説明

車体構造

【課題】側面衝突時にシートに加わる衝撃荷重をフロアトンネルの捩れ変形を招くことなく車体フロアに速やかに伝達することのできる車体構造を提供する。
【解決手段】フロアトンネル12の左右両脇に幅方向に延出するフロアクロスメンバ40A,40Bを設ける。フロアトンネル12の頂部を跨いで左右のフロアクロスメンバ40A,40Bを相互に連結するアッパクロスメンバ41を設ける。コンソールボックス30の左右の側縁部をアッパクロスメンバ41に結合する。側面衝突時にシートからコンソールボックス30の側面に伝達される荷重を左右のフロアクロスメンバ40A,40Bに支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体側方から入力される衝撃荷重を、乗員の着座するシートを介してフロアに伝達する機能を備えた車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時に車体側方からシートに入力される衝撃荷重を車体フロアに速やかに伝達できる車体構造として、左右のシート間に配置されるフロアトンネルの上部に、側面衝突時にシートの側部と当接して荷重をフロアトンネルに伝達する荷重受け部材を固定設置したものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の車体構造においては、荷重受け部材はコンソールボックスによって構成され、コンソールボックスはフロアトンネルの上部に固定設置されている。したがって、側面衝突時にシートに加わった衝撃荷重はコンソールボックスを介してフロアトンネルに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−67427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の車体構造は、荷重受け部材がフロアトンネルの上部に固定設置されるため、シートからフロアトンネルに入力された荷重がフロアトンネルに大きなモーメントとして作用し、フロアトンネルに捩れ変形を生じることが懸念される。
【0005】
そこでこの発明は、側面衝突時にシートに加わる衝撃荷重をフロアトンネルの捩れ変形を招くことなく車体フロアに速やかに伝達することのできる車体構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、車室内の幅方向中央にフロアトンネル(例えば、後述の実施形態におけるフロアトンネル12)が膨出して設けられるとともに、該フロアトンネルを挟む左右両側に一対のシート(例えば、後述の実施形態におけるシート1)が設けられ、前記フロアトンネルの上部に、前記シートが車体側方から衝撃荷重を受けたときに前記シートと当接して荷重を車体フロア(例えば、後述の実施形態における車体フロア9)に伝達する荷重受け部材(例えば、後述の実施形態におけるコンソールボックス30)が固定設置された車体構造であって、前記フロアトンネルの左右両脇に幅方向に延出する左右のフロアクロスメンバ(例えば、後述の実施形態におけるフロアクロスメンバ40A,40B)を設け、前記荷重受け部材の左右の側縁部を前記左右のフロアクロスメンバにそれぞれ連結したことを特徴とする。
これにより、フロアトンネルを間に挟む左右のフロアクロスメンバは荷重受け部材によって連結される。側面衝突時に、シートから荷重受け部材に入力された荷重は左右のフロアクロスメンバによって支持されるようになる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車体構造において、前記フロアトンネルの頂部を跨いで前記左右のフロアクロスメンバを連結するアッパクロスメンバ(例えば、後述の実施形態におけるアッパクロスメンバ41)を設け、前記荷重受け部材の左右の側縁部を、前記アッパクロスメンバを介して前記左右のフロアクロスメンバに連結したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車体構造において、前記アッパクロスメンバの上面に前記荷重受け部材の左右の側縁部を締結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、側面衝突時にシートから荷重受け部材に入力される荷重を左右のフロアクロスメンバによって支持させ、荷重受け部材からフロアトンネルに直接入力される荷重を減少させることができるため、フロアトンネルの捩れ変形を抑制してシートに入力される荷重を速やかに車体フロアに伝達することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、荷重受け部材の左右の側縁部がアッパクロスメンバを介して左右のフロアクロスメンバに連結されるため、荷重受け部材の左右の側縁部の延出長さを短くすることができるとともに、アッパクロスメンバによって左右のフロアクロスメンバ間の結合部剛性をより高めることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、荷重受け部材の左右の側縁部がアッパクロスメンバの上面に締結されることから、上下方向から容易に締結作業を行なうことができ、組付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態の車両の断面図である。
【図2】この発明の一実施形態の車両の車体構造を示す分解斜視図である。
【図3】この発明の一実施形態の車両の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車両の前席側の左右のシート1,1を背面側から見た図である。なお、図面において、シート1は骨格部材のみが示されており、また、右側のシート1は一部のみが示されている。
シート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション2と、このシートクッション2の後端部に連結されて、乗員の腰部および胸部(背部)を支持するシートバック3と、このシートバック3の上部に支持されて、乗員の頭部および首部を支持するヘッドレスト4とを備えている。
【0014】
シートクッション2は、後端部に車幅方向に沿って延出する後部クロスメンバ6が取り付けられたクッションフレームを備え、そのクッションフレームがシートレール8,8を介して車体フロア9に前後方向にスライド可能に取り付けられている。なお、図中、10は、車体の下端側部に設けられたサイドシルであり、11は、車体側部のほぼ中央に立設されたセンターピラー、12は、車体フロア9上の車幅方向中央領域に上方に膨出して形成されたフロアトンネルである。フロアトンネル12上の前席側の左右の車両用シート1,1の間には、上面側に収納部30a(図2参照)を有するコンソールボックス30(荷重受け部材)が固定設置されている。
【0015】
シートバック3は、上部フレーム13aと左右の側部フレーム13c,13dと下部連結プレート13bとから成る略矩形枠形状のシートバックフレーム13を備え、そのシートバックフレーム13の下端がクッションフレームの後端部に傾動可能にヒンジ結合されている。シートバックフレーム13の上部フレーム13aの幅方向中央位置には、ヘッドレスト4の支持フレームが昇降可能に取り付けられている。
【0016】
シートバックフレーム13の背面側には正面視が略矩形状のプレート材14が取り付けられている。
プレート材14は、稜線部aが車幅方向に延出する複数の凹凸部15を備え、この凹凸部15によって形成される波形断面が車体上下方向に連続している。プレート材14は左右の側縁が両側の側部フレーム13c,13dに結合されている。プレート材14の上端部の高さは、シート1に着座した乗員のほぼ胸部高さになるように設定されている。
【0017】
図2は、左右のシート1,1間の車室フロア9側の構造を示す分解斜視図である。
図1,図2に示すように、フロアトンネル12の左右両脇部には、車幅方向に延出する断面略コ字状のフロアクロスメンバ40A,40Bが対をなして設けられている。このフロアクロスメンバ40A,40Bの対は、車体フロア9上のシート1,1の前端部と後端部に対応する位置に二組設けられている。また、フロアクロスメンバ40A,40Bは両端部がフロアトンネル9とサイドシル10に結合されている。
【0018】
対を成すフロアクロスメンバ40A,40Bの車体中央寄りの縁部同士は、フロアトンネル12の頂部を車幅方向に沿って跨ぐアッパクロスメンバ41によって結合されている。アッパクロスメンバ41は断面コ字状に形成され、長手方向の中央領域41aがフロアトンネル12の外形に沿うように上方に湾曲し、長手方向の両側の側縁部41bが略水平に延出している。中央領域41aと側縁部41bには接合フランジ42,43が延設されている。中央領域41aの接合フランジ42は、フロアトンネル12の頂部の上面に結合され、側縁部41bの接合フランジ43は、フロアクロスメンバ40A,40Bの上面に結合されている。また、各側縁部41bの上面には車幅方向に並んでボルト挿通孔44a,44bが設けられている。なお、図示は省略されているが、各側縁部41の背面側にはボルト挿通孔44a,44bに挿入されたボルト(図示せず)が螺合されるウェルドナットが設けられている。
【0019】
一方、コンソールボックス30は、両側の側壁45A,45Bと前部壁45Cおよび後部壁45Dと、内部を複数のフレーム材等によって補強された底部壁45Eとを備え、底部壁45Eの上方側が収納部30aとされている。両側の側壁45A,45Bの下縁には、フロアトンネル12の外側面に沿って延出する延長壁46が設けられ、その延長壁46の下端に略水平方向に屈曲した一対の締結片46a,46aが延設されている。各締結片46aにはボルト挿通孔47が設けられている。各締結片46aは、アッパクロスメンバ41の側縁部41bの上面に重合され、その状態において側縁部41bに上方からボルト締結されている。
ここで、コンソールボックス30の各締結片46aはアッパクロスメンバ41の側縁部41b上の中央寄りのボルト挿通孔44b部分にボルト締結されるが、側縁部41b上の外側寄りのボルト挿通孔44a部分には、シート1の車幅方向内側の脚部48がボルト締結されるようになっている。
【0020】
ところで、図1に示すように、側部フレーム13cのプレート材14の上端部に対応する位置には、シートバックフレーム13の側部から車幅方向外側に突出する荷重伝達ブロック21が取り付けられている。この荷重伝達ブロック21は、車体側方から衝撃荷重が入力されたときにその荷重を側部フレーム13cとプレート材14に伝達するものであり、車幅方向に延出する複数の筒状断面が並列に配列されたハニカム構造とされ、全体が樹脂によって上下方向に長い直方体状に形成されている。
【0021】
また、左右の側部フレーム13c,13dの下縁部の間は、シートクッション2とシートバック3を回動可能に連結するヒンジ軸を囲む図示しない下部クロスメンバによって連結されている。そして、下部クロスメンバの延長上に位置される側部フレーム13cの車幅方向外側の側面と、側部フレーム13dの車幅方向内側の側面には荷重伝達ブロック25,26がそれぞれ取り付けられている。この各荷重伝達ブロック25,26は、上部側の荷重伝達ブロック21と同様に、車幅方向に延出する複数の筒状断面が並列に配列されたハニカム構造とされている。また、側部フレーム13d側の荷重伝達部材26は、車幅方向中央のコンソールボックス30の側壁45A,45Bに対向している。
【0022】
以上の構成において、車両の側部から衝撃荷重が入力されてセンターピラー11等の車体側壁がシートバック3方向に変形すると、その側壁からの荷重は上下の荷重伝達ブロック21,25の少なくともいずれか一方を介して側部フレーム13cに伝達される。
下方の荷重伝達ブロック25に衝撃荷重が入力された場合には、シート全体の車幅方向内側方向への移動とともに、車幅方向内側下方の荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30に当接し、このとき、シートバックフレーム13の下方の下部クロスメンバから荷重伝達ブロック26を介してコンソールボックス30に荷重が伝達される。
【0023】
また、上方の荷重伝達ブロック21に衝撃荷重が入力された場合には、その荷重は荷重伝達ブロック21から側部フレーム13cに伝達され、側部フレーム13cの後面側に結合されたプレート材14と、シートバックフレーム13の上下の骨格部(上部フレーム13aおよび下部連結プレート13b)を介して幅方向内側の側部フレーム13dに伝達される。このとき、側部フレーム13cからプレート材14の上端部に衝撃荷重が入力されると、プレート材14の各凹凸部15の稜線部aによって区画された複数の領域にせん断方向の応力を生じさせる。これにより、入力された衝撃荷重はプレート材14のほぼ全域において受け止められる。
こうして、シートバックフレーム13の全体に分散するかたちで衝撃荷重が伝達されると、シート全体の車幅方向内側方向への移動とともに、荷重伝達ブロック26がコンソールボックス30に当接し、荷重伝達ブロック26からコンソールボックス30に荷重が伝達されるようになる。
【0024】
図3は、側面衝突時における衝撃荷重の伝達イメージを示す図である。なお、図3において、各シート1の荷重伝達ブロック21,25,26等は図示の都合上省略されている。
図3に示すように、シート1からコンソールボックス30の側面に衝撃荷重が伝達されると、その荷重はアッパクロスメンバ41を介して左右のフロアクロスメンバ40A,40Bに伝達され、コンソールボック30の倒れ方向に作用するモーメントが左右のフロアクロスメンバ40A,40Bによって支持される。したがって、シート1からコンソールボックス30に入力された衝撃荷重は左右のフロアクロスメンバ40A,40B部分によって受け止められる。
【0025】
以上のように、この車体構造においては、荷重受け部材であるコンソールボックス30がフロアトンネル12を跨いで左右のフロアクロスメンバ40A,40Bに結合されているため、側面衝突時にシート1からコンソールボックス30に伝達される衝撃荷重を左右のフロアクロスメンバ40A,40Bに分散支持させ、フロアトンネル12の膨出部分に直接入力される荷重を減少させることができる。したがって、フロアトンネル12の捩れ変形を招くことなく、シート1に入力される衝撃荷重を速やかに車体フロア9に伝達することができる。
【0026】
また、この車体構造においては、フロアトンネル12を跨いで左右のフロアクロスメンバ40A,40Bを結合する閉断面構造のアッパクロスメンバ41を設け、このアッパクロスメンバ41の側縁部41bにコンソールボックス30の両側の延長壁46をそれぞれボルト締結するようにしているため、延長壁46の長さを短くしてコンソールボックス30の支持剛性を高めることができるとともに、アッパクロスメンバ41によって左右のフロアクロスメンバ40A,40B間の結合部剛性をより高めることができる。
【0027】
さらに、この実施形態においては、アッパクロスメンバ41の側縁部41bの上面にコンソールボックス30の延長壁46をボルト締結する構造となっているため、車両の組付け工程においてコンソールボックス30を上方側から容易に締結固定することができる。したがって、構造を採用することにより、組付け作業性を向上させることができる。
【0028】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…シート
9…車体フロア
12…フロアトンネル
30…コンソールボックス(荷重受け部材)
40A,40B…フロアクロスメンバ
41…アッパクロスメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の幅方向中央にフロアトンネルが膨出して設けられるとともに、該フロアトンネルを挟む左右両側に一対のシートが設けられ、
前記フロアトンネルの上部に、前記シートが車体側方から衝撃荷重を受けたときに前記シートと当接して荷重を車体フロアに伝達する荷重受け部材が固定設置された車体構造であって、
前記フロアトンネルの左右両脇に幅方向に延出する左右のフロアクロスメンバを設け、
前記荷重受け部材の左右の側縁部を前記左右のフロアクロスメンバにそれぞれ連結したことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記フロアトンネルの頂部を跨いで前記左右のフロアクロスメンバを連結するアッパクロスメンバを設け、
前記荷重受け部材の左右の側縁部を、前記アッパクロスメンバを介して前記左右のフロアクロスメンバに連結したことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記アッパクロスメンバの上面に前記荷重受け部材の左右の側縁部を締結したことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−221955(P2010−221955A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74138(P2009−74138)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】