説明

車載用デジタルテレビ放送受信機

【課題】緊急地震速報を利用者にタイムリーに伝達可能な車載用デジタルテレビ放送受信機を提供する。
【解決手段】車載用DTV放送受信機1は、DTV放送を受信するDTV受信部11と、DTV受信部11とは非同期にアナログラジオ放送を受信するラジオ受信部12と、DTV受信部11による受信音声信号とラジオ受信部12による受信音声信号とを入力とし、いずれか一方を選択出力する音声切換え部15と、アナログラジオ放送に緊急地震速報を示す報知信号が含まれていた場合、音声切換え部15を制御して、アナログラジオ放送の受信音声信号を選択出力する制御部14と、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急地震速報を報知する車載用デジタルテレビ放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震、津波、気象等に関する緊急防災情報を利用者に伝達するための技術が多数出願されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「緊急放送」を確実に受信するために、2つの伝送手段の情報を得て、そのうち一つが緊急放送信号であることを検出したら、待機状態にあった受信機を作動させる技術が開示されている。また、特許文献2には、FM多重波や携帯電話用の電波による緊急地震速報の配信システムに関する技術が開示されている。
【0004】
一方、デジタル放送の場合、従来のアナログ放送に比べると、デジタル信号処理にかかる時間のために遅延が発生することが知られている。このデジタル放送受信における信号遅延による不自然さを改善するために、従来、例えば、特許文献3には、画像信号にあわせ音声信号を遅延する技術が開示されており、また、特許文献4には、時刻表示のみ優先してデコードする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−517784号公報
【特許文献2】特開2006−145234号公報
【特許文献3】特開2008−42630号公報
【特許文献4】特開2001−136088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緊急地震速報は、気象庁が、平成19年10月から実施している公開情報であり、地震の大きな揺れが到達する数秒から数十秒前に予告として発表されるものであり、現状は、テレビ、ラジオの放送メディアを通じても配信されている。
【0007】
ところが、受信している放送メディア、特に、デジタルテレビ放送では時間的な遅れが発生し、場合によっては1〜2秒程度の遅れが深刻な事態に陥る可能性がある。このように、緊急放送が「緊急地震速報」のように秒単位での予告を目的とする場合、特許文献3に示されるように、映像と音声の不一致の不自然さは問題ではなく、時間的遅延による情報入手の遅れによる影響が無視できないものになる。特に、車載用デシタルテレビ放送受信機で上述した緊急地震速報を受信する場合、上記した情報入手の遅れの他に、走行環境によっては受信電波が乱れて最悪緊急地震速報を入手できない事態も考えられる。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、緊急地震速報を利用者にタイムリーに伝達可能な、車載用デジタルテレビ放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために本発明の車載用デジタルテレビ放送受信機は、デジタルテレビ放送を受信するデジタルテレビ放送受信部と、前記デジタルテレビ放送受信部とは非同期にアナログラジオ放送を受信するアナログラジオ放送受信部と、前記デジタルテレビ放送受信部による受信音声信号と前記アナログラジオ放送受信部による受信音声信号とを入力とし、いずれか一方を選択出力する音声切換え部と、前記アナログラジオ放送に緊急地震速報を示す報知信号が含まれていた場合、それを検出し、前記音声切換え部を制御して、前記アナログラジオ放送の受信音声信号を選択出力する制御部と、を備えたものである。
【0010】
本発明によれば、緊急地震速報を利用者にタイムリーに伝達可能な車載用デジタルテレビ放送受信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車載用デジタルテレビ放送受信機の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る車載用デジタルテレビ放送受信機の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る車載用デジタルテレビ放送受信機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る車載用デジタルテレビ放送受信機(以下、車載用DTV放送受信機1という)の基本構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1は、デジタルテレビ放送受信部(以下、DTV受信部11という)と、アナログラジオ放送受信部(以下、ラジオ受信部12という)と、緊急地震速報検出部13と、マイコンに実装された制御部14と、音声切換え部15と、を含み構成される。
【0014】
図1の基本構成によれば、ラジオ受信部12は、DTV受信部11の動作状態に依存することなく、常時、アナログラジオ放送を受信している。また、放送電波中に、「緊急地震速報」を表す報知信号が含まれていれば、それをラジオ受信部12を介して緊急地震速報検出部13が検出する。緊急地震速報検出部13の出力は、制御部14に供給される。これを受けた制御部14は、音声切換え部15を制御し、DTV受信部11の音声出力と、ラジオ受信部12の音声出力とを入力とする音声切換え部15の出力を、ラジオ受信部12の音声に切換え制御する。
【0015】
上述した緊急地震速報に関する音声出力後、音声切換え部15は、DTV受信機側の操作によりDTV受信部11の音声に切り替わるように動作する。
この基本構成により、本実施の形態1に係る車載用DTV受信機1が、「緊急地震速報」を受信した場合、その音声が即時に出力されるため、利用者は、DTV放送で受信する場合に比べて迅速に緊急地震速報を入手することが可能になる。
【0016】
なお、ここでは、ラジオ受信部12、緊急地震速報検出部13、制御部14、音声切換え部15は、常時動作しているものとして説明したが、車載用DTV放送受信機1の場合、アクセサリー電源が通電されている状態でのみそれぞれが動作するように構成される。
【0017】
また、ラジオ受信部12は、車載用DTV放送受信機1が搭載された車両の走行場所により、同地域の受信可能な放送局の周波数に選局同調させておく必要がある。この選局操作は、元々、車載用DTV放送受信機1が受信地域設定機能を有しているため、この設定と同時にアナログラジオ放送受信局の設定が可能となるように構成することで実現できる。
このため、ラジオ受信部12は、PLL(Phase Locked Loop)シンセサイザチューナの構成を有し、さらにその制御は、制御部14から行なわれるように構成される。
【0018】
また、ラジオ受信部12は、DTV受信部11の動作状態によらず、常時、緊急地震速報の受信待機状態にある必要があるため、DTV受信部11が非動作状態にあっても、制御部14は、ラジオ受信部12と共に常に動作状態になければならないが、これは上述したように、不図示のアクセサリー電源でラジオ受信機能の動作が継続するように構成することで対応が可能である。
【0019】
なお、「緊急地震速報」は、従来からある緊急警報放送とは異なり、自動受信のためのトーン信号は送信されないが、例えば、NHKでは、「緊急地震速報」時、定型パターンのチャイム音を音声信号として送信するようにしている。この信号は、緊急地震速報検出部13を、例えば、トーンフィルタで構成することで検出が可能である。また、「緊急地震速報」は、定型パターンのチャイム音で繰り返し送信されるため、緊急地震速報検出部13は、例えば、連続2回のチャイム音に相当する電圧変化を検出することにより、出力を発生させる等の手法で誤検出の発生を抑制することができる。
【0020】
また、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1によれば、アナログラジオ放送で「緊急地震速報」を検出するため、受信環境の悪化等により起こり得るデジタル放送の受信が一時的にできなくなる状況においても有効に機能することができる。
【0021】
図2は、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1の詳細構成を示すブロック図である。
図2において、図1で示したブロックと同じ番号が付されたブロックは、図1に示すそれと同じ名称、機能を有するため、ここでは重複説明を回避する意味で説明を省略する。
【0022】
図2に示されるように、DTV受信部11とラジオ受信部12は、制御部14として実装される、例えば、マイコンにより選局制御される。
制御部14にはメモリ22が接続されており、そのメモリ22には、各地域における放送局の情報が記録されている。通常、車載用DTV放送受信機1には地域設定機能があり、使用者が居住する地域を、操作部21により操作選択することにより、その地域で受信可能な放送局が自動設定されるようになっている。
【0023】
このため、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1では、メモリ22に、「緊急地震速報」を報知するラジオ放送局の情報も書き込んでおくことで、地域設定を行ったときに同時に同地域で受信可能なラジオ放送局も設定されるように動作する。
【0024】
なお、DTV受信部11で受信されたデジタル放送信号は、復調されて、映像、音声データの各信号に分離され、そのうち、映像信号は映像回路25へ、音声信号はDTV音声回路26へ、データ信号は制御部14に供給される。
そして、映像回路25で復号されアナログ信号に変換された映像信号は、LCD(Liquid Crystal Display Device)パネル等で構成される表示部27で再生され、DTV音声回路26で復号されアナログ信号に変換された音声信号は、音声切換え部15に供給される。音声切換え部15には、他に、ラジオ音声回路23から、ラジオ受信部12で受信した音声信号を復調した音声信号が供給されており、制御部14による制御の下、音声切換え部15により選択出力される音声信号は、スピーカ28を介して出力される。
【0025】
なお、アクセサリー電源(ACC電源24)は、制御部14による制御の下でイグニッションキー操作が検知されることで、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1の各構成ブロックを含む電装品の全てに電力を供給する電源である。
【0026】
上述した構成によれば、ラジオ受信部12は、DTV受信部11によるDTV放送の受信状態に関わらず動作している。ここでは、DTV放送受信状態として説明する。
【0027】
本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1において、DTV受信部11によるDTV放送受信時、ラジオ受信部12は、「緊急地震速報」の放送を待ち受ける、例えば、NHK第一放送を受信するように動作している。
「緊急地震速報」が放送される場合、冒頭、特定のチャイム音が発生することが知られている。このチャイム音は、緊急地震速報検出部13で検出される。緊急地震速報検出部13で検出された信号は、例えば、直流電圧の変化として制御部14に供給され、制御部14は、その電圧変化に基づき、「緊急地震速報」であると判定した場合、音声切換え部15を、ラジオ音声回路23の出力をスピーカ28に出力するように切換え制御を行う。
【0028】
図3は、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1の動作を示すフローチャートである。以下、図3に示すフローチャートを参照しながら、図1、図2に示す本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1の動作について詳細に説明する。
【0029】
図3によれば、制御部14は、まず、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1が、DTV受信部11によるDTV放送受信中か、またはDTV放送受信が無効(OFF)になっていることを検知する(ステップST301)。ここで、DTV受信中であるか、またはDTV放送受信がOFF状態であれば(ステップST301“YES”)、制御部14は、ラジオ受信部12の受信周波数を、「緊急地震速報」を行うNHK第一放送に自動的に設定する(ステップST302)。ステップST301の判断が“NO”であれば、ステップST301の判断を繰返す。
【0030】
一方で、制御部14は、緊急地震速報検出部13の出力を一定時間間隔で監視している(ステップST303)。ここで、緊急地震速報検出部13の出力が、予め定めた直流電圧の変化(定型パターン)と一致した場合(ステップST304“YES”)、制御部14は、現在ラジオ受信部12で受信しているラジオ放送は「緊急地震速報」であると判定し、音声切換え部15を制御することによって、音声切換え部15の出力を、DTV音声回路26、または不図示の他の入力ソースの音声回路出力から、ラジオ音声回路23出力に切換え制御する(ステップST305)。ステップST304の判断が“NO”であれば、ステップST304の判断を繰返す。
【0031】
なお、図3のフローチャートには図示省略されているが、上述したラジオ受信部12、緊急地震速報検出部13、制御部14、および音声切換え部15は、イグニッションキーが差し込まれた状態でACC電源24による電力が通電されている間、DTV受信部11の動作状態に依存することなく、それぞれが動作するものとする。
【0032】
上記したように、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1によれば、制御部14が、アナログラジオ放送に緊急地震速報を示す報知信号が含まれていた場合、音声切換え部15を制御して、アナログラジオ放送の受信音声信号を選択出力することにより、「緊急地震速報」を受信した場合にその音声が迅速に出力され、したがって、DTV放送で「緊急地震速報」を受信する場合に比べ、デジタル信号処理にかかる遅延が無く迅速に緊急地震速報を入手することが可能になり、不測の事態を回避することができる。
【0033】
また、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1によれば、アナログラジオ放送で「緊急地震速報」を検出するため、受信環境の悪化等により起こり得るデジタル放送の受信が一時的にできなくなる状況においても、トンネル走行等をしていない限り、確実に「緊急地震情報」を受信することができるため、正常動作が可能である。
更に、本実施の形態1に係る車載用DTV放送受信機1によれば、制御部14による制御の下、ラジオ受信部12は、DTV受信部11の動作状態に依存せず、DTV受信部11で受信可能な受信チャンネルで地域設定された放送局の受信周波数が自動選局されるため、利用者は、アナログラジオ放送による「緊急地震速報」受信設定の手間が省け、この受信設定に要する負担の軽減もはかれる。
【0034】
なお、図1、図2に示す制御部14が有する機能は、全てをソフトウェアによって実現しても、あるいはその少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
例えば、制御部14が、「アナログラジオ放送に緊急地震速報を示す報知信号が含まれていた場合、音声切換え部15を制御して、アナログラジオ放送の受信音声信号を選択出力する」データ処理は、1または複数のプログラムによりコンピュータ上で実現してもよく、また、その少なくとも一部をハードウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 車載用デジタルテレビ放送受信機(車載用DTV放送受信機)、11 デジタルテレビ放送受信部(DTV受信部)、12 アナログラジオ放送受信部(ラジオ受信部)、13 緊急地震速報検出部、14 制御部、15 音声切換え部、21 操作部、22 メモリ、23 ラジオ音声回路、24 アクセサリー電源(ACC電源)、25 映像回路、26 DTV音声回路、27 表示部、28 スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルテレビ放送を受信するデジタルテレビ放送受信部と、
前記デジタルテレビ放送受信部とは非同期にアナログラジオ放送を受信するアナログラジオ放送受信部と、
前記デジタルテレビ放送受信部による受信音声信号と前記アナログラジオ放送受信部による受信音声信号とを入力とし、いずれか一方を選択出力する音声切換え部と、
前記アナログラジオ放送に緊急地震速報を示す報知信号が含まれていた場合、前記音声切換え部を制御して、前記アナログラジオ放送の受信音声信号を選択出力する制御部と、
を備えたことを特徴とする車載用デジタルテレビ放送受信機。
【請求項2】
前記制御部は、
前記報知信号の検出部の出力が予め定めた直流電圧変化と一致した場合に、前記アナログラジオ放送受信部で受信したアナログラジオ放送が地震速報であると判定して前記音声切換え部を制御することを特徴とする請求項1記載の車載用デジタルテレビ放送受信機。
【請求項3】
前記アナログラジオ放送受信部は、
前記デジタルテレビ放送受信部の動作状態に依存せず、前記デジタルテレビ放送受信部で受信可能な受信チャンネルで設定された地域のラジオ放送局の受信周波数を選局することを特徴とする請求項1または2記載の車載用デジタルテレビ放送受信機。
【請求項4】
前記制御部は、
アクセサリー電源の投入を検知して前記アナログラジオ放送受信部による前記アナログラジオ放送の受信動作を起動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の車載用デジタルテレビ放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−55206(P2011−55206A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201664(P2009−201664)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】