説明

車載用音響制御装置および方法

【課題】 効果音の音像方向を移動させることができる車載用音響制御装置を提供すること。
【解決手段】 効果音生成器101Lは、入力音響信号から、複数のスピーカ108Lそれぞれ向けに、効果音を表す効果音信号を生成する。ここで、効果音信号の出力タイミングおよび/または出力レベルは、スピーカ毎に効果音生成器101Lにより調整される。また、加算器104Lは、効果音生成器101Lで生成されたいずれかの効果音信号を、入力音響信号に加算して、加算信号を生成する。複数のスピーカ108Lは、効果音生成器101Lで生成された効果音信号または加算器104Lで生成された加算信号に従って音響を車室内に放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内において、音像方向を制御したり、反射音および/または残響音に例示される効果音を付加することによって空間性を制御したりする車載用音響制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用音響制御装置は、例えば、図5に示すように、左チャンネルならびに右チャンネルのそれぞれについて、乗算器501L、D/A変換器502L、アンプ503Lおよびスピーカ505Lならびに乗算器501R、D/A変換器502R、アンプ503Rおよびスピーカ505Rを備えている。また、両チャンネル用の乗算器501Lおよび501Rを制御するために、車載用音響制御装置は、制御器506を備えている。
【0003】
図5において、車両の方向を表す車両方向信号が制御器506に入力されると、制御器506は、現在の車両方向に応じて乗算器501Lおよび501Rの係数を設定する。また、乗算器501Lには、左チャンネル用のデジタル音響信号(以下、Lch信号と称する)が入力され、乗算器501Lは、設定された係数に従って、Lch信号のレベルを調整する。D/A変換器502Lは、レベル調整済みのLch信号を、アナログ形式のLch信号に変換する。アンプ503LはアナログLch信号を増幅し、スピーカ505Lは、増幅されたアナログLch信号に従って音響を、車両504の室内に放射する。
【0004】
以上、左チャンネル側の構成の処理について説明したが、右チャンネル側の構成も、上述と同様の処理を行う。
【0005】
上記のような車載用音響制御装置の処理の具体例を挙げると、車両方向信号が左を表す場合、車載用音響制御装置は、Lch信号のレベルをRch信号のそれよりも大きくし、これによって、音像が左方向になる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−219441号公報(第7頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の車載用音響制御装置においては、出力音響全体の音像の方向を変えることはできたが、効果音の音像の方向だけをかえることができなかった。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、効果音の音像方向を移動させることができる車載用音響制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一局面に係る車載用音響制御装置は、車室内に設置された複数のスピーカと、入力音響信号から、複数のスピーカそれぞれ向けに、効果音を表す効果音信号を生成する効果音生成器とを備える。ここで、効果音信号の出力タイミングおよび/または出力レベルは、スピーカ毎に効果音生成器により調整される。また、車載用音響制御装置はさらに、効果音生成器で生成されたいずれかの効果音信号を、入力音響信号に加算して、加算信号を生成する加算器を備える。複数のスピーカは、効果音生成器で生成された効果音信号、または加算器で生成された加算信号に従って音響を車室内に放射する。
【0009】
この構成により、効果音生成器から生成された効果音の音像が移動するようにできる。
【0010】
また、上記車載用音響制御装置はさらに、車両の速度を表す車速信号が入力されると、入力車速信号に応じて、複数のスピーカそれぞれ向けの効果音について、出力タイミングおよび/または出力レベルを設定する制御器を備える
この構成により、車載用音響制御装置は、車速に応じて効果音の音像を移動させることができる。
【0011】
効果音生成器は、入力音響信号が表す音響の反射音を表す反射音信号を、効果音信号として生成する残響音生成器を含む。また、効果音生成器は、入力音響信号を、設定された量だけ遅延させる遅延器、および/または、入力音響信号のレベルを調整する乗算器を含む。
【0012】
この構成により、効果音の音像を移動させたり、車速に応じて効果音の音像移動効果を変化させたりできるようになる。
【0013】
また、効果音生成器は、入力音響信号が表す音響の残響音を表す残響音信号を生成する残響音生成器を含む。また、残響音生成器は、遅延器と、乗算器と、加算器とから構成される。具体的には、残響音生成器は、入力音響信号のレベルを調整して、第1乗算信号を生成する第1乗算器と、入力音響信号を使って加算処理を行い、第1加算信号を生成する第1加算器と、第1加算器で生成された第1加算信号を遅延させて、第1遅延信号を生成する第1遅延器と、第1遅延器で生成された第1遅延信号の振幅を調整して、第2乗算信号を生成し第1加算器に与える第2乗算器とを含む。第1加算器は、入力音響信号と、第2乗算器から与えられた第2乗算信号とを加算して、第1加算信号を生成する。残響音生成器はさらに、第1遅延器で生成された第1遅延信号の振幅を調整して、第3乗算信号を生成する第3乗算器と、第3乗算器で生成された第3乗算信号と、第1乗算器で生成された第1乗算信号とを加算して、第2加算信号を生成する第2加算器と、第2加算器で生成された第2加算信号を遅延させて、入力音響信号が表す音響の残響音を表す残響音信号を生成する残響音生成器とを含む。
【0014】
この構成により、効果音の一つである残響音の音像を移動させたり、車速に応じて残響音の音像移動を変化させることができるようになる。
【0015】
複数のスピーカが、効果音生成器で生成された効果音信号、または加算器で生成された加算信号に従って音響を車室内に放射することによって、スピーカから出力された効果音の音像が移動するよう制御される。
【0016】
具体的には、複数のスピーカのいずれか1つは、車両の搭乗者の前方に設置され、他のいずれか1つは、当該搭乗者の後方に設置される。ここで、効果音の音像は、車両の前後方向に移動するように制御される。
【0017】
さらに具体的には、効果音生成器は、効果音の音像が車両の前後方向に移動するように、各スピーカへの入力信号である効果音信号に対して遅延量を与えるか、各スピーカへの入力信号である効果音信号のレベルを調整する。
【0018】
以上の構成により、効果音の音像を前から後、または後から前に移動させることができるようになる。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の局面は、車室内に設置された複数のスピーカから出力される音響の制御方法であって、方法は、入力音響信号から、複数のスピーカそれぞれ向けに、効果音を表す効果音信号を生成する効果音生成ステップを備える
。ここで、効果音信号の出力タイミングおよび/または出力レベルは、スピーカ毎に調整される。方法はさらに、効果音生成ステップで生成されたいずれかの効果音信号を、入力音響信号に加算して、加算信号を生成する加算ステップと、複数のスピーカから、効果音生成ステップで生成された効果音信号、または加算ステップで生成された加算信号に従って音響を車室内に放射する放射ステップとを備える。
【0020】
この構成により、効果音生成ステップから生成された効果音の音像が移動するようにできる。
【発明の効果】
【0021】
上記の各局面によれば、入力音響信号から効果音が生成される。具体的には、車室に設置される複数のスピーカから出力される効果音の出力タイミングおよび/または出力レベルが調整される。これによって、複数のスピーカから出力される効果音の音像を移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態の車載用音響制御装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車載用音響制御装置の全体構成を示すブロック図である。図1において、車載用音響制御装置は、車両に搭載され、左チャンネル用に、少なくとも2組の遅延器102Lおよび乗算器103L(図示は例示的に3組)を含む効果音生成器101Lと、加算器104Lとを備える。車載用音響制御装置は、さらなる左チャンネル用の構成として、乗算器103Lに相当する数のD/A変換器105L、アンプ106Lおよびスピーカ108Lをさらに備える。また、車載用音響制御装置は、右チャンネル用の構成も備えているが、右チャンネル用の構成については、上述の左チャンネル用と同様であるため、その説明を省略する。なお、右チャンネル用の構成に付されている参照符号には、番号に加え、右チャンネル用を示すために「R」という添え字が付されている。
【0023】
以下、上記のような構成の車載用音響制御装置の動作について説明する。
【0024】
各遅延器102Lには、左チャンネル用のデジタル音響信号(以下、Lch信号と称する)が入力される。各遅延器102Lは、自身の入力Lch信号を所定量だけ遅延させて、遅延信号として出力する。
【0025】
各乗算器103Lには、前段の遅延器102Lからの遅延信号が入力される。各乗算器103Lは、自身の入力遅延信号のレベルを調整する。これによって、効果音の一例である反射音信号が生成される。上記数の乗算器103Lのうち、加算器104Lと接続されていないものは、生成した反射音信号を、後段のD/A変換器105Lに与える。
【0026】
加算器104Lには、上述のLch信号(直接音成分)と、前段の乗算器103Lからの反射音信号(反射音成分)とが入力され、加算器104Lは、入力Lch信号に、反射音信号を加算して、それによって生成される加算信号を、後段のD/A変換器105Lに出力する。
【0027】
各D/A変換器105Lは、それぞれがデジタル信号である入力加算信号または入力反射音信号を、アナログ信号に変換して、アナログ信号である加算信号または反射音信号を、後段のアンプ106Lに出力する。
【0028】
各アンプ106Lは、前段のD/A変換器105Lの出力加算信号または出力反射音信
号を増幅して、後段のスピーカ108Lに出力する。
【0029】
各スピーカ108Lは、車室107内に設置される。例えばスピーカ108Lが3個の場合、第1のスピーカ108Lは、車室107において車両の搭乗者の前方に、第2のスピーカ108Lは搭乗者の後方に、第3のスピーカ108Lは、第1および第2のスピーカ108Lの中間位置に設置される。このように設置される各スピーカ108Lは、前段のアンプ106Lから出力される加算信号または反射音信号に従って音響を車室107内に放射する。
【0030】
なお、右チャンネル用の構成は、上述の左チャンネル用のものと同様に動作する。
【0031】
また、例えば、車室107の前方から後方に反射音の音像を移動させる場合には、車室107の前方に設置されたスピーカ108Lから、後方のスピーカ108Lへの順に、各スピーカ108Lへの入力信号の遅延量が小さくなるように、各遅延器102Lの遅延量が設定される。また、同様の順に、各スピーカ108Lへの入力信号のレベルが小さくなるように、各乗算器103Lの係数が設定される。同様のことは右チャンネル側の構成にも当てはまる。
【0032】
なお、Lch信号(直接音成分)は、音像移動のための処理をせずに、つまり直接音成分は遅延されずかつ増幅されずに、スピーカ108Lへ入力されることになるため、たとえば、ボーカル全体に代表される直接音成分の音像が移動するというような、出力音響に対し不自然な印象を搭乗者は受けることはない。
【0033】
このように、本実施形態に係る車載用音響制御装置によれば、車室107内に設置された複数のスピーカ108Lおよび108Rと、左チャンネル用および右チャンネル用の音響信号から、対応するチャンネル用の効果音の一例としての反射音信号を生成する効果音生成器101Lおよび101Rとが設けられる。具体的には、複数のスピーカ108Lおよび108Rから出力される効果音の出力タイミングを各遅延器102Lおよび102Rにより調整し、さらに、効果音の出力レベルを各乗算器103Lおよび103Rにより調整することで、車載用音響制御装置は、スピーカ108Lおよび108Rから出力される効果音の音像を移動させることができる。
【0034】
なお、以上の実施形態では、効果音の出力タイミングおよび出力レベルが調整されていたが、これに限らず、出力タイミングおよび出力レベルのいずれか一方を調整するよう、車載用音響制御装置は構成されても構わない。
【0035】
また、以上の実施形態では、同じ組の遅延器102L(または102R)および乗算器103L(または102L)は、前段に遅延器102L(または102R)が、後段に乗算器103L(または102L)が設置されていた。しかし、これに限らず、前段に乗算器103L(または102L)が設置され、後段に遅延器102L(または102R)が設置されても構わない。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、本発明の第2の実施形態に係る車載用音響制御装置の全体構成を示すブロック図である。図2において、第2の実施形態の車載用音響制御装置は、第1の実施形態の車載用音響制御装置と比較すると、効果音生成器101Lおよび101Rの代わりに効果音生成器201Lおよび201Rを備える点でまず相違する。
【0036】
効果音生成器201Lは、少なくとも2組の遅延器202Lおよび乗算器203L(図示は例示的に3組)を含む。
【0037】
各遅延器202Lには、第1の実施形態で定義したLch信号が入力され、各遅延器202Lは、自身の入力Lch信号を、後述の制御器204により設定された量だけ遅延させて、遅延信号として出力する。
【0038】
各乗算器203Lには、前段の遅延器202Lからの遅延信号が入力される。各乗算器203Lは、自身の遅延信号のレベルを、後述の制御器204により設定された係数で調整して、自身のレベル調整された遅延信号を、反射音を表す反射音信号として生成する。また、上記数の乗算器203Lのうち、加算器104Lと接続されていないものは、生成した反射音信号を、後段のD/A変換器105Lに出力する。
【0039】
なお、右チャンネル用の構成に付されている参照符号には、番号に加え、右チャンネル用を示すために「R」という添え字が付されている。
【0040】
また、第2の実施形態の車載用音響制御装置は、第1の実施形態の車載用音響制御装置と比較すると、制御器204をさらに備えている点でも相違する。
【0041】
制御器204には、車両の現在の速度を表す車速信号が入力される。制御器204は、入力車速信号に基づいて、各遅延器202Lおよび202Rの遅延量と、各乗算器203Lおよび203Rの係数とを調整する。
【0042】
上記以外に両実施形態の車載用音響制御装置の間に相違点は無い。それゆえ、図2において、図1に示すものに相当する構成には同一の参照符号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0043】
以下、上記のような構成の車載用音響制御装置の動作例について説明する。
【0044】
制御器204は、例えば、車速信号が表す車両の速度が上がるにつれて効果音の音像移動が速くなるように、遅延器202Lおよび202Rの遅延量を小さく設定する。これによって、車載用音響制御装置は、車速が上がると、出力される効果音の音像移動が速くする。また、制御器204は、車速が上がるにつれて、乗算器203Lおよび203Rの係数を大きくする。このような処理を行うことで、車速が上がると、搭乗者には、効果音の音像移動がはっきり知覚されるようになる。
【0045】
このように、本実施形態に係る車載用音響制御装置によれば、車室107内に設置された複数のスピーカ108Lおよび108Rと、左チャンネル用および右チャンネル用の音響信号から、対応するチャンネル用の反射音を生成する効果音生成器101Lおよび101Rと、車速信号に応じて効果音生成器101Lおよび101Rを制御する制御器204とが設けられる。これによって、車速に応じて、出力される効果音(特に、反射音)の音像移動効果を変化させることが可能となる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図3は、本発明の第3の実施形態に係る車載用音響制御装置の全体構成を示すブロック図である。図3において、第3の実施形態に係る車載用音響制御装置は、第2の実施形態の車載用音響制御装置と比較すると、効果音生成器201Lおよび201Rの代わりに効果音生成器301Lおよび301Rを備える点でまず相違する。
【0046】
効果音生成器301Lは、前述の効果音生成器201Lと比較すると、1組の遅延器202Lおよび乗算器203Lの代わりに、1組の残響音生成器304Lおよび乗算器305L(図示は1組)を含む点で相違する。
【0047】
各残響音生成器304Lには、第1の実施形態で定義したLch信号が入力され、各残響音生成器304Lは、自身の入力音響信号を、後述の制御器306により設定されたパラメータに従って、残響音を表す残響音信号を生成し出力する。
【0048】
ここで、図4は、図3に示す残響音生成器304Lの一構成例を示すブロック図である。図4において、残響音生成器304Lは、加算器401および402と、乗算器403−405と、遅延器406および407とを含んでいる。
【0049】
乗算器403には、前述のLch信号が入力される。乗算器403は、入力Lch信号のレベルを調整して、第1乗算信号として加算器402に出力する。
【0050】
また、前述のLch信号は、加算器401にも入力される。加算器401にはさらに、後述する乗算器405からの第2乗算信号が与えられる。加算器401は、入力Lch信号に、第2乗算信号を加算して、第1加算信号として遅延器406に与える。
【0051】
遅延器406は、入力された第1加算信号に対して所定量の遅延を与えて、第1遅延信号を生成して、乗算器404および405に与える。
【0052】
乗算器404および405はそれぞれ、入力された第1遅延信号のレベルを調整する。これによって生成される第3乗算信号を、乗算器404は加算器402に与え、また、上記のようにして生成される第2乗算信号を乗算器405は加算器401に与える。
【0053】
加算器402には、第1乗算信号と第3乗算信号とが入力される。加算器402は、入力された第1乗算信号と第3乗算信号とを加算して、第2加算信号を生成して、遅延器407に与える。
【0054】
遅延器407は、入力された第2加算信号に対して、所定量の遅延を与えて、残響音信号を生成する。このような残響音信号は、加算器401、遅延器406および乗算器405で構成されるフィードバックループにより、前述のLch信号が表す音響について多くの反射音成分を持つことになり、その結果、残響音信号は、その音響の残響音を表すことになる。
【0055】
再度、図3を参照する。各乗算器305Lには、前段の残響音生成器304Lからの残響音信号が入力され、各乗算器305Lは、自身の入力残響音信号を、後述の制御器306により設定された係数で増幅して、そのレベルが調整された残響音信号を生成して、後段のD/A変換器105Lに出力する。
【0056】
なお、右チャンネル用の構成については、左チャンネル用の構成と同様であるため、それぞれの説明を省略する。
【0057】
また、第3の実施形態の車載用音響制御装置は、第2の実施形態の車載用音響制御装置と比較すると、制御器306をさらに備えている点でも相違する。
【0058】
制御器306には、車両の現在の速度を表す車速信号が入力される。制御器306は、入力車速信号に基づいて、各遅延器202Lおよび202Rの遅延量と、各乗算器203Lおよび203Rの増幅度と、各残響音生成器304Lおよび304Rのパラメータと、各乗算器305Lおよび305Rの増幅度とを調整する。
【0059】
各残響音生成器304Lおよび304Rのパラメータ制御についてより具体的に説明す
ると、制御器306は、上述のフィードバックループのフィードバック量を変えるために乗算器405の係数を変えたり、残響音成分全体の遅延量を変えるために遅延器407の遅延量を変えたり、残響音成分全体の大きさを変えるために乗算器304の係数を変えたりする。
【0060】
このように、本実施形態に係る車載用音響制御装置によれば、車室107内に設置された複数のスピーカ108Lおよび108Rと、左チャンネル用および右チャンネル用の音響信号から、対応するチャンネル用の反射音を生成する効果音生成器301Lおよび301Rと、車速信号に応じて効果音生成器301Lおよび301Rを制御する制御器306とが設けられる。これによって、車速に応じて、出力される効果音(特に、残響音)の音像移動効果を変化させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る車載用音響制御装置は、効果音の音像移動効果が変化するようにできるという効果を有し、車室内において、音像方向を制御したり、反射音および/または残響音にような効果音を付加することによって空間性を制御したりする車載用音響制御装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車載用音響制御装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の第2の実施形態に係る車載用音響制御装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の第3の実施形態に係る車載用音響制御装置の構成を示すブロック図
【図4】図3に示す残響音生成器301Lまたは301Rの詳細な構成を示すブロック図
【図5】従来の車載用音響制御装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0063】
101L,101R,201L,201R,301L,301R 効果音生成器
102L,102R,202L,202R 遅延器
103L,103R,203L,203R 乗算器
104L,104R 加算器
105L,105R D/A変換器
106L,106R アンプ
108L,108R スピーカ
204,306 制御器
304L,304R 残響音生成器
305L,305R 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用音響制御装置であって、前記装置は、
車室内に設置された複数のスピーカと、
入力音響信号から、前記複数のスピーカそれぞれ向けに、効果音を表す効果音信号を生成する効果音生成器とを備え、
前記効果音信号の出力タイミングおよび/または出力レベルは、前記スピーカ毎に前記効果音生成器により調整され、
前記装置はさらに、前記効果音生成器で生成されたいずれかの効果音信号を、入力音響信号に加算して、加算信号を生成する加算器を備え、
前記複数のスピーカは、前記効果音生成器で生成された効果音信号、または前記加算器で生成された加算信号に従って音響を前記車室内に放射する、車載用音響制御装置。
【請求項2】
前記車載用音響制御装置はさらに、車両の速度を表す車速信号が入力されると、入力車速信号に応じて、前記複数のスピーカそれぞれ向けの効果音について、出力タイミングおよび/または出力レベルを設定する制御器を備える、請求項1記載の車載用音響制御装置。
【請求項3】
前記効果音生成器は、入力音響信号が表す音響の反射音を表す反射音信号を、効果音信号として生成する、請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項4】
前記効果音生成器は、
入力音響信号を遅延させる遅延器、および/または、
入力音響信号のレベルを調整する乗算器を含む、請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項5】
前記効果音生成器は、入力音響信号が表す音響の残響音を表す残響音信号を、効果音信号として生成する残響音生成器を含む、請求項1に記載の車載用音響制御装置。
【請求項6】
前記残響音生成器は、遅延器と、乗算器と、加算器とから構成される、請求項5に記載の車載用音響制御装置。
【請求項7】
前記残響音生成器は、
入力音響信号のレベルを調整して、第1乗算信号を生成する第1乗算器と、
入力音響信号を使って加算処理を行い、第1加算信号を生成する第1加算器と、
前記第1加算器で生成された第1加算信号を遅延させて、第1遅延信号を生成する第1遅延器と、
前記第1遅延器で生成された第1遅延信号の振幅を調整して、第2乗算信号を生成し前記第1加算器に与える第2乗算器とを含み、
前記第1加算器は、入力音響信号と、前記第2乗算器から与えられた第2乗算信号とを加算して、第1加算信号を生成し、
前記残響音生成器はさらに、
前記第1遅延器で生成された第1遅延信号の振幅を調整して、第3乗算信号を生成する第3乗算器と、
前記第3乗算器で生成された第3乗算信号と、前記第1乗算器で生成された第1乗算信号とを加算して、第2加算信号を生成する第2加算器と、
前記第2加算器で生成された第2加算信号を遅延させて、入力音響信号が表す音響の残響音を表す残響音信号を生成する第2遅延器とを含む、請求項6に記載の車載用音響制御装置。
【請求項8】
前記複数のスピーカが、前記効果音生成器で生成された効果音信号、または前記加算器で生成された加算信号に従って音響を前記車室内に放射することによって、前記スピーカから出力された効果音の音像が移動するよう制御される、請求項1に記載の車両用音響制御装置。
【請求項9】
前記複数のスピーカのいずれか1つは、前記車両の搭乗者の前方に設置され、他のいずれか1つは、当該搭乗者の後方に設置され、
前記効果音の音像は、前記車両の前後方向に移動するように制御される、請求項8に記載の車載用音響制御装置。
【請求項10】
前記効果音生成器は、前記効果音の音像が前記車両の前後方向に移動するように、各前記スピーカへの入力信号である効果音信号に対して遅延量を与える、請求項9に記載の車載用音響制御装置。
【請求項11】
前記効果音生成器は、前記効果音の音像が前記車両の前後方向に移動するように、各前記スピーカへの入力信号である効果音信号のレベルを調整する、請求項9に記載の車載用音響制御装置。
【請求項12】
車室内に設置された複数のスピーカから出力される音響の制御方法であって、前記方法は、
入力音響信号から、前記複数のスピーカそれぞれ向けに、効果音を表す効果音信号を生成する効果音生成ステップを備え、
前記効果音信号の出力タイミングおよび/または出力レベルは、前記スピーカ毎に調整され、
前記方法はさらに、前記効果音生成ステップで生成されたいずれかの効果音信号を、入力音響信号に加算して、加算信号を生成する加算ステップと、
前記複数のスピーカから、前記効果音生成ステップで生成された効果音信号、または前記加算ステップで生成された加算信号に従って音響を前記車室内に放射する放射ステップとを備える、車両用音響制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−43348(P2007−43348A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223655(P2005−223655)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】