説明

車車間通信装置

【課題】 道路環境において周辺の車両の走行情報を円滑に取得する。
【解決手段】 他の車両Cに搭載された通信装置から送信される無線信号には、他の車両Cの走行情報および他の車両の周辺に位置する車両B、D、Eの各走行情報が含まれるようになっている。データ処理部30は、送受信部10によって受信された無線信号に基づいて、他の車両Cの走行情報および他の車両の周辺に位置する車両B、D、Eの各走行情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間通信装置に関するもので、交差点における車両同士の衝突事故回避に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、車車間通信で他車両の走行情報を取得し、自車両と他車両が衝突する可能性がある場合に衝突を回避するために所定の回避動作を実行する装置が知られている。
【0003】
このような装置としては、例えば、自車両と他車両にそれぞれ搭載された通信装置間で自車両と他車両の各走行データを送受信し、各車両の走行データに基づいて決定した優先度に基づいて自車両の回避動作を実行するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−209691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した装置は、道路上または、走路周辺に存在する車両、建造物等によって、これら車車間の直線経路による無線通信が遮られ、周囲を走行する他の車両と車車間通信ができなくなり、他の車両の走行情報を取得できないといった状況が考えられる。このような状況では、衝突を回避するための動作を正常に行うことができないといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題を解決するために鑑みたものであり、他の車両の走行情報を円滑に取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、自車両に搭載され、他の車両に搭載された通信装置と無線通信を行う車車間通信装置であって、他の車両に搭載された通信装置から送信される無線信号には、他の車両の走行情報および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報が含まれるようになっており、他の車両に搭載された通信装置から送信される無線信号を受信する受信手段と、受信手段が受信した無線信号に基づいて、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を取得する他車両走行情報取得手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように、他車両走行情報取得手段は、受信手段が受信した無線信号に基づいて、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を取得する。すなわち、他の車両の周辺に位置する車両の車車間通信装置と直接車車間通信ができなくても、他車両走行情報取得手段によって他の車両の走行情報を円滑に取得することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、自車両の走行情報を取得する自車情報取得手段と、自車情報取得手段が取得した自車両の走行情報とともに他車両走行情報取得手段が取得した他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を記憶する走行情報記憶手段と、走行情報記憶手段に記憶された自車両の走行情報と他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を送信する送信手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このように、送信手段は、自車両の走行情報だけでなく走行情報取得手段が取得した他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を送信することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、走行情報記憶手段に記憶される車両の走行情報には、車両の識別情報、車両の位置情報、車両の速度情報、車両の位置情報の更新時刻、交差点における振る舞いを示す情報、交差点での走行、停止を示す情報、自車両を認識しているか否かを示す情報の少なくとも1つが含まれることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、走行情報取得手段が取得した他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報に、送信手段が送信した自車両の走行情報が含まれるか否かに基づいて、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両が自車両を認識しているか否かを判定する自車両認識判定手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
このように、自車両認識判定手段によって、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両が自車両を認識しているか否かを判定することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、送信手段が送信する自車両の走行情報には自車両の位置情報が含まれており、走行情報取得手段が取得した他の車両の走行情報と他の車両の周辺に位置する車両の走行情報に、送信手段から送信した自車両の位置情報が含まれる場合、送信手段が送信した自車両の位置と走行情報取得手段が取得した自車両の走行情報に含まれる自車両の位置が所定距離以下であるか否かに基づいて、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両が自車両の位置を正確に認識しているか否かを判定する自車両位置認識判定手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
このように、自車両位置認識判定手段によって、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両が自車両の位置を正確に認識しているか否かを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態に係る車車間通信装置の構成を図1に示す。この車車間通信装置は、交差点における車同士の出会い頭衝突を防ぐために、他の車両に搭載された車車間通信装置と無線通信を行う。すなわち、車車間通信装置が自車両の周辺に位置する車両の車車間通信装置から送信される走行情報を受信すると、自車両の走行情報とともに受信した自車両の周辺に位置する車両の走行情報を定期的に無線送信し、これを受信した車車間通信装置がこれらの車両の走行情報に基づいて出会い頭衝突の危険の有無を判定する。
【0016】
図2は、車車間通信装置が搭載された車両A〜Eが交差点に進入する様子を示している。車両Aと車両Cとの間には無線信号を遮る障害物がないため、車両Aに搭載された車車間通信装置は、車両Cに搭載された車車間通信装置から送信される無線信号を受信できるが、車両Aと車両B、D、Eとの間には無線信号を遮るビルが存在するため、車両Aに搭載された車車間通信装置は、車両B、D、Eに搭載された各車車間通信装置から送信される無線信号を受信できない。
【0017】
そこで、本実施形態における車車間通信装置は、自車両の周辺に位置する車両の車車間通信装置から送信される走行情報を受信すると、自車両の走行情報とともに受信した自車両の周辺に位置する車両の走行情報を定期的にブロードキャストする。例えば、図2において、車両Cに搭載された車車間通信装置は、周辺車両としての車両A、B、D、Eの各車車間通信装置から車両A、B、D、Eの各走行情報を受信すると、自車両の走行情報とともに受信した車両A、B、D、Eの各走行情報を定期的にブロードキャストする。
【0018】
これにより、車両Aに搭載された車車間通信装置は、車両B、D、Eに搭載された各車車間通信装置から送信される無線信号を受信できなくても、車両Cに搭載された車車間通信装置を介して車両B、D、Eの各走行情報を取得することが可能となる。
【0019】
また、出会い頭衝突は一般に、交差する道路上の車両同士が、互いの進入路への視界が交差点付近の構造物等によって遮られることで、互いの車両の存在を認識せずに交差点に進入してしまうことで発生する。図2における車両B、E、Dの走行道路は優先道路、車両A、Cの走行道路は非優先道路となっている。車両Aが交差点の手前で一旦停止した場合、車両Bが優先道路を走行して交差点に進入してくることを車両Aの運転者が気づかず、そのまま再発進してしまうと、出会い頭衝突の危険性が高い。
【0020】
本実施形態における車車間通信装置は、優先道路を走行中に先方の交差点へ非優先道路から進入する車両があると判定した場合、警報を発することで自車両の運転者に危険を報知する。また、非優先道を走行中に先方の交差点へ優先道路から進入する車両があると判定した場合、次の交差点で停止するように自車両の運転者にアナウンスを行う。
【0021】
このような通信のため車車間通信装置は図1に示す構成をしている。車車間通信装置1は、送受信部10、位置情報取得部20、データ処理部30、警報機40を備えている。
【0022】
送受信部10は、アンテナ10aを有し、このアンテナ10aを介して受信した無線信号を復調し、受信データとしてデータ処理部30における情報保持部31の他車両走行情報31bへ出力するとともに、データ処理部30の送信データ生成部32より入力される信号を変調して、アンテナ10aから無線送信する。
【0023】
位置情報取得部20は、GPS受信機21および地図情報記憶部22を備えている。
【0024】
GPS受信機21は、衛星から送信される測位信号を受信して繰り返し自車両の位置情報(緯度、経度)を算出し、自車両の位置情報とともに位置情報の算出時刻を出力する。
【0025】
地図情報記憶部22は、ハードディスク等の記憶装置によって構成され、この記憶装置には地図情報が記憶されている。地図情報には、交差点の位置(緯度、経度)、交差点における優先道路と非優先道路の関係を示す道路情報等が含まれる。
【0026】
データ処理部30は、図示しないCPU、ROM、およびRAMを含み、CPUがROMに記録されたソフトウエアを読み出して実行することにより作動する。データ処理部30は、送信データ生成部32、情報保持部31、衝突危険判定部33の各機能ブロックを有している。
【0027】
情報保持部31は、RAM等の記憶媒体を備え、この記憶媒体には自車両の走行情報を記憶する自車両走行情報31aと他車両の走行情報を記憶する他車両走行情報31bがある。この自車両走行情報31aおよび他車両走行情報31bの詳細については後述する。
【0028】
送信データ生成部32は、情報保持部31の自車両走行情報31aに記憶された自車両の走行情報および他車両走行情報31bに記憶された他車両の走行情報を読み出して所定のデータフォーマットで送信データを生成し、定期的に送受信部10へ出力する。また、送信データ生成部32は、送信データに含まれる他車両の走行情報数を送信データのヘッダに格納して送信データを送信する。
【0029】
衝突危険判定部33は、地図情報記憶部22から読み出した地図情報、自車両走行情報32に記憶された自車両の走行情報および他車両走行情報31bに記憶された他車両の走行情報に基づいて衝突の危険性を判定し、衝突の危険性があると判定した場合、警報機40へ衝突危険信号を出力する。
【0030】
警報機40は、衝突危険判定部33から受け取った衝突危険信号に基づいて、音による警告を発し、あるいは警戒アナウンスを発して、運転者に対して注意を促す。
【0031】
次に、情報保持部31の自車両走行情報31aおよび他車両走行情報31bについて説明する。図3に、情報保持部31の自車両走行情報31aおよび他車両走行情報31bの一例を示す。
【0032】
自車両走行情報31aには、自車両の識別情報A、位置Pa、速度Va、位置更新時刻Ta、交差点での振る舞いを示す情報、交差点での走行/停止を示す情報、自車両を認識しているか否かを示す情報が記憶されるようになっている。
【0033】
自車両の識別情報Aは、車両を区別するための識別子であり、自車両に割り当てられたユニークな番号であり、例えば、車車間通信装置のシリアル番号や車体番号等が用いられる。なお、本実施形態における識別情報は、図2に示した車両の符号(A〜E)に対応している。
【0034】
位置Paは自車両の位置を示す情報で、GPS受信機21から入力される自車両の位置情報(緯度、経度)が記憶される。
【0035】
位置更新時刻Taは自車両の位置の算出時刻を示す情報で、GPS受信機21から入力される位置情報の算出時刻が記憶される。
【0036】
速度Vaは自車両の速度を示す情報で、車速センサ(図示せず)から入力される車速信号に応じた車速が記憶される。
【0037】
交差点での振る舞いを示す情報は、車両先方の交差点での振る舞いを示す情報を示す情報である。この交差点での振る舞いを示す情報には、ウィンカー(図示せず)からのウィンカー信号に基づいた車両先方の交差点での振る舞いを示す情報(直進、右折、左折等)が記憶される。
【0038】
交差点での走行/停止を示す情報は、車両先方の交差点において車両が走行するか停止するかを示す情報である。この交差点での走行/停止を示す情報には、車両先方の交差点までの距離が所定距離(例えば、20m)以上あり、かつ、衝突危険判定部33によって次の交差点での衝突可能性があると判定された場合、交差点での停止を示す情報が記憶される。また、車両先方の交差点までの距離が所定距離以上あり、かつ、衝突危険判定部33によって次の交差点での衝突可能性がないと判定された場合、交差点での走行を示す情報が記憶される。また、自車両が交差点から所定の距離未満(例えば、20m未満)に存在する場合は、車速センサから入力される車速信号に応じた車速が所定の車速未満(例えば、時速10km未満)か否かに基づいて車両先方の交差点での走行/停止を示す情報が記憶される。
【0039】
自車両を認識しているか否かを示す情報は、他車両が自車両を認識しているか否かを示す情報である。
【0040】
このように情報保持部31の自車両走行情報31aには、自車両の走行情報が記憶される。
【0041】
他車両走行情報31bには、送受信部10から入力される受信データに含まれる他車両の走行情報が記憶される。なお、受信データに複数の他車両の走行情報が含まれる場合、他車両走行情報31bには、複数の他車両の走行情報が記憶される。また、他車両走行情報31bには、自車両走行情報31aと同様に、車両の識別情報、位置、速度、位置更新時刻、交差点での振る舞いを示す情報、交差点での走行/停止を示す情報、自車両を認識しているか否かを示す情報が記憶される。
【0042】
上記した構成において、データ処理部30のCPUは、受信処理、送信処理および衝突危険判定処理等の各種処理を行う。
【0043】
以下、データ処理部30のCPUによる受信処理、送信処理、衝突危険判定処理について説明する。なお、データ処理部30のCPUの処理を、データ処理部30の処理として説明する。
【0044】
最初に、図4を参照して、受信処理について説明する。データ処理部30は、主電源(図示せず)がオンされると、図4に示す処理を開始する。
【0045】
まず、送受信部10から受信データが入力されたか否かに基づき、周辺車両からの受信データがあるか否かを判定する。具体的には、送受信部10から受信データが入力された場合、周辺車両からの受信データがあると判定し、送受信部10から受信データが入力されない場合、周辺車両からの受信データがないと判定する(S101)。
【0046】
ここで、周辺車両からの受信データがないと判定した場合(S101でNOと判定)、S101の判定を繰り返す。すなわち、周辺車両からの受信データの受信待ち状態となる。
【0047】
また、S101において、周辺車両からの受信データがあると判定した場合(S101でYESと判定)、この受信データに含まれる自車両走行情報を他車両走行情報として他車両走行情報31bに記憶する。なお、同一車両(車両識別情報が同じ)の走行情報が既に他車両走行情報31に記憶されている場合、受信データに含まれる走行情報によって他車両走行情報31を更新する(S102)。
【0048】
次に、受信データのヘッダに格納された他車両の走行情報の数に基づいて他車両走行情報があるか否かを判定する(S103)。
【0049】
ここで、受信データのヘッダに含まれる他車両の走行情報の数が0の場合、他車両走行情報はないと判定し(S103においてNOと判定)、S101の判定へ戻る。
【0050】
また、S103において、受信データに含まれる他車両の走行情報の数が1以上の場合、他車両走行情報があると判定し(S103においてYESと判定)、S104のステップへ進む。
【0051】
S104〜S108では、受信データに含まれる他車両の走行情報、すなわちこのデータを送信した車両の周辺車両の各走行情報を、他車両走行情報として他車両走行情報31bに順次記憶、更新する処理を行う。
【0052】
S104において、受信データに含まれる他車両の走行情報の数を変数Nに代入する。また、変数Mに0を代入する。なお、この変数Mは、受信データ中の他車両走行情報31bへの記憶、更新処理が完了した他車両の走行情報の数を表すものである。
【0053】
次に、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報が既に他車両走行情報31bに記憶されているか否かを判定し、他車両走行情報31bに記憶されている場合、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報の位置更新時刻と他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報の位置更新時刻を比較して、受信データにおける1番目の他車両の走行情報が他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報よりも新しいか否かを判定する。(S105)。
【0054】
ここで、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報が既に他車両走行情報31bに記憶されており、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報の位置更新時刻が他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報の位置更新時刻と同じ、あるいは、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報の位置更新時刻が他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報の位置更新時刻よりも古い場合(S105でNOと判定)、他車両走行情報31bを更新することなく、S107の処理へ進む。
【0055】
また、S105において、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報が既に他車両走行情報31bに記憶されていない場合、あるいは、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報が既に他車両走行情報31bに記憶されており、かつ、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報の位置更新時刻が他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報の位置更新時刻よりも新しい場合、受信データに含まれる1番目の他車両の走行情報の方が新しいと判定し(S105でYESと判定)、他車両走行情報31bを受信データにおける1番目の他車両の走行情報に記憶、更新する(S106)。
【0056】
なお、後述する送信処理において、データ処理部30は、自車両の走行情報を他車両の車車間通信装置1に定期的に送信するようになっている。データ処理部30は、受信データに含まれる走行情報を他車両走行情報31に記憶する際に、受信データに自車両の走行情報が含まれている場合、自車両を認識しているか否かを示す情報を「YES」として記憶し、受信データに自車両の走行情報が含まれていない場合、自車両を認識しているか否かを示す情報を「NO」として記憶する。
【0057】
次に、変数Mに1を加算して変数Mをインクリメントする(S107)。これにより、受信データ中の他車両走行情報31bへの記憶、更新処理が完了したことが示される。
【0058】
次に、変数Mと変数Nを比較して、変数Mが変数N以上であるか未満であるかを判定し(S108)、変数Mが変数N以上と判定(S108でYESと判定)されるまで、S105〜S108の処理を繰り返す。
【0059】
S105〜S108の処理を繰り返す場合、S105において、受信データにおけるM+1番目の他車両の走行情報の位置更新時刻と他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報の位置更新時刻を比較して、受信データにおけるM+1番目の他車両の走行情報が他車両走行情報31bに既に記憶されている同一車両の走行情報よりも新しいか否かを判定する。
【0060】
また、変数Mが変数N以上と判定された場合(S108でYESと判定)、受信データに含まれる全ての他車両の走行情報について上記処理が完了しているので、S101の処理に戻る。
【0061】
次に、図5を参照して、送信処理について説明する。データ処理部30は、主電源(図示せず)がオンされると、図4に示した処理と並行して図5に示す処理を定期的に行う。
【0062】
まず、自車両走行情報31a記憶された自車両の走行情報と他車両走行情報31bに記憶された他車両の走行情報を取得する(S201)。
【0063】
次に、取得した自車両走行情報と他車両走行情報を所定のデータフォーマットに変換して送信データを生成する(S202)。
【0064】
次に、生成した送信データを変調して送受信部10のアンテナ10aから無線送信し(S203)、本処理を終了する。
【0065】
次に、図6を参照して、衝突危険判定処理について説明する。図2において、自車両Aの車車間通信装置1における情報保持部31の他車両走行情報31bには、他車両Cに搭載された車車間通信装置1を介して他車両Cの走行情報とともに他車両B、E、Dの走行情報が記憶される。以下、車両Bを相手車両として、自車両Aに搭載された車車間通信装置1のデータ処理部30による衝突危険判定処理について説明する。
【0066】
データ処理部30は、主電源がオンされると、GPS受信機21から入力される位置情報が更新される毎に図6に示す処理を行う。
【0067】
まず、自車両Aが交差点付近に存在するか否かを判定する。具体的には、GPS受信機21から入力される自車両Aの位置情報および地図情報記憶部22の記憶媒体に記憶された地図情報に含まれる交差点の位置に基づき、自車両Aの先方の所定距離内(例えば、100m)に交差点が存在するか否かを判定することによって行う(S301)。
【0068】
ここで、自車両Aの先方の所定距離内に交差点が存在する場合、自車両Aが交差点付近に存在すると判定し(S301でYESと判定)、他車両走行情報31bの自車両を認識しているか否かを示す情報に基づいて、相手車両Bが自車両Aを認識しているか否かを判定する。具体的には、自車両を認識しているか否かを示す情報が「YES」となっている場合、相手車両Bが自車両Aを認識していると判定し、自車両を認識しているか否かを示す情報が「NO」となっている場合、相手車両Bが自車両Aを認識していないと判定する(S302)。
【0069】
S302において、相手車両Bが自車両Aを認識していると判定した場合(S302でYESと判定)、情報保持部31を参照して、自車両走行情報31aの自車両の位置と他車両走行情報31bに含まれる自車両の位置が所定距離(例えば、10m)以下であるか否かに基づき、相手車両Bが自車両Aの位置を正確に認識しているか否かを判定する(S303)。
【0070】
ここで、自車両走行情報31aの自車両の位置と他車両走行情報31bに含まれる自車両の位置が所定距離以下である場合、相手車両Bが自車両Aの位置を正確に認識していると判定し(S303でYESと判定)、交差点での衝突可能性があるか否かを判定する。具体的には、交差点を中心とした所定範囲(例えば、半径20m)内に自車両と相手車両Bが存在する場合、交差点での衝突可能性があると判定し、交差点を中心とした所定範囲内に自車両Aと相手車両Bの少なくとも一方が存在しない場合、交差点での衝突可能性はないものと判定する(S304)。
【0071】
S304において、交差点での衝突可能性があると判定した場合(S304でYESと判定)、地図情報記憶部22の記憶媒体に記憶された地図情報に含まれる交差点における優先道路と非優先道路の関係を示す情報に基づいて、自車両Aが非優先道路を走行中であるか否かを判定する(S305)。
【0072】
ここで、自車両Aが非優先道路を走行中であると判定した場合(S305でYESと判定)、衝突危険信号を警報機40に出力し、警報機40から次の交差点で停止する旨のアナウンスを行わせ(S307)、本処理を終了する。
【0073】
また、S301において、自車両Aの先方の所定距離内に交差点が存在しない場合には、自車両Aが交差点付近に存在しないと判定し(S301でNOと判定)、本処理を終了する。
【0074】
また、S302において、相手車両Bが自車両Aを認識していない場合(S302でNOと判定)、衝突危険信号を警報機40に出力し、警報機40から警報音を発令させ(S308)、本処理を終了する。
【0075】
また、S303において、自車両走行情報31aの自車両の位置と他車両走行情報31bに含まれる自車両の位置が所定距離以上の場合、相手車両Bが自車両Aの位置を正確に認識していないと判定し(S303でNOと判定)、衝突危険信号を警報機40に出力し、警報機40から警報音を発令させ(S308)、本処理を終了する。
【0076】
また、S304において、交差点での衝突可能性がないと判定した場合(S304でNOと判定)、そのまま本処理を終了する。
【0077】
また、S305において、自車両Aが優先道路を走行中であると判定した場合(S305でNOと判定)、情報保持部31の他車両走行情報31bの交差点での走行/停止を示す情報に基づいて、相手車両Bが交差点で停止するか否かを判定する。具体的には、他車両走行情報31bの交差点での走行/停止を示す情報が「停止」となっている場合、相手車両Bが交差点で停止すると判定し、他車両走行情報31bの交差点での走行/停止を示す情報が「走行」となっている場合、相手車両Bが交差点で停止しないと判定する(S306)。
【0078】
ここで、相手車両Bが交差点で停止すると判定した場合(S306でYESと判定)、本処理を終了する。
【0079】
また、S306において、相手車両Bが交差点で停止しないと判定した場合(S306でNOと判定)、衝突危険信号を警報機40に出力し、警報機40から警報音を発令させ(S308)、本処理を終了する。
【0080】
上記したように、他の車両に搭載された通信装置から送信される無線信号には、他の車両の走行情報および他の車両の周辺に位置する車両の走行情報が含まれるようになっており、データ処理部30は、送受信部10によって受信された無線信号に基づいて、他の車両および他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を取得するので、他の車両の周辺に位置する車両の車車間通信装置と直接車車間通信ができなくても、交差点において他の車両の走行情報を円滑に取得することができる。
【0081】
また、車車間通信装置1は、自車両および周辺車両の走行情報を含む信号をブロードキャストするだけでなく、他車両からブロードキャストされた信号に自車両の走行情報が含まれるか否かに基づいて、自車両が他車両に認識されているか否かを判定している。このように、自車両が他車両に認識されているか否かを判定することによって、ブロードキャストした信号が周辺に位置する車両の車車間通信装置によって受信されているかを判定することができるため、信頼性の高い車車間通信を実現することができる。
【0082】
例えば、自車両からブロードキャストした走行情報を他車両が受信していない場合、この他車両は自車両が存在しないものと認識して交差点に飛び出してしまうといった状況が考えられるが、自車両からブロードキャストした走行情報を他車両が受信していない場合には、警報機40から警報音を発令させて自車両が他車両に認識されていないことを運転者に報知することができる。
【0083】
また、車車間通信の通信方式として、UDP(User Datagram Protocol)のように、受信側に確認応答(ACK)の手順を経ずにデータ送信する方式と、TCP/IPのように、確認応答の手順を有する方式が考えられる。本実施形態における車車間通信1は、確認応答の手順を経ないブロードキャストによるデータ送信を行うようになっているが、他車両からブロードキャストされた信号に自車両の走行情報が含まれるか否かに基づいて、自車両が他車両に認識されているか否かを判定することによって確認応答を行っている。このため、確認応答の手順を有する通信方式と比較してトラフィックを低減することができる。
【0084】
なお、上記実施形態において、受信手段は送受信部10に相当し、走行情報取得手段および自車情報取得手段はデータ処理部30に相当し、自車両認識判定手段は図4のS302の処理に相当し、自車両位置認識判定手段は図4のS303の処理に相当する。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0086】
例えば、上記実施形態における識別情報には、車車間通信装置のシリアル番号が用いられた例を示したが、シリアル番号に限定されるものではなく、例えば、車体番号等を用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、ハードディスク等の記憶装置によって構成された地図情報記憶部22から地図情報を読み出す例を示したが、例えば、CD−ROMやDVD等の記憶媒体に記憶された地図情報から地図情報を読み出す構成としてもよく、また、通信回線を介して地図情報を有するセンターから地図データをダウンロードする構成としてもよい。
【0088】
上記実施形態において、図3に示した情報保持部31の自車両走行情報31aおよび他車両走行情報31bは一例であり、図3に示した各情報に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態に係る車車間通信装置の構成を示す図である。
【図2】車車間通信装置が搭載された車両A〜Eが交差点に進入する様子を示す図である。
【図3】情報保持部の自車両走行情報および他車両走行情報の一例を示す図表である。
【図4】データ処理部30による受信処理を示すフローチャートである。
【図5】データ処理部30による送信処理を示すフローチャートである。
【図6】データ処理部30による衝突危険判定処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1…車車間通信装置、10…送受信部、10a…アンテナ、20…位置情報取得部、
21…GPS受信部、22…地図情報記憶部、30…データ処理部、
31…情報保持部、31a…他車両走行情報、31b…自車両走行情報、
32…送信データ生成部、33…衝突危険判定部、40…警報機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に搭載され、他の車両に搭載された通信装置と無線通信を行う車車間通信装置であって、
前記他の車両に搭載された通信装置から送信される無線信号には、前記他の車両の走行情報および前記他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報が含まれるようになっており、
前記他の車両に搭載された通信装置から送信される無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記無線信号に基づいて、前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を取得する他車両走行情報取得手段と、を備えたことを特徴とする車車間通信装置。
【請求項2】
前記自車両の走行情報を取得する自車情報取得手段と、
前記自車情報取得手段が取得した前記自車両の走行情報とともに前記他車両走行情報取得手段が取得した前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を記憶する走行情報記憶手段と、
前記走行情報記憶手段に記憶された前記自車両の走行情報と前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報を送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車車間通信装置。
【請求項3】
前記走行情報記憶手段に記憶される前記車両の走行情報には、車両の識別情報、車両の位置情報、車両の速度情報、車両の位置情報の更新時刻、交差点における振る舞いを示す情報、交差点での走行、停止を示す情報、自車両を認識しているか否かを示す情報の少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項2に記載の車車間通信装置。
【請求項4】
前記走行情報取得手段が取得した前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両の各走行情報に、前記送信手段が送信した前記自車両の走行情報が含まれるか否かに基づいて、前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両が前記自車両を認識しているか否かを判定する自車両認識判定手段を備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の車車間通信装置。
【請求項5】
前記送信手段が送信する前記自車両の走行情報には前記自車両の位置情報が含まれており、
前記走行情報取得手段が取得した前記他の車両の走行情報と前記他の車両の周辺に位置する車両の走行情報に、前記送信手段から送信した前記自車両の位置情報が含まれる場合、
前記送信手段が送信した前記自車両の位置と前記走行情報取得手段が取得した前記自車両の走行情報に含まれる前記自車両の位置が所定距離以下であるか否かに基づいて、前記他の車両および前記他の車両の周辺に位置する車両が前記自車両の位置を正確に認識しているか否かを判定する自車両位置認識判定手段を備えたことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の車車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−65667(P2006−65667A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248876(P2004−248876)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】