみについて説明して右側部材の説明を省略する。
【0027】
図2は図1の2部拡大図である。
左連結部20は、バルクヘッド15の左上端部15aに左サイド梁部材18を連結した部位である。
バルクヘッド15の左上端部15aは、上梁部材31の左端部31aおよび左脚部材33の上端部33aを連結した部位である。
【0028】
図3は本発明に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図である。
上梁部材31は、車体前側に設けられた前L形板材51と、車体後側に設けられた後L形板材52とを有する。
この上梁部材31は、前L形板材51および後L形板材52が組み合わされて断面略口状の閉断面に形成されている。
【0029】
前L形板材51は、上水平部53および前鉛直部54が断面略L字形に折り曲げられている(形成されている)。
後L形板材52は、後鉛直部(鉛直部)56および下水平部(水平部)57が断面略L字形に形成されている。
【0030】
後鉛直部56は、上辺から車体後方に向けて折り曲げられた上折曲辺61と、左端部56aから車体外側に向けて張り出された鉛直張出部(張り出された部位)62と、鉛直張出部62の外端から車体後方に向けて折り曲げられた後折曲片63とを有する。
鉛直張出部62および後折曲片63については、図4〜図6で詳しく後述する。
【0031】
下水平部57は、前辺から下方に折り曲げられた前折曲辺65と、左端部57aから張り出された水平張出部(張り出された部位)66と、水平張出部66の外端から下方に向けて折り曲げられた下折曲片67とを有する。
水平張出部66および下折曲片67については、図4〜図6で詳しく後述する。
【0032】
前L形板材51および後L形板材52が対向する状態で配置され、上水平部53の後接合辺69および後鉛直部56の上折曲辺61がスポット溶接されている。
さらに、前鉛直部54の下接合辺71および下水平部57の前折曲辺65がスポット溶接されている。
これにより、上梁部材31(前後のL形板材51,52)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、上梁部材31の剛性を高めることができる。
【0033】
左脚部材33は、断面略L形の内側脚部73および断面略L形の外側脚部74を組み合わせて断面略口状の閉断面に形成された部材である。
内側脚部73の後折曲辺76および外側脚部74の後接合辺77がスポット溶接されるとともに、内側脚部73の前接合辺78および外側脚部74の前接合辺79がスポット溶接されている。
これにより、左脚部材33(内側脚部73および外側脚部74)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左脚部材33の剛性を高めることができる。
【0034】
内側脚部73は、上梁部材31および下梁部材32(図1参照)間に設けられ、略中央部が左フロントサイドフレーム11にスポット溶接されている。
この内側脚部73は、上端に水平折曲片81と、鉛直折曲片82とを備える。
水平折曲片81は、車体中心に向けて折り曲げられ、下水平部57にスポット溶接されている。
鉛直折曲片82は、車体後方に向けて折り曲げられ、後述する下接合辺106にスポット溶接されている。
【0035】
外側脚部74は、上梁部材31および左フロントサイドフレーム11間に設けられている。
この外側脚部74は、上端に鉛直接合片84を備えるとともに、下端に水平接合片85を備える。
【0036】
鉛直接合片84は、断面略L字状に形成され、前折曲辺65の左端部65aおよび下折曲片67にスポット溶接されている。
水平接合片85は、左フロントサイドフレーム11の上壁87にスポット溶接されている。
【0037】
左サイド梁部材18は、車体外側に設けられたコ形板材91と、車体内側に設けられたI形板材92とを有する。
この左サイド梁部材18は、コ形板材91およびI形板材92が組み合わされて閉断面に形成されている。
【0038】
車体外側のコ形板材91は、水平に設けられた梁水平部94と、梁水平部94から鉛直に折り曲げられた梁外鉛直部95と、梁外鉛直部95から車体中央に向けて傾斜状に折り曲げられた梁傾斜部96(図4、図6参照)と、梁傾斜部96の下端部から下方に向けて折り曲げられた梁下折曲辺97とを有する。
【0039】
梁水平部94、梁外鉛直部95および梁傾斜部96は、図3に示すように、断面略コ字形に形成されている。
梁外鉛直部95は、車体前後方向に向けて延出された帯状の部位で、前端部95aが下方に向けて張り出した状態に形成されている。
【0040】
梁下折曲辺97は、前端部97aが、外鉛直部95の前端部95aの下部95bに連結されている。
梁外鉛直部95の前端部95aから、車体中心に向けて前折曲片98が折り曲げられている(形成されている)。
【0041】
車体内側のI形板材92は、断面略I字形に形成された梁内鉛直部101と、梁内鉛直部101の上端部から車体中心に向けて折り曲げられた梁上折曲辺102と、前端部92aから折り曲げられた前接合片103とを有する。
【0042】
コ形板材91およびI形板材92が対向する状態で配置され、梁水平部94の内接合辺105およびI形板材92の梁上折曲辺102がスポット溶接されている。
コ形板材91の梁下折曲辺97および梁内鉛直部101の下接合辺106がスポット溶接されている。
これにより、左サイド梁部材18(コ形板材91およびI形板材92)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左サイド梁部材18の剛性を高めることができる。
【0043】
図4は本発明に係る車体前部構造の要部を一部断面の状態で示す斜視図である。
後鉛直部56は、左端部56aに鉛直張出部62を有し、鉛直張出部62の外端に後折曲片63を有する。
鉛直張出部62は、後鉛直部56の左端部56aから、後鉛直部56の延長線上にコ形板材91の梁外鉛直部95まで張り出されている。
後折曲片63は、コ形板材91の梁外鉛直部95にスポット溶接されている。
【0044】
後折曲片63を梁外鉛直部95にスポット溶接することで、鉛直張出部62を連結部20内の空間108(図5、図6も参照)を仕切るように設けることができる。
この鉛直張出部62は、連結部20を補強する補強部材(スチフナ)としての役割を果たす。
【0045】
下水平部57は、左端部57aに水平張出部66を有し、水平張出部66の外端に下折曲片67を有する。
水平張出部66は、下水平部57の左端部57aから、下水平部57の延長線上に外側脚部74の鉛直接合片84まで延出されている。
下折曲片67は、外側脚部74の鉛直接合片84に裏側から当接されている。
【0046】
鉛直接合片84には、コ形板材91のうち、梁下折曲辺97の前端部97a、外鉛直部95の前端部95aの下部95b、および前折曲片98の下部98aが表側から被せられている。
この状態で、下折曲片67と鉛直接合片84とがスポット溶接されるとともに、鉛直接合片84と前端部97a、下部95bおよび下部98aとがスポット溶接されている。
【0047】
換言すれば、水平張出部66は、下水平部57の左端部57aから、下水平部57の延長線上に、梁下折曲辺97の前端部97a、外鉛直部95の前端部95aの下部95b、および前折曲片98の下部98aまで延出されている。
そして、下折曲片67は、外側脚部74の鉛直接合片84を介して梁下折曲辺97の前端部97a、外鉛直部95の前端部95aの下部95b、および前折曲片98の下部98aにスポット溶接されている。
【0048】
また、下折曲片67を、外側脚部74の鉛直接合片84を介して前端部97a、下部95bおよび下部98aにスポット溶接することで、水平張出部66を連結部20内の空間108(図5、図6も参照)を仕切るように設けることができる。
この水平張出部66は、連結部20を補強する補強部材(スチフナ)としての役割を果たす。
【0049】
図5は図2の5−5線断面図、図6は図2の6−6線断面図である。
連結部20は、左サイド梁部材18の前端部18aがバルクヘッド15の左上端部15aに連結された部位である。
この連結部20は、図6に示すように、左サイド梁部材18の前折曲片98が、前L形板材51の前鉛直部54の左端部54aにスポット溶接され、前折曲片98の下端部98a(図3参照)が鉛直接合片84を介して前折曲辺65の左端部65aにスポット溶接されている。
【0050】
また、連結部20は、図6に示すように、左サイド梁部材18の前端部95aの下端部95b、および梁下折曲辺97の前端部97aが鉛直接合片84を介して下折曲片67にスポット溶接されている。
さらに、連結部20は、図5に示すように、左サイド梁部材18の梁水平部94の前端部94aが上水平部53の左端部53aにスポット溶接されている。
【0051】
加えて、連結部20は、図6に示すように、I形板材92の前接合片103が後鉛直部56にスポット溶接され、内側脚部73の鉛直折曲片82が梁内鉛直部101の下接合辺106にスポット溶接されている。
【0052】
また、連結部20は、図6に示すように、鉛直張出部62の後折曲片63がコ形板材91の梁外鉛直部95にスポット溶接され、図5、図6に示すように、水平張出部66の下折曲片67が左サイド梁部材18の前端部95aの下端部95bおよび梁下折曲辺97の前端部97aにスポット溶接されている。
【0053】
図6に示すように、後折曲片63を梁外鉛直部95にスポット溶接することで、鉛直張出部62を連結部20内の空間108に設けることができる。この鉛直張出部62は、連結部20を補強する補強部材としての役割を果たす。
また、下折曲片67を、左サイド梁部材18の前端部95aの下端部95bおよび梁下折曲辺97の前端部97aにスポット溶接することで、水平張出部66を連結部20内の空間108に設けることができる。この水平張出部66は、連結部20を補強する補強部材としての役割を果たす。
鉛直張出部62および水平張出部66で連結部20を補強することで、連結部20の剛性を高めることができる。
【0054】
さらに、図3で説明したように、上梁部材31(前後のL形板材51,52)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、上梁部材31の剛性を高めることができる。
加えて、左サイド梁部材18(コ形板材91およびI形板材92)が断面略口状の閉断面に組み合わされ、左サイド梁部材18の剛性を高めることができる。
【0055】
このように、連結部20の剛性を高めるとともに、上梁部材31および左サイド梁部材18の剛性を高めることで、バルクヘッド15の剛性を高めることができる。
【0056】
また、後L形板材52の後鉛直部56に鉛直張出部62が一体に設けられている。さらに、後L形板材52の下水平部57に水平張出部66が一体に設けられている。
このように、鉛直張出部62および水平張出部66を後L形板材52に一体形成することで、部材数を増やすことなく連結部20を補強することができる。
これにより、補強部材を新たに増やす場合と比較して、補強部材を簡素化することが可能になり、軽量化を図ることができる。
【0057】
さらに、部材数の増加をなくすことで、組立工数が増すことを抑え、生産性を良好に確保することができる。
【0058】
つぎに、車体前部構造10の左連結部に上下方向や左右方向の荷重が作用した例を図7に基づいて説明する。
図7は本発明に係る車体前部構造に上下方向や左右方向の荷重が作用した例を説明する図である。
まず、左連結部20に上下方向の荷重が作用する例について説明する。
左フロントサイドフレーム11には左ホイールハウス36(図1参照)や左サスペンション(図示せず)を介して上下方向の荷重が作用する。
左フロントサイドフレーム11に作用した荷重は、左フロントサイドフレーム11からバルクヘッド15の左脚部材33を経て左連結部20に矢印A−Bの如く伝わる。
【0059】
ここで、後折曲片63が梁外鉛直部95に溶接され、鉛直張出部62が左連結部20の補強部材としての役割を果たしている。
さらに、図6に示すように、下折曲片67が、左サイド梁部材18の前端部95aの下端部95bおよび梁下折曲辺97の前端部97aに溶接され、水平張出部66が左連結部20の補強部材としての役割を果たしている。
【0060】
鉛直張出部62および水平張出部66で左連結部20を補強することで、左連結部20が上下方向に変形することを良好に抑えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム11が上下方向に変形することを好適に抑えて、走行安定性を良好に確保することができる。
【0061】
つぎに、左連結部20に左右方向の荷重が作用する例について説明する。
左フロントサイドフレーム11には左ホイールハウス36(図1参照)や左サスペンション(図示せず)を介して左右方向の荷重が作用する。
左フロントサイドフレーム11に作用した荷重は、左フロントサイドフレーム11からバルクヘッド15の左脚部材33を経て左連結部20に車体幅方向に矢印C−Dの如く伝わる。
【0062】
鉛直張出部62および水平張出部66で左連結部20が補強されている。よって、左連結部20に矢印Cの如く荷重が作用した場合に、鉛直張出部62および水平張出部66(すなわち、上梁部材31)に圧縮荷重が作用する。
一方、左連結部20に矢印Dの如く荷重が作用した場合に、鉛直張出部62および水平張出部66(すなわち、上梁部材31)に引張荷重が作用する。
【0063】
ここで、上梁部材31に曲げ荷重が作用する場合と比較して、上梁部材31に圧縮荷重や引張荷重が作用する場合の方が、大きな荷重を支えることが可能である。
このように、左連結部20に荷重が矢印C−Dの如く伝わった場合に、上梁部材31に圧縮荷重や引張荷重が作用するように構成することで、左連結部20(すなわち、バルクヘッド15)の剛性を高めることができる。
【0064】
よって、左連結部20が左右方向に変形することを良好に抑えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム11が左右方向に変形することを好適に抑えて、走行安定性を良好に確保することができる。
【0065】
なお、前記実施の形態で例示した前L形板材51、後L形板材52、コ形板材91、I形板材92、内側脚部73および外側脚部74の形状は、用途に合わせて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の車体前部構造は、バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造の要部を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造の要部を一部断面の状態で示す斜視図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】図2の6−6線断面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造に上下方向や左右方向の荷重が作用した例を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、15…バルクヘッド、18…左サイド梁部材(サイド梁部材)、19…右サイド梁部材(サイド梁部材)、20…左連結部(連結部)、21…右連結部(連結部)、22…左アッパメンバー(アッパメンバー)、23…右アッパメンバー(アッパメンバー)、31…上梁部材、31a…左端部(端部)、31b…右端部(端部)、51…前L形板材、52…後L形板材、56…後鉛直部(鉛直部)、57…下水平部(水平部)、62…鉛直張出部(張り出された部位)、66…水平張出部(張り出された部位)、91…コ形板材、92…I形板材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントサイドフレームでバルクヘッドが支持され、前記バルクヘッドの上梁部材の端部からサイド梁部材がアッパメンバーまで車体後方に向けて延出された車体前部構造において、
前記上梁部材が車体前側の前L形板材および車体後側の後L形板材を組み合わせて閉断面に形成され、
前記サイド梁部材が車体外側のコ形板材および車体内側のI形板材を組み合わせて閉断面に形成され、
前記後L形板材を形成する水平部および鉛直部のそれぞれの端部が前記車体外側のコ形板材まで張り出され、
張り出された各部位で前記上梁部材および前記サイド梁部材の連結部を補強することを特徴とする車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−1034(P2009−1034A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160960(P2007−160960)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】