説明

車車間通信システムおよび車車間通信装置

【課題】前方に複数の車両が存在する場合でも、車両間で通信を適切に行うこと。
【解決手段】車車間通信装置1は、各車両に割り当てられた通信波長および通信波長ごとに予め設定された通信条件を記憶するメモリ22と、周囲に存在する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置との間で通信を行うための前方用送受信機14などの送受信機と、通信制御ユニット26、を備えている。そして、通信制御ユニット26が、メモリ22の記憶内容を参照し、メモリ22が記憶する自車に割り当てられた通信波長に対応する通信条件に基づいて送受信機14,16,18,20を制御して他の安全車間距離以内にある車車間通信装置へ各種情報を送信するとともに、メモリ22が記憶する周囲車両に割り当てられた通信波長に対応する通信条件に基づいて、送受信機14,16,18,20を制御して他の車車間通信装置から送信されてくる同種の各情報を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方に複数の車両が存在する場合や対向車の光がノイズとして受信された場合にでも、車車間で通信を適切に行うことができる車車間通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車車間の情報通信によって前方の交通状況を把握し、この情報により車両内に存在する各種装置を制御する走行制御装置が知られている。
このような走行制御装置の中には、前方に存在する他車からの情報を受信する受信手段と、前方車および自車の情報を処理した結果を、後方に存在する他車へ送信する送信手段と、自車内に存在する各種コントローラと接続された走行情報処理手段とからなり、周囲の車両の情報を収集して車両内の各種コントローラを制御し、自車の安全走行を支援する自動車間通信による走行制御装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、このような走行制御装置の中には、車両前方に対してレーザ光信号を受信又は発信する前方投受光部と、車両後方に対してレーザ光信号を受信又は発信する後方投受光部と、前方投受光部により受信した信号を含むレーザ光信号を後方投受光部から発信するとともに、後方投受光部により受信した信号を含むレーザ光信号を前方投受光部から発信するように、前方投受光部と後方投受光部の間の信号の中継を行う信号中継手段とを設けることにより、車両間の信号の順送りを可能にする走行制御装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平05−266399号公報(第3,4頁、図1)
【特許文献2】特開平09−051309号公報(第3,4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような走行制御装置においては、前方に複数の車両が存在する場合には、それら車両によってレーザ光が遮られやすいために車車間で光による通信を適切に行いにくいという問題があった。また、対向車の光がノイズとして受信された場合にも、車車両間でレーザ光による通信を適切に行いにくいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、前方に複数の車両が存在する場合でも、車両間で通信を適切に行う車車間通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る車車間通信システムは、「車両ごとに設定された通信条件に基づき、周囲車両と通信すること」を特徴とする。なお、ここでいう「車両ごとに設定された通信条件」とは、「車両の速度に応じて前後方向の通信距離を制御すること」、「走行する車線数に応じて左右方向の通信範囲(距離を)決めること」、および「通信相手を確定して相手の通信機に的を絞って通信するための通信相手の位置情報」を云う。
【0007】
具体的には、車車間通信システムは、車両に搭載され、互いに通信を行う複数の車車間通信装置によって構成される。各車車間通信装置(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、それぞれ、各車両に割り当てられた通信波長を記憶する通信波長記憶手段(22)と、通信波長ごとに予め設定された通信条件を記憶する通信条件記憶手段(22)と、 周囲に存在する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置との間で通信を行うための通信手段(14,16,18,20)と、通信制御手段(26)と、を備えている。なお、ここでいう「通信波長ごとに予め設定された通信条件」については、通信時の道路上の水分や温度、太陽光の照度条件に応じて、通信波の増幅率や変調方式を調整するための条件を含む。一例を挙げると、例えば天候が濃霧である場合には、波長に応じて水分による減衰が異なるため、増幅率の波長依存性を設定するといった具合である。そして、通信制御手段が、通信条件記憶手段の記憶内容を参照し、通信波長記憶手段が記憶する自車に割り当てられた通信波長に対応する通信条件に基づいて通信手段を制御して他の車車間通信装置へ各種情報を送信するとともに、通信波長記憶手段が記憶する周囲車両に割り当てられた通信波長に対応する通信条件に基づいて通信手段を制御して他の車車間通信装置から送信されてくる同種の各情報を受信する。
【0008】
従来の走行制御装置では、前方に複数の車両が存在する場合には、それら車両によってレーザ光が遮られやすいために車車間で光による通信を適切に行いにくいという問題があった。また、対向車の光がノイズとして受信された場合にも、車車両間でレーザ光による通信を適切に行いにくいという問題があった。これに対して本発明の車車間通信システムによれば、車両ごとに設定された通信条件(特に、「車両の速度に応じて前後方向の通信距離を制御すること」、および「走行する車線数に応じて左右方向の通信範囲(距離を)決めること」)に基づき、周囲車両と通信するので、前方に複数の車両が存在する場合でも、車車間で通信を適切に行うことができる。
【0009】
この場合、上述の通信条件については、通信時に利用する通信波の波長を特定する情報が含まれていることが考えられる(請求項2)。
また、上述の通信に用いる波長については、少なくとも4種類設定されていることが考えられる(請求項3)。このようにすれば、隣接する車両と自車とに異なる波長の種別を割り当てることができる。
【0010】
ところで、車両の周囲を走行する周囲車両が多い場合には、同時に多くの車両と通信する必要があり、車車間通信装置の通信制御手段の負荷が大きくなるという問題がある。
そこで、所定範囲内の前方車両と通信を行うようにすることが考えられる。具体的には、請求項4のように、車車間通信装置が、さらに、当該車車間通信装置が搭載される車両の走行速度を検知する車速検知手段(10,12)と、車速検知手段によって検知された走行速度に応じて、周囲を走行する周囲車両を検出するための検出範囲を設定する検出範囲設定手段(26)と、検出範囲設定手段によって設定された検出範囲内に他の車両が存在するか否かを判断する車両存在判断手段(26)と、を備え、車車間通信装置の通信制御手段が、車両存在判断手段によって検出範囲内に他の車両が存在すると判断された場合には、その車両を周囲車両とみなしてその周囲車両に搭載される車車間通信装置とのみ通信を行うことが考えられる。
【0011】
このようにすれば、検出範囲内に存在する車両のみを通信対象とすることで、同時に通信する車両の数量を限定することができ、車車間通信装置の通信制御手段の負荷が大きくなることを防ぐことができる。
【0012】
なお、車両の走行速度が大きい場合には、互いに車間間隔が広くなるために上述の検出範囲内に存在する車両が少なくなり、車車間通信が行われなくなるおそれがある。一方、車両の走行速度が小さい場合には、互いに車間間隔が狭くなるために上述の検出範囲内に存在する車両が多くなり、同時に多くの車両と通信する必要があり、車車間通信装置の通信制御手段の負荷が大きくなるという問題がある。そこで、車両の走行速度に応じて検出範囲を設定することが考えられる。具体的には、請求項5のように、車車間通信装置の検出範囲設定手段が、車速検知手段によって検知された自車の走行速度が大きくなった場合には検出範囲を広げ、一方、自車の走行速度が小さくなった場合には検出範囲を狭めることが考えられる。このようにすれば、検出範囲内に存在する周囲車両の数量を適切に保つことが期待できる。
【0013】
ところで、車両の走行中には、所定時間内に検出範囲内へ同一の周囲車両が入ったり出たりすることがある。このような場合には、その周囲車両に関する処理が繰り返されることとなり、車車間通信装置の通信制御手段の負荷が大きくなるおそれがある。
【0014】
そこで、所定時間内に検出範囲内へ同一の周囲車両が入ったり出たりする「ふらつき状態」が検出された場合にはその周囲車両については通信波長の切り替えを行う対象とはしないことが考えられる。具体的には、請求項6のように、車車間通信装置が、さらに、車両存在判断手段によって検出範囲内に存在すると判断された周囲車両がふらつき状態であるか否かを判定するふらつき判定手段(26)を備え、車車間通信装置の通信制御手段が、ふらつき判定手段によってふらつき状態であると判定された場合には、その周囲車両に搭載される車車間通信装置とは通信波長の切り替えを行わないことが考えられる。
【0015】
このようにすれば、所定時間内に検出範囲内へ同一の周囲車両が入ったり出たりする「ふらつき状態」が検出された場合においても、その周囲車両に関する頻繁な通信波長の切り替え処理が繰り返されることを防止することができ、その結果車車間通信装置の通信制御手段の負荷が増加することを防ぐことができる。
【0016】
ところで、例えば、周囲車両に割り当てられた通信波長が、その周囲車両の周囲を走行する車両に割り当てられた通信波長に応じて、自車に割り当てられた通信波長と同一の通信波長に変更されることがある。この場合には、自車に割り当てられた通信波長を、周囲車両に割り当てられた通信波長とは異なる通信波長への変更することが考えられる。具体的には、請求項7のように、車車間通信装置が、さらに、通信波長記憶手段が記憶する記憶内容を参照して自車に割り当てられた通信波長と周囲車両に割り当てられた通信波長とが同一であるか否かを判断する同一判断手段(26)と、自車に割り当てられた通信波長と周囲車両に割り当てられた通信波長とが同一であると同一判断手段によって判断された場合には、前記周囲車両に割り当てられた通信波長とは同一にならないよう自車に割り当てられた波長を変更して、その変更後の自車に割り当てられた通信波長へと通信波長記憶手段の記憶内容を更新させる第一の記憶制御手段(26)と、を備え、車車間通信装置の通信制御手段が、その変更後の自車に割り当てられた通信波長に関する情報を周囲車両へ通信手段を制御して送信することが考えられる。なおこの場合、隣接する周囲車両同士の波長が同一になることを防止する観点から、上述のように通信波長を少なくとも4種類とすることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、自車に割り当てられた通信波長を、周囲車両に割り当てられた通信波長とは異なる波長に維持することができる。
また、例えば、周囲車両に割り当てられた通信波長が、その周囲車両の周囲を走行する車両に割り当てられた通信波長に応じて変更された場合には、通信波長記憶手段の記憶内容を更新しておくことが好ましい。具体的には、請求項8のように、車車間通信装置が、さらに、周囲車両に割り当てられた通信波長が変更された旨を他の車車間通信装置から通信手段が受信した場合には、その変更後の周囲車両に割り当てられた通信波長へと通信波長記憶手段の記憶内容を更新させる第二の記憶制御手段(26)を備えることが考えられる。
【0018】
このようにすれば、自車に割り当てられた通信波長を、周囲車両に割り当てられた通信波長とは異なる通信波長に維持することができる。
ところで、複数の車両が設定範囲以内に近づくと、それらの車両が通信周波数を切り替えて、干渉が起こらないようにする。また、上述の通信手段が送信する電磁波については、何もない空間では通信距離により減衰する。しかし、道路上を走行する車両間で通信を行う場合、電磁波の指向性を考えずに電磁波を送信すると、車両や道路の構造物等で電磁波が反射され通信の妨害になるおそれがある。
【0019】
そこで、送信元の装置の通信手段へ向けて電磁波を発信することが考えられる。具体的には、請求項9のように、通信手段が、送信する電磁波の送信方向を変更可能に構成されており、通信制御手段が、通信手段が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置が備える通信手段の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置の通信手段へ向けて電磁波を送信させるよう通信手段を制御することが考えられる。
【0020】
このように構成すれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、例として、普通車と大型車では車両の高さ方向が違うため、距離が近づくと普通車から見た大型車の通信機の位置が見上げる位置になる場合がある。そのため、他の車両の通信機の設置位置情報を受領して、そのデータを元に相手の車両の通信機を狙って通信を行う。この場合、他の車両の通信機の設置位置については接近車両への通信データに含むようにする。車両の位置を車両の重心位置(これは重心位置ではなく、先端の中心位置でもよい)とし、複数の通信機の位置をオフセット値で現すようにする。この様に通信機位置が設定されると、自車の送信を行う通信機から容易に相手の通信機の位置が数値計算にて割り出せるため、容易に相手の通信機に的を絞って通信を行うことが可能となる。
【0021】
なお、請求項10に記載のような、請求項1〜請求項9の何れかに記載の車車間通信システムに用いられる車車間通信装置であって、請求項1〜請求項9の何れかにおいて車車間通信装置に関して記載した構成を備える車車間通信装置であれば、組み合わせて用いることにより上述したような効果を導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は、車両に搭載されて用いられる車車間通信装置1の概略構成を示すブロック図である。また、図2(b)は、通信波長の違いの一例として可視光を用いて光の色彩の違いを明確に示すための説明図である。また、図3(a)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(1)であり、図3(b)は自車および周囲車両における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図であり、図3(c)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(2)であり、図3(d)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(3)である。
【0023】
[車車間通信装置1の構成の説明]
図1に示すように、車車間通信装置1は、前方用計測レーダ10と、側方用計測レーダ12と、前方用送受信機14と、後方用送受信機16と、左用送受信機18と、右用送受信機20と、メモリ22と、外部I/F24と、通信制御ユニット26と、を備えている。なお、上述の前方用計測レーダ10、側方用計測レーダ12、前方用送受信機14、後方用送受信機16、左用送受信機18、右用送受信機20、メモリ22、および外部I/F24は、通信制御ユニット26に接続され、互いに通信可能に構成されている。
【0024】
[前方用計測レーダ10および側方用計測レーダ12の構成の説明]
このうち前方用計測レーダ10は、ミリ波やレーザ等を当該車車間通信装置1が搭載された車両の前方に向けて送出し、車両の前方に存在する物体からの反射波を受信する。
【0025】
側方用計測レーダ12は、ミリ波やレーザ等を当該車車間通信装置1が搭載された車両の側方に向けて送出し、車両の側方に存在する物体からの反射波を受信する。
なお、前方用計測レーダ10および側方用計測レーダ12は車速検知手段に該当する。
【0026】
[前方用送受信機14などの送受信機の構成の説明]
前方用送受信機14は、図3(a)および図3(b)に例示するように、前方を走行する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置と通信を行うための電磁波(光を含む)を送受信する装置であり、前方へ電波を送信する送信器14aと、前方からの電波を受信する受信器14bと、電波の波長を切り替える通信波長切り替え器14cと、を備えている。なお、送信器14a、受信器14bおよび通信波長切り替え器14cは通信機14dを構成する(図11(a)参照)。また、図11(a)に示すように、前方用送受信機14は、上述の通信機14d、カメラ14eおよびリフレクタ14fを備えている。そして、通信機14dおよびリフレクタ14fは一体となってその姿勢を変更可能に構成されている。なお、前方用送受信機14をメカで可動できるようにしてもよいし、機械的な方法でルーバー形状を移動して電磁波の進行方向を制限してもよいし、位相を制御して電磁波の通信方向を制御しても良いし、これらを複合的に用いたものでもよい。また、カメラ14eは、通信機14dおよびリフレクタ14fからは独立してその姿勢を変更可能に構成されている。このことにより、前方用送受信機14は、送信する電磁波の送信方向を上下方向および左右方向に変更可能に構成されている。また、前方用送受信機14は、送信した後に相手のリフレクタによって反射された電磁波を受信することによって互いの位置を特定することができる(図11(b)参照) 。
【0027】
後方用送受信機16は、図3(a)および図3(b)に例示するように、後方を走行する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置と通信を行うための電磁波を送受信する装置であり、後方へ電磁波を送信する送信器(図示省略)と、後方からの電磁波を受信する受信器(図示省略)と、電波の波長を切り替える通信波長切り替え器(図示省略)と、を備えている。
【0028】
また、後方用送受信機16は、前方用送受信機14と同様に、送信器と受信器と通信波長切り替え器とを有する通信機、カメラおよびリフレクタを備えている。なお、通信機、カメラおよびリフレクタについてはここでは詳細な説明は省略する。
【0029】
左用送受信機18は、図3(c)および図3(d)に例示するように、左方を走行する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置と通信を行うための電磁波を送受信する装置であり、左方へ電波を送信する送信器(図示省略)と、左方からの電磁波を受信する受信器(図示省略)と、電波の波長を切り替える通信波長切り替え器(図示省略)と、を備えている。
【0030】
また、左用送受信機18は、前方用送受信機14と同様に、送信器と受信器と通信波長切り替え器とを有する通信機、カメラおよびリフレクタを備えている。なお、通信機、カメラおよびリフレクタについてはここでは詳細な説明は省略する。
【0031】
右用送受信機20は、図3(c)および図3(d)に例示するように、右方を走行する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置と通信を行うための電磁波を送受信する装置であり、右方へ電波を送信する送信器(図示省略)と、右方からの電磁波を受信する受信器(図示省略)と、電波の波長を切り替える通信波長切り替え器(図示省略)と、を備えている。
【0032】
また、右用送受信機20は、前方用送受信機14と同様に、送信器と受信器と通信波長切り替え器とを有する通信機、カメラおよびリフレクタを備えている。なお、通信機、カメラおよびリフレクタについてはここでは詳細な説明は省略する。
【0033】
なお、上述の前方用送受信機14、後方用送受信機16、左用送受信機18および右用送受信機20は通信手段に該当する。
[メモリ22の構成の説明]
メモリ22は、不揮発性メモリで構成され、各種データを記憶するのに利用される。このメモリ22には、図1に例示するように、自車の通信波長と、前方向の自車の波長を決定するための3個の波長決定対象車両データと、波長決定には用いられないがレーダで検知した非対象車両を記録する領域がある。なお、自車および周囲車両に関する情報については、自車については、通信(送信)に用いる自車のID、自車の通信(送信)波長、自車位置(位置指定ID:重心、先端、後端)、自車に搭載の通信機の設置位置(自車位置からのオフセット値)、自車の進行方向、自車の走行車線情報(幅方向情報)、自車の走行のぶれ:速度の変動の程度)、および自車の通信が有効であるか否か(ONかOFF)を示す情報、で構成され、周囲車両については、その周囲車両のID、周囲車両の通信(送信)波長、周囲車両位置(位置指定ID:重心、先端、後端)、周囲車両に搭載の通信機の設置位置(周囲車両位置からのオフセット値)、周囲車両の進行方向、周囲車両の走行車線情報(幅方向情報)、周囲車両の走行のぶれ:速度の変動の程度)、および周囲車両の通信が有効であるか否か(ONかOFF)を示す情報、で構成される。また、前方用計測レーダ10および側方用計測レーダ12で認識された車両のうち通信波長も確認された車両については、その通信波長もメモリ22へ記録される。また、メモリ22においては、波長決定対象車両との車間距離や側方距離が大きくなると、その車両のデータは非対象車両の記録エリアに移動され記録される。なお、これらのデータは定期的(10ミリ秒単位)に更新される。
【0034】
また、メモリ22は、各車両に割り当てられた通信波長を記憶するのに利用される。なお、本実施形態では、図2(b)に例示するように、緑色(G)、赤色(R)、青色(B)および黄色(Y)の4つの色の光通信機が採用されているが、5つ以上の色数を採用してもよい。また、メモリ22は、車両が通信に用いている通信波長(可視光では色に対応)ごとに予め設定された通信条件を記憶するのに利用される。また、メモリ22は、図4に例示するように、車両の走行速度(km/時)と、前後方向距離である制限距離F(m)と、左右幅方向距離である制限距離M(m)とを関連付けた「制限距離決定表」を記憶する。なお、メモリ22は、通信波長記憶手段および通信条件記憶手段に該当する。
【0035】
なお、本実施形態では、一例として可視光を利用した通信の説明を行なったが、干渉しない4つの波長を用いることが可能である。具体的には、赤外レーザ、可視光レーザ、だけでなく、電波(中波、短波、マイクロ波、ミリ波)から適宜選択できる。
【0036】
[外部I/F24の構成の説明]
外部I/F24は、他の外部機器等に接続され、それらの機器との間で情報を入出力する機能を担う。なお、この外部機器の一つとして各種ECU(図示省略)と接続されている。このことにより、外部I/F24は車内LANを介して各種ECUとデータ通信可能である。
【0037】
[通信制御ユニット26の構成の説明]
通信制御ユニット26は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいて各種処理を実行する。
【0038】
また、通信制御ユニット26は、各種データに基づいて送信信号を生成し、自車に割り当てられた通信波長にてその生成した送信信号を各送受信機に電波として送信させ、他の車車間通信装置にデータを伝達させる機能を有する。その際、通信制御ユニット26は、各送受信機が受信した周囲車両に関する情報に基づいてその周囲車両に関する情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する。なおこの場合、通信制御ユニット26は、周囲車両に関する情報に含まれるオフセット値を参考にして送受信機の位置を特定する。より具体的には、その車両の重心位置からオフセット値だけずらした位置を送受信機の位置とみなすのである(図10(b)参照)。また、自車に割り当てられた通信波長についてはメモリ22の記憶内容を参照して特定する。また、通信制御ユニット26は、他の車車間通信装置から発せられた電磁波を各送受信機が受信した際に、各送受信機から出力された受信信号に基づいてデータを復元する機能を有する。また、通信制御ユニット26は、前方用計測レーダ10および側方用計測レーダ12を制御するとともに、前方用計測レーダ10および側方用計測レーダ12が送出したミリ波やレーザ等とこれらの反射波が帰ってくるまでの時間等から車両の前方や側方に存在する物体までの距離を計測する機能を有する。
【0039】
また、通信制御ユニット26は、メモリ22の記憶内容を参照して、送受信機14,16,18,20が送信する電磁波の波長を決定する機能を有する。また、通信制御ユニット26は、通信波長変更処理および車車間通信処理を実行する。
【0040】
また、通信制御ユニット26は、次のような作用を奏する。すなわち、検知された車両については、前後方向の移動量および車線幅方向の移動量を定期的に計測する。そして、その計測結果が制限距離F(m)の設定範囲以内で、車間距離が増えたり減ったりする場合その対象車両には制限距離に対応する「ぶれ」があるとして、メモリ22に記録させる。このぶれ幅について、データのサンプリングを設定回数行い、ぶれの傾向を判定する。この場合、ぶれ量が単調に増加し、設定車間距離よりも大きくなった車両については、メモリ22における「非対象車両の記録エリア」に記録させ、さらに自車との車間距離が大きくなり通信に使われる電磁波が検知されなくなれば、そのデータは削除する。一方、ぶれ量が振動傾向の場合、その車両を波長決定対象車両として認識し続ける。このようにすると、何も対策しない場合には前方の走行車両が設定車間距離の周辺でふらつくと自車の通信波長を頻繁に変えなければ成らないが、ぶれが振動傾向の場合に「ぶれ」対象車両として維持すれば、頻繁に通信波長変更をおこなわなくてもよい。
【0041】
なお、通信制御ユニット26は、通信制御手段、検出範囲設定手段、車両存在判断手段、ふらつき判定手段、同一判断手段、第一の記憶制御手段および第二の記憶制御手段に該当する。
【0042】
[通信波長変更処理の説明]
次に、車車間通信装置1の通信制御ユニット26が実行する通信波長変更処理について図5のフローチャートおよび図2(b)を参照して説明する。なお、図2(a)は、可視光を使った場合の色と通信波長の割り当てを説明する説明図である。
【0043】
この通信波長変更処理は、運転者によってイグニッションキーが操作されてアクセサリー給電(ACC)の状態になった際に実行される。
まず、外部I/F24を介して車車間通信装置1の外部から自車の速度を示す情報を検知する(S105)。
【0044】
続いて、メモリ22が記憶する制限距離決定表(図4参照)を参照して、自車の走行速度に基づき、安全車間距離Fおよび安全車間距離Mを設定する(S110)。一例を挙げると、走行速度が50km/時である場合には、前後方向距離である制限距離F(m)については、数値「50」と設定し、左右幅方向距離である制限距離M(m)については、数値「7」と設定するといった具合である。なおこの場合、制限距離決定表を参照して、自車の走行速度が大きくなった場合には検出範囲を広げ、一方、自車の走行速度が小さくなった場合には検出範囲を狭めることとなる。そして、前方用計測レーダ10からの出力信号に基づき、自車から前方車両までの距離を検知するとともに、側方用計測レーダ12からの出力信号に基づき、自車から側方車両までの距離を検知する(S115)。
【0045】
さらに、自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内であるか否かを判断する(S120)。自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内ではないと判断された場合には(S120:NO)、自車と前方車両とは接近していないと判断してS105に戻る。
【0046】
一方、自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内であると判断された場合には(S120:YES)、自車と前方車両とが接近していると判断して、続いて自車から側方車両までの距離が幅方向制限距離M以内であるか否かを判断する(S125)。自車から側方車両までの距離が幅方向制限距離M以内ではないと判断された場合には(S125:NO)、自車と側方車両とは接近していないと判断してS105に戻る。
【0047】
一方、自車から側方車両までの距離が幅方向制限距離M以内であると判断された場合には(S125:YES)、自車と側方車両とが接近していると判断して、メモリ22が記憶するデータを参照して、自車に割り当てられている通信波長と前方車両に割り当てられている通信波長とが同一であるか否かを判断する(S130)。自車に割り当てられている通信波長と前方車両に割り当てられている通信波長とが同一ではないと判断された場合には(S135:NO)、S105に戻る。一方、自車に割り当てられている通信波長と前方車両に割り当てられている通信波長とが同一であると判断された場合には(S135:YES)、自車に割り当てられている色彩の種別を変更するための通信波長を選択するとともに、メモリ22における自車に関する記憶内容をその選択した通信波長に更新する(S140)。そして、その選択した通信波長を他の車両に対して外部I/F24を介して伝達する(S145)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。
【0048】
また、前方車両から通信波長を変更する旨の連絡があるか否かを判断する(S150)。前方車両から通信波長を変更する旨の連絡がないと判断された場合には(S150:NO)、前方車両から通信波長を変更する旨の連絡があると判断されるまで待機し、前方車両から通信波長を変更する旨の連絡があると判断された場合には(S150:YES)、その連絡を参照して、前方車両において変更された通信波長を確認する(S155)。
【0049】
そして、前方車両において変更された通信波長が自車に割り当てられている通信波長と同一であるか否かを判断する(S160)。前方車両において変更された通信波長が自車に割り当てられている通信波長と同一ではないと判断された場合には(S160:NO)、S150に戻る。一方、前方車両において変更された通信波長が自車に割り当てられている通信波長と同一であると判断された場合には(S160:YES)、自車に割り当てられている通信波長を他の通信波長に変更する(S165)。そして、その選択した通信波長を他の車両に対して外部I/F24を介して伝達する(S170)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。そして、S105に戻る。
【0050】
[車車間通信処理の説明]
次に、車車間通信装置1の通信制御ユニット26が実行する車車間通信処理について図6のフローチャートおよび図2(a)を参照して説明する。なお、図2(a)は、可視光を例として通信波長および通信波長の割り当てを説明する説明図である。
【0051】
この車車間通信処理は、運転者によってイグニッションキーが操作されてアクセサリー給電(ACC)の状態になった際に実行される。
まず、前方用計測レーダ10からの出力信号に基づき、前方に車両が存在するか否かを判断する(S205)。前方に車両が存在しないと判断された場合には(S205:NO)、前方に車両が存在すると判断されるまで待機する。一方、前方に車両が存在すると判断された場合には(S205:YES)、前方用計測レーダ10からの出力信号に基づき、その前方車両との間の距離を計測する(S210)。続いて、その前方の車両との間の距離が、安全な車間距離であるか否かを判断する(S215)。具体的には、自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内であるか否かを判断する。
【0052】
自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内であると判断された場合には、自車と前方車両とが接近しており、その前方の車両との間の距離が安全な車間距離ではないと判断する(S215:NO)。そして、メモリ22の記憶内容を参照してその前方車両からの通信波長を検知する(S220)。その前方車両からの通信波長が自車の通信波長と同一ではない場合には(S225:YES)、自車の通信波長を変更する必要はないと判断して、自車の通信波長を他の車車間通信装置1へ伝達する通信処理を実行する(S260)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。そして、S205に移行する。
【0053】
一方、その前方車両からの通信波長が自車の通信波長と同一である場合には(S225:YES)、自車の通信波長を変更する必要があると判断して、自車の通信波長を前方車両からの通信波長とは異なる通信波長に変更し、その変更後の通信波長をメモリ22へ記憶させる(S230)。さらに、その変更後の通信波長を他の車車間通信装置1へ伝達する通信処理を実行する(S260)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。そして、S205に移行する。
【0054】
ところで、先のS215において、自車から前方車両までの距離が進行方向制限距離F以内ではないと判断された場合には、自車と前方車両とは接近しておらず、その前方の車両との間の距離が安全な車間距離であると判断する(S215:YES)。そして、自車の通信波長を他の車車間通信装置1へ伝達する伝達する通信処理を行っていない場合には(S235:NO)、S205に移行する。一方、自車の通信波長を他の車車間通信装置1へ伝達する伝達する通信処理を行っている場合には(S235:YES)、車間距離のふらつき度を判定する(S240)。具体的には、周辺車両の前後方向の移動量および車線幅方向の移動量を定期的に計測し、その計測結果が進行方向制限距離F、あるいは幅方向制限距離Mの近傍値でFまたはMに近づいたり離れたりする挙動があると判定されると、その動作を「ぶれ」としてメモリ22に記録させ、このぶれ幅について、データのサンプリングを設定回数行って「ぶれ」の傾向を判定する。そのぶれ量が振動傾向の場合には、ふらつき状態であると判断する。ふらつき状態であると判断された場合には(S245:YES)、そのまま、自車の通信波長を保持して他の車車間通信装置1へ伝達する通信処理を実行する(S260)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。そして、S205に移行する。
【0055】
一方、ふらつき状態ではないと判断された場合(周辺車両が自車から離れていく場合)には(S245:NO)、通信停止条件を満たしているか否かを判断し(S250)、通信停止条件を満たしていると判断された場合には(S250:YES)、通信処理を停止して(S255)S205に移行する。
【0056】
一方、通信停止条件を満たしていないと判断された場合には(S250:NO)、自車の通信波長を他の車車間通信装置1へ伝達する通信処理を実行する(S260)。その際、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する(図12および図13参照)。そして、S205に移行する。
【0057】
[通信波長変更処理および車車間通信処理の例]
次に、上述の通信波長変更処理および車車間通信処理について、車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している場合を例に、図7〜図9を参照して説明する。なお、図7(a)は車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している例を示す説明図(1)であり、図7(b)は車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している例を示す説明図(2)である。また、図8(a)は車線数が2車線である道路を車両A〜Cが走行している例を示す説明図(1)であり、図8(b)は、車線数が2車線である道路を車両A〜Cが走行している例を示す説明図(2)である。また、図9は車線数が1車線である道路を車両A〜Gが走行している例を示す説明図である。
【0058】
まず、図7に例示するように、車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している場合を説明する。この場合、車両Aの通信波長は緑色であり、車両Bの通信波長は青色であり、車両Cの通信波長は青色であり、車両Dの通信波長は緑色であり、車両Eの通信波長は黄色である。車両Cが右へ移動して車両A,B,Dへ接近した場合には、周囲車両に割り当てられた通信波長と同一の通信波長とはならないよう車両Cが自らの通信波長を青色から黄色へ変更する。続いて、同様に、周囲車両に割り当てられた通信波長と同一の通信波長とはならないよう車両Dが自らの通信波長を緑色から赤色へ変更する。
【0059】
続いて、車両Eが前方へ移動して車両C,Dへ接近した場合には、周囲車両に割り当てられた通信波長と同一の通信波長とはならないよう車両Eが自らの通信波長を黄色から青色へ変更する旨を車両C,Dに伝達する。そして、車両Eが自らの通信波長を黄色から青色へ変更する。
【0060】
次に、図8に例示するように、車線数が2車線である道路を車両A〜Cが走行している場合を説明する。この場合、車両Aの通信波長は緑色であり、車両Bの通信波長は青色であり、車両Cの通信波長は緑色である。車両Cが前方へ移動して車両A,Bへ接近した場合には、周囲車両に割り当てられた通信波長と同一の通信波長とはならないよう車両Cが自らの通信波長を緑色から赤色へ変更する旨を車両A,Bへ伝達する。そして、車両Cが自らの通信波長を緑色から赤色へ変更する。
【0061】
次に、図9に例示するように、車線数が1車線である道路を車両A〜Gが走行している場合を説明する。この場合、車両Aの通信波長は緑色であり、車両Bの通信波長は青色であり、車両Cの通信波長は黄色であり、車両Dの通信波長は赤色であり、車両Eの通信波長は青色であり、車両Fの通信波長は緑色であり、車両Gの通信波長は黄色である。車両Eが前方へ移動して車両C,Dへ接近した場合には、周囲車両に割り当てられた通信波長と同一の通信波長とはならないよう車両Eが自らの通信波長を青色へ変更する旨を車両A,Bへ伝達する。そして、車両Eが自らの通信波長を青色へ変更する。
[効果]
(1)このように第一実施形態の車車間通信装置1によれば、次のような効果を奏する。すなわち、従来の走行制御装置では、前方に複数の車両が存在する場合には、それら車両によってレーザ光が遮られやすいために車車間で光による通信を適切に行いにくいという問題があった。また、対向車の光がノイズとして受信された場合にも、車車両間でレーザ光による通信を適切に行いにくいという問題があった。これに対して第一実施形態の車車間通信装置1によれば、車両ごとに設定された通信条件(すなわち、相手車両の位置と通信機のオフセット位置情報)に基づき、周囲車両の通信機位置を確定して通信するので、前方に複数の車両が存在する場合でも、車車間で通信を適切に行うことができる。
【0062】
(2)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、通信波長については少なくとも4種類設定されている。このことにより、隣接する車両と自車とに異なる通信波長を割り当てることができる。
【0063】
(3)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、自車から所定範囲内の前方車両のみと通信を行うように構成されている。このことにより、検出範囲内に存在する車両のみを通信対象とすることで、同時に通信する車両の数量を限定することができ、車車間通信装置1の通信制御ユニット26の負荷が大きくなることを防ぐことができる。
【0064】
(4)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、通信制御ユニット26が、制限距離決定表を参照して、自車の走行速度が大きくなった場合には検出範囲を広げ、一方、自車の走行速度が小さくなった場合には検出範囲を狭める。このことにより、検出範囲内に存在する周囲車両の数量を適切に保つことが期待できる。
【0065】
(5)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、通信制御ユニット26が、検出範囲内へ同一の周囲車両が入ったり出たりする「ふらつき状態」が検出された場合にはその周囲車両については通信対象とはしない。このことにより、「ふらつき状態」が検出された場合においても、その周囲車両に関する処理が繰り返されることを防止することができ、その結果車車間通信装置1の通信制御ユニット26の負荷が増加することを防ぐことができる。
【0066】
(6)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、自車に割り当てられた通信波長と周囲車両に割り当てられた通信波長とが同一であると判断された場合には、周囲車両に割り当てられた通信波長とは同一にならないよう自車に割り当てられた通信波長を変更して、その変更後の自車に割り当てられた通信波長へとメモリ22の記憶内容を更新させるとともに、その変更後の自車に割り当てられた通信波長に関する情報を周囲車両へ伝達する。このことにより、自車に割り当てられた通信波長を、周囲車両に割り当てられた通信波長とは異なる通信波長に維持することができる。
【0067】
(7)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、通信制御ユニット26が、周囲車両に割り当てられた通信波長が変更された旨を他の車車間通信装置1から受信した場合には、その変更後の周囲車両に割り当てられた通信波長へとメモリ22の記憶内容を更新させる。このことにより、例えばその周囲車両の周囲を走行する車両に割り当てられた通信波長に応じて変更された場合であっても、自車に割り当てられた通信波長を、周囲車両に割り当てられた通信波長とは異なる通信波長に維持することができる。
【0068】
(8)また、第一実施形態の車車間通信装置1によれば、前方用送受信機14などの各送受信機が、送信する電磁波の送信方向を上下方向および左右方向に変更可能に構成されており、通信制御ユニット26が、各送受信機が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置1が備える送受信機の位置を特定し、その特定した送信元である車車間通信装置1の送受信機へ向けて電磁波を送信させるよう各送受信機を制御する。なおこの場合、通信制御ユニット26は、各種情報に含まれるオフセット値を参考にして送受信機の位置を特定する。
【0069】
このことにより、次のような作用効果を奏する。すなわち、例として、普通車と大型車では車両の高さ方向が違うため、距離が近づくと普通車から見た大型車の通信機の位置が見上げる位置になる場合がある。そのため、他の車両の通信機の設置位置情報を受領して、そのデータを元に相手の車両の通信機を狙って通信を行う。この場合、他の車両の通信機の設置位置については接近車両への通信データに含むようにする。車両の位置を車両の重心位置(これは重心位置ではなく、先端の中心位置でもよい)とし、複数の通信機の位置をオフセット値で現すようにする。この様に通信機位置が設定されると、自車の送信を行う通信機から容易に相手の通信機の位置が数値計算にて割り出せるため、容易に相手の通信機に的を絞って通信を行うことが可能となる。
【0070】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。例えば、車両が電気自動車のようにイグニッションキー等のない場合でも、車両の始動装置の起動により通信処理を開始するように変形できる。
【0071】
(1)図10(a)に例示するように、車車間通信装置1が、車両の後部に設置された後方用送受信機16と、車両の左前の隅部に設置された左用送受信機18と、車両の左前の隅部に設置された右用送受信機20と、を備える構成としてもよい。この例では、左用送受信機18と計測レーダとが一体となっており、右用送受信機20と計測レーダとが一体となっている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】車車間通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は波長の違いの一例として通信波長および通信波長の割り当てを説明する説明図であり、(b)は、通信波長を示す説明図である。
【図3】(a)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(1)であり、(b)は自車および周囲車両における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図であり、(c)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(2)であり、(d)は自車における車車間通信装置の前方用計測レーダおよび後方用計測レーダの通信エリアを示す説明図(3)である。
【図4】制限距離決定表を示す説明図である。
【図5】通信波長変更処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】車車間通信処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】(a)は車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している例を示す説明図(1)であり、(b)は車線数が3車線である道路を車両A〜Eが走行している例を示す説明図(2)である。
【図8】(a)は車線数が2車線である道路を車両A〜Cが走行している例を示す説明図(1)であり、(b)は、車線数が2車線である道路を車両A〜Cが走行している例を示す説明図(2)である。
【図9】車線数が1車線である道路を車両A〜Gが走行している例を示す説明図である。
【図10】車車間通信装置の構成を示す説明図である。
【図11】(a)は前方用送受信機14の構成を示す説明図であり、(b)は通信波長の割り当てを示す説明図である。
【図12】車線数が3車線である道路を車両1〜車両6が走行している例を示す説明図である。
【図13】(a)は車車間通信装置が互いに通信を行っている状況を示す説明図(1)であり、(b)は車車間通信装置が互いに通信を行っている状況を示す説明図(2)である。
【符号の説明】
【0073】
1…車車間通信装置、10…前方用計測レーダ、12…側方用計測レーダ、14…前方用送受信機、14a…送信器、14b…受信器、14c…通信波長切り替え器、16…後方用送受信機、18…左用送受信機、20…右用送受信機、22…メモリ、24…外部I/F、26…通信制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、互いに通信を行う複数の車車間通信装置によって構成される車車間通信システムであって、
前記各車車間通信装置は、それぞれ、
各車両に割り当てられた通信波長を記憶する通信波長記憶手段と、
通信波長ごとに予め設定された通信条件を記憶する通信条件記憶手段と、
周囲に存在する周囲車両に搭載された他の車車間通信装置との間で通信を行うための通信手段と、
前記通信条件記憶手段の記憶内容を参照し、前記通信波長記憶手段が記憶する自車に割り当てられた波長に対応する通信条件に基づいて前記通信手段を制御して他の車車間通信装置へ各種情報を送信するとともに、前記通信波長記憶手段が記憶する周囲車両に割り当てられた通信波長に対応する通信条件に基づいて前記通信手段を制御して他の車車間通信装置から送信されてくる同種の前記各情報を受信する通信制御手段と、
を備えることを特徴とする車車間通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車車間通信システムにおいて、
前記通信条件には、通信時に利用する通信波の波長を特定する情報が含まれていること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車車間通信システムにおいて、
前記通信に用いる波長については、少なくとも4種類設定されていることを特徴とする車車間通信システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の車車間通信システムにおいて、
前記車車間通信装置は、さらに、
当該車車間通信装置が搭載される車両の走行速度を検知する車速検知手段と、
前記車速検知手段によって検知された走行速度に応じて、周囲を走行する周囲車両を検出するための検出範囲を設定する検出範囲設定手段と、
前記検出範囲設定手段によって設定された検出範囲内に他の車両が存在するか否かを判断する車両存在判断手段と、
を備え、
前記車車間通信装置の前記通信制御手段は、前記車両存在判断手段によって前記検出範囲内に他の車両が存在すると判断された場合には、その車両を周囲車両とみなしてその周囲車両に搭載される車車間通信装置とのみ通信を行うこと
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車車間通信システムにおいて、
前記車車間通信装置の前記検出範囲設定手段は、前記車速検知手段によって検知された自車の走行速度が大きくなった場合には前記検出範囲を広げ、一方、前記自車の走行速度が小さくなった場合には前記検出範囲を狭めることを特徴とする車車間通信システム。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車車間通信システムにおいて、
前記車車間通信装置は、さらに、
前記車両存在判断手段によって前記検出範囲内に存在すると判断された周囲車両がふらつき状態であるか否かを判定するふらつき判定手段を備え、
前記車車間通信装置の前記通信制御手段は、前記ふらつき判定手段によってふらつき状態であると判定された場合には、その周囲車両に搭載される車車間通信装置との通信波長の変更を行わないこと
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の車車間通信システムにおいて、
前記車車間通信装置は、さらに、
前記通信波長記憶手段が記憶する記憶内容を参照して自車に割り当てられた通信波長と周囲車両に割り当てられた通信波長とが同一であるか否かを判断する通信波長同一判断手段と、
前記自車に割り当てられた通信波長と前記周囲車両に割り当てられた通信波長とが同一であると前記通信波長同一判断手段によって判断された場合には、前記周囲車両に割り当てられた通信波長の種別とは同一にならないよう自車に割り当てられた通信波長の種別を変更して、その変更後の自車に割り当てられた通信波長の種別へと前記波長記憶手段の記憶内容を更新させる第一の記憶制御手段と、を備え、
前記車車間通信装置の前記通信制御手段は、その変更後の自車に割り当てられた通信波長に関する情報を前記周囲車両へ前記通信手段を制御して送信すること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の車車間通信システムにおいて、
前記車車間通信装置は、さらに、
前記周囲車両に割り当てられた通信波長が変更された旨を他の車車間通信装置から前記通信手段が受信した場合には、その変更後の前記周囲車両に割り当てられた通信波長へと前記通信波長記憶手段の記憶内容を更新させる第二の記憶制御手段を備えること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の車車間通信システムにおいて、
前記通信手段は、送信する電磁波の送信方向を変更可能に構成されており、
前記通信制御手段は、前記通信手段が受信した各種情報に基づいてその各種情報の送信元である車車間通信装置が備える通信手段の位置を特定し、その特定した前記送信元である車車間通信装置の通信手段へ向けて電磁波を送信させるよう前記通信手段を制御すること
を特徴とする車車間通信システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の車車間通信システムに用いられる車車間通信装置であって、請求項1〜請求項9の何れかにおいて車車間通信装置に関して記載した構成を備えることを特徴とする車車間通信装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−151107(P2007−151107A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300456(P2006−300456)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】