説明

車載機器制御装置

【課題】ユーザの視線によってスイッチを選択する車載機器制御装置において、車両前方を見ることが疎かになることなく、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択できるようにすること。
【解決手段】HUDによって車両2のフロントウィンドウ41のスイッチ表示領域60に複数のスイッチ61〜64を表示させる。運転者が車両前方を注視していときに視線が通常位置する領域として、フロントウィンドウ41の一部の領域と重複する形で視線監視領域50を定める。カメラ4によって撮像された運転者の眼球の画像に基づいて、運転者の視線が視線監視領域50から外れたか否かを判断する。外れた場合には運転者の視線の動きを追跡し、複数のスイッチ61〜64のうち、視線が最も長く停留したスイッチ、視線が最後に通過したスイッチ又は視線の進行方向にあるスイッチを、運転者が所望するスイッチとして決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車載機器の制御を実行する車載機器制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車載機器の制御を実行する車載機器制御装置において、その車両のユーザの視線を利用して、制御対象となる車載機器を選択したり、車載機器の制御内容を選択したりするものが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1〜4の技術では、ユーザが車両の前方を注視したまま車載機器を操作できるようにするために、ヘッドアップディスプレイ(HUD)によって、車両のフロントウィンドウの一部の領域に、車載機器の操作項目を示した複数のスイッチ(アイコン)を表示させる。また、ユーザの視線を検出する視線検出手段を備え、その視線検出手段に検出された視線に基づいて、フロントウィンドウに表示された複数のスイッチのうち、ユーザが一定時間以上注視したスイッチを特定する。そして、その特定したスイッチに対応する操作項目がユーザによって選択されたものとして、その操作項目に応じた制御を実行する。例えば、エアコンの操作項目が選択された場合には、ステアリングに設けられたステアリングスイッチの操作に基づいて、エアコンの設定温度を設定する制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−248216号公報
【特許文献2】特開平7−229714号公報
【特許文献3】特開平5−270296号公報
【特許文献4】特開2007−302116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、表示されたスイッチを選択するために、ユーザは所望のスイッチを一定時間以上注視する必要があるため、その分、車両前方を見ることが疎かになるという問題点があった。その問題点を解消するために、一定時間以上のスイッチの注視という要件を外すことも考えられるが、この場合には、ユーザが所望しないスイッチを選択してしまうことが予想される。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両前方を見ることが疎かになることなく、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる車載機器制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、予め表示された複数のスイッチの中からユーザの視線によって選択されたスイッチである選択スイッチに応じて、車両に搭載された車載機器の制御を実行する車載機器制御装置であって、
前記ユーザの視線が予め定められた視線監視領域から外れたか否かを判断する視線移動判断手段と、
その視線移動判断手段が前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れたと判断したことに基づいて、前記ユーザの視線の動きを追跡する視線追跡手段と、
前記視線監視領域外に表示された前記複数のスイッチのうち、前記視線追跡手段が追跡した前記視線の動きに応じたスイッチを、前記選択スイッチとして決定するスイッチ決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
これによれば、視線監視領域が予め定められており、その視線監視領域外に、車載機器に関する複数のスイッチが表示される。そして、視線移動判断手段が、ユーザの視線が視線監視領域から外れたか否かを判断するので、その判断結果に応じて、ユーザがスイッチを選択しようとしているか否かの見当をつけることができる。すなわち、ユーザの視線が視線監視領域から外れた場合には、視線が視線監視領域内にある場合に比べて、ユーザはスイッチを選択する意思があると考えることができる。そして、ユーザの視線が視線監視領域から外れた場合には、視線追跡手段がユーザの視線の動きを追跡し、スイッチ決定手段がその視線の動きに応じたスイッチを選択スイッチとして決定する。
【0008】
これにより、常にユーザの視線の動きを追跡して選択スイッチを決定する場合に比べて、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる。また、ユーザの視線が視線監視領域から外れた場合には、ユーザはスイッチを選択する意思があると考えることができるので、一定時間以上スイッチを注視していなくてもそのスイッチを選択スイッチとして決定することができる。よって、車両前方を見ることが疎かになることを防止できる。
【0009】
また、本発明の車載機器制御装置における前記スイッチ決定手段は、前記視線が通過した通過線上又はその通過線の先にある前記スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする。
【0010】
このように、ユーザの視線が通過した通過線上にあるスイッチを選択スイッチとして決定することにより、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる。さらに、視線の通過線の先にあるスイッチも選択スイッチとして決定することにより、ユーザは所望するスイッチまで視線を移動させる必要がないので、ユーザの利便性を向上できる。
【0011】
また、本発明の車載機器制御装置における前記スイッチ決定手段は、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れているときにおける特定期間をスイッチ選択期間としたときに、複数回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた前記スイッチを、前記選択スイッチとして決定することを特徴とする。
【0012】
これによれば、複数回の視線の動きに応じたスイッチを選択スイッチとして決定するので、一回の視線の動きで選択スイッチを決定する場合に比べて、決定した選択スイッチの精度を向上できる。
【0013】
また、本発明の車載機器制御装置における前記スイッチ選択期間は、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れてから前記視線監視領域に復帰するまでの期間であることを特徴とする。
【0014】
これによれば、ユーザの視線が視線監視領域から外れてから視線監視領域に復帰するまでの期間は、ユーザはスイッチを選択するために視線を動かしている可能性があるので、その期間をスイッチ選択期間とすることにより、より一層、精度のよい選択スイッチを決定することができる。
【0015】
また、本発明の車載機器制御装置において、前記ユーザの視線が前回に前記視線監視領域に復帰してから所定時間が経過するまでに、再度、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れたか否かを判断する再移動判断手段を備え、
前記スイッチ決定手段は、前記再移動判断手段が前記視線が前記視線監視領域から外れていないと判断した場合には、前記選択スイッチの決定を中止することを特徴とする。
【0016】
これによれば、複数回の視線の移動で選択スイッチを決定する場合に、ユーザの視線が前回に視線監視領域に復帰してから所定時間が経過するまでに、次の視線の移動がなされなかった場合には選択スイッチの決定を中止する。よって、ユーザがスイッチを選択する意思がないにもかかわらず、ユーザの視線がたまたま視線監視領域から外れてしまった場合には、所定時間が経過するまでに次の視線の移動がなされない可能性が大きいので、この場合に選択スイッチが決定されてしまうのを防止できる。
【0017】
また、本発明における前記スイッチ決定手段は、各回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた1又は複数の前記スイッチからなる群をスイッチ群としたときに、複数の前記スイッチ群の間で重複する前記スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする。
【0018】
これによれば、ユーザが視線によって所望のスイッチを選択する場合、各回のスイッチ選択期間において、その所望のスイッチを選択しようとする視線の移動を行うと考えられるので、各スイッチ群にそのスイッチが含まれる可能性が高い。よって、複数のスイッチ群の間で重複するスイッチを選択スイッチとして決定することで、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる。
【0019】
また、本発明における前記スイッチ決定手段は、
各回の前記スイッチ選択期間ごとに、前記視線の動きに応じた1つの前記スイッチを、前記選択スイッチの候補となる候補スイッチとして決定する候補スイッチ決定手段と、
その候補スイッチ決定手段が決定した複数の前記候補スイッチ間で重複する候補スイッチを前記選択スイッチとして決定する最終決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これによれば、候補スイッチ決定手段が、各回のスイッチ選択期間ごとに視線の動きに応じた1つの候補スイッチを決定するので、各回のスイッチ選択期間ごとにユーザが所望するスイッチを選択することができる。そして、最終決定手段が、複数の候補スイッチ間で重複する候補スイッチを選択スイッチとして決定するので、真にユーザが所望するスイッチを選択することができる。
【0021】
また、本発明における前記候補スイッチ決定手段は、前記視線が最も長く停留した前記スイッチ又は前記視線が最後に通過した前記スイッチを前記候補スイッチとして決定することを特徴とする。
【0022】
これによれば、視線が最も長く停留したスイッチ又は視線が最後に通過したスイッチは、ユーザが選択しようとするスイッチである可能性が高いと考えられるところ、これらのスイッチを候補スイッチとして決定することで、スイッチ選択期間ごとにユーザが所望するスイッチを1つ決定することができる。
【0023】
また、本発明における前記候補スイッチ決定手段は、前記視線が最も長く停留した前記スイッチ及び前記視線が最後に通過した前記スイッチが無い場合には、前記視線の通過線の先にある前記スイッチを前記候補スイッチとして決定することを特徴とする。
【0024】
これにより、視線が最も長く停留したスイッチ及び視線が最後に通過したスイッチが無い場合であっても、候補スイッチを1つ決定することができる。この場合、視線の通過線の先にあるスイッチを候補スイッチとして決定するので、ユーザは所望するスイッチまで視線を移動させる必要がなく、ユーザの利便性を向上できる。
【0025】
また、本発明における前記最終決定手段は、前回の前記スイッチ選択期間にて決定された前記候補スイッチと今回の前記スイッチ選択期間にて決定された前記候補スイッチとが一致するか否かを判断する一致判断手段を備え、その一致判断手段が一致すると判断した前記候補スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする。
【0026】
このように、前回と今回とで一致する候補スイッチを選択スイッチとして決定することで、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる。
【0027】
また、本発明における前記最終決定手段は、各回の前記スイッチ選択期間にて決定された複数の前記候補スイッチのうち最多の候補スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする。
【0028】
このように、複数の候補スイッチのうち最多の候補スイッチを選択スイッチとして決定してもよく、これによっても、ユーザが所望するスイッチを精度よく選択することができる。
【0029】
また、本発明において、前記視線監視領域は、前記車両のフロントウィンドウの一部の領域と重なるように定められており、
前記フロントウィンドウに画像を表示させる表示手段と、
前記フロントウィンドウの特定のスイッチ表示領域に、前記スイッチを示した画像を前記表示手段によって表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
このように、車両のフロントウィンドウに、視線監視領域を定め、スイッチを示した画像を表示させることで、ユーザは、車両前方を注視しつつ、簡易に所望のスイッチを選択することができる。
【0031】
また、本発明における前記スイッチ表示領域は、異なる位置に複数定められており、前記表示制御手段は、同一の前記スイッチを、複数の前記スイッチ表示領域に表示させることを特徴とする。
【0032】
これによれば、同一のスイッチが複数のスイッチ表示領域に表示されるので、ユーザに各スイッチを選択しやすくすることができる。
【0033】
また、本発明における前記表示制御手段は、複数の前記スイッチ表示領域のそれぞれに、同じ組み合わせの複数の前記スイッチを表示させるものであり、各スイッチ表示領域における前記複数のスイッチ間の表示位置関係を、前記スイッチ表示領域ごとに異ならせることを特徴とする。
【0034】
これによれば、複数のスイッチ表示領域のそれぞれに、同じ組み合わせの複数のスイッチが表示されるので、ユーザは、どのスイッチ表示領域に視線を移動させたとしても、所望のスイッチを選択することができる。また、各スイッチ表示領域における複数のスイッチ間の表示位置関係が、スイッチ表示領域ごとに異なっているので、各スイッチの選択のしやすさをスイッチ表示領域ごとに変えることができる。よって、ユーザは、所望のスイッチを選択しやすいスイッチ表示領域に視線を移動させることで、その所望のスイッチを容易に選択することができる。
【0035】
また、本発明における前記表示制御手段は、今回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた前記スイッチが複数ある場合には、それら複数のスイッチ間の表示位置関係を変更することを特徴とする。
【0036】
これによれば、今回の視線の移動で選択されたスイッチが複数ある場合には、ユーザが所望するスイッチの候補が複数あることになるので、その複数のスイッチの表示位置関係を変更することで、次回のスイッチ選択期間に、ユーザに、その変更した表示位置関係に応じた視線の移動をさせることができる。よって、ユーザが所望するスイッチを決定しやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】車載機器制御装置1の概略構成を示したブロック図である。
【図2】車載機器制御装置1の車両2におけるレイアウトを説明する図である。
【図3】第一実施形態のスイッチ選択処理のメインルーチンを示したフローチャートである。
【図4】図3のS12及びS16の詳細を示したフローチャートである。
【図5】視線が通過した通過線を例示した図である。
【図6】一回目の視線の追跡結果に応じて、スイッチ61〜64の表示を変更した例を示した図である。
【図7】第二実施形態のスイッチ選択処理のメインルーチンを示したフローチャートである。
【図8】一回当たりの視線の移動を一定時間で区切った場合の各期間S1、S2、S3を示した図である。
【図9】一回目と二回目とで視線が通過したスイッチを例示した図である。
【図10】複数のスイッチ表示領域60a、60bにスイッチを表示した例を示した図である。
【図11】各スイッチ表示領域60a、60bで表示されるスイッチの表示位置関係を例示した図である。
【図12】3つの視線監視領域51a〜51cがある場合を示した図である。
【図13】4つの視線監視領域52a〜52dがある場合を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(第一実施形態)
次に、本発明の車載機器制御装置の第一実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の車載機器制御装置1の概略構成を示したブロック図である。図2は、車載機器制御装置1の車両2におけるレイアウトを説明する図であり、車載機器制御装置1が搭載された車両2の車内の運転席付近を示している。先ず、これら図1、図2を参照して、車載機器制御装置1の構成について説明する。
【0039】
図1に示すように、車載機器制御装置1は、画像入力装置4、視線抽出部11、視線通過判定部12、視線停留判定部13、視線進行方向判定部14、選択結果判定部15、車載機器制御部16、表示制御部17、ヘッドアップディスプレイ(HUD)18、メインスイッチ21、ステアリングスイッチ22及びこれらと接続する制御部10を備える。
【0040】
画像入力装置4は、車両2のユーザである運転者の眼球30(図2参照)を逐次撮像して、その撮像した画像を視線抽出部11に入力するカメラである。その撮像素子には例えばCCDイメージセンサが使用される。画像入力装置4は、図2に示すようにステアリング42の近傍の計器盤上に設置され、その撮像範囲が運転者の眼球30を撮像できる範囲に予め設定されている。なお、上記特許文献1〜3に開示された手法により運転者の視線を検出する場合には、その運転者の眼球30を照らす照明(図示外)が設けられる。
【0041】
視線抽出部11は、画像入力装置4から入力された運転者の眼球30の画像に基づいて、その運転者の視線を算出する部分である。その算出手法は公知の手法が用いられ、例えば特許文献1〜3に開示された手法が用いられる。すなわち、運転者の眼球30を照らす照明(図示外)による眼球30の画像における網膜反射像や角膜反射像の位置に基づいて、運転者の視線を算出する手法が用いられる。その手法の詳細はここでは割愛する。なお、画像入力装置4は、運転者の眼球30を逐次撮像し、各時点における眼球30の画像を視線抽出部11に入力するので、視線抽出部11は、それら画像に基づいて、各時点における視線を算出することになる。すなわち、運転者の視線が移動した場合には、視線抽出部11によって、その視線の移動が算出される。
【0042】
視線抽出部11で算出された運転者の視線を示した情報は、視線通過判定部12、視線停留判定部13及び視線進行方向判定部14に送られる。視線通過判定部12は、視線抽出部11から送られてきた運転者の視線の移動(各時点における運転者の視線)に基づいて、運転者の視線が、後述するフロントウィンドウ41に表示された各スイッチ61〜64(図2参照)を通過したか否かを判定する部分である。また、視線停留判定部13は、その運転者の視線が、各スイッチ61〜64を一定時間以上停留したか否かを判定する部分である。また、視線進行方向判定部14は、その視線の進行方向を算出して、その進行方向の先に、各スイッチ61〜64があるか否かを判定する部分である。
【0043】
これら判定部12〜14の判定結果は、選択結果判定部15に送られる。その選択結果判定部15は、判定部12〜14の判定結果に基づいて、複数のスイッチ61〜64(図2参照)のうち、運転者が所望するスイッチである選択スイッチを決定する部分である。なお、これら判定部12〜15が行う処理の詳細は、車載機器制御装置1の全体の処理を説明する際に、説明する。
【0044】
選択結果判定部15で決定された選択スイッチを示した情報は、車載機器制御部16に送られる。車載機器制御部16は、車両2に搭載された所定の複数の車載機器20が接続されており、選択結果判定部15から送られてきた選択スイッチに応じて、車載機器20の制御を実行する部分である。車載機器20は、具体的には、例えば、車載ナビゲーション装置、オーディオ、エアコン(空調装置)、ヘッドライト等のライトを点灯させる点灯装置、変速装置である。また、車載機器20の制御としては、車載ナビゲーションに関しては例えば表示する地図の縮尺を設定する制御であり、オーディオに関しては例えば音量を設定する制御である。また、エアコンに関しては例えば温度設定をする制御であり、ライトに関しては例えば光量を設定する制御であり、変速装置に関しては例えばギアポジション(シフト)を切り替える制御である。すなわち、車載機器制御部16は、選択スイッチに応じて、例えば、オーディオの音量を設定したり、エアコンの温度設定をしたりする。
【0045】
なお、車室内には、車載機器20を操作するための操作パネル等の操作部20a(図2参照)が設けられており、ユーザは、その操作部20aを直接操作することで、車載機器20に上記の各制御を行わせることもできる。なお、図2では、操作部20aとして、車載機器20が車載ナビゲーション装置、オーディオ、エアコンの場合におけるその車載機器20の操作パネル20aを示している。
【0046】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)18は、プロジェクタ、反射鏡等の光学系を有し、その光学系を利用して車両2のフロントウィンドウ41に、各種画像を表示させるものである。そのHUD18は、例えば、車両2のダッシュボード19(図2参照)内に設けられる。なお、HUD18が本発明の「表示手段」に相当する。
【0047】
表示制御部17は、HUD18と接続されており、HUD18に表示させる画像を制御する部分である。具体的には、表示制御部17は、制御対象となる車載機器20を示したスイッチや、車載機器20の制御内容を示したスイッチを表示させるように、HUD18を制御する。より具体的には、図2に示すように、表示制御部17は、デフォルト表示として、後述する視線監視領域50外の、フロントウィンドウ41の下部に定められたスイッチ表示領域60に、第一のスイッチ61、第二のスイッチ62、第三のスイッチ63及び第四のスイッチ64の4つのスイッチを表示させる。これらスイッチ61〜64は、例えばそれぞれ同じ大きさの正方形状の画像であり、横一列に配置される。各スイッチ61〜64は、それぞれ、複数の車載機器20のうちのいずれかが割り当てられており、割り当てられた車載機器20を表示するアイコン画像とされる。
【0048】
また、表示制御部17は、車載機器制御部16と接続されており、スイッチ61〜64の他に、車載機器制御部16による制御内容に応じた画像(図示外)もフロントウィンドウ41に表示させる。具体的には、車載機器制御部16は、制御対象とする車載機器20から、現在の音量(オーディオの場合)や温度設定(エアコンの場合)等の現在の設定値を取得する。そして、表示制御部17は、車載機器制御部16からその設定値を取得して、その設定値を示した画像をフロントウィンドウ41に表示させる。なお、表示制御部17が本発明の「表示制御手段」に相当する。
【0049】
なお、上記の各処理を実行する各処理部11〜17は、それぞれ、CPU、ROM、RAM等を有したコンピュータとして構成され、各CPUが、各ROMに予め記憶されたプログラムにしたがった処理を実行することで、上記の処理を行っている。なお、これら処理部11〜17は、一つのコンピュータとして構成してもよく、また、後述する制御部10の一機能として実現してもよい。
【0050】
メインスイッチ21は、ステアリング42に設けられ(図2参照)、後述する制御部10によるスイッチ選択処理の開始又は終了を指示するスイッチとされる。そのメインスイッチ21は、ユーザによってメインスイッチ21が操作された場合には、その操作されたことを示す信号を制御部10に入力する。
【0051】
ステアリングスイッチ22は、メインスイッチ21とともにステアリング42に設けられ(図2参照)、車載機器20の設定値を設定するために用いられるスイッチである。そのステアリングスイッチ22は、車載機器20の設定値の増加を指示したり、減少を指示したりするアップダウンスイッチとして構成される。そして、ユーザによってステアリングスイッチ22が操作された場合には、ステアリングスイッチ22は、設定値の増加を指示する信号又は減少を指示する信号を制御部10に入力する。
【0052】
制御部10は、CPU、ROM、RAM等を有したコンピュータとして構成され、車載機器制御装置1の全体の制御を司る部分とされる。具体的には、制御部10は、上記各処理部11〜17の動作を制御して、運転者の視線によって指示されるスイッチを選択スイッチとして決定するとともに、その選択スイッチに応じた車載機器20の制御を行うスイッチ選択処理を実行する。次に、そのスイッチ選択処理の詳細について説明する。ここで、図3は、スイッチ選択処理のメインルーチンを示したフローチャートである。また、図4は、図3のS12、S16の視線追跡処理の詳細を示したフローチャートである。この図3のスイッチ選択処理は、ユーザによってメインスイッチ21が操作された場合に開始され、再度、メインスイッチ21が操作された場合に終了される。
【0053】
先ず、図2に示すように、フロントウィンドウ41の下部のスイッチ表示領域60に各スイッチ61〜64を表示させる(S10)。このS10の処理は、表示制御部17(図1参照)が主となって行う処理である。
【0054】
次いで、運転者の視線が、予め定められた視線監視領域50(図2参照)から外れたか否かを判断する(S11)。この視線監視領域50は、図2に示すように、フロントウィンドウ41の一部の領域と重複する形で定められ、より具体的には、フロントウィンドウ41の上部及び下部を除く領域と重複する形で定められている。その視線監視領域50は、運転者が車両2の前方を注視している際におけるその運転者の視線が通常位置する領域として定められ、例えば、運転者の眼球30(図2参照)の高さと同程度の高さ、フロントウィンドウ41の幅と同程度の幅の領域とされる。
【0055】
そしてS11では、画像入力装置4によって撮像された現時点における運転者の眼球30の画像に基づいて、視線抽出部11が、現時点における運転者の視線を算出する。そして、その運転者の視線が視線監視領域50から外れたか否かを判断する。運転者の視線が視線監視領域50から外れていない場合、すなわち、視線監視領域50内にある場合は(S11:No)、再度このS11の処理を実行する。すなわち、繰り返しS11の処理を実行して、運転者の視線が視線監視領域50内にあることを監視する。なお、S11を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「視線移動判断手段」に相当する。
【0056】
S11において運転者の視線が視線監視領域50から外れた場合には(S11:Yes)、視線が視線監視領域50から外れている間、その視線の動きを追跡する視線追跡処理を実行する(S12)。具体的には、先ず、図4のS101において、運転者の視線が視線監視領域50外における各時点における運転者の眼球30を画像入力装置4に撮像させる(S101)。その画像入力装置4で撮像された眼球30の画像は、視線抽出部11に入力される(S101)。次いで、視線抽出部11が、各時点における眼球30の画像に基づいて、各時点における運転者の視線を算出する(S102)。
【0057】
次いで、それら各時点おける視線に基づいて、フロントウィンドウ41における視線の通過点及び視線の進行方向を算出する(S103)。具体的には、視線の通過点については、フロントウィンドウ41に対応する面データを予め記憶しておき、視線がその面データのどの位置で交差するかに基づいて、視線の通過点を算出する。また、視線の進行方向については、例えば、一つ前の時点における通過点と現時点における通過点とを結んだ直線の方向を、視線の進行方向として算出する。なお、このS103の処理は、視線通過判定部12及び視線進行方向判定部14が主となって行う処理である。
【0058】
ここで、図5は、各時点における視線の通過点を結んだ線である視線の通過線を例示した図であり、図5(a)は、視線がスイッチ表示領域60を通過した場合の通過線100を示し、図5(b)は、視線がスイッチ表示領域60を通過しない場合の通過線101を示している。なお、図5(a)の視線の通過線100は、先ず第三のスイッチ63を通過し、次に第四のスイッチ64を通過し、その後、スイッチ表示領域60から離れる線である。一方、図5(b)の通過線101は、スイッチ表示領域60の第三のスイッチ63に向けて進行し、第三のスイッチ63の到達する前にスイッチ表示領域60から離れていく線である。また、図5(a)の通過線100は、説明の便宜のために10個の通過点P1〜P10から構成されているとする。例えば視線が図5(a)のように移動したとすると、S103では、それら通過点P1〜P10を算出することになる。また、図5(a)では、通過点P2の時点における視線の進行方向Q2を示している。なお、S101〜S103を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「視線追跡手段」に相当する。
【0059】
次いで、S103で算出した各通過点から構成される通過線上に、スイッチ表示領域60に表示されたスイッチ61〜64があるか否かを判断する(S104)。具体的には、スイッチ61〜64の表示位置を予め記憶しておき、その表示位置と視線の通過線とを比較することで、通過線上にスイッチ61〜64があるか否かを判断する。例えば視線が図5(a)のように移動したとすると、通過線100上にスイッチ63及びスイッチ64があるので、視線の通過線上にスイッチ61〜64があると判断される(S104:Yes)。この場合、処理をS105に進める。なお、このS104の処理は、視線通過判定部12が主となって行う処理である。
【0060】
S105では、スイッチ61〜64での視線の停留点及びその停留時間を算出する(S105)。なお、本実施形態における視線の停留とは、継続して一定時間以上、視線(視線の通過線上の通過点)が一つのスイッチ61〜64上にある場合をいうものとする。各時点における視線の通過点が、一つのスイッチ61〜64上に多くあるほど、視線がそのスイッチ61〜64上に長く停留したことになる。よって、S105では、例えば、スイッチ61〜64上にある通過点の個数が所定の複数の個数以上の場合に視線の停留であるとして、それら複数の通過点を視線の停留点とする。また、それら通過点の個数に基づいて、視線の停留時間を算出する。
【0061】
例えば視線が図5(a)のように移動したとすると、第三のスイッチ63上には3つの時点における通過点P5〜P7が位置しているので、S105では、それら通過点P5〜P7を停留点T1とする。そして、3つの時点に対応する時間を視線の停留時間として算出する。一方、第四のスイッチ64上には1つの時点における通過点P8しかないので、S105では、第四のスイッチ64には視線が停留しなかったとして処理する。
【0062】
次いで、S105で算出した停留点及び停留時間に基づいて、視線が一定時間以上停留したスイッチ61〜64があるか否かを判断する(S106)。なお、このS106における一定時間は、例えば0.5秒とする。よって、図5(a)の場合では、3つの時点の通過点P5〜P7に対応する停留時間が0.5秒以上か否かを判断する(S106)。なお、S105で算出した停留点が複数ある場合には、各停留点に対する停留時間がそれぞれ一定時間以上か否かを判断する(S106)。視線が一定時間以上停留したスイッチ61〜64がある場合には(S106:Yes)、処理をS107に進める。
【0063】
そして、S107では、視線が一定時間以上停留したスイッチ61〜64のうち、最も長く視線が停留したスイッチ、すなわち、S105で算出した停留時間が最も長いスイッチを抽出する(S107)。次いで、その抽出したスイッチを、運転者が所望する選択スイッチの候補となる候補スイッチとして決定する(S110)。図5(a)において、例えば第三のスイッチ63での停留時間が一定時間以上の場合には(S106:Yes)、その第三のスイッチ63が候補スイッチとして決定される(S107、S110)。運転者は、所望するスイッチ61〜64に長く視線を停留させると考えられるので、最も長く停留したスイッチ61〜64を候補スイッチとすることにより、運転者が所望するスイッチ61〜64を選択できるようにすることができる。その後、図4のフローチャートの処理を終了する。なお、S105〜S107の処理は、視線停留判定部が主となって行う処理である。また、S110の処理は、選択結果判定部15が主となって行う処理である。
【0064】
一方、S106において、視線が一定時間以上停留したスイッチ61〜64がない場合には(S106:No)、処理をS108に進める。そして、視線が最後に通過したスイッチ61〜64を抽出し(S108)、その抽出したスイッチを候補スイッチとして決定する(S110)。図5(a)において、例えば第三のスイッチ63での停留時間が一定時間未満の場合には(S106:No)、視線が最後に通過した第四のスイッチ64が候補スイッチとして決定される(S108、S110)。運転者は、所望するスイッチ61〜64に視線を最後に通過させた後に視線を元に戻すと考えられるので、視線が最後に通過したスイッチ61〜64を候補スイッチとすることにより、運転者が所望するスイッチ61〜64を選択できるようにすることができる。その後、図4のフローチャートの処理を終了する。なお、S108の処理は、視線通過判定部12が主となって行う処理である。
【0065】
また、S104において、視線の通過線上にスイッチ61〜64がない場合には(S104:No)、処理をS109に進める。例えば視線が図5(b)のように移動したとすると、視線の通過線101上にはスイッチ61〜64がないので、この場合にはS109の処理が実行される。そのS109では、先のS103で算出した視線の進行方向にあるスイッチ61〜64を抽出する(S109)。図5(b)においては、視線の通過線101の、ある時点における進行方向Qに第三のスイッチ63があるので、S109では、その第三のスイッチ63が抽出される。次いで、S109で抽出したスイッチ61〜64を候補スイッチとして決定する(S110)。運転者は、所望するスイッチ61〜64に向かって視線を移動させると考えられるので、視線の進行方向のスイッチ61〜64を候補スイッチとすることにより、運転者が所望するスイッチ61〜64を選択できるようにすることができる。また、運転者は所望するスイッチ61〜64まで視線を移動させる必要がないので、ユーザの利便性を向上できる。その後、図4のフローチャートの処理を終了する。なお。S104〜S110の処理を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「候補スイッチ決定手段」に相当する。
【0066】
図3の処理に戻り、S12の視線追跡処理を実行した後、すなわち運転者の視線が視線監視領域50に復帰すると、S12の視線追跡処理の追跡結果に応じて、スイッチ表示領域60に表示された各スイッチ61〜64の表示を変更する(S13)。具体的には、一回目の視線の移動の際における、その視線が通過したスイッチ61〜64及びその視線の進行方向のスイッチ61〜64から構成されるスイッチ群の各スイッチ61〜64間の表示位置関係を変更する(S13)。より具体的には、そのスイッチ群の各スイッチ61〜64間の間隔(距離)がデフォルト表示のときよりも大きくなるように、各スイッチ61〜64間の表示位置関係を変更する(S13)。
【0067】
例えば、スイッチ表示領域60におけるスイッチ61〜64が、図6(a)のようにデフォルト表示されていたとする。すなわち、第一のスイッチ61が、ギアポジションを切り替える変速装置を示したアイコン画像(「シフトレバー」)であり、第二のスイッチ62が、オーディオを示したアイコン画像(「オーディオ」)であり、第三のスイッチ63が、エアコンを示したアイコン画像(「エアコン」)であり、第四のスイッチ64が、車載ナビゲーション装置を示したアイコン画像(「ナビ」)であるとする。また、一回目の視線の移動の際に、その視線が図5(a)のように移動したとする。つまり、一回目の視線の移動の際に、その視線が第三のスイッチ63(「エアコン」のスイッチ)及び第四のスイッチ64(「ナビ」のスイッチ)を通過したとする。この場合、S13では、例えば図6(b)のように、第三のスイッチ63と第四のスイッチ64の表示位置関係を変更する。すなわち、第三のスイッチ63(「エアコン」のスイッチ)をスイッチ表示領域60の一番右側の位置に表示させ、第四のスイッチ64(「ナビ」のスイッチ)をスイッチ表示領域60の左から2番目の位置に表示させる。それに伴い、第三のスイッチ63と第四のスイッチ64の間(スイッチ表示領域60の左から3番目の位置)に、第二のスイッチ62(「オーディオ」のスイッチ)を表示させる。
【0068】
このように、一回目の視線が通過した第三のスイッチ63と第四のスイッチ64との間隔が大きくされることで、二回目の視線の移動の際に、それら第三のスイッチ63、第四のスイッチ64のうちの運転者が所望するスイッチを、運転者に選択させやすくできる。
【0069】
また、S13において、一回目の視線が通過した複数のスイッチ61〜64のうちのS12で決定された候補スイッチは、運転者が所望するスイッチの可能性が高いので、その候補スイッチをスイッチ表示領域60の端の位置(一番右側の位置又は一番左側の位置)に表示させるようにしてもよい。例えば、S12において、第三のスイッチ63(「エアコン」のスイッチ)が候補スイッチとして決定された場合には、図6(b)に示すように、その第三のスイッチ63をスイッチ表示領域60の一番右側の位置に表示させる。これによって、二回目の視線の移動の際に、その第三のスイッチ63(候補スイッチ)を選択させやすくできる。なお、S13の処理は、主に表示制御部17が行う処理である。
【0070】
図3の説明に戻り、次いで、前回(一回目)に視線が視線監視領域50に復帰してから所定時間内に、再び、視線が視線監視領域50から外れたか否かを判断する(S14)。具体的には、S11の判断と同様に、画像入力装置4から入力された運転者の眼球30の画像に基づいて、視線抽出部11が運転者の視線を算出する(S14)。そして、その算出した視線が視線監視領域50にあるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「再移動判断手段」に相当する。
【0071】
このS14の処理は、一回目の視線の移動がスイッチ61〜64を選択する意図してなされたものであるかを判断するための処理である。すなわち、一回目の視線の移動がスイッチ61〜64を選択する意図してなされたものである場合には、視線が視線監視領域50に復帰してから早い時期に二回目の視線の移動もなされる可能性が高いと考えられる。よって、所定時間内に、視線が再び視線監視領域50から外れなかった場合には(S14:No)、運転者はスイッチ61〜64を選択する意思がないとする。この場合、表示制御部17が、S13で変更した表示を元のデフォルト表示に戻す(S15)。なお、S14における所定時間は例えば「5秒」とする。その後、S11の処理に戻る。
【0072】
S14において、所定時間内に、視線が再び視線監視領域50から外れた場合には(S14:Yes)、運転者はスイッチ61〜64を選択する意思がある可能性が高いとして、S16以降の処理を実行する。具体的には、今回(二回目)の視線の移動に対する視線追跡処理を実行する(S16)。このS16の処理は、先に説明したS12(図4のフローチャートの処理)と同じ処理である。つまり、二回目の視線の移動に対して、運転者が所望する選択スイッチの候補となる候補スイッチを決定する(S16)。
【0073】
次いで、前回(一回目)の視線追跡処理(S12)によって決定された候補スイッチと、今回(二回目)の視線追跡処理(S16)によって決定された候補スイッチとが、同じスイッチであるか否かを判断する(S17)。同じスイッチでない場合には(S17:No)、一回目及び二回目の視線の移動がともに、スイッチ61〜64を選択する意図がなく偶然なされたものであるとして、選択スイッチの決定を行わない。この場合(S17:No)、スイッチ表示領域60の表示を元のデフォルト表示に戻す(S15)。その後、S11の処理に戻る。
【0074】
S17において、一回目に決定された候補スイッチと二回目に決定された候補スイッチとが同じスイッチである場合には(S17:Yes)、その候補スイッチを、運転者が所望する選択スイッチとして決定する(S18)。なお、S17及びS18の処理は、選択結果判定部15が主となって行う処理である。なお、S17及びS18を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「最終決定手段」に相当する。また、S17を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「一致判断手段」に相当する。
【0075】
次いで、S18にて決定した選択スイッチに応じた車載機器20の制御を実行する(S19)。例えば、選択スイッチが、エアコンに対応するスイッチである場合には、車載機器20としてのエアコンに関する制御を実行する。具体的には、例えば、表示制御部17が、現在のエアコンの設定温度を示した画像をフロントウィンドウ41に表示させる。また、ステアリング42に設けられたステアリングスイッチ22の操作によって、エアコンの設定温度を設定できるようにする。すなわち、車載機器制御部16が、ステアリングスイッチ22からの信号に応じた分だけ、現在のエアコンの設定温度を増加させ、又は減少させるように、エアコン(車載機器20)を制御する。このように、運転者は、車載機器20の操作パネル20a(図2参照)を直接操作しなくても、フロントウィンドウ41に表示された現在の設定値を確認しつつ、ステアリングスイッチ22によってその設定値を変更することができる。よって、車両2の前方から視線が離れるのを防止できる。その後、S10の処理に戻って、メインスイッチ21が再度操作されるまで、上記の処理を繰り返し実行する。なお、本実施形態では、メインスイッチ21により上記の処理の開始と終了を指定しているが、メインスイッチ21の設置にかかわらず、上記の処理を常時繰り返す実施形態を排除するものではない。
【0076】
以上説明したように、本実施形態では、運転者の視線が視線監視領域50から外れている間における視線の動きに基づいて、運転者が所望する選択スイッチを決定しているので、運転者の視線の動きを常に追跡して選択スイッチを決定する場合に比べて、その決定の精度を向上できる。また、一定時間以上スイッチを注視していなくても、つまりスイッチをチラ見するだけでそのスイッチを選択スイッチとして決定することができるので、車両前方を見ることが疎かになることを防止できる。さらに、二回のチラ見の結果に基づいて選択スイッチを決定しているので、その決定の精度をより一層向上できる。
【0077】
(第二実施形態)
次に、本発明の車載機器制御装置の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。第二実施形態における車載機器制御装置の構成は、図1、図2の第一実施形態のそれと同じである。一方、制御部10及び各処理部11〜17が実行する、選択スイッチを決定するスイッチ選択処理が、第一実施形態のそれ(図3の処理)と異なる。以下、本実施形態のスイッチ選択処理について説明する。
【0078】
ここで、図7は、本実施形態のスイッチ選択処理のメインルーチンを示したフローチャートである。なお、図7において、図3の処理と同じ処理ステップには同じ符号を付している。先ず、フロントウィンドウ41下部のスイッチ表示領域60に、4つのスイッチ61〜64を表示させる(S10)。次いで、運転者の視線が視線監視領域50から外れたか否かを判断する(S11)。外れた場合には(S11:Yes)、視線を追跡して候補スイッチを決定する(S12)。次いで、S12の追跡結果に応じて、スイッチ表示領域60に表示されたスイッチ61〜64(図2参照)の表示を変更する(S13)。次いで、所定時間内に、再度、視線が視線監視領域50から外れたか否かを判断する(S14)。外れなかった場合には(S14:No)、スイッチ61〜64の表示をデフォルト表示に戻す(S15)。一方、所定時間内に視線が再度視線監視領域50から外れた場合には(S14:Yes)、再度、視線を追跡して候補スイッチを決定する(S16)。
【0079】
次いで、視線が視線監視領域50から外れて視線監視領域50に復帰するまでの視線の移動を一回の視線の移動としたときに、視線の移動が所定回数されたか否かを判断する(S20)。このS20の所定回数は、三回以上の回数とする(二回の場合では、第一実施形態と同じ内容となるため)。なお、S20の処理は、S12及びS16にて決定された候補スイッチの個数が所定個数になったか否かを判断することと同義である。ここで、視線の移動の回数が未だ所定回数に達していない場合は(S20:No)、S14の処理に戻る。この場合、所定時間内に、再度、視線が視線監視領域50から外れた場合には(S14:Yes)、候補スイッチを決定する(S16)。そして、視線の移動回数を一回プラスして、再度、視線の移動が所定回数されたか否かを判断する(S20)。つまり、視線の移動が所定回数されるまでは、S14、S16、S20の処理が繰り返し実行されて、候補スイッチが繰り返し決定される。一方、視線の移動が所定回数される前に、前回に視線が視線監視領域50に復帰してから所定時間内に今回の視線の移動がなされなかった場合には(S14:No)、選択スイッチの決定を行わない。この場合(S14:No)、デフォルト表示に戻して(S15)、S11の処理に戻る。
【0080】
S20において、視線の移動が所定回数された場合には(S20:Yes)、S12及びS16で決定された複数の候補スイッチのうち最多の候補スイッチを、運転者が所望する選択スイッチとして決定する(S21)。例えば、5つの候補スイッチを決定したとして、そのうちの3つが第三のスイッチ63(図2参照)である場合には、その第三のスイッチ63を選択スイッチとして決定する(S21)。なお、S21の処理は、選択結果判定部15が主となって行う処理である。次いで、決定した選択スイッチに応じた車載機器20の制御を実行する(S19)。その後、S10の処理に戻って、メインスイッチ21が再度操作されるまで、上記の処理を繰り返し実行する。なお、S21を実行する制御部10及び各処理部11〜17が本発明の「最終決定手段」に相当する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、三回以上のチラ見の結果に基づいて、すなわち、複数の候補スイッチの中から多数決で選択スイッチを決定しているので、その決定の精度を向上できる。
【0082】
(変形例1)
なお、本発明に係る車載機器制御装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で適宜変更することができる。例えば、上記第一、第二実施形態では、視線が視線監視領域50から外れてから視線監視領域50に復帰するまでを一回の視線の移動としていたが、図8に示すように、視線が視線監視領域50外にある間において、一定時間当たりの視線の移動を一回の視線の移動としてもよい。この場合、図8に示すように、視線監視領域50から外れてから最初に一定時間が経過するまでの期間S1、その次に一定時間が経過するまでの期間S2、その次に一定時間が経過するまでの期間S3、・・・としたときに、各期間S1、S2、S3・・・ごとの視線の動きに基づいて、選択スイッチを決定する。具体的には、例えば、各期間ごとに一つの候補スイッチを決定し、第一実施形態のように、今回の期間で決定された候補スイッチが、前回の期間で決定された候補スイッチと同じ場合には、その候補スイッチを選択スイッチとして決定する。また、例えば、第二実施形態のように、所定回数の期間の分だけ候補スイッチを決定し、それら複数の候補スイッチのうち最多の候補スイッチを選択スイッチとして決定する。
【0083】
また、各期間において一つの候補スイッチを決定しないで、前回の期間にて視線が通過した1又は複数のスイッチからなるスイッチ群と、今回の期間にて視線が通過した1又は複数のスイッチからなるスイッチ群との間で、重複するスイッチを選択スイッチとして決定してもよい。ここで、図9は、その決定方法の具体例を示した図であり、具体的には、図9(a)は、前回(一回目)に視線が通過したスイッチ71、72、73を示しており、図9(b)は、今回(二回目)に視線が通過したスイッチ74、72、75を示している。この場合、図9(a)、(b)に示すように、一回目と二回目とで、「ナビ」のスイッチ72が重複するので、そのスイッチ72を選択スイッチとして決定する。
【0084】
(変形例2)
上記実施形態では、フロントウィンドウ41の下部の一箇所(スイッチ表示領域60、図2参照)にスイッチ61〜64を表示していたが、同一のスイッチを複数箇所に表示するようにしてもよい。ここで、図10は、図2と対応する図であり、同一のスイッチを複数箇所に表示した例を示している。なお、図10において、図2と変更がない部分には同一の符号を付している。図10に示すように、フロントウィンドウ41の下部に第一のスイッチ表示領域60aが設けられ、その第一のスイッチ表示領域60aには、4つのスイッチ61a〜64aが表示される。また、フロントウィンドウ41の上部に第二のスイッチ表示領域60bが設けられ、その第二のスイッチ表示領域60bには、4つのスイッチ61b〜64bが表示される。これらスイッチ61a〜64aとスイッチ61b〜64bとはそれぞれ同じスイッチであり、具体的には、スイッチ61aとスイッチ61bとが同じであり、スイッチ62aとスイッチ62bとが同じであり、スイッチ63aとスイッチ63bとが同じであり、スイッチ64aとスイッチ64bとが同じである。
【0085】
このように、同一のスイッチを複数のスイッチ表示領域に表示することで、運転者に各スイッチを選択させやすくすることができる。
【0086】
また、図10では、第一のスイッチ表示領域60aのスイッチ61a〜64aの表示位置関係と、第二のスイッチ表示領域60bのスイッチ61b〜64bの表示位置関係とが同じであったが、図11に示すように、それら表示位置関係を互いに異ならせても良い。すなわち、図11では、第一のスイッチ表示領域60aの左から3番目の位置に表示されたスイッチ63aは、第二のスイッチ表示領域60bにおいては、一番右側の位置にスイッチ63bとして表示されている。それに伴い、第一のスイッチ表示領域60aの一番右側の位置に表示されたスイッチ64aは、第二のスイッチ表示領域60bにおいては、左から3番目の位置にスイッチ64bとして表示されている。
【0087】
これによって、各スイッチの選択のしやすさをスイッチ表示領域ごとに変えることができる。具体的には、例えば図11において、第一のスイッチ表示領域60aにおいては左から3番目のスイッチ63aが、運転者によっては選択し難かったとする。この場合、第二のスイッチ表示領域60bにおいては、そのスイッチ63aに対応するスイッチ63bが一番右側の位置に表示されているので、そのスイッチ63bを選択しやすくなると考えられる。
【0088】
なお、図11で例示した他に、一のスイッチ表示領域においては横一列にスイッチを表示し、他のスイッチ表示領域においては縦一列にスイッチを表示してもよい。また、他のスイッチ表示領域においては複数列にスイッチを表示してもよい。また、他のスイッチ表示領域においては、隣り合う2つのスイッチの間隔を変更してもよい。
【0089】
(その他変形例)
上記実施形態では、一つの視線監視領域50(図2参照)を定めていたが、図12、図13に示すように、複数の視線監視領域を定めてもよい。すなわち、図12に示すように、3つの視線監視領域51a〜51cからなる視線監視領域51を定めてもよく、図13に示すように、4つの視線監視領域52a〜52dからなる視線監視領域52を定めてもよい。なお、図12、図13では、図2と変更がない部分には同一の符号を付している。
【0090】
また、上記実施形態では、運転者の視線によって選択されるスイッチとして、フロントウィンドウ41に表示されたアイコン画像を対象としていたが、車載機器20の操作パネル20a(図2参照)に表示されたボタン、スイッチ、アイコン画像を、運転者の視線によって選択されるスイッチの対象としてもよい。また、車載機器20(車載機器20の操作パネル20a)そのものをスイッチと考えて、その車載機器20を視線で選択できるようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、複数の車載機器20のいずれかに割り当てられた複数のスイッチを表示していたが、一の車載機器20のいずれかの機能に割り当てられた複数のスイッチを表示してもよい。具体的には、例えば、車載機器20としてオーディオを考えた場合、音量を設定するためのスイッチ、CD、DVD等のソースを切り替えるためのスイッチ等、機能別の複数のスイッチを表示してもよい。また、上記実施形態では、一のスイッチ表示領域あたりに4つのスイッチを表示していたが、何個のスイッチを表示してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 車載機器制御装置
2 車両
4 画像入力装置(カメラ)
10 制御部
11 視線抽出部
12 視線通過判定部
13 視線停留判定部
14 視線進行方向判定部
15 選択結果判定部
16 車載機器制御部
17 表示制御部
18 HUD(表示手段)
20 車載機器
20a 車載機器20の操作パネル
21 メインスイッチ
22 ステアリングスイッチ
41 フロントウィンドウ
50、51、52 視線監視領域
60、60a、60b スイッチ表示領域
61〜64、61a〜64a、61b〜64b、71〜75 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め表示された複数のスイッチの中からユーザの視線によって選択されたスイッチである選択スイッチに応じて、車両に搭載された車載機器の制御を実行する車載機器制御装置であって、
前記ユーザの視線が予め定められた視線監視領域から外れたか否かを判断する視線移動判断手段と、
その視線移動判断手段が前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れたと判断したことに基づいて、前記ユーザの視線の動きを追跡する視線追跡手段と、
前記視線監視領域外に表示された前記複数のスイッチのうち、前記視線追跡手段が追跡した前記視線の動きに応じたスイッチを、前記選択スイッチとして決定するスイッチ決定手段と、を備えることを特徴とする車載機器制御装置。
【請求項2】
前記スイッチ決定手段は、前記視線が通過した通過線上又はその通過線の先にある前記スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
前記スイッチ決定手段は、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れているときにおける特定期間をスイッチ選択期間としたときに、複数回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた前記スイッチを、前記選択スイッチとして決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車載機器制御装置。
【請求項4】
前記スイッチ選択期間は、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れてから前記視線監視領域に復帰するまでの期間であることを特徴とする請求項3に記載の車載機器制御装置。
【請求項5】
前記ユーザの視線が前回に前記視線監視領域に復帰してから所定時間が経過するまでに、再度、前記ユーザの視線が前記視線監視領域から外れたか否かを判断する再移動判断手段を備え、
前記スイッチ決定手段は、前記再移動判断手段が前記視線が前記視線監視領域から外れていないと判断した場合には、前記選択スイッチの決定を中止することを特徴とする請求項4に記載の車載機器制御装置。
【請求項6】
前記スイッチ決定手段は、各回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた1又は複数の前記スイッチからなる群をスイッチ群としたときに、複数の前記スイッチ群の間で重複する前記スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。
【請求項7】
前記スイッチ決定手段は、
各回の前記スイッチ選択期間ごとに、前記視線の動きに応じた1つの前記スイッチを、前記選択スイッチの候補となる候補スイッチとして決定する候補スイッチ決定手段と、
その候補スイッチ決定手段が決定した複数の前記候補スイッチ間で重複する候補スイッチを前記選択スイッチとして決定する最終決定手段と、を備えることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。
【請求項8】
前記候補スイッチ決定手段は、前記視線が最も長く停留した前記スイッチ又は前記視線が最後に通過した前記スイッチを前記候補スイッチとして決定することを特徴とする請求項7に記載の車載機器制御装置。
【請求項9】
前記候補スイッチ決定手段は、前記視線が最も長く停留した前記スイッチ及び前記視線が最後に通過した前記スイッチが無い場合には、前記視線の通過線の先にある前記スイッチを前記候補スイッチとして決定することを特徴とする請求項8に記載の車載機器制御装置。
【請求項10】
前記最終決定手段は、前回の前記スイッチ選択期間にて決定された前記候補スイッチと今回の前記スイッチ選択期間にて決定された前記候補スイッチとが一致するか否かを判断する一致判断手段を備え、その一致判断手段が一致すると判断した前記候補スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。
【請求項11】
前記最終決定手段は、各回の前記スイッチ選択期間にて決定された複数の前記候補スイッチのうち最多の候補スイッチを前記選択スイッチとして決定することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。
【請求項12】
前記視線監視領域は、前記車両のフロントウィンドウの一部の領域と重なるように定められており、
前記フロントウィンドウに画像を表示させる表示手段と、
前記フロントウィンドウの特定のスイッチ表示領域に、前記スイッチを示した画像を前記表示手段によって表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする請求項3〜11のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。
【請求項13】
前記スイッチ表示領域は、異なる位置に複数定められており、
前記表示制御手段は、同一の前記スイッチを、複数の前記スイッチ表示領域に表示させることを特徴とする請求項12に記載の車載機器制御装置。
【請求項14】
前記表示制御手段は、複数の前記スイッチ表示領域のそれぞれに、同じ組み合わせの複数の前記スイッチを表示させるものであり、各スイッチ表示領域における前記複数のスイッチ間の表示位置関係を、前記スイッチ表示領域ごとに異ならせることを特徴とする請求項13に記載の車載機器制御装置。
【請求項15】
前記表示制御手段は、今回の前記スイッチ選択期間における前記視線の動きに応じた前記スイッチが複数ある場合には、それら複数のスイッチ間の表示位置関係を変更することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の車載機器制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−56359(P2012−56359A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199169(P2010−199169)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】