説明

車体骨格構造

【課題】ダッシュパネル側への荷重入力時におけるダッシュパネルの変形をより効果的に防止又は抑制することができる車体骨格構造を得る。
【解決手段】トーボード部18の車室外面18Aにはダッシュロアクロスメンバ66が結合されて車両幅方向に延在する第一閉断面部72が設けられ、ダッシュロアクロスメンバ66の車両上方側でトーボード部18の車室内面18Bにはダッシュクロスメンバ74が結合されて車両幅方向に延在する第二閉断面部78が設けられている。ダッシュクロスメンバ70の後縦壁部70Eは、第二閉断面部74の一部を構成しかつ略車両上下方向に立設されている。このため、フロントサスペンションメンバ54側から車両上下方向の荷重が入力された際に、前記荷重が安定的に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームとキャビンとを隔成するダッシュパネルを備えた車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体骨格構造においては、ダッシュパネルを補強するために、車両幅方向に延在するダッシュロアクロスメンバがダッシュパネルに配設された構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−144299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、ダッシュパネルにダッシュロアクロスメンバを介してフロントサスペンションメンバ側から荷重が入力された際にダッシュパネルが撓んで振動してしまうと、車両のNV(ノイズ・バイブレーション)性能が確保されない。このため、上記従来技術は、ダッシュパネル側への荷重入力時におけるダッシュパネルの変形を防止又は抑制するという観点からは改良の余地がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、ダッシュパネル側への荷重入力時におけるダッシュパネルの変形をより効果的に防止又は抑制することができる車体骨格構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車体骨格構造は、エンジンルームとキャビンとを隔成し、下部に車両後方下側へ傾斜するトーボード部を備えたダッシュパネルと、前記トーボード部の前記エンジンルーム側の面に結合されて車両幅方向を長手方向として配置され、前記トーボード部とで車両幅方向に延在する第一閉断面部を構成するダッシュロアクロスメンバと、前記ダッシュロアクロスメンバの車両上方側で前記トーボード部の前記キャビン側の面に結合されて車両幅方向を長手方向として配置され、前記トーボード部とで車両幅方向に延在する第二閉断面部を構成すると共に、前記第二閉断面部の一部を構成しかつ略車両上下方向に立設された縦壁部を備えたダッシュクロスメンバと、を有する。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車体骨格構造によれば、トーボード部のエンジンルーム側の面にはダッシュロアクロスメンバが結合されて車両幅方向に延在する第一閉断面部が設けられ、ダッシュロアクロスメンバの車両上方側でトーボード部のキャビン側の面にはダッシュクロスメンバが結合されて車両幅方向に延在する第二閉断面部が設けられているので、エンジンルーム側からダッシュロアクロスメンバを介してダッシュパネル側への荷重入力時には、第一閉断面部と第二閉断面部とを備えた二重の閉断面構造で荷重が支持される。このため、本発明の車体骨格構造は、例えば、補強用としてダッシュロアクロスメンバのみがトーボード部に結合された対比構造に比べて、ダッシュパネルが変形しにくい。
【0007】
ここで、ダッシュクロスメンバの縦壁部が第二閉断面部の一部を構成しかつ略車両上下方向に立設されているので、例えば、車両走行時にダッシュパネルに対しダッシュロアクロスメンバを介してフロントサスペンションメンバ側から車両上下方向の荷重が入力された際に、ダッシュクロスメンバの縦壁部によって前記荷重が安定的に支持される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車体骨格構造は、請求項1記載の構成において、車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されるロッカと、車体下部の略車両幅方向中央部に車両前後方向を長手方向として配置されるトンネル部と、前記トンネル部の上部に結合されたトンネルアッパーリインフォースと、を有し、前記ダッシュクロスメンバは、前記ロッカ及び前記トンネルアッパーリインフォースに結合されている。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車体骨格構造によれば、ダッシュクロスメンバは、ロッカ及びトンネルアッパーリインフォースに結合されているので、ダッシュロアクロスメンバ及びダッシュパネルを介してダッシュクロスメンバに入力された荷重は、ロッカ及びトンネルアッパーリインフォースによって安定的に支持される。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車体骨格構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ダッシュロアクロスメンバは、前記エンジンルーム内に配設されるパワーユニットが車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合に前記パワーユニットが接触する位置に配置されている。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車体骨格構造によれば、エンジンルーム内に配設されるパワーユニットが車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合に、ダッシュロアクロスメンバにパワーユニットが接触するので、パワーユニット側からの荷重は、第一閉断面部と第二閉断面部とを備えた二重の閉断面構造で安定的に支持される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体骨格構造によれば、ダッシュパネル側への荷重入力時におけるダッシュパネルの変形をより効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0013】
請求項2に記載の車体骨格構造によれば、ダッシュクロスメンバに入力された荷重を、ロッカ及びトンネルアッパーリインフォースによって安定的に支持することができるので、ダッシュパネル側への荷重入力時におけるダッシュパネルの変形をより一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0014】
請求項3に記載の車体骨格構造によれば、パワーユニットが車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合に、第一閉断面部と第二閉断面部とを備えた二重の閉断面構造でパワーユニット側からの荷重を安定的に支持することができ、ダッシュパネルの変形をより一層効果的に防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係る車体骨格構造について図1〜図5を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。
【0016】
図1には、本実施形態に係る車体骨格構造の全体構成をキャビン12側(車室内側)から見た場合の斜視図が示されている。また、図3には、車体骨格構造の要部構成を車両側面視で見た場合の縦断面図(図1の3−3線に沿った拡大断面図)が示され、図4には、車体骨格構造の全体構成を一部模式化した平面図が示されている。これらの図に示されるように、エンジンルーム10とキャビン12とは、ダッシュパネル14によって隔成されて(仕切られて)いる。
【0017】
図1に示されるように、ダッシュパネル14の上部は、略垂直板状に形成された垂直板部16となっており、ダッシュパネル14の下部は、この垂直板部16と一体的に設けられて傾斜板状に形成されたトーボード部18となっている。トーボード部18は、車両後方下側へ(車両後方に向けて車両斜め下方側に)傾斜している。ここで、本実施形態では、図3に示されるように、トーボード部18は、その傾斜方向の略中央部がやや落ち込むように下げられて設定されている。つまり、トーボード部18は、その傾斜方向の略中央部が従来構造よりも車両上下方向で低い位置に設定され、トーボード部18の車両上方側のスペースをその分だけ広くしている。トーボード部18の下端部は、フロアパネル22(車体フロア)の前端部にスポット溶接等で結合されて一体化されている。フロアパネル22は、キャビン12の底部を構成している。
【0018】
また、図1に示されるように、ダッシュパネル14の略車両幅方向中央部には、略車両前後方向に沿うダッシュトンネル部20が設けられている。ダッシュトンネル部20の後端部側には、フロアパネル22のトンネル状のフロアトンネル部22Aが連接しており、ダッシュトンネル部20の後端部は、スポット溶接等で結合されることでフロアトンネル部22Aの前端部に一体化されている。フロアトンネル部22Aは、車両前後方向に沿って延在して車体下部を補強しており、ダッシュトンネル部20と共にトンネル部24を構成している。すなわち、トンネル部24は、車体下部の略車両幅方向中央部に車両前後方向を長手方向として配置されている。
【0019】
また、トンネル部24の上部には、トンネルアッパーリインフォース26(広義には「補強部材」として把握される要素である。)が溶接等によって結合されている。このトンネルアッパーリインフォース26によって、トンネル部24の剛性が高められており、車両の正面衝突時にトンネル部24及びトンネルアッパーリインフォース26で大きな反力が得られるようになっている。
【0020】
キャビン12の車両幅方向外側の両サイド下部、すなわち、車体側部28の下端部には、ロッカ30(サイドシルともいい、広義には「車両前後方向骨格部材」として把握される要素である。)が車両前後方向を長手方向として配置されている。ロッカ30は、車両幅方向外側(車室外側)に配置されたロッカアウタパネル30Aと、車両幅方向内側(車室内側)に配置されたロッカインナパネル30Bと、を含んで構成されている。
【0021】
ロッカアウタパネル30Aは、車両幅方向内側が開放された断面略ハット状に形成され、ロッカインナパネル30Bは、車両幅方向外側が開放された断面略ハット状に形成されている。ロッカアウタパネル30Aとロッカインナパネル30Bとは、上下一対のフランジ部が接合されることによって閉断面部30Cを備えた閉断面構造を形成している。ロッカインナパネル30Bの車両幅方向内側の側面には、トーボード部18の車両幅方向外側の端末部及びフロアパネル22の車両幅方向外側の端末部が車両上方側に折り曲げられた状態でスポット溶接により結合されている。
【0022】
ロッカ30よりもやや車両幅方向内側には、アッパーリインフォース34が略車両前後方向を長手方向として配置されている。アッパーリインフォース34は、車両下方側が開放された断面略ハット状に形成されており、左右フランジ部がトーボード部18の下部の車室内面18B及びフロアパネル22の上面22Bに結合されている。また、アッパーリインフォース34の車両前方斜め上方側には、アッパーリインフォース34からやや離れた位置にガセット36が配置されている。ガセット36は、トーボード部18の上部の車室内面18Bに結合されている。
【0023】
図4に示されるように、ダッシュパネル14によって隔成されたエンジンルーム10側となる車体前部40の両サイドには、左右一対のフロントサイドメンバ42が略車両前後方向に延在してダッシュパネル14の車両前方側に位置している。左右一対のフロントサイドメンバ42の前端部同士は、車両幅方向を長手方向として配置されたフロントバンパリインフォース46によって相互に連結されている。なお、フロントバンパリインフォース46はフロントバンパ44の一部を構成する高強度の長尺状の部材である。
【0024】
フロントサイドメンバ42の後端部は、ダッシュパネル14のトーボード部18のエンジンルーム10側の面としての車室外面18A(図3参照、前面)の上部にスポット溶接等により結合されている。フロントサイドメンバ42の後端部には、図2に示されるアンダーリインフォース48の前端部がスポット溶接等で結合されている。アンダーリインフォース48は、トーボード部18及び図1に示されるフロアパネル22を挟んでガセット36及びアッパーリインフォース34と対向しており、トーボード部18及びフロアパネル22に沿って平面視で略車両前後方向に延在している。図2に示されるように、アンダーリインフォース48は、車両上方側が開放された断面略ハット状に形成され、左右フランジ部がトーボード部18及びフロアパネル22(図1参照)に結合されている。
【0025】
図4に示されるように、エンジンルーム10内には、フロントバンパリインフォース46の車両後方側でかつ左右一対のフロントサイドメンバ42の間にパワーユニット50が配設されている。パワーユニット50は、エンジン及びトランスミッションを備えており、弾性マウント部材52によって左右一対のフロントサイドメンバ42に支持されている。
【0026】
図3及び図4に示されるように、パワーユニット50の概ね車両後下方側には、フロントサスペンションメンバ54が配設されている。図2に示されるように、フロントサスペンションメンバ54の車両幅方向両端部は、それぞれ車両前方側斜め上方側に延設された前側取付脚部56と車両後方側へ延設された後側取付脚部58とに分岐されている。このフロントサスペンションメンバ54には、フロントサスペンションメンバ54の車両幅方向両端側に配設されるフロントサスペンションロアアーム60(図4参照)を取り付けるための部位として、前側取付脚部56に前側アーム取付部56Aが設けられると共に後側取付脚部58に後側アーム取付部58Aが設けられている。
【0027】
前側取付脚部56には、前側アーム取付部56Aの車両幅方向外側の近傍に前側マウント部56Bが設けられている。前側マウント部56Bは、略円筒形状に形成されると共にフロントサイドメンバ42(図4参照)に取り付けるための取付け用とされている。図4に示されるように、前側マウント部56Bは、左右一対のフロントサイドメンバ42へ締結手段62(ボルト及びナット)によって固定されている。
【0028】
また、図2に示されるように、後側取付脚部58には、後側アーム取付部58Aの車両幅方向内側の近傍に後側マウント部58Bが設けられている。後側マウント部58Bは、略円筒形状に形成されると共にダッシュロアクロスメンバ66に取り付けるための取付け用とされている。後側マウント部58Bの軸芯部には、ボルト64A挿通用のボルト挿通孔158Bが形成されている。図3に示されるように、フロントサスペンションメンバ54の左右一対の後側マウント部58Bは、ダッシュロアクロスメンバ66の左右一対のサスペンションメンバ取付部70Bへボルト64A及びナット64Bによって固定されている。
【0029】
図2に示されるように、ダッシュロアクロスメンバ66(広義には「車両幅方向骨格部材」として把握される要素である。)は、長尺状の部材であり、側面視で略L字状(より正確には二辺のなす屈曲角度が直角よりもやや大きい屈曲形状)に形成されている。ダッシュロアクロスメンバ66は、車両前方側に配置される狭幅板状の縦板部68を備えており、縦板部68の端縁にはトーボード部18への結合用となる前端フランジ部68Aが設けられている。また、縦板部68の下端部から屈曲された横板部70も狭幅板状とされ、横板部70の端縁にはトーボード部18への結合用となる後端フランジ部70Aが設けられている。この横板部70の両端側には、前述したフロントサスペンションメンバ54の後側マウント部58Bの取付け用となるサスペンションメンバ取付部70Bが設けられている。また、横板部70の長手方向中央部には、縦板部68の上端部側へ膨出した膨出部170が形成されている。膨出部170の形状は、ダッシュトンネル部20の上部に沿う形状となっている。
【0030】
このような形状を備えたダッシュロアクロスメンバ66は、左右一対のアンダーリインフォース48の間において車両幅方向を長手方向として配置されており、図3に示されるパワーユニット50が車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合(二点鎖線で示すパワーユニット50参照)にパワーユニット50が接触する位置(すなわち、パワーユニット50の車両後方側)に設定されている。また、ダッシュロアクロスメンバ66は、その前端フランジ部68A及び後端フランジ部70Aがトーボード部18の車室外面18Aにスポット溶接等によって結合されている。これによって、ダッシュロアクロスメンバ66とトーボード部18とで車両幅方向に延在する側断面視で略三角形状の第一閉断面部72が構成されており、サスペンションメンバ取付部70Bを備えた横板部70が略水平に配置(すなわち、横板部70の一般面が概ね略車両前後方向及び略車両幅方向を含む面を面方向として配置)されている。
【0031】
ダッシュロアクロスメンバ66の車両上方側で、トーボード部18のキャビン12側の面としての車室内面18B(後面)には、ダッシュクロスメンバ74(広義には「車両幅方向骨格部材」として把握される要素である。)が結合されている(二重ダッシュクロス構造)。ダッシュクロスメンバ74は、トーボード部18側が開放された側断面視で略ハット状に形成されており、前フランジ部74A及び後フランジ部74Bがトーボード部18の車室内面18Bにスポット溶接等によって結合されて車両幅方向を長手方向として配置されている。なお、トーボード部18が従来構造よりも車両上下方向で低い位置に設定されているため、トーボード部が下げられていない場合(従来構造)に比べてダッシュクロスメンバ74が車両下方側に配置(低配置)されることになり、ダッシュクロスメンバ74のキャビン12側への突出量は相殺されている。
【0032】
ダッシュクロスメンバ74は、前フランジ部74Aと後フランジ部74Bとの間にキャビン12側に膨出して略車両幅方向に延在する膨出部76を備えている。膨出部76は、トーボード部18に対向して配置される平板状の頂壁部74Cと、頂壁部74Cと前後フランジ部74A、74Bとを繋ぐ前後縦壁部74D、74E(前縦壁部を符号74D、縦壁部としての後縦壁部を符号74Eで示す。)とを含んで構成されている。これにより、ダッシュクロスメンバ74とダッシュパネル14のトーボード部18とで、車両幅方向に延在する第二閉断面部78を備えた閉断面構造が形成されている。
【0033】
第二閉断面部78の一部を構成する後縦壁部74Eは、サスペンションメンバ取付部70Bの直上を含む位置で略車両幅方向に延在すると共に略車両上下方向に立設されている。換言すれば、後縦壁部74Eの立設方向は、車両走行時におけるフロントサスペンションメンバ54からの入力方向(矢印F方向)と一致しており、本実施形態では、サスペンションメンバ取付部70Bを通って前記入力方向(矢印F方向)に沿う仮想直線L上に後縦壁部74Eが立設されている。
【0034】
また、図1に示されるように、ダッシュクロスメンバ74の車両幅方向中央部には、トンネルアッパーリインフォース26がスポット溶接によって結合されている。さらに、ダッシュクロスメンバ74の車両幅方向両側の端部側のフランジ部74F、74G、74Hは、ホイールハウス32の湾曲壁面、ロッカインナパネル30B(ロッカ30)の車両幅方向内側の側面及び上面にスポット溶接によって結合されている。さらにまた、ロッカ30よりやや車両幅方向内側では、ダッシュクロスメンバ74にアッパーリインフォース34の前端側及びガセット36の後端側が溶接等によって結合されている。
【0035】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図3に示されるように、トーボード部18の車室外面18Aにはダッシュロアクロスメンバ66が結合されて車両幅方向に延在する第一閉断面部72が設けられ、ダッシュロアクロスメンバ66の車両上方側でトーボード部18の車室内面18Bにはダッシュクロスメンバ74が結合されて車両幅方向に延在する第二閉断面部78が設けられているので、エンジンルーム10側からダッシュロアクロスメンバ66を介してダッシュパネル14側への荷重入力時には、第一閉断面部72と第二閉断面部78とを備えた二重の閉断面構造で荷重が支持される。このため、本実施形態に係る車体骨格構造は、例えば、本実施形態に係る車体骨格構造からダッシュクロスメンバ74を外したような対比構造に比べて、ダッシュパネル14が変形しにくい(ダッシュパネルの剛性向上)。
【0037】
ここで、ダッシュクロスメンバ74の後縦壁部74Eが第二閉断面部78の一部を構成しかつ略車両上下方向に立設されているので、例えば、車両走行時にダッシュパネル14に対しダッシュロアクロスメンバ66を介してフロントサスペンションメンバ54側から車両上下方向の荷重(矢印F参照)が入力された際に、ダッシュクロスメンバ74の後縦壁部74Eによって前記荷重が安定的に支持される。
【0038】
また、図1に示されるように、ダッシュクロスメンバ74は、ロッカ30及びトンネルアッパーリインフォース26に直接結合されているので、ダッシュロアクロスメンバ66及びダッシュパネル14を介してダッシュクロスメンバ74に入力された荷重が、ロッカ30及びトンネルアッパーリインフォース26によって安定的に支持される。
【0039】
これらにより、ダッシュパネル14側への荷重入力時におけるダッシュパネル14の変形(車両走行時における撓み変形を含む)をより効果的に防止又は抑制することができ、その結果として、NV性能が向上する。
【0040】
補足すると、図3に示されるダッシュロアクロスメンバ66にフロントサスペンションメンバ54が取り付けられる本実施形態のような構造では、車両走行時にフロントサスペンションメンバ54に車両上下方向の荷重が入力されると、ダッシュロアクロスメンバ66のサスペンションメンバ取付部70Bにも車両上下方向の荷重が入力される。このフロントサスペンションメンバ54側からの入力荷重は、ダッシュロアクロスメンバ66を介してダッシュパネル14に伝達されて、ダッシュパネル14を振動させようとする。ここで、フロントサスペンションメンバ54の取付位置を大きく変更することはエンジンルーム10のスペース及び他部品との関係から難しく、例えば、本実施形態に係る車体骨格構造からダッシュクロスメンバ74を外したような対比構造では、ダッシュパネル(14)が振動してNV性能が確保できない可能性がある。
【0041】
これに対して、本実施形態に係る車体骨格構造では、ダッシュパネル14を含む構造体の剛性が前記対比構造と比べて大幅に向上し、ダッシュクロスメンバ74の後縦壁部74Eによって荷重が安定的に支持されるので、ダッシュパネル14の振動を抑えることができ、NV性能を向上させることができる。
【0042】
また、エンジンルーム10内に配設されるパワーユニット50が車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合(二点鎖線で示すパワーユニット50参照)に、ダッシュロアクロスメンバ66にパワーユニット50が接触するので、パワーユニット50側からの荷重は、第一閉断面部72と第二閉断面部78とを備えた二重の閉断面構造で安定的に支持される。
【0043】
これらにより、例えば、衝突(所謂ポール前面衝突を含む)の際、ダッシュパネル14側への荷重入力時におけるダッシュパネル14の変形(トーボード部18の変位量)をより効果的に抑えることができる。
【0044】
補足すると、図5に示される電柱等のポール80に自己の車両が衝突するような所謂ポール前面衝突(ポール前突)時において、例えば、フロントバンパ44におけるフロントサイドメンバ取付部よりもやや車両幅方向内側の部位でポール80に衝突すると、ポール80による局所的な荷重に対し、衝突前半に衝突エネルギーを吸収する部材が一般的には少ないため、ダッシュパネル14側に比較的大きな荷重が作用することもあり得る。このため、例えば、本実施形態に係る車体骨格構造からダッシュクロスメンバ74を外したような対比構造では、このようなポール前面衝突時に、ダッシュパネル(14)側のボデー変形量(トーボード部変位量)が必ずしも十分には抑えられない可能性がある。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る車体骨格構造では、パワーユニット50側からの荷重が図3に示される第一閉断面部72と第二閉断面部78とを備えた二重の閉断面構造で安定的に支持されるので、ダッシュパネル14の変形(トーボード部18の変位)をより効果的に防止又は抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る車体骨格構造によれば、ダッシュパネル14側への荷重入力時におけるダッシュパネル14の変形をより効果的に防止又は抑制することができる。
【0047】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、図1に示されるように、ダッシュロアクロスメンバ66及びダッシュクロスメンバ74が車両幅方向中央部を横切って配設されており、このような構成が好ましいが、ダッシュロアクロスメンバやダッシュクロスメンバは、例えば、車体下部の略車両幅方向中央部で分断されてダッシュトンネル部(20)の車両幅方向の両側に配設されるような構成としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、図3に示されるように、第二閉断面部78の一部を構成する後縦壁部74Eは、ダッシュロアクロスメンバ66のサスペンションメンバ取付部70Bの直上を含む位置で略車両幅方向に延在しているが、縦壁部(後縦壁部74E)は、例えば、ダッシュロアクロスメンバ(66)の後端フランジ部(70A)の直上を含む位置や後端フランジ部(70A)の直上とサスペンションメンバ取付部(70B)の直上との中間位置を含む位置で略車両幅方向に延在するような他の車両前後方向位置に配設される縦壁部としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、ダッシュロアクロスメンバ66は、パワーユニット50が車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合にパワーユニット50が接触する位置に配置されており、このような構成が好ましいが、例えば、ダッシュロアクロスメンバは、エンジンルーム内に配設されるパワーユニットが車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合にパワーユニットが接触する位置の近傍に配置されたダッシュロアクロスメンバ等のような他の位置に配置されたダッシュロアクロスメンバとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体骨格構造の全体構成をキャビン側から見た状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車体骨格構造の一部を分解してキャビン側から見た状態で示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車体骨格構造の要部構成を車両側面視で示す縦断面図である(フロントサスペンションメンバのダッシュロアクロスメンバへの取付位置における縦断面図であり、図1の3−3線に沿った拡大断面図に相当する。)。
【図4】本発明の一実施形態に係る車体骨格構造の全体構成を一部模式化して示す平面図である。
【図5】ポール前面衝突後の状態を一部模式化して示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 エンジンルーム
12 キャビン
14 ダッシュパネル
18 トーボード部
18A 車室外面(エンジンルーム側の面)
18B 車室内面(キャビン側の面)
24 トンネル部
26 トンネルアッパーリインフォース
28 車体側部
30 ロッカ
50 パワーユニット
66 ダッシュロアクロスメンバ
72 第一閉断面部
74 ダッシュクロスメンバ
74E 後縦壁部(縦壁部)
78 第二閉断面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームとキャビンとを隔成し、下部に車両後方下側へ傾斜するトーボード部を備えたダッシュパネルと、
前記トーボード部の前記エンジンルーム側の面に結合されて車両幅方向を長手方向として配置され、前記トーボード部とで車両幅方向に延在する第一閉断面部を構成するダッシュロアクロスメンバと、
前記ダッシュロアクロスメンバの車両上方側で前記トーボード部の前記キャビン側の面に結合されて車両幅方向を長手方向として配置され、前記トーボード部とで車両幅方向に延在する第二閉断面部を構成すると共に、前記第二閉断面部の一部を構成しかつ略車両上下方向に立設された縦壁部を備えたダッシュクロスメンバと、
を有する車体骨格構造。
【請求項2】
車体側部の下端部に車両前後方向を長手方向として配置されるロッカと、
車体下部の略車両幅方向中央部に車両前後方向を長手方向として配置されるトンネル部と、
前記トンネル部の上部に結合されたトンネルアッパーリインフォースと、
を有し、前記ダッシュクロスメンバは、前記ロッカ及び前記トンネルアッパーリインフォースに結合されている請求項1記載の車体骨格構造。
【請求項3】
前記ダッシュロアクロスメンバは、前記エンジンルーム内に配設されるパワーユニットが車両前方側からの荷重によって車両後方側へ移動した場合に前記パワーユニットが接触する位置に配置されている請求項1又は請求項2に記載の車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−286181(P2009−286181A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138302(P2008−138302)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】