説明

車体構造

【課題】 ドアの開放時における外観上の見栄えが良好で、ドア側の取付剛性を充分に確保しつつ、ドアとオーバーフェンダーとを直接接合することが可能な車体構造の提供。
【解決手段】 オーバーフェンダー5の下端には、カバー部20が設けられ、ドア2のホイールアーチ周縁部4には、第1取付穴12と第2取付穴13とが形成されている。第1取付穴12は、ドアアウタパネル6及びドアインナパネル7を貫通し、第2取付穴13は、ドアアウタパネル6を貫通する。第1取付穴12からホイールアーチ周縁部4の湾曲方向へ外れた領域には、ドアアウタパネル6とドアインナパネル7とが離間する閉空間16が形成されている。オーバーフェンダー5の内側には、第2取付穴13に車両外側から挿入され取り付けられるクリップ部18と被取付部材15とが突設されている。第1取付穴12へ挿入されるスクリュー19により被取付部材15と板状取付部14とが結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアのホイールアーチ周縁部にオーバーフェンダーを取り付ける構造として、ドアとオーバーフェンダーの下端面とをブラケットを介して結合するものや、ドアのアウタパネルとオーバーフェンダーの下端面とを直接結合するものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−19642号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の構造では、オーバーフェンダーのホイールアーチ側端面とブラケット又はドアアウタパネルとをリベットによって接合しており、オーバーフェンダーのホイールアーチ側端面上にはリベットが露出する。このオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面は、ドアの開放時に乗員等から見え易い場所であるため、外観上好ましくない。
【0005】
また、ドアとオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面とをブラケットを介して結合する構造では、ブラケットの分だけ部品点数が増加すると共に、組付工程が複雑になってしまう。
【0006】
これに対し、ドアのアウタパネルとオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面とを直接結合する構造では、ブラケットが介在することによる不都合は生じないが、オーバーフェンダーを直接支持する部材がドアアウタパネルのみであるため、ドア側の取付剛性が不十分となるおそれがある。加えて、ドアアウタパネルのフランジ部分、及びオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面には、高い部品精度が要求される。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ドアの開放時における外観上の見栄えが良好であり、ドア側の取付剛性を充分に確保しつつ、ドアとオーバーフェンダーとを直接接合することが可能な車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る車体構造は、ドアと、ボディパネルと、オーバーフェンダーと、を備える。ドアは、ドアアウタパネルとドアインナパネルとを有する。ドアアウタパネルとドアインナパネルとは、その端部同士が接合されることにより、閉空間を形成する。ボディパネルは、ボディアウタパネルとホイールアーチアウタパネルとからなり、ドアよりも車両内側に配置される。オーバーフェンダーは、ドアのホイールアーチ周縁部に設けられる。
【0009】
オーバーフェンダーのホイールアーチ側端部は、ドアとボディパネルとの隙間を覆うように車両内側に延設されている。ホイールアーチ周縁部には、第1取付穴と第2取付穴とが形成されている。第1取付穴は、ホイールハウス側に位置し、ドアアウタパネル及びドアインナパネルを貫通する。第2取付穴は、第1取付穴よりもホイールハウスから離れて位置し、ドアアウタパネルを貫通する。ホイールアーチ周縁部のうち、第1取付穴が形成される領域には、ドアアウタパネルとドアインナパネルとが重ねられて接合されることにより板状取付部が形成されている。また、ホイールアーチ周縁部のうち、第1取付穴からホイールアーチ周縁部の湾曲方向へ外れた領域には、ドアアウタパネルとドアインナパネルとが離間する閉空間が形成されている。オーバーフェンダーの内側には、第2取付穴に車両外側から挿入されて取り付けられる位置決め部材が突設されると共に、第1取付穴に対応する被取付部材が設けられている。車両内側から第1取付穴へ挿入される取付部材によって、被取付部材とホイールアーチ周縁部の板状取付部とが結合される。
【0010】
上記構成では、オーバーフェンダーをドアに取り付ける場合、ホイールアーチ周縁部の第2取付穴にオーバーフェンダーの位置決め部材を挿入し、オーバーフェンダーをホイールアーチ周縁部に仮保持させる。係る状態で、ホイールアーチ周縁部の第1取付穴の位置と、オーバーフェンダーの被取付部材の位置とがほぼ合致する。そして、車両内側からホイールアーチ周縁部の第1取付穴に取付部材を挿入し、被取付部材とホイールアーチ周縁部の板状取付部とを結合する。
【0011】
ドアを閉じた状態において、オーバーフェンダーのホイールアーチ側端部がドアとボディパネルとの隙間を覆うので、ホイールハウス側から跳ね上げられる泥等がドアとボディパネルとの隙間へ進入することを確実に防止することができる。
【0012】
また、位置決め部材は、その車両外側がオーバーフェンダーによって覆われ、その車両内側がドアインナパネルによって覆われる。一方、取付部材については、その車両外側はオーバーフェンダーによって覆われるが、車両内側はホイールアーチ周縁部の板状取付部の外面上に露出する。しかし、ホイールアーチ周縁部の板状取付部は、その側方が車両内側に延設されたオーバーフェンダーのホイールアーチ側端部によって覆われており、従来のオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面に比べて、ドアの開放時に乗員等から見え難い場所となるため、外観上の見栄えが良好である。
【0013】
また、ドアとオーバーフェンダーとを他の部材を介在させることなく直接結合しているので、他の部材を介在させる場合に比べて、部品点数の削減によるコストの低減及び取付作業性の向上を図ることができる。また、ドアアウタパネルのフランジ部の精度とは無関係にオーバーフェンダーのホイールアーチ側端面を設定できるので、高い部品精度が不要である。
【0014】
さらに、オーバーフェンダーを、ドアアウタパネルとドアインナパネルとが重ねられて接合された板状取付部に結合しているので、ドア側に必要とされる取付剛性を充分に確保することができる。
【0015】
加えて、ホイールアーチ周縁部のうち、第1取付穴からホイールアーチ周縁部の湾曲方向へ外れた領域には、ドアアウタパネルとドアインナパネルとが離間する閉空間が形成されているので、ドア側に必要とされる取付剛性を充分に確保しつつ、ドア自体に要求される剛性をも十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ドアの開放時における外観上の見栄えが良好となり、且つドア側の取付剛性を充分に確保しつつ、ドアとオーバーフェンダーとを直接接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係る車体構造を備えた車両の後部側面図、図2は図1のII−II断面図である。なお、図2はドアを閉じた状態を示している。また、図2中FRは車両前方を、INは車両内側方向をそれぞれ示している。
【0019】
図1に示すように、車両1の後側部には、車両前側を回転中心として回転し車室を開閉するリヤ側のドア2が設けられている。ドア2の後方の下端部となるホイールアーチ周縁部4は、後輪タイヤ(図示外)が収容されるホイールハウス3に隣接し、ホイールハウス3の前方外縁にそって湾曲している。このホイールアーチ周縁部4の外面に、樹脂製のオーバーフェンダー5が取り付けられる。
【0020】
図2に示すように、ドア2は、車両外側のドアアウタパネル6と車両内側のドアインナパネル7とを有する。ドアアウタパネル6とドアインナパネル7とは、その端部6a,7a同士が接合され、その間に閉空間を形成している。
【0021】
ドア2の車両内側には、ボディアウタパネル9及びホイールアーチアウタパネル10が配置され、ボディを構成している。
【0022】
ドア2を閉じた状態において、ドアインナパネル7は、車両前方から後方へ向かって延び、ボディアウタパネル9の前方で曲折し、ボディアウタパネル9に沿って車両外側に延びている。ドアインナパネル7の車両外側の先端部分には、ボディアウタパネル9の屈曲部9cと対向して曲折する屈曲部7bと、車両外側端部9aと対向して屈曲部7bから後方へ曲折する端部7aとが形成され、この端部7aがドアアウタパネル6の端部6aと重ねられ接合されている。
【0023】
ドアアウタパネル6及びドアインナパネル7のうち、それぞれの端部6a,7aと、ドアインナパネル7の屈曲部7bと、ドアアウタパネル6のうち屈曲部7bと対向する部分を含む領域が、本実施形態のホイールアーチ周縁部4を構成している。
【0024】
ホイールアーチ周縁部4には、第1取付穴12と第2取付穴13とが設けられている。第1取付穴12は、ホイールアーチ周縁部4のうちホイールハウス3側となる端部6a,7aに形成され、ドアアウタパネル6及びドアインナパネル7を貫通する。すなわち、この重ねられて接合された端部6a,7aが、第1取付穴12を形成するための板状取付部14を構成し、端部6aの車両外側面が後述する被取付部材15の取付座面となる。第2取付穴13は、第1取付穴12よりもホイールハウス3から離れた位置でドアアウタパネル6に形成され、ドアインナパネル7の屈曲部7bと対向する。オーバーフェンダーの取付剛性を高めるために、第1取付穴12と第2取付穴13とは、できる限り離間して設けることが望ましい。これら第1取付穴12と第2取付穴13とは、ホイールアーチ周縁部4の湾曲形状に沿った内外2本の曲線上にそれぞれ複数個ずつ設けられている(図1参照)。なお、本実施形態では、周方向に3箇所ずつ、且つ同心円上に2列となるように設けられている。
【0025】
ドアインナパネル7の端部7aのうち、第1取付穴12からホイールアーチ周縁部4の湾曲方向へ外れた領域(図1に示すように第1取付穴12の間の領域)には、ドアアウタパネル6の端部6aから離間して閉空間16を形成する閉空間形成部17が曲折形成されている。
【0026】
オーバーフェンダー5の内面上には、第2取付穴13に車両外側から挿入されて取り付けられる位置決め部材としてのクリップ部18と、第1取付穴12に対応する被取付部材15とが一体的に突設されている。第2取付穴13を挿通したクリップ部18の先端部分は、ドアインナパネル7の屈曲部7bとドアアウタパネル6との間の閉空間内に収容される。被取付部材15には、第2取付穴13にクリップ部18を取り付けた状態で第1取付穴12と連通し、車両内側から挿入される取付部材としてのスクリュー19と螺合するスクリュー挿入孔15aが形成されている。車両内側から第1取付穴12及びスクリュー挿入孔15aへスクリュー19を挿入して締結することにより、被取付部材15と板状取付部14とが結合される。
【0027】
オーバーフェンダー5の下端(ホイールハウス3に近接する先端)には、車両内側に曲折されて延び、ドア2とボディパネル8との隙間を覆うカバー部20が一体的に設けられている。
【0028】
オーバーフェンダー5をドア2に取り付ける場合、ホイールアーチ周縁部4の第2取付穴13にオーバーフェンダー5のクリップ部18を挿入し、オーバーフェンダー5をホイールアーチ周縁部4に仮保持させる。係る状態で、ホイールアーチ周縁部4の第1取付穴12の位置と、オーバーフェンダー5の被取付部材15のスクリュー挿入孔15aの位置とがほぼ合致する。そして、車両内側から第1取付穴12にスクリュー19を挿入して締結し、オーバーフェンダー5の被取付部材15とホイールアーチ周縁部4の板状取付部14とを結合する。
【0029】
本実施形態によれば、ドア2を閉じた状態において、オーバーフェンダー5のカバー部20がドア2とボディパネル8との隙間を覆い、且つカバー部20の車幅方向への突出量と、ドア2及びボディパネル8との隙間の間隔は、前記取付方法によりドアアウタパネル6の大きさに関係なく調整でき、ホイールハウス3側から跳ね上げられる泥等がドア2とボディパネル8との隙間へ進入することを確実に防止することができる。
【0030】
また、オーバーフェンダー5をドア2に取り付けた状態では、クリップ部18は、その車両外側がオーバーフェンダー5によって覆われ、その車両内側がドアインナパネル7によって覆われる。一方、スクリュー19については、車両内側のスクリュー頭部19aはホイールアーチ周縁部4の板状取付部14の外面上(ドアインナパネル7の端部7aの車両内側面上)に露出する。しかし、板状取付部14は、その側方がオーバーフェンダー5のカバー部20によって覆われており、且つオーバーフェンダー5の下端面(カバー部20の外面)に比べて、ドア2の開放時に乗員等から見え難い場所となるため、外観上の見栄えが良好である。
【0031】
また、ドアアウタパネル6のフランジ部に接合するものではなく、ドアアウタパネル6のホイールアーチ周縁部4の精度と無関係にカバー部20を設定することができるので、アウタパネル6とカバー部20の精度を緩和することができ、歩留まりの向上によるコストの低減及び取付作業性の向上を図ることができる。
【0032】
また、オーバーフェンダー5を、ドアアウタパネル6とドアインナパネル7とが重ねられて接合された板状取付部14に結合しているので、ドア2側に必要とされるオーバーフェンダー5のための取付剛性を充分に確保することができる。
【0033】
さらに、ホイールアーチ周縁部4のうち、第1取付穴12からホイールアーチ周縁部4の湾曲方向へ外れた領域には、ドアアウタパネル6とドアインナパネル7とが離間する閉空間16が形成されているので、板状取付部14を設けたことに起因するホイールアーチ周縁部4の下端部分での剛性の低下を抑えることができ、ドア2自体の剛性を十分に確保することができる。
【0034】
なお、本実施形態は本発明の一例であり、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、ドア2の開放時における外観上の見栄えが良好となり、且つドア2側の取付剛性を充分に確保しつつ、ドア2とオーバーフェンダー5とを直接接合することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、様々な自動車の車体構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体構造を備えた車両の後部側面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:車両
2:ドア
3:ホイールハウス
4:ホイールアーチ周縁部
5:オーバーフェンダー
6:ドアアウタパネル
7:ドアインナパネル
8:ボディパネル
9:ボディアウタパネル
10:ホイールアーチアウタパネル
12:第1取付穴
13:第2取付穴
14:板状取付部
15:被取付部
16:閉空間
18:クリップ部(位置決め部材)
19:スクリュー(取付部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアアウタパネルとドアインナパネルとが端部で接合されることにより閉空間を形成するドアと、ボディアウタパネルとホイールアーチアウタパネルとからなり前記ドアよりも車両内側に配置されるボディパネルと、前記ドアのホイールアーチ周縁部に設けられるオーバーフェンダーと、を備えた車体構造において、
前記オーバーフェンダーのホイールアーチ側壁部を、前記ドアと前記ボディパネルとの隙間を覆うように車両内側に延設し、
前記ホイールアーチ周縁部に、前記ホイールアーチ側端部に位置し前記ドアアウタパネル及び前記ドアインナパネルを貫通する第1取付穴と、該第1取付穴よりも前記ホイールアーチから離れて位置し前記ドアアウタパネルを貫通する第2取付穴と、を形成し、
前記ホイールアーチ周縁部のうち、前記第1取付穴が形成される領域には、前記ドアアウタパネルと前記ドアインナパネルとを重ね合わせて接合することにより板状取付部を形成し、且つ前記第1取付穴から前記ホイールアーチ周縁部の湾曲方向へ外れた領域には、前記ドアアウタパネルと前記ドアインナパネルとを離間させて閉空間を形成し、
前記オーバーフェンダーの内側に、前記第2取付穴に車両外側から挿入されて取り付けられる位置決め部材を突設すると共に、前記第1取付穴に対応する被取付部材を設け、
車両内側から前記第1取付穴へ挿入される取付部材によって、前記被取付部材と前記ホイールアーチ周縁部の板状取付部とを結合する
ことを特徴とする車体構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−137343(P2006−137343A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329450(P2004−329450)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】