説明

車速制御装置

【課題】信号機をなるべく停止せずに通過し、燃費の向上や交通渋滞などの緩和をはかる車速制御装置を提供する。
【解決手段】車両の前方の交通信号の表示が切り替わるタイミングに応じて車速を制御する車速制御装置23において、前記交通信号が通行許可表示に切り替わるまでの時間を検出する検出手段43と、その検出手段43で検出された前記時間に、前記交通信号が停止表示である場合に車両が停止すべき位置を表示している停止位置から所定距離手前の位置を通過する際に前記交通信号の停止表示が通行許可表示となる最大車速Vfを求める車速算出手段23と、前記車速算出手段23で算出された車速を指示する車速指示手段51とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行状況や位置情報に基づいて、車両の速度を制御する車速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に公道を車両が走行する際には、交通規則を守らなければならず、道路標識や信号機(交通信号)表示などの指示に従うことになる。通常の道路標識は、地図情報とともに紙媒体や電子媒体などからその地点を車両が通過するか否かに関わらず、事前に知ることが可能である。一方、信号機表示なども交通管制で電子的に制御されており、これらの情報も電子情報として電波などで発信されていて、その電波と通信可能であれば、その電波を受信し、その信号機がある地点を車両が通過するか否かに関わらず、信号機表示の時間的変化を事前に知ることが可能である。
【0003】
また、車両はエンジンなどの動力源が設けられており、そのエンジン出力を出力操作装置(例えばアクセルペダル等)を操作することによりスロットル開度が制御され、結果的に車速が制御される。このような通常の出力操作装置とともに、現在の車両は、電子技術の発達によってコンピュータ制御される装置が多くなっており、このような車速の制御も電子的に自動的に行う制御装置が開発されている。
【0004】
この車両に用いられる制御装置は一般的に複数のマイクロコンピュータを搭載することによるコンピュータ制御によって、制御を実行する。マイクロコンピュータは、データが入力されている記憶装置、演算や命令を読み取る中央処理装置、センサより情報を得る入力装置、目的の挙動をさせるために各種アクチュエータなどを作動させる出力装置などから構成されている。
【0005】
コンピュータ制御について説明すると、車両の各部位に設けられている各種の機能をコンピュータ制御によって自動的に制御し、走行状態に併せたすぐれた操縦性、安定性および乗り心地が得られるようにする装置もある。このような車両にコンピュータ制御を利用した装置例として、いわゆるオートドライブ(auto drive)、クルーズコントロール(cruise control)などの車両の走行速度を一定速度に保つ装置がある。
【0006】
これらの装置はアクセルペダルを操作することなくエンジン出力を制御し、もって、車両の走行速度を制御するシステムである。このようなクルーズコントロールシステムは運転者の運転をアシストするものであり、クルーズコントロールシステムを有する車両では、種々の目的に適合させて車両の実車速(言い換えれば走行車速)と目標車速との偏差に基づいて、実車速を目標車速に一致させるように制御される。
【0007】
このクルーズコントロールを行う車両制御装置に係る発明が特許文献1に開示されている。特許文献1には、赤信号で安全に停止させるとともに信号間の走行における不要な加減速および停止をできる限り回避して燃費の向上と快適な乗り心地を確保するために、信号と連動させた車両制御装置が記載されている。その車両制御装置とは、信号情報などの道路情報を取得する情報取得手段と先行者情報を検出する先行車両検出手段と車速情報などを持つ走行状態検出手段とから走行を制御のパターンを作成し、さらにその制御パターンを選択できるスイッチと取り消すためのスイッチとを備えているものである。
【0008】
その走行パターンは情報取得手段からの道路情報と先行車両検出手段からの先行車情報とに基づいて自車両の信号通過の可否を判断することから作成されるものである。この車両走行制御装置では、直前の信号のみではなく将来的に現れる信号の情報なども車両制御するための情報の対象とすることによって車両を制御するため、無駄な加減速や停止を低減するように構成される。また、そのための加減速度は信号に到達する時間に安全マージンを確保した余裕時間を設けることにより、緩やかな加減速で走行制御を行い乗り心地を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−039975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載されている発明では、車両が、交通信号が赤の表示つまり通行不可の状態から青の表示つまり通行可能の状態に切り替わるタイミングで交通信号を通過するために、交通信号直前まで走行パターンにより設定された速度で走行する。この場合に特許文献1にかかる発明では一定の余裕時間、つまり交通信号表示が赤の表示から青の表示に変わってから自車両が交通信号に到達する間に一定の時間を持たせている。しかしながら交通信号通過時に交通信号が青表示に確実に切り替わるか否かこの余裕時間のみでは十分ではなく運転者に不安を与えてしまう。これにより、運転者が手動ブレーキ操作を行い、走行パターンにより設定された車速で走行し続けることが困難となり、未だ改善の余地があった。
【0011】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、信号交差点を安全かつ、ドライバーに負担を与えることなく自動制御による走行を可能にし、かつ省エネルギー、渋滞緩和等にも好影響を与える走行を可能にする車速制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車両の前方の交通信号の表示が切り替わるタイミングに応じて車速を制御する車速制御装置において、前記交通信号が通行許可表示に切り替わるまでの時間を検出する検出手段と、その検出手段で検出された前記時間に、前記交通信号が停止表示である場合に車両が停止すべき停止位置から所定距離手前の位置を通過する際に前記交通信号の停止表示が通行許可表示となる最大車速を求める車速算出手段と、前記車速算出手段で算出された車速を指示する車速指示手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記停止位置から手前の前記所定距離は、前記車両の走行の際に得られている過去の制動時の減速度で減速した場合に前記停止位置までに停止可能な距離であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記車速算出手段は、前記交通信号に向けて減速する制御開始当初に運転者の過去の制動による減速度の平均値である平均減速度で減速し、かつ前記停止位置から所定距離手前の位置に達する直前に運転者の過去の制動による減速度の最大値である最大減速度で減速するとした場合に、前記最大減速度で減速することにより前記停止位置で前記車両を停止させることが可能な車速であって、かつ前記所定距離手前の位置を車両が通過する時点で前記交通信号の停止表示が通行許可表示となる最大車速を求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、交通信号を通過する際に交通信号の停止位置から所定距離手前の位置を車両が通過する時点で交通信号の停止表示が通行可表示に切り替わるため、運転者が最大車速に近似するように車速を調整して信号交差点で不要に制動もしくは停止することがなくなり、また車速が制御されているため運転者に負担を与えることなく車速を調整でき、ひいては車両が省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の効果に加えて、過去の制動時の減速度により前記停止位置から手前の前記所定距離を定めることから、その平均減速度で適切な減速度を設定して車速を制御するため、過度な減速操作をすることなく、すなわち運転者に負担を与えることなく車速を調整でき、ひいては車両が省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。
【0017】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の効果に加えて、平均減速度および最大減速度により制動を行った場合、交通信号の停止位置の所定距離手前の位置で停止可能な速度であり、かつ交通信号を通過することのできる最大車速が求めらる。この最大車速で車両を走行させて、交通信号を通過させることにより、交通信号の停止位置の所定距離手前の位置に車両が差し掛かった際に交通信号が通行許可表示に切り替わるため、交通信号の通行許可表示が交通信号の停止位置(停止線など)の位置になってしまう場合に運転者が感じる不安を減らし、過度な減速操作をすることなく、すなわち運転者に負担を与えずに車速を調整できる。また、交通信号を不要に停止することがないことにより車両の省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る車速制御装置の第2の制御例を示すフローチャートである。
【図2】この発明に係る車速制御装置が適用される車両の概略的なシステムを示すブロック図である。
【図3】この発明に係る車速制御装置の第1の制御例を示すフローチャートである。
【図4】この発明に係る車速制御装置の第1の制御例の走行距離と車速と時間との関係を表す線図である。
【図5】この発明に係る車速制御装置の第2の制御例の走行距離と車速と時間との関係を表す線図である。
【図6】この発明に係る車速制御装置の第3の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、この発明を図を参照してより具体的に説明する。図2は、この発明に係る車速制御装置が適用された車両の概略的なシステムを示すブロック図である。この車両には駆動力源としてのエンジン1が搭載され、エンジン1の出力側には自動変速機2が連結されている。そして、アクセルペダル3の操作状態がアクセル開度センサ4により検知され、その検知信号がエンジン用電子制御装置(エンジンECU)5に入力されている。
【0020】
また、エンジン1の吸気管6には電子スロットルバルブ7が設けられており、電子スロットルバルブ7の開度を制御するスロットルアクチュエータ8が設けられている。そして、アクセルペダル3の踏み込み量に応じてエンジンECU5からスロットルアクチュエータ8に制御信号が出力され、電子スロットルバルブ7の開度が制御される。さらに、エンジン1は、燃料噴射装置9および点火装置10を備えている。
【0021】
エンジンECU5は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM,ROM)ならびに入出力インターフェースを主な構成要素とするマイクロコンピュータにより構成されている。このエンジンECU5には、アクセル開度センサ4の信号の他に、エンジン回転速度センサ11の信号、吸入空気量センサ12の信号、吸入空気温度センサ13の信号、電子スロットルバルブ7の開度を検出するスロットル開度センサ14の信号、自動変速機2の出力軸回転数、さらに車速を検出する車速センサ15の信号、冷却水温度センサ16の信号、後述するブレーキペダル27の操作状態を検出するブレーキスイッチ17の信号などが入力される。
【0022】
これに対して、エンジンECU5からは、スロットルアクチュエータ8を制御する信号、燃料噴射装置9を制御する信号、点火装置10を制御する信号などが出力される。そして、電子スロットルバルブ7の制御、燃料噴射装置9の制御、点火装置10の制御の少なくとも一つをおこなうことにより、エンジン1の動作特性、より具体的にはエンジン出力が制御される。
【0023】
一方、自動変速機2は、トルクコンバータ、ロックアップクラッチ、歯車変速機構、摩擦係合装置などの公知の構造を備えている。自動変速機2の各摩擦係合装置およびロックアップクラッチに作用する油圧は、油圧制御回路18により電気的に制御される。油圧制御回路18は、シフトソレノイドバルブ19やリニアソレノイドバルブ20を備えている。
【0024】
そして、油圧制御回路18のシフトソレノイドバルブ19およびリニアソレノイドバルブ20に制御信号を出力する自動変速機用電子制御装置(自動変速機ECU)21が設けられている。この自動変速機ECU21は、エンジンECU5と同様に、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置(RAM,ROM)ならびに入出力インターフェースを主な構成要素とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0025】
この自動変速機ECU21は、予め記憶している変速線図や演算式に従って入力データに基づく演算をおこない、演算結果に基づいた制御信号を前記シフトソレノイドバルブ19およびリニアソレノイドバルブ20に出力し、変速段の設定、変速時における摩擦係合装置の係合・解放の制御、あるいはロックアップクラッチの係合・解放の制御ならびに変速時の過渡油圧の制御などをおこなう。
【0026】
上記エンジンECU5と自動変速機ECU21とは、入出力インターフェースにより相互にデータ通信可能に接続されており、自動変速機用ECU21には、制御データとして、アクセル開度センサ4の信号、スロットル開度センサ14の信号、車速センサ15の信号、冷却水温度センサ16の信号、ブレーキスイッチ17の信号などが入力される。また、自動変速機ECU21からは、各変速段を設定する信号がエンジンECU5に送信されている。
【0027】
そして、上記エンジンECU5と自動変速機ECU21とは、それぞれが車両電子制御装置(車両ECU)23と相互にデータ通信可能に接続されている。車両ECU23は、中央演算処理装置(CPU)および記憶装置24(RAM、ROM)並びに入出力インターフェースを主な構成要素とするマイクロコンピュータにより構成されている。また、この車両ECU23は運転者(ドライバ)の操作もしくはその他の補助的な入力に対して車両の制駆動力を統括的に制御するとともに、後述するナビゲーションシステム22からの情報と交通信号情報を取得するための交通情報取得手段43と車速センサ15などの車両挙動状態検出装置とに基づいて、エンジンECU5と自動変速機ECU21と後述するブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)25とを統括的に制御および管理して、後述する車両のクルーズコントロール(車速自動制御)を担う。
【0028】
また、車両ECU23の記憶装置24には車両の走行に不可欠な情報が、例えば地図、道路などが記憶されているとともに、これらの情報は読み出し・書き込み可能となっており、受信もしくはダウンロードして適宜アップデートされる。この車両ECU23が本発明における車速制御装置に相当し、つまり車両ECU23はエンジン1の制御など前述した機能とともに本発明における車速制御装置の機能を兼ね備えており、また本発明における車速制御装置の中心として構成されて、後述する第1〜3の制御例における制御フローチャートにおいて、論理演算を行う手段や平均減速度A、最大減速度B、最大車速Vfを求める手段を有している。ここで、平均減速度Aとは運転者の過去の制動による減速度の平均値であり、最大減速度Bとは運転者の過去の制動による減速度の最大値である。最大車速Vfは第1から3の制御例において後述する式3、5、7によって求める。
【0029】
また、車両ECU23は、エンジン1および自動変速機2の他にブレーキ装置26を制御の対象とする。ブレーキ装置26は、運転者により操作されるブレーキペダル27と、ブレーキペダル27の踏み込み力を油圧に変換するマスターシリンダ28と、各車輪に設けられ、かつ、マスターシリンダ28に油圧回路を介して接続されたホイールシリンダ29と、油圧回路に接続されたリザーバ30と、ホイールシリンダ29に作用する油圧を電気的に制御する各種のソレノイドバルブ31と、これらのソレノイドバルブ31を制御するブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)25とを有している。
【0030】
このブレーキ装置26によれば、基本的にはブレーキペダル27の操作によりホイールシリンダ29に作用する油圧が増加し、制動力を生じる。また、ブレーキペダル27の操作状態以外の条件に基づいて、ブレーキECU25に入力される信号に基づき、ホイールシリンダ29に作用する油圧を制御することにより、その制動力を調整することができる。またブレーキ装置26には回生ブレーキ32が設けられており、図示しないバッテリによりその回生電力を蓄えることが可能となっている。この回生ブレーキ32による制動はバッテリの状態などの影響によって、ブレーキECU25などから要求された制動力が得られない場合には上記の機械式制動と併用される。
【0031】
上述のように、車両ECU23は、エンジン1と自動変速機2とブレーキ装置26とを各種ECUを経由して制御する一方、本発明における車速制御であるクルーズコントロール(車速自動制御)を行うために、ナビゲーションシステム22と交通信号情報を取得するための交通情報取得手段(地上情報受信機)43と車速センサ15などの車両挙動状態検出装置とが入出力インターフェースを介して相互にデータ通信可能に接続されて各種情報が入力される。本発明におけるクルーズコントロールとは、ナビゲーションシステム22と交通信号情報取得手段(地上情報受信機)43と車速センサ15などの車両挙動状態検出装置とによる情報から、車両ECU23により適切な値の車速等を算出し、その車速等により走行して交通信号を通過するためのものである。以下の各種情報取得手段の構成について説明する。
【0032】
ナビゲーションシステム22は車両の走行経路(言い換えれば道路)やその環境を判断するために設けられ、車両ECU23と入出力インターフェースにより相互通信可能に接続されている。そして、第1情報検出装置33と第2情報検出装置34とディスプレイ35とスピーカ36とが備えられてる。
【0033】
第1情報検出装置33は、自車両の現在位置、道路環境、自車両と自車両の周囲の物体(例えば、他車両または歩行者あるいは自転車)との距離などを、公知の自立航法(言い換えれば推定航法)により検出される。この第1情報検出装置33は、車両の走行する方位を検出する地磁気センサ37と、路面に設けられている磁気マーカや白線を検出する走行レーン検出センサ38と、自車両の周囲の物体の有無を検出するビデオカメラ39と、自車両と周囲の物体との距離を検出するレーザーレーダーセンサ40と、各車輪の回転速度を別個に検出する車輪速度センサ41と、車両の加速度を検出する加速度センサ42とを有している。
【0034】
この第1情報検出装置33と車両ECU23とが入出力インターフェースにより相互にデータ通信可能に接続されており、第1情報検出装置33により検出されたデータが車両ECU23に転送される。
【0035】
第2情報検出装置34は、公知の電波航法により、車両の現在位置、道路環境、道路の渋滞の有無、自車両の周囲の物体、障害物、天候、温度、道路工事などを検出するためのものである。さらに交通信号などの位置情報を取得、もしくは後述する交通信号情報取得手段(地上情報受信機)43と協調することで交通信号などの位置情報を取得できる。また第2情報検出装置34は、人工衛星44からの電波を受信するGPSアンテナ45と、GPSアンテナ45に接続されたアンプ46と、アンプ46に接続されたGPS受信機47とを有している。
【0036】
この第2情報検出装置34は、アンテナ48と、アンテナ48に接続されたアンプ49と、アンプ49に接続された地上情報受信機43とを有している。地上情報受信機43はアンテナ48とアンプ49とを介して、交通信号の切り替わるタイミングの時間変化の情報を受信して、車両ECU23にデータを送信するように構成されている。また、アンテナ48は、路側に設置されているビーコンやサインポスト、または交通管制センターなどの地上情報発信システム50からの電波を受信するためのものである。そして、GPS受信機47および地上情報受信機43が車両ECU23と入出力インターフェースにより相互にデータ通信可能に接続されており、第2情報検出装置34により検出されたデータが車両ECU23に転送される。このデータとは地上情報受信機43で地図データと照合して通過目的の交通信号を特定して、その信号表示の時間変化を含むものである。
【0037】
またディスプレイ35は、記憶装置(RAM、ROM)24に記憶されているデータや、第1情報検出装置33および第2情報検出装置34により検出されたデータに基づいて、自車両の現在位置および目的地、自車両を現在位置から目的地に誘導するために選択可能な単数もしくは複数の走行経路の候補、これらの走行経路の環境、走行経路における他車両や歩行者などの存在およびその位置、障害物の有無やその位置などの情報を、画像表示する機能とを備えている。
【0038】
上記構成のナビゲーションシステム22においては、第1情報検出装置33により判断される走行経路の環境に関するデータと、第2情報検出装置34により判断される走行経路の環境に関するデータと、記憶装置24に記憶されている地図データとが総合的に比較または評価され、車両の実際の走行経路における車両の現在位置や周囲の道路環境が判断される。
【0039】
以上に説明した車速制御装置は、クルーズコントロールシステム操作装置51により運転者が選択・指示して実行される構成となっている。このクルーズコントロールシステム操作装置51は、最終的に車両ECU23により設定された目標車速を行うか否かを選択するスイッチ52と、クルーズコントロールを解除するためのスイッチ53とを有している。
【0040】
この車速制御装置のクルーズコントロールは、アクセルペダル3またはブレーキペダル27の操作状態以外の条件である、交通信号の通過可否の判断材料となるナビゲーションシステム22などの情報に基づいて、エンジン1の出力、自動変速機2の変速比、ブレーキ装置26の制動力などを制御することにより、車両の車速を目標車速に近づける制御をするシステムである。
【0041】
また、上記にその構成を示したクルーズコントロールシステムには、自車両の車速を制御することにより、自車両と周囲の物体(例えば、他車両、歩行者、自転車など)との相対位置関係(具体的には距離)を所定の状態に調整する機能が含まれてもよい。より具体的には、自車両の周囲に物体が存在していた場合に、自車両と物体との間に所定の距離を維持した状態で、自車両を停止させることができるように、エンジン1の出力、自動変速機2の変速比、ブレーキ装置26の制動力の少なくとも一つを制御する機能いわゆる低速車間距離制御システムが含まれている。なお、この低速車間距離制御システムの設定および解除は、クルーズコントロールシステム操作装置51のスイッチ54で行うように構成されていてもよい。
【0042】
つぎに、図2に記載した車速制御装置の制御の一例について、図3のフローチャートに基づいて説明する。この図3のフローチャートは、この発明に係る車両制御装置の第1の制御例を表している。まず、車速センサ15により検出された車速V0と人工衛星44に連動したGPSから発進される電波をGPSアンテナ45により受信して、GPS受信機47にデータが送られることにより自車両と交通信号との距離Lの情報が取得される(ステップS1)。そして地上情報発信(交通管制)システム50より送られる交通信号タイムテーブルの情報の中の交通信号が青から黄に切り替わる時間Tyと交通信号が赤から青に切り替わる時間Tbとの情報が取得される(ステップS2)。
【0043】
ステップS1により得られた情報から自車両と交通信号(より正確には停止線または停止位置)との距離Lが0以上であるか否かが判別される(ステップS3)。このステップS3は自車両から交通信号までの距離が0以上であるか否かにより、自動速度制御を実行する必要性があるか否か判断するために実行される。この自車両と交通信号との距離Lは例えば、自車両から交通信号で停止する際の停止位置までの距離であって、この停止位置は交通信号のある路上に白線などで描かれる停止線でもよく、また第1情報検出装置33および第2情報検出装置34による路車間通信により定められた停止位置でもよく、さらに低速車間距離制御システムなどによる前方車両の位置から定められる停止位置でもよい。このステップS3において肯定的に判断された場合にはステップS5が実行される。ステップS3において否定的に判断された場合には、自動速度制御フラグがOFFされる(ステップS4)。つぎに自動速度制御フラグがONか否かが判別される(ステップS5)。ステップS5において肯定的に判断された場合には最大車速Vfが演算される(ステップS13)。
【0044】
ステップS5において否定的に判断された場合には、運転者(ドライバ)が通常の制動時に行っている制動に基づく平均減速度Aが演算される(ステップS6)。これは実際に運転者が行っている制動時の減速度をセンサで取得する方法などであってよい。つぎに現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できるか否かの判断が、
(V0/3.6)×Ty<L・・・(式1)
により判断される(ステップS7)。
【0045】
ステップS7において否定的に判断された場合つまり現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できると判断された場合にはリターンされ、逆に肯定的に判断された場合つまり現在の走行状態では交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できないと判断された場合には、ステップS6により求められた平均減速度A以下で交通信号の停止線の位置に停止できるか否かの判断が、
(V0/3.6)/(2×A)≦L・・・(式2)
により判断される(ステップS8)。
【0046】
ステップS8において否定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止線の位置で停止できないと判断された場合には運転者へブレーキ操作するようにスピーカ36やディスプレイ35により告知され(ステップS10)、リターンされる。ステップS8において肯定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止線で停止できると判断された場合にはスピーカ36やディスプレイ35により自動速度制御開始可能であることを告知される(ステップS9)。つぎに運転者のクルーズコントロールシステム操作装置51の操作による自動速度制御開始指示があるか否かが判別される(ステップS11)。
【0047】
ステップS11において否定的に判断された場合つまり運転者から自動速度制御を開始の指示がない場合、車両ECU23が指示結果を受け取らないでリターンされる。ステップS11において肯定的に判断された場合つまり運転者による自動速度制御を開始をすると車両ECU23が指示結果を受け取った場合には、車両ECU23で自動速度制御フラグがONされる(ステップS12)。
【0048】
ついでステップS5において肯定的に判断された場合もしくはステップS12で自動速度制御フラグがONされたのちに、交通信号を停止せずに通過できる最大車速Vf(以下、単に最大車速Vfとする)が、
【数1】

により演算される(ステップS13)。
【0049】
ステップS1で取得した車速V0とステップS13で求められた最大車速Vfとの大小関係が
V0≦Vf・・・(式4)
により比較される(ステップS14)。
【0050】
ステップS14において肯定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vf以下になり車速V0で交通信号を停止せずに通過できると判断された場合には、最大車速Vfで走行するための駆動力が出力され(ステップS16)、リターンされる。ステップS14において否定的に判断された場合つまり最大車速Vfが車速V0よりも相対的に小さく車速V0では最大車速Vfよりも速度が速いので交通信号を減速せずに通過できず、無駄にエネルギーを消費してしまうため、ステップS6で求められた平均減速度Aとなる制動力を出力する(ステップS15)。
【0051】
つぎに図4は、図3のフローチャートによる制御が適用された場合の車速と時間と走行距離との関係の一例を視覚的に表した線図である。図4の線図は、図3のフローチャートのステップS14において否定的に判断された場合のものを表している。図3によると車両は車速V0で走行しており、ステップS16により算出された平均減速度Aにより、交通信号を通過するための推奨車速である最大車速Vfまで減速される。最大車速Vfとなった時点で速度一定となり、時刻Tbで交通信号を通過できる。また図4ではグラフおよび車速と時刻とに対応した直交軸に囲まれる面積が、交通信号を通過するまでの間に車両が走行する距離Lとなる。
【0052】
上記に示したこの発明に係る車速制御装置およびその第1の制御例によれば、車両が交通信号を通過する前に車速センサ15、第1情報検出装置33、第2情報検出装置34などにより検出された情報に基づいて、車両ECU23が車速V0と距離Lと時間Ty,Tb等の値を算出することができ、その得られた値とともに求められた平均減速度Aによって交通信号を通過できるか否か、および平均減速度Aによって交通信号手前に停止できるか否かの判断を行うことができる。そして交通信号を通過できない場合には運転者に制動の指示をディスプレイ35とスピーカ36とにより与えることができる。また交通信号を通過できる場合にはクルーズコントロールシステム操作装置51により運転者によるクルーズコントロールを実行するとの指示が発せられた場合には式3により求められた最大車速Vfまで自動的に平均減速度Aで減速されて交通信号を通過することができる。結果、過度な減速操作をしないため、運転者に負担を与えることなく車速が調整され、ひいては車両が省エネルギ化や交通渋滞の緩和に寄与することができ、ドライバビリティが向上する。
【0053】
つぎに、図2に記載した車速制御装置の制御の他の例について、図1のフローチャートに基づいて説明する。この図1のフローチャートは、この発明に係る車速制御装置の第2の制御例を表しており、請求項2の発明に対応している。まず、車速センサ15により検出された車速V0と人工衛星44に連動したGPSから発進される電波をGPSアンテナ45により受信して、GPS受信機47にデータが送られることにより得られる自車両と交通信号との距離Lの情報が取得される(ステップS21)。そして地上情報発信(交通管制)システム50より送られる信号機タイムテーブルの情報の中の交通信号が青から黄に切り替わる時間Tyと交通信号が赤から青に切り替わる時間Tbとの情報が取得される(ステップS22)。
【0054】
ステップS21により得られた情報から自車両と交通信号との距離Lが0以上であるか否かが判別される(ステップS23)。このステップS23は自車両から交通信号までの距離が0以上であるか否かにより、自動速度制御を実行する必要性があるか否か判断するために実行される。この自車両と交通信号との距離Lは例えば、自車両から交通信号で停止する際の停止位置までの距離であって、この停止位置は交通信号のある路上に白線などで描かれる停止線でもよく、また第1情報検出装置33および第2情報検出装置34による路車間通信により定められた停止位置でもよく、さらに低速車間距離制御システムなどによる前方車両の位置から定められる停止位置でもよい。このステップS23において肯定的に判断された場合にはステップS25が実行される。ステップS23において否定的に判断された場合には、自動速度制御フラグがOFFされる(ステップS24)。つぎに自動速度制御フラグがONか否かが判別される(ステップS25)。ステップS25において肯定的に判断された場合には最大車速Vfが演算される(ステップS34)。
【0055】
ステップS25において否定的に判断された場合には、運転者(ドライバ)が通常の制動時に行っている制動に基づく平均減速度Aが演算される(ステップS26)。そして、運転者が通常の制動時に行っている制動に基づく最大減速度Bが演算される(ステップS27)。つぎに現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できるか否かの判断が第1の制御例と同じように式1により判断される(ステップS28)。
【0056】
ステップS28において否定的に判断された場合つまり現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できると判断された場合にはリターンされ、逆に肯定的に判断された場合つまり現在の走行状態では交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できないと判断された場合には、ステップS26により求められた平均減速度A以下で交通信号の停止位置に停止できるか否かの判断が、第1の制御例と同じように式2により判断される(ステップS29)。
【0057】
ステップS29において否定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止位置で停止できないと判断された場合には運転者へブレーキ操作するようにスピーカ36やディスプレイ35により告知され(ステップS31)、リターンされる。ステップS29において肯定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止位置で停止できると判断された場合にはスピーカ36やディスプレイ35により自動速度制御開始可能であることが告知される(ステップS30)。つぎに運転者のクルーズコントロールシステム操作装置51の操作による自動速度制御開始指示があるか否かが判別される(ステップS32)。
【0058】
ステップS32において否定的に判断された場合つまり運転者から自動速度制御を開始しない場合、車両ECU23が指示結果を受け取ってリターンされる。ステップS32において肯定的に判断された場合つまり運転者による自動速度制御を開始をすると車両ECU23が指示結果を受け取った場合には、車両ECU23で自動速度制御フラグがONされる(ステップS33)。
【0059】
ついでステップS25において肯定的に判断された場合もしくはステップS33で自動速度制御フラグがONされたのちに、交通信号を停止せずに通過できる最大車速Vfが
【数2】

により演算される(ステップS34)。
【0060】
ステップS21で取得した車速V0とステップS34で求められた最大車速Vfとの大小関係が第1の制御例と同じように式4により比較される(ステップS35)。
【0061】
ステップS35において肯定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vf以下になり車速V0で交通信号を停止せずに通過できると判断された場合には、最大車速Vfで走行するための駆動力が出力され(ステップS37)、リターンされる。ステップS35において否定的に判断された場合つまり最大車速Vfが車速V0よりも相対的に小さく車速V0では最大車速Vfよりも速度が速いので交通信号を減速せずに通過できず、無駄にエネルギーを消費してしまうため、ステップS26で求められた減速度Aとなる制動力を出力する(ステップS36)。
【0062】
つぎに図5は、図1のフローチャートによる制御が適用された場合の車速と時間と走行距離との関係の一例を視覚的に表した線図である。図5の線図は図1に示したフローチャートのステップS35において否定的に判断された場合のものを表している。図5によると車両は車速V0で走行しており、ステップS26で求めた平均減速度Aにより、信号機を通過するための推奨車速である最大車速Vfまで減速される。最大車速Vfとなった時点で速度一定となり、時刻Tbで信号機を通過できる。ステップS34において、ステップS27で演算された減速度Bを考慮した最大車速Vfの算出により、図5の時刻Tb以降の三角形の面積で示される分の距離だけ、車両が交通信号の停止位置の手前で青となる。また図4同様、図5でもグラフおよび車速と時刻とに対応した直交軸に囲まれる面積が、交通信号を通過するまでの間に車両が走行する距離Lとなる。
【0063】
上記に示したこの発明に係る車速制御装置およびその第2の制御例によれば、車両が交通信号を通過する前に車速センサ15、第1情報検出装置33、第2情報検出装置34などにより検出された情報に基づいて、車両ECU23が車速V0と距離Lと時間Ty,Tb等の値を算出することができ、その得られた値とともに求められた平均減速度Aによって交通信号を通過できるか否か、および平均減速度Aによって交通信号手前に停止できるか否かの判断を行うことができる。そして交通信号を通過できない場合には運転者に制動の指示をディスプレイ35とスピーカ36とにより与えることができる。また交通信号を通過できる場合にはクルーズコントロールシステム操作装置51により運転者のクルーズコントロールを実行するとの指示が発せられた場合には式5により求められた最大車速Vfまで減速される。
【0064】
ここで車速V0が最大車速Vfより大きい場合、自動的に平均減速度Aで減速されて交通信号を通過することができる。このとき車速V0が最大車速Vfより大きいことから、交通信号の停止位置の一定距離手前を車両が通過する際に交通信号が青の表示をするため、交通信号の通行可表示が交通信号の停止位置になってしまう場合に運転者が感じる不安を減らし、また、過度な減速操作をすることなく、すなわち運転者に負担を与えることなく車速を調整できる。また、交通信号を不要に停止することがないことにより車両の省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。一方、最大車速Vfが車速V0以上の場合、式5において最大車速Vfが平均減速度Aに加えて交通信号の一定距離手前で停止することのできる最大減速度Bにより算出されていることから、この最大車速Vfによって交通信号の一定距離手前で、交通信号を通過することができる。このとき、交通信号の停止位置の一定距離手前を車両が通過する際に交通信号が青の表示をするため、交通信号の通行可表示が交通信号の停止位置になってしまう場合に運転者が感じる不安を減らし、また、過度な減速操作をすることなく、すなわち運転者に負担を与えることなく車速を調整できる。また、交通信号を不要に停止することがないことにより車両の省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。
【0065】
つぎに、図6に記載した車速制御装置の制御の他の例について、図6のフローチャートに基づいて説明する。この図6のフローチャートは、この発明に係る車速制御装置の第3の制御例を表している。まず、車速センサ15により検出された車速V0と人工衛星44に連動したGPSから発進される電波をGPSアンテナ45により受信して、GPS受信機47にデータが送られることにより得られる自車両と交通信号との距離Lの情報が取得される(ステップS41)。そして地上情報発信(交通管制)システム50より送られる信号機タイムテーブルの情報の中の交通信号が青から黄に切り替わる時間Tyと交通信号が赤から青に切り替わる時間Tbとの情報が取得される(ステップS42)。
【0066】
ステップS41により得られた情報から自車両と交通信号との距離Lが0以上であるか否かが判別される(ステップS43)。このステップS43は自車両から交通信号までの距離が0以上であるか否かにより、自動速度制御を実行する必要性があるか否か判断するために実行される。この自車両と交通信号との距離Lは例えば、自車両から交通信号で停止する際の停止位置までの距離であって、この停止位置は交通信号のある路上に白線などで描かれる停止線でもよく、また第1情報検出装置33および第2情報検出装置34による路車間通信により定められた停止位置でもよく、さらに低速車間距離制御システムなどによる前方車両の位置から定められる停止位置でもよい。このステップS43において肯定的に判断された場合にはステップS45が実行される。ステップS43において否定的に判断された場合には、自動速度制御フラグがOFFされる(ステップS44)。つぎに自動速度制御フラグがONか否かが判別される(ステップS45)。ステップS45において肯定的に判断された場合には後述するステップS55へと移行する。
【0067】
ステップS45において否定的に判断された場合には、運転者(ドライバ)が通常の制動時に行っている制動に基づく平均減速度Aが演算される(ステップS46)。そして、運転者が通常の制動時に行っている最大減速度Bが演算される(ステップS47)。さらに、バッテリ状態、回生モータの温度や回転数などから算出される発生可能な回生制動による減速度Cが演算される(ステップS48)。つぎに現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できるか否かの判断が、第1の制御例と同じように式1により判断される(ステップS49)。
【0068】
ステップS49において否定的に判断された場合つまり現在の走行状態で交通信号が黄に切り替わる前に交通信号を通過できると判断された場合にはリターンされ、逆に肯定的に判断された場合つまり現在の走行状態では交通信号が黄に切り替わる前に信号機を通過できないと判断された場合には、ステップS46により求められた平均減速度A以下で交通信号の停止位置に停止できるか否かの判断が、第1の制御例と同じように式2により判断される(ステップS50)。
【0069】
ステップS50において否定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止位置で停止できないと判断された場合には運転者へブレーキ操作するようにスピーカ36やディスプレイ35により告知され(ステップS52)、リターンされる。ステップS50において肯定的に判断された場合つまり平均減速度A以下で交通信号の停止位置で停止できると判断された場合にはスピーカ36やディスプレイ35により自動速度制御開始可能であることを告知される(ステップS51)。つぎに運転者による自動速度制御開始指示があるか否かが判別される(ステップS53)。
【0070】
ステップS53において否定的に判断された場合つまり運転者から自動速度制御を開始しない場合、車両ECU23が指示がないことからリターンされる。ステップS53において肯定的に判断された場合つまり運転者のクルーズコントロールシステム操作装置51の操作により、自動速度制御を開始をすると車両ECU23が指示結果を受け取った場合には、車両ECU23で自動速度制御フラグがONされる(ステップS54)。
【0071】
ついでステップS45において肯定的に判断された場合もしくはステップS54で自動速度制御フラグがONされたのちに、ステップS48で演算された回生可能減速度CがステップS46により求められた平均減速度A以上か否かが判断される(ステップS55)。ステップS55で肯定的に判断された場合つまり回生制動のみによる減速が可能な場合には最大車速Vfが、第2の制御例と同じように式5によって演算される(ステップS57)。
【0072】
ステップ41で取得した車速V0が式5によって演算された最大車速Vf以下であるか否かが判断される(ステップS60)。ステップS60において肯定的に判断された場合つまり最大車速Vfが車速V0以上であり、車速V0では交通信号を停止せずに通過できないと判断された場合には、車速Vfで走行するための駆動力が出力され(ステップS63)、リターンされる。ステップS60において否定的に判断された場合つまり最大車速Vfより車速V0が大きい場合にはステップS55で肯定的に判断されたことから、交通信号を停止せずに通過可能な減速度Aとなる回生制動力が出力され(ステップS64)、リターンされる。
【0073】
一方、ステップS55において否定的に判断された場合つまり回生可能減速度Cが平均減速度Aより小さい場合には、
(V0/3.6)/(2×C)≦L・・・(式6)
が判断される(ステップS56)。
【0074】
ステップS56において肯定的に判断された場合つまり回生可能減速度Cが平均減速度Aより小さく、かつ自車両と交通信号までの距離Lが回生可能減速度で制動している自車両が進行する距離以上である場合には、平均減速度Aより小さい回生制動でも信号機の停止位置で停止できるため、最大車速Vfを、
【数3】

より求める(ステップS59)。
【0075】
ついでステップS41で取得した車速V0がステップS59で求められた最大車速Vf以下であるか否かが判断される(ステップS62)。このステップS62において肯定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vf以下である場合には、車速Vfで走行するための駆動力が出力され(ステップS63)、リターンされる。一方、このステップS62で否定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vfより大きい場合には、ステップS48で演算された、交通信号を停止せずに通過可能な減速度Cとなる回生制動力が出力される(ステップS66)、リターンされる。
【0076】
一方、ステップS56において否定的に判断された場合つまり回生可能減速度Cが平均減速度Aより小さくかつ、自車両と交通信号までの距離Lが回生可能減速度で制動している自車両が進行する距離より小さい場合には回生制動のみによる減速度Cでは交通信号の停止位置で通過できないため、最大車速Vfを第1の制御例と同じように式5によって求める(ステップS58)。
【0077】
つぎにステップS41で取得した車速V0がステップS58で求められた最大車速Vf以下であるか否かが判断される(ステップS61)。このステップS61において肯定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vf以下である場合には、車速Vfで走行するための駆動力が出力され(ステップS63)、リターンされる。一方、このステップS61で否定的に判断された場合つまり車速V0が最大車速Vfより大きい場合には、ステップS46で演算された減速度Aとなる回生制動力および機械式制動力が出力される(ステップS65)、リターンされる。
【0078】
上記に示したこの発明に係る車速制御装置およびその第3の制御例によれば、車両が交通信号を通過する前に車速センサ15、第1情報検出装置33、第2情報検出装置34などにより検出された情報に基づいて、車両ECU23が車速V0と距離Lと時間Ty,Tb等の値を算出することができ、その得られた値とともに求められた平均減速度Aによって交通信号を通過できるか否か、および平均減速度Aによって交通信号手前に停止できるか否かの判断を行うことができる。そして交通信号を通過できない場合には運転者に制動の指示をディスプレイ35とスピーカ36とにより与えることができる。また交通信号を通過できる場合にはクルーズコントロールシステム操作装置51により運転者のクルーズコントロールを実行するとの指示が発せられた場合には回生可能減速度Cと平均減速度Aとの大小関係に基づいて、式5、式7により求められた最大車速Vfまで速度が調整される。
【0079】
第3の制御例で示したフローチャート(ステップS55〜ステップS66)により回生可能減速度Cの制動能力を付加した制動が行われて、交通信号の停止位置の一定距離手前を車両が通過する際に交通信号が青の表示をするために、回生できるとともに、交通信号の通行可表示が交通信号の停止位置になってしまう場合に運転者が感じる不安を減らし、また、過度な減速操作をすることなく、すなわち運転者に負担を与えることなく車速を調整できる。また、交通信号を不要に停止することがないことにより車両の省エネルギ化や交通渋滞が緩和されてドライバビリティが向上する。
【0080】
上記図1,3,6に示したフローチャートにより表された自車両の制御は車両に搭載された各種のセンサおよびGPS受信機47に受信された情報および交通管制情報を受け取る地上情報受信機43が受信した情報をデータ化したものが車両ECU23に送信されて、クルーズコントロールシステム操作装置51の操作状態により車両ECU23が判断を行って、自車両の各種駆動装置類および各種制動装置類が適切に制御されることにより上記フローチャートに示したクルーズコントロールシステムが作動するようになっている。
【符号の説明】
【0081】
Vf…最大車速、 23…車速制御装置、車速算出手段(車両電子制御装置)、 43…交通信号情報取得手段(地上情報受信機)、 51…クルーズコントロールシステム操作装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方の交通信号の表示が切り替わるタイミングに応じて車速を制御する車速制御装置において、
前記交通信号が通行許可表示に切り替わるまでの時間を検出する検出手段と、
その検出手段で検出された前記時間に、前記交通信号が停止表示である場合に車両が停止すべき停止位置から所定距離手前の位置を通過する際に前記交通信号の停止表示が通行許可表示となる最大車速を求める車速算出手段と、
前記車速算出手段で算出された車速を指示する車速指示手段と
を備えていることを特徴とする車速制御装置。
【請求項2】
前記停止位置から手前の前記所定距離は、前記車両の走行の際に得られている過去の制動時の減速度で減速した場合に前記停止位置までに停止可能な距離であることを特徴とする請求項1に記載の車速制御装置。
【請求項3】
前記車速算出手段は、前記交通信号に向けて減速する制御開始当初に運転者の過去の制動による減速度の平均値である平均減速度で減速し、かつ前記停止位置から所定距離手前の位置に達する直前に運転者の過去の制動による減速度の最大値である最大減速度で減速するとした場合に、前記最大減速度で減速することにより前記停止位置で前記車両を停止させることが可能な車速であって、かつ前記所定距離手前の位置を車両が通過する時点で前記交通信号の停止表示が通行許可表示となる最大車速を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の車速制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−247703(P2010−247703A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100280(P2009−100280)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】