説明

車体前部構造

【課題】前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部17まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる左傾斜ロアメンバー18と、左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部26が上から順に重ねられた状態において、前端部23,11aおよび左前端部26に貫通させて各前端部を一体に締結する締結部材31とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられるとともに、フロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造は、通常、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、フロントサイドフレームの前端部にフロントバンパビームが設けられ、フロントサイドフレームの外側に、フロントピラーから車体前方向に向かって延びるアッパメンバーが設けられ、アッパメンバーから車体前下方向に向かって延びるロアメンバーが設けられている。
そして、このロアメンバーの前端部がフロントサイドフレームの前端外壁部に連結部材を介して連結されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112173号公報
【0003】
この車体前部構造は、ロアメンバーの前端部を連結部材を介してフロントサイドフレームの前端外壁部に連結することで、フロントサイドフレームの前端部の車体外側に設けることができる。
加えて、ロアメンバーは前端部が上下に拡大されている。
【0004】
よって、万が一、相手車両が左右方向や上下方向にずれてオフセット衝突した場合でも、相手車両に当てることができる。
これにより、ロアメンバーで衝撃荷重を受け、ロアメンバーに作用した衝撃荷重をアッパメンバーに伝えて良好に吸収することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車体前部構造のなかには、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短いものがある。
この車体前部構造は、フロントサイドフレームの前端部に前輪が近接され、フロントサイドフレームの前端部の車体外側にロアメンバーを設けることが困難とされている。
このため、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両では、相手車両が左右方向や上下方向にずれてオフセット衝突した場合に、相手車両に当てて衝撃荷重を良好に吸収することは難しい。
【0006】
本発明は、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられた車体前部構造において、前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端上部まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる傾斜ロアメンバーと、前記傾斜ロアメンバーの前端部、前記フロントサイドフレームの前端部および前記サブフレームの前端部が上から順に重ねられた状態において、それぞれの前端部に貫通させて各前端部を一体に締結する締結部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前輪は、フロントサイドフレームに対して車体外側に設けられている。よって、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)に空間を確保することが可能である。
【0009】
そこで、請求項1において、傾斜ロアメンバーをアッパメンバーの前端部からフロントサイドフレームの前端上部まで延ばした。
よって、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、傾斜ロアメンバーの前端部を、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)の空間に設けることができる。
【0010】
請求項2は、前記傾斜ロアメンバーの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する上筒体と、前記フロントサイドフレームの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する中間筒体と、前記サブフレームの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する下筒体と、が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、傾斜ロアメンバーをアッパメンバーの前端部からフロントサイドフレームの前端上部まで延ばした。
そして、傾斜ロアメンバーの前端部を、フロントサイドフレームの前端部の上側(すなわち、前輪の車体内側)の空間に設けた。
この空間に傾斜ロアメンバーを設けることで、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、傾斜ロアメンバーが前輪に干渉することを防ぐことができる。
【0012】
加えて、傾斜ロアメンバーの前端部、フロントサイドフレームの前端部およびサブフレームの前端部を上から順に重ねた。そして、それぞれの前端部に締結部材を貫通させて、各前端部を一体に締結した。
【0013】
よって、相手車両がフロントサイドフレームの前端部にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を締結部材に伝えることができる。
これにより、衝撃荷重を締結部材から傾斜ロアメンバーやサブフレームに分散させて良好に吸収することができる。
【0014】
さらに、相手車両が傾斜ロアメンバーの前端部にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を締結部材に伝えることができる。
これにより、衝撃荷重を締結部材からフロントサイドフレームやサブフレームに分散させて良好に吸収することができる。
【0015】
したがって、前輪からフロントバンパビームまでの間隔が短い車両でも、相手車両がフロントサイドフレームの前端部や、傾斜ロアメンバーの前端部にオフセット衝突した場合に、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができるという利点がある。
【0016】
請求項2に係る発明では、傾斜ロアメンバーの前端部に上筒体を設け、さらにフロントサイドフレームの前端部に中間筒体を設け、加えて、サブフレームの前端部に下筒体を設けた。
そして、上筒体、中間筒体および下筒体に締結部材を貫通させた。
よって、締結部材に備えた一対の締付部間に、上筒体、中間筒体および下筒体を介在させることができる。
【0017】
これにより、締結部材を締め付けた際に、一対の締付部を上筒体、中間筒体および下筒体で支えることが可能になり、締結部材の締付力を高めることができる。
したがって、傾斜ロアメンバーの前端部、フロントサイドフレームの前端部およびサブフレームの前端部を締結部材で強固に締結することができるという利点がある。
【0018】
加えて、上筒体、中間筒体および下筒体に締結部材を貫通させることで、オフセット衝突による衝撃荷重で、上筒体、中間筒体または下筒体が移動する(ずれる)。
よって、移動した筒体が締結部材に当たり、衝撃荷重が締結部材を経て他の筒体に伝わる。
これにより、他の筒体に伝わった衝撃荷重が、それぞれの筒体から傾斜ロアメンバー、フロントサイドフレームまたはサブフレームに伝わり、衝撃荷重を一層良好に分散することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
なお、車体前部構造は左右対称の構成部材で構成されている。よって、本実施の形態においては、左側の構成部材について説明して右側の構成部材の説明を省略する。
【0020】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す側面図、図2は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側部に設けられた左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11と、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられたフロントバルクヘッド12と、左右のフロントサイドフレーム(右フロントサイドフレームは図示せず)11の前端部11aに架け渡されたフロントバンパビーム13と、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられた左アッパメンバー(アッパメンバー)14とを備えている。
【0021】
この車体前部構造10は、フロントバンパビーム13から前輪16までの間隔Lが短く設定されている。
フロントバンパビーム13の左端部13aは、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられている。
【0022】
加えて、車体前部構造10は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部17まで延びる左傾斜ロアメンバー(傾斜ロアメンバー)18と、左フロントサイドフレーム11の下方に設けられたサブフレーム21と、左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部(前端部)26を一体に締結する左締結部材(締結部材)31とを備えている。
【0023】
左フロントサイドフレーム11は、車体前後方向を向いて車体前部の左側に配置され、前端下部19に左脚部33が下向きに突出されたフレーム部材である。
この左フロントサイドフレーム11は、後端部11bが左フロントサイドフレームリヤエンド35を介して左フロアフレーム36に連結されている。
【0024】
左アッパメンバー14は、左フロントサイドフレーム11の外側に設けられ、左フロントピラー37から車両前方向に向かって延びる部材である。
さらに、左アッパメンバー14は、左ホイールハウス38を介して左フロントサイドフレーム11に連結されている。
【0025】
サブフレーム21は、例えば、車幅方向に所定間隔をおいて配置された左右のサイドメンバー42(右サイドメンバーは図示せず)と、左右のサイドメンバー42の左右の前端部26(右前端部は図示せず)に架け渡された前クロスメンバー43(図3参照)と、左右のサイドメンバー42の左右の後端部27(右後端部は図示せず)に架け渡された後クロスメンバー(図示せず)とを備えている。
右サイドメンバーは、左サイドメンバー42と略左右対称の部材である。
【0026】
左サイドメンバー42は、左フロントサイドフレーム11の下方に配置され、左フロントサイドフレーム11に沿って車体前後方向に延出されている。
この左サイドメンバー42は、前端部(すなわち、サブフレーム21の左前端部)26が左脚部33の下端部33aに下方から重ねられ、左締結部材31で下端部33aに締結されている。
【0027】
また、左サイドメンバー42は、後端部(すなわち、サブフレーム21の左後端部)27が、左フロントサイドフレームリヤエンド35の下端部35aに下方から重ねられ、ボルト44で下端部35aに締結されている。
【0028】
なお、右サイドメンバーも、左サイドメンバー42と同様に、前端部が右フロントサイドフレームの右脚部に右締結部材(締結部材)で締結され、後端部が右フロントサイドフレームリヤエンドの下端部にボルトで締結されている。
【0029】
図3は本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
左傾斜ロアメンバー18は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部17まで車体前下方に向けて斜め下方に延出されている。
この左傾斜ロアメンバー18は、左アッパメンバー14の前端部14aに取り付けられた後端部24と、後端部24から車体前下方に向けて斜め下方に延出された傾斜部25と、傾斜部25に設けられて左フロントサイドフレーム11の前端上部17に左締結部材31で取り付けられた前端部23とを備えている。
【0030】
左締結部材31は、連結ボルト46と、連結ボルト46にねじ結合可能な連結ナット(一対の締付部のうち、他方の締付部)47とを備えている。
連結ボルト46は、ロッド部51の基端に頭部(一対の締付部のうち、一方の締付部)52が形成され、頭部52に比較的大径のフランジ53が形成され、先端にねじ部54が形成されている。
連結ナット47は、ねじ部54にねじ結合可能なねじ孔が形成され、フランジ53に対向させて比較的大径のフランジ56が形成されている。
【0031】
左傾斜ロアメンバー18の傾斜部25は、平面視において、後端部24に対して車体内側に向けて略く字状に折り曲げられた部位である。
また、左傾斜ロアメンバー18の前端部23は、平面視において、傾斜部25に対して車体内側に向けて略く字状に折り曲げられた部位である。
【0032】
左傾斜ロアメンバー18は、前端部23が左フロントサイドフレーム11の前端上部17に上方から重ねられ、左締結部材31で前端上部17に締結されている。
一方、前述したように、左サイドメンバー42は、前端部(すなわち、サブフレーム21の左前端部)26が左脚部33の下端部33aに下方から重ねられ、左締結部材31で下端部33aに締結されている。
【0033】
すなわち、左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部26が上から順に重ねられ、前端部23、前端部11aおよび左前端部26が、左締結部材31で一体に締結されている。
【0034】
具体的には、左傾斜ロアメンバー18の前端部23は、中空状に形成され、図5に示す内部空間57に上カラー(上筒体)61が設けられ、前端部23の上端部23aに連結ナット47が上カラー61と同軸上に溶接で接合されている。
また、左フロントサイドフレーム11は中空状に形成され、図5に示す前端部11aの内部空間65に中間カラー(中間筒体)62が設けられている。
さらに、サブフレーム21は中空状に形成され、図5に示す左前端部26の内部空間66に下カラー(下筒体)63が設けられている。
【0035】
左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部26が上から順に重ねられた状態で、上カラー61、中間カラー62および下カラー63は同軸上に配置されている。
上カラー61、中間カラー62および下カラー63に連結ボルト46を貫通させ、ねじ部54が連結ナット47にねじ結合されている。
よって、前端部23、前端部11aおよび左前端部26が、左締結部材31(連結ボルト46および連結ナット47)で一体に締結されている。
【0036】
図2に戻って、左傾斜ロアメンバー18は、左アッパメンバー14の前端部14aから左フロントサイドフレーム11の前端上部17まで延出されている。
よって、左傾斜ロアメンバー18の前端部23を、左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、前輪16の車体内側)の空間68(図1も参照)に設けた。
【0037】
空間68に左傾斜ロアメンバー18を設けることで、前輪16からフロントバンパビーム13までの間隔L(図1参照)が短い車両でも、左傾斜ロアメンバー18が前輪16に干渉することを防ぐことができる。
【0038】
加えて、左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部26を上から順に重ねた。
そして、各前端部23,11aや左前端部26に左締結部材31を貫通させて、各前端部23,11aや左前端部26を一体に締結した。
【0039】
よって、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aにオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左締結部材31に伝えることができる。
これにより、衝撃荷重を左締結部材31から左傾斜ロアメンバー18やサブフレーム21に分散させて良好に吸収することができる。
【0040】
さらに、相手車両が左傾斜ロアメンバー18の前端部23にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左締結部材31に伝えることができる。
これにより、衝撃荷重を左締結部材31から左フロントサイドフレーム11やサブフレーム21に分散させて良好に吸収することができる。
【0041】
したがって、前輪16からフロントバンパビーム13までの間隔Lが短い車両でも、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aや、左傾斜ロアメンバー18の前端部23にオフセット衝突した場合に、オフセット衝突で生じた衝撃荷重を良好に吸収することができる。
なお、オフセット衝突時の衝撃荷重を吸収可能な領域については図6で詳しく説明する。
【0042】
図4(a)は図2の4a−4a線断面図、図4(b)は図4(a)を分解した状態を示す断面図である。
左傾斜ロアメンバー18は、一例として、断面略コ字状のアッパパネル71の下辺71a,71aにロアパネル72の折曲片72a,72aを溶接でそれぞれ接合することで、断面略ロ字状の閉断面に形成されている。
【0043】
この左傾斜ロアメンバー18は、後端部24が、左アッパメンバー14の前端部14a内に挟持されている。
左アッパメンバー14は、図4(a),(b)に示すように、車体内側に配置されたインナパネル74と、インナパネル74に溶接で接合されたアウタパネル75とを備えている。
【0044】
インナパネル74の上下の辺74aにアウタパネル75の上下の辺75aが溶接で接合されている。
インナパネル74の前端部およびアウタパネル75の前端部間に、左傾斜ロアメンバー18の後端部24が挟持されている。
そして、アッパパネル71の後端部24の内壁71bがインナパネル74の前端部に溶接で接合され、アッパパネル71の後端部の外壁71cがアウタパネル75の前端部の外壁75bに溶接で接合されている。
これにより、左傾斜ロアメンバー18は、後端部24が、左アッパメンバー14の前端部14aに強固に連結されている。
【0045】
図5は図2の5−5線断面図である。
左フロントサイドフレーム11の前端部11aにおいて、前端上部17に上開口部81が形成され、前端下部19に下開口部82が形成されている。下開口部82は、上開口部81に対して同軸上(同一鉛直線上)に設けられている。
また、前端下部19に左脚部33が溶接で接合され、左脚部33の下端部33aに下開口部83が形成されている。左脚部33の下開口部83は、左フロントサイドフレーム11の上下の開口部81,82に対して同軸上(同一鉛直線上)に設けられている。
【0046】
左フロントサイドフレーム11の前端上部17および左脚部33の下端部33aに中間カラー62が設けられている。
すなわち、左フロントサイドフレーム11の前端上部17に中間カラー62の上フランジ62aが溶接で接合され、左脚部33の下端部33aに中間カラー62の下フランジ62bが溶接で接合されている。
中間カラー62は、内部に貫通孔62cが形成された中空の筒体である。
この中間カラー62の貫通孔62cは、左脚部33の下開口部83および左フロントサイドフレーム11の上下の開口部81,82に対して同軸上に設けられている。
【0047】
サブフレーム21の左前端部26において、上端部26aに上開口部85が形成され、下端部26bに下開口部86が形成されている。下開口部86は、上開口部85に対して同軸上(同一鉛直線上)に設けられている。
左前端部26の上下の端部26a,26bに下カラー63が設けられている。
【0048】
すなわち、左前端部26の上端部26aに下カラー63の上フランジ63aが溶接で接合され、左前端部26の下端部26bに下カラー63の下フランジ63bが溶接で接合されている。
下カラー63は、内部に貫通孔63cが形成された中空の筒体である。
この下カラー63の貫通孔63cは、左前端部26の上下の上開口部85,86に対して同軸上に設けられている。
【0049】
左傾斜ロアメンバー18の前端部23において、上端部23aに上開口部88が形成され、下端部23bに下開口部89が形成されている。下開口部89は、上開口部88に対して同軸上(同一鉛直線上)に設けられている。
前端部23の上下の端部23a,23bに上カラー61が設けられている。
【0050】
すなわち、前端部23の上端部23aに上カラー61の上フランジ61aが溶接で接合され、前端部23の下端部23bに上カラー61の下フランジ61bが溶接で接合されている。
上カラー61は、内部に貫通孔61cが形成された中空の筒体である。
この上カラー61の貫通孔61cは、前端部23の上下の開口部88,89に対して同軸上に設けられている。
【0051】
左フロントサイドフレーム11の前端上部17に、左傾斜ロアメンバー18の前端部23が上方から重ねられている。
左脚部33の下端部33aに、サブフレーム21の左前端部26が下方から重ねられている。
【0052】
この状態で、上カラー61、中間カラー62および下カラー63の各貫通孔61c,62c,63cが同軸上に配置されている。
下カラー63の貫通孔63c、中間カラー62の貫通孔62cおよび上カラー61の貫通孔61cに、連結ボルト46のロッド部51が差し込まれている。
そして、ロッド部51の先端部のねじ部54が、前端部23の上開口部88から突出して連結ナット47にねじ結合されている。
【0053】
ここで、連結ボルト46の頭部52および連結ナット47間に、上カラー61、中間カラー62および下カラー63が連結された状態で介在されている。
よって、左締結部材31を締め付けた際に、頭部52および連結ナット47を上カラー61、中間カラー62および下カラー63で支える(受け止める)ことができる。
これにより、頭部52および連結ナット47の締付力F1、左締結部材31の締付力F1を高めることができる。
【0054】
したがって、左傾斜ロアメンバー18の前端部23、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよびサブフレーム21の左前端部26は、左締結部材31(すなわち、連結ボルト46および連結ナット47)で強固に一体に締結されている。
【0055】
加えて、上カラー61、中間カラー62および下カラー63に連結ボルト46を貫通させた。この状態で、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに相手車両がオフセット衝突した場合に、オフセット衝突による衝撃荷重F2で前端部11aが潰れる。
前端部11aが潰れることで、前端部11aとともに中間カラー62が車体後方に向けて移動する(ずれる)。
よって、中間カラー62が連結ボルト46のロッド部51に当たる。
【0056】
ここで、締結部材31は、頭部52に比較的大径のフランジ53が備えられ、連結ナット47に比較的大径のフランジ56が備えられている。
このため、中間カラー62が連結ボルト46のロッド部51に当たった際に、頭部52が下開口部86から抜け出すことや、連結ナット47が上開口部88から抜け出すことを阻止できる。
【0057】
よって、中間カラー62が連結ボルト46のロッド部51に当たった際に、衝撃荷重F2を、ロッド部51を経て上下のカラー61,63に伝えることができる。
これにより、上下のカラー61,63に伝わった衝撃荷重F2が、上下のカラー61,63から左傾斜ロアメンバー18やサブフレーム21に伝わり、衝撃荷重F2を一層良好に分散することができる。
【0058】
一方、左傾斜ロアメンバー18の前端部23に相手車両がオフセット衝突した場合に、オフセット衝突による衝撃荷重F3で前端部23が潰れる。
前端部23が潰れることで、前端部23とともに上カラー61が車体後方に向けて移動する(ずれる)。
よって、上カラー61が連結ボルト46のロッド部51に当たる。
【0059】
前述したように、締結部材31は、頭部52に比較的大径のフランジ53が備えられ、連結ナット47に比較的大径のフランジ56が備えられている。
このため、上カラー61が連結ボルト46のロッド部51に当たった際に、頭部52が下開口部86から抜け出すことや、連結ナット47が上開口部88から抜け出すことを阻止できる。
【0060】
よって、上カラー61が連結ボルト46のロッド部51に当たった際に、衝撃荷重F3を、ロッド部51を経て中間カラー62や下カラー63に伝えることができる。
これにより、中間カラー62や下カラー63に伝わった衝撃荷重F3が、中間カラー62や下カラー63から左フロントサイドフレーム11やサブフレーム21に伝わり、衝撃荷重を一層良好に分散することができる。
なお、衝撃荷重F2,F3を分散する例については、図7〜図10で詳しく説明する。
【0061】
図6は本発明に係る車体前部構造の衝撃荷重を支える領域を示す正面図である。
車体前部構造10は、左傾斜ロアメンバー18の前端部23が、左フロントサイドフレーム11の前端上部17に連結部材31で強固に連結されている。
よって、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11a(すなわち、P1位置)にオフセット衝突した場合に、衝撃荷重を左フロントサイドフレーム11などで良好に支えることができる。
【0062】
また、相手車両が左フロントサイドフレーム11の前端部11aの上側(すなわち、P2位置)にオフセット衝突した場合に、相手車両を左傾斜ロアメンバー18の前端部23に当てて衝撃荷重を吸収することができる。
【0063】
さらに、相手車両がP2位置の車体外側(すなわち、P3位置)にオフセット衝突した場合に、相手車両を左傾斜ロアメンバー18の傾斜部25に当てて衝撃荷重を吸収することができる。
【0064】
つぎに、相手車両がP1位置〜P3位置にオフセット衝突した場合を図7〜図10に基づいて詳しく説明する。
まず、相手車両が、図6に示すP1位置、すなわち左フロントサイドフレーム11の前端部11aにオフセット衝突した場合を図7〜図8に基づいて説明する。
【0065】
図7(a),(b)は本発明に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)において、車高が略同じ高さの相手車両90が、図6に示すP1位置に前方からオフセット衝突した場合に、相手車両90のフロントサイドフレーム91にフロントバンパビーム13の左端部13aを当てることができる。
【0066】
フロントバンパビーム13の左端部13aは、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに設けられている。
よって、相手車両90のフロントサイドフレーム91に、左フロントサイドフレーム11の前端部11aを当てたことになる。
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aに、オフセット衝突による衝撃荷重F2が作用する。
【0067】
(b)において、オフセット衝突による衝撃荷重F2で前端部11aが潰れる。衝撃荷重F2のうち、一部の衝撃荷重F4が左フロントサイドフレーム11に伝わる。
前端部11aが潰れることで、前端部11aとともに中間カラー62が車体後方に向けて移動する(ずれる)。
【0068】
ここで、上カラー61、中間カラー62および下カラー63に連結ボルト46が貫通されている。
よって、中間カラー62の内周面が連結ボルト46の外周面(具体的には、ロッド部51の外周面)に当たる。
これにより、衝撃荷重F2のうち、残りの衝撃荷重がロッド部51を経て上下のカラー61,63に衝撃荷重F5,F6として伝わる。
【0069】
上カラー61に伝わった衝撃荷重F5は、上下のフランジ61a,61bを経て左傾斜ロアメンバー18に矢印の如く伝わる。
また、下カラー63に伝わった衝撃荷重F6は、上下のフランジ63a,63bを経てサブフレーム21の左サイドメンバー42に矢印の如く伝わる。
【0070】
図8は本発明に係る左フロントサイドフレームに作用した衝撃荷重を分散した状態を説明する図である。
オフセット衝突による衝撃荷重F2の一部を、左フロントサイドフレーム11に衝撃荷重F4として伝えることができる。
同時に、残りの衝撃荷重を、左傾斜ロアメンバー18に衝撃荷重F5として分散するとともに、サブフレーム21の左サイドメンバー42に衝撃荷重F6として分散することができる。
これにより、相手車両90のフロントサイドフレーム91からの衝撃荷重F2を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0071】
つぎに、相手車両が、図6に示すP2位置、すなわち左傾斜ロアメンバー18の前端部23にオフセット衝突した場合を図9〜図10に基づいて説明する。
図9(a),(b)は本発明に係る車体前部構造の左傾斜ロアメンバーの前端部に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
(a)に示すように、車高が高い相手車両90が、図6に示すP2位置に前方からオフセット衝突した場合に、相手車両90のフロントサイドフレーム91に左傾斜ロアメンバー18の前端部23を当てることができる。
よって、左傾斜ロアメンバー18の前端部23に、オフセット衝突による衝撃荷重F3が作用する。
【0072】
(b)において、オフセット衝突による衝撃荷重F3で前端部23が潰れる。衝撃荷重F3のうち、一部の衝撃荷重F7が左傾斜ロアメンバー18に伝わる。
前端部23が潰れることで、前端部23とともに上カラー61が車体後方に向けて移動する(ずれる)。
【0073】
ここで、上カラー61、中間カラー62および下カラー63に連結ボルト46が貫通されている。
よって、上カラー61の内周面が連結ボルト46の外周面(具体的には、ロッド部51の外周面)に当たり、衝撃荷重F3のうち、残りの衝撃荷重がロッド部51に矢印の如く伝わる。
ロッド部51に伝わった衝撃荷重のうち、一部の衝撃荷重F8が中間カラー62に伝わるとともに、残りの衝撃荷重F9が下カラー63に伝わる。
【0074】
中間カラー62に伝わった衝撃荷重F8は、上下のフランジ62a,62bを経て左フロントサイドフレーム11に矢印の如く伝わる。
また、下カラー63に伝わった衝撃荷重F9は、上下のフランジ63a,63bを経てサブフレーム21の左サイドメンバー42に矢印の如く伝わる。
【0075】
図10は本発明に係る左傾斜ロアメンバーの前端部に作用した衝撃荷重を分散した状態を説明する図である。
オフセット衝突による衝撃荷重F3の一部を、左傾斜ロアメンバー18に衝撃荷重F7として伝えることができる。
同時に、残りの衝撃荷重を、左フロントサイドフレーム11に衝撃荷重F8として分散するとともに、サブフレーム21の左サイドメンバー42に衝撃荷重F9として分散することができる。
これにより、相手車両90のフロントサイドフレーム91からの衝撃荷重F3を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0076】
また、車高が高い相手車両90が、図6に示すP3位置に前方からオフセット衝突した場合に、相手車両90のフロントサイドフレーム91に左傾斜ロアメンバー18の傾斜部25を当てることができる。
傾斜部25に作用した衝撃荷重を、図9〜図10で説明した衝撃荷重の伝達と同様に分散することができる。
これにより、相手車両90のフロントサイドフレーム91からの衝撃荷重F3を、車体前部構造10で良好に吸収することができる。
【0077】
なお、前記実施の形態では、締結部材31として連結ボルト46および連結ナット47を例示したが、これに限らないで、例えばリベットなどの他の締結部材を使用することも可能である。
【0078】
また、前記実施の形態で例示した左フロントサイドフレーム11、左アッパメンバー14、左傾斜ロアメンバー18、サブフレーム21、連結ボルト46、連結ナット47、上カラー61、中間カラー62、下カラー63などの形状は適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、フロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は図2の4a−4a線断面図、(b)は図4(a)を分解した状態を示す断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】本発明に係る車体前部構造の衝撃荷重を支える領域を示す正面図である。
【図7】本発明に係る車体前部構造の左フロントサイドフレームに相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図8】本発明に係る左フロントサイドフレームに作用した衝撃荷重を分散した状態を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造の左傾斜ロアメンバーの前端部に相手車両がオフセット衝突した場合を説明する図である。
【図10】本発明に係る左傾斜ロアメンバーの前端部に作用した衝撃荷重を分散した状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0081】
10…車体前部構造、11…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a…左フロントサイドフレームの前端部、14…左アッパメンバー(アッパメンバー)、14a…左アッパメンバーの前端部、17…前端上部、18…左傾斜ロアメンバー(傾斜ロアメンバー)、21…サブフレーム、23…傾斜ロアメンバーの前端部、26…サブフレームの左前端部(サブフレームの前端部)、31…締結部材、46…連結ボルト、47…連結ナット(一対の締付部のうち、他方の締付部)、52…頭部(一対の締付部のうち、一方の締付部)、61…上カラー(上筒体)、62…中間カラー(中間筒体)、63…下カラー(下筒体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に向いてフロントサイドフレームが設けられ、前記フロントサイドフレームの外側にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられた車体前部構造において、
前記アッパメンバーの前端部から前記フロントサイドフレームの前端上部まで車体前下方に向けて斜め下方に延びる傾斜ロアメンバーと、
前記傾斜ロアメンバーの前端部、前記フロントサイドフレームの前端部および前記サブフレームの前端部が上から順に重ねられた状態において、それぞれの前端部に貫通させて各前端部を一体に締結する締結部材と、
を備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記傾斜ロアメンバーの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する上筒体と、
前記フロントサイドフレームの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する中間筒体と、
前記サブフレームの前端部に設けられ、前記締結部材が貫通する下筒体と、
が設けられたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−184424(P2009−184424A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24097(P2008−24097)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】