説明

車載記憶装置破壊防止システム

【課題】 絶えず変化する交通事情の中で、不特定位置で衝撃を受けても、記憶媒体(ディスク)が破損することを防止可能な車載記憶装置破壊防止システムを提供する。
【解決手段】 本発明のシステムが適用された車両にはハードディスクが備えられている。そして、この車両で実行される衝突監視処理では、車両の周囲を実際に監視し、車両の周囲の監視車両が衝突して、ヘッドがディスクを傷つける可能性があるか判定している(S11)。また、この監視車両が車両に衝突したときの衝撃力が、ヘッドがディスクを傷つける衝撃力以上であるか判定している(S16)。そして、ヘッドがディスクを傷つけると判定された場合、ヘッドを退避させている(S17)。そのため、この処理を実行すると、絶えず変化する交通事情の中で、不特定位置で衝撃を受けても、車載に搭載された記憶媒体(ディスク)が破損することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が衝突することによって、車載記憶装置が破損することを防止する車載記憶装置破壊防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーション装置の普及により、走行ルートの記憶などに用いるため、ハードディスクが車両に搭載されることが多くなっている。
しかし、ハードディスクに内蔵された磁気ヘッドが、磁気ディスクに情報を記憶させる記憶位置にあるときに、車両が衝撃を受けると、磁気ヘッドが磁気ディスクに触れて、ディスクを傷つけてしまう恐れがある。
【0003】
すると、せっかく記憶した走行ルート等の情報を読み込めなくなってしまう可能性があった。
そのため、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、車両が衝撃を受ける一態様として、車両が路面の凹凸部分を通過するときに衝撃を受けるので、この凹凸の位置情報を予め記憶しておき、車両が凹凸部分を通過する位置に到達したときに、記憶位置から外れた退避位置に磁気ヘッドを退避させている。
【特許文献1】特開2006−190390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、交通事情は絶えず変化するので、予め衝撃を受ける場所を記憶しておくには限界があり、その一方で、その絶えず変化する交通事情の中で、車両同士の衝突などにより、不特定位置で衝撃を受けて、ハードディスクを破損してしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明では、絶えず変化する交通事情の中で、不特定位置で衝撃を受けても、記憶媒体(ディスク)が破損することを防止可能な車載記憶装置破壊防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明である請求項1に記載した車載記憶装置破壊防止システムは、上述したハードディスクのように、記憶媒体に対して移動するヘッドを用いて情報を記憶する車載記憶装置が、情報を記憶できなくなることを防止するシステムである。
【0007】
このシステムで用いられる車載記憶装置は、記憶媒体に対して情報を記憶する記憶位置から、この記憶位置から外れた退避位置まで移動可能なヘッドを備えている。
そして、このシステムでは、監視手段が、この車載記憶装置が搭載された車両の周囲を監視し、衝突可能性判定手段が、この監視された車両が衝撃要素から衝撃を受ける可能性を判定している。
【0008】
そして、この判定の結果、車両が衝撃要素から衝撃を受ける可能性が高いと判定された場合、退避制御手段がヘッドを退避位置まで退避させている。
このようにすると、車両の周囲を実際に監視して、その監視の結果、車両の周囲に位置することが確認された衝突要素から、車両が衝撃を受ける可能性が高いか否かを判断してヘッドを退避させているので、実際に変化する交通事情の中で不特定位置で衝撃を受けても、記憶媒体が破損されることを防止できる。
【0009】
また、請求項2に記載したように、監視手段は、車両に対する衝撃要素の距離、速さ、進行方向、加速度のうち少なくとも一つを監視するようにしてもよい。この場合、衝突可能性判定手段は、車両が衝撃要素から衝撃を受ける可能性について、距離、速さ、進行方向、加速度のうち少なくとも一つに基づいて判定することが好ましい。
【0010】
次に、請求項3に記載したように、車両が衝突要素から受ける衝撃力を特定する衝撃力特定手段を備えるようにしてもよい。
この場合、退避制御手段は、衝突可能性判定手段により、衝撃要素が車両に衝突する可能性が高いと判定された場合に加え、衝撃力特定手段で特定された衝撃力が、予め定められた衝撃力より大きい場合に、ヘッドを退避位置まで退避させることが好ましい。
【0011】
このようにすると、記録媒体は、衝撃力が大きい場合にのみヘッドが退避されるので、記録媒体に情報を記録できなくなる状態を、衝撃力の如何によらず退避させる場合に比べて少なくすることができる。
【0012】
尚、衝撃力特定手段は、請求項4に記載したように、監視手段が衝撃要素を監視している監視方向を撮影する撮影手段と、衝撃要素の照合画像及び重量に関する照合情報を記憶する照合情報記憶手段とを備えるようにしてもよい。
【0013】
そして、撮影手段で撮影された衝撃要素の画像と、照合画像とを照らし合わせ、これらの画像が一致する衝撃要素の重量を、撮影手段で撮影された衝撃要素の重量とし、この重量を用いて衝撃力を特定するようにしてもよい。
【0014】
また、衝突要素が車両であって、本発明のシステムが組み込まれた車両と通信(いわゆる車々間通信)ができる場合は、この車々間通信によって、衝突要素である車両の重量に関する情報を得て、衝撃力を特定するようにしてもよい。
【0015】
ところで、退避制御手段がヘッドを退避位置まで退避させるよう指示する退避情報について、車載記憶装置に伝えるためには、車載記憶装置に対して情報を書き込み又は読み出す制御を実行する読書制御装置を介して伝えてもよい。
【0016】
しかし、この読書制御装置を介すると、他の情報処理等のため、退避情報を通信するタイミングが遅れる可能性がある。
そのため、請求項5に記載したように、退避制御手段と車載記憶装置とを読書制御装置を介して接続する第1通信ラインと、退避制御手段と車載記憶装置とを直接接続する第2通信ラインとを備えるようにしてもよい。
【0017】
そして、衝突可能性判定手段は、退避制御手段がヘッドを退避位置まで退避させるよう指示する退避情報について、衝突する可能性が、予め定められた緊急条件を満たす場合、第2通信ラインにより退避情報を車載記憶装置に送信するようにしてもよい。
【0018】
一方、衝突する可能性が、予め定められた緊急条件を満たさない場合、第1通信ラインにより退避情報を車載記憶装置に送信するようにしてもよい。
このようにすれば、緊急の場合は、退避制御手段から車載記憶装置に退避情報をいち早く伝えることができる。
【0019】
ところで、近年は、走行ルートばかりでなく、大量の情報を車載記憶装置に記憶させることが多い。このように大量の情報を車載記憶装置に記憶させる場合、記憶容量の大きな物を用いねばならない。
【0020】
一方、半導体メモリは、本発明の車載記憶装置に比較すると衝撃に強い場合が多いが、上記のような大量の情報を記憶させるには不向きである。
しかし、記憶させたい情報としては時間的に連続する情報があり、このような情報を記憶する場合にヘッドを退避させてしまうと、時間的に情報が途切れてしまう。
【0021】
そこで、請求項6に記載したように、半導体メモリと、退避制御手段によりヘッドを退避位置まで退避させている間、退避がなければ車載記憶装置に記憶させる情報を半導体メモリに記憶させる退避時記憶制御手段とを備えるようにしてもよい。
【0022】
このようにすると、退避制御手段によりヘッドを退避させている場合にでも、半導体メモリに情報を記憶させておくことができるので、時間的に連続する情報を車載用記憶装置に記憶させる場合でも、車載記憶装置と半導体メモリの両方に情報を記憶させることで、情報を途切れることなく記憶することができる。
【0023】
尚、請求項7に記載したように、退避制御手段によるヘッドの退避が終了したら、半導体メモリに記憶した情報を情報記憶手段に移すようにしてもよい。
ところで、退避させたヘッドを戻すタイミングとしては、請求項8に記載したように、衝撃を検出する衝撃検出手段を備え、この衝撃検出手段が衝撃を検出したら、退避制御手段により退避させていたヘッドを退避位置から記憶位置に移動させてもよい。
【0024】
このようにすると、衝撃を受けたことが確かめられてからヘッドが退避位置から記憶位置まで移動するので、衝撃を受ける前にヘッドを退避位置から記憶位置に移動して、記憶媒体を傷つけて情報が記憶出来なくなることを確実に防止することができる。
【0025】
この場合、さらに請求項9に記載したように、監視手段で監視されている衝突要素により、車両が衝撃を受ける可能性を再判定する再判定手段を備えてもよい。
そして、復帰制御手段は、衝撃検出手段が衝撃を検出するとともに、再判定手段により衝突する可能性がないと判定したら、退避制御手段により退避させていたヘッドを退避位置から記憶位置に移動させてもよい。
【0026】
このようにすると、衝撃を受けたことに加えて、さらに、他の衝撃を受けないことが確かめられてからヘッドが退避位置から記憶位置まで移動するので、記憶媒体を傷つけて情報が記憶出来なくなることをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。
この説明で利用する図面は、次の図1〜図4である。
図1は、本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムのブロック図である。
【0028】
図2は、本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムが適用された車両の平面図である。
図3は、本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムが適用された車両の周囲を走行する車両を監視する様子を説明するための模式図である。
1.全体構成
本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムが適用された車両1は、図1に示すように、ナビゲーション装置3と、このシステムを実現するための衝突監視装置5が備えられている。
2.ナビゲーション装置3
このうちナビゲーション装置3は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータ装置からなる中央制御装置30を備えている。
【0029】
また、このナビゲーション装置3は、ハードディスク31と、ICメモリ32と、GPS受信機33と、モニタ34と、操作ボタン35とを備えている。
そして、中央制御装置30と、これら各構成31〜35とはバス3bで通信可能に接続されている。
【0030】
ハードディスク31は、一般的なハードディスクと同様、円板状に形成された磁気ディスクと磁気ヘッドとを備えたものであり、磁気ヘッドが、磁気ディスクのディスク面上である記憶位置から、この磁気ディスクの円周より外側の退避位置まで移動可能に構成されている。
【0031】
このハードディスク31は、中央制御装置30の指示に従って、磁気ヘッドを所定の記憶位置に移動させることで、磁気ディスクのディスク面上に情報を記憶し、あるいは、磁気ディスクに記憶された情報を読み出すことができるよう構成されている。
【0032】
ICメモリ32は、中央制御装置30の指示に従って情報を記憶・消去することができるフラッシュメモリである。
GPS受信機33は、GPS衛星から位置測定用の信号を受信して、車両1の現在位置を算出し、この算出された現在位置情報を中央制御装置30に出力する装置である。
【0033】
モニタ34は、中央制御装置30で実行される各種処理に基づく画像を表示する装置である。
操作ボタン35は、ナビゲーション装置3に対する操作者の操作を受け付け、受け付けた操作情報を中央制御装置30に出力する装置である。
3.衝突監視装置5
衝突監視装置5は、CPU、ROM、RAM等を備えるコンピュータ装置からなる中央制御装置50を備えている。
【0034】
また、この衝突監視装置5は、前後左右のミリ波レーダ装置51,53,55,57と、前後左右のカメラ52,54,56,58と、加速度センサ59と、メモリ60とを備えている。
【0035】
そして、中央制御装置50は、これら各要素51〜60とはバス5bで通信可能に接続されている。
また、この衝突監視装置5には、ブレーキ制御装置70と、シートベルト制御装置71と、車々間通信装置72とが接続され、これら各装置70〜72は、バス5bを介して中央制御装置50と通信可能に接続されている。
【0036】
前後左右のミリ波レーダ装置51,53,55,57は、車両1の前方、後方、左方、右方にそれぞれミリ波を発信して、車両1の周囲に位置する車両(以下、「監視車両」という)で反射したミリ波を受信する装置である。
【0037】
このミリ波レーダ装置51,53,55,57では、発信したミリ波と受信したミリ波とを比較して、車両1と監視車両との間の距離や、車両に対する監視車両の位置が求められ、これら距離や位置に関する情報が、中央制御装置50に出力される。
【0038】
また、これらミリ波レーダ装置51,53,55,57では、位置に関する情報を所定時間記憶する機能を有しており、この情報を時系列的に追うことにより、監視車両が車両1に向かう速さ、進行方向、加速度などが算出される。そして、これら速さ等に関する情報も、中央制御装置50に出力される。
【0039】
前後左右のカメラ52,54,56,58は、車両1の前方、後方、左方、右方を撮影する装置である。
前後左右のカメラ52,54,56,58では、中央制御装置50の指示に従って車両1の前方、後方、左方、右方が撮影され、その撮影された画像に関する情報が中央制御装置50に出力される。
【0040】
これらミリ波レーダ装置51,53,55,57、及び、カメラ52,54,56,58は、図2に示すように、車両1の前後左右の各側面に対して各側面の幅方向の中程に取り付けられている。このようにミリ波レーダ装置51,53,55,57、及び、カメラ52,54,56,58が取り付けられるので、これらを用いることで、車両1は、車両1の周囲全体をくまなく監視することができる
そして中央制御装置50は、このミリ波レーダ装置51,53,55,57の監視により、図3に示すように、例えば、車両1から距離a1の位置に監視車両aが存在し、速度a2で遠ざかりつつあることを把握することができる。そして、中央制御装置50は、その監視車両aの位置を撮影可能な方向を撮影可能ないずれかのカメラ52,54,56,58を作動させることで、監視車両aを撮影した画像を取得できる。
【0041】
同様に、中央制御装置50は、車両1から距離b1の位置に監視車両bが存在し、速度b2で近づきつつあるということを把握することができ、その監視車両bを撮影した画像を取得できる。
【0042】
また、中央制御装置50は、車両1から距離c1の位置に監視車両cが存在し、速度c2で車両1に近づきつつあるということを把握することができ、その監視車両cを撮影した画像を取得できる。
【0043】
さらに、中央制御装置50は、車両1から距離d1の位置に監視車両dが存在し、停止しているということを把握することができ、その監視車両dを撮影した画像を取得できる。
【0044】
次に、加速度センサ59は、図1に示すように、車両1が、監視車両が衝突によって受ける加速度を検出するセンサである。加速度センサ59は、衝突などによる加速度を検出すると、監視車両が車両1に衝突したことを示す情報を中央制御装置50に出力する。
【0045】
メモリ60は、カメラ52,54,56,58で撮影した監視車両の車種を特定するため、車種ごとに予め車両を撮影した照合画像及び重量に関する情報が記憶されている。
ブレーキ制御装置70は、車両1に備えられた装置であり、中央制御装置50からの指示に従って、車両1にブレーキをかける装置である。
【0046】
シートベルト制御装置71は、車両1に備えられた装置であり、中央制御装置50からの指示に従って、シートベルトの締め付け強度を可変する装置である。
車々間通信装置72は、車両1と、この車両1の周囲の監視車両とが通信するため装置である。
【0047】
中央制御装置50は、この車々間通信装置72を制御することにより、他の車両に関する情報を受信することができる。
尚、本実施形態では、バス3bとバス5bとをつなぐ第1通信ラインαにより中央制御装置30と中央制御装置50とが通信可能に接続されている。
【0048】
また、バス5bとハードディスク31とをつなぐ第2通信ラインβにより、中央制御装置50とハードディスク31とが通信可能に接続されている。
4.衝突監視処理
次に、衝突監視装置5の中央制御装置50で実行される衝突監視処理について説明する。
【0049】
尚、これから説明する衝突監視処理及び下記のハードディスク処理では、特に説明がある場合を除き、ステップ番号の小さい物から大きいものを順に処理するものとする。
ここで図4は、衝突監視処理のフローチャートである。
【0050】
この衝突監視処理は、車両1の図示しないエンジンがスタートすると開始され、エンジンが停止すると終了する。
この衝突監視処理が開始されると、まず、ミリ波レーダ装置51,53,55,57が作動され、車両の周囲を監視するセンシング処理が開始される(S10)。すると、中央制御装置50には、各ミリ波レーダ装置51,53,55,57から、車両の周囲の監視車両について、車両に対する監視車両の距離や、位置、速さ、進行方向、加速度に関する情報の入力が開始される。
【0051】
S11では、各ミリ波レーダ装置51,53,55,57から入力される、車両に対する監視車両の距離や、位置、速さ、進行方向、加速度に関する情報から、監視車両が車両1に衝突する可能性が判定される。
【0052】
この衝突の可能性の判定方法としては、例えば次のような方法で行われる。
(1) 車両1と監視車両との間の距離を監視し、その距離が予め定められた距離内(例えば、10〜0m)となったら、衝突する可能性が高いと判定する。
【0053】
(2) 車両1と監視車両との間の距離を監視し、遠距離(100〜50m)のときは、距離以外の監視は行わず、中距離(50〜10m)になったら、車両1に対する監視車両の位置、速さ、進行方向、加速度などの監視を開始し、近距離(10〜0m)になったら、これら位置、速さ、進行方向、加速度に基づいて衝突する可能性が高いか判定してもよい。
【0054】
具体的には、例えば、車両1と監視車両との間の距離が、監視車両がブレーキをかけても車両1に衝突してしまう速さである場合、衝突する可能性が高いと判定してもよい。
また例えば、車両1と監視車両との間の距離が近くても、車両1に対する監視車両の進行方向が平行であったり、遠ざかる方向である場合は可能性が低いと判定してもよい。
【0055】
また例えば、車両1と監視車両との間の距離が近くても、車両1に衝突しない加速度によって監視車両でブレーキがかけられた場合は、車両1に監視車両が衝突する可能性が低いと判定してもよい。
【0056】
尚、判定方法は、これらに限定されるものではない。
このS11で、監視車両が車両1に衝突する可能性が低いと判定された場合は(S11:NO)、繰り返しS11の処理を実行することによって、車両1の周囲を監視する処理が実行される。
【0057】
一方、S11で監視車両が車両1に衝突する可能性が高いと判定された場合は(S11:NO)、S12の処理が実行される。
S12では、ハードディスク31の磁気ヘッドを緊急に退避させる必要があるか否かが判定される。
【0058】
具体的には、車両1と監視車両との距離、及び、監視車両の速さの関係から、監視車両が車両1に所定以下の短時間で衝突する可能性があるかを判定してもよい。
このS12において緊急であると判定されると(S12:YES)S13の処理が実行され、緊急ではないと判定されると(S12:NO)S14の処理が実行される。
【0059】
S13では、ハードディスク31と第2通信ラインβを介して直接通信し、磁気ヘッドを退避させることを命令する退避情報を送信する処理が実行される。
通常は、各中央制御装置30,50からの2重の指令を受けることを防止するために、中央制御装置30からだけの制御をハードディスク31では受けるように制約をしている。
【0060】
しかし、S13での処理のように、緊急時には、第2通信ラインβを介して直接磁気ヘッドを退避させることで、上述した制約を受けずに、ハードディスク31に情報を記憶できなくなることをすばやく防止することができる。
【0061】
またこのS13を実行するとき、必要に応じて、ブレーキ制御装置70や、シートベルト制御装置71に、衝突する可能性を知らせる情報を送信し、ブレーキをかけたり、シートベルトを強く締める制御を実行させてもよい。
【0062】
このS13の処理が終了すると、次に後述するS18の処理が実行される。
S14では、車両1に衝突する可能性があるとS11で判定された監視車両(図3では監視車両b)が位置する方向を撮影するいずれかのカメラ52,54,56,58を作動させ、その方向を撮影する処理が実行される。
【0063】
S15では、S14で撮影された監視車両が、車両1に衝突するときの衝撃力を算出する処理が実行される。
具体的には、S14で撮影された監視車両の画像と、メモリ60に記憶された車両の照合画像とを照会して監視車両の車種を特定し、その特定された車種の車両の重量を読み出す処理がまず実行される。
【0064】
そして、読み出された重量に関する情報と、ミリ波レーダ装置51,53,55,57から入力された監視車両の加速度に関する情報とから、車両1に与える衝撃力を算出する処理を実行する。
【0065】
S16では、このS15で求められた衝撃力が、磁気ヘッドを退避させるのに必要な衝撃力か否かを判定する。
この判定は、S15で算出された衝撃力が、磁気ヘッドを退避させる必要があるものとして予め定められた衝撃力より大きいか否かで判定する。
【0066】
このS16で、退避が必要であると判定されたら(S16:YES)S17の処理が実行され、退避が必要でないと判定されたら(S16:NO)再びS11以下の処理が実行される。
【0067】
S17では、ナビゲーション装置3の中央制御装置30に、第1通信ラインαを介して磁気ヘッドを退避させることを命令する退避情報を送信する処理が実行される。中央制御装置30は、この退避情報を受信すると、ハードディスク31に退避情報を再送信し、ハードディスク31は、この退避情報を受信して磁気ヘッドを退避位置に退避させる。
【0068】
またこのS17を実行するとき、必要に応じて、ブレーキ制御装置70や、シートベルト制御装置71に、衝突する可能性を知らせる情報を送信し、ブレーキをかけたり、シートベルトを強く締める制御を実行させてもよい。
【0069】
S18では、ICメモリ32に情報の書き込み先を変更するよう指示する情報をナビゲーション装置3の中央制御装置30に送信する処理が実行される。ナビゲーション装置3の中央制御装置30は、この書き込み先の変更を指示する情報を受信すると、ハードディスク31に情報を記憶していた処理を中止し、ICメモリ32に情報を記憶する処理を開始する。
【0070】
S19では、監視車両が車両1に衝突し、その衝突に伴う加速度を加速度センサ59が検出したか否かを判定する。
このS19の処理で、加速度を検出したと判定されたらS21の処理が実行され、加速度を検出していないと判定されたらS20の処理が実行される。
【0071】
S20では、S11と同様、監視車両が車両1に衝突するか否かを判定する処理を行って、衝突が回避されたか否かが判定される。
この判定(S20)で、衝突が回避されたと判定されたら(S20:YES)S11の処理が実行され、衝突が回避されていないと判定されたら(S20:NO)再びS19の処理が実行される。
【0072】
S21では、処理としてはS11と同様であるが、S11での判定対象となった監視車両以外の監視車両等が車両1に衝突して衝撃を与える可能性がないか否かが判定される。
S11での判定対象となった監視車両か否かは、例えば、監視車両の位置に関する情報の違いから判定する。
【0073】
この判定で、衝突する可能性があると判定された場合は(S21:YES)、S19の処理で衝突が検出されたか判定する処理が実行され、衝突する可能性がないと判定された場合は(S21:NO)、S22の処理が実行される。
【0074】
S22では、ナビゲーション装置3の中央制御装置30に、ハードディスク31の磁気ヘッドを退避位置から記憶位置に戻すことを指示するとともに、情報の記憶先をICメモリ32からハードディスク31に変更することを指示する復帰情報を送信する処理が実行される。
【0075】
中央制御装置30では、この復帰情報を受信すると、ハードディスク31に復帰情報を転送して、磁気ヘッドを退避位置から記憶位置にもどさせる処理が実行される。
また、中央制御装置30では、情報の記憶先をICメモリ32からハードディスクに変更するとともに、S13あるいはS17で磁気ヘッドを退避させてからS22までの処理の間にICメモリ32に記憶された情報をハードディスク31に転送する処理が実行される。
【0076】
またこのS22を実行するとき、S13やS17で、ブレーキ制御装置70や、シートベルト制御装置71に、ブレーキをかけたり、シートベルトを強く締める制御を実行させていた場合、それらの制御を解除するようにしてもよい。
【0077】
そして、このS22の処理が終了すると、再びS11の処理が実行される。
5.ハードディスク処理
次に、ナビゲーション装置3の中央制御装置30で実行されるハードディスク処理について説明する。
【0078】
ここで、図5は、ハードディスク処理のフローチャートである。
このハードディスク処理は、衝突監視処理と同様、車両1のエンジンが作動している間実行される。
【0079】
このハードディスク処理では、まず、通常記憶処理が実行される(S30)。
この通常記憶処理とは、ナビゲーション装置3において、走行済みのルートをハードディスク31に時系列的に記憶していくなど、衝突の可能性がない通常時に、ハードディスク31に情報を記憶する処理である。
【0080】
S31では、衝突監視装置5の中央制御装置50から退避情報を受信したか否かが判定される。
この判定(S31)で、退避情報を受信していないと判定された場合には(S31:NO)引き続きS30の処理が継続され、受信したと判定された場合には(S31:YES)S32の処理を実行する。
【0081】
S32では、ハードディスク31に退避情報を転送する処理が実行され、そして、S33では、中央制御装置30で行われている各種処理に伴う情報の記憶先をハードディスク31からICメモリ32に変更する処理が実行される。
【0082】
次に、S34では、復帰情報を中央制御装置50から受信したか否かを判定する処理が実行される。
この判定(S34)で、復帰情報を受信していないと判定された場合は(S34:NO)引き続きS33の処理を継続して情報をICメモリ32に記憶し、受信したと判定された場合は(S34:YES)S35の処理が実行される。
【0083】
S35では、ハードディスク31に復帰情報が送信され、磁気ヘッドが退避位置から記憶位置に戻す処理が実行される。
続く、S36では、情報の記憶先をICメモリ32からハードディスク31に変更する処理とともに、S32〜S35が実行されている間にICメモリ32に記憶された情報をハードディスク31に転送する処理が実行される。
【0084】
そして、再びS30の処理を実行する。
6.実施形態に係る車載記憶装置破壊防止システムの特徴
このシステムでは、ミリ波レーダ装置51,53,55,57を用いて、ハードディスク31が搭載された車両1の周囲を監視し(S11)、監視車両が車両1に衝突する可能性について判定している。
【0085】
そして、この判定(S11)の結果、監視車両が車両1に衝突する可能性が高いと判定された場合(S11:YES)、ハードディスク31の磁気ヘッドを記憶位置から退避位置まで退避させている(S13,S17)。
【0086】
このようにすると、車両の周囲を実際に監視した結果に基づいて、退避が必要な場合に磁気ヘッドを退避させているので、実際に変化する交通事情の中で不特定位置で衝撃を受けても、ハードディスク31を破損することを防止できる。
【0087】
また、本実施形態ではS11において、車両1と監視車両との間の距離だけでなく、監視車両の車両1に対する速さや、進行方向、加速度によって、車両1が監視車両から衝撃を受ける可能性を、多角的に判断しているので、衝突可能性をより精度よく判定することができる。
【0088】
また、本実施形態では、S16における処理で、監視車両の衝撃力が予め定められた衝撃力より大きい場合に、磁気ヘッドを退避位置まで退避させているので、ハードディスク31に情報を記録できなくなる状態の発生を、衝撃力の大小に関わらず退避させる場合に比べて少なくすることができる。
【0089】
また、本実施形態では、緊急の場合は(S12:YES)、ナビゲーション装置3を介さずにハードディスク31の磁気ヘッドを退避させているので、すばやく磁気ヘッドを退避させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、ハードディスク31の磁気ヘッドを退避させている間、ICメモリ32に必要な情報を記憶しているので、情報を途切れることなく記憶することができる。
【0091】
また、本実施形態では、衝突が確認されたり、他の衝突がないか否かを確認して、磁気ヘッドを記憶位置に戻しているので(S19、S21)、ハードディスク31を傷つけて情報が記憶出来なくなることをより確実に防止することができる。
7.実施形態と発明特定事項との対応関係
本実施形態のハードディスク31が、本発明の車載記憶装置に相当する。
【0092】
本実施形態のハードディスク31を構成する磁気ディスクと磁気ヘッドが、本発明の記憶媒体とヘッドに相当する。
本実施形態の監視車両が、本発明の衝撃要素に相当する。
【0093】
本実施形態のミリ波レーダ装置51,53,55,57が、本発明の監視手段に相当する。
本実施形態のS11の処理が、本発明の衝突可能性判定手段に相当する。
【0094】
本実施形態のS13、S17の処理が、本発明の退避制御手段に相当する。
本実施形態のS15の処理が、本発明の衝撃力特定手段に相当する。
本実施形態のカメラ52,54,56,58は、本発明の撮影手段に相当する。
【0095】
本実施形態のメモリ60は、本発明の照合情報記憶手段に相当する。
本実施形態の中央制御装置30は、本発明の読書制御手段に相当する。
本実施形態のICメモリ32は、本発明の半導体メモリに相当する。
【0096】
本実施形態のS33の処理は、本発明の退避時記憶制御手段に相当する。
本実施形態のS36の処理が、本発明の情報移動手段に相当する。
本実施形態の加速度センサ59が、本発明の衝撃検出手段に相当する。
【0097】
本実施形態のS19、S22、S35の処理が、本発明の復帰制御手段に相当する。
本実施形態のS21の処理が、本発明の再判定手段に相当する。
(その他の実施形態)
本実施形態では、車両の重量情報について、S15において、カメラ51等で撮影した画像と、メモリ60に記憶された照合画像とを照合して、車種が一致する重量情報をメモリ60から得ていたが、この重量情報を始め、監視車両の位置や早さ、進行方向、加速度などの情報も、衝突監視装置5が車々間通信装置72を用いて監視車両との間で通信し、監視車両から得るようにしてもよい。
【0098】
そして、S11での衝突の可能性の判定、S15での衝撃力の算出、S21での再衝突の可能性の判定などに、これらの情報を用いてもよい。
本実施形態では、監視車両が車両1と衝突することについて記載しているが、車両の車種と重量のほかに、カメラ52,54,56,58で人を撮影したときに、撮影されたものの車種を判別する処理に代えて、撮影されたものが人か否かを判別し、車種を特定する処理に代えて人であると判定した場合に、その特定された車種の重量情報に代えて、人の平均体重に関する情報をメモリから得て、車両1が人と衝突したときの衝撃力の大きさを判定するようにしてもよい。
【0099】
本実施形態では、車両1の周囲を監視する装置として、ミリ波レーダ装置51,53,55,57を用いているが、これに変えて、あるいは、これに加えて、超音波センサや、レーザレーダ装置を用いても良いことはもちろんである。
【0100】
本実施形態では、S21において、他に衝撃を受けるか否かの判定を、S11と同様に、ミリ波レーダ装置51,53,55,57を用いて監視しているが、衝突を検出した後(S19)、一定時間経過したら、他に衝突を受けない(S21:YES)と判定してもよい。
【0101】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムのブロック図である。
【図2】本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムが適用された車両の平面図である。
【図3】本実施形態の車載記憶装置破壊防止システムが適用された車両の周囲を走行する車両を監視する様子を説明するための模式図である。
【図4】衝突監視処理のフローチャートである。
【図5】ハードディスク処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1…車両、3…ナビゲーション装置、5…衝突監視装置、30…中央制御装置、31…ハードディスク、32…ICメモリ、33…GPS受信機、34…モニタ、35…操作ボタン、50…中央制御装置、51,53,55,57…ミリ波レーダ装置、52,54,56,58…カメラ、59…加速度センサ、60…メモリ、70…ブレーキ制御装置、71…シートベルト制御装置、72…車々間通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体に対して情報を記憶する記憶位置から、この記憶位置から外れた退避位置まで移動可能なヘッドを備える車載記憶装置と、
前記車載記憶装置が搭載された車両の周囲を監視する監視手段と、
前記監視手段で監視されている衝突要素により、前記車両が衝撃を受ける可能性を判定する衝突可能性判定手段と、
前記衝突可能性判定手段により、前記車両が前記衝撃要素から衝撃を受ける可能性が高いと判定された場合、前記ヘッドを前記退避位置まで退避させる退避制御手段と
を備えることを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記監視手段は、
前記車両に対する前記衝撃要素の距離、速さ、進行方向、加速度のうち少なくとも一つを監視し、
前記衝突可能性判定手段は、
前記車両が前記衝撃要素から衝撃を受ける可能性について、前記監視手段で検出された前記距離、前記速さ、前記進行方向、前記加速度のうち少なくとも一つに基づいて判定する
ことを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記車両が前記衝突要素から受ける衝撃力を特定する衝撃力特定手段を備え、
前記退避制御手段は、
前記衝突可能性判定手段により、前記衝撃要素が前記車両に衝突する可能性が高いと判定された場合に加え、
前記衝撃力特定手段で特定された前記衝撃力が、予め定められた衝撃力より大きい場合に、前記ヘッドを前記退避位置まで退避させる
ことを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車載用記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記衝撃力特定手段は、
前記監視手段が前記衝撃要素を監視している監視方向を撮影する撮影手段と、
前記衝撃要素の照合画像及び重量に関する照合情報を記憶する照合情報記憶手段と、
を備え、
前記撮影手段で撮影された前記衝撃要素の画像と、前記照合画像とを照らし合わせ、これらの画像が一致する前記衝撃要素の重量を、前記撮影手段で撮影された前記衝撃要素の重量とし、この重量を用いて前記衝撃力を特定する
ことを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記車載記憶装置に対して情報を書き込み又は読み出す制御を実行する読書制御手段と、
前記退避制御手段と前記車載記憶装置とを前記読書制御手段を介して接続する第1通信ラインと、
前記退避制御手段と前記車載記憶装置とを直接接続する第2通信ラインと
を備え、
前記衝突可能性判定手段は、
前記退避制御手段が前記ヘッドを前記退避位置まで退避させるよう指示する退避情報について、
前記衝突する可能性が、予め定められた緊急条件を満たす場合、前記第2通信ラインにより前記退避情報を前記車載記憶装置に送信し、
前記衝突する可能性が、予め定められた緊急条件を満たさない場合、前記第1通信ラインにより前記退避情報を前記車載記憶装置に送信する
ことを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
半導体メモリと、
前記退避制御手段により前記ヘッドを前記退避位置まで退避させている間、前記退避がなければ前記車載記憶装置に記憶させる情報を前記半導体メモリに記憶させる退避時記憶制御手段と
を備えることを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記退避制御手段による前記ヘッドの退避が終了したら、前記半導体メモリに記憶した情報を前記情報記憶手段に移す情報移動手段
を備えることを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
衝撃を検出する衝撃検出手段と、
前記衝撃検出手段が衝撃を検出したら、前記退避制御手段により退避させていた前記ヘッドを前記退避位置から前記記憶位置に移動させる復帰制御手段と、
を備えることを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。
【請求項9】
請求項8に記載の車載記憶装置破壊防止システムにおいて、
前記監視手段で監視されている衝突要素により、前記車両が衝撃を受ける可能性を再判定する再判定手段を備え、
前記復帰制御手段は、
前記衝撃検出手段が衝撃を検出するとともに、前記再判定手段により衝突する可能性がないと判定したら、前記退避制御手段により退避させていた前記ヘッドを前記退避位置から記憶位置に移動させる
ことを特徴とする車載記憶装置破壊防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−181686(P2009−181686A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22818(P2008−22818)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】