説明

車輪型ロボット

【課題】旋回走行時に無駄のない動きを行わせることができ、且つ障害物を乗り越えるとき、4輪を接地させて安定させる構造を取りながら、障害物の乗り越え時の直進性を向上させることを可能とする。
【解決手段】前輪車台部29及び後輪車台部31からなる車台フレーム1と、回転軸心が走行前後方向のベアリング・ケース33、軸受金具35,37、ベアリング・ケース41,51に回転自在に支持され車台フレーム1に前後に渡って延設され前後部に連動ベベル・ギヤ3,5を備えた操向連動軸7と、回転軸心が上下方向のベアリング・ケース39,45に回転自在に支持され下部に前後横フレーム49,51を各別に固定支持し前記前後部の連動ベベル・ギヤ3,5に各別に噛み合う操向ベベル・ギヤ9,11を各別に固定した前後輪操向軸13,15と、前輪17,19を回転駆動する駆動部25,27とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車輪型ロボットとしては、特許文献1に記載のような小型走行ロボットがある。
【0003】
この小型走行ロボットは、左右フレーム及び中央フレームの前後端が連結リンクで連結され、障害物を乗り越えるとき、4輪を接地させることで安定状態を保つようにしている。
【0004】
しかし、左右操向は、左右の走行電動モータの回転速度を変更することにより行ない、機構的な操向は行われないため、旋回走行時に路面と車輪との間で若干の滑りを生じ、駆動ロスを招く問題がある。
【0005】
これに対し、非特許文献2には、4輪操向機構として前後車軸側間をリンクで連結して4輪操向を可能としたものがある。
【0006】
この4輪操向機構によれば、旋回中心を、前後車軸間中央を横切る直線上に採ることができ、内輪差を無くして前後輪同一軌道上を走行させることができ、無駄のない動きを行わせることができる。
【0007】
しかし、直進走行時に前輪の一方が障害物を乗りこえるようなときは、リンクにより後輪が直進方向からずれるように操向されてしまい、直進性が損なわれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−334355号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.robotics.it-chiba.jp/yoneda/KikougakuWEB/kikougaku.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、旋回走行時に無駄のない動きを行わせることができ、且つ障害物を乗り越えるとき、4輪を接地させて安定させることはできるが、直進走行時に障害物を乗り越えるとき、直進性が損なわれる点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、旋回走行時に無駄のない動きを行わせることができ、且つ障害物を乗り越えるとき、4輪を接地させて安定させる構造でありながら、障害物の乗り越え時の直進性を向上させるため、走行前後方向に延設された前輪車台部及び後輪車台部からなる車台フレームと、前記前後輪車台部のそれぞれに設けられ回転軸心が走行前後方向の軸受部に回転自在に支持された結合軸と、前記前後輪車台部に各別に設けられ回転軸心が上下方向の軸受部に回転自在に支持され下部に前後フレームを各別に固定支持した前後輪操向軸と、前記前後フレームの左右側にそれぞれ回転自在に支持された左右の前後輪と、前記前後輪の少なくとも一方を左右各別に回転駆動する左右の走行駆動部とを備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、走行前後方向に延設された前輪車台部及び後輪車台部からなる車台フレームと、前記前後輪車台部のそれぞれに設けられ回転軸心が走行前後方向の軸受部に回転自在に支持された結合軸と、前記前後輪車台部に各別に設けられ回転軸心が上下方向の軸受部に回転自在に支持され下部に前後フレームを各別に固定支持した前後輪操向軸と、前記前後フレームの左右側にそれぞれ回転自在に支持された左右の前後輪と、前記前後輪の少なくとも一方を左右各別に回転駆動する左右の走行駆動部とを備えた。
【0013】
このため、左右前後輪の何れかが障害物を乗り越えるとき、乗り上げ車輪側の前後フレームの何れかが左右に傾斜し、この傾斜は前後輪車台部が結合軸を中心に相対回転することで許容される。
【0014】
この前後横フレームの傾斜が許容されることで障害物乗り越え時に乗り越え車輪は障害物上に接し、乗り越え車輪以外の3輪を接地させ、安定した走行を行わせることができる。
【0015】
前後フレームの一方が操向されると前後フレームの他方が相対的に逆方向へ操向される状態となり、内輪差を抑制して無駄のない動きを行わせることができる。
【0016】
しかも、前後輪何れかの片輪が障害物を乗り越えるとき、前後フレームの一方の左右傾斜により車台フレームが平面から見て直進方向に対し傾斜することになるが、前後フレームの連結軸での相対回転により直進方向に対する姿勢を概ね維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車輪型ロボットの平面図である。(実施例1)
【図2】車輪型ロボットの断面図である。(実施例1)
【図3】車輪型ロボットの正面図である。(実施例1)
【図4】前輪の一方が障害物を乗り上げている状況を示す車輪型ロボットの平面図である。(実施例1)
【図5】前輪の一方が障害物を乗り上げている状況を示す正面図である。(実施例1)
【図6】前輪の双方が障害物を乗り上げる状況を示す車輪型ロボットの平面図である。(実施例1)
【図7】障害物との関係で示す車輪型ロボットの斜視図である。(実施例2)
【図8】障害物上を通過走行する車輪型ロボットの斜視図である。(実施例2)
【図9】変形例に係る車輪型ロボットの断面図である。(実施例2)
【図10】障害物との関係で示す車輪型ロボットの斜視図である。(実施例3)
【図11】車輪型ロボットの平面図である。(実施例4)
【図12】車輪型ロボットの断面図である。(実施例4)
【図13】車輪型ロボットの正面図である。(実施例4)
【図14】車輪型ロボットの平面図である。(実施例5)
【図15】車輪型ロボットの断面図である。(実施例5)
【図16】車輪型ロボットの作用説明の平面図である。(実施例5)
【図17】車輪型ロボットの作用説明の平面図である。(実施例5)
【図18】車輪型ロボットの作用説明の平面図である。(実施例5)
【図19】車輪型ロボットの作用説明の平面図である。(実施例5)
【図20】車輪型ロボットの平面図である。(実施例6)
【図21】車輪型ロボットの断面図である。(実施例6)
【図22】車輪型ロボットの正面図である。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0018】
旋回走行時に無駄のない動きを行わせることができ、且つ障害物を乗り越えるとき、4輪を接地させて安定させる構造でありながら、障害物の乗り越え時の直進性を向上させるという目的を、前後輪車台部と結合軸とにより実現した。
【実施例1】
【0019】
[車輪型ロボットの構造]
図1〜図3は、本発明の実施例1の車輪型ロボットに係り、図1は、平面図、図2は、断面図、図3は、正面図である。
【0020】
図1〜図3のように、車輪型ロボットは、車台フレーム1に対し、連動ベベル・ギヤ3,5を備えた操向連動軸7と操向ベベル・ギヤ9,11を備えた前後輪操向軸13,15と前後輪17,19,21,23と駆動部25,27とを有している。
【0021】
前記車台フレーム1は、走行前後方向に延設され走行方向前後の前輪車台部29及び後輪車台部31からなっている。前輪車台部29及び後輪車台部31は、金属又は樹脂などの矩形板材により形成されている。
【0022】
前輪車台部29上には、回転軸心が走行前後方向の軸受部としてベアリングを内蔵したベアリング・ケース33と軸受メタルなどで形成された軸支持金具35,37とが設けられている。前輪車台部29の前端下部には、回転軸心が上下方向の軸受部としてベアリングを内蔵したベアリング・ケース39が設けられている。
【0023】
後輪車台部31上には、回転軸心が走行前後方向の軸受部としてベアリングを内蔵したベアリング・ケース41,43が設けられている。後輪車台部31の後端下部には、回転軸心が上下方向の軸受部としてベアリングを内蔵したベアリング・ケース45が設けられている。
【0024】
前記操向連動軸7は、金属製などによる回転軸であり、前記ベアリング・ケース33、軸支持金具35,37により前輪車台部29上に回転自在に支持され、前記ベアリング・ケース41,43により後輪車台部31上に回転自在に支持されている。
【0025】
この操向連動軸7は、車台フレーム1に前後に渡って延設され前後部に前記連動ベベル・ギヤ3,5を備えている。
【0026】
前記前後輪操向軸13,15は、ベアリング・ケース39,45にそれぞれ回転自在に支持されている。この前後輪操向軸13,15の上端には、前記操向ベベル・ギヤ9,11が同心状に各別に固定支持されている。操向ベベル・ギヤ9,11は、前記連動ベベル・ギヤ3,5にそれぞれ噛み合っている。前後輪操向軸13,15の下端部には、結合部材47,48を介して前後フレームとしての前後横フレーム49,51の左右中央部が固定支持されている。
【0027】
この前後横フレーム49,51は、前記前後輪17,19,21,23の車軸53,55,57,59と同高さで左右に延設配置されている。すなわち、前後横フレーム49,51の左右両端には、前記前後輪17,19,21,23の前後車軸53,55,57,59が図示しない懸架装置を介してそれぞれ回転自在に支持され、それぞれ独立回転可能となっている。
【0028】
前記駆動部25,27は、前後輪の少なくとも一方、本実施例では左右前輪17,19を各別に回転駆動するものとして設けられている。
【0029】
この駆動部25,27は、走行電動モータ61,63及び駆動伝達部65,67とからなっている。走行電動モータ61,63は、前横フレーム49上左右両側にブラケット69,71により固定支持されている。駆動伝達部65,67は、ギヤ伝動であり、走行電動モータ61,63の駆動軸61a,63aに固定された駆動ギヤ65a,67aと車軸53,55側に固定された従動ギヤ65b,67bとからなっている。
【0030】
なお、走行電動モータ61,63を駆動するための車載のバッテリやコントローラは図示を省略している。走行電動モータ61,63は、リモート・コントロールにより駆動させることもできる。
[車輪型ロボットの動作]
本発明実施例の車輪型ロボットの動作は、遠隔操作による走行電動モータ61,63の制御、各種センサ及びコントローラを備えることによる走行電動モータ61,63の制御の何れによるものでもよい。
【0031】
(直進走行)
平地走行において、走行電動モータ61,63の双方を同回転速度で駆動すると、駆動ギヤ65a,67a及び従動ギヤ65b,67bを介して車軸53,55が同回転速度で駆動され、前輪17,19が同回転速度で走行回転する。
【0032】
したがって、車輪型ロボットは、直進走行することができる。
【0033】
(旋回走行)
走行電動モータ61,63の一方、例えば右の走行電動モータ63を左の走行電動モータ61よりも早く回転駆動し、或いは右の走行電動モータ63のみを回転駆動すると、右の前輪19が左の前輪17に対して先行回転する。
【0034】
この右の前輪19の先行回転により、図1の破線図示のように前横フレーム49が前輪操向軸13を介し前輪車台部29側のベアリング・ケース39に対して操向回転する。
【0035】
この前輪操向軸13の回転により操向ベベル・ギヤ9が軸心回りに回転し、この回転が連動ベベル・ギヤ3、操向連動軸7、連動ベベル・ギヤ5、操向ベベル・ギヤ11を介して後輪操向軸15に伝達される。
【0036】
この回転伝達により後輪操向軸15がベアリング・ケース45に対して操向回転し、後横フレーム51が前横フレーム49に対し図1のように逆方向へ回転する。
【0037】
これら前後横フレーム49,51の操向回転により車輪型ロボットの旋回中心を前後車軸53,55,57,59間中央を横切る直線上に採ることができ、内輪差を無くして前後輪17,19,21,23を同一軌道上で旋回走行させることができて無駄のない動きを行わせることができる。
【0038】
(障害物の片輪乗り越え)
図4は、前輪の一方が障害物を乗り上げている状況を示す平面図、図5は、同正面図である。
【0039】
図4においては、前後輪17,19,21,23間がリンク75により機構的に連結された比較例を破線で同時に示している。この比較例によると、例えば左前輪55が障害物OB1に乗り上げると前後輪17,19,21,23間にねじれを生じ、このねじれがリンク75を介して後輪21,23側に伝達され、後輪21,23側が破線図示のように直進方向からずれるように操向され、直進性が損なわれることになる。
【0040】
これに対し、本実施例1の車輪型ロボットでは、例えば左前輪55が障害物OBに乗り上げると前横フレーム49の左右傾斜により車台フレーム1が平面から見て直進方向に対し傾斜することになるが、後横フレーム51の直進方向に対する姿勢を概ね維持させることができる。
【0041】
すなわち、前輪17が障害物OB1を乗り越えるとき、後横フレーム51が何らの姿勢修正も受けなければ、平面から見て操向方向に対し傾斜した車台フレーム1に直交する後横フレーム51は、操向方向に対して比較例と同様に向きがずれ、直進性が損なわれることになる。
【0042】
しかし、操向ベベル・ギヤ9及び連動ベベル・ギヤ3を介して後横フレーム51が直進性を維持する方向へ連動して姿勢修正され、車輪型ロボットの直進性を向上させることができる。
【0043】
また、乗り上げ車輪側の前横フレーム49が左右に傾斜し、この傾斜は前輪車台部29が後輪車台部31に対して操向連動軸7を中心に相対回転することで許容される。
【0044】
この前横フレーム49,51の傾斜が許容されることで障害物乗り越え時に4輪を接地させ、安定した走行を行わせることができる。
【0045】
このような動作は、前輪19、後輪21,23の何れかが障害物に乗り上げるときも同様である。
【0046】
(障害物の両輪乗り越え)
図6は、前輪の双方が障害物を乗り上げる状況を示す平面図である。
【0047】
図6は、障害物OB2に乗り上げようとする状況を示したものである。
【0048】
図6では、破線図示のように直進走行してきた車輪型ロボットの前輪17,19を、障害物OB2に実線図示のように平行に対向させるため、一方の前輪17が最下段に当接したときからその前輪17の回転を停止させ、他方の前輪19を回転駆動し、前記同様の旋回走行動作を行わせる。
【0049】
この旋回走行動作により、前輪17,19の双方を、障害物OB2に当接させることができる。
【0050】
この位置から、外輪となる前輪19をさらに回転駆動すると前輪19のみが、障害物OB2に乗り上げ動作する。次に、前輪19を停止して前輪17を回転駆動すると既に乗り上げた前輪19に対して前輪17のみが乗り上げ動作する。このような前輪17,19の交互の乗り上げ動作は、前輪車台部29が後輪車台部31に対して操向連動軸7を中心に相対回転することで許容される。
【0051】
この交互の乗り上げ動作により、階段も1段づつ登らせることができる。
【0052】
図6の実線図示状態で、双方の前輪17,19をと共に駆動することで障害物OB2に乗り上げさせることもできる。
[実施例1の効果]
本発明実施例1の車輪型ロボットは、走行前後方向に延設され走行方向前後の前輪車台部29及び後輪車台部31からなる車台フレーム1と、前記前後輪車台部29,31のそれぞれに設けられ回転軸心が走行前後方向のベアリング・ケース33、軸受金具35,37、ベアリング・ケース41,51に回転自在に支持され前記車台フレーム1に前後に渡って延設され前後部に連動ベベル・ギヤ3,5を備えた操向連動軸7と、前記前後輪車台部29,31に各別に設けられ回転軸心が上下方向のベアリング・ケース39,45に回転自在に支持され下部に前後横フレーム49,51を各別に固定支持し前記前後部の連動ベベル・ギヤ3,5に各別に噛み合う操向ベベル・ギヤ9,11を各別に固定した前後輪操向軸13,15と、前記前後横フレーム49,51の左右側にそれぞれ回転自在に支持された左右の前後輪17,19,21,23と、前記前輪17,19を回転駆動する駆動部25,27とを備えた。
【0053】
このため、左右前後輪17,19,21,23の何れか、例えば前輪17が障害物を乗り越えるとき、乗り上げ車輪17側の前横フレーム49が左右に右下降傾斜し、この傾斜は前後輪車台部29,31が操向連動軸7を中心に相対回転することで許容される。
【0054】
この前横フレーム49の傾斜が許容されることで障害物乗り越え時に4輪17,19,21,23を接地させ、安定した走行を行わせることができる。
【0055】
同時に、操向ベベル・ギヤ9及び連動ベベル・ギヤ3を介して後横フレーム51が直進性を修正維持する方向へ連動して姿勢修正され、車輪型ロボットの直進性を向上させることができる。
【0056】
平地操向での前横フレーム49の操向により操向ベベル・ギヤ9,11及び連動ベベル・ギヤ3,5を介して後横フレーム51が逆方向へ連動して操向されるから、旋回中心を、前後車軸間中央を横切る直線上に採ることができ、内輪差を無くして前後輪17,19,21,23を同一軌道上で旋回走行させることができ、無駄のない動きを行わせることができる。
【0057】
しかも、前輪17,19の一方が障害物を乗り越えるとき、前横フレーム49の傾斜により車台フレーム1が平面から見て直進方向に対し傾斜することになるが、操向ベベル・ギヤ9,11及び連動ベベル・ギヤ3,5を介して後横フレーム51が直進性を修正する方向へ連動して姿勢修正されるから後横フレーム51の直進方向に対する姿勢を概ね維持させ、車輪型ロボットの直進性を向上させることができる。
【0058】
前記駆動部25,27は、前記前横フレーム49に支持された左右の走行電動モータ61,63と、前記走行電動モータ61,63の回転を前記前輪17,19に伝達するギヤ伝動の駆動伝達部65,67とからなる。
【0059】
このため、車輪型ロボットを前輪駆動により走行させることができる。また、走行電動モータ61,63の回転速度を調節することで、前記操向を行わせることができる。
【0060】
前記前後横フレーム49,51は、前記前後輪17,19,21,23の車軸53,55,57,59と同高さで左右に延設配置された。
【0061】
このため、重心の低い車輪型ロボットを得ることができる。
【実施例2】
【0062】
図7,図8は、本発明の実施例2に係り、図7は、障害物との関係で示す車輪型ロボットの斜視図、図8は、障害物上を通過走行する車輪型ロボットの斜視図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にAを付し、重複した説明は省略する。
【0063】
本実施例の車輪型ロボットは、前後横フレーム49A,51Aの構成を変更したものである。
【0064】
すなわち、本実施例の前後横フレーム49A,51Aは、横架設フレーム49Aa,51Aaと脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbとからなっている。
【0065】
横架設フレーム49Aa,51Aaは、金属パネルや樹脂パネルで形成され、ベアリング・ケース39Aの下端に固定され、前記前後輪17,19,21,23の車軸53,55,57,59よりも高位に配置されている。
【0066】
脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbは、横架設フレーム49Aa,51Aaの各両端にそれぞれ支持され各下端部側に前記前後輪17,19,21,23が回転自在に支持されている。
【0067】
本実施例において、脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbは、ピストン・シリンダ装置で構成され、伸縮駆動により横架設フレーム49Aa,51Aaの高さ調整を行わせることができる。
【0068】
この構成により、前記脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbは、ピストン・シリンダ装置を備えた構成となっている。
【0069】
なお、脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abb全体をピストン・シリンダ装置で構成するものに限らず、脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbの一部をピストン・シリンダ装置で形成する構成とすることもできる。
【0070】
また、本実施例では、左右のブラケット(図面では、一方のブラケット71Aのみ示す)が後方側へ延設され、この左右のブラケットの後端に走行電動モータ(図面では、一方の走行電動モータ63のみ示す)が支持されている。左右の走行電動モータと前輪17,19との間には、それぞれ実施例1の駆動伝達部65,67と同様に駆動伝達部が設けられている。
【0071】
操向連動軸7は、前輪車台部29のベアリング・ケース33Aと後輪車台部31の軸受金具35A,37A、ベアリング・ケース43により支持されている。
【0072】
そして、本実施例の車輪型ロボットでは、障害物OB1があるとき、図7のように前後輪17,19,21,23の左右間でその上を通過走行することができる。
【0073】
障害物OB1の高さが高いときは、脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbのピストン・シリンダ装置を図8のように伸張させることで横架設フレーム49Aa,51Aaの高さを高く調節する。
【0074】
この高さ調節により、障害物OB1に対し前後輪17,19,21,23の左右間でその上を通過走行することができる。
【0075】
図9は、実施例2の変形例に係る車輪型ロボットの断面図である。
【0076】
本実施例では、前記後輪車台部31に、ハンド機構77を備えた。ハンド機構77は、昇降ボックス79に支持された昇降ロッド81の下端にハンド部83を設けたものである。昇降ボックス79には、走行電動モータが備えられ、例えば走行電動モータのピニオンが昇降ロッド81のラックに噛み合っている。なお、操向連動軸7は、昇降ボックス79の機構部分を避けて前後に貫通している。
【0077】
ハンド部83は、電動のハンド駆動部85に可動のフィンガー・アーム87を放射状に備えたものである。コントローラの制御によりハンド駆動部85が駆動され、フィンガー・アーム87を開閉し、地上の搬送物BGを掴み上げることができる。
【0078】
例えば、図9の車輪型ロボットにおいて、昇降ボックス79の駆動により昇降ロッド81を上方へ駆動し、ハンド部83を上昇位置にセットしておく。この状態で、図8と同様にして脚フレーム49Aba,49Abb,51Aba,51Abbのピストン・シリンダ装置を収縮させ、前後輪17,19,21,23の左右間でハンド部83が搬送物BG上に位置するまで走行させる。
【0079】
この位置で、ハンド駆動部85の駆動によりフィンガー・アーム87を開きながら昇降ボックス79の駆動により昇降ロッド81を下方へ駆動し、フィンガー・アーム87を搬送物BGに配置させる。
【0080】
次いで、ハンド駆動部85の駆動によりフィンガー・アーム87を閉じ、昇降ボックス79の駆動により昇降ロッド81を上方へ駆動することで、搬送物BGを掴み上げることができる。
【実施例3】
【0081】
図10は、本発明の実施例3に係り、障害物との関係で示す車輪型ロボットの斜視図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にBを付し、重複した説明は省略する。
【0082】
本実施例の車輪型ロボットは、左右への重心を移動させる重心移動機構89を備えた。
【0083】
重心移動機構89は、旋回アーム91と重錘93とからなっている。旋回アーム91は、後輪車台部31のベアリング・ケース41B上に一端が回転可能に取り付けられたもので、伸縮調整可能な構造となっている。重錘93は、旋回アーム91の他端に支持されている。
【0084】
したがって、図10のように前輪19が障害物OB1を乗りこえるとき、旋回アーム91を左側へ回転させて前輪19側の重量を軽減させると、障害物OB1を容易に乗りこえさせることができる。
【実施例4】
【0085】
図11〜図13は、本発明の実施例4に係り、図11は、車輪型ロボットの平面図、図12は、同断面図、図13は、同正面図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にCを付し、重複した説明は省略する。
【0086】
本実施例の車輪型ロボットは、前後の操舵角伝達に関し歯車のバックラッシュの影響を抑制できるようにしたものである。
【0087】
図11〜図13のように、本実施例の車輪型ロボットでは、操向中間軸95,97及び前後操向増減速部99,101を設けた。
【0088】
前記操向中間軸95,97は、前後車台部29,31にベアリング・ケース103,104により回転自在に支持されている。操向中間軸95,97に、前後部の連動ベベル・ギヤ3,5に各別に噛み合う操向ベベル・ギヤ9,11が各別に固定されている。
【0089】
前記前後操向増減速部99,101は、前後輪操向軸13C,15Cと前記操向中間軸95,97との間に設けられている。この前後操向増減速部99,101は、増減速比が同一に設定され、前後輪操向軸13C,15Cに固定された大歯車105,107と前記操向中間軸95,97に固定された小歯車109,111とが噛み合わされたものである。
【0090】
したがって、前後操向増減速部99,101は、前後輪操向軸13C,15Cと操向中間軸95,97との間で回転を増減速して伝達する。
【0091】
具体的には、前輪操向軸13Cの回転により大歯車105が軸心回りに回転し、この回転が大小歯車105、109の噛み合い回転により増速して操向中間軸95に伝達される。
【0092】
この増速した回転により操向ベベル・ギヤ9が軸心回りに回転し、この回転が連動ベベル・ギヤ3、操向連動軸7、連動ベベル・ギヤ5、操向ベベル・ギヤ11を介して後輪側の操向中間軸97に伝達される。
【0093】
この操向中間軸97へ増速して伝達された回転は、大小歯車107、111の噛み合い回転により減速して後輪操向軸15Cに伝達される。
【0094】
すなわち、旋回走行、障害物の片輪乗り越えの際に、図11、図13の各破線図示のように操向動作、或いは乗り越え動作すると、後横フレーム51が前横フレーム49に前記のように連動して操向回転する。
【0095】
この回転伝達により後輪操向軸15Cがベアリング・ケース45に対して回転し、後横フレーム51が前横フレーム49に対し図1のように回転する。
【0096】
このとき、前後操向増減速部99,101が回転を増速して操向ベベル・ギヤ9,11と連動ベベル・ギヤ3,5間とを噛み合い回転させることができ、操向ベベル・ギヤ9,11及び連動ベベル・ギヤ3,5間のバックラッシュの影響を抑制することができ、ガタつきの少ない、精度の良い操向回転を行わせることができる。
【0097】
その他、本実施例においても実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【実施例5】
【0098】
図14〜図19は、本発明の実施例5に係り、図14は、車輪型ロボットの平面図、図15は、同断面図、図16〜図19は、同作用説明の平面図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にDを付し、重複した説明は省略する。
【0099】
本実施例の車輪型ロボットは、前後の操舵を独立の操向駆動部である操向電動モータにより行わせるようにした。
【0100】
図14、図15のように、前後輪車台部29,31にモータ・ブラケット113,115を介して操向電動モータ117,119が取り付けられ、この操向電動モータ117,119に前後輪操向軸13D,15Dが継ぎ手121,123を介して連動結合されている。操向電動モータ117,119の電源は図示しない車載のバッテリであり、駆動制御は、図示しないコントローラにより行われる。但し、バッテリ及びコントローラを車載しないリモート・コントロールにより制御することも可能である。
【0101】
前記前後輪車台部29,31は、操向連動軸に代えて結合軸7Dにより結合されている。結合軸7Dは、前後輪車台部29,31のそれぞれに設けられ回転軸心が走行前後方向の軸受部である軸支持金具35,37とベアリング・ケース41とにより回転自在に支持されている。
【0102】
したがって、操向電動モータ117,119の駆動制御により前後輪操向軸13D,15Dを別個に回転駆動することができ、任意の操向を行わせることができる。
【0103】
図16〜図19は、操向のバリエーションの一例を示すものである。
【0104】
図16は、直進を行わせる例である。片輪が障害物等に乗り上げた時、前後輪車台部29,31は、結合軸7Dを中心に相対回転することができ、乗り上げ動作を円滑に行わせることができる。
【0105】
図17は、旋回を行わせる例であり、操向電動モータ117,119により前後輪操向軸13D,15Dを逆方向へ操向駆動して実施例1と同様な操向を可能としている。
【0106】
図18は、平行移動を行わせる例であり、操向電動モータ117,119により前後輪操向軸13D,15Dを同方向へ操向駆動して平行移動を可能としている。
【0107】
図19は、その場旋回を行わせる例であり、操向電動モータ119により後輪操向軸15Dを操向駆動して後輪車軸を前輪車軸に直行するように配置する。
【0108】
走行電動モータ61,63を駆動すると、後輪57,59の何れかを中心に旋回走向する。
【0109】
その他、本実施例においても実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【実施例6】
【0110】
図20〜図22は、本発明の実施例6に係り、図20は、車輪型ロボットの平面図、図21は、同断面図、図22は、同正面図である。なお、基本的な構成は、実施例5と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にEを添えて付し、或いは同符号のDをEに代えて付し、重複した説明は省略する。
【0111】
本実施例の車輪型ロボットは、前輪17,19の一方を上昇させて3輪で接地させることができるようにした。
【0112】
図20〜図22のように、後輪車台部31にベアリング・ケースに代えてモータ・ブラケット125が設けられ、このモータ・ブラケット125に車軸揺動駆動部として車軸揺動電動モータ127を取り付けた。
【0113】
この車軸揺動電動モータ127には、結合軸7Eが連動結合され、結合軸7Eは、軸支持部としての軸支持金具35E,37Eに回転不能に結合支持されている。
【0114】
後輪車台部31に、3輪での接地を安定させるために各モータの電源となるバッテリ・ユニット129を取り付け、車体重心Gの位置を車体中心Cよりも後輪21,23寄りとした。
【0115】
したがって、車軸揺動電動モータ127の駆動により結合軸7Eを回転駆動すると後輪車台部31に対して前輪車台部29がロール方向に回転駆動され、前輪車軸が図22のように傾斜し、3輪17,21,23で接地させることができる。
【0116】
前記のように、車体重心Gの位置が車体中心Cよりも後車軸寄りであるため、3輪での接地を、安定させることができる。
【0117】
その他、本実施例においても実施例5と同様な作用効果を奏することができる。
[その他]
前後輪17,19,21,23の4輪、又は後輪21,23の2輪を走行電動モータにより駆動する構造にすることもできる。
【0118】
駆動部25,27は、ベルト伝動などにより構成することもできる。
【0119】
前後の操舵角伝達に関し歯車のバックラッシュの影響は、実施例1,2における連動ベベル・ギヤ3,5及び操向ベベル・ギヤ9,11の歯数を変更することにより実施例3と同様な増減速伝達を行わせることで抑制することもできる。
【0120】
実施例4〜6においても、実施例2の前後横フレーム49A,51Aの構造、実施例3の左右への重心を移動させる重心移動機構89の構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 車台フレーム
3,5 連動ベベル・ギヤ
7 操向連動軸
7D,7E 結合軸
9,11 操向ベベル・ギヤ
13,13C,13D,13E 前輪操向軸
15,15C,15D,15E 後輪操向軸
17,19 前輪
21,23 後輪
25,27 駆動部
29 前輪車台部
31 後輪車台部
33 ベアリング・ケース(軸受部)
35,37 軸受金具(軸受部)
49,49A,49B 前横フレーム
51,51A,51B 後横フレーム
61,63 走行電動モータ(走行駆動部)
95,97 操向中間軸
99 前操向増減速部
101 後操向増減速部
117,119 操向電動モータ(操向駆動部)
127 車軸揺動電動モータ(車軸揺動駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行前後方向に延設された前輪車台部及び後輪車台部からなる車台フレームと、
前記前後輪車台部のそれぞれに設けられ回転軸心が走行前後方向の軸受部に回転自在に支持された結合軸と、
前記前後輪車台部に各別に設けられ回転軸心が上下方向の軸受部に回転自在に支持され下部に前後フレームを各別に固定支持した前後輪操向軸と、
前記前後フレームの左右側にそれぞれ回転自在に支持された左右の前後輪と、
前記前後輪の少なくとも一方を左右各別に回転駆動する左右の走行駆動部と、
を備えたことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項2】
請求項1記載の車輪型ロボットであって、
前記結合軸は、前記車台フレームに前後に渡って延設され前後部に連動ベベル・ギヤを備えた操向連動軸であり、
前記前後輪操向軸に、前記前後部の連動ベベル・ギヤに各別に噛み合う操向ベベル・ギヤを各別に固定した、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項3】
請求項1記載の車輪型ロボットであって、
前記結合軸は、前記車台フレームに前後に渡って延設され前後部に連動ベベル・ギヤを備えた操向連動軸であり、
前記前後部の連動ベベル・ギヤに各別に噛み合う操向ベベル・ギヤを各別に固定した操向中間軸を設け、
前記前後輪操向軸と前記操向中間軸との間に、前後輪操向軸と操向中間軸との間で回転を増減速して伝達する前後操向増減速部を設けた、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項4】
走行前後方向に延設された前輪車台部及び後輪車台部からなる車台フレームと、
前記前後輪車台部の一方に設けられ回転軸心が走行前後方向の軸支持部に回転不能に結合支持された結合軸及び同他方に設けられ前記結合軸を回転駆動するための車軸揺動駆動部と、
前記前後輪車台部に各別に設けられ回転軸心が上下方向の軸受部に回転自在に支持され下部に前後フレームを各別に固定支持した前後輪操向軸と、
前記前後フレームの左右側にそれぞれ回転自在に支持された左右の前後輪と、
前記前後輪の少なくとも一方を左右各別に回転駆動する左右の走行駆動部と、
を備えたことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項5】
請求項1又は4記載の車輪型ロボットであって、
前記前後輪操向軸の少なくとも一方を操向駆動するために前記前後輪車台部の少なくとも一方に操向駆動部を取り付けた、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の車輪型ロボットであって、
前記走行駆動部は、前記前フレーム側に支持された左右の走行電動モータと、
前記走行電動モータの回転を前記前輪に伝達するギヤ伝動又はベルト伝動などの駆動伝達部と、
からなることを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の車輪型ロボットであって、
前記前後フレームは、前記前後輪の車軸と同高さで左右に延設配置された、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項8】
請求項1〜6記載の車輪型ロボットであって、
前記前後フレームは、前記前後輪の車軸よりも高位の横架設フレームと、この横架設フレームの各両端にそれぞれ支持され各下端部側に前記前後輪が回転自在に支持された脚フレームとからなる、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項9】
請求項8記載の車輪型ロボットであって、
前記各脚フレームは、伸縮駆動により横架設フレームの高さ調整を行わせるピストン・シリンダ装置を備えた、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項10】
請求項9記載の車輪型ロボットであって、
前記前後輪車台部の一方は、搬送物を掴むハンド部を昇降調整可能なハンド機構を備えた、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の車輪型ロボットであって、
左右への重心を移動させる重心移動機構を備えた、
ことを特徴とする車輪型ロボット。
【請求項12】
請求項11記載の車輪型ロボットであって、
前記重心移動機構は、前記後輪車台部に一端が回転可能に取り付けられた伸縮調整可能な旋回アームと、この旋回アームの他端に支持された重錘とからなる、
ことを特徴とする車輪型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−94802(P2010−94802A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212464(P2009−212464)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】