説明

車輌用ドア形状検査装置

【課題】低コストでしかも作業効率に優れた車輌用ドア形状検査装置を提供する。
【解決手段】車輌用ドア形状検査装置1は、検査対象である被検査ドアDの下部を、当該被検査ドアDの前後方向に沿って移動可能に支持する第1の支持機構11、及び、被検査ドアDの内側主面を、当該被検査ドアDの前後方向に沿って移動可能に支持する第2の支持機構12、を有するゲージ10と、ゲージ10により起立状態で支持された被検査ドアDの形状を検査する基準位置計測センサ20、形状計測センサ30及びコンピュータ40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌にドアを実際に取り付けた状態を再現して車輌用ドアの形状を検査するための車輌用ドア形状検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のドアでは、車体に組み付けた際に重力の作用により大きな影響を受けるため、組立・検査工程等において、ドアを車体に組み付けた実車状態を想定して作業を行う必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来からドア形状の検査は、車体のドア周囲の理想的な構造(ヒンジ部やフェンダ、ボディ等)を模した検査用ゲージに、被検査ドアを実際に取り付けて実車状態を再現し、当該被検査ドアと検査用ゲージとの間に形成された段差や隙間を、ノギス等を用いて検査者が計測することにより行われている。
【0004】
しかしながら、上記のような検査用ゲージは、左右前後各種のドアに対してそれぞれ専用のゲージを製作する必要があると共に、車輌の品種毎に専用のゲージを製作する必要があるため、多額のコストを必要とする。また、被検査ドアの検査用ゲージへの取付は、通常の車体への取付作業と同様にボルト締結等により行われているので莫大な工数を必要とする。
【特許文献1】特開平6−64573号公報(段落番号0007)
【発明の開示】
【0005】
本発明は、低コストでしかも作業効率に優れた車輌用ドア形状検査装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、車輌用ドアの形状を検査するための車輌用ドア形状検査装置であって、検査対象である被検査ドアの下部を、当該被検査ドアの前後方向に沿って移動可能に支持する第1の支持機構、及び、前記被検査ドアの少なくとも一方の主面を、当該被検査ドアの前後方向に沿って移動可能に支持する第2の支持機構、を有するゲージと、前記ゲージにより起立状態で支持された前記被検査ドアの形状を検査する検査手段と、を備えた車輌用ドア形状検査装置が提供される。
【0006】
本発明では、ゲージの第1の支持機構により被検査ドアの下部をその前後方向に沿って移動可能に支持すると共に、当該ゲージの第2の支持機構により被検査ドアの少なくとも一方の主面をその前後方向に沿って移動可能に支持し、その起立状態の被検査ドアの形状を検査手段により検査する。なお、ここでいう被検査ドアの前後方向とは、当該ドアが取り付けられる車輌の走行方向に対応する方向である。
【0007】
これにより、ドア形状の検査に当たり、検査者が被検査ドアをゲージ内でスライドさせるだけで容易に被検査ドアをセッティングすることが出来るので、検査工程の作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0008】
また、ドア形状の検査に当たり、ゲージの第1及び第2の支持機構により、被検査ドアの下部と少なくとも一方の主面のみを支持するだけなので、車輌の前後のドアや品種が異なる車輌のドアに対して同一の装置を用いることが出来、低コスト化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置の全体構成を示す図、図2は図1に示すゲージの背面図、図3は図1に示すゲージに投入された被試験ドアの姿勢を示す図、図4(A)〜図4(C)は図1に示すゲージの上部平面図であり、図4(A)は被検査ドアがスライドしている状態を示す図、図4(B)は被検査ドアがストッパにより規制された状態を示す図、図4(C)は被検査ドアの移動進路からストッパを退避させた状態を示す図である。
【0011】
本発明の第1実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置1は、自動車にドアDを取り付けた状態を再現して当該ドアDの形状を検査するための装置である。
【0012】
この車輌用ドア形状検査装置1は、図1に示すように、形状検査に際して投入された被検査ドアDを起立状態で支持するゲージ10と、当該被検査ドアDの所定基準位置を計測する基準位置計測センサ20と、当該被検査ドアDの所定測定点の形状を計測する形状計測センサ30と、基準位置計測センサ20及び形状計測センサ30等により生成された各種データに基づいて、ゲージ10により起立状態で支持された被検査ドアDの形状を検査するコンピュータ40と、を備えている。
【0013】
本実施形態におけるゲージ10は、被検査ドアDの下部を、当該ドアDの前後方向に沿って移動可能に支持する第1の支持機構11と、被検査ドアDの内側主面を、当該ドアDの前後方向に沿って移動可能に支持する第2の支持機構12と、第1及び第2の支持機構11、12により支持された被検査ドアDの移動を規制するストッパ部材13と、を有している。
【0014】
このゲージ10を構成する第1の支持機構11は、図1〜図3に示すように、被検査ドアDの移動進路Lに沿って一列に配置された4組の回転ローラ11aが、ゲージ10の基盤15に取り付けられた支持部材11bに回転自在に保持されて構成されている。そして、検査に際して、検査者が投入口側(図1の右側)から被検査ドアDをゲージ10内に押し込むと、各回転ローラ11aがそれぞれ回転し、被検査ドアDを容易にスライドさせることが可能となっている。
【0015】
この第1の支持機構11の回転ローラ11aは、図1に示すように、移動進路Lに沿って角度αで傾斜するように配置されている。このような傾斜を設けることにより、被検査ドアDの自重により回転ローラ11aが回転するので、被検査ドアDをストッパ13に自動的に且つ完全に突き当てることが出来、高精度な検査を遂行することが出来る。
【0016】
ゲージ10を構成する第2の支持機構12は、図1〜図4(C)に示すように、被検査ドアDの内側に移動進路Lに沿って一列に配置された4個の回転ローラ12aと、当該ドアDの外側に移動進路Lに沿って一列に配置された4個のゴム部材12fと、を有している。なお、本実施形態において、被検査ドアDの内側や内側主面とは、当該ドアDが自動車に取り付けられた際の車室内側や車室内側主面を意味し、これに対し、被検査ドアDの外側や外側主面とは、当該ドアDが自動車に取り付けられた際の車外側や車外側主面を意味する。
【0017】
本実施形態のゲージ10に投入された被検査ドアDは、図3に示すように、回転ローラ12a側(内側)に向かって傾斜しており、被検査ドアDの内側に配列された回転ローラ12aが、被検査ドアDの内側主面に接触して当該ドアDを支持しているのに対し、被検査ドアDの外側に配置されたゴム部材12fが、被検査ドアDの外側主面に接触することなく所定距離離れて位置している。特に、このように、内側主面のみで被検査ドアDを支持することにより、外観上高品質が要求される外側主面の品質を確保することが可能となっている。
【0018】
第2の支持機構12の回転ローラ12aは、図4(A)〜図4(C)に示すように、回動部材12bの一方の端部に回転自在に支持されている。回動部材12bは、ゲージ10の支柱16間に張り渡された内側支持部材12eに支点12cを中心として回動自在に支持されている。この回動部材の12bの他方の端部には、コイルスプリング12dが取り付けられており、このコイルスプリング12dの弾性力により、回転ローラ12aは、被検査ドアDの内側主面に対して適切な押圧力を付与しながら当該ドアDを支持することが可能となっている。なお、コイルスプリング12dの他端部は、特に図示しないが、回動部材12bと共に回動しないように、支柱16間に張り渡されている梁部材等に取り付けられている。
【0019】
第2の支持機構12のゴム部材12fは、略半円形形状を有しており、ゲージ10の支柱16間に張り渡された外側支持部材12gに直接固定されている。ゲージ10には、図3に示すように、被検査ドアDを回転ローラ12a側に傾斜した状態で投入されるが、万一、被検査ドアDが外側に倒れた場合であっても、このゴム部材12aで支えることにより、転倒によるドアDの外側主面の損傷を抑えることが可能となっている。
【0020】
ゲージ10のストッパ部材13は、第1及び第2の移動機構11、12に支持された被検査ドアDの移動進路L上に設けられており、被検査ドアDの先端部に当接して被検査ドアDの前方向へのスライド移動を規制し、検査に際して当該ドアDを位置決めすることが可能となっている。ストッパ部材13に当接する被検査ドアDの先端部としては、例えば、ドアヒンジ取付部等を挙げることが出来る。このドアヒンジ取付部は、一般的に、当該ドアDの中でも比較的剛性の高い部分であるので、ストッパ部材13に当接させても変形するおそれはない。
【0021】
このように、本実施形態では、検査に当たり、ストッパ部材13に当接させるだけで被検査ドアDが位置決めされるので、通常の車体への取付作業と同等の手間を要するボルト締結等の作業が不要となり、非常に短時間でドア形状の検査を遂行することが可能となる。極めて短時間の検査が可能である場合には、ドア形状の全数検査が可能となる。
【0022】
ストッパ部材13は、図4(C)に示すように、ゲージ10の第1及び第2の支持機構11、12に対して回動可能に設けられており、被検査ドアDの移動進路Lから退避することが可能となっている。これにより、ドア形状の検査の流れを、投入口から抜出口への移動進路Lに沿った一方向に限定することが出来るので、車輌用ドア形状検査装置1を自動車生産ライン内に設置することも可能となる。
【0023】
図5は本発明の第2実施形態におけるゲージの上部平面図である。図5に示すように、被検査ドアDの内側のみならず外側にも回転ローラ12hを配置しても良い。これにより、被検査ドアDをより安定して支持することが出来る。
【0024】
この場合には、4個の回転ローラ12hが、同図に示すように、回動部材12iの一方の端部に回転自在にそれぞれ支持され、被検査ドアDの外側に移動進路Lに沿って一列に配置されている。回動部材12iは、ゲージ10の支柱16間に張り渡された外側支持部材12gに支点12jを中心として回動自在に支持されている。この回動部材12iの他方の端部には、コイルスプリング12kが取り付けられており、このコイルスプリング12kの弾性力により、回転ローラ12hは、被検査ドアDの外側主面に対して適切な押圧力を付与しながら当該ドアDを支持することが可能となっている。なお、コイルスプリング12kの他端部は、特に図示しないが、回動部材12iと共に回動しないように、支柱16間に張り渡されている梁部材等に取り付けられている。
【0025】
本実施形態における基準位置計測センサ20は、被検査ドアDの所定基準位置を計測して、当該計測結果に基づいて、被検査ドアDのゲージ10に対する相対位置データを生成する画像処理装置である。この基準位置計測センサ20は、CCDカメラにより被検査ドアDの所定基準位置を撮像し、当該画像情報に対して画像処理を行って当該所定基準位置の2次元座標値を計測し、被検査ドアDのゲージ10に対する相対位置を算出することが可能となっている。所定基準位置としては、図1及び図2に示すように、例えば、被検査ドアDのドアヒンジ取付部の上下2カ所と、当該ドアDの内側基準穴と、の合計3カ所を挙げることが出来るが、本発明においては特にこれに限定されず、少なくとも3カ所以上であれば、任意の数及び位置を設定することが出来る。この基準位置計測センサ20の各CCDカメラは、同図に示すように、所定基準位置を撮像可能なように、支柱16間に延びている梁部材等にそれぞれ固定されている。なお、本実施形態では基準位置計測センサ20として画像処理装置を用いるように説明したが、本発明においては特にこれに限定されず、例えばレーザ変位計等を用いても良い。
【0026】
本実施形態に係る形状計測センサ30は、被検査ドアDの所定計測点の形状を計測して、当該計測結果に基づいて、被検査ドアDの所定計測点における形状データを生成する非接触式形状センサである。この形状計測センサ30は、レーザ発振器とCCDカメラとを有し、レーザ発振器から被計測物に照射された帯状のレーザ光を例えば45°等の所定角度からCCDカメラにより撮像して当該被計測物の形状を計測する光切断法により、二次元上における被検査ドアDの所定測定点の形状を計測することが可能となっている。この形状計測センサ30により計測される所定計測位置としては、図1及び図2に示すように、被検査ドアDの車外側前方上部と、車外側後方下部と、の合計2カ所を挙げることが出来るが、本発明においては特にこれに限定されず、任意の数及び位置を設定することが出来る。
【0027】
以上の基準位置計測センサ20及び形状計測センサ30は、図1に示すように、各データを送出可能なようにコンピュータ40に接続されている。このコンピュータ40は、予め記憶されたデータ(後述)、及び、各センサ20、30から送出されるデータに基づいて、被検査ドアDが自動車のドア周囲の構造に対して生じる段差値及び隙間値を測定点毎に算出し、被検査ドアDの段差及び隙間データを生成することが可能となっている。
【0028】
さらに、コンピュータ40は、当該生成された段差及び隙間データに基づいて、被検査ドアDの形状の良否判断を行うことが可能となっている。このコンピュータ40における良否判断の具体的な手法としては、例えば、段差及び隙間データを、所定の閾値とそれぞれ比較し、全てのデータが閾値より小さい場合には、被検査ドアDの形状は良好と判断するのに対し、何れかのデータが閾値より大きい場合には、被検査ドアDの形状は不良と判断する方法を挙げることが出来る。コンピュータ40は、この判断結果を例えばモニタ等に表示することが可能となっている。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置1では、ゲージ10により被検査ドアDの下部及び内側主面のみを前後方向に沿って移動可能に支持し、この状態で被検査ドア1の形状を検査する。これにより、ドア形状の検査に当たり、検査者が被検査ドアDをゲージ10内でスライドさせるだけで容易に被検査ドアDをセッティングすることが出来るので、検査工程の作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0030】
また、ドア形状の検査に当たり、ゲージ10の第1及び第2の支持機構11、12により、被検査ドアDの下部と内側主面のみを支持するだけなので、車輌の前後のドアや品種が異なる車輌のドアに対して同一の装置を用いることが出来、低コスト化を図ることが可能となる。
【0031】
さらに、本実施形態では、従来検査者がノギス等を用いて膨大な工数を費やしていた計測作業を、センサ20、30及びコンピュータ40を用いて行うので、短時間で検査を行うことが可能となる。また、従来は検査者の個人差により検査結果にバラツキがあったが、計測作業をセンサ20、30及びコンピュータ40を用いて行うことにより、バラツキなく高精度な検査を行うことが可能となる。
【0032】
図6は本発明の実施形態における基準ドア登録処理を示すDFD(Data Flow Diagram)、図7は本発明の実施形態における基準ドア登録処理を示すフローチャート、図8は本発明の実施形態における被検査ドアの測定処理を示すDFD、図9は本発明の実施形態における被検査ドアの測定処理を示すフローチャート、図10は本発明の実施形態における段差値及び隙間値を算出するロジックを説明するためのグラフである。
【0033】
以下に、図6〜図10に従って、本実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置1による被検査ドアDの車輌のドア周囲の構造に対して生じる段差値及び隙間値を算出する方法について説明する。
【0034】
先ず、車輌用ドア形状検査装置1の使用に当たり、基準となる基準ドアに関する各種データをコンピュータ40に予め登録するマスタドア登録処理(キャリブレーション作業)について、図6及び図7に従って説明する。なお、本実施形態における基準ドアとは、設計上の理想的な(自動車に取り付けた際に段差も隙間もゼロの)ドアではなく、実際に製造されたドアの中から抽出した一つのドアであり、自動車に取り付けた際に品質保証内の段差及び隙間も生じるドアである。
【0035】
このキャリブレーション作業では、先ず、図7のステップS10に示すように、基準ドアにおける所定計測点の3次元座標値をそれぞれ計測する。この計測では、本実施形態に係る装置1を用いずに、例えば3次元計測機等を用いて行う。次いで、この計測値を、自動車のドア周囲の構造(ヒンジ部やフェンダ、ボディ等)のCADデータに照合することにより、各所定測定点における段差値及び隙間値をそれぞれ算出し、これら段差及び隙間データをマスタドア値としてコンピュータ40に入力して記憶する。
【0036】
次いで、図7のステップS20に示すように、各所定基準位置及び各所定測定点の理論上の3次元座標値や段差及び隙間方向ベクトル等から構成されるCAD基準形状値を、CAD等からコンピュータ40に入力して記憶する。
【0037】
次いで、図7のステップS30に示すように、検査者が基準ドアを本実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置1に投入する。そして、基準位置計測センサ20が、二次元上における基準ドアの各所定基準位置を計測し、当該計測結果に基づいて、ゲージ10に対する基準ドアの二次元相対位置データを生成し、この相対位置データが基準ドア位置測定値としてコンピュータ40に記憶される(図7のステップS40)。また、形状計測センサ30が、二次元上における基準ドアの所定計測点の形状を計測し、当該計測結果に基づいて、基準ドアの所定計測点における二次元形状データを生成し、この形状データが基準ドア形状計測値としてコンピュータ40に記憶され(図7のステップS50)、キャリブレーション作業が完了する。
【0038】
なお、以上に説明したキャリブレーション作業は、装置1を使用する度に行う必要はなく、原則として装置1の導入時に一度だけ実施すれば良く、装置1の計測精度が悪くなった場合や、センサ20、30の交換時等に行っても良い。
【0039】
以下に、被検査ドアDの測定処理について、図8及び図9に従って説明する。
【0040】
この測定処理では、先ず、図9にステップS100に示すように、本実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置1のゲージ10に検査者が被検査ドアDを投入する。ゲージ10内に投入口から投入された被検査ドアDは、第1の支持機構11の回転ローラ11aに設けられた角度αのテーパに従って自重でストッパ部材13に当接する。
【0041】
ストッパ部材13により被検査ドアDが位置決めされたのを確認後、検査者が測定実行ボタン(不図示)をオンすると、基準位置計測センサ20が、二次元上における被検査ドアDの所定基準位置をそれぞれ計測し、当該計測結果に基づいて、被検査ドアDのゲージ10に対する二次元相対位置データを生成し、このデータを被検査ドア位置計測値としてコンピュータ40に記憶する。また、形状計測センサ30が、二次元上における被検査ドアDの所定計測点の形状を計測し、当該計測結果に基づいて、被検査ドアDの所定計測点における二次元形状データを生成し、このデータを被検査ドア形状計測値としてコンピュータ40に記憶する。
【0042】
次いで、図9のステップS120において、コンピュータ40は、座標変換マトリクスを作成する。この座標変換マトリクスは、図8に示すように、上述のキャリブレーション作業でコンピュータ40に入力・記憶された基準ドア位置計測値及びCAD基準形状値と、ステップS110でコンピュータ40に記憶された被検査ドア位置計測値と、に基づいて作成される。この座標変換マトリクスは、本実施形態において被検査ドアDをゲージ10に対してラフに位置決めすることに伴って被検査ドアDをゲージ10に投入する度に生じ得るズレ量を補正すると共に、本実施形態に係る装置1により二次元データとして生成された基準ドア形状計測値及び被検査ドア形状計測値を三次元データに変換するためのマトリクスである。
【0043】
次いで、図9のステップS130において、コンピュータ40は、基準ドア形状計測値及び被検査ドア形状計測値に対して、ステップS120で作成したマトリクスを用いて座標変換を行い、さらにこの座標変換後のデータと基準ドア値とに基づいて理論上のドア形状(図10の符号P参照)を算出する。次いで、この理論ドア形状と被検査ドア形状計測値の形状データとを比較し、図10に示すような段差方向の差δF及び隙間方向の差δGを算出する。
【0044】
コンピュータ40は、これらの値δF及びδGを所定の閾値とそれぞれ比較し、被検査ドアDの形状の良否を判断する。さらに、コンピュータ40は、上記の値δF及びδGや良否判断の結果をモニタ等に表示する。
【0045】
以上のように、基準ドアが車輌ドア周囲の構造に対して生じる段差及び隙間のデータと、基準ドアの形状データと、ゲージ10に対する基準ドアの相対位置データと、被検査ドアDの形状データと、ゲージ10に対する被検査ドアDの相対位置データと、に基づいて、被検査ドアDが車輌ドア周囲の構造に対して生じる段差及び隙間のデータを生成することにより、検査に当たり、ゲージ10に対して被検査ドアDをラフに位置決めすることが可能となり、被検査ドアDのゲージ10へのセッティングを簡便とすることが出来るので、自動車用ドアの形状検査に費やす工数を著しく低減することが出来る。
【0046】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る車輌用ドア形状検査装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すゲージの背面図である。
【図3】図3は、図1に示すゲージに投入された被試験ドアの姿勢を示す図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、図1に示すゲージの上部平面図であり、図4(A)は、被検査ドアがスライドしている状態を示す図であり、図4(B)は、被検査ドアがストッパにより規制された状態を示す図であり、図4(C)は、被検査ドアの移動進路からストッパを退避させた状態を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態におけるゲージの上部平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における基準ドア登録処理を示すDFD(Data Flow Diagram)である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における基準ドア登録処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施形態における被検査ドアの測定処理を示すDFDである。
【図9】図9は、本発明の実施形態における被検査ドアの測定処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本発明の実施形態における段差値及び隙間値を算出するロジックを説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1…車輌用ドア形状検査装置
10…ゲージ
11…第1の支持機構
11a…回転ローラ
11b…下側支持部材
12…第2の支持機構
12a…回転ローラ
12b…回動部材
12c…支点
12d…コイルスプリング
12e…内側支持部材
12f…ゴム部材
12g…外側支持部材
12h…回転ローラ
12i…回動部材
12j…支点
12k…コイルスプリング
13…ストッパ
14…開閉機構
15…基盤
16…支柱
20…基準位置計測センサ
30…形状計測センサ
40…コンピュータ
D…被検査ドア
L…被検査ドアの移動進路
α…角度
δF…段差方向の差
δG…隙間方向の差


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌用ドアの形状を検査するための車輌用ドア形状検査装置であって、
検査対象である被検査ドアの下部を、当該被検査ドアの前後方向に沿って移動可能に支持する第1の支持機構、及び、前記被検査ドアの少なくとも一方の主面を、当該被検査ドアの前後方向に沿って移動可能に支持する第2の支持機構、を有するゲージと、
前記ゲージにより起立状態で支持された前記被検査ドアの形状を検査する検査手段と、を備えた車輌用ドア形状検査装置。
【請求項2】
前記ゲージの前記第2の支持機構は、前記被検査ドアの少なくとも内側主面を支持する請求項1記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項3】
前記ゲージは、前記第1及び第2の支持機構に支持された前記被検査ドアの移動進路上に位置して、当該被検査ドアの前方向への移動を規制する規制手段をさらに有し、
前記ゲージの前記第1の支持機構は、前記規制手段に向かって下降するように傾斜している請求項1又は2記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記被検査ドアの移動進路から退避可能である請求項3記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項5】
前記検査手段は、前記被検査ドアを非接触な状態で検査する請求項1〜4の何れかに記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項6】
前記検査手段は、
基準となる基準ドアが車輌ドア周囲の構造に対して生じる段差及び隙間のデータと、
前記基準ドアの形状データと、
前記ゲージに対する前記基準ドアの相対位置データと、
前記被検査ドアの形状データと、
前記ゲージに対する前記被検査ドアの相対位置データと、
に基づいて、前記被検査ドアが車輌ドア周囲の構造に対して生じる段差及び隙間のデータを生成する請求項1〜5の何れかに記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項7】
前記検査手段は、前記被検査ドアの所定基準位置を計測し、当該計測結果に基づいて、前記ゲージに対する前記被検査ドアの相対位置データを生成する基準位置計測手段を有する請求項1〜6の何れかに記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項8】
前記検査手段は、前記被検査ドアの所定測定点における形状を計測して、当該計測結果に基づいて、前記被検査ドアの所定測定点における形状データを生成する形状計測手段を有する請求項1〜7の何れかに記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項9】
前記検査手段は、
前記基準ドアの段差及び隙間データを外部から取り込み、
前記基準位置計測手段により、前記ゲージに対する前記基準ドアの相対位置データと、前記ゲージに対する前記被検査ドアの相対位置データと、を生成し、
前記形状計測手段により、前記基準ドアの前記所定測定点における形状データと、前記被検査ドアの前記所定測定点における形状データと、を生成し、
これら各データに基づいて、前記被検査ドアの段差及び隙間データを生成する請求項8記載の車輌用ドア形状検査装置。
【請求項10】
前記検査手段は、生成された前記被検査ドアの段差及び隙間データに基づいて、前記被検査ドアの形状の良否を判断する請求項6〜9の何れかに記載の車輌用ドア形状検査装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−153805(P2006−153805A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348591(P2004−348591)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】