説明

車載情報通信装置、路側情報通信装置並びに通信システム

【課題】容疑車両等の追跡対象車両を追跡中に追跡困難な状態になった場合でも追跡の継続を容易とすることが可能となる車載情報通信装置等を提供する。
【解決手段】追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する追跡状態検出部と、外部の車載情報通信装置と通信を行う車車間通信部と、を備え、前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記車車間通信部は自車周辺の車両に搭載された車載情報通信装置に対して前記追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信する車載情報通信装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容疑車両等を追跡する際に用いる車載情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、盗難車両や違法車両の追跡が容易となるための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1で開示されている車両ナンバープレート認識システムでは、車載機がカメラで撮影した画像を解析して現在車両に取り付けられているナンバープレートの番号を認識し、認識されたプレート番号と正規プレート番号とを照合し番号が異なる場合、情報収集センタへ現在のプレート番号等を送信する。そして、情報収集センタは、受信したプレート番号と正規プレート番号とを照合し、照合結果を警察関連機関へ音声等により通知する。これにより、盗難車両や違法車両の追跡に役立てることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−58980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、パトカーなどの警察車両が容疑車両を追跡する場合、警官が不審車両を発見し、その後追跡を開始するのが常であるが、容疑車両が速度を上げて逃走したり、容疑車両と追跡する警察車両の間に他の一般車両が入り込んだりして、容疑車両を見失い追跡が困難になる場合があった。上記特許文献1の技術はこのような問題を解決するものではない。
【0005】
そこで、本発明は、容疑車両等の追跡対象車両を追跡中に追跡困難な状態になった場合でも追跡の継続を容易とすることが可能となる車載情報通信装置、路側情報通信装置並びに通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の車載情報通信装置は、追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する追跡状態検出部と、外部の車載情報通信装置と通信を行う車車間通信部と、を備え、
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記車車間通信部は自車周辺の車両に搭載された車載情報通信装置に対して前記追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信する構成とする。
【0007】
このような構成によれば、容疑車両等の追跡対象車両を追跡中に追跡困難な状態となった場合でも、車車間通信部が自車周辺の車両に搭載された車載情報通信装置に対して追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信するので、追跡対象車両の追跡に有効な情報を取得することが可能となり、追跡の継続を容易とすることができる。
【0008】
また、上記構成において、前記追跡状態検出部は、前記追跡対象車両と自車との距離を算出し、算出した距離が所定距離以上であるか否かにより前記追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する構成としてもよい。
【0009】
また、上記いずれかの構成において、前記車車間通信部は、自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両に対して前記追跡対象車両情報の要求を送信する構成としてもよい。これにより、追跡対象車両情報を取得できる可能性が高まる。
【0010】
また、上記いずれかの構成において、前記追跡対象車両情報の要求には、前記追跡対象車両の情報である車両情報を含めるようにしてもよい。これにより、追跡対象車両情報の要求をされた車載情報通信装置が車両情報をもとに追跡対象車両を検出することが可能となる。
【0011】
また、本構成において、前記車両情報は、入力部を介して使用者により入力された情報、または自車に設けられた撮影部により撮影された映像情報を車載情報通信装置が備える解析部により解析して検出された情報であるようにしてもよい。これにより、使用者による正確な車両情報の入力や、車両情報の自動検出が可能となる。
【0012】
また、上記いずれかの構成において、前記追跡対象車両情報の要求を行ってから所定時間内に前記車車間通信部が前記追跡対象車両情報を受信できない場合、送信範囲を広げた上で前記車車間通信部は再度前記追跡対象車両情報の要求を送信する構成としてもよい。これにより、送信範囲を広げることで追跡対象車両情報を取得できる可能性が高まる。
【0013】
また、上記いずれかの構成において、前記追跡対象車両情報は、車両位置情報と、車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであるようにしてもよい。これにより、車両位置情報と撮影した映像情報との少なくともいずれかに基づき追跡を継続することが可能となる。
【0014】
また、上記いずれかの構成において、前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記車車間通信部は自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両に搭載された車載情報通信装置に対して車両退避要求を送信する構成としてもよい。これにより、車両退避要求を受けた車載情報通信装置が搭載された車両の運転者は車両を退避させることができ、これにより追跡の継続を容易にすることができる。
【0015】
また、上記いずれかの構成において、外部の路側情報通信装置と通信を行う路車間通信部を備え、前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記路車間通信部は自車周辺の路側情報通信装置に対して前記追跡対象車両情報の要求を送信する構成としてもよい。これにより、例えば交差点や店舗などに設置された路側情報通信装置からも追跡対象車両情報を取得することが可能となる。
【0016】
また、上記目的を達成するために本発明の車載情報通信装置は、外部の車載情報通信装置と通信を行う車車間通信部を備え、
前記車車間通信部は、追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を送信する構成とする。
【0017】
このような構成によれば、追跡対象車両を追跡している車両に対して追跡対象車両情報を送信することができ、追跡の継続を容易とすることができる。
【0018】
また、上記構成において、前記追跡対象車両情報は、自車位置情報と、車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであるようにしてもよい。
【0019】
また、上記いずれかの構成において、前記車車間通信部が前記追跡対象車両情報の要求を受信すると車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報を解析する映像解析部を備え、
前記映像解析部が前記追跡対象車両情報の要求に含まれる前記追跡対象車両の情報を検出すると、前記車車間通信部は前記追跡対象車両情報を送信する構成としてもよい。
【0020】
また、上記目的を達成するために本発明の路側情報通信装置は、外部の車載情報通信装置と通信を行う路車間通信部を備え、
前記路車間通信部は、追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を送信する構成とする。
【0021】
このような構成によれば、追跡対象車両を追跡している車両に対して追跡対象車両情報を送信することができ、追跡の継続を容易とすることができる。
【0022】
また、上記構成において、前記追跡対象車両情報は、装置位置情報と、装置に備えられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであるようにしてもよい。
【0023】
また、上記いずれかの構成において、撮影部と、前記路車間通信部が前記追跡対象車両情報の要求を受信すると前記撮影部により撮影された映像情報を解析する映像解析部と、を備え、
前記映像解析部が前記追跡対象車両情報の要求に含まれる前記追跡対象車両の情報を検出すると、前記路車間通信部は前記追跡対象車両情報を送信する構成としてもよい。
【0024】
また、上記目的を達成するために本発明の通信システムは、追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する追跡状態検出部と、外部の車載情報通信装置と通信を行う第1車車間通信部と、を備えた第1車載情報通信装置と、
外部の車載情報通信装置と通信を行う第2車車間通信部を備えた第2車載情報通信装置と、を有する通信システムであって、
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記第1車車間通信部は前記第2車車間通信部を介して前記第2車載情報通信装置に対して前記追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信し、前記第2車車間通信部は前記追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を前記第1車載情報通信装置に対して送信する構成とする。
【0025】
このような構成によれば、追跡対象車両の追跡が困難な状態となった場合でも、追跡している車両に搭載された第1車載情報通信装置が第2車載情報通信装置より追跡対象車両情報を取得できるので、追跡の継続を容易とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、容疑車両等の追跡対象車両を追跡中に追跡困難な状態になった場合でも追跡の継続を容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る警察車両用の車載情報通信装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る一般車両用の車載情報通信装置の概略構成図である。
【図3】本発明に係る警察車両用の車載情報通信装置が行う処理に関するフローチャートである。
【図4】容疑車両追跡時の道路状況の一例を示す図である。
【図5】容疑車両追跡時の道路状況の別例を示す図である。
【図6】本発明に係る一般車両用の車載情報通信装置が行う処理に関するフローチャートである。
【図7】送信範囲を広げた状態の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る路側ビデオカメラ装置の設置例を示す図である。
【図9】本発明に係る路側ビデオカメラ装置の概略構成図である。
【図10】本発明に係る警察車両用の車載情報通信装置が行う処理の変形例に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る警察車両用の車載情報通信装置の概略構成図を示す。この車載情報通信装置は、自車位置に応じた地図表示機能や経路探索機能も有している。
【0029】
図1に示す車載情報通信装置100は、警察車両に搭載され、現在位置検出部1と、地図記憶部2と、メモリ装置3と、車車間通信部4と、路車間通信部5と、入力部6と、表示部7と、音声報知部8と、制御部9と、を備えている。また、警察車両の前方に搭載されたビデオカメラ装置10が制御部9に接続され、警察車両に搭載されたアンテナ11及びアンテナ12がそれぞれ車車間通信部4及び路車間通信部5に接続される。
【0030】
現在位置検出部1は、地球上空を周回している複数のGPS(Global Positioning System)衛星から時刻情報を含む電波を受信するGPS受信機、角速度を検出するジャイロセンサ、加速度を検出する加速度センサなどから構成され、車両の現在位置に加えて車両の進行方向、車両の走行速度を検出する。
【0031】
地図記憶部2は、道路の分岐地点等の結節点をノードとする道路ノードデータと、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路リンクデータとからなる道路データと、地図画像と、を含む地図情報を記憶する。
【0032】
道路ノードデータには、道路ノード番号、位置座標、接続リンク本数、分岐地点名称等が含まれる他、分岐地点から所定距離だけ離れた案内地点において、右左折、直進等の経路案内を行う経路案内データおよび案内地点の位置座標が記憶される。
【0033】
また、道路リンクデータには、始点および終点となる道路ノード番号、道路種別、ノード間の距離情報であるリンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータには、さらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所等のデータが付与される。道路種別とは、高架道路と高架下道路との別、高速道路や有料道路の別、国道や都道府県道等の別を含む情報である。
メモリ装置3は、ビデオカメラ装置10で撮影された映像情報などを格納する。車車間通信部4は、アンテナ11を介して後述する一般車両用の車載情報通信装置と無線通信を行う。路車間通信部5は、アンテナ12を介して後述する路側ビデオカメラ装置と無線通信を行う。
【0034】
入力部6は、各種操作入力を行うためのキーボード、各種ハードキー、タッチパネルから構成される。
【0035】
表示部7は、地図画像や最適経路画像等、各種画像を表示して使用者が視認できるようにするためのものであり、液晶ディスプレイなどで構成される。
【0036】
音声報知部8は、経路案内における案内報知等、各種音声報知を行うものでありスピーカ等で構成される。
【0037】
制御部9は、CPUおよびRAM/ROMからなるプロセッサで構成され、ROMに記録された制御プログラムにしたがって車載情報通信装置100の各部の動作を制御するものである。
【0038】
また、図2に、本発明の一実施形態に係る一般車両用の車載情報通信装置の概略構成図を示す。この車載情報通信装置も、自車位置に応じた地図表示機能や経路探索機能を有している。
【0039】
図2で示す車載情報通信装置200は、一般車両に搭載され、現在位置検出部13と、地図記憶部14と、メモリ装置15と、車車間通信部16と、入力部17と、表示部18と、音声報知部19と、制御部20と、を備えている。また、一般車両の前方に搭載されたビデオカメラ装置21が制御部20に接続され、一般車両に搭載されたアンテナ22が車車間通信部16に接続される。
【0040】
車載情報通信装置200の各構成については上述した車載情報通信装置100のものと同様であるので詳述は省くが、車車間通信部16は、アンテナ22を介して車載情報通信装置100の車車間通信部4と無線通信を行う。
【0041】
次に、本発明における容疑車両追跡援助機能について図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、容疑車両にも一般車両として車載情報通信装置200が搭載されているものとする。
【0042】
警官が不審車両を発見し、警察車両により容疑車両の追跡を開始し、警官が容疑車両のナンバー情報、車種情報並びにカラー情報を車載情報通信装置100の入力部6で入力し追跡開始操作を行うと、図3のフローチャートが開始される。
【0043】
まず、ステップS31で、制御部9は、警察車両周辺の一般車両に対して位置情報要求を車車間通信部4を用いて送信する。一般車両に搭載された車載情報通信装置200の制御部20は、車車間通信部16を介して位置情報要求を受信すると、警察車両に対して現在位置検出部13で検出した位置情報を車載情報通信装置200を識別するIDと共に車車間通信部16を用いて送信する。これにより、車載情報通信装置100の制御部9には、周辺一般車両の位置情報およびIDが収集される。そして、制御部9は、収集された位置情報のうち自車前方所定範囲に属し自車位置との距離が最小となる位置情報に対応するIDを特定する。特定されたIDは、容疑車両が搭載する車載情報通信装置200のIDとなるため、容疑車両を特定できる。
【0044】
次に、ステップS32で、制御部9は、上記特定したIDを送信先として車車間通信部4を用いて位置情報要求を送信する。すると、上記IDの車載情報通信装置200が有する制御部20は、車車間通信部16を介して位置情報要求を受信し、現在位置検出部13で検出した位置情報を車車間通信部16を用いて車載情報通信装置100に送信する。そして、車載情報通信装置100の制御部9は、受信した位置情報と現在位置検出部1で検出した位置情報に基づき、これらの位置間の距離を算出する。即ち、容疑車両と警察車両との距離を算出することとなる。
【0045】
そして、ステップS33で、上記算出した距離が所定距離以上であるか否かを制御部9が判定し、所定距離より短ければ(ステップS33のN)、ステップS32に戻り、再び容疑車両と警察車両との距離を算出する。そして、もし算出した距離が所定距離以上となった場合は(ステップS33のY)、容疑車両が警察車両から遠くなり容疑車両の追跡が困難になったとして、ステップS34に進む。
【0046】
ステップS34で、制御部9は、警察車両周辺の一般車両に対して位置方向情報要求を車車間通信部4を用いて送信する。一般車両に搭載された車載情報通信装置200の制御部20は、車車間通信部16を介して位置方向情報要求を受信すると、警察車両に対して現在位置検出部13で検出した位置情報および方向情報を車載情報通信装置200を識別するIDと共に車車間通信部16を用いて送信する。これにより、車載情報通信装置100の制御部9には、周辺一般車両の位置情報、方向情報およびIDが収集される。そして、制御部9は、収集された位置情報および方向情報に基づき、自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両に対応するID並びに自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両に対応するIDを特定する。
【0047】
例えば、図4に示すように警察車両Xの前方に分岐がない道路において容疑車両Yおよび一般車両A、B、Cが走行する場合、上記自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両とは、前方から警察車両Xに向かって走行する一般車両Aとなり、上記自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両とは、一般車両B、Cおよび容疑車両Yとなる。
【0048】
また、例えば、図5に示すように警察車両Xの前方に分岐が有る道路において容疑車両Yおよび一般車両D〜Gが走行する場合、上記自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両とは、前方から警察車両Xに向かって走行する一般車両Dに加え、分岐先から警察車両Xに向かって走行してくる一般車両Eとなり、上記自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両とは、一般車両F、Gおよび容疑車両Yとなる。
【0049】
次に、ステップS35で、制御部9は、自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両に対応する上記特定したID(但し、容疑車両と特定したIDは除く)を送信先として容疑車両の追跡に有効な情報である容疑車両情報要求を車車間通信部4を用いて送信する。容疑車両情報要求には、入力部6により入力された容疑車両のナンバー情報、車種情報並びにカラー情報を含めるようにする。
【0050】
車載情報通信装置200の制御部20が車車間通信部16を介して容疑車両情報要求を受信すると、図6のフローチャートに示す処理が開始される。ステップS61で、制御部20は、ビデオカメラ装置21に撮影を開始させ、撮影された映像情報はメモリ装置15に格納される。
【0051】
そして、ステップS62で、制御部20は、メモリ装置15に格納された映像情報を解析し、受信した容疑車両情報要求に含まれるナンバー情報のナンバー、車種情報の車種並びにカラー情報の車体色をもし検出できれば(ステップS62のY)、ステップS63に進み、制御部20は、現在位置検出部13で検出した位置情報およびメモリ装置15に格納した映像情報を容疑車両情報として車車間通信部16を用いて車載情報通信装置100に送信する。一方、容疑車両を検出できなければ(ステップS62のN)、情報送信を行わずにそのまま処理を終了する(エンド)。
【0052】
また、ステップS35では、制御部9は、自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両に対応する上記特定したID(但し、容疑車両と特定したIDは除く)を送信先として退避要求を車車間通信部4を用いて送信する。退避要求には、入力部6により入力された容疑車両のナンバー情報、車種情報並びにカラー情報を含めるようにする。
【0053】
車載情報通信装置200の制御部20が車車間通信部16を介して退避要求を受信すると、制御部20は、受信した退避要求に含まれるナンバー情報、車種情報並びにカラー情報と共に退避指示を表示部18に表示させる。これにより、警察車両前方を離れる方向に走行する一般車両の運転者が退避指示およびナンバー情報等を確認でき、車両を退避させることができるので、警察車両は容疑車両の追跡を継続し易くなる。
【0054】
ステップS35で容疑車両情報要求を行ってから所定時間内に制御部9が車車間通信部4を介して位置情報および映像情報を受信した場合は(ステップS36のY)、ステップS37に進み、制御部9は、地図画像に重畳させて位置情報が示す位置を表示部7に表示させる。なお、所定時間内に複数の位置情報を受信した場合は、複数の位置を表示させる。そして、表示された位置を入力部6により選択されると、制御部9は選択された位置に応じた映像情報を表示部7に表示させる。このような位置表示を警察車両の運転者が確認することで、その位置へ向かって警察車両を走行させることができ、容疑車両の追跡継続を容易とすることができる。
【0055】
一方、ステップS35で容疑車両情報要求を行ってから所定時間内に制御部9が車車間通信部4を介して位置情報および映像情報を受信できなかった場合は(ステップS36のN)、ステップS38に進み、制御部9は、車車間送信の送信範囲を既に広げているか否かを判定する。もし送信範囲を未だ広げていなければ(ステップS38のN)、車車間送信の送信範囲を広げた上でステップS34およびステップS35の処理を再度行う。図7に、送信範囲を広げた状態の一例を示す。ここでは、送信範囲をS1からS2へ広げている。
【0056】
そして、所定時間内に情報を受信できれば(ステップS36のY)、ステップS37に進み位置表示が行われ、受信できなければ(ステップS36のN)、ステップS38に進む。ステップS38では、送信範囲は既に広げていると判定されるので(ステップS38のY)、そのまま処理終了となる(エンド)。
【0057】
初期の送信範囲では一般車両から位置情報等を取得できなかった場合でも、上記のように送信範囲を広げて容疑車両情報要求を行うことで、一般車両から位置情報等を取得できる可能性があり、容疑車両の追跡継続を容易とすることができる。
【0058】
次に、路側ビデオカメラ装置を用いた本発明の実施形態について以下説明する。本実施形態では、例えば図8に示すように、路側ビデオカメラ装置300が交差点や店舗に設置されているものとする。
【0059】
路側ビデオカメラ装置300の概略構成を図9に示す。図9に示すように、路側ビデオカメラ装置300は、撮影部23と、メモリ装置24と、路車間通信部25と、制御部26と、を備えており、路車間通信部25にはアンテナ27が接続される。撮影部23は常に道路の状況を撮影し、撮影した映像情報はメモリ装置24に格納されつつ、順次古い映像情報はメモリ装置24から消去される。また、路車間通信部25は、アンテナ27を介して車載情報通信装置100の路車間通信部5との間で無線通信を行う。
【0060】
図10に、路側ビデオカメラ装置を用いた実施形態における車載情報通信装置100の処理に関するフローチャートを示す。本フローチャートは、上述した図3のフローチャートの変形例となる。
【0061】
図10のフローチャートが開始し、ステップS103で容疑車両と自車との距離が所定距離以上となった場合(ステップS103のY)、ステップS104に進み、車両の特定と共に路側ビデオカメラ装置の特定が行われる。具体的には、制御部9は、警察車両周辺の路側ビデオカメラ装置に対して位置情報要求を路車間通信部5を用いて送信する。路側ビデオカメラ装置300の制御部26は、路車間通信部25を介して位置情報要求を受信すると、警察車両に対して予め登録された位置情報を路側ビデオカメラ装置300を識別するIDと共に路車間通信部25を用いて送信する。これにより、車載情報通信装置100の制御部9には、周辺の路側ビデオカメラ装置の位置情報およびIDが収集される。そして、制御部9は、収集された位置情報に基づき、自車前方所定範囲に属する位置情報に対応するIDを特定する。即ち、自車前方所定範囲に位置する路側ビデオカメラ装置を特定する。
【0062】
次に、ステップS105で、制御部9は、上記特定した路側ビデオカメラ装置のIDを送信先として容疑車両情報要求を路車間通信部5を用いて送信する。容疑車両情報要求には、入力部6により入力された容疑車両のナンバー情報、車種情報並びにカラー情報を含めるようにする。
【0063】
すると、上記IDの路側ビデオカメラ装置300が有する制御部26は、路車間通信部25を介して容疑車両情報要求を受信すると、メモリ装置24に格納された映像情報を解析し、受信した容疑車両情報要求に含まれるナンバー情報のナンバー、車種情報の車種並びにカラー情報の車体色をもし検出できれば、制御部26は、予め登録された位置情報およびメモリ装置24に格納した映像情報を路車間通信部25を用いて車載情報通信装置100に送信する。一方、メモリ装置24に格納された映像情報を所定時間分解析しても容疑車両を検出できなければ、情報送信を行わずにそのまま処理を終了する。
【0064】
ステップS105で容疑車両情報要求を行ってから所定時間内に制御部9が車車間通信部4または路車間通信部5を介して位置情報および映像情報を受信した場合は(ステップS106のY)、ステップS107に進み、制御部9は、地図画像に重畳させて位置情報が示す位置を表示部7に表示させる。なお、所定時間内に複数の位置情報を受信した場合は、複数の位置を表示させる(一般車両と路側ビデオカメラ装置の両方から受信した場合は受信した全ての位置を表示する)。そして、表示された位置を入力部6により選択されると、制御部9は選択された位置に応じた映像情報を表示部7に表示させる。このような路側ビデオカメラ装置の位置表示を警察車両の運転者が確認することで、その位置へ向かって警察車両を走行させることができ、容疑車両の追跡継続を容易とすることができる。
【0065】
一方、ステップS105で容疑車両情報要求を行ってから所定時間内に制御部9が車車間通信部4および路車間通信部5を介して位置情報および映像情報を受信できなかった場合は(ステップS106のN)、ステップS108に進み、制御部9は、車車間送信および路車間送信の送信範囲を既に広げているか否かを判定する。もし送信範囲を未だ広げていなければ(ステップS108のN)、車車間送信および路車間送信の送信範囲を広げた上でステップS104およびステップS105の処理を再度行う。
【0066】
そして、所定時間内に情報を受信できれば(ステップS106のY)、ステップS107に進み位置表示が行われ、受信できなければ(ステップS106のN)、ステップS108に進む。ステップS108では、送信範囲は既に広げていると判定されるので(ステップS108のY)、そのまま処理終了となる(エンド)。
【0067】
初期の送信範囲では路側ビデオカメラ装置から位置情報等を取得できなかった場合でも、上記のように路車間送信の送信範囲を広げて容疑車両情報要求を行うことで、路側ビデオカメラ装置から位置情報等を取得できる可能性があり、容疑車両の追跡継続を容易とすることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば実施形態は種々変更が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、容疑車両のナンバー情報等は使用者が入力していたが、追跡開始操作がされると制御部9がビデオカメラ装置10に容疑車両を撮影させ、メモリ装置3に撮影した映像情報を格納し、制御部9が格納された映像情報を解析してナンバー情報等を検出するようにしてもよい。さらに、このように検出したナンバー情報等を警察本部等のセンターに送信できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 現在位置検出部
2 地図記憶部
3 メモリ装置
4 車車間通信部
5 路車間通信部
6 入力部
7 表示部
8 音声報知部
9 制御部
10 ビデオカメラ装置
11 アンテナ
12 アンテナ
13 現在位置検出部
14 地図記憶部
15 メモリ装置
16 車車間通信部
17 入力部
18 表示部
19 音声報知部
20 制御部
21 ビデオカメラ装置
22 アンテナ
23 撮影部
24 メモリ装置
25 路車間通信部
26 制御部
27 アンテナ
100、200 車載情報通信装置
300 路側ビデオカメラ装置
X 警察車両
Y 容疑車両
A〜G 一般車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する追跡状態検出部と、外部の車載情報通信装置と通信を行う車車間通信部と、を備え、
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記車車間通信部は自車周辺の車両に搭載された車載情報通信装置に対して前記追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信することを特徴とする車載情報通信装置。
【請求項2】
前記追跡状態検出部は、前記追跡対象車両と自車との距離を算出し、算出した距離が所定距離以上であるか否かにより前記追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出することを特徴とする請求項1に記載の車載情報通信装置。
【請求項3】
前記車車間通信部は、自車前方所定範囲に位置し自車へ向かって走行する車両に対して前記追跡対象車両情報の要求を送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載情報通信装置。
【請求項4】
前記追跡対象車両情報の要求には、前記追跡対象車両の情報である車両情報を含めることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車載情報通信装置。
【請求項5】
前記車両情報は、入力部を介して使用者により入力された情報、または自車に設けられた撮影部により撮影された映像情報を車載情報通信装置が備える解析部により解析して検出された情報であることを特徴とする請求項4に記載の車載情報通信装置。
【請求項6】
前記追跡対象車両情報の要求を行ってから所定時間内に前記車車間通信部が前記追跡対象車両情報を受信できない場合、送信範囲を広げた上で前記車車間通信部は再度前記追跡対象車両情報の要求を送信することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車載情報通信装置。
【請求項7】
前記追跡対象車両情報は、車両位置情報と、車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の車載情報通信装置。
【請求項8】
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記車車間通信部は自車前方所定範囲に位置し自車から離れる方向へ走行する車両に搭載された車載情報通信装置に対して車両退避要求を送信することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車載情報通信装置。
【請求項9】
外部の路側情報通信装置と通信を行う路車間通信部を備え、
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記路車間通信部は自車周辺の路側情報通信装置に対して前記追跡対象車両情報の要求を送信することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車載情報通信装置。
【請求項10】
外部の車載情報通信装置と通信を行う車車間通信部を備え、
前記車車間通信部は、追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を送信することを特徴とする車載情報通信装置。
【請求項11】
前記追跡対象車両情報は、自車位置情報と、車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の車載情報通信装置。
【請求項12】
前記車車間通信部が前記追跡対象車両情報の要求を受信すると車両に設けられた撮影部により撮影された映像情報を解析する映像解析部を備え、
前記映像解析部が前記追跡対象車両情報の要求に含まれる前記追跡対象車両の情報を検出すると、前記車車間通信部は前記追跡対象車両情報を送信することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の車載情報通信装置。
【請求項13】
外部の車載情報通信装置と通信を行う路車間通信部を備え、
前記路車間通信部は、追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を送信することを特徴とする路側情報通信装置。
【請求項14】
前記追跡対象車両情報は、装置位置情報と、装置に備えられた撮影部により撮影された映像情報との少なくともいずれかであることを特徴とする請求項13に記載の路側情報通信装置。
【請求項15】
撮影部と、前記路車間通信部が前記追跡対象車両情報の要求を受信すると前記撮影部により撮影された映像情報を解析する映像解析部と、を備え、
前記映像解析部が前記追跡対象車両情報の要求に含まれる前記追跡対象車両の情報を検出すると、前記路車間通信部は前記追跡対象車両情報を送信することを特徴とする請求項13または請求項14に記載の路側情報通信装置。
【請求項16】
追跡対象車両を追跡困難であるか否かを検出する追跡状態検出部と、外部の車載情報通信装置と通信を行う第1車車間通信部と、を備えた第1車載情報通信装置と、
外部の車載情報通信装置と通信を行う第2車車間通信部を備えた第2車載情報通信装置と、を有する通信システムであって、
前記追跡状態検出部が追跡困難であることを検出すると、前記第1車車間通信部は前記第2車車間通信部を介して前記第2車載情報通信装置に対して前記追跡対象車両の追跡に有効な情報である追跡対象車両情報の要求を送信し、前記第2車車間通信部は前記追跡対象車両情報の要求を受信すると前記追跡対象車両情報を前記第1車載情報通信装置に対して送信することを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−48645(P2012−48645A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192535(P2010−192535)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】