説明

車内電源ネットワークシステム及び電源制御装置

【課題】配線効率を可及的に高めつつ、給電線や信号線等の破断や短絡の対策をする。
【解決手段】所定の位置に配置された各種モジュールに沿ってループ状の給電線23を配線する。配線効率を高め得、且つ給電線23の異常状態に応じて動的に切断部位を制御できる。ノードとなる全ての電源制御装置21a〜21dが対等に動作して給電線23上の異常部位の検出等を同レベルで行うことで、各電源制御装置21a〜21d内の動作負荷を低減でき、分散処理により安全性に優れた車内電源ネットワークシステムを提供できる。異常状態にないときには、給電線23のいずれか一の部位のみを遮断することで、耐ノイズ性を上げるとともに、環流電流を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内電源ネットワークシステム及び電源制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)においては、ドライビング(走行)、ステアリング及びブレーキング等の車両における基本的な重要電装品がモジュール化されて、四輪近傍に配置される。
【0003】
図5は、四輪近傍に配置されたモジュールの一例を示す模式図である。図5の例においては、車輪1の回転駆動等を行うための走行モータ3と、この走行モータ3を駆動するインバータ5と、インバータ5への電流供給を行うDC/DCコンバータ7と、ブレーキECU9と、ステアリングECU11と、これらの各部品7,9,11等の電源制御を行うインテリジェントジャンクションボックス13とが、四輪の近傍にそれぞれ配置される。これらは、バッテリからの電源を供給するために給電線に接続されるとともに、電源制御を行うために制御信号等の通信を行う信号線に接続される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのモジュールは、上述のように四輪の近傍にそれぞれ別個のものとして設置されるため、これらの部位に対するエリア別給電が必要になる。
【0005】
しかしながら、自動車内の配線は、限られたスペース内で給電線や信号線等としてのワイヤハーネスを配策することになるため、スペース効率を極力高める必要がある。また、軽量化の要請からも、配線効率を可及的に高める必要がある。
【0006】
さらに、自動車は、走行中等において振動を回避することができず、また狭い部位に嵌め込んだり高温多湿部位等を通過することもあることから、通常の屋内配線より劣化、破断などに起因する断線または短絡の可能性が高い。この場合、給電線や信号線等の破断または短絡への対策が必要となる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、配線効率を可及的に高めつつ、給電線や信号線等の破断または短絡への対策を容易に行うことのできる車内電源ネットワークシステム及び電源制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、自動車内の複数のモジュールに電源供給を行う車内電源ネットワークシステムであって、前記各モジュールの電源制御を行う複数の電源制御装置と、前記複数の電源制御装置に対してループ状に接続された給電線と、前記電源制御装置同士で通信を行う信号線とを備え、前記各電源制御装置は、当該各電源制御装置に接続された給電線の状態を検出して、異常状態が検出された際に異常状態にある前記給電線の部位を遮断するとともに、その旨を他の前記電源制御装置に前記信号線を通じて通知するものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車内電源ネットワークシステムであって、前記各電源制御装置は、当該各電源制御装置が前記給電線に接続された位置の両側における当該給電線の状態を検出する一対の給電線状態検出手段と、当該各電源制御装置が接続された位置の両側で前記給電線を遮断する一対の給電線遮断スイッチと、前記給電線状態検出手段での検出結果に基づいて前記給電線の所定の異常状態の部位を検出し、前記異常状態が検出された前記給電線の部位を前記給電線遮断スイッチで遮断する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記給電線遮断スイッチで遮断する際に、遮断される前記給電線の部位を、他の前記電源制御装置の制御手段に前記信号線を通じて通知するものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車内電源ネットワークシステムであって、前記各電源制御装置の前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で異常状態が検出されない場合に、前記給電線の状態を他の電源制御装置の前記制御手段との間で前記信号線を通じて情報交換し、前記給電線の一の部位のみを、いずれかの電源制御装置の前記給電線遮断スイッチで遮断するものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の車内電源ネットワークシステムであって、前記各電源制御装置が、複数の前記モジュールに対する電源供給のオンオフをそれぞれ行う複数の給電スイッチをさらに備え、前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で前記給電線における過電流が検出された場合に、複数の前記給電スイッチのうちのいずれかを選択的に遮断するものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、自動車内の複数の位置にそれぞれ設置され、所定の電源に接続された給電線に接続されるとともに、他の電源制御装置との間で通信を行う信号線に接続され、所定のモジュールにそれぞれ電源供給を行う電源制御装置であって、前記給電線が複数の前記電源制御装置に対してループ状に形成され、当該電源制御装置に接続された前記給電線の状態を検出して、異常状態が検出された際に異常状態にある前記給電線の部位を遮断するとともに、その旨を他の電源制御装置に前記信号線を通じて通知するものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電源制御装置であって、当該電源制御装置が前記給電線に接続された位置の両側における当該給電線の状態を検出する一対の給電線状態検出手段と、当該電源制御装置が接続された位置の両側で前記給電線を遮断する一対の給電線遮断スイッチと、前記給電線状態検出手段での検出結果に基づいて前記給電線の所定の異常状態の部位を検出し、前記異常状態が検出された前記給電線の部位を前記給電線遮断スイッチで遮断する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記給電線遮断スイッチで遮断する際に、遮断される前記給電線の部位を、他の電源制御装置の制御手段に前記信号線を通じて通知するものである。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電源制御装置であって、前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で異常状態が検出されない場合に、前記給電線の状態を他の電源制御装置の前記制御手段との間で前記信号線を通じて情報交換し、前記給電線の一の部位のみを、いずれかの電源制御装置の前記給電線遮断スイッチで遮断するものである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の電源制御装置であって、複数の前記モジュールに対する電源供給のオンオフをそれぞれ行う複数の給電スイッチをさらに備え、前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で前記給電線における過電流が検出された場合に、複数の前記給電スイッチのうちのいずれかを選択的に遮断するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、請求項2、請求項5及び請求項6に記載の発明によると、所定の位置に配置された各種モジュールに沿ってループ状の給電線を配線するので、配線効率を可及的に高めることが可能であり、しかも、給電線の異常状態に応じて動的に切断部位を制御することができるので、安全性に富んだ車内電源ネットワークシステムを提供できる。しかも、ノードとなる全ての電源制御装置が対等に動作して給電線上の異常部位の検出等を同レベルで行うので、いずれかのノードがマスターになり、他のノードがスレーブになる場合に比べて、各電源制御装置内の動作負荷を低減でき、また分散した処理によって安全性に優れた車内電源ネットワークシステムを提供できる。
【0017】
請求項3及び請求項7に記載の発明によると、給電線が異常状態でない場合にも、ループ状の給電線のいずれかの部位を常時遮断するようにしているので、給電線をループ状のままに維持する場合に比べて、耐ノイズ性が向上するとともに、環流電流を防止することができる。
【0018】
請求項4及び請求項8に記載の発明によると、過電流の防止を効率よく行うことができる。
【0019】
尚、上記の「ループ状」という文言は、複数の電源制御装置を接続している形態でのトポロジーにおける意味を示しているが、給電線遮断スイッチが開(オフ)状態のときには、電気回路上の厳密な意味として完全な閉ループ状態ではなくなる。しかしながら、このような給電線遮断スイッチの開(オフ)状態のときにも、複数の電源制御装置を接続している形態においてはループ状が維持されていることから、この明細書及び特許請求の範囲においては、給電線遮断スイッチの開閉状態に拘わらず、給電線が「ループ状」に形成されているとして記載している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<構成>
図1は本発明の一の実施形態に係る車内電源ネットワークシステムを示すブロック図、図2はこの車内電源ネットワークシステムが搭載されたハイブリッド電気自動車を示す平面視模式図である。
【0021】
この車内電源ネットワークシステムは、図1及び図2の如く、ハイブリッド電気自動車の四輪の近傍にそれぞれ配置された各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に電源を供給するためのもので、四輪の近傍にそれぞれ配置されたノードとしての電源制御装置21a〜21dと、これらの電源制御装置21a〜21dの設置位置に沿って配線トポロジとして略リング状に形成された給電線23と、電源制御装置21a〜21dが信号通信を行うための信号線25とを備える。
【0022】
各電源制御装置21a〜21dは、給電線23に接続されて各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に対する電源供給をオンオフする給電スイッチ31a〜31dと、給電線23上で給電スイッチ31a〜31dの両側に設置された一対の電流センサ33a,33bと、給電線23上で各電流センサ33a,33bより給電スイッチ31a〜31dと逆側にそれぞれ配置された一対の給電線遮断スイッチ35a,35bと、給電スイッチ31a〜31d及び給電線遮断スイッチ35a,35bのオンオフ制御を行う電子制御ユニット37とを備える。
【0023】
各給電スイッチ31a〜31dは、例えばパワーMOSFET等のスイッチング素子等が用いられ、一端が給電線23に接続されるとともに、他端が各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に接続されて、電子制御ユニット37での制御に従ってオンオフする。
【0024】
各電流センサ33a,33bは例えばシャント抵抗が用いられ、給電線23に流れる電流をシャント抵抗の両端電圧に変換して電子制御ユニット37に出力する。また、各電流センサ33a,33bの一端は、電圧測定点として電子制御ユニット37に入力される。
【0025】
各給電線遮断スイッチ35a,35bは、例えばパワーMOSFET等のスイッチング素子等が用いられ、一端がそれぞれ隣接する電流センサ33a,33bに接続されるとともに、他端が給電線23を通じて他の電源制御装置21a〜21dの給電線遮断スイッチ35a,35b(図1では図示省略している)に接続される。
【0026】
電子制御ユニット(制御手段)37は、例えば、RAM、ROM及びCPUを備え、ROM内に予め格納されたソフトウェアプログラムによって動作するよう構成された機能要素であって、電流センサ33a,33bでの電流計測結果を認識する第1の機能と、各電流センサ33a,33bの一端の電圧を測定・認識する第2の機能と、その電圧測定結果及び電流計測結果を他の全ての電源制御装置21a〜21dとの間で定期的に情報交換する第3の機能と、その電圧測定結果及び電流計測結果に基づいて給電線23上の自身が隣接している部位について短絡または断線等の異常を検知する第4の機能と、この検知結果に基づいて異常のあった給電線23の隣接部位を遮断する旨を他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡して遮断する第5の機能と、電流計測結果が給電線23の許容電流値を超えているか否かを判断する第6の機能と、電流計測結果が給電線23の許容電流値を超えている場合に優先度の低い負荷に対応する各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)を判断して遮断する第7の機能と、異常部位がなく且つ電流計測結果が給電線23の許容電流値以下である場合に最適遮断部を判断する第8の機能と、この最適遮断部を遮断する旨を他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡して遮断する第9の機能とを備える。
【0027】
電子制御ユニット37の第1の機能は、当該電子制御ユニット37のアナログ入力端子にシャント抵抗である電流センサ33a,33bの各両端電圧が入力されたときに、その両端電圧を電流計測結果として認識するようになっている(図3中のステップS01参照)。
【0028】
電子制御ユニット37の第2の機能は、当該電子制御ユニット37の他のアナログ入力端子に各電流センサ33a,33bの一端の電圧が入力されたときに、その電圧を電圧測定結果として認識するようになっている(図3中のステップS01参照)。
【0029】
電子制御ユニット37の第3の機能は、第1の機能及び第2の機能で得られた電圧測定結果及び電流計測結果を、信号線25を通じて他の全ての電源制御装置21a〜21dに定期的に送信し、また、他の電源制御装置21a〜21dからの電圧測定結果及び電流計測結果が信号線25を通じて与えられると、これらの情報をRAM内に格納するようになっている(図3中のステップS02参照)。
【0030】
電子制御ユニット37の第4の機能は、電流計測結果が所定の短絡状態閾値に比べて過大である場合に、給電線23においてその電流計測結果が得られた部位が短絡していると判断し、電圧測定結果がメインバッテリ(駆動用バッテリ)41やサブバッテリ43の電源電圧とほぼ同等である場合等の異常状態が認識された場合は、給電線23のその部位において断線等の異常状態が発生していると判断し、電圧測定結果がグランド電位とほぼ同等である場合には、給電線23のその部位においてグランド電位への短絡が行われていると判断するようになっている(図3中のステップS03参照)。
【0031】
電子制御ユニット37の第5の機能は、第4の機能での検知結果に基づいて、短絡や断線といった異常のあった給電線23の隣接部位を遮断する旨を、信号線25を通じて他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡(図4中のステップS10参照)した後、その給電線23の部位に対して、給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにして、給電線23のループを遮断する(図4中のステップS11参照)ようになっている。
【0032】
電子制御ユニット37の第6の機能は、予めROM内に格納された給電線23の所定の許容電流値に対して電流計測結果を比較し、電流計測結果が給電線23の所定の許容電流値を超えているか否かを判断するようになっている(図3中のステップS04及び図4中のステップS12参照)。尚、一般的に、このときの比較判断基準として使用される許容電流値は、上記の短絡状態閾値よりも低い値に設定される。即ち、許容電流値は、給電線23が短絡状態ではないために電流計測結果が短絡状態閾値よりも低い状態ではあるが、給電線23の耐久性等を考慮した場合に電流量が過大であるか否かを判断するために使用されるものである。
【0033】
電子制御ユニット37の第7の機能は、電流計測結果が給電線23の許容電流値を超えている場合(即ち、過電流である場合)に、優先度の低い負荷に対応する各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に接続された給電スイッチ31a〜31dをオフにして、当該負荷に対する電力供給を遮断するようになっている(図3中のステップS05,S06及び図4中のステップS13,S14参照)。尚、かかる負荷の優先度は、予めROM等に記憶されている優先度データに基づいて判断される。
【0034】
電子制御ユニット37の第8の機能は、異常部位がなく且つ電流計測結果が給電線23の許容電流値以下である場合に、予め決定されている優先順位に従って、その優先順位の最も低い給電線23の部位を最適遮断部に選定するようになっている(図3中のステップS07参照)。
【0035】
電子制御ユニット37の第9の機能は、第8の機能で選定された最適遮断部に隣接した給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにする旨を他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡した後、当該給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにして給電線23の遮断を行うようになっている(図3中のステップS08,S09参照)。
【0036】
ここで、電流センサ33a,33bと、電圧を電子制御ユニット37に入力するための電流センサ33a,33bの一端における接続点は、給電線23上で当該電源制御装置21a〜21dが接続された位置の両側の異常状態を検出する給電線状態検出手段として機能する。
【0037】
尚、図1中の符号45はオルタネータを示している。ただし、オルタネータ45は図1に示したように必ずしも第1の電源制御装置21aに接続されている必要はなく、他の電源制御装置21b〜21dまたは給電線23の中間部分に接続されてもよい。
【0038】
また、図1においては、メインバッテリ41が第1の電源制御装置21aに接続されており、サブバッテリ43が第3の電源制御装置21cに接続されているが、これらのバッテリ41,43も、他の電源制御装置21a〜21dまたは給電線23の中間部分に接続されてもよい。
【0039】
<動作>
上記構成の車内電源ネットワークシステムの動作を図3のフローチャートに沿って説明する。
【0040】
まず、図3中のステップS01では、電子制御ユニット37の第1の機能において、当該電子制御ユニット37のアナログ入力端子にシャント抵抗である電流センサ33a,33bの各両端電圧が入力され、その両端電圧を電流計測結果として認識する。これとほぼ同時に、電子制御ユニット37の第2の機能において、当該電子制御ユニット37の他のアナログ入力端子に各電流センサ33a,33bの一端の電圧が入力され、その電圧を電圧測定結果として認識する。
【0041】
次のステップS02では、電子制御ユニット37の第3の機能により、ステップS01で得られた電圧測定結果及び電流計測結果を、信号線25を通じて他の全ての電源制御装置21a〜21dに定期的に送信する。また、他の電源制御装置21a〜21dからの電圧測定結果及び電流計測結果が信号線25を通じて与えられた場合は、これらの情報をRAM内に格納する。
【0042】
続くステップS03では、電子制御ユニット37の第4の機能により、給電線23の異常部位を検出する。具体的に、電子制御ユニット37は、電流計測結果が所定の短絡状態閾値に比べて過大である場合に、給電線23においてその電流計測結果が得られた部位が短絡していると判断する(例えば図2)。また、電子制御ユニット37は、電圧測定結果がメインバッテリ41やサブバッテリ43の電源電圧とほぼ同等である場合に、給電線23のその部位において断線等の異常状態が発生していると判断する。さらに電子制御ユニット37は、電圧測定結果がグランド電位とほぼ同等である場合に、給電線23のその部位においてグランド電位への短絡が行われていると判断する(例えば図2の符号47)。このステップS03において、異常な部位がないと判断された場合は、ステップS04に進む。
【0043】
ステップS04では、電子制御ユニット37の第6の機能により、予めROM内に格納された給電線23の所定の許容電流値に対して電流計測結果を比較し、電流計測結果が給電線23の所定の許容電流値を超えているか否かを判断する。そして、電流計測結果が給電線23の許容電流値を超えている場合には、ステップS05に進む。
【0044】
ステップS05では、電子制御ユニット37の第7の機能により、優先度の低い負荷に対応する各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に接続された給電スイッチ31a〜31dをオフにする旨を判断し、ステップS06において、当該負荷に対する電力供給を遮断する。しかる後、ステップS01からの処理を繰り返す。
【0045】
一方、ステップS04において、電流計測結果が給電線23の許容電流値以下であると判断した場合は、ステップS07に進み、予め決定されている優先順位に従って、その優先順位の最も低い給電線23の部位を最適遮断部に選定する。
【0046】
しかる後、ステップS08において、電子制御ユニット37の第9の機能により、第8の機能で選定された最適遮断部に対応する一の給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにする旨を他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡した後、ステップS09で、当該一の給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにして給電線23の遮断を行う。これにより、ループ状の給電線23のいずれか一の部位のみを常時遮断することができ、給電線23をループ状のままに維持する場合に比べて、耐ノイズ性が向上するとともに、環流電流を防止することができる。しかる後、ステップS01からの処理を繰り返す。
【0047】
ここで、ステップS03において、短絡または断線といった異常な部位が給電線23上に検出された場合は、ステップS10に進み、電子制御ユニット37の第5の機能により、短絡や断線といった異常のあった給電線23の隣接部位を遮断する旨を、信号線25を通じて他の全ての電源制御装置21a〜21dに連絡する。そして、ステップS11で、例えば図2中に破線で示した短絡47のように、異常のあった給電線23の部位に対して、その部位の両側に隣接する給電線遮断スイッチ35a,35bをオフにして、給電線23のループを遮断する。
【0048】
その後、ステップS12に進み、電子制御ユニット37の第6の機能により、予めROM内に格納された給電線23の所定の許容電流値に対して電流計測結果を比較し、電流計測結果が給電線23の所定の許容電流値を超えているか否かを判断する。そして、電流計測結果が給電線23の許容電流値を超えている場合には、ステップS13に進む。
【0049】
ステップS13では、電子制御ユニット37の第7の機能により、優先度の低い負荷に対応する各種モジュール(図5中の符号3,5,7,11,13)に接続された給電スイッチ31a〜31dをオフにする旨を判断し、ステップS14において、当該負荷に対する電力供給を遮断する。しかる後、ステップS01からの処理を繰り返す。
【0050】
一方、ステップS12において、電流計測結果が給電線23の許容電流値以下であると判断した場合は、そのままステップS01に戻って、それ以降の処理を繰り返す。
【0051】
以上のように、この車内電源ネットワークシステムでは、所定の位置に配置された各種モジュールに沿ってループ状の給電線23及び信号線25を配線するので、配線効率を可及的に高めることが可能であり、しかも、給電線23の破断または短絡といった異常状態等に応じて動的に切断部位を制御することができるので、安全性に富んだ車内電源ネットワークシステムを提供できる。
【0052】
しかも、全ノード(電源制御装置21a〜21d)が対等に動作して給電線23上の異常部位の検出等を同レベルで行うので、いずれかのノードがマスターになり、他のノードがスレーブになる場合に比べて、各電源制御装置21a〜21d内の動作負荷を低減でき、また分散した処理によって安全性に優れた車内電源ネットワークシステムを提供できる。
【0053】
また、給電線23が異常状態でない場合にも、ループ状の給電線23のいずれかの部位を常時遮断するようにしているので、給電線23をループ状のままに維持する場合に比べて、耐ノイズ性が向上するとともに、環流電流を防止することができる。
【0054】
尚、上記実施形態では、ハイブリッド電気自動車を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一の実施形態に係る車内電源ネットワークシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係る車内電源ネットワークシステムが搭載された自動車を示す平面視模式図である。
【図3】本発明の一の実施形態に係る車内電源ネットワークシステムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一の実施形態に係る車内電源ネットワークシステムの動作を示すフローチャートである。
【図5】ハイブリッド電気自動車の四輪近傍に配置されたモジュールの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
21a〜21d 電源制御装置
23 給電線
25 信号線
31a〜31d 給電スイッチ
33a,33b 電流センサ
35a,35b 各給電線遮断スイッチ
35a,35b 給電線遮断スイッチ
37 電子制御ユニット
41 メインバッテリ
43 サブバッテリ
45 オルタネータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内の複数のモジュールに電源供給を行う車内電源ネットワークシステムであって、
前記各モジュールの電源制御を行う複数の電源制御装置と、
前記複数の電源制御装置に対してループ状に接続された給電線と、
前記電源制御装置同士で通信を行う信号線と
を備え、
前記各電源制御装置は、当該各電源制御装置に接続された給電線の状態を検出して、異常状態が検出された際に異常状態にある前記給電線の部位を遮断するとともに、その旨を他の前記電源制御装置に前記信号線を通じて通知することを特徴とする車内電源ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車内電源ネットワークシステムであって、
前記各電源制御装置は、
当該各電源制御装置が前記給電線に接続された位置の両側における当該給電線の状態を検出する一対の給電線状態検出手段と、
当該各電源制御装置が接続された位置の両側で前記給電線を遮断する一対の給電線遮断スイッチと、
前記給電線状態検出手段での検出結果に基づいて前記給電線の所定の異常状態の部位を検出し、前記異常状態が検出された前記給電線の部位を前記給電線遮断スイッチで遮断する制御手段と
を備え、
前記制御手段が、前記給電線遮断スイッチで遮断する際に、遮断される前記給電線の部位を、他の前記電源制御装置の制御手段に前記信号線を通じて通知することを特徴とする車内電源ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の車内電源ネットワークシステムであって、
前記各電源制御装置の前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で異常状態が検出されない場合に、前記給電線の状態を他の電源制御装置の前記制御手段との間で前記信号線を通じて情報交換し、
前記給電線の一の部位のみを、いずれかの電源制御装置の前記給電線遮断スイッチで遮断することを特徴とする車内電源ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の車内電源ネットワークシステムであって、
前記各電源制御装置が、複数の前記モジュールに対する電源供給のオンオフをそれぞれ行う複数の給電スイッチをさらに備え、
前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で前記給電線における過電流が検出された場合に、複数の前記給電スイッチのうちのいずれかを選択的に遮断することを特徴とする車内電源ネットワークシステム。
【請求項5】
自動車内の複数の位置にそれぞれ設置され、所定の電源に接続された給電線に接続されるとともに、他の電源制御装置との間で通信を行う信号線に接続され、所定のモジュールにそれぞれ電源供給を行う電源制御装置であって、
前記給電線が複数の前記電源制御装置に対してループ状に形成され、
当該電源制御装置に接続された前記給電線の状態を検出して、異常状態が検出された際に異常状態にある前記給電線の部位を遮断するとともに、その旨を他の電源制御装置に前記信号線を通じて通知することを特徴とする電源制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源制御装置であって、
当該電源制御装置が前記給電線に接続された位置の両側における当該給電線の状態を検出する一対の給電線状態検出手段と、
当該電源制御装置が接続された位置の両側で前記給電線を遮断する一対の給電線遮断スイッチと、
前記給電線状態検出手段での検出結果に基づいて前記給電線の所定の異常状態の部位を検出し、前記異常状態が検出された前記給電線の部位を前記給電線遮断スイッチで遮断する制御手段と
を備え、
前記制御手段が、前記給電線遮断スイッチで遮断する際に、遮断される前記給電線の部位を、他の電源制御装置の制御手段に前記信号線を通じて通知することを特徴とする電源制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源制御装置であって、
前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で異常状態が検出されない場合に、前記給電線の状態を他の電源制御装置の前記制御手段との間で前記信号線を通じて情報交換し、
前記給電線の一の部位のみを、いずれかの電源制御装置の前記給電線遮断スイッチで遮断することを特徴とする電源制御装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の電源制御装置であって、
複数の前記モジュールに対する電源供給のオンオフをそれぞれ行う複数の給電スイッチをさらに備え、
前記制御手段が、前記給電線状態検出手段で前記給電線における過電流が検出された場合に、複数の前記給電スイッチのうちのいずれかを選択的に遮断することを特徴とする電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−34068(P2006−34068A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213022(P2004−213022)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】