車載内燃機関の自動停止始動装置
【課題】機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することのできる車載内燃機関の自動停止始動装置を提供する。
【解決手段】本発明の車載内燃機関の自動停止始動装置である電子制御装置100は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、クラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関10を再始動させる自動停止始動制御を実行する。電子制御装置100は、再始動の条件となる所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、路面の上り勾配が大きいときほど一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する。
【解決手段】本発明の車載内燃機関の自動停止始動装置である電子制御装置100は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、クラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関10を再始動させる自動停止始動制御を実行する。電子制御装置100は、再始動の条件となる所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、路面の上り勾配が大きいときほど一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、再始動条件が成立したときに機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置であって、特にマニュアルトランスミッションを搭載した車両において自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費の改善や排出ガスの低減、騒音の低減を図るべく、停止条件成立時に機関運転を停止させ、再始動条件成立時に機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置が実用化されている。こうした自動停止始動装置では、例えば、車両が停止し、且つマニュアルトランスミッションのシフト位置がニュートラル位置に操作されているなど、所定の停止条件が成立したことに基づいて機関運転を自動停止させる。そして、自動停止による機関運転停止中にクラッチペダルが踏み込まれるなど、発進や加速が予測される所定の再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を再開させる。
【0003】
特許文献1には、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とするのではなく、クラッチペダルが踏み込まれた後にその踏み込みが解除されたことを再始動条件とすることが開示されている。このようにクラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件にすれば、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合よりも、内燃機関を再始動させるタイミングが遅くなる。そのため、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができ、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合よりも燃料消費量を抑制することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐138221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、登坂路での機関運転再開においては、クラッチを継合させたときに内燃機関に大きな負荷が作用する。そのため、登坂路では、機関運転再開後、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチを継合させる必要がある。しかしながら、上記のようにクラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件とした場合には、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合と比較して機関運転が再開されてからクラッチが継合されるまでの期間が短くなる。そのため、クラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件とした場合には、クラッチが継合するときまでに機関回転速度を十分に上昇させることができず、安定した再始動を実現することができないおそれがある。
【0006】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することのできる車載内燃機関の自動停止始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、内燃機関とマニュアルトランスミッションとの間の接続を断接するクラッチの継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関を再始動させて機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置において、再始動の条件となる前記所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、路面の上り勾配が大きいときほど前記一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど前記一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、路面の上り勾配が大きいときほど一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作が内燃機関の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が大きく、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチを継合させる必要がある場合ほど一連の発進操作におけるより早い段階で内燃機関が再始動されるようになる。したがって、路面の上り勾配が大きい場合には機関運転再開からクラッチを継合させるまでの期間をより長く確保することができ、クラッチを継合させるときまでに機関回転速度を上昇させて安定した再始動を実現することができる。
【0009】
一方で、上記構成によれば、路面の上り勾配が小さいときには一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作が内燃機関の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が小さく、機関回転速度をそれほど上昇させなくても安定した再始動を実現することができる場合には、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができる。
【0010】
すなわち、上記請求項1に記載の発明によれば、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、路面の上り勾配が閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が前記閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、路面の上り勾配の大きさが閾値未満である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダルの踏み込み解除操作とされるのに対し、路面の上り勾配の大きさが閾値以上である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダルの踏み込み操作とされる。
【0013】
そのため、路面の上り勾配が大きく、上り勾配の大きさが閾値以上である場合には、内燃機関の再始動からクラッチ継合までの期間がより長く確保されるようになる。これにより、クラッチ継合時までに機関回転速度を十分に上昇させ、安定した再始動を実現することができるようになる。
【0014】
一方で、路面の上り勾配が小さく、上り勾配の大きさが閾値未満である場合には、クラッチペダルの踏み込み解除操作がなされたことに基づいて内燃機関の再始動が行われるようになるため、機関運転を停止させておく期間を長く確保することができる。
【0015】
すなわち、上記請求項2に記載の構成によれば、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、車速が高いときほど前記閾値を大きな値にすることをその要旨とする。
機関運転を停止させたまま走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために前記一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ継合時における内燃機関への負荷は小さくなる。
【0017】
上記請求項3に記載の発明では、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える閾値が大きな値に設定される。これにより、車速が高く、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷が小さい場合には、再始動の条件とされる操作がクラッチペダルの踏み込み操作に設定されにくくなる。すなわち、クラッチを継合させる際に内燃機関に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。
【0018】
これにより、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、路面の上り勾配が第1の閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が前記第1の閾値未満であり、且つ同第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上である場合には、前記マニュアルトランスミッションのシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を前記所定の操作として設定し、路面の上り勾配が前記第2の閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0019】
マニュアルトランスミッションを搭載した車両の発進操作にあっては、まずクラッチペダルを踏み込んでクラッチを解放し、クラッチを解放した状態でシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更する。そして、いずれかの変速段が選択されている状態でクラッチペダルの踏み込みを解除し、クラッチを継合させることにより、内燃機関の駆動力が駆動輪に伝達されるようになる。すなわち一連の発進操作にあっては、クラッチペダルの踏み込み操作、シフト位置の変更操作、クラッチペダルの踏み込み解除操作が順に実行されることになる。
【0020】
上記構成によれば、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダルの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダルの踏み込み操作へと段階的に早めていくことが可能となる。これにより、路面の上り勾配の大きさの変化にあわせて内燃機関の再始動からクラッチ継合までの期間を段階的に長くすることができるようになる。そのため、請求項2に記載されている発明のように再始動の条件をクラッチペダルの踏み込み解除操作とクラッチペダルの踏み込み操作との間で二段階に切り替える場合よりもきめ細かく再始動のタイミングを変更することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、車速が高いときほど前記第1の閾値及び前記第2の閾値を大きな値にすることをその要旨とする。
機関運転を停止させたまま走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために前記一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ継合時における内燃機関への負荷は小さくなる。
【0022】
上記請求項5に記載の発明では、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える第1の閾値及び第2の閾値が大きな値に設定される。これにより、車速が高く、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷が小さい場合には、再始動の条件とされる操作が一連の発進操作における早い段階で実行される操作に設定されにくくなる。すなわち、クラッチを継合させる際に内燃機関に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。
【0023】
これにより、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置である電子制御装置と同電子制御装置の制御対象である内燃機関との関係、並びに同内燃機関とマニュアルトランスミッションとの関係を示す模式図。
【図2】第1の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図3】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて変更される内燃機関の再始動のタイミングと、クラッチの状態、クラッチペダル操作量並びに変速段選択機構の状態との関係を示すタイミングチャート。
【図4】第2の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図5】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて補正される閾値と車速との関係を示すマップ。
【図6】第3の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図7】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて変更される内燃機関の再始動のタイミングと、クラッチの状態、クラッチペダル操作量並びに変速段選択機構の状態との関係を示すタイミングチャート。
【図8】第4の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図9】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて補正される第1の閾値及び第2の閾値と車速との関係を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第1の実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
【0026】
図1に示されるように本実施形態にかかる電子制御装置100が制御する内燃機関10はマニュアルトランスミッション20と接続されている。内燃機関10の吸気通路11には、モータ13によって駆動され、その開度を変更することによって内燃機関10の吸入空気量を調量するスロットルバルブ12が設けられている。
【0027】
マニュアルトランスミッション20は、ギアの組み合わせによって構成される複数の変速段の中から1つの変速段を選択することにより変速比Rを変更する変速段選択機構24と、内燃機関10とこの変速段選択機構24との接続を断接するクラッチ21とによって構成されている。
【0028】
図1の中央に示されるように内燃機関10の出力軸14にはフライホイール22が固定されており、このフライホイール22がクラッチ21の内燃機関側継合要素となっている。また、変速段選択機構24の入力軸25には、クラッチ21の駆動輪側継合要素であるクラッチディスク23が固定されている。
【0029】
このクラッチディスク23は、クラッチペダル53bの操作量に応じて入力軸25の延伸方向、すなわち図1における左右方向に駆動される。
具体的には、クラッチペダル53bが踏み込まれることによりクラッチディスク23が図1における右側に駆動されてクラッチディスク23がフライホイール22から離間するようになる。こうしてクラッチディスク23とフライホイール22とが離間した状態になることにより、内燃機関10と変速段選択機構24との間における駆動力の伝達が行われなくなる。
【0030】
一方、クラッチペダル53bの踏み込みが解除されることによりクラッチディスク23は図1における左側に駆動されてフライホイール22と当接するようになる。こうしてクラッチディスク23とフライホイール22とが当接した状態になることにより、内燃機関10と変速段選択機構24との間で駆動力が伝達されるようになる。
【0031】
図1の右側に示されるように変速段選択機構24の出力軸は、ディファレンシャル27に接続されたプロペラシャフト26に連結されており、マニュアルトランスミッション20を介して変速された内燃機関10の駆動力は、プロペラシャフト26を介してディファレンシャル27に伝達される。そして、ディファレンシャル27に伝達された駆動力は、同ディファレンシャル27を通じて左右のドライブシャフト28L,28Rに分配され、ドライブシャフト28L,28Rに接続された左右の駆動輪29L,29Rに伝達される。
【0032】
スロットルバルブ12の開度制御や、燃料噴射量制御、そして点火時期制御等は、内燃機関10を統括的に制御する電子制御装置100によって実行される。電子制御装置100は、中央演算処理装置(CPU)に加えて、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROMなどの各種メモリを備えている。
【0033】
図1に示されるように電子制御装置100には、下記のようなセンサが接続されている。加速度センサ50は車両にかかる加速度を検出する。ブレーキ圧センサ51は図示しないブレーキの作動油圧を検出する。シフト位置センサ52aはシフトレバー52bの操作位置、すなわちシフト位置を検出する。クラッチセンサ53aはクラッチペダル53bの操作量を検出する。エアフロメータ54は、内燃機関10に導入される吸入空気量を検出する。回転速度センサ55は内燃機関10の出力軸14近傍に設けられ、出力軸14の回転速度に基づいて機関回転速度NEを検出する。車速センサ56は、プロペラシャフト26近傍に設けられ、プロペラシャフト26の回転速度に基づいて車速信号SPDを出力する。
【0034】
電子制御装置100は、これらの各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関10を統括的に制御する。
例えば、電子制御装置100は、上記各種センサの出力信号に基づいて運転者による操作の状態を検知し、燃費の改善や排出ガスの低減、騒音の低減を図るべく、停止条件成立時に機関運転を停止させ、再始動条件成立時に機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する。
【0035】
具体的には、マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされており、この停止条件が成立したことに基づいて機関運転を停止させる。これにより、交差点などで一時停止した際に、シフト位置がニュートラル位置に切り替えられ、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除された場合には機関運転が自動停止されるようになる。また、走行中であってもシフト位置がニュートラル位置に切り替えられ、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除された場合には機関運転が自動停止され、惰性走行するようになる。
【0036】
そして、電子制御装置100は、こうした停止条件の成立に基づく自動停止による機関運転停止中に自動再始動制御を実行し、再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を再開させる。
【0037】
電子制御装置100は発進や加速が予測される所定の操作がなされたことを再始動条件とし、機関運転を再開させるが、本実施形態の電子制御装置100にあっては、路面の上り勾配の大きさに応じて再始動の条件とする上記所定の操作を選択的に切り替えるようにしている。
【0038】
以下、図2を参照して本実施形態の電子制御装置100が実行する自動再始動制御について説明する。この自動再始動制御は、停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図2のステップS100に示されるように、路面の上り勾配が閾値Ta以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。具体的には、電子制御装置100は、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度を、車速センサ56により検出された車速に基づいて補正することで路面勾配を算出する。
【0040】
なお、閾値Taの大きさは、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とした場合に、内燃機関10に作用する負荷が安定した再始動を実現することができなくなるほど大きくなる上り勾配の大きさに基づいて設定されている。
【0041】
ステップ100において、路面の上り勾配が閾値Ta以上である旨の判定がなされた場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進む。ステップS110では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。なお、閾値Aは、クラッチペダル53bの操作量が同閾値A以上になったことに基づいてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていることを判定することのできる大きさに設定されていればよい。
【0042】
すなわち、ステップS110において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0043】
ステップS110においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS110:YES)には、ステップS130へ進む。そして、ステップS130において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0044】
一方、ステップS110においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS110:NO)には、ステップS130をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0045】
このように路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0046】
一方、ステップS100において路面の上り勾配が閾値Ta未満である旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)には、ステップS120へと進む。ステップS120では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0047】
すなわち、ステップS120において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0048】
ステップS120においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)には、ステップS130へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0049】
一方、ステップS120においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS120:NO)には、ステップS130をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0050】
このように路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について、図3を参照して説明する。図3は停止条件が成立していることに基づく自動停止中の状態から車両を発進または加速させようとする際に実行される一連の発進操作におけるクラッチペダル53bの操作量の変化とクラッチ21の状態の変化、そして変速段選択機構24の状態の変化の関係を示すタイミングチャートである。
【0051】
マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされているため、自動停止中にはマニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置にある状態でクラッチ21が継合されていることになる。
【0052】
このような自動停止中の状態から発進または加速を行うためには、変速段選択機構24を駆動力が伝達されないニュートラルの状態から後退用の変速段を含むいずれかの変速段が選択されてギアを介して駆動力を伝達することのできる状態(以下、ギアINの状態と称する)に変更した上で、クラッチ21を継合させる必要がある。
【0053】
そのためには、図3に示されるようにまずクラッチペダル53bを踏み込んでクラッチ21を解放し、クラッチ21を解放した状態でシフトレバー52bを操作していずれかの変速段を選択することによって変速段選択機構24をニュートラルの状態からギアINの状態に切り替える。そして、その上で、クラッチペダル53bの踏み込みを解除してクラッチ21を継合させる。
【0054】
このように自動停止中の状態から発進または加速を行うためにはクラッチペダル53bの踏み込み操作、ニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択する位置へシフト位置を変更するシフト操作、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作というクラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作を行う必要がある。こうした一連の発進操作を通じて変速段選択機構24がギアINの状態に切り換えられた上でクラッチ21が継合されることにより、内燃機関10の駆動力がマニュアルトランスミッション20を介して駆動輪29L,29Rに伝達されるようになり、発進または加速が可能な状態となる。
【0055】
図2を参照して説明した第1の実施形態にかかる自動再始動制御では、路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0056】
そのため、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、路面の上り勾配が大きい場合には、図3に示されるタイミングt1において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれ、クラッチ21が解放されてクラッチペダル53bの操作量が閾値Aに達したタイミングt1において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0057】
一方、路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0058】
そのため、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、路面の上り勾配が小さい場合には、図3に示されるタイミングt3において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放された後、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除されてクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から再び閾値A未満に変化するタイミングt3において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0059】
これにより、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、路面の上り勾配が大きいことによって発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷が大きくなることが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作に基づいて内燃機関10が再始動されるようになる。
【0060】
一方で、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、路面の上り勾配が小さいことによって発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷がそれほど大きくないことが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされるまで再始動が行われないようになる。
【0061】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)路面の上り勾配の大きさが閾値Ta未満である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダル53bの踏み込み解除操作とされるのに対し、路面の上り勾配の大きさが閾値Ta以上である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダル53bの踏み込み操作とされる。そのため、路面の上り勾配が大きく、上り勾配の大きさが閾値Ta以上である場合には、内燃機関10の再始動からクラッチ21が継合するまでの期間がより長く確保されるようになる。これにより、クラッチ21が継合するときまでに機関回転速度NEを十分に上昇させ、安定した再始動を実現することができるようになる。一方で、路面の上り勾配が小さく、上り勾配の大きさが閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされたことに基づいて内燃機関10の再始動が行われるようになるため、機関運転を停止させておく期間を長く確保することができる。
【0062】
すなわち、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、本実施形態は図2を参照して説明した第1の実施形態における自動再始動制御に対して車速に応じて閾値Taの大きさを補正する処理を追加したものである。そのため、以下では第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第1の実施形態と異なる自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0063】
図4は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は、第1の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0064】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図4のステップS200に示されるように、車速に基づいて閾値Taを補正する。ここでは、図5に示されるように車速が高いときほど閾値Taが大きくなるように補正する。
【0065】
自動停止により機関運転を停止させたまま惰性走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関10の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ21の継合時における内燃機関10への負荷は小さくなる。そこで、ステップS200において閾値Taを補正する際には、こうした負荷と車速との関係を考慮して、車速が高く、負荷が軽減される分だけ、再始動の条件がクラッチペダル53bの踏み込み解除操作に設定されやすくなるように車速に対する補正量の大きさを設定することが望ましい。
【0066】
こうしてステップS200において車速に基づき閾値Taを補正するとステップS210に進む。そして、ステップS210において電子制御装置100は、路面の上り勾配が閾値Ta以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0067】
そして、ステップ210において、路面の上り勾配が閾値Ta以上である旨の判定がなされた場合(ステップS210:YES)には、ステップS220へと進む。ステップS220では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS110の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0068】
すなわち、ステップS220において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0069】
ステップS220においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS220:YES)には、ステップS240へ進む。そして、ステップS240において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0070】
一方、ステップS220においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS220:NO)には、ステップS240をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0071】
このように路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0072】
一方、ステップS210において路面の上り勾配が閾値Ta未満である旨の判定がなされた場合(ステップS210:NO)には、ステップS230へと進む。ステップS230では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS120の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0073】
すなわち、ステップS230において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0074】
ステップS230においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS230:YES)には、ステップS240へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0075】
一方、ステップS230においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS230:NO)には、ステップS240をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0076】
このように路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について説明する。第1の実施形態と同様に、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷が大きくなることが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作に基づいて再始動が行われるようになる。
【0077】
一方で、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷がそれほど大きくないことが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされるまで再始動が行われないようになる。
【0078】
また、車速に基づいて閾値Taを補正し、車速が高いときほど閾値Taが大きな値に設定されるようになっている。そのため、車速が高く、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷が小さい場合には、再始動条件とされる操作がクラッチペダル53bの踏み込み操作に設定されにくくなる。
【0079】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態における(1)の効果に加え以下の効果が得られるようになる。
(2)クラッチ21を継合させる際に内燃機関10に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。これにより、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
(第3の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第3の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。なお、本実施形態と図2を参照して説明した第1の実施形態とは、自動再始動制御の内容が異なるのみであるため、以下では第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第1の実施形態との相違点である自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0080】
図6は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は第1の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0081】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図6のステップS300に示されるように、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0082】
そして、ステップ300において、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である旨の判定がなされた場合(ステップS300:YES)には、ステップS310へと進む。ステップS310では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS110の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0083】
すなわち、ステップS310において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0084】
ステップS310においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS310:YES)には、ステップS350へ進む。そして、ステップS350において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0085】
一方、ステップS310においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS310:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0086】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0087】
一方、ステップS300において路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満である旨の判定がなされた場合(ステップS300:NO)には、ステップS320へと進む。ステップS320では、電子制御装置100は路面の上り勾配が第1の閾値Tbよりも小さな第2の閾値Tc以上であるか否かを判定する。なお、ここでも路面の勾配は加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0088】
ステップ320において、路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上である旨の判定がなされた場合(ステップS320:YES)には、ステップS330へと進む。ステップS330では、電子制御装置100は、変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かを判定する。変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かの判定は、シフト位置センサ52aによって検出されているシフト位置がニュートラル位置ではなく、後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置であるか否かに基づいて行う。
【0089】
すなわち、ステップS330において電子制御装置100は、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置が後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態ではなくギアINの状態であると判定する。一方で、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がニュートラル位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態でありギアINの状態ではないと判定する。
【0090】
ステップS330において変速段選択機構24がギアINの状態である旨の判定がなされた場合(ステップS330:YES)には、ステップS350へ進む。そして、ステップS350において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0091】
一方、ステップS330において変速段選択機構24がギアINの状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS330:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0092】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc以上である場合には、変速段選択機構24がギアINの状態であることを条件に内燃機関10を再始動させる。すなわちシフト位置をニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を再始動条件とし、このシフト操作がなされたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0093】
一方、ステップS320において路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である旨の判定がなされた場合(ステップS320:NO)には、ステップS340へと進む。ステップS340では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS120の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0094】
すなわち、ステップS340において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0095】
ステップS340においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS340:YES)には、ステップS350へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0096】
一方、ステップS340においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS340:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0097】
このように路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次に本実施形態に係る自動再始動制御を実行することによる作用について、図7を参照して説明する。図7は停止条件が成立していることに基づく自動停止中の状態から車両を発進または加速させようとする際に実行される一連の発進操作におけるクラッチペダル53bの操作量の変化とクラッチ21の状態の変化、そして変速段選択機構24の状態の変化の関係を示すタイミングチャートである。
【0098】
マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされているため、自動停止中にはマニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置にある状態でクラッチ21が継合されていることになる。
【0099】
このような自動停止中の状態から発進または加速を行うためには、変速段選択機構24を駆動力が伝達されないニュートラルの状態から後退用の変速段を含むいずれかの変速段が選択されてギアを介して駆動力を伝達することのできるギアINの状態に変更した上で、クラッチ21を継合させる必要がある。
【0100】
そのためには、図7に示されるようにまずクラッチペダル53bを踏み込んでクラッチ21を解放し、クラッチ21を解放した状態でシフトレバー52bを操作していずれかの変速段を選択することによって変速段選択機構24をニュートラルの状態からギアINの状態に切り替える。そして、その上で、クラッチペダル53bの踏み込みを解除してクラッチ21を継合させる。
【0101】
このように自動停止中の状態から発進または加速を行うためにはクラッチペダル53bの踏み込み操作、ニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択する位置へシフト位置を変更するシフト操作、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作というクラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作を行う必要がある。こうした一連の発進操作を通じて変速段選択機構24がギアINの状態に切り換えられた上でクラッチ21が継合されることにより、内燃機関10の駆動力がマニュアルトランスミッション20を介して駆動輪29L,29Rに伝達されるようになり、発進または加速が可能な状態となる。
【0102】
図6を参照して説明した第3の実施形態にかかる自動再始動制御では、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0103】
そのため、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であり、路面の上り勾配が大きい場合には、図7に示されるタイミングt1において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれ、クラッチ21が解放されてクラッチペダル53bの操作量が閾値Aに達したタイミングt1において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0104】
一方、路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第1の閾値Tbよりも小さな第2の閾値Tc未満である場合には、マニュアルトランスミッション20のシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作がなされたことを再始動条件とし、内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0105】
そのため、路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc未満である場合には、図7に示されるタイミングt2において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放された後、ニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置にシフト位置を変更するシフト操作が実行され、変速段選択機構24の状態がニュートラルの状態からギアINの状態に移行したタイミングt2において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0106】
そして、路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0107】
そのため、路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満であり、路面の上り勾配が小さい場合には、図7に示されるタイミングt3において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放され、変速段選択機構24の状態がギアINの状態に変更された後、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除されてクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から再び閾値A未満に変化するタイミングt3において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0108】
このように本実施形態の自動再始動制御によれば、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作へと一連の発進操作におけるより早い段階で実行される操作に段階的に切り替えられるようになる。
【0109】
以上説明した第3の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)路面の上り勾配が大きく、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチ21を継合させる必要がある場合ほど一連の発進操作におけるより早い段階で内燃機関10が再始動されるようになる。したがって、路面の上り勾配が大きい場合には機関運転再開からクラッチ21を継合させるまでの期間をより長く確保することができ、クラッチ21を継合させるときまでに機関回転速度NEを上昇させて安定した再始動を実現することができる。一方で、路面の上り勾配が小さいときには一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作が内燃機関10の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が小さく、機関回転速度NEをそれほど上昇させなくても安定した再始動を実現することができる場合には、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができる。すなわち、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができる。
【0110】
(2)路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作へと一連の発進操作におけるより早い段階で実行される操作に段階的に切り替えることが可能となる。これにより、路面の上り勾配の大きさの変化にあわせて内燃機関10の再始動からクラッチ21の継合までの期間を段階的に長くすることができるようになる。そのため、第1の実施形態や第2の実施形態のように再始動の条件をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作とクラッチペダル53bの踏み込み操作との間で二段階に切り替える場合よりもきめ細かく再始動のタイミングを変更することができる。
(第4の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第4の実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、本実施形態は図6を参照して説明した第3の実施形態における自動再始動制御に対して車速に応じて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcの大きさを補正する処理を追加したものである。そのため、以下では第3の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第3の実施形態と異なる自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0111】
図8は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は、第3の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0112】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図8のステップS400に示されるように、車速に基づいて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正する。ここでは、図9に示されるように車速が高いときほど第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが大きくなるように補正する。なお、図9に示されるように車速に基づいて補正する場合であっても第1の閾値Tbと第2の閾値Tcの大小関係が変わることはなく、車速が同一であれば第2の閾値Tcは常に第1の閾値Tbよりも小さな値になっている。
【0113】
自動停止により機関運転を停止させたまま惰性走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関10の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ21の継合時における内燃機関10への負荷は小さくなる。そこで、ステップS400において第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正する際には、こうした負荷と車速との関係を考慮して、車速が高く、負荷が軽減される分だけ、再始動の条件が一連の発進操作におけるより遅いタイミングで実行される操作に設定されやすくなるように補正量の大きさを設定することが望ましい。
【0114】
こうしてステップS400において車速に基づき第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正するとステップS410に進む。そして、ステップS410において電子制御装置100は、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0115】
そして、ステップ410において、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である旨の判定がなされた場合(ステップS410:YES)には、ステップS420へと進む。ステップS410では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS310の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0116】
すなわち、ステップS420において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0117】
ステップS420においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS420:YES)には、ステップS460へ進む。そして、ステップS460において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0118】
一方、ステップS420においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS420:NO)には、ステップS460をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0119】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0120】
一方、ステップS410において路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満である旨の判定がなされた場合(ステップS410:NO)には、ステップS430へと進む。ステップS430では、電子制御装置100は路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上であるか否かを判定する。なお、ここでも路面の勾配は加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0121】
ステップ430において、路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上である旨の判定がなされた場合(ステップS430:YES)には、ステップS440へと進む。ステップS440では、電子制御装置100は、変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かを判定する。変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS330の処理と同様に、シフト位置センサ52aによって検出されているシフト位置がいずれかの変速段を選択するシフト位置であるか否かに基づいて行う。
【0122】
すなわち、ステップS440において電子制御装置100は、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がいずれかの変速段を選択するシフト位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態ではなくギアINの状態であると判定する。一方で、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がニュートラル位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態でありギアINの状態ではないと判定する。
【0123】
ステップS440において変速段選択機構24がギアINの状態である旨の判定がなされた場合(ステップS440:YES)には、ステップS460へ進む。そして、ステップS460において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0124】
一方、ステップS440において変速段選択機構24がギアINの状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS440:NO)には、ステップS460をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0125】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc以上である場合には、変速段選択機構24がギアINの状態であることを条件に内燃機関10を再始動させる。すなわちシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を再始動条件とし、このシフト操作がなされたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0126】
一方、ステップS430において路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である旨の判定がなされた場合(ステップS430:NO)には、ステップS450へと進む。ステップS450では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS340の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0127】
すなわち、ステップS450において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0128】
ステップS450においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS450:YES)には、ステップS460へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0129】
一方、ステップS450においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS450:NO)には、ステップS460をスキップし、内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了する。
【0130】
このように路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について説明する。
【0131】
第3の実施形態と同様に、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作が、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作の順に一連の発進操作における早い段階で実行される操作へと段階的に切り替えられるようになる。
【0132】
また、車速に基づいて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが補正され、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが大きな値にされる。そのため、車速が高く、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷が小さい場合には、再始動条件とされる操作が一連の発進操作における早い段階で実行される操作に設定されにくくなる。
【0133】
以上説明した第4の実施形態によれば、上記第3の実施形態における(1)及び(2)の効果に加え以下の効果が得られるようになる。
(3)クラッチ21を継合させる際に内燃機関10に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。これにより、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
【0134】
なお、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。
・クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていることを判定するために利用する閾値とクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていることを判定するための閾値をともに「閾値A」にする構成を例示したが、踏み込み操作を判定するための閾値と踏み込み解除操作を判定するための閾値は異なっていてもよい。
【0135】
すなわち、それぞれの閾値の大きさは、クラッチペダル53bの踏み込み操作を判定することのできる大きさ、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を判定することのできる大きさにそれぞれ設定されていればよいため、これらの閾値の値はそれぞれに変更することができる。
【0136】
・再始動の条件とする操作は、発進や加速に先立って行われる一連の発進操作に含まれる操作うち、そのタイミングが異なるものの中から選択すればよい。そのため、上記各実施形態において例示したクラッチペダル53bの踏み込み操作や踏み込み解除操作、シフト操作以外の操作を選択肢に加え、二段階、三段階だけでなく四段階以上に始動条件を切り替えるようにしてもよい。また、上記各実施形態と同様に二段階、三段階に始動条件を切り替える場合であっても、選択肢とする操作をクラッチペダル53bの踏み込み操作や踏み込み解除操作、シフト操作以外の操作に変更して実施することもできる。
【0137】
・路面の勾配は、上記各実施形態において例示したように加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出する方法のみならず、他の手段によって検出してもよい。
【0138】
・また、車速の取得方法は、上記実施形態におけるような車速センサ56を用いて検出する方法のみならず、他の検出手段用いて取得する方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…スロットルバルブ、13…モータ、14…出力軸、20…マニュアルトランスミッション、21…クラッチ、22…フライホイール、23…クラッチディスク、24…変速段選択機構、25…入力軸、26…プロペラシャフト、27…ディファレンシャル、28L,28R…ドライブシャフト、29L,29R…駆動輪、50…加速度センサ、51…ブレーキ圧センサ、52a…シフト位置センサ、52b…シフトレバー、53a…クラッチセンサ、53b…クラッチペダル、54…エアフロメータ、55…回転速度センサ、56…車速センサ、100…電子制御装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、再始動条件が成立したときに機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置であって、特にマニュアルトランスミッションを搭載した車両において自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費の改善や排出ガスの低減、騒音の低減を図るべく、停止条件成立時に機関運転を停止させ、再始動条件成立時に機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置が実用化されている。こうした自動停止始動装置では、例えば、車両が停止し、且つマニュアルトランスミッションのシフト位置がニュートラル位置に操作されているなど、所定の停止条件が成立したことに基づいて機関運転を自動停止させる。そして、自動停止による機関運転停止中にクラッチペダルが踏み込まれるなど、発進や加速が予測される所定の再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を再開させる。
【0003】
特許文献1には、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とするのではなく、クラッチペダルが踏み込まれた後にその踏み込みが解除されたことを再始動条件とすることが開示されている。このようにクラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件にすれば、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合よりも、内燃機関を再始動させるタイミングが遅くなる。そのため、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができ、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合よりも燃料消費量を抑制することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐138221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、登坂路での機関運転再開においては、クラッチを継合させたときに内燃機関に大きな負荷が作用する。そのため、登坂路では、機関運転再開後、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチを継合させる必要がある。しかしながら、上記のようにクラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件とした場合には、クラッチペダルが踏み込まれたことを再始動条件とする場合と比較して機関運転が再開されてからクラッチが継合されるまでの期間が短くなる。そのため、クラッチペダルの踏み込みが解除されたことを再始動条件とした場合には、クラッチが継合するときまでに機関回転速度を十分に上昇させることができず、安定した再始動を実現することができないおそれがある。
【0006】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することのできる車載内燃機関の自動停止始動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、内燃機関とマニュアルトランスミッションとの間の接続を断接するクラッチの継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関を再始動させて機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置において、再始動の条件となる前記所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、路面の上り勾配が大きいときほど前記一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど前記一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、路面の上り勾配が大きいときほど一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作が内燃機関の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が大きく、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチを継合させる必要がある場合ほど一連の発進操作におけるより早い段階で内燃機関が再始動されるようになる。したがって、路面の上り勾配が大きい場合には機関運転再開からクラッチを継合させるまでの期間をより長く確保することができ、クラッチを継合させるときまでに機関回転速度を上昇させて安定した再始動を実現することができる。
【0009】
一方で、上記構成によれば、路面の上り勾配が小さいときには一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作が内燃機関の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が小さく、機関回転速度をそれほど上昇させなくても安定した再始動を実現することができる場合には、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができる。
【0010】
すなわち、上記請求項1に記載の発明によれば、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、路面の上り勾配が閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が前記閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、路面の上り勾配の大きさが閾値未満である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダルの踏み込み解除操作とされるのに対し、路面の上り勾配の大きさが閾値以上である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダルの踏み込み操作とされる。
【0013】
そのため、路面の上り勾配が大きく、上り勾配の大きさが閾値以上である場合には、内燃機関の再始動からクラッチ継合までの期間がより長く確保されるようになる。これにより、クラッチ継合時までに機関回転速度を十分に上昇させ、安定した再始動を実現することができるようになる。
【0014】
一方で、路面の上り勾配が小さく、上り勾配の大きさが閾値未満である場合には、クラッチペダルの踏み込み解除操作がなされたことに基づいて内燃機関の再始動が行われるようになるため、機関運転を停止させておく期間を長く確保することができる。
【0015】
すなわち、上記請求項2に記載の構成によれば、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、車速が高いときほど前記閾値を大きな値にすることをその要旨とする。
機関運転を停止させたまま走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために前記一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ継合時における内燃機関への負荷は小さくなる。
【0017】
上記請求項3に記載の発明では、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える閾値が大きな値に設定される。これにより、車速が高く、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷が小さい場合には、再始動の条件とされる操作がクラッチペダルの踏み込み操作に設定されにくくなる。すなわち、クラッチを継合させる際に内燃機関に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。
【0018】
これにより、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、路面の上り勾配が第1の閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が前記第1の閾値未満であり、且つ同第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上である場合には、前記マニュアルトランスミッションのシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を前記所定の操作として設定し、路面の上り勾配が前記第2の閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定することをその要旨とする。
【0019】
マニュアルトランスミッションを搭載した車両の発進操作にあっては、まずクラッチペダルを踏み込んでクラッチを解放し、クラッチを解放した状態でシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更する。そして、いずれかの変速段が選択されている状態でクラッチペダルの踏み込みを解除し、クラッチを継合させることにより、内燃機関の駆動力が駆動輪に伝達されるようになる。すなわち一連の発進操作にあっては、クラッチペダルの踏み込み操作、シフト位置の変更操作、クラッチペダルの踏み込み解除操作が順に実行されることになる。
【0020】
上記構成によれば、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダルの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダルの踏み込み操作へと段階的に早めていくことが可能となる。これにより、路面の上り勾配の大きさの変化にあわせて内燃機関の再始動からクラッチ継合までの期間を段階的に長くすることができるようになる。そのため、請求項2に記載されている発明のように再始動の条件をクラッチペダルの踏み込み解除操作とクラッチペダルの踏み込み操作との間で二段階に切り替える場合よりもきめ細かく再始動のタイミングを変更することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、車速が高いときほど前記第1の閾値及び前記第2の閾値を大きな値にすることをその要旨とする。
機関運転を停止させたまま走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために前記一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ継合時における内燃機関への負荷は小さくなる。
【0022】
上記請求項5に記載の発明では、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える第1の閾値及び第2の閾値が大きな値に設定される。これにより、車速が高く、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷が小さい場合には、再始動の条件とされる操作が一連の発進操作における早い段階で実行される操作に設定されにくくなる。すなわち、クラッチを継合させる際に内燃機関に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。
【0023】
これにより、クラッチ継合時に内燃機関に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置である電子制御装置と同電子制御装置の制御対象である内燃機関との関係、並びに同内燃機関とマニュアルトランスミッションとの関係を示す模式図。
【図2】第1の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図3】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて変更される内燃機関の再始動のタイミングと、クラッチの状態、クラッチペダル操作量並びに変速段選択機構の状態との関係を示すタイミングチャート。
【図4】第2の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図5】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて補正される閾値と車速との関係を示すマップ。
【図6】第3の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図7】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて変更される内燃機関の再始動のタイミングと、クラッチの状態、クラッチペダル操作量並びに変速段選択機構の状態との関係を示すタイミングチャート。
【図8】第4の実施形態にかかる自動再始動制御の流れを示すフローチャート。
【図9】同実施形態にかかる自動再始動制御を通じて補正される第1の閾値及び第2の閾値と車速との関係を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第1の実施形態について、図1〜3を参照して説明する。
【0026】
図1に示されるように本実施形態にかかる電子制御装置100が制御する内燃機関10はマニュアルトランスミッション20と接続されている。内燃機関10の吸気通路11には、モータ13によって駆動され、その開度を変更することによって内燃機関10の吸入空気量を調量するスロットルバルブ12が設けられている。
【0027】
マニュアルトランスミッション20は、ギアの組み合わせによって構成される複数の変速段の中から1つの変速段を選択することにより変速比Rを変更する変速段選択機構24と、内燃機関10とこの変速段選択機構24との接続を断接するクラッチ21とによって構成されている。
【0028】
図1の中央に示されるように内燃機関10の出力軸14にはフライホイール22が固定されており、このフライホイール22がクラッチ21の内燃機関側継合要素となっている。また、変速段選択機構24の入力軸25には、クラッチ21の駆動輪側継合要素であるクラッチディスク23が固定されている。
【0029】
このクラッチディスク23は、クラッチペダル53bの操作量に応じて入力軸25の延伸方向、すなわち図1における左右方向に駆動される。
具体的には、クラッチペダル53bが踏み込まれることによりクラッチディスク23が図1における右側に駆動されてクラッチディスク23がフライホイール22から離間するようになる。こうしてクラッチディスク23とフライホイール22とが離間した状態になることにより、内燃機関10と変速段選択機構24との間における駆動力の伝達が行われなくなる。
【0030】
一方、クラッチペダル53bの踏み込みが解除されることによりクラッチディスク23は図1における左側に駆動されてフライホイール22と当接するようになる。こうしてクラッチディスク23とフライホイール22とが当接した状態になることにより、内燃機関10と変速段選択機構24との間で駆動力が伝達されるようになる。
【0031】
図1の右側に示されるように変速段選択機構24の出力軸は、ディファレンシャル27に接続されたプロペラシャフト26に連結されており、マニュアルトランスミッション20を介して変速された内燃機関10の駆動力は、プロペラシャフト26を介してディファレンシャル27に伝達される。そして、ディファレンシャル27に伝達された駆動力は、同ディファレンシャル27を通じて左右のドライブシャフト28L,28Rに分配され、ドライブシャフト28L,28Rに接続された左右の駆動輪29L,29Rに伝達される。
【0032】
スロットルバルブ12の開度制御や、燃料噴射量制御、そして点火時期制御等は、内燃機関10を統括的に制御する電子制御装置100によって実行される。電子制御装置100は、中央演算処理装置(CPU)に加えて、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、記憶データを書き換え可能な不揮発性メモリであるEEPROMなどの各種メモリを備えている。
【0033】
図1に示されるように電子制御装置100には、下記のようなセンサが接続されている。加速度センサ50は車両にかかる加速度を検出する。ブレーキ圧センサ51は図示しないブレーキの作動油圧を検出する。シフト位置センサ52aはシフトレバー52bの操作位置、すなわちシフト位置を検出する。クラッチセンサ53aはクラッチペダル53bの操作量を検出する。エアフロメータ54は、内燃機関10に導入される吸入空気量を検出する。回転速度センサ55は内燃機関10の出力軸14近傍に設けられ、出力軸14の回転速度に基づいて機関回転速度NEを検出する。車速センサ56は、プロペラシャフト26近傍に設けられ、プロペラシャフト26の回転速度に基づいて車速信号SPDを出力する。
【0034】
電子制御装置100は、これらの各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関10を統括的に制御する。
例えば、電子制御装置100は、上記各種センサの出力信号に基づいて運転者による操作の状態を検知し、燃費の改善や排出ガスの低減、騒音の低減を図るべく、停止条件成立時に機関運転を停止させ、再始動条件成立時に機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する。
【0035】
具体的には、マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされており、この停止条件が成立したことに基づいて機関運転を停止させる。これにより、交差点などで一時停止した際に、シフト位置がニュートラル位置に切り替えられ、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除された場合には機関運転が自動停止されるようになる。また、走行中であってもシフト位置がニュートラル位置に切り替えられ、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除された場合には機関運転が自動停止され、惰性走行するようになる。
【0036】
そして、電子制御装置100は、こうした停止条件の成立に基づく自動停止による機関運転停止中に自動再始動制御を実行し、再始動条件が成立したことに基づいて機関運転を再開させる。
【0037】
電子制御装置100は発進や加速が予測される所定の操作がなされたことを再始動条件とし、機関運転を再開させるが、本実施形態の電子制御装置100にあっては、路面の上り勾配の大きさに応じて再始動の条件とする上記所定の操作を選択的に切り替えるようにしている。
【0038】
以下、図2を参照して本実施形態の電子制御装置100が実行する自動再始動制御について説明する。この自動再始動制御は、停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図2のステップS100に示されるように、路面の上り勾配が閾値Ta以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。具体的には、電子制御装置100は、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度を、車速センサ56により検出された車速に基づいて補正することで路面勾配を算出する。
【0040】
なお、閾値Taの大きさは、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とした場合に、内燃機関10に作用する負荷が安定した再始動を実現することができなくなるほど大きくなる上り勾配の大きさに基づいて設定されている。
【0041】
ステップ100において、路面の上り勾配が閾値Ta以上である旨の判定がなされた場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進む。ステップS110では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。なお、閾値Aは、クラッチペダル53bの操作量が同閾値A以上になったことに基づいてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていることを判定することのできる大きさに設定されていればよい。
【0042】
すなわち、ステップS110において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0043】
ステップS110においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS110:YES)には、ステップS130へ進む。そして、ステップS130において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0044】
一方、ステップS110においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS110:NO)には、ステップS130をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0045】
このように路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0046】
一方、ステップS100において路面の上り勾配が閾値Ta未満である旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)には、ステップS120へと進む。ステップS120では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0047】
すなわち、ステップS120において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0048】
ステップS120においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)には、ステップS130へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0049】
一方、ステップS120においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS120:NO)には、ステップS130をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0050】
このように路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について、図3を参照して説明する。図3は停止条件が成立していることに基づく自動停止中の状態から車両を発進または加速させようとする際に実行される一連の発進操作におけるクラッチペダル53bの操作量の変化とクラッチ21の状態の変化、そして変速段選択機構24の状態の変化の関係を示すタイミングチャートである。
【0051】
マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされているため、自動停止中にはマニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置にある状態でクラッチ21が継合されていることになる。
【0052】
このような自動停止中の状態から発進または加速を行うためには、変速段選択機構24を駆動力が伝達されないニュートラルの状態から後退用の変速段を含むいずれかの変速段が選択されてギアを介して駆動力を伝達することのできる状態(以下、ギアINの状態と称する)に変更した上で、クラッチ21を継合させる必要がある。
【0053】
そのためには、図3に示されるようにまずクラッチペダル53bを踏み込んでクラッチ21を解放し、クラッチ21を解放した状態でシフトレバー52bを操作していずれかの変速段を選択することによって変速段選択機構24をニュートラルの状態からギアINの状態に切り替える。そして、その上で、クラッチペダル53bの踏み込みを解除してクラッチ21を継合させる。
【0054】
このように自動停止中の状態から発進または加速を行うためにはクラッチペダル53bの踏み込み操作、ニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択する位置へシフト位置を変更するシフト操作、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作というクラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作を行う必要がある。こうした一連の発進操作を通じて変速段選択機構24がギアINの状態に切り換えられた上でクラッチ21が継合されることにより、内燃機関10の駆動力がマニュアルトランスミッション20を介して駆動輪29L,29Rに伝達されるようになり、発進または加速が可能な状態となる。
【0055】
図2を参照して説明した第1の実施形態にかかる自動再始動制御では、路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0056】
そのため、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、路面の上り勾配が大きい場合には、図3に示されるタイミングt1において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれ、クラッチ21が解放されてクラッチペダル53bの操作量が閾値Aに達したタイミングt1において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0057】
一方、路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0058】
そのため、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、路面の上り勾配が小さい場合には、図3に示されるタイミングt3において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放された後、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除されてクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から再び閾値A未満に変化するタイミングt3において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0059】
これにより、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、路面の上り勾配が大きいことによって発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷が大きくなることが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作に基づいて内燃機関10が再始動されるようになる。
【0060】
一方で、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、路面の上り勾配が小さいことによって発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷がそれほど大きくないことが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされるまで再始動が行われないようになる。
【0061】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)路面の上り勾配の大きさが閾値Ta未満である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダル53bの踏み込み解除操作とされるのに対し、路面の上り勾配の大きさが閾値Ta以上である場合には再始動の条件となる操作がクラッチペダル53bの踏み込み操作とされる。そのため、路面の上り勾配が大きく、上り勾配の大きさが閾値Ta以上である場合には、内燃機関10の再始動からクラッチ21が継合するまでの期間がより長く確保されるようになる。これにより、クラッチ21が継合するときまでに機関回転速度NEを十分に上昇させ、安定した再始動を実現することができるようになる。一方で、路面の上り勾配が小さく、上り勾配の大きさが閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされたことに基づいて内燃機関10の再始動が行われるようになるため、機関運転を停止させておく期間を長く確保することができる。
【0062】
すなわち、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。なお、本実施形態は図2を参照して説明した第1の実施形態における自動再始動制御に対して車速に応じて閾値Taの大きさを補正する処理を追加したものである。そのため、以下では第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第1の実施形態と異なる自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0063】
図4は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は、第1の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0064】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図4のステップS200に示されるように、車速に基づいて閾値Taを補正する。ここでは、図5に示されるように車速が高いときほど閾値Taが大きくなるように補正する。
【0065】
自動停止により機関運転を停止させたまま惰性走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関10の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ21の継合時における内燃機関10への負荷は小さくなる。そこで、ステップS200において閾値Taを補正する際には、こうした負荷と車速との関係を考慮して、車速が高く、負荷が軽減される分だけ、再始動の条件がクラッチペダル53bの踏み込み解除操作に設定されやすくなるように車速に対する補正量の大きさを設定することが望ましい。
【0066】
こうしてステップS200において車速に基づき閾値Taを補正するとステップS210に進む。そして、ステップS210において電子制御装置100は、路面の上り勾配が閾値Ta以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0067】
そして、ステップ210において、路面の上り勾配が閾値Ta以上である旨の判定がなされた場合(ステップS210:YES)には、ステップS220へと進む。ステップS220では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS110の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0068】
すなわち、ステップS220において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0069】
ステップS220においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS220:YES)には、ステップS240へ進む。そして、ステップS240において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0070】
一方、ステップS220においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS220:NO)には、ステップS240をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0071】
このように路面の上り勾配が閾値Ta以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0072】
一方、ステップS210において路面の上り勾配が閾値Ta未満である旨の判定がなされた場合(ステップS210:NO)には、ステップS230へと進む。ステップS230では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS120の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0073】
すなわち、ステップS230において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0074】
ステップS230においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS230:YES)には、ステップS240へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0075】
一方、ステップS230においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS230:NO)には、ステップS240をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0076】
このように路面の上り勾配が閾値Ta未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について説明する。第1の実施形態と同様に、路面の上り勾配が閾値Ta以上であり、発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷が大きくなることが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作に基づいて再始動が行われるようになる。
【0077】
一方で、路面の上り勾配が閾値Ta未満であり、発進や加速に際してクラッチ21を継合させたときに内燃機関10に作用する負荷がそれほど大きくないことが予測される場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作がなされるまで再始動が行われないようになる。
【0078】
また、車速に基づいて閾値Taを補正し、車速が高いときほど閾値Taが大きな値に設定されるようになっている。そのため、車速が高く、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷が小さい場合には、再始動条件とされる操作がクラッチペダル53bの踏み込み操作に設定されにくくなる。
【0079】
以上説明した第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態における(1)の効果に加え以下の効果が得られるようになる。
(2)クラッチ21を継合させる際に内燃機関10に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。これにより、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
(第3の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第3の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。なお、本実施形態と図2を参照して説明した第1の実施形態とは、自動再始動制御の内容が異なるのみであるため、以下では第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第1の実施形態との相違点である自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0080】
図6は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は第1の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0081】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図6のステップS300に示されるように、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0082】
そして、ステップ300において、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である旨の判定がなされた場合(ステップS300:YES)には、ステップS310へと進む。ステップS310では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS110の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0083】
すなわち、ステップS310において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0084】
ステップS310においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS310:YES)には、ステップS350へ進む。そして、ステップS350において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0085】
一方、ステップS310においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS310:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0086】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0087】
一方、ステップS300において路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満である旨の判定がなされた場合(ステップS300:NO)には、ステップS320へと進む。ステップS320では、電子制御装置100は路面の上り勾配が第1の閾値Tbよりも小さな第2の閾値Tc以上であるか否かを判定する。なお、ここでも路面の勾配は加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0088】
ステップ320において、路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上である旨の判定がなされた場合(ステップS320:YES)には、ステップS330へと進む。ステップS330では、電子制御装置100は、変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かを判定する。変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かの判定は、シフト位置センサ52aによって検出されているシフト位置がニュートラル位置ではなく、後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置であるか否かに基づいて行う。
【0089】
すなわち、ステップS330において電子制御装置100は、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置が後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態ではなくギアINの状態であると判定する。一方で、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がニュートラル位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態でありギアINの状態ではないと判定する。
【0090】
ステップS330において変速段選択機構24がギアINの状態である旨の判定がなされた場合(ステップS330:YES)には、ステップS350へ進む。そして、ステップS350において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0091】
一方、ステップS330において変速段選択機構24がギアINの状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS330:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0092】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc以上である場合には、変速段選択機構24がギアINの状態であることを条件に内燃機関10を再始動させる。すなわちシフト位置をニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を再始動条件とし、このシフト操作がなされたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0093】
一方、ステップS320において路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である旨の判定がなされた場合(ステップS320:NO)には、ステップS340へと進む。ステップS340では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第1の実施形態におけるステップS120の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0094】
すなわち、ステップS340において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0095】
ステップS340においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS340:YES)には、ステップS350へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0096】
一方、ステップS340においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS340:NO)には、ステップS350をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0097】
このように路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次に本実施形態に係る自動再始動制御を実行することによる作用について、図7を参照して説明する。図7は停止条件が成立していることに基づく自動停止中の状態から車両を発進または加速させようとする際に実行される一連の発進操作におけるクラッチペダル53bの操作量の変化とクラッチ21の状態の変化、そして変速段選択機構24の状態の変化の関係を示すタイミングチャートである。
【0098】
マニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置に操作されており、且つクラッチペダル53bが踏み込まれていないことが停止条件とされているため、自動停止中にはマニュアルトランスミッション20のシフト位置がニュートラル位置にある状態でクラッチ21が継合されていることになる。
【0099】
このような自動停止中の状態から発進または加速を行うためには、変速段選択機構24を駆動力が伝達されないニュートラルの状態から後退用の変速段を含むいずれかの変速段が選択されてギアを介して駆動力を伝達することのできるギアINの状態に変更した上で、クラッチ21を継合させる必要がある。
【0100】
そのためには、図7に示されるようにまずクラッチペダル53bを踏み込んでクラッチ21を解放し、クラッチ21を解放した状態でシフトレバー52bを操作していずれかの変速段を選択することによって変速段選択機構24をニュートラルの状態からギアINの状態に切り替える。そして、その上で、クラッチペダル53bの踏み込みを解除してクラッチ21を継合させる。
【0101】
このように自動停止中の状態から発進または加速を行うためにはクラッチペダル53bの踏み込み操作、ニュートラル位置から後退用の変速段を含むいずれかの変速段を選択する位置へシフト位置を変更するシフト操作、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作というクラッチ21の継合によって終了する一連の発進操作を行う必要がある。こうした一連の発進操作を通じて変速段選択機構24がギアINの状態に切り換えられた上でクラッチ21が継合されることにより、内燃機関10の駆動力がマニュアルトランスミッション20を介して駆動輪29L,29Rに伝達されるようになり、発進または加速が可能な状態となる。
【0102】
図6を参照して説明した第3の実施形態にかかる自動再始動制御では、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0103】
そのため、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であり、路面の上り勾配が大きい場合には、図7に示されるタイミングt1において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれ、クラッチ21が解放されてクラッチペダル53bの操作量が閾値Aに達したタイミングt1において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0104】
一方、路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第1の閾値Tbよりも小さな第2の閾値Tc未満である場合には、マニュアルトランスミッション20のシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作がなされたことを再始動条件とし、内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0105】
そのため、路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc未満である場合には、図7に示されるタイミングt2において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放された後、ニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置にシフト位置を変更するシフト操作が実行され、変速段選択機構24の状態がニュートラルの状態からギアINの状態に移行したタイミングt2において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0106】
そして、路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことを条件として内燃機関10を再始動させるようにしている。
【0107】
そのため、路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満であり、路面の上り勾配が小さい場合には、図7に示されるタイミングt3において内燃機関10が再始動されるようになる。すなわち、クラッチペダル53bが踏み込まれてクラッチ21が解放され、変速段選択機構24の状態がギアINの状態に変更された後、クラッチペダル53bの踏み込み操作が解除されてクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から再び閾値A未満に変化するタイミングt3において、内燃機関10が再始動されるようになる。
【0108】
このように本実施形態の自動再始動制御によれば、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作へと一連の発進操作におけるより早い段階で実行される操作に段階的に切り替えられるようになる。
【0109】
以上説明した第3の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)路面の上り勾配が大きく、機関回転速度を十分に上昇させた上でクラッチ21を継合させる必要がある場合ほど一連の発進操作におけるより早い段階で内燃機関10が再始動されるようになる。したがって、路面の上り勾配が大きい場合には機関運転再開からクラッチ21を継合させるまでの期間をより長く確保することができ、クラッチ21を継合させるときまでに機関回転速度NEを上昇させて安定した再始動を実現することができる。一方で、路面の上り勾配が小さいときには一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作が内燃機関10の再始動の条件とされるようになる。そのため、路面の上り勾配が小さく、機関回転速度NEをそれほど上昇させなくても安定した再始動を実現することができる場合には、機関運転を停止させておく期間をより長く確保することができる。すなわち、機関運転を停止させておく期間を確保して燃料消費量の抑制を図る一方で、登坂路における機関運転再開時にも安定した再始動を実現することができる。
【0110】
(2)路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作から、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作へと一連の発進操作におけるより早い段階で実行される操作に段階的に切り替えることが可能となる。これにより、路面の上り勾配の大きさの変化にあわせて内燃機関10の再始動からクラッチ21の継合までの期間を段階的に長くすることができるようになる。そのため、第1の実施形態や第2の実施形態のように再始動の条件をクラッチペダル53bの踏み込み解除操作とクラッチペダル53bの踏み込み操作との間で二段階に切り替える場合よりもきめ細かく再始動のタイミングを変更することができる。
(第4の実施形態)
以下、この発明にかかる車載内燃機関の自動停止始動装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第4の実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、本実施形態は図6を参照して説明した第3の実施形態における自動再始動制御に対して車速に応じて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcの大きさを補正する処理を追加したものである。そのため、以下では第3の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第3の実施形態と異なる自動再始動制御の内容を中心に説明する。
【0111】
図8は本実施形態にかかる電子制御装置100が実行する自動再始動制御の流れを示すフローチャートである。この自動再始動制御は、第3の実施形態における自動再始動制御と同様に停止条件の成立に基づく自動停止中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0112】
この自動再始動制御が開始されると、電子制御装置100は図8のステップS400に示されるように、車速に基づいて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正する。ここでは、図9に示されるように車速が高いときほど第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが大きくなるように補正する。なお、図9に示されるように車速に基づいて補正する場合であっても第1の閾値Tbと第2の閾値Tcの大小関係が変わることはなく、車速が同一であれば第2の閾値Tcは常に第1の閾値Tbよりも小さな値になっている。
【0113】
自動停止により機関運転を停止させたまま惰性走行している最中に車両が登坂路に差し掛かったときに、加速のために一連の発進操作が行われ、これにより内燃機関10の再始動が行われる場合には、車両には慣性力が働いていることになる。そのため、この場合には登坂路の上り勾配の大きさが同一であるならば、車速が高いときほどクラッチ21の継合時における内燃機関10への負荷は小さくなる。そこで、ステップS400において第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正する際には、こうした負荷と車速との関係を考慮して、車速が高く、負荷が軽減される分だけ、再始動の条件が一連の発進操作におけるより遅いタイミングで実行される操作に設定されやすくなるように補正量の大きさを設定することが望ましい。
【0114】
こうしてステップS400において車速に基づき第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcを補正するとステップS410に進む。そして、ステップS410において電子制御装置100は、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上であるか否かを判定する。路面の勾配は、上記第1の実施形態におけるステップS100の処理と同様に、加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0115】
そして、ステップ410において、路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である旨の判定がなされた場合(ステップS410:YES)には、ステップS420へと進む。ステップS410では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われているか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS310の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上であるか否かに基づいて行う。
【0116】
すなわち、ステップS420において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていると判定する一方、クラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の場合にはクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていないと判定する。
【0117】
ステップS420においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS420:YES)には、ステップS460へ進む。そして、ステップS460において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0118】
一方、ステップS420においてクラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS420:NO)には、ステップS460をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0119】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb以上である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0120】
一方、ステップS410において路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満である旨の判定がなされた場合(ステップS410:NO)には、ステップS430へと進む。ステップS430では、電子制御装置100は路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上であるか否かを判定する。なお、ここでも路面の勾配は加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出される。
【0121】
ステップ430において、路面の上り勾配が第2の閾値Tc以上である旨の判定がなされた場合(ステップS430:YES)には、ステップS440へと進む。ステップS440では、電子制御装置100は、変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かを判定する。変速段選択機構24がギアINの状態であるか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS330の処理と同様に、シフト位置センサ52aによって検出されているシフト位置がいずれかの変速段を選択するシフト位置であるか否かに基づいて行う。
【0122】
すなわち、ステップS440において電子制御装置100は、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がいずれかの変速段を選択するシフト位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態ではなくギアINの状態であると判定する。一方で、シフト位置センサ52aによって検出されるシフト位置がニュートラル位置である場合には変速段選択機構24がニュートラルの状態でありギアINの状態ではないと判定する。
【0123】
ステップS440において変速段選択機構24がギアINの状態である旨の判定がなされた場合(ステップS440:YES)には、ステップS460へ進む。そして、ステップS460において電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0124】
一方、ステップS440において変速段選択機構24がギアINの状態ではない旨の判定がなされた場合(ステップS440:NO)には、ステップS460をスキップし、電子制御装置100は内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了させる。
【0125】
このように路面の上り勾配が第1の閾値Tb未満であり、且つ第2の閾値Tc以上である場合には、変速段選択機構24がギアINの状態であることを条件に内燃機関10を再始動させる。すなわちシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を再始動条件とし、このシフト操作がなされたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
【0126】
一方、ステップS430において路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である旨の判定がなされた場合(ステップS430:NO)には、ステップS450へと進む。ステップS450では、電子制御装置100は、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かを判定する。クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われているか否かの判定は、第3の実施形態におけるステップS340の処理と同様にクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態に閾値Aを跨いで変化したか否かに基づいて行う。
【0127】
すなわち、ステップS450において電子制御装置100は、クラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態から閾値A未満の状態まで閾値Aを跨いで変化した場合には、クラッチペダル53bの踏み込み操作がなされた後にクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていると判定する。一方で、電子制御装置100はクラッチペダル53bの操作量が閾値A未満の状態が継続している場合またはクラッチペダル53bの操作量が閾値A以上の状態が継続している場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていないと判定する。
【0128】
ステップS450においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われている旨の判定がなされた場合(ステップS450:YES)には、ステップS460へ進み、電子制御装置100は内燃機関10を再始動させる。
【0129】
一方、ステップS450においてクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていない旨の判定がなされた場合(ステップS450:NO)には、ステップS460をスキップし、内燃機関10の再始動を行わずにこの一連の処理を一旦終了する。
【0130】
このように路面の上り勾配が第2の閾値Tc未満である場合には、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を再始動条件とし、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われたことに基づいて内燃機関10を再始動させる。
(作用)
次にこのような自動再始動制御を実行することによる作用について説明する。
【0131】
第3の実施形態と同様に、路面の上り勾配の大きさが大きくなるのに伴い、再始動の条件となる操作が、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作、シフト位置の変更操作、クラッチペダル53bの踏み込み操作の順に一連の発進操作における早い段階で実行される操作へと段階的に切り替えられるようになる。
【0132】
また、車速に基づいて第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが補正され、車速が高いときほど再始動の条件となる操作を切り替える第1の閾値Tb及び第2の閾値Tcが大きな値にされる。そのため、車速が高く、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷が小さい場合には、再始動条件とされる操作が一連の発進操作における早い段階で実行される操作に設定されにくくなる。
【0133】
以上説明した第4の実施形態によれば、上記第3の実施形態における(1)及び(2)の効果に加え以下の効果が得られるようになる。
(3)クラッチ21を継合させる際に内燃機関10に作用する負荷の大きさの変化にあわせて再始動の条件となる操作を切り替える勾配の大きさを変更し、必要以上に再始動のタイミングが早められることを抑制することができるようになる。これにより、クラッチ21の継合時に内燃機関10に作用する負荷の大きさに合わせた態様で機関再始動の条件を切り替え、燃料消費量の増大をより効果的に抑制することができる。
【0134】
なお、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。
・クラッチペダル53bの踏み込み操作が行われていることを判定するために利用する閾値とクラッチペダル53bの踏み込み解除操作が行われていることを判定するための閾値をともに「閾値A」にする構成を例示したが、踏み込み操作を判定するための閾値と踏み込み解除操作を判定するための閾値は異なっていてもよい。
【0135】
すなわち、それぞれの閾値の大きさは、クラッチペダル53bの踏み込み操作を判定することのできる大きさ、クラッチペダル53bの踏み込み解除操作を判定することのできる大きさにそれぞれ設定されていればよいため、これらの閾値の値はそれぞれに変更することができる。
【0136】
・再始動の条件とする操作は、発進や加速に先立って行われる一連の発進操作に含まれる操作うち、そのタイミングが異なるものの中から選択すればよい。そのため、上記各実施形態において例示したクラッチペダル53bの踏み込み操作や踏み込み解除操作、シフト操作以外の操作を選択肢に加え、二段階、三段階だけでなく四段階以上に始動条件を切り替えるようにしてもよい。また、上記各実施形態と同様に二段階、三段階に始動条件を切り替える場合であっても、選択肢とする操作をクラッチペダル53bの踏み込み操作や踏み込み解除操作、シフト操作以外の操作に変更して実施することもできる。
【0137】
・路面の勾配は、上記各実施形態において例示したように加速度センサ50により検出された車両前後方向の加速度に基づいて算出する方法のみならず、他の手段によって検出してもよい。
【0138】
・また、車速の取得方法は、上記実施形態におけるような車速センサ56を用いて検出する方法のみならず、他の検出手段用いて取得する方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…スロットルバルブ、13…モータ、14…出力軸、20…マニュアルトランスミッション、21…クラッチ、22…フライホイール、23…クラッチディスク、24…変速段選択機構、25…入力軸、26…プロペラシャフト、27…ディファレンシャル、28L,28R…ドライブシャフト、29L,29R…駆動輪、50…加速度センサ、51…ブレーキ圧センサ、52a…シフト位置センサ、52b…シフトレバー、53a…クラッチセンサ、53b…クラッチペダル、54…エアフロメータ、55…回転速度センサ、56…車速センサ、100…電子制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、内燃機関とマニュアルトランスミッションとの間の接続を断接するクラッチの継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関を再始動させて機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置において、
再始動の条件となる前記所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、
路面の上り勾配が大きいときほど前記一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど前記一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
路面の上り勾配が閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、
路面の上り勾配が前記閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
車速が高いときほど前記閾値を大きな値にする
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
路面の上り勾配が第1の閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、
路面の上り勾配が前記第1の閾値未満であり、且つ同第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上である場合には、前記マニュアルトランスミッションのシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を前記所定の操作として設定し、
路面の上り勾配が前記第2の閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
車速が高いときほど前記第1の閾値及び前記第2の閾値を大きな値にする
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項1】
停止条件が成立したときに機関運転を停止させる一方、内燃機関とマニュアルトランスミッションとの間の接続を断接するクラッチの継合によって終了する一連の発進操作に含まれる所定の操作が実行されたことを条件に内燃機関を再始動させて機関運転を再開させる自動停止始動制御を実行する車載内燃機関の自動停止始動装置において、
再始動の条件となる前記所定の操作を路面の上り勾配の大きさに応じて変更し、
路面の上り勾配が大きいときほど前記一連の発進操作におけるより早い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する一方、路面の上り勾配が小さいときほど前記一連の発進操作におけるより遅い段階において実行される操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
路面の上り勾配が閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、
路面の上り勾配が前記閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
車速が高いときほど前記閾値を大きな値にする
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
路面の上り勾配が第1の閾値以上である場合には、前記クラッチを操作するクラッチペダルの踏み込み操作を前記所定の操作として設定する一方、
路面の上り勾配が前記第1の閾値未満であり、且つ同第1の閾値よりも小さい第2の閾値以上である場合には、前記マニュアルトランスミッションのシフト位置をニュートラル位置からいずれかの変速段を選択するシフト位置に変更するシフト操作を前記所定の操作として設定し、
路面の上り勾配が前記第2の閾値未満である場合には、前記クラッチペダルの踏み込み操作後の同クラッチペダルの踏み込み解除操作を前記所定の操作として設定する
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載内燃機関の自動停止始動装置において、
車速が高いときほど前記第1の閾値及び前記第2の閾値を大きな値にする
ことを特徴とする車載内燃機関の自動停止始動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−36343(P2013−36343A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170406(P2011−170406)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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