説明

車載内燃機関の制御装置

【課題】フューエルカットに伴うショックの発生を抑制すべくトルク制限処理を実行しているときに、内燃機関から車輪までの間に存在するギアの当接位置の変化に伴ってショックが発生してしまうことを抑制することのできる車載内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車載内燃機関の制御装置である電子制御装置10は、内燃機関20が発生するトルクを制限し、トルクを徐々に変更するトルク制限処理を、フューエルカットに伴って実行する。電子制御装置10は、トルク制限処理実行中に、内燃機関20から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関20側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前にトルク制限処理を通じて設定された単位時間当たりの変更量よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフューエルカットに伴うショックの発生を抑制すべく内燃機関が発生するトルクを制限するトルク制限処理を実行する車載内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車載内燃機関にあっては、機関回転速度が高い状態でスロットルバルブが全閉にされた場合など、トルクを発生させる必要がないときに燃料の噴射を停止するフューエルカットを実行することにより、燃料消費量の低減を図っている。尚、フューエルカットを実行することにより、機関回転速度が所定の回転速度まで低下したときには、燃料噴射を再開してエンジンストールの発生を抑制する。
【0003】
ところで、トルクを発生させる必要がなくなったときに、直ちにフューエルカットを実行して内燃機関が発生するトルクを「ゼロ」にした場合には、トルクが急激に低下することになる。その結果、フューエルカット実行前後のトルク段差に起因してショックが発生してしまうようになる。
【0004】
そこで、特許文献1に記載された制御装置にあっては、トルクを発生させる必要がなくなったときに、一定の期間の間、フューエルカットの実行を遅延させ、フューエルカットの実行に先立って内燃機関が発生するトルクを制限してトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行するようにしている。
【0005】
このようにフューエルカットの実行に先立って事前にトルクを低下させておくトルク制限処理を実行すれば、トルクが十分に低下した状態でフューエルカットが実行されるようになる。そのため、フューエルカットに伴ってトルクが「ゼロ」になる場合でもフューエルカット実行前後のトルク段差が小さなものとなり、トルク段差に起因するショックの発生が抑制されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10‐30477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両に搭載される内燃機関は、変速機などを介して車両の駆動輪と連結されている。そのため、例えば、車両が下り坂を走行しているような状況にあっては、車両を加速させる方向に重力が作用し、車輪側から内燃機関側に向かって機関回転速度を増大させる方向のトルクが入力されるようになる。
【0008】
フューエルカットの実行に先立って内燃機関が発生するトルクを徐々に低下させているときに、車輪側から機関回転速度を増大させる方向のトルクが入力されると、フューエルカットを実行する前に、内燃機関側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関側に向かって入力されるトルクの方が大きくなることがある。
【0009】
このように内燃機関側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関側に向かって入力されるトルクの方が大きくなると、内燃機関側から出力されるトルクによって車輪を駆動する駆動状態から車輪側から入力されるトルクによって内燃機関の出力軸が駆動される被駆動状態へと移行するようになる。
【0010】
変速機などを構成するギアにはバックラッシが存在するため、上記のように駆動状態から被駆動状態へと移行した場合には、噛み合っているギア同士の当接位置が切り替わるようになる。具体的には、駆動状態にあっては内燃機関側のギアの回転方向前方側の歯面と車輪側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接していたのに対して、被駆動状態にあっては車輪側のギアの回転方向前方側の歯面と内燃機関側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接するようになる。
【0011】
このように、ギアの当接位置が変化するときに上記のようにトルクを徐々に低下させるトルク制限処理が実行されており、内燃機関側のトルクが低下され続けている場合には、ギアの当接位置が変化するときに互いのギアに作用しているトルクの差が大きくなるため、ギア同士が勢いよく衝突し、ショックが発生するおそれがある。
【0012】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的はフューエルカットに伴うショックの発生を抑制すべくトルク制限処理を実行しているときに、内燃機関から車輪までの間に存在するギアの当接位置の変化に伴ってショックが発生してしまうことを抑制することのできる車載内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関が発生するトルクを制限し、トルクを徐々に変更するトルク制限処理を、フューエルカットに伴って実行する車載内燃機関の制御装置において、前記トルク制限処理の実行中に、内燃機関から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定された単位時間当たりの変更量よりも小さくすることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、内燃機関側から出力されるトルクによって車輪を駆動する駆動状態から車輪側から入力されるトルクによって内燃機関の出力軸が駆動される被駆動状態へと移行してギア同士の当接位置が切り替わるタイミングが予測される。そして、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量が、トルク制限処理を通じて設定されるそれ以前の変更量よりも小さくされる。
【0015】
そのため、トルク制限処理を通じて設定される変更量に基づいてトルクが変更され続ける場合と比較して、ギア同士の当接位置が切り替わるときの各ギアのトルク差が小さくなる。
【0016】
したがって、ギア同士の当接位置が切り替わる際のショックが抑制されるようになる。
すなわち、上記請求項1に記載の発明によれば、フューエルカットに伴うショックの発生を抑制すべくトルク制限処理を実行しているときに、内燃機関から車輪までの間に存在するギアの当接位置の変化に伴ってショックが発生してしまうことを抑制することができるようになる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記トルク制限処理として、フューエルカットの実行に先立って内燃機関側から出力されるトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行する請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置であって、同トルク制限処理の実行中に、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関側から出力されるトルクよりも大きくなるタイミングを前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定される単位時間当たりの変更量よりも小さくすることをその要旨とする。
【0018】
請求項2に記載されているようにフューエルカットの実行に先立って内燃機関側から出力されるトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行する場合には、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関側から出力されるトルクよりも大きくなったときに、内燃機関が出力するトルクによって車輪を駆動する駆動状態から車輪側から入力されるトルクによって内燃機関の出力軸が駆動される被駆動状態に切り替わり、これに伴ってギア同士の当接位置が切り替わる。
【0019】
そのため、フューエルカットの実行に先立って内燃機関側から出力されるトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行する場合には、請求項2に記載されているように、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関側から出力されるトルクよりも大きくなるタイミングを予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を小さくするようにすればよい。
【0020】
こうした構成を採用すれば、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関側から出力されるトルクよりも大きくなり、ギア同士の当接位置が切り替わるときの各ギアのトルク差を、内燃機関側から出力されるトルクの変更量を小さくせずにトルク制限処理を通じて設定される変更量に応じて低下させ続ける場合よりも小さくすることができる。
【0021】
要するに、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載されているように、ギア同士の当接位置が切り替わる際のショックを抑制する構成を具現化することができる。
請求項3に記載の発明は、前記トルク制限処理として、フューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開するときに、内燃機関側から出力されるトルクが制限される態様で燃料の噴射を再開し、徐々にその制限の度合いを小さくすることによって内燃機関側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行する請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置であって、同トルク制限処理の実行中に、車輪側から入力されるトルクが減少して内燃機関側から出力されるトルクよりも小さくなるタイミングを前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定される単位時間当たりの変更量よりも小さくすることをその要旨とする。
【0022】
フューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開する場合には、燃料の噴射が再開されるとともに内燃機関からトルクが出力されるようになるため、燃料噴射の再開に伴ってその前後のトルク段差に起因してショックが発生することがある。
【0023】
そこで、こうした燃料噴射の再開に伴うショックの発生を抑制する方法として、請求項3に記載されているようにフューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開するときに、内燃機関側から出力されるトルクが制限される態様で燃料の噴射を再開し、徐々にその制限の度合いを小さくすることによって内燃機関側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行することもできる。
【0024】
尚、このようにフューエルカットからの復帰の際に、内燃機関側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行する場合には、例えば、惰性走行していた車両が上り坂に差し掛かるなどして車輪側から入力されるトルクが低下した場合に、内燃機関側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関側に向かって入力されるトルクの方が小さくなることがある。
【0025】
このように内燃機関側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関側に向かって入力されるトルクの方が小さくなると、車輪側から入力されるトルクによって内燃機関の出力軸が駆動される被駆動状態から内燃機関側から出力されるトルクによって車輪を駆動する駆動状態へと移行するようになる。
【0026】
そして、このように被駆動状態から駆動状態へと移行した場合には、駆動状態から被駆動状態へと移行する場合と同様に、噛み合っているギア同士の当接位置が切り替わるようになる。具体的には、被駆動状態にあっては車輪側のギアの回転方向前方側の歯面と内燃機関側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接していたのに対して、駆動状態にあっては内燃機関側のギアの回転方向前方側の歯面と車輪側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接するようになる。
【0027】
このように、ギアの当接位置が変化するときに上記のようにトルクを徐々に増大させるトルク制限処理が実行されており、内燃機関側のトルクが増大され続けている場合には、ギアの当接位置が変化するときに互いのギアに作用しているトルクの差が大きくなるため、ギア同士が勢いよく衝突し、ショックが発生するおそれがある。
【0028】
このようなショックの発生を抑制するためには、請求項3に記載されているように、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして、車輪側から入力されるトルクが低下して内燃機関側から出力されるトルクよりも小さくなるタイミングを予測し、予測されるタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を小さくするようにすればよい。
【0029】
こうした構成を採用すれば、車輪側から入力されるトルクが低下して内燃機関側から出力されるトルクよりも小さくなり、ギア同士の当接位置が切り替わるときのトルク差を、内燃機関側から出力されるトルクの変更量を小さくせずにトルク制限処理を通じて設定される変更量に応じて増大させ続ける場合よりも小さくすることができる。
【0030】
要するに、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載されているように、ギア同士の当接位置が切り替わる際のショックを抑制する構成を具現化することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測されたタイミングに基づいてその予測されたタイミングを含んでその前後に亘る移行期間を設定し、同移行期間の間、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同移行期間に至る前に前記トルク制限処理を通じて設定されていた単位時間当たりの変更量よりも小さくすることをその要旨とする。
【0031】
内燃機関の特性や、変速機の特性、またこれらの個体差などに起因して、予測されるタイミングと、実際にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとの間にはずれが生じる場合がある。また、走行中に路面の勾配が変化して車輪側から入力されるトルクが変化することもあり、それによってずれが生じることもある。
【0032】
そのため、請求項4に記載されているように予測されたタイミングに基づいて予測されたタイミングを含んでその前後に亘る移行期間を設定し、同移行期間の間、トルクの変更量を小さくする構成を採用することが望ましい。
【0033】
こうした構成を採用すれば、予測されるタイミングの前後に亘ってトルクの変更量が小さくされるようになるため、予測されるタイミングと実際にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとの間にずれが生じた場合であっても、効果的にギア同士の当接位置が切り替わる際のショックを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施形態に係る車載内燃機関の制御装置である電子制御装置と、その制御対象である内燃機関及び自動変速機の関係を示す模式図。
【図2】同実施形態に係るフラットトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート。
【図3】フラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関発生トルクの変化との関係を示すタイムチャート。
【図4】同実施形態の変更例としてのフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関発生トルクの変化との関係を示すタイムチャート。
【図5】その他の変更例に係るフラットトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート。
【図6】同変更例に係るフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関発生トルクの変化との関係を示すタイムチャート。
【図7】更なる変更例としてのフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関発生トルクの変化との関係を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明に係る車載内燃機関の制御装置を、車両に搭載される内燃機関20並びに自動変速機30を統括的に制御する電子制御装置10として具体化した一実施形態について、図1〜3を参照して説明する。図1は本実施形態に係る電子制御装置10とその制御対象である内燃機関20並びに自動変速機30の関係を示す模式図である。
【0036】
内燃機関20の出力軸であるクランクシャフトは、トルクコンバータ40を介して自動変速機30の入力軸に接続されている。そして、自動変速機30の出力軸は図示しないディファレンシャルを介して車両の駆動輪に接続されている。
【0037】
尚、自動変速機30は入力軸の回転方向に対する出力軸の回転方向を切り替える前進後退切替機構と、複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより変速段を変更する遊星歯車式の変速段切替機構とを備えている。変速段切替機構は係合要素として4組の多板式ブレーキ及び4組の多板式クラッチを備えるとともに、4個のワンウェイクラッチと、遊星歯車からなる3組のギアセットを備えて構成されており、各係合要素の断接状態を切り替えることにより、変速段を変更することができるようになっている。
【0038】
これにより、自動変速機30にあっては前進時に選択可能な変速段として、「1速」、「2速」、「3速」、「4速」、「5速」、「6速」の6つの変速段が設定されており、これら各変速段には、「1速」から「6速」まで順に変速比が小さくなるようにそれぞれに異なる変速比が割り振られている。
【0039】
そのため、内燃機関20の駆動力は、トルクコンバータ40を介して自動変速機30に入力され、自動変速機30の前進後退切替機構及び変速段切替機構を通じてその回転方向と回転速度が変更されてから図示しないディファレンシャルを介して駆動輪に伝達される。
【0040】
図1に示されるように、電子制御装置10は、内燃機関20を制御する機関制御部11と、自動変速機30を制御する変速機制御部12とを備えている。機関制御部11並びに変速機制御部12は各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えて構成されている。また、機関制御部11と変速機制御部12は互いに電気的に接続されている。
【0041】
電子制御装置10には、下記のようなセンサが接続されている。
エアフロメータ13は吸気通路を通じて内燃機関20に導入される空気の量である吸入空気量GAを検出する。クランクポジションセンサ14はクランクシャフトの回転速度である機関回転速度NEを検出する。車速センサ15は車輪の回転速度を検出し、電子制御装置10はそれに基づいて車速SPDを算出する。水温センサ16は機関冷却水の温度である機関冷却水温THWを検出する。勾配センサ17は車両の傾きを検知し、それに基づいて路面の勾配を検出する。アクセルポジションセンサ18は運転者によるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル操作量ACCPを検出する。ブレーキスイッチ19は運転者によるブレーキペダルの踏み込みを検知する。
【0042】
電子制御装置10は、これら各種センサの検出信号を読み込み、機関制御部11及び変速機制御部12において各種演算を行い、内燃機関20を制御する機関制御を実行するとともに、自動変速機30の変速段を変更する変速制御を実行する。
【0043】
例えば、機関制御部11は、アクセル操作量ACCPに基づいて要求トルクを算出し、スロットルバルブの開度を変更することによって吸入空気量GAを調量するとともに、エアフロメータ13によって検出された吸入空気量GAに基づいて内燃機関20における燃料噴射量や点火時期を制御することにより、要求トルクに見合ったトルクを発生させる。
【0044】
一方、変速機制御部12は、自動変速機30に変速信号を出力して自動変速機30における変速段を切り替える。具体的には、車速SPDとアクセル操作量ACCPとに基づいて変速段を選択し、選択された変速段に対応する変速信号を自動変速機30に出力する。
【0045】
また、機関制御部11は、機関回転速度NEがある程度高くなっている状態でスロットルバルブが全閉にされた場合など、トルクを発生させる必要がないときに燃料の噴射を停止するフューエルカットを実行する。尚、機関制御部11は、フューエルカットを実行することにより、機関回転速度NEが所定の回転速度まで低下したときには、燃料噴射を再開してエンジンストールの発生を抑制する。
【0046】
ところで、トルクを発生させる必要がなくなったときに、直ちにフューエルカットを実行して内燃機関20が発生するトルクを「ゼロ」にした場合には、トルクが急激に低下することになる。その結果、フューエルカット実行前後のトルク段差に起因してショックが発生してしまうようになる。
【0047】
そこで、本実施形態の電子制御装置10にあっては、トルクを発生させる必要がなくなったときに、一定の期間の間、フューエルカットの実行を遅延させ、フューエルカットの実行に先立って内燃機関20が発生するトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行するようにしている。
【0048】
尚、本実施形態の電子制御装置10にあっては、点火時期を次第に遅角させることにより、内燃機関20が発生するトルクを制限し、内燃機関20から出力されるトルクを徐々に低下させるようにしている。
【0049】
このようにフューエルカットの実行に先立って事前にトルクを低下させておくトルク制限処理を実行すれば、トルクが十分に低下した状態でフューエルカットが実行されるようになる。そのため、フューエルカットに伴ってトルクが「ゼロ」になる場合でもフューエルカット実行前後のトルク段差が小さなものとなり、トルク段差に起因するショックの発生が抑制されるようになる。
【0050】
ところで、車両が下り坂を走行しているような状況にあっては、重力が車両を加速させる方向に作用するようになる。そのため、車両が下り坂を走行しているときには、車両の慣性力と、重力の作用に起因して、機関回転速度NEを増大させる方向のトルクが車輪側から内燃機関20側に向かって入力されるようになる。
【0051】
フューエルカットの実行に先立って内燃機関20が発生するトルクを徐々に低下させているときに、車輪側から機関回転速度NEを増大させる方向のトルクが入力されると、フューエルカットを実行する前に、内燃機関20側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関20側に向かって入力されるトルクの方が大きくなることがある。
【0052】
このように内燃機関20側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関20側に向かって入力されるトルクの方が大きくなると、内燃機関20側から出力されるトルクによって車輪を駆動する駆動状態から車輪側から入力されるトルクによって内燃機関20のクランクシャフトが駆動される被駆動状態へと移行するようになる。
【0053】
自動変速機30やディファレンシャルなどを構成するギアにはバックラッシが存在するため、上記のように駆動状態から被駆動状態へと移行した場合には、噛み合っているギア同士の当接位置が切り替わるようになる。
【0054】
具体的には、駆動状態にあっては、噛み合っているギアのうち、内燃機関20側のギアの回転方向前方側の歯面と車輪側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接しているが、被駆動状態に移行すると、車輪側のギアの回転方向前方側の歯面と内燃機関20側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接するようになる。
【0055】
このように、ギアの当接位置が変化するときに上記のようにトルクを徐々に低下させるトルク制限処理が実行されており、内燃機関20側のトルクが低下され続けている場合には、ギアの当接位置が変化するときに互いのギアに作用しているトルクの差が大きくなる。
【0056】
すなわち、重力の作用によって増大してきた車輪側のトルクが、内燃機関20側のトルクよりも大きくなることにより、駆動状態から被駆動状態へと切り替わるときに、内燃機関20側のトルクが低下し続けている場合には、各ギアに作用するトルクの変化の方向が異なっていることになる。そのため、この場合には、駆動状態から被駆動状態へと切り替わり、ギアの当接位置が切り替わったときに互いのギアに作用しているトルクの差が大きくなってしまい、ギア同士が勢いよく衝突してショックが発生してしまうおそれがある。
【0057】
そこで、本実施形態の電子制御装置10にあっては、トルク制限処理の実行中に駆動状態から被駆動状態へと切り替わるタイミングを予測し、そのときに内燃機関20のトルクの変更量を小さくしてトルクの変化を略フラットな状態にするフラットトルク制御ルーチンを実行するようにしている。
【0058】
以下、図2を参照してこのフラットトルク制御ルーチンについて説明する。尚、図2はフラットトルク制御ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャートである。このフラットトルク制御ルーチンは、電子制御装置10によって機関運転中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0059】
電子制御装置10は、このフラットトルク制御ルーチンを開始すると、図2に示されるように、まずステップS100において、フューエルカットへの移行状態であるか否かを判定する。すなわち、ここではフューエルカットを実行するためにトルク制限処理が実行され、徐々に内燃機関20のトルクが低下させられている状態であるか否かを判定する。
【0060】
ステップS100において、フューエルカットへの移行状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)、すなわちトルク制限処理が実行されていない場合には、電子制御装置10は何もせずにそのままこのルーチンを一旦終了する。
【0061】
一方、ステップS100において、フューエルカットへの移行状態である旨の判定がなされた場合(ステップS100:YES)、すなわちトルク制限処理が実行されている場合には、ステップS110へと進む。
【0062】
そして、電子制御装置10は駆動状態から被駆動状態へと移行するタイミングを予測する。
上述したように、トルク制限処理を実行しているときに、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関20側から出力されるトルクよりも大きくなったときには、駆動状態から被駆動状態に切り替わり、内燃機関20から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わる。そのため、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関20側から出力されるトルクよりも大きくなるタイミングを予測すれば、駆動状態から被駆動状態へと移行するタイミング、すなわちギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測することができる。
【0063】
そこで、ここでは、現在の点火時期とトルク制限処理を通じて変更される点火時期の単位時間当たりの変更量、吸入空気量GA、並びに機関回転速度NE等に基づいて内燃機関20の発生するトルクと今後のそのトルクの変化を推定する。
【0064】
また、これと併せて、車速SPDと自動変速機30の選択している変速段の変速比とに基づいて自動変速機30の入力軸の回転速度を算出するとともに、車両の慣性力、路面の勾配に基づいて今後の車速SPDの変化を推定し、車輪側から入力されるトルクの今後の変化を推定する。
【0065】
そして、電子制御装置10は、予測された内燃機関20側から出力されるトルクと、予測された車輪側から入力されるトルクとに基づいて、これらのトルクの大小関係が変化するタイミングを予測し、駆動状態から被駆動状態へと移行するタイミング、すなわちギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測する。
【0066】
尚、駆動状態から被駆動状態へと移行するタイミングをより正確に推定するためには、内燃機関20の駆動力を利用して駆動される補機の負荷や、機関冷却水温THWなども参照して上記のタイミングを予測することが望ましい。
【0067】
機関冷却水温THWが低いときには、内燃機関20の各部を潤滑する潤滑油の温度も低くなっており、潤滑油の粘性が高くなっていることが推定される。潤滑油の粘性が高いときには、内燃機関20を駆動する際の抵抗が大きくなり、潤滑油の粘性が低いときよりも内燃機関20側から出力されるトルクが低くなる。
【0068】
また、内燃機関20の駆動力を利用して作動する補機の負荷が大きいときには、内燃機関20が発生するトルクのうち、補機の駆動のために消費されるトルクの割合が増大するため、補機の負荷が小さいときよりも内燃機関20側から出力されるトルクが低くなる。
【0069】
したがって、内燃機関20側から出力されるトルクと車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化することによってギア同士の当接位置が切り替わるタイミングは、潤滑油の温度や、補機の負荷によっても変化する。
【0070】
そこで、本実施形態にあっては、潤滑油の温度と高い相関を有する機関冷却水温THWと、補機の負荷とに基づいて内燃機関20の発生するトルクの予測値を補正することにより、予測されたギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを、機関冷却水温THWと、補機の負荷とに基づいて補正するようにしている。具体的には、機関冷却水温THWが低いときほど、また補機の負荷が大きいときほど、内燃機関20の発生するトルクが低くなるように補正を施す。
【0071】
上記のようにして駆動状態から被駆動状態へと移行するタイミングを予測すると、ステップS120へと進む。
そして、電子制御装置10は、予測されたタイミングに基づいて移行期間を設定する。
【0072】
予測したタイミングと、実際にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとの間には、内燃機関20の特性や、自動変速機30の特性、またこれらの個体差等に起因してずれが生じる場合がある。また、走行中に路面の勾配が変化して車輪側から入力されるトルクが変化することもあり、それによってずれが生じることもある。
【0073】
そのため、ここでは、内燃機関20や自動変速機30の特性及び個体差に起因して発生するタイミングのずれや、そのタイミングに至るまでの間の路面の勾配の変化などによって生じるタイミングのずれを考慮し、予測されたタイミングを含むとともにその前後に亘って広がる移行期間を設定する。
【0074】
例えば、内燃機関20や自動変速機30の特性及び個体差に起因して発生するタイミングのずれを考慮するとともに、路面の勾配がある程度変化したとしても実際にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングが移行期間内に収まるように実験等の結果を通じて設定したマージンを予測されたタイミングの前後に追加する。こうして予測されたタイミングの前後にマージンを追加することによって、予測されたタイミングを中心にして前後に広がる移行期間を設定する。
【0075】
こうして移行期間を設定すると、ステップS130へと進み、電子制御装置10は、移行期間内であるか否かを判定する。
ステップS130において、移行期間内ではない旨の判定がなされた場合(ステップS130:NO)には、電子制御装置10は何もせずにそのままトルク制限処理を継続し、このルーチンを一旦終了する。
【0076】
一方、ステップS130において、移行期間内である旨の判定がなされた場合(ステップS130:YES)には、ステップS140へと進み、トルクの変更量を小さくする。
具体的には、内燃機関20が出力するトルクの単位時間当たりの変更量を、移行期間に至る直前までトルク制限処理を通じて設定されていた単位時間当たりのトルクの変更量よりも小さなものにする。
【0077】
例えば、トルク制限処理を通じて単位時間当たりに「A」だけ低下するような変更量でトルクを低下させていた場合には、移行期間内にあるときには、単位時間当たりに「A/3」だけ低下するような変更量でトルクを低下させるようにする。
【0078】
このようにトルクの変更量を小さくすると、電子制御装置10はこのルーチンを一旦終了させる。
以下、このようなフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の作用を、図3を参照して説明する。尚、図3はフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関20の発生するトルクの変化との関係を示すタイムチャートである。
【0079】
図3における左側(図3における時刻t11以前)に示されるように、フューエルカットを実行する条件が整い、フューエルカットへの移行状態になっている場合、すなわちトルク制限処理が実行されているときには、図3の下段に示されるようにトルク制限処理を通じて点火時期が遅角側に向かって変更される。これにより、図3の上段に示されるように、内燃機関20が発生するトルクが徐々に小さくなっていく。
【0080】
電子制御装置10は、このとき車輪側から入力されるトルクが内燃機関側から出力するトルクよりも大きくなるタイミングを予測し、予測されたタイミング(図3における時刻t12)に基づいて移行期間(図3における時刻t11〜t13)を設定する。
【0081】
そして、電子制御装置10は移行期間の間、内燃機関20が発生するトルクの変更量を、移行期間に至る前にトルク制限処理を通じて設定されていたトルクの変更量よりも小さくするように、点火時期を調整する。
【0082】
ここでは、図3の下段に示されるように移行期間の間は、点火時期が進角側に向かって変更されるようになる。その結果、図3の上段に示されるように、移行期間の間は、内燃機関20の発生トルクの変更量が小さくなり、トルクの変化が略フラットな状態になる。
【0083】
尚、点火時期を進角させているにも拘わらず、トルクが低下しているのは、フューエルカットへの移行状態にあってはスロットルバルブが閉弁されており、吸気通路内に残存した空気が燃焼に供されることとなるため、燃焼に供される空気の量が次第に低下していくためである。すなわち、このときには、燃焼に供される空気の量が次第に少なくなるため、点火時期を進角させたとしても、空気量の低減分を補うことができない場合には、図3に示されるように内燃機関20の発生するトルクが低下していくことになる。
【0084】
このように駆動状態から被駆動状態へと切り替わるタイミング(図3における時刻t12)に近づくとトルクの変更量が小さくされ、トルクの変化が略フラットな状態になる。
そして、このように内燃機関20側のトルクの変化が略フラットにされた状態の下で、車輪側のトルクが内燃機関20側のトルクよりも大きくなり、駆動状態から被駆動状態へと移行するようになる。
【0085】
そして、移行期間が経過した後(図3における時刻t13以降)は、再びトルク制限処理を通じて設定される変更量でトルクが低下され、時刻t14においてトルクが略「ゼロ」になるまで低下したときに、フューエルカットが実行される。
【0086】
このようにトルクを十分に低下させてからフューエルカットを実行することにより、フューエルカットの実行前後におけるトルク段差を極力小さくし、フューエルカットが実行されることによるショックの発生を抑制することができる。
【0087】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)駆動状態から被駆動状態へと移行してギア同士の当接位置が切り替わるタイミングがフラットトルク制御ルーチンを通じて予測される。そして、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関20側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量が、トルク制限処理を通じて設定されるそれ以前の変更量よりも小さくされる。
【0088】
そのため、トルク制限処理を通じて設定される変更量に基づいてトルクが変更され続ける場合と比較して、ギア同士の当接位置が切り替わるときの各ギアのトルク差が小さくなる。
【0089】
したがって、内燃機関20側から出力されるトルクと車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化することによってギア同士の当接位置が切り替わる際のショックが抑制されるようになる。
【0090】
すなわち、フューエルカットに伴うショックの発生を抑制すべくトルク制限処理を実行しているときに、内燃機関20から車輪までの間に存在するギアの当接位置の変化に伴ってショックが発生してしまうことを抑制することができるようになる。
【0091】
(2)尚、ギアの当接位置の変化に伴って生じるショックを抑制する上では、ギアの当接位置が切り替わるタイミングに拘わらず、トルク制限処理を通じて一律に極めて小さい変更量でトルクを変化させる構成を採用する構成を採用することもできる。しかし、こうした構成を採用した場合には、ギアの当接位置が切り替わるときのトルク差を小さくしてショックの発生を抑制することはできるようになるものの、トルク制限処理が完了するまでの期間が長くなってしまう。
【0092】
この点、上記実施形態のようにギアの当接位置が切り替わるタイミングを予測し、その予測されたタイミングにあわせてトルクの変更量を小さくする構成を採用すれば、上記のようにトルク制限処理が完了するまでの期間が不必要に長くなってしまうことを抑制することができる。すなわち、ショックの発生を抑制しつつトルク制限処理を早期に完了させることができるようになる。
【0093】
(3)予測されたタイミングに基づいて、予測されたタイミングを含んでその前後に亘る移行期間を設定し、同移行期間の間、トルクの変更量を小さくするようにしている。そのため、予測されるタイミングの前後に亘ってトルクの変更量が小さくされるようになり、予測されるタイミングと実際にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとの間にずれが生じた場合であっても、効果的にギア同士の当接位置が切り替わる際のショックを抑制することができる。
【0094】
(4)内燃機関20側から出力されるトルクは機関回転速度NEと、点火時期と、吸入空気量GAとに基づいて予測することができる。
一方で、車速SPDと自動変速機30において選択されている変速段の変速比とを参照すれば自動変速機30の入力軸の回転速度を算出することができ、更に車速SPDと路面勾配とを参照すれば車両に作用する慣性力、並びに重力の作用によるその後の車速SPDの変化を予測することができる。そのため、車輪側から入力されるトルクは、車速SPDと、自動変速機30において選択されている変速段の変速比と、路面勾配とに基づいて予測することができる。
【0095】
したがって、上記実施形態のように、これら各パラメータを参照する構成を採用すれば、内燃機関20側から出力されるトルクと、車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化するタイミングを予測することができ、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測することができる。
【0096】
(5)機関冷却水温THWが低いときには、内燃機関20の各部を潤滑する潤滑油の温度も低く、潤滑油の粘性が高くなっていることが推定される。潤滑油の粘性が高いときには、内燃機関20を駆動する際の抵抗が大きくなり、潤滑油の粘性が低いときよりも内燃機関20側から出力されるトルクが低くなる。
【0097】
また、内燃機関20の駆動力を利用して作動する補機の負荷が大きいときには、内燃機関20が発生するトルクのうち補機の駆動のために消費されるトルクの割合が増大するため、補機の負荷が小さいときよりも内燃機関20側から出力されるトルクが低くなる。そのため、内燃機関20側から出力されるトルクと車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化することによってギア同士の当接位置が切り替わるタイミングは、潤滑油の温度や、補機の負荷によっても変化する。
【0098】
これに対して、上記実施形態のように、潤滑油の温度と高い相関を有する機関冷却水温THWと、補機の負荷とに基づいて予測されるタイミングを補正する構成を採用すれば、内燃機関20の出力トルクへの潤滑油の粘性の変化や補機の負荷の変化による影響を考慮して的確にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測することができる。
【0099】
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態によって実施することもできる。
・上記実施形態にあっては、移行期間中に、トルク制限処理を通じて設定される変更量よりも小さな変更量で内燃機関20の発生するトルクを低下させる構成を例示したが、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングにおいてトルクの変更量が小さくされていれば、ギアの衝突によるショックを軽減することができる。
【0100】
そのため、移行期間中に小さな変更量でトルクを低下させる構成に替えて、図4に示されるように移行期間中に、トルク制限処理によって設定される単位時間当たりの変更量よりも小さな変更量でトルクを増大させる構成を採用することもできる。
【0101】
すなわち、トルク制限処理を通じて単位時間当たりに「A」だけ低下するような変更量でトルクを低下させていた場合には、移行期間内にあるときには、単位時間当たりに「A/3」だけ増大するような変更量でトルクを増大させるようにする、といった構成を採用することもできる。
【0102】
こうした構成を採用した場合にも、トルク制限処理を通じて設定される変更量に基づいてトルクが変更され続ける場合と比較して、ギア同士の当接位置が切り替わるときのトルク差が小さくなるため、ギアの衝突によるショックを軽減することができる。
【0103】
尚、ギア同士の当接位置が切り替わるときにも車輪側から入力されるトルクは増大し続ける。そのため、上記のように移行期間中に小さな変更量でトルクを増大させる構成を採用すれば、ギア同士の当接位置が切り替わるときの内燃機関20側のトルクの変化方向と車輪側から入力されるトルクの変化方向とが同じ方向に揃うことになり、ギア同士の当接位置が切り替わるときのトルク差をより一層小さくすることができるようになる。
【0104】
・尚、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングにおいてトルクの変更量が小さくされていれば、ギアの衝突によるショックを軽減することができるため、移行期間中に内燃機関20が発生するトルクを一定に維持する、すなわちトルクの変更量を「ゼロ」にする構成を採用することもできる。
【0105】
・上記実施形態にあっては、フューエルカットに移行する状態のときにフラットトルク制御ルーチンを実行し、フューエルカット実行前のトルク制限処理実行中にギア同士の当接位置が切り替わる際のショックを抑制する構成を例示したが、トルク制限処理をフューエルカットからの復帰時に実行することも考えられる。
【0106】
フューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開する場合には、燃料の噴射が再開されるとともに内燃機関20からトルクが出力されるようになるため、燃料噴射の再開に伴ってその前後のトルク段差に起因してショックが発生することがある。
【0107】
そこで、フューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開するときに、内燃機関20側から出力されるトルクが制限される態様で燃料の噴射を再開し、徐々にその制限の度合いを小さくすることによって内燃機関20側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行することもできる。
【0108】
例えば、点火時期を最も大きなトルクが得られる点火時期から大幅に遅角させた状態で燃料噴射を再開し、このようにしてトルクを制限した状態から点火時期を徐々に進角させることによってトルクを徐々に増大させるようにするトルク制限処理を実行することが考えられる。
【0109】
尚、このようにフューエルカットからの復帰の際に、内燃機関20側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行する場合には、トルク制限処理実行中に、内燃機関20側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関20側に向かって入力されるトルクの方が小さくなることがある。例えば、惰性走行していた車両が上り坂に差し掛かるなどして車輪側から入力されるトルクが低下した場合などである。
【0110】
このように内燃機関20側から車輪側に伝達されるトルクよりも車輪側から内燃機関20側に向かって入力されるトルクの方が小さくなると、車輪側から入力されるトルクによって内燃機関20のクランクシャフトが駆動される被駆動状態から内燃機関20側から出力されるトルクによって車輪を駆動する駆動状態へと移行するようになる。
【0111】
そして、このように被駆動状態から駆動状態へと移行した場合には、駆動状態から被駆動状態へと移行する場合と同様に、噛み合っているギア同士の当接位置が切り替わるようになる。具体的には、被駆動状態にあっては車輪側のギアの回転方向前方側の歯面と内燃機関20側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接していたのに対して、駆動状態にあっては内燃機関20側のギアの回転方向前方側の歯面と車輪側のギアの回転方向後方側の歯面とが当接するようになる。
【0112】
このように、ギアの当接位置が変化するときに上記のようにトルクを徐々に増大させるトルク制限処理が実行されており、内燃機関20側のトルクが増大され続けている場合には、ギアの当接位置が変化するときに互いのギアに作用しているトルクの差が大きくなるため、ギア同士が勢いよく衝突し、ショックが発生するおそれがある。
【0113】
これに対して、トルク制限処理の実行中に被駆動状態から駆動状態へと切り替わるタイミングを予測し、そのときに内燃機関20のトルクの変更量を小さくしてトルクの変化を略フラットな状態にするフラットトルク制御ルーチンを実行する構成を採用することもできる。
【0114】
以下、図5を参照して、このようにフューエルカットからの復帰時にトルク制限処理を実行するものに本願発明を適用した場合のフラットトルク制御ルーチンについて説明する。尚、図5はこの場合のフラットトルク制御ルーチンにかかる一連の処理の流れを示すフローチャートである。このフラットトルク制御ルーチンは、上記実施形態の場合と同様に、電子制御装置10によって機関運転中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0115】
電子制御装置10は、このフラットトルク制御ルーチンを開始すると、図5に示されるように、まずステップS200において、フューエルカットから通常の燃料噴射再開への移行状態であるか否かを判定する。すなわち、ここではフューエルカットから復帰するためにトルク制限処理が実行され、徐々に内燃機関20のトルクが増大されている状態であるか否かを判定する。
【0116】
ステップS200において、フューエルカットから通常の燃料噴射再開への移行状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS200:NO)、すなわちトルク制限処理が実行されていない場合には、電子制御装置10は何もせずにそのままこのルーチンを一旦終了する。
【0117】
一方、ステップS200において、フューエルカットから通常の燃料噴射再開への移行状態である旨の判定がなされた場合(ステップS200:YES)、すなわちトルク制限処理が実行されている場合には、ステップS210へと進む。
【0118】
そして、電子制御装置10は被駆動状態から駆動状態へと移行するタイミングを予測する。
上述したように、トルク制限処理を実行しているときに、車輪側から入力されるトルクが低下して内燃機関20側から出力されるトルクよりも小さくなったときには、駆動状態から駆動状態に切り替わり、内燃機関20から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わる。そのため、車輪側から入力されるトルクが低下して内燃機関20側から出力されるトルクよりも小さくなるタイミングを予測すれば、被駆動状態から駆動状態へと移行するタイミング、すなわちギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測することができる。
【0119】
そこで、ここでは、上記実施形態におけるステップS110と同様に現在の点火時期とトルク制限処理を通じて変更される点火時期の単位時間当たりの変更量、吸入空気量GA、並びに機関回転速度NE等に基づいて内燃機関20の発生するトルクと今後のそのトルクの変化を推定する。そして、これと併せて、車速SPDと自動変速機30の選択している変速段の変速比とに基づいて自動変速機30の入力軸の回転速度を算出するとともに、車両の慣性力、路面の勾配に基づいて今後の車速SPDの変化を推定し、車輪側から入力されるトルクの今後の変化を推定する。
【0120】
そして、電子制御装置10は、予測された内燃機関20側から出力されるトルクと、予測された車輪側から入力されるトルクとに基づいて、これらのトルクの大小関係が変化するタイミングを予測し、被駆動状態から駆動状態へと移行するタイミング、すなわちギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測する。
【0121】
尚、被駆動状態から駆動状態へと移行するタイミングをより正確に推定するためには、上記実施形態と同様に、内燃機関20の駆動力を利用して駆動される補機の負荷や、機関冷却水温THWなども参照して上記のタイミングを予測することが望ましい。
【0122】
上記のようにして被駆動状態から駆動状態へと移行するタイミングを予測すると、ステップS220へと進む。
そして、電子制御装置10は、予測されたタイミングに基づいて上記実施形態におけるステップS120と同様に移行期間を設定する。
【0123】
こうして移行期間を設定すると、ステップS230へと進み、電子制御装置10は、移行期間内であるか否かを判定する。
ステップS230において、移行期間内ではない旨の判定がなされた場合(ステップS230:NO)には、電子制御装置10は何もせずにそのまま、トルク制限処理を継続し、このルーチンを一旦終了する。
【0124】
一方、ステップS230において、移行期間内である旨の判定がなされた場合(ステップS230:YES)には、ステップS240へと進み、トルクの変更量を小さくする。
具体的には、内燃機関20が出力するトルクの単位時間当たりの変更量を、移行期間に至る直前までトルク制限処理を通じて設定されていた単位時間当たりのトルクの変更量よりも小さなものにする。
【0125】
例えば、トルク制限処理を通じて単位時間当たりに「A」だけ増大するような変更量でトルクを増大させていた場合には、移行期間内にあるときには、単位時間当たりに「A/3」だけ増大するような変更量でトルクを増大させるようにする。
【0126】
このようにトルクの変更量を小さくすると、電子制御装置10はこのルーチンを一旦終了させる。
図6に示されるように、時刻t21においてフューエルカットの実行条件が非成立となり、フューエルカットから通常の燃料噴射再開への移行状態になると、トルク制限処理が実行され、図6の下段に示されるように点火時期が遅角側に設定された状態で燃料噴射が再開される。そして、その後(時刻t21以降)、トルク制限処理を通じて点火時期が進角側に向かって徐々に変更される。これにより、図6の上段に示されるように、内燃機関20が発生するトルクが徐々に大きくなっていく。尚、図6は、図5を参照して説明したフラットトルク制御ルーチンを実行した場合の点火時期の変化と、内燃機関20の発生するトルクの変化との関係を示すタイムチャートである。
【0127】
電子制御装置10は、このとき車輪側から入力されるトルクが内燃機関側から出力するトルクよりも小さくなるタイミングを予測し、予測されたタイミング(図6における時刻t23)に基づいて移行期間(図6における時刻t22〜t24)を設定する。
【0128】
そして、電子制御装置10は移行期間の間、内燃機関20が発生するトルクの変更量を、移行期間に至る前にトルク制限処理を通じて設定されていたトルクの変更量よりも小さくするように、点火時期を調整する。
【0129】
ここでは、図6の下段に示されるように移行期間の間は、点火時期がトルク制限処理を通じて設定されていた変更量よりも小さな変更量で進角側に向かって変更されるようになる。その結果、図6の上段に示されるように、移行期間の間は、内燃機関20の発生トルクの変更量が小さくなり、トルクの変化が略フラットな状態になる。
【0130】
このように被駆動状態から駆動状態へと切り替わるタイミング(図6における時刻t23)に近づくとトルクの変更量が小さくされ、トルクの変化が略フラットな状態にされる。
【0131】
そして、このように内燃機関20側のトルクの変化が略フラットにされた状態の下で、車輪側のトルクが内燃機関20側のトルクよりも小さくなり、被駆動状態から駆動状態へと移行するようになる。
【0132】
そして、移行期間が経過した後(図6における時刻t24以降)は、再びトルク制限処理を通じて設定される変更量でトルクが増大され、点火時期が通常の運転状態における点火時期まで進角されてトルクが十分に大きくなったときに、トルク制限処理が終了される。
【0133】
このようにトルクを制限した状態で燃料噴射を再開し、徐々にトルクを増大させるトルク制限処理を実行することにより、フューエルカットの終了前後におけるトルク段差を極力小さくし、通常の燃料噴射が再開されることによるショックの発生を抑制することができる。
【0134】
また、フラットトルク制御ルーチンを実行してギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関20側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量をトルク制限処理を通じて設定されるそれ以前の変更量よりも小さくするようにしている。そのため、上記実施形態と同様に、トルク制限処理を通じて設定される変更量に基づいてトルクが変更され続ける場合と比較して、ギア同士の当接位置が切り替わるときの各ギアのトルク差を小さくすることができる。
【0135】
したがって、内燃機関20側から出力されるトルクと車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化することによってギア同士の当接位置が切り替わる際のショックが抑制されるようになる。
【0136】
すなわち、上記実施形態の(1)〜(5)の作用効果に準ずる作用効果を得ることができるようになる。
・尚、このようにフューエルカットから通常の燃料噴射再開への移行状態のときにフラットトルク制御ルーチンを実行する場合にも、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングにおいてトルクの変更量が小さくされていれば、ギアの衝突によるショックを軽減することができる。そのため、移行期間中に小さな変更量でトルクを増大させる構成に替えて、図7に示されるように移行期間中に、トルク制限処理によって設定される単位時間当たりの変更量よりも小さな変更量でトルクを低下させる構成を採用することもできる。
【0137】
すなわち、トルク制限処理を通じて単位時間当たりに「A」だけ増大するような変更量でトルクを増大させていた場合には、移行期間内にあるときには、単位時間当たりに「A/3」だけ低下するような変更量でトルクを低下させるようにする、といった構成を採用することもできる。
【0138】
こうした構成を採用した場合にも、トルク制限処理を通じて設定される変更量に基づいてトルクが変更され続ける場合と比較して、ギア同士の当接位置が切り替わるときのトルク差が小さくなるため、ギアの衝突によるショックを軽減することができる。
【0139】
尚、ギア同士の当接位置が切り替わるときにも車輪側から入力されるトルクは低下し続ける。そのため、上記のように移行期間中に小さな変更量でトルクを低下させる構成を採用すれば、ギア同士の当接位置が切り替わるときの内燃機関20側のトルクの変化方向と車輪側から入力されるトルクの変化方向とが同じ方向に揃うことになり、ギア同士の当接位置が切り替わるときのトルク差をより一層小さくすることができるようになる。尚、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングにおいてトルクの変更量が小さくされていれば、ギアの衝突によるショックを軽減することができるため、移行期間中に内燃機関20が発生するトルクを一定に維持する、すなわちトルクの変更量を「ゼロ」にする構成を採用することもできる。
【0140】
・車輪側から入力されるトルクは、ブレーキの作動量によっても変化する。例えば、ブレーキが作動しているときには、ブレーキが作動していないときと比較して車輪側から入力されるトルクが低下しやすく、また増大しにくくなる。そのため、内燃機関20側から出力されるトルクと車輪側から入力されるトルクとの大小関係が変化することによって内燃機関20から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わるタイミングは、ブレーキの作動量によっても変化する。
【0141】
そこで、ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングをより正確に予測する上では、ブレーキの作動量に基づいて車輪側から入力されるトルクの変化の予測値を補正することにより、予測されるタイミングを、ブレーキの作動量に基づいて補正する構成を採用することが望ましい。
【0142】
このようにブレーキの作動量に基づいて予測されるタイミングを補正する構成を採用すれば、こうしたブレーキの作動量の変化による車輪側から入力されるトルクへの影響を考慮して的確にギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測することができるようになる。
【0143】
・上記実施形態にあっては、フラットトルク制御ルーチンを通じて内燃機関20側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を小さくする方法として点火時期を調整する方法を示した。これに対して、ギア同士の当接位置が切り替わるときに内燃機関20から出力されるトルクの変更量を小さくすることができる構成であれば、その方法は適宜変更することができる。
【0144】
また、トルク制限処理において点火時期を調整することによって内燃機関20が出力するトルクを制限する構成を示したが、トルク制限処理はフューエルカットへの移行又はフューエルカットからの復帰の際にトルクを徐々に変更することのできるものであればよいため、トルク制限処理におけるトルクの制限方法も適宜変更することができる。
【0145】
例えば、ディーゼル機関にあっては、燃料噴射量を調整することによってトルクが制御されるため、トルク制限処理も燃料噴射量の調整を通じて実行されることが考えられる。そこで、ディーゼル機関に本願発明を適用する場合には、フラットトルク制御ルーチンを通じて内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を小さくする方法として燃料噴射量を調整する方法を採用することが望ましい。
【0146】
また、その他、吸入空気量GAを調整することによってトルクの変更量を調整する方法を採用することもできる。
また、モータの駆動力によって内燃機関の駆動をアシストすることのできるハイブリッド車両にあっては、モータの駆動力によるアシスト量を制御することによって内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を小さくすることができる。
【0147】
・上記実施形態にあっては、「1速」から「6速」までの6つの変速段を有する自動変速機30を備える車両の電子制御装置10に本願発明を適用した例を示したが、本願発明は、こうした有段式の変速機に限らず、無段変速機を備えた車両であっても適用することができる。その場合には、車速SPDと、無段変速機によって設定されている変速比とに基づいて車輪側から入力されるトルクを推定するようにすればよい。
【符号の説明】
【0148】
10…電子制御装置、11…機関制御部、12…変速機制御部、13…エアフロメータ、14…クランクポジションセンサ、15…車速センサ、16…水温センサ、17…勾配センサ、18…アクセルポジションセンサ、19…ブレーキスイッチ、20…内燃機関、30…自動変速機、40…トルクコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関が発生するトルクを制限し、トルクを徐々に変更するトルク制限処理を、フューエルカットに伴って実行する車載内燃機関の制御装置において、
前記トルク制限処理の実行中に、内燃機関から車輪までの間に存在するギア同士の当接位置が切り替わるタイミングを予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定された単位時間当たりの変更量よりも小さくする
ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記トルク制限処理として、フューエルカットの実行に先立って内燃機関側から出力されるトルクを徐々に低下させるトルク制限処理を実行する請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置であって、
同トルク制限処理の実行中に、車輪側から入力されるトルクが増大して内燃機関側から出力されるトルクよりも大きくなるタイミングを前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定される単位時間当たりの変更量よりも小さくする
ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記トルク制限処理として、フューエルカットから復帰して燃料の噴射を再開するときに、内燃機関側から出力されるトルクが制限される態様で燃料の噴射を再開し、徐々にその制限の度合いを小さくすることによって内燃機関側から出力されるトルクを徐々に増大させるトルク制限処理を実行する請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置であって、
同トルク制限処理の実行中に、車輪側から入力されるトルクが減少して内燃機関側から出力されるトルクよりも小さくなるタイミングを前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測し、予測されたタイミングにあわせて、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同タイミングに至る前に前記トルク制限処理を通じて設定される単位時間当たりの変更量よりも小さくする
ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、
前記ギア同士の当接位置が切り替わるタイミングとして予測されたタイミングに基づいてその予測されたタイミングを含んでその前後に亘る移行期間を設定し、同移行期間の間、内燃機関側から出力されるトルクの単位時間当たりの変更量を同移行期間に至る前に前記トルク制限処理を通じて設定されていた単位時間当たりの変更量よりも小さくする
ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57600(P2012−57600A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204640(P2010−204640)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】