説明

車載用暖房装置

【課題】触媒2の活性に影響を与えることなく、長期間高い蓄熱密度の実現し、軽量、小容積でエンジン1始動時に即時に暖房効果を発揮できる車載用暖房装置を提供する。
【解決手段】上述の課題を解決するため、本発明の第1の車載用暖房装置は、エンジンと、車内暖房の熱源として利用するヒータコアと、エンジンから排出される燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出経路と、燃焼ガス排出経路中に、水と反応することによって吸熱・発熱をする蓄熱材と、蓄熱材よりもエンジン側に配置された燃焼ガス浄化触媒とを備え、蓄熱材と燃焼ガス中に含まれる水とが反応することによる発熱によりヒータコアを加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱を利用した車載用暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用暖房装置では、エンジンの廃熱によって加熱されたエンジン冷却水を用いてヒータコアを加熱し、ヒータコアで空気を加熱し、車内の暖房に利用してきた。このような、暖房装置では、エンジン始動後、エンジンがある程度の温度まで暖まらないと、ヒータコアを加熱することが出来ず、暖房を効果的に行なうことができないという問題があった。
【0003】
そこで特許文献1や特許文献2のように蓄熱材を用いた暖房装置が検討されている。
【0004】
特許文献1では、化学蓄熱を利用した車載用暖房装置が開示されている。この特許文献1では、エンジンからの燃焼ガスをゼオライトからなる蓄熱材に流通させる。定常走行時には、流通する燃焼ガスが高温、低湿度となることから、ゼオライトから水蒸気が脱水する反応により蓄熱し、エンジン始動時には、燃焼ガスが低温、高湿度となることから、ゼオライトに水蒸気が吸着する反応により、発熱する。この熱を暖房用の空気と熱交換し、車室内に加熱された空気を供給することにより、暖房を行うものがある。
【0005】
また、特許文献2のように、化学蓄熱を利用した車載用触媒暖機装置がある。この特許文献2では、エンジンからの燃焼ガスを水酸化物からなる蓄熱材と触媒とを一体化した蓄熱材・触媒充填層を流通させる。定常走行時には、流通する燃焼ガスが高温、低湿度となることから、蓄熱材である水酸化物から水蒸気が脱水する反応により、酸化物が生成され、蓄熱される。また、エンジン始動時には、燃焼ガスが低温、高湿度となることから、酸化物と水蒸気との反応により、発熱する。この熱を一体化した触媒充填層に直接熱伝導により伝え、触媒が活性化温度に到達する時間を短縮するものがある。
【特許文献1】特開昭62−105714号公報
【特許文献2】特開平5−141228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、蓄熱材として、ゼオライト等の吸着材を用いる場合、燃焼ガス中の窒素、酸素、炭化水素、一酸化炭素も同時に吸着されるため、短期間で蓄熱材が破過し、蓄熱できなくなるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2のように、蓄熱材を触媒と一体化して充填させた場合、定常走行時に蓄熱材から水蒸気が脱水する反応が吸熱反応となることから、燃焼ガスや触媒の温度を低下させるため、炭化水素や一酸化炭素に対する触媒活性を低下させるという課題があった。
【0008】
さらに、特許文献1、2ともに、エンジン停止時にも蓄熱材が外気に連通していることから、空気中の水蒸気を吸着して、蓄熱量が低下するという課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決し、触媒の活性に影響を与えることなく、高い蓄熱密度を長期間実現することが出来る車載用暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の第1の車載用暖房装置は、エンジンと、車内暖房の熱源として利用するヒータコアと、エンジンから排出される燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出経路と、燃焼ガス排出経路中に、水と反応することによって吸熱・発熱をする蓄熱材と、蓄熱材よりもエンジン側に配置された燃焼ガス浄化触媒とを備え、蓄熱材と燃焼ガス中に含まれる水とが反応することによる発熱によりヒータコアを加熱することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の車載用暖房装置は、蓄熱材は酸化物、または細孔径3Å以下の吸着材であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第3の車載用暖房装置は、エンジンとヒータコアとを熱交換する第1熱交換回路と、蓄熱材とヒータコアとを熱交換する第2熱交換回路とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第4の車載用暖房装置は、熱交換回路制御手段を備え、エンジン始動時に第2熱交換回路、定常走行時に第1熱交換回路に切換えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第5の車載用暖房装置は、蓄熱材を内設した第1の燃焼ガス経路と、蓄熱材を短絡して燃焼ガスが流通できる第2の燃焼ガス経路と、第1の燃焼ガス経路と第2の燃焼ガス経路への供給量を制御するダンパを備え、エンジン始動時には、燃焼ガスが第1の燃焼ガス経路に全量供給されるようにダンパを切換え、定常走行時には、燃焼ガスを第1の燃焼ガス経路と第2の燃焼ガス経路に配分して供給されるようダンパを切換える制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第6の車載用暖房装置は、エンジン停止直後には、燃焼ガスが第2の燃焼ガス経路に優先的に供給されるようにダンパを切換えることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の第7の車載用暖房装置は、蓄熱材の下流側にダンパを備え、エンジン停止時に蓄熱材が外気と遮断されるようにダンパを切換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒の活性に影響を与えることなく、高い蓄熱密度を長期間実現することができる車載用暖房装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、従来から広く採用されている公知の手段については、詳細な説明を省略する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の構成図である。燃焼ガス経路は、エンジン1と、ここから排出される燃焼ガス中に含まれる炭化水素や一酸化炭素等を浄化する触媒2と、その下流に設置され、燃焼ガスの熱を利用して化学反応により蓄熱する蓄熱材3と、蓄熱材3と熱交換する熱交換器4と、マフラー5から構成される。また、暖房経路は、エンジン1-ヒータコア6間をポンプ7によって冷却水を循環させる第1の熱交換回路と、熱交換器4-ヒータコア6間をポンプ7によって冷却水を循環させる第2の熱交換回路とを有する。第1の熱交換回路はエンジン1で回収した熱をヒータコア6に伝え、第2の熱交換回路は熱交換器4で回収した熱をヒータコア6に伝えることが可能である。
【0020】
第1の熱交換回路と、第2の熱交換回路の切り替えは、分岐点に三方弁10を設けることによって、ポンプ7による水の流れを蓄熱材3側とエンジン1側の切り替えを行なうことが出来る。
【0021】
なお、その他の形態として、第1の熱交換回路と第2の熱交換回路を別々に設けることなどが考えられる。
【0022】
第1の熱交換回路と第2の熱交換回路の切り替えは、熱交換回路制御手段(図示せず)を用い下記の定常走行時、エンジン1始動時に応じて切り替えを行なう。なお、熱交換回路制御手段は、マイコン等を用いて実現する事が出来る。
【0023】
<定常走行時>
図2は、本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の定常走行時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。定常走行時には、エンジン1から排出される燃焼ガスは、触媒2で浄化され、蓄熱材3に、温度200〜300℃で流入する。また、このときの燃焼ガス中の水蒸気分圧は14kPaであり、100℃の飽和水蒸気圧との比に換算すると14%となる。また、蓄熱材3として水酸化マグネシウムを用いており、熱交換器4のフィン(ここでは図示せず)間に水酸化マグネシウムの粒子が充填された構成となっている。
【0024】
図3は、本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の蓄熱材3(水酸化マグネシウム)の圧力−温度線図である。図3のAに示すように、上記条件の燃焼ガスが蓄熱材3に流入すると、式1のような反応を生じ、水酸化マグネシウムから水蒸気として脱水する。
【0025】
[式1]
Mg(OH)→MgO+HO(g)
この反応は吸熱反応であることから、反応に伴い、燃焼ガス温度の低下を生じる。このため、蓄熱材3を触媒2の上流に配置する場合には、触媒2における燃焼ガスの浄化特性を低下させる恐れがあり、本実施の形態1のように、蓄熱材3を触媒2の下流に配置することが好ましい。
【0026】
つまり、このように配置する事によって、触媒2にはエンジン1からの燃焼ガスが蓄熱材3よりも前に導入される。そのことによって、触媒2をエンジン1と混合、もしくは蓄熱材3よりも排出口側に設ける場合と比較して、エンジン1の燃焼ガスが蓄熱材3によって冷却する前に、触媒2に導入することができる。したがって、燃焼ガスによって触媒2を加熱しながら、燃焼ガスを浄化することにより、触媒活性を損なう事がなく燃焼ガスを浄化する事ができる。
【0027】
また、触媒2としては、Ptをはじめとする三元触媒が用いられる。このような触媒を用いることによって、特に窒素酸化物,一酸化炭素,炭化水素がそれぞれ式1〜3のように還元・酸化されることによって浄化される。
【0028】
[式2]
2NOx→xO2+N2
[式3]
2CO+O2→2CO2
[式4]
4CxHy+ (4x+y) O2 →4xCO2 + 2yH2O
特に、このような触媒2は常温では酸化・還元能力が低く、エンジンが冷えた状態で始動した直後は酸化・還元能力を発揮することができない。そこで、本実施の形態では、蓄熱材3よりエンジン側に触媒2を配置し、排気ガスによって触媒2を加熱することによって、触媒2の酸化・還元能力を高めることが出来る。
【0029】
一方、暖房経路では、第1の熱交換回路を用いて、エンジン1の排熱を回収した冷却水を、ポンプ7によりヒータコア6に循環させることで、車室内の暖房が行われ、第2の熱交換回路である熱交換器4とヒータコア6との間の冷却水の循環は、停止される。
【0030】
<エンジン1始動時>
図4は、本実施の形態1にかかる車載用暖房装置のエンジン1始動時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。エンジン1始動時には、エンジン1から排出される燃焼ガスは、燃焼ガス経路の構成部材や触媒2が低温(0℃)であり、熱容量も大きいことから、ここで熱を奪われ、温度50℃以下で蓄熱材3に流入する。また、このときの燃焼ガス中の水蒸気分圧は14kPaであり、100℃の飽和水蒸気圧との比に換算すると14%となる。
【0031】
図3のBに示すように、上記条件の燃焼ガスが蓄熱材3に流入すると、(2)式のような反応を生じ、酸化マグネシウムと水蒸気が反応し、水酸化マグネシウムが生成される。
MgO+HO(g)→Mg(OH) (2)
この反応は発熱反応であることから、反応に伴い、蓄熱材3の温度が60℃以上に上昇する。
【0032】
一方、暖房回路では、上記昇温した蓄熱材3から熱交換器4のフィン(ここでは図示せず)を介して熱を回収した冷却水(温度60℃)を、ポンプ7によりヒータコア6に循環させることで、車室内の暖房が行われ、ヒータコア6で熱交換した後の冷却水は温度40℃まで低下し、熱交換器4に戻る。また、この間エンジン1とヒータコア6との間の冷却水の循環は停止される。
【0033】
以上の動作により、エンジン1からの熱を利用することなく、即時に車室内の暖房を行うことができるため、エンジン1始動時にヒータコア6の加熱を素早くすることができる。
【0034】
さらに、暖房起動の起動を迅速化することによる快適性を高めることができるとともに、エンジン1自身の昇温を早めることもできることから、走行時の燃費を向上させることもできる。
【0035】
そして、エンジン1始動から所定の時間経過後に、エンジン1の温度が所定温度以上に昇温したら、定常走行時と判断し、第2の熱交換回路から第1の熱交換回路に切り替える。このような切り替えをすることによって、エンジン1始動時に蓄熱材3に蓄熱した熱を利用し、それ以外のときは蓄熱し、次回のエンジン1始動時に備えることができる。
【0036】
なお、蓄熱材3として、水酸化マグネシウムを用いているが、水和反応を利用する塩化カルシウム系水和物を用いても良い。また、ゼオライト、シリカゲル、活性炭のような吸着材を用いても良い。
【0037】
(実施の形態2)
図5は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の構成図である。実施の形態2は、触媒2の下流に、蓄熱材3を介して燃焼ガスを排出する経路と、蓄熱材3を介さずに燃焼ガスを排出する経路の2経路を有し、蓄熱材3にゼオライトを用いる以外は、実施の形態1と同様である。また、このような流路の切り替えは、第1のダンパ、第2のダンパ9により、蓄熱材3に対する流路の切換えを行っている。
【0038】
<定常走行時>
図6は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の定常走行時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。定常走行時には、エンジン1から排出される燃焼ガスは、触媒2で浄化され、第1のダンパ8を傾斜させて、蓄熱材3を経由する流量と、短絡する流量との比率を調整された上で、一部が、蓄熱材3に温度200〜300℃で流入する。また、このときの燃焼ガス中の水蒸気分圧は14kPaであり、相対湿度に換算すると1%となる。
【0039】
また、蓄熱材3としてゼオライトを用いており、熱交換器4のフィン(ここでは図示せず)間にゼオライトの粒子が充填された構成となっている。
【0040】
さらに、ゼオライトは細孔径3Åのものを用いている。
【0041】
図7は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の蓄熱材3(ゼオライト)の細孔径による水蒸気の選択吸着性を示す図である。図のように、燃焼ガス中に含まれる窒素、酸素、炭化水素、一酸化炭素は、細孔径3Åでは吸着されず、水蒸気のみが選択的に吸着することができる。したがって、他成分吸着による短時間でのゼオライトの破過を防止できる。
【0042】
つまり、蓄熱材3(ゼオライト)の劣化を抑制することが出来るので、蓄熱材3の劣化を小さく見積もる事ができ、軽量かつ小容量で長期間蓄熱密度を発揮する事ができる。
【0043】
なお、このような効果は細孔径3Å以下の蓄熱材を用いれば良くシリカゲル、活性炭等の他の吸着材、また水酸化反応を利用する水酸化マグネシウムや水和反応を利用する塩化カルシウム系水和物を用いても得ることが出来る。
【0044】
図8は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の蓄熱材3(ゼオライト)の吸着平衡線図である。図8のAに示すように、上記条件の燃焼ガスが流入すると、ゼオライトから水蒸気として脱水する。この反応は吸熱反応であることから、反応に伴い、燃焼ガス温度の低下を生じる。このため、蓄熱材3を触媒2の上流に配置する場合には、触媒2における燃焼ガスの浄化特性を低下させる恐れがあり、本実施の形態2のように、蓄熱材3を触媒2の下流に配置することが好ましい。
【0045】
また、第2のダンパ9を水平方向に制御し、蓄熱材3を経由した燃焼ガスの流れと、短絡した流れのいずれに対しても圧力損失にならないようにしている。
【0046】
一方、暖房経路では、エンジン1の排熱を回収した冷却水を、ポンプ7によりヒータコア6に循環させることで、車室内の暖房が行われ、熱交換器4とヒータコア6との間の冷却水の循環は、停止される。
【0047】
<エンジン1始動時>
図9は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン1始動時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。エンジン1始動時には、エンジン1から排出される燃焼ガスは、第1のダンパ8を垂直方向に制御するため、短絡することなく、蓄熱材3のみに流入する。燃焼ガス経路の構成部材や触媒2が低温(0℃)であり、熱容量も大きいことから、ここで熱を奪われ、温度50℃以下で蓄熱材3に流入する。また、このときの燃焼ガス中の水蒸気分圧は14kPaであり、相対湿度に換算すると70%となる。
【0048】
図8のBに示すように、上記条件の燃焼ガスが蓄熱材3に流入すると、ゼオライトに水蒸気が吸着する。この反応は発熱反応であることから、反応に伴い、蓄熱材3の温度が60℃以上に上昇する。
【0049】
また、第2のダンパ9を水平方向に制御し、蓄熱材3を経由した燃焼ガスの流れと、短絡した流れのいずれに対しても圧力損失にならないようにしている。
【0050】
一方、暖房回路では、上記昇温した蓄熱材3から熱交換器4のフィン(ここでは図示せず)を介して熱を回収した冷却水(温度60℃)を、ポンプ7によりヒータコア6に循環させることで、車室内の暖房が行われ、ヒータコア6で熱交換した後の冷却水は温度40℃まで低下し、熱交換器4に戻る。また、この間、エンジン1とヒータコア6との間の冷却水の循環は停止される。また、第1のダンパ8を制御することにより、蓄熱材3に供給される水蒸気量が多くなることから、短時間でより多くの発熱反応を生じ、より即時の暖房効果が得られる。
【0051】
以上の動作により、エンジン1からの熱を利用することなく、即時に車室内の暖房を行うことができるため、エンジン1始動時にヒータコア6の加熱を素早くすることができる。さらに、暖房起動の起動を迅速化することによる快適性を高めることができるとともに、エンジン1自身の昇温を早めることもできることから、走行時の燃費を向上させることもできる。
【0052】
<エンジン1停止直後>
図10は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン1停止直後の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。エンジン1停止直後には、第1のダンパ8、第2のダンパ9をいずれも水平方向に制御し、蓄熱材3を経由することなく、燃焼ガス経路から燃焼ガスを掃気する。
【0053】
この動作により、水蒸気分圧が14kPaと高い燃焼ガスを短時間で掃気できるため、燃焼ガス経路に滞留した低温になった燃焼ガス中に含まれる水蒸気がゼオライトに吸着して、次のエンジン1始動時に利用できる蓄熱量が減少するのを抑制することができる。
【0054】
一方、暖房回路では、ポンプ7を停止し、冷却水の循環を停止している。
【0055】
<エンジン1停止時>
図11は、本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン1停止時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図である。エンジン1停止時には、燃焼ガス、冷却水とも停止しており、第1のダンパ8を水平方向、第2のダンパ9を垂直方向に制御することにより、エンジン1からマフラー5までの空間を密閉空間とし、蓄熱材3を空気が流通して、空気中に含まれる水蒸気がゼオライトに吸着して、次のエンジン1始動時に利用できる蓄熱量が減少するのを抑制することができる。
【0056】
なお、蓄熱材3として、ゼオライトを用いているが、シリカゲル、活性炭等の他の吸着材を用いても良い。また、水酸化反応を利用する水酸化マグネシウムや水和反応を利用する塩化カルシウム系水和物を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる車載用暖房装置は、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車等の自動車用途の暖房装置に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の構成図
【図2】本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の定常走行時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【図3】本実施の形態1にかかる車載用暖房装置の蓄熱材(水酸化マグネシウム)の圧力−温度線図
【図4】本実施の形態1にかかる車載用暖房装置のエンジン始動時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【図5】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の構成図
【図6】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の定常走行時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【図7】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の蓄熱材(ゼオライト)の細孔径による水蒸気の選択吸着性を示す図
【図8】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置の蓄熱材(ゼオライト)の吸着平衡線図
【図9】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン始動時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【図10】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン停止直後の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【図11】本実施の形態2にかかる車載用暖房装置のエンジン停止時の燃焼ガス、冷却水の流れを示す図
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
2 触媒
3 蓄熱材
4 熱交換器
5 マフラー
6 ヒータコア
7 ポンプ
8 第1のダンパ
9 第2のダンパ
10 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
車内暖房の熱源として利用するヒータコアと、
前記エンジンから排出される燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出経路と、
前記燃焼ガス排出経路中に、水と反応することによって吸熱・発熱をする蓄熱材と、
前記蓄熱材よりもエンジン側に配置された前記燃焼ガス浄化触媒と、を備え、
前記蓄熱材と前記燃焼ガス中に含まれる水とが反応することによる発熱により前記ヒータコアを加熱する車載用暖房装置。
【請求項2】
前記蓄熱材は、酸化物である請求項1に記載の車載用暖房装置。
【請求項3】
前記蓄熱材は、細孔径3Å以下の吸着材である請求項1に記載の車載用暖房装置。
【請求項4】
前記エンジンと前記ヒータコアとを熱交換する第1熱交換回路と、
前記蓄熱材と前記ヒータコアとを熱交換する第2熱交換回路とを備えた請求項1に記載の車載用暖房装置。
【請求項5】
熱交換回路制御手段を備え、
エンジン始動時に前記第2熱交換回路、定常走行時に前記第1熱交換回路に切換える請求項4に記載の車載用暖房装置。
【請求項6】
前記蓄熱材を内設した第1の燃焼ガス排出経路と、
前記蓄熱材を短絡して燃焼ガスが流通できる第2の燃焼ガス排出経路と、
前記第1の燃焼ガス排出経路と前記第2の燃焼ガス排出経路への供給量を制御するダンパを備え、
エンジン始動時には、燃焼ガスが前記第1の燃焼ガス排出経路に全量供給されるように前記ダンパを切換え
定常走行時には、燃焼ガスを前記第1の燃焼ガス排出経路と前記第2の燃焼ガス排出経路に配分して供給されるように前記ダンパを切換える制御を行う請求項1から4に記載の車載用暖房装置。
【請求項7】
エンジン停止直後には、燃焼ガスが前記第2の燃焼ガス排出経路に優先的に供給されるように前記ダンパを切換える請求項6に記載の車載用暖房装置。
【請求項8】
前記蓄熱材の下流側にダンパを備え、
エンジン停止時に前記蓄熱材が外気と遮断されるように前記ダンパを切換える請求項1から7に記載の車載用暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−149794(P2010−149794A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332541(P2008−332541)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】