説明

車室内空気制御装置

【課題】空調風の吹出開口として、帯電物質の発生器が配設されたダクトに対応した吹出開口が選択された場合にも、帯電物質を車室内に確実に供給し得る車室内空気制御装置を提供する。
【解決手段】熱交換器、及び、該熱交換器を通過した空調風を車室に導く複数のダクトであって、それぞれ車室にて開口し空調風を吹き出す吹出開口を備えたダクトを有する空調手段と、空気環境の浄化特性を備えた帯電物質をダクトのいずれかに供給可能に配設される浄化手段と、を備えた車室内空気制御装置において、該空調手段が、空調風の吹出開口として複数の吹出開口のうちのいずれかが選択されるように、各ダクトへの空調風の供給を調整する空調風調整手段を有する。浄化手段が配設されたダクトに形成された吹出開口以外の吹出開口が空調風の吹出開口として選択された場合にも、浄化手段が配設されたダクトを通じて帯電物質を車室内に供給するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内空気制御装置に、より詳しくは、車両の車室内の空気を浄化する空気浄化デバイスを備えた車室内空気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においては、車室内の空気を浄化する空気浄化デバイスが設置されることが一般的に行われるが、近年では、空気浄化デバイスとして、空気中に浮遊した臭い成分や車室内の壁面等に付着した臭い成分を除去する浄化特性を備えたナノメータサイズの帯電微粒子水(所謂ナノイオン)を発生させるデバイスを採用することが知られている。例えば下記特許文献1及び2には、ナノイオンを発生させる空気浄化デバイスが、空調ユニット内に設置される例、あるいは、車室内のインストルメントパネル上部又はピラーに設置されたりする例が開示されている。
【0003】
また、別に、例えば下記特許文献3に開示されるように、除菌,消臭,リフレッシュ効果をもたらすとされる、プラスとマイナスの電荷を有するイオン粒子を発生させるプラズマクラスタシステムを採用した車室内空気清浄装置が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−151046号公報
【特許文献2】特開2006−111227号公報
【特許文献3】特開2005−075233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空調ユニットにおいては、通常、各末端側で吹出開口を備えた複数の送風ダクトが設けられ、実際に空調風を吹き出す吹出開口として、それら吹出開口のいずれかがユーザ操作に応じて若しくは環境に応じて選択されるようになっている。また、一方、帯電物質の発生器は、送風ダクトに供給される空調風の流れを利用して車室内に帯電物質を効率良く撒布するために、複数の送風ダクトのうちのいずれかの途中部に配設されることが考えられる。
【0006】
しかしながら、かかる構成では、空調風の吹出開口として、帯電物質の発生器が配設される送風ダクトとは異なるダクトに対応した吹出開口が選択された場合に、帯電物質を撒布する上で空調風を利用することができず、帯電物質を車室内に確実に供給することができない、という問題がある。
【0007】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、ユーザ操作又は環境に応じて選択された吹出開口が、帯電物質の発生器が配設された送風ダクトと直接に連通する吹出開口と相違するときでも、帯電物質を車室内に確実に供給し得る車室内空気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、熱交換器、及び、該熱交換器を通過した空調風を車室に導く複数の送風ダクトであって、それぞれ車室にて開口し該空調風を吹き出す吹出開口を備えた送風ダクトを有する空調手段と、空気環境の浄化特性を備えた帯電物質を該送風ダクトのいずれかに供給可能に配設される浄化手段と、を備えた車室内空気制御装置において、上記空調手段は、空調風の吹出開口として、上記複数の吹出開口のうちのいずれかが選択されるように、上記各送風ダクトへの空調風の供給を調整する空調風調整手段を有しており、該空調風調整手段により、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに形成された吹出開口以外の吹出開口が選択された場合にも、該浄化手段が配設された送風ダクトを通じて、帯電物質が車室内に供給されるように構成されている、ことを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記空調風調整手段は、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対して、所定量以上の空調風を常時供給可能に構成されている、ことを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、上記空調風調整手段は、上記浄化手段が配設された送風ダクトに空調風を供給する状態と空調風の供給を停止する状態とを交互に切り換えるように構成されている、ことを特徴としたものである。
【0011】
また、更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3に係る発明のいずれかにおいて、上記熱交換器が空気を加熱する機能を備えるとともに、上記吹出開口として、車室内の前席乗員の上体側に空調風を吹付け可能な吹出開口であって、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対応した第1の吹出開口と、乗員の上体側以外に空調風を吹付け可能な第2の吹出開口とが設けられており、上記空調風調整手段により、上記熱交換器を通過させられた空調風の吹出開口として、上記第2の吹出開口が選択された場合に、上記浄化手段が配設された送風ダクトに空調風を供給する状態と空調風の供給を停止する状態とを交互に切り換えるように構成されている、ことを特徴としたものである。
【0012】
また、更に、本願の請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、上記空調風調整手段は、外気温又は内気温が所定値以下であるときに、空調風の吹出開口として、上記第2の吹出開口を自動的に選択する、ことを特徴としたものである。
【0013】
また、更に、本願の請求項6に係る発明は、請求項1〜5に係る発明のいずれかにおいて、上記浄化手段は、該浄化手段が配設された送風ダクトに帯電物質を送り出すための送風手段を有しており、上記空調風調整手段により、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対応した吹出開口が選択された場合には、上記送風手段が作動させられる、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本願の請求項1に係る発明によれば、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに形成された吹出開口以外の吹出開口が選択された場合にも、帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対して、所定量以上の空調風が常時供給されるため、帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【0016】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、上記浄化手段が配設された送風ダクトに空調風を供給する状態と空調風の供給を停止する状態とが交互に切り換えられるため、帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【0017】
また、更に、本願の請求項4に係る発明によれば、例えば冬季など、上記熱交換器を通過させられた空調風が常時直接的に乗員の上体側に供給されることで乗員の眠気等を催すおそれがあるのを防止しつつ、第1の吹出開口から空調風を減少させつつ、帯電物質を車室内に供給することができる。また、帯電物質が乗員の上体側に供給されるため、乗員に対する空気浄化の効果を高めることができる。
【0018】
また、更に、本願の請求項5に係る発明によれば、外気温又は内気温が所定値以下であるときに、空調風の吹出開口として上記第2の吹出開口が自動的に選択される場合にも、帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【0019】
また、更に、本願の請求項6に係る発明によれば、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対応した吹出開口以外の吹出開口が選択された場合に、上記送風手段が作動させられるため、送風手段の風量により帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1及び2は、それぞれ、本発明の実施形態に係る車両用空気制御装置の基本構成を概略的に示す平面図及び図1中のX−X線に沿った縦断面説明図である。車両用空気制御装置は、インストルメントパネル20内に組み込まれ、車室内の空気の換気や温度,湿度及び風量の制御を行うように構成される空調ユニット1を有している。この空調ユニット1は、基本的に、各種構成を収容する本体部2と、本体部2から延び空気流路を規定する各種送風ダクトD1〜D5と、本体部2内に取り込まれる空気を車室内と車室外との間で切り換える外内気切換ユニット15とを有している。外内気切換ユニット15は、空気の導入口を外気導入口16と内気導入口17との間で切り換える機構を備え、本体部2とは直通通路18を介して空気の流通が可能であるように接続されている。
【0021】
本体部2においては、外内気切換ユニット15を通じて車内外の空気を吸い込むとともに各種送風ダクトD1〜D5を通じて車室内に供給するブロワファン3が設けられている。また、ブロワファン3よりも下流側には、順に、本体部2に取り込まれた空気を冷却及び除湿する熱交換器であるエバポレータ4と、その空気を加熱する熱交換器であるヒータコア5とが設けられている。更に、エバポレータ4及びヒータコア5の近傍には、車室内に供給される空調風の温度を調節するために、エバポレータ4を通過して冷却された空気及びヒータコア5を通過して加熱された空気を所定の割合で混合するように、本体部2内の空気流路を変更するエアミックスドア6が設けられている。
【0022】
また、エアミックスドア6の下流側には、運転席や助手席に着座する乗員の足元に空調風を吹き出すための足元吹出用ダクトD1が本体部2から下方へ延びるように設けられている。更に、その足元吹出用ダクトD1の延出部分の下流側には、足元吹出用ダクトD1及び他の送風ダクトD2〜D5への空気の流量を調整するように本体部2内の空気流路を変更する足元吹出切換ドア7が設けられている。
【0023】
また、更に、足元吹出切換ドア7の下流側には、乗員の上体側若しくは車室後方に向けて空調風を吹き出す吹出開口としてのベンチレータ用のダクトD2〜D4への空調風の流量を調整するとともに、フロントウィンドウW1(図1参照)及びサイドウィンドウW2(図2参照)の曇りや露を除去すべく、それらウィンドウW1,W2に対して少なくともエバポレータ4を通過させられることで乾燥した空調風を吹き出す吹出開口としてのデフ吹出開口P1及びデフ吹出開口P2用のダクトD5への空調風の流量を調整するように、本体部2内の空気流路を変更するベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が設けられている。
【0024】
続いて、本体部2から延び空気流路を規定する各送風ダクトD1〜D5についてより詳しく説明すると、まず、送風ダクトD1は、運転席や助手席に着座する乗員の足元に空調風を吹き出すように本体部2から下方へ延びる足元吹出用ダクトであり、その末端側では、乗員の足元近傍にて開口するフット吹出開口S1を備えている。また、送風ダクトD2は、車室内の前側シートに着座する乗員の上体側に向けて空調風を吹き出すように本体部2から延びるベンチレータ用ダクトであり、その末端側で、インストルメントパネル20の前側上部にて開口するベンチレータS2を備えている。なお、このベンチレータS2は、空調風の吹出し方向を調整可能であるとともに車室への空調風の供給停止状態となるようにベンチレータS2を遮断するルーバRを備えている。ルーバRは、自動で若しくは手動で制御されるもので、例えば冬季など暖気が直接に乗員の上体側に供給されることで乗員の眠気等を催すのを防止する場合に、ベンチレータS2を遮断するように制御される。
【0025】
更に、送風ダクトD3は、車室の後方に向けて空調風を吹き出すように本体部2から延びるベンチレータ用ダクトであり、その末端側で、インストルメントパネル20の上部にて開口するベンチレータS3を備えている。また、更に、送風ダクト4は、車室内の前側シートに着座する乗員の上体側に向けて車幅方向外側から空調風を吹き出すように本体部2から延びるベンチレータ用ダクトであり、その末端側で、インストルメントパネル20の車幅方向側部にて開口するベンチレータS4を備えている。なお、このベンチレータS4は、ベンチレータS2と同様に、空調風の吹出し方向を調整可能であるとともに車室への空調風の供給停止状態となるようにベンチレータS4を遮断するルーバRを備えている。
【0026】
そして、送風ダクト5は、サイドウィンドウW2に少なくともエバポレータ4を通過せられて乾燥した空調風を導くように本体部2から延びるダクトであり、略車幅方向に沿って延びる途中部で、フロントウィンドウW1に空調風を吹き付けるデフ吹出開口P1を備えるとともに、その末端側で、インストルメントパネル20の車幅方向側部にて開口し、サイドウィンドウW2のドアミラーM近傍部位に空調風を吹き付けるデフ吹出開口P2を備えている。
【0027】
以上の構成を備えた空調ユニット1の制御方式としては、基本的に、外気温度に応じて車室内温度を自動的に設定し得るオート設定方式と、乗員が車室内温度を任意に設定し得るマニュアル設定方式とが設定されている。オート設定方式の採用時には、日射量,車室内の空気温度(内気温),外気温等の各種の環境情報に基づき、吹き出す空調風の温度,風量,吹出開口が選択される。他方、マニュアル設定方式の採用時には、ユーザ操作に基づき、実際に空調風を吹き出す吹出開口として、吹き出す空調風の温度,風量,吹出開口が選択される。なお、乗員は、インストルメントパネル20に組み込まれる操作部13(図1参照)を介して空調ユニット1を操作することができる。
【0028】
加えて、本実施形態では、図1に示すように、ベンチレータS2用の送風ダクトD2の途中部に、空気中に浮遊した臭い成分や車室内の壁面等に付着した臭い成分を除去する浄化特性を備えた帯電微粒子水(ナノイオン)を発生する浄化デバイス10が設けられている。この浄化デバイス10は、空気を結露点以下にまで冷却することで結露水を生成しつつ、その結露水を用いてナノイオンを発生させるナノイオン発生ユニット10aと、発生したナノイオンをデフ吹出開口P2用のダクトD5に送り出す小型のファン10bとを有している。乗員は、かかる浄化デバイス10を、前述した空調ユニット1とは別に、インストルメントパネル20に組み込まれた操作部13(図1参照)に含まれるオンオフ切換スイッチ等の手段を介して操作することができる。
【0029】
このように、本実施形態では、浄化デバイス10が、ベンチレータS2用の送風ダクトD2の途中部に設けられるため、乗員から比較的近いベンチレータS2から乗員の上体側に向けてナノイオンを供給することができるが、その一方で、ユーザ操作又は各種環境に応じ、ブロワファン3からの空調風の吹出開口として、フット吹出開口S1又はデフ吹出開口P1,P2が選択された場合には、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8は、図2の実線で示すようなベンチレータ用ダクトD2〜D4に対する全閉姿勢に保持されることとなり、このとき、ベンチレータS2用の送風ダクトD2に空調風が供給されなければ、浄化デバイス10のナノイオンを車室内に効率良く供給することができなくなるおそれがある。これに対処すべく、本実施形態では、ブロワファン3からの空調風の吹出開口として、フット吹出開口S1又はデフ吹出開口P1,P2が設定された場合にも、車室内へナノイオンが確実に供給され得る工夫がなされている。
【0030】
具体的に、本実施形態では、図2に示すように、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8に、複数の孔部8aが形成されている。それにより、ブロワファン3からの空調風の吹出開口として、フット吹出開口S1又はデフ吹出開口P1,P2が設定され、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8がベンチレータ用ダクトD2〜D4に対する全閉姿勢にある状態(図2中の実線で示す状態)でも、ブロワファン3の空調風がベンチレータ用ダクトD2〜D4に若干量供給されることとなる。このとき、浄化デバイス10を作動させれば、供給された若干量の空調風を利用して、車室内にナノイオンを確実に供給することができる。
【0031】
図3は、空調ユニット1及び浄化デバイス10を制御する上で関連する電気的な構成を示すブロック図である。空調ユニット1を構成するブロワファン3,エバポレータ4,ヒータコア5,各種切換ドア6,7,8とともに、浄化デバイス10,外気温又は内気温を検出する温度センサ11,各種操作部13は、ECU30に電気的に接続されている。ECU30は、温度センサ11若しくは各種操作部13からの信号入力に応じて、空調ユニット1及び浄化デバイス10に制御信号を出力し、それらを制御する。
【0032】
また、図4は、空調ユニット1に組み込まれた浄化デバイス10の制御処理に関するフローチャートである。この処理では、まず、各種センサからの信号が読み込まれ(#11)、その後、空調ユニット1が、インストルメントパネル20に組み込まれた操作部13を介して、ブロワファン3がオンにされるように乗員により操作されたか否かが判断される(#12)。その結果、空調ユニット1が操作されていないと判断された場合には、ステップ#14へ直接に進み、他方、空調ユニット1が操作されたと判断された場合には、続いて、空調制御が行われた上で(#13)、ステップ#14へ進む。
【0033】
なお、ステップ#13における空調制御においては、モード制御や温度制御が自動的に行われる。モード制御とは、外気温又は内気温の高低に応じて、エアミックスドア6,足元吹出切換ドア7,ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8の姿勢を調整し、車室内への各種送風供給口を採用するモードを変更する制御であり、例えば、外気温又は内気温が高い場合に、ベンチレータS2〜S4のみ若しくはフット吹出開口S1及びベンチレータS2〜S4から車室内への送風を行うモード(以下、ベントモードという)が設定されるように、他方、外気温又は内気温が低い場合には、デフ吹出開口P1,P2及びフット吹出開口S1から車室内への送風を行うモード(以下、デフモードという)が設定されるように、制御が行われる。また、一方、温度制御では、外気温,内気温,乗員設定温度,日射等の条件から決まる目標室内温度を達成するために、エアミックスドア6の姿勢が調整される。
【0034】
ステップ#14では、空調ユニット1に組み込まれた浄化デバイス10が、インストルメントパネル20に組み込まれた操作部13を介して乗員によりオン操作されたか否かが判断される。その結果、浄化デバイス10がオン操作されていないと判断された場合には、即時に処理がリターンされ、浄化デバイス10がオン操作されたと判断された場合には、続いて、前述したベントモードが設定されているか否かが判断される(#15)。
【0035】
ステップ#15の結果、ベントモードが設定されていると判断された場合、すなわち、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が、図2中の破線で示すような姿勢に保持されていると判断された場合には、続いて、ファン10bが低速回転させられるように、つまりファン10bの風量が小となるように浄化デバイス10が弱作動させられる(#16)。この場合には、ファン10bの風量が小さくとも、ナノイオンは、ブロワファン3の空調風により押し出され、車室内に効率良く供給され得る。ステップ#16の後には、処理がリターンされる。
【0036】
他方、ステップ#15の結果、ベントモードが設定されていない、すなわちデフモードが設定されていると判断された場合、すなわち、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が、図2中の実線で示すような姿勢に保持されていると判断された場合には、ファン10bが高速回転させられるように、つまりファン10bの風量が大となるように浄化デバイス10が強作動させられる(#17)。すなわち、デフモード設定時には、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8に形成された孔部8aを通じてベンチレータ用ダクトD2〜D4に供給されるブロワファン3からの空調風は若干量であるため、車室内へのナノイオン供給の効率化を図り、浄化デバイス10のファン10bは高速回転させられる。ステップ#17の後には、処理がリターンされる。
【0037】
なお、前述したように、モード制御においては、外気温又は内気温に基づき、ベントモードにあるかデフモードにあるかが判断されるため、ステップ#15においては、温度センサ11により検出される外気温又は内気温が低いか否か(所定値以下であるか否か)が直接に判断されてもよい。この場合には、外気温又は内気温が低いと判断されると、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が、図2中の実線で示すような姿勢に保持されているとして、浄化デバイス10が強作動させられ、他方、外気温又は内気温が高いと判断されると、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が、図2中の破線で示すような姿勢に保持されているとして、浄化デバイス10が弱作動させられることとなる。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、ブロワファン3からの空調風の吹出開口として、フット吹出開口S1又はデフ吹出開口P1,P2が設定され、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8が、ベンチレータ用ダクトD2〜D4に対する全閉姿勢にある状態でも、常時、ブロワファン3からの空調風がベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8の孔部8aを通じてベンチレータ用ダクトD2〜D4に若干量供給されるため、浄化デバイス10を作動させれば、供給された若干量の空調風を利用して、ナノイオンを車室内に確実に供給することができる。その結果、空気中に浮遊した臭い成分や車室内の壁面等に付着した臭い成分を効果的に除去することができる。また、乗員に比較的近いベンチレータS2からナノイオンが供給されるため、乗員周囲の空気環境の浄化を効率良く実現することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、デフモード設定時にもベンチレータ用ダクトD2〜D4にブロワファン3の空調風を若干量供給するために、ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8に、複数の孔部8aが形成されたが、これに限定されることなく、例えば、孔部8aをもたないベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア8を、デフモード設定時かつ浄化デバイス10のオン時に、ベンチレータ用ダクトD2〜D4に対して全閉にせず、若干量開いた姿勢に保持するようにしても、若しくは、全閉姿勢(つまり空調風の供給を停止する姿勢)と若干量開いた姿勢(つまり空調風を若干量供給する姿勢)を交互に切り換えるようにしても、帯電物質を車室内に確実に供給することができる。また、これにより、特に冬季などには、上記熱交換器を通過させられた温かい空調風が直接に乗員の上体側に供給されることで乗員の眠気等を催すのを防止するために、第1の吹出開口から空調風を減少させつつ、帯電物質を車室内に供給することができる。
【0040】
更に、空調風の吹出開口として、浄化デバイス10が配設されたベンチレータ用ダクトD2に対応したベンチレータS2以外の吹出開口が選択された場合、すなわち、ベンチレータ用ダクトD2には空調風が若干量のみ供給される場合には、ファン10bが強作動させられるため、風量を落とさずに帯電物質を車室内に確実に供給することができる。
【0041】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、図4中の空調制御(#13)では、モード制御が自動化に限定されず、手動で行われてもよい。更に、図4中のステップ#16及び#17における浄化デバイス10の作動時には、その作動が、開始後から所定時間だけ継続するように制御されてもよい。また、帯電物質の発生器としては、ナノイオンを発生する浄化デバイス10に限定されることなく、プラスとマイナスの電荷を有するイオン粒子を発生させるプラズマクラスタシステムが採用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用空気制御装置の基本構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1中のX−X線に沿った縦断面説明図である。
【図3】上記車両用空気制御装置を構成する空調ユニット及び浄化デバイスを制御する上で関連する電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】上記浄化デバイスの制御処理に関するフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1…空調ユニット,2…本体部,3…ブロワファン,4…エバポレータ,5…ヒータコア,6…エアミックスドア,7…足元吹出切換ドア,8…ベンチレータ/デフ吹出開口切換ドア,10…浄化デバイス,10a…ナノイオン発生ユニット,10b…ファン,11…温度センサ,13…操作部,20…インストルメントパネル,30…ECU,D1〜D5…送風ダクト,M…ドアミラー,S1…フット吹出開口,S2〜S4…ベンチレータ,P1,P2…デフ吹出開口,R…ルーバ,W2…サイドウィンドウ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器、及び、該熱交換器を通過した空調風を車室に導く複数の送風ダクトであって、それぞれ車室にて開口し該空調風を吹き出す吹出開口を備えた送風ダクトを有する空調手段と、空気環境の浄化特性を備えた帯電物質を該送風ダクトのいずれかに供給可能に配設される浄化手段と、を備えた車室内空気制御装置において、
上記空調手段は、空調風の吹出開口として、上記複数の吹出開口のうちのいずれかが選択されるように、上記各送風ダクトへの空調風の供給を調整する空調風調整手段を有しており、
上記空調風調整手段により、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに形成された吹出開口以外の吹出開口が選択された場合にも、該浄化手段が配設された送風ダクトを通じて、帯電物質が車室内に供給されるように構成されている、ことを特徴とする車室内空気制御装置。
【請求項2】
上記空調風調整手段は、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対して、所定量以上の空調風を常時供給可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車室内空気制御装置。
【請求項3】
上記空調風調整手段は、上記浄化手段が配設された送風ダクトに空調風を供給する状態と空調風の供給を停止する状態とを交互に切り換えるように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車室内空気制御装置。
【請求項4】
上記熱交換器が空気を加熱する機能を備えるとともに、
上記吹出開口として、車室内の前席乗員の上体側に空調風を吹付け可能な吹出開口であって、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対応した第1の吹出開口と、乗員の上体側以外に空調風を吹付け可能な第2の吹出開口とが設けられており、
上記空調風調整手段により、上記熱交換器を通過させられた空調風の吹出開口として、上記第2の吹出開口が選択された場合に、上記浄化手段が配設された送風ダクトに空調風を供給する状態と空調風の供給を停止する状態とを交互に切り換えるように構成されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の車室内空気制御装置。
【請求項5】
上記空調風調整手段は、外気温又は内気温が所定値以下であるときに、空調風の吹出開口として、上記第2の吹出開口を自動的に選択する、ことを特徴とする請求項4記載の車室内空気制御装置。
【請求項6】
上記浄化手段は、該浄化手段が配設された送風ダクトに帯電物質を送り出すための送風手段を有しており、
上記空調風調整手段により、空調風の吹出開口として、上記浄化手段が配設された送風ダクトに対応した吹出開口が選択された場合には、上記送風手段が作動させられる、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の車室内空気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−273241(P2008−273241A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115683(P2007−115683)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】