説明

車載機器制御装置

【課題】乗員の着衣の状態に応じて車載機器を制御することができる車載機器制御装置を提供する。
【解決手段】運転者の3次元画像情報を取得する3次元画像センサ20と、運転者の着衣の3次元画像情報に基づいて車載機器を制御するECU10とを備えることで、運転者の着衣の3次元画像情報に基づいてナビゲーション装置40の制御をすることができるので、運転者の着衣のシワや厚さを考慮して適切なクリアランスを確保できているか否かを判定することができるので、おもてなし動作を運転者にとって最適なドライビングポジションとなったタイミングで行うように制御することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載された機器を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の状態を検知して車載機器を制御する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の装置は、運転者の着座を車載カメラで検知した場合、運転者は運転可能な状態になったものとし、おもてなし動作を行うようにカーナビゲーション機器を制御するものである。
【特許文献1】特許第3847065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、運転者は座席シートに着座した後に、座席シートをスライド等させてドライビングポジションを調整する場合がある。例えば、運転者が着衣を厚着している場合には、普段使用している車であっても座席シートの調整を行うことがある。しかしながら、従来の装置にあっては運転者が着座した状態からおもてなし動作を開始するため、着衣の状態によってはカーナビゲーション機器の制御が運転者にとって最適であるとはいえない場合がある。
【0004】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、乗員の着衣の状態に応じて車載機器を制御することができる車載機器制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明に係る車載機器制御装置は、運転者の3次元画像情報を取得する画像情報取得手段と、運転者の着衣の3次元画像情報に基づいて車載機器を制御する車載機器制御手段とを備えて構成される。
【0006】
この発明によれば、運転者の着衣の3次元画像情報に基づいて車載機器の制御をすることができる。例えば、着衣の厚さや着衣のシワ等に基づいて、運転者にとって適切なドライビングポジションを確保したか否かを判定することができるので、おもてなし動作を運転者にとって最適なタイミングで行うように制御したり、座席シートのスライド位置等を運転者にとって最適となるように制御したりすることが可能となる。
【0007】
ここで、車載機器制御装置において、車載機器制御手段は、着衣の3次元画像情報に基づいて運転者とハンドルとの隙間距離を算出し、隙間距離に基づいて車載機器を制御することが好適である。
【0008】
3次元画像情報を用いることにより、運転者の着衣の厚さを考慮してハンドルと運転者との距離が適切か否かを判定することができる。このため、例えば、運転者の着衣が変更された場合であっても、運転者にとって適切なドライビングポジションであるか否かを判定することが可能となる。よって、運転者にとって適切なドライビングポジションとなったタイミングでおもてなし動作を行ったりすることが可能となる。
【0009】
また、車載機器制御装置において、車載機器制御手段は、着衣の3次元画像情報に基づいて着衣の表面状態を取得し、表面状態に基づいて車載機器を制御することが好適である。
【0010】
3次元画像情報を用いることにより、例えば着衣の表面のシワに基づいて運転者とハンドルとの距離が適切か否かを判定することができる。このため、例えば、運転者にとって適切なドライビングポジションを提供したり、運転者にとって適切なドライビングポジションとなったタイミングでおもてなし動作を行ったりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗員の着衣の状態に応じて車載機器を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施形態に係る車載機器制御装置は、例えば、カーナビゲーションシステムを搭載した車両に好適に採用されるものである。
【0014】
最初に、本実施形態に係る車載機器制御装置を備える車両の概要から説明する。図1は、本実施形態に係る車載機器制御装置1を備える車両の概要図である。図1に示す車両3は、3次元画像センサ(画像情報取得手段)20、ECU(車載機器制御手段)10、ナビゲーション装置(車載機器)40、スピーカ30及び表示部31を備えている。ここで、ECU(Electronic Control Unit)は、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、及び入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0015】
3次元画像センサ20は、3次元画像情報を取得することができるセンサであって、例えばカメラに用いられるものである。3次元画像センサ20は、例えば、図2に示すように車内ミラー21の上部近傍に設けられ、運転者の上半身の3次元画像情報(RGB,D)を取得可能に構成されている。また、3次元画像センサ20は、取得した3次元画像情報をECU10に出力する機能を有している。
【0016】
ECU10は、3次元画像入力部11、着座判定部12、ドライビングポジション判定部13及び機器制御部14を備えている。
【0017】
3次元画像入力部11は、3次元画像センサ20が出力した3次元画像情報を入力する機能を有している。また、3次元画像入力部11は、取得した3次元画像情報を着座判定部12及びドライビングポジション判定部13へ出力する機能を有している。
【0018】
着座判定部12は、3次元画像入力部11が出力した3次元画像情報に基づいて、運転者が着座したか否かを判定する機能を有している。また、着座判定部12は、判定結果を機器制御部14へ出力する機能を有している。
【0019】
ドライビングポジション判定部13は、運転者が適切なドライビングポジションを確保できたか否かを判定する機能を有している。ドライビングポジション判定部13は、例えば、着衣の3次元画像情報に基づいて運転者とハンドルとの隙間距離(クリアランス)を算出し、算出したクリアランスが適正値であるか否かを判定する機能を有している。また、ドライビングポジション判定部13は、例えば、着衣の3次元画像情報に基づいて着衣のシワ(表面状態)を取得し、着衣のシワに基づいて運転者とハンドルとのクリアランスが適正値であるか否かを判定する機能を有している。また、ドライビングポジション判定部13は、判定結果を機器制御部14へ出力する機能を有している。
【0020】
機器制御部14は、着座判定部12及びドライビングポジション判定部13の判定結果に基づいてナビゲーション装置40に対して動作開始信号を出力する機能を有している。
【0021】
ナビゲーション装置40は、所定地点(例えば目的地)までの経路案内等を行う機能を有している。また、ナビゲーション装置40は、運転開始前の運転者に対しておもてなし動作を行う機能を有している。おもてなし動作は、例えば、ウェルカム表示を表示部31に表示させたり、スピーカ30からウェルカム音を出力させたりする動作である。表示部31及びスピーカ30は、運転者に対して情報報知する機能を有している。表示部31は、例えばディスプレイが用いられる。
【0022】
上述した3次元画像センサ20及びECU10によって車載機器制御装置1が構成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る車載機器制御装置1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る車載機器制御装置1の動作を示すフローチャートである。図3に示す制御処理は、例えば、イグニッションオンされたタイミングで開始され、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0024】
図3に示す制御処理が開始されると、情報取得処理から開始する(S10)。S10の処理は、3次元画像センサ20が実行し、3次元画像情報を取得する処理である。3次元画像センサ20は、例えば、運転者の上半身を撮像し、3次元画像情報として2次元平面(x,y)に対応するRGBD(Red Green Blue and Depth)を取得する。そして、3次元画像センサ20は、取得結果を例えばECU10に備わるメモリに格納する。S10の処理が終了すると、着座完了及びドライビングポジション確保完了判定処理へ移行する(S12)。
【0025】
S12の処理は、3次元画像入力部11、着座判定部12及びドライビングポジション判定部13が実行し、運転者が運転席に着座して、かつ、運転者がドライビングポジションを確保したか否かを判定する処理である。例えば、着座判定部12及びドライビングポジション判定部13は、S10の処理で入力した3次元画像情報を入力し、前回の3次元画像情報と比較する。そして、前回の3次元画像情報から変化がほぼ0であるか否かを判定し、変化がほぼ0である場合には、着座及びドライビングポジションの確保が完了したと判定する。比較処理は、例えばピクセル単位で行われ、画素全体の変化の平均がほぼ0であるか否かを判定する。S12の処理において、画素全体の変化の平均が0でない場合、すなわち、運転者が運転席に着座し、かつ、ドライビングポジションを確保していないと判定した場合には、S10の処理へ移行して、運転者の3次元画像情報を再度取得する。S10、S12の処理を繰り返すことで、運転者のシート調整動作が終了したタイミング、すなわち運転者が着座しドライビングポジションを確保したタイミングを検知することができる。S12の処理において、運転者が着座しドライビングポジションを確保した場合には、クリアランス判定処理へ移行する(S14)。
【0026】
S14の処理は、ドライビングポジション判定部13が実行し、確保したクリアランスが適正であるか否かを判定する処理である。例えば、ドライビングポジション判定部13は、3次元画像情報に基づいて運転者の着衣の厚み分を考慮したクリアランスを取得し、各画素のクリアランスを平均したものが所定値以下であるか否かを判定する。運転者の着衣の厚みを考慮したクリアランスとは、着衣した状態の運転者とハンドルとの空間距離である。そして、各画素のクリアランスを平均したものが所定値以下である場合には、ハンドルと運転者の上体との間の距離は運転者にとって窮屈な距離であって、適切なクリアランスを確保できていないと判定する。一方、各画素のクリアランスを平均したものが所定値より大きい場合には、適切なクリアランスが確保できていると判定する。所定値として、例えば30cmが用いられる。
【0027】
また、ドライビングポジション判定部13は、運転者の着衣のシワに関する情報を3次元情報に基づいて取得し、ハンドルと運転者の上体との間の空間距離であるクリアランスが適正であるか否かを判定してもよい。例えば、ドライビングポジション判定部13は、シワに関する情報として着衣のシワの範囲や数を取得し、運転者の着衣に多くのシワが発生している場合には、適切なクリアランスを確保できていないと判定する。一方、シワが少ないと判断した場合には、適切なクリアランスを確保できていると判定する。
【0028】
S14の処理において、クリアランスが適正でないと判定した場合には、S10の処理へ移行して、運転者の3次元画像情報を再度取得する。このようにS10〜S14の処理を繰り返すことで、運転者が着座し確保したドライビングポジションが適切となったこと及び適切となったタイミングを検知することができる。一方、クリアランスが適正であると判定した場合には、おもてなし動作に移行する(S16)。
【0029】
S16の処理は、機器制御部14が実行し、ナビゲーション装置40に対しておもてなし動作を行うように信号を出力する処理である。S16の処理を実行することにより、ナビゲーション装置40は、表示部31にウェルカム表示を表示させるとともに、スピーカ30から開始を告げる音を出力させる。S16の処理が終了すると、図3に示す制御処理を終了する。
【0030】
以上で図3に示す制御処理を終了する。図3に示す制御処理を実行することにより、運転者にとって最適なドライビングポジションを確保した後に、運転者に対しておもてなし動作を実行することができる。
【0031】
上述したように、本実施形態に係る車載機器制御装置1によれば、運転者の着衣の3次元画像情報に基づいてナビゲーション装置40の制御をすることができる。このため、2次元画像情報を使用した場合に比べて適切にクリアランスを確保できていることを検出することが容易となる。また、運転者にとって適切なドライビングポジションを判定することができるので、おもてなし動作を運転者にとって最適なタイミングで行うように制御することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係る車載機器制御装置1によれば、クリアランスが適正か否かを判定し、適正である場合には、おもてなしの動作をナビゲーション装置40に実行させることができる。このように、ドライビングポジション確保後、すなわち上半身の動きが一度停止した場合に運転者にとって適切なドライビングポジションとなったと判定しないため、運転者が確保したドライビングポジションの位置にしっくりせず動いた場合であっても、正確なクリアランスを算出することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る車載機器制御装置1によれば、運転者の着衣の厚さを考慮してハンドルと運転者との距離が適切か否かを判定することができる。運転者が着衣を変更した場合や、季節や気温に応じて薄着や厚着となる場合には、最適なドライビングポジションは着衣の厚さに応じて変化するが、3次元情報を用いることにより運転者の着衣の厚さを考慮して運転者にとって適切なドライビングポジションを把握することができる。このため、運転者にとって適切なドライビングポジションとなったタイミングでおもてなし動作を行うことが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係る車載機器制御装置1によれば、窮屈なドライビングポジションを着衣の表面のシワに基づいて判定することができるので、運転者にとって適切なドライビングポジションとなったタイミングでおもてなし動作を行ったりすることが可能となる。
【0035】
なお、上述した実施形態は本発明に係る車載機器制御装置の一例を示すものである。本発明に係る車載機器制御装置は、実施形態に係る車載機器制御装置1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る車載機器制御装置1を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、最適なドライビングポジションとなった場合にナビゲーション装置40におもてなし動作をさせる例を説明したが、ECU10が3次元画像センサ20から3次元情報を入力し、3次元情報に基づいて運転者が厚着しているか薄着しているかを判定し、着衣の厚みに応じてエアコン(車載機器)の温度設定を変更する場合であってもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、最適なドライビングポジションとなった場合にナビゲーション装置40におもてなし動作をさせる例を説明したが、ECU10が3次元画像センサ20から3次元情報を入力し、3次元情報に基づいて着衣のシワ等に関する情報を取得し、取得した着衣のシワ等に基づいて座席シート(車載機器)の制御を行う場合であっても良い。
【0038】
また、上述した実施形態では、最適なドライビングポジションとなった場合にナビゲーション装置40におもてなし動作をさせる例を説明したが、ECU10が3次元画像センサ20から3次元情報を入力し、3次元情報に基づいて着衣のシワ等に関する情報を取得し、取得した着衣のシワ等に基づいてシートベルトの装着状態が適切か否かを判定する場合であってもよい。そして、例えば、シワの数に応じてシートベルト(車載機器)を緩めたり強めたりする制御を行う場合であっても良い。
【0039】
また、上述した実施形態では、最適なドライビングポジションとなった場合にナビゲーション装置40におもてなし動作をさせる例を説明したが、ECU10が3次元画像センサ20から3次元情報を入力し、3次元情報に基づいて運転者が厚着しているか薄着しているかを判定し、着衣の厚みに応じてナビゲーション装置40が行う音声対話内容を変更する場合であってもよい。あるいは、3次元情報に基づいて着衣のシワ等に関する情報を取得し、取得した着衣のシワ等に基づいてナビゲーション装置40が行う音声対話内容を変更する場合であってもよい。
【0040】
さらに、上述した実施形態では、運転者の上半身の3次元画像情報を取得する場合を説明したが、運転者の上半身の3次元画像情報に限られるものではなく、運転者の全体の3次元画像情報を用いる場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態に係る車載機器制御装置を備える車両の構成概要を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る車載機器制御装置の3次元画像センサの配置を説明するための概要図である。
【図3】実施形態に係る車載機器制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…車載機器制御装置、10…ECU(車載機器制御手段)、20…3次元画像センサ(画像情報取得手段)、40…ナビゲーション装置(車載機器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の3次元画像情報を取得する画像情報取得手段と、
前記運転者の着衣の3次元画像情報に基づいて車載機器を制御する車載機器制御手段と、
を備える車載機器制御装置。
【請求項2】
前記車載機器制御手段は、前記着衣の3次元画像情報に基づいて前記運転者とハンドルとの隙間距離を算出し、前記隙間距離に基づいて前記車載機器を制御する請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
前記車載機器制御手段は、前記着衣の3次元画像情報に基づいて前記着衣の表面状態を取得し、前記表面状態に基づいて前記車載機器を制御する請求項1又は2に記載の車載機器制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101853(P2010−101853A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275932(P2008−275932)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】