説明

転がり軸受の診断方法

【課題】低速回転領域における転がり軸受で転動体の周速が遅い場合にも軸受の異常を精度よく検出する。
【解決手段】転がり軸受の稼働時に発生するAE波形信号をAEセンサを用いて検出し、該AE波形信号をエンベロープ処理して包絡線成分を得、該包絡線成分を増幅する処理を行い、該増幅処理後の包絡線成分の値が所定のしきい値を超えたとき、転がり軸受に異常が発生していると判断する。かかる診断方法においては、転がり軸受の診断時におけるAE波形の計測時間Tを、回転軸が所定の判定回転数となる時間に設定することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の診断方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、特に低速回転する転がり軸受の異常を検出するための診断解析手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラントにおける撹拌機や押出機、樹脂や繊維、製鉄プラントにおける圧延ロールや延伸機、製紙プラントにおける抄紙機など、低速回転設備は大型で重要設備とされているものが多く、軸受損傷などによる突発故障がもたらすプラントへの影響は多大となるケースが多い。また、大型設備であるために軸受にかかる荷重も大きく、軸受が破損に至った場合、損傷部位が軸受だけにとどまらず、主軸の損傷や変形、軸受の破損破片の噛み込みによる歯車の破損といった二次的な損失まで引き起こす場合も少なくない。
【0003】
このような事態を回避するための転がり軸受の診断技術として、従来、軸受の振動加速度を検知し、検知信号が異常波形を示してそのレベルが高くなった場合には軸受に異常が生じていると判断するものがよく知られている。
【0004】
また、固体が変形もしくは破壊する際、固体内部に微細な割れが入り、当該割れが成長していく過程で割れの進行に伴って生じる弾性波(超音波)であるAE(Acoustic Emission)を利用した軸受診断技術も提案されている。音響を用いる軸受診断技術では、例えば、軸受の異常から発生するAE波をAEセンサにより電気信号に変換し、包絡線検波器により包絡線成分を取り出すとともに、この包絡線波形が予め設定された単位時間あたりにしきい値を超えた個数を計数し(事象計数法)、この個数がある個数を超えた場合に異常と判断する(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3145845号公報
【特許文献2】特公平6−5196号公報
【特許文献3】特公平7−26941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば100回転/分以下程度の低速回転領域になると、AE波形を単に増幅させるだけでは環境ノイズや計測器ノイズも一緒に増幅されてしまうため、異常検出が困難になる。
【0007】
そこで、本発明は、低速回転領域における転がり軸受で転動体の周速が遅い場合にも軸受の異常を精度よく検出することができる転がり軸受の診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するべく種々の検討を行った本発明者は、課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0009】
本発明にかかる転がり軸受の診断方法はかかる知見に基づくものであり、転がり軸受の稼働時に発生するAE波形信号をAEセンサを用いて検出し、該AE波形信号をエンベロープ処理して包絡線成分を得、該包絡線成分を増幅する処理を行い、該増幅処理後の包絡線成分の値が所定のしきい値を超えたとき、転がり軸受に異常が発生していると判断する。
【0010】
一般に、軸受の振動加速度を利用して異常を検出する軸受診断技術の場合、低速回転領域においては検出信号が雑音レベルに埋もれて信号弁別が困難になる(図4参照)。また、AEを利用した軸受診断技術の場合、AE波形を単に増幅させるだけではやはり異常検出が困難である。ところが、本発明のようにAE波形信号をいったんエンベロープ処理して得られた包絡線成分を増幅すると、きわめて低速の回転領域であっても信号弁別が可能になる(図7参照)。これによれば、低速回転領域における転がり軸受であって転動体の周速が遅い場合にも、当該転動体と軌道面に発生した傷との衝突により発生するレベルの低い波形信号を検出することが可能となる。
【0011】
かかる診断方法においては、転がり軸受の診断時におけるAE波形の計測時間Tを、回転軸が所定の判定回転数となる時間に設定することが好ましい。この場合、計測時間Tを、
T=(60/n)×m
T:計測時間(sec)、n:回転数(rpm)、m:判定回転数(回転)
により算出して設定することができる。
【0012】
また、本発明にかかる転がり軸受の診断方法は、特に、回転軸が100回転/分以下の低速回転をする転がり軸受を対象として好適である。
【0013】
また、上述の転がり軸受の診断方法において、波形信号を時定数の大きい包絡線検波器および時定数の小さい波形整形回路でパルス波形に整形し、当該計数されたパルス発生個数が予め定めた個数よりも小さい時には、この時の波形信号は雑音と判断し、当該雑音信号と判断された期間の波形信号を無効化することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低速回転領域における転がり軸受で転動体の周速が遅い場合にも軸受の異常を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す、転がり軸受の診断装置の概略構成図である。
【図2】AE法による低速転がり軸受の診断装置における測定系を示す図である。
【図3】雑音除去法の適用例を示す信号波形図である。
【図4】外輪軌道面に傷を付した転がり軸受と正常な転がり軸受とにおける回転数と振動加速度値との関係を示すグラフである。
【図5】転がり軸受の加速寿命試験に用いた実験装置を示す図である。
【図6】本発明の一実施例における供試軸受の設置状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施例における測定系の一例を示すブロック図である。
【図8】回転数10rpmの加速寿命試験におけるAE事象率と加速度事象率の推移を示すグラフである。
【図9】AE波形と加速度波形を示す(I)480min、(II)510min、(III)580minの各グラフである。
【図10】480min(図8中の(I))におけるAEエンベロープスペクトルを示す図である。
【図11】510min(図8中の(II))における(A)AEエンベロープスペクトルと(B)加速度エンベロープスペクトルを示す図である。
【図12】580min(図8中の(III))における(A)AEエンベロープスペクトルと(B)加速度エンベロープスペクトルを示す図である。
【図13】異物混入と油ぎれ、外輪傷及び正常の各軸受のAEエンベロープ波形のピーク値を示すグラフである。
【図14】(A)外輪はく離、(B)異物混入、(C)油ぎれ、(D)正常の各軸受から回転数1.1rpm において得られたAE波形を示すグラフである。
【図15】(A)外輪はく離、(B)異物混入、(C)油ぎれ、(D)正常の各異常の回転数10rpm におけるエンベロープスペクトルを示すグラフである。
【図16】転がり軸受におけるはく離の進展時に得られたAEスペクトルを示す図である。
【図17】人工傷を付した転がり軸受を試験した場合のAE波形を周波数分析して得られたAEスペクトルを示す図である。
【図18】外輪はく離軸受を用いて低速回転数領域の検出感度を評価した結果得られたエンベロープスペクトル(縦軸は対数)を示す図である。
【図19】回転数1rpmのときの外輪はく離時のエンベロープスペクトルの一例を示す、(I)60dB、(II)80dB、(III)80dB+10dB に増幅した場合の各図である。
【図20】AEによる計測を実施した圧延ロールの支持軸受を示す図である。
【図21】図20の測定点1と測定点2におけるAE波形とエンベロープ波形を示す図である。
【図22】図20の測定点1と測定点2におけるAEエンベロープピーク値のトレンドを示す図である。
【図23】図20の測定点1と測定点2における事象数の比較結果を示す図である。
【図24】図20の測定点1と測定点2におけるAEエンベロープスペクトルの比較結果を示す図である。
【図25】AE法による診断を実施した横型のサイクロ減速機(登録商標)およびその測定点を示す図である。
【図26】サイクロ減速機における低速側からの測定点(3)〜(7)のAEイベントカウント数(事象数)とエンベロープピーク値を示す図である。
【図27】測定点(3)における最大周波数100Hz(fmax=100Hz)のAEエンベロープスペクトルを示す図である。
【図28】測定点(3)における最大周波数20Hz(fmax=20Hz)のAEエンベロープスペクトルを示す図である。
【図29】AE法による診断を実施した攪拌機およびその測定点を示す図である。
【図30】攪拌機の軸受部を診断した際の各時点でのAEエンベロープスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1等に本発明にかかる転がり軸受の診断方法の実施形態を示す。転がり軸受1は、各種プラントにおける大型の低速回転設備等において適用される軸受装置であり、内輪4、外輪5、転動体6、保持器(リテーナ)7等からなる(図6等参照)。このような転がり軸受1を診断するための本実施形態における診断装置10は、回転数検出センサ11と、AE(Acoustic Emission)センサ12と、モニタリング装置13と、通報装置17を備えている。以下においてはまずこの診断装置10の構成の概略を説明する(図1等参照)。
【0018】
回転数検出センサ11は、転がり軸受1の回転軸2の回転数を検出するセンサである。例えば本実施形態では、回転軸2の表面に接しているローラー11aとローラー11aに直結しているロータリーエンコーダ11bにて構成している回転数検出センサ11により回転軸2の回転数を検出する(図1参照)。ロータリーエンコーダ11bにより検出されたデータは、モニタリング装置13へと送信される。実機における回転軸2は、回転数が制御されているものの、実際には電圧変動などの影響を受けて回転数が変動していることが多い。このような回転数検出センサ11によれば、回転軸2の回転数が刻一刻と変動している場合にもパルスを利用して回転数を精度よく検出することが可能である。
【0019】
AEセンサ12は、転がり軸受1の軌道面に生じた傷の進展を検出するためのセンサである。例えば本実施形態では、当該AEセンサ12を転がり軸受1の軸受箱3に取り付け、当該転がり軸受1から発生するAEを検出することとしている(図1参照)。このAEセンサ12による検出データは、モニタリング装置13へと送信される。
【0020】
モニタリング装置13は、上述の回転数検出センサ11からの送信データおよびAEセンサ12からの送信データに基づき転がり軸受1の診断を行い、尚かつ異常が発生していると判断した際にはその結果を通報装置17に送信する装置である。具体的には、本実施形態のモニタリング装置13は、AEセンサ12によって検出されたAE波形データを増幅した後、フィルターを通して所定の周波数範囲データを取り出す。この波形データを包絡線(エンベロープ)処理した後、さらに増幅する。回転数検出センサ11から得られた回転数データに基づいて自動計算された単位時間毎に、このエンベロープ波形が予め設定したしきい値を超えた個数を計数する。この計数値が判定個数を超えた時点で異常が発生していると判断する。また、単位時間内に発生したエンベロープ波形の最大値をモニタリングし、このレベルにおいても異常を判断する。異常発生時には、エンベロープ波形をフーリエ変換することで周波数領域のパワースペクトルに変換し、転がり軸受1の諸寸法と回転数から自動計算される異常時の周波数と比較される。この発生周波数と異常周波数の計算値を比較することで、異常の種類が判別される。本実施形態のモニタリング装置13には、上記の演算処理を行う装置(例えばパーソナルコンピュータ)が接続されている。
【0021】
通報装置17は、転がり軸受1に異常が発生しているとモニタリング装置13が判断した際に当該判断結果を出力し、ユーザや関係者らに通報するための装置である。通報装置17は、例えば光を点滅させたり、警報音を鳴動させたりすることによって外部に通報するものでもよいし、演算処理装置15の画面を利用して関係者らに通報するもの等であってもよい。
【0022】
続いて、診断装置10における雑音除去回路20について説明する(図2参照)。
【0023】
この診断装置10においては、AEセンサ12と前置増幅器14とでプリアンプ内蔵AEセンサが形成されている。このプリアンプ内蔵AEセンサの後段に設けられたバンドパスフィルタ16は、入力信号の解析に不要な低周波成分および高周波数成分を除去する(図2参照)。バンドパスフィルタ16の出力信号は、増幅器18により増幅された後、雑音除去回路(ノイズ除去回路)20の事象計数回路22およびリングダウン計数回路30に与えられる。リングダウン計数回路30には比較器が用いられており、例えばリングダウン計数法(計測単位時間内のしきい値を越えた回数を計数する手法)により、バンドパスフィルタ16の出力信号のレベルが予め定めた第1のしきい値L1よりも大きい間だけオンとなるパルス信号COMPを発生する(図2参照)。
【0024】
本実施形態における雑音除去回路20では、リングダウン計数回路30から出力されるパルス信号COMPと事象計数回路22の出力信号コンパレータの突き合わせにより雑音成分を除去する。増幅器18にて増幅されたAE生波形は、リングダウン計数回路30と事象計数回路22の2つの回路で同時に平行して処理が行われる。つまり、事象計数回路22では包絡線処理回路24を通して包絡線波形に整形された後に第2増幅器26でさらに増幅され(SIG)、SIGとしきい値L2と比較する。これを超えた信号は異常信号としてコンパレータによりパルス信号に変換される。リングダウン計数回路30では、事象計数回路22で用いたものと同じAE生波形をしきい値L1と比較し、これを超えている信号を異常信号としてパルス信号(COMP)に変換する。SIG波形がしきい値L2を超えている時間(継続時間)tiを求め、この継続時間ti内にリングダウン計数回路30から出力されるパルス信号COMPがキャンセル個数Nc個より少ない場合は雑音として除去され、Nc個以上の場合は信号として判別され、EVENT信号としてカウンタ38に供給される(図2参照)。
【0025】
また、事象計数回路22のコンパレータ28は第2増幅器26で増幅された包絡線波形のレベルと第2のしきい値L2を比較し(図2参照)、L2を超えた場合に異常信号としてパルス波形に変換する。
【0026】
本実施形態では、リングダウン計数回路30ではAE生波形がしきい値L1を超えた信号をすべてパルス信号(COMP)に変換する。事象計数回路22による包絡線処理後の包絡線波形がしきい値L2を超えている継続時間内に発生したCOMP信号のパルス個数がキャンセル個数よりも小さい場合には、この間のSIG信号から変換されたコンパレータ信号は雑音成分と判定する。雑音成分と判定された信号は除去され、EVENT信号となる。
【0027】
また、上述したカウンタ38および正常/異常判定回路(図示省略)により単位時間内の信号EVENTの発生個数を計数することにより軸受異常の有無を判定する。
【0028】
このように構成された軸受診断装置10の動作を次に説明する(図3参照)。AEセンサ12の発生する計測信号はバンドパスフィルタ16を通過するときに周波数成分が無効化により除去され、図3で示すAE生波形が得られる。図3に示すAE生波形は転がり軸受1の一部の亀裂破損により生じた異常信号と雑音が混在した波形であり、正常な状態では波形レベルは一定レベルを保つ。AE生波形はリングダウン計数回路30により整形されて図3のCOMP信号波形が得られる。
【0029】
一方、事象計数回路22の出力信号としては包絡線処理回路を経て得られた図3のSIG信号からしきい値L2を超えたものをパルス信号に変換したコンパレータ信号波形が得られる。コンパレータ信号波形が所定レベル以上となる継続時間t1、t2、…、の間、コンパレータ28からの出力信号(図3のコンパレータ信号波形)がオンとなる。このため、この間、コンパレータ信号がリングダウンカウンタに供給される。キャンセル個数を例えば3に設定すると、リングダウンカウンタ34はパルス信号が入力する毎に初期値3から数値1を減算(デクリメント)し、計数値が数値0になったときにEVENT信号はオンとなる。図3のAE生波形が雑音ではない異常波形の場合はCOMP信号のパルス個数が数値3以上となるので、EVENT信号はオンとなる。
【0030】
一方、AE生波形の中の雑音成分に対応するCOMP信号は一定時間内に発生するパルス個数が数値3より小さくなる。このため、リングダウンカウンタは計数値が0とならず、EVENT信号はオフのままである(図3参照)。このことによりEVENT信号からは雑音信号成分が除去される。カウンタ38はEVENT信号の発生個数を計数し、正常/異常判定回路(図示省略)は単位計測時間内に計数値が異常判定個数に達したときに異常発生信号を発生する。この異常発生信号がアラーム(警報)信号として外部に出力され、例えば上述の通報装置17により転がり軸受1の異常発生が知らされる。
【0031】
上述した本実施形態の診断装置10によれば、AE波形信号をいったんエンベロープ処理して得られた包絡線成分を増幅することにより、例えば3回転/分程度といったきわめて低速の回転領域であっても信号弁別することが可能になる。したがって、低速回転領域における転がり軸受1であって転動体6の周速が遅い場合にも、当該転動体6と軌道面に発生した傷が進展する時に発生する音響(AE)を検出することにより発生するレベルの低い波形信号を検出することが可能となる。
【0032】
一方、第2増幅器26の出力波形の回転数nと判定回転数mから算出した単位時間TにおけるPeak値(最大値)を求め、あらかじめ定めた基準値を比較して異常発生後の劣化度をモニタリングし、軸受交換時期を検討するための余寿命予測を行う。
【0033】
それと平行して、第2増幅器26の出力波形をFFTにより周波数解析を行う。その発生周波数と回転数と軸受仕様(ピッチ円径,転動体径,接触角,転動体数)により算出した周波数と比較する事で、軸受キズ、嵌め合いガタ、潤滑不良といった異常種類を判別する。この結果を基に、軸受交換、はめあい修正、注油といったメンテナンス作業を実施する。
【0034】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例1】
【0035】
実験装置を製作し、上述した転がり軸受1の診断方法を検証するための実験を行った。以下、実施例として説明する。
【0036】
(振動加速度による低速軸受診断の限界)
深みぞ玉軸受の外輪軌道面に電気ペンとダイヤモンドヤスリにて人工的に傷を付したものと正常なものについて、回転数1rpm から1500rpm において発生した周波数10k〜30kHz 領域の加速度値の比較を図4に示す。なお、図4中の加速度O/A値の単位gは、1g=9800mm/sec2を表すものである。
【0037】
試験後に供試軸受を切断して顕微鏡で傷の大きさと深さを計測したところ、転動体6が通過する軌道面中央部で幅1.02mm、深さ0.15mm であった。図4より100rpm 以下の低回転数領域では正常軸受と外輪傷軸受の差異が見られなくなっていることがわかる。この原因としては、まず、回転数が低いために転動体6と軌道面の傷の衝突のエネルギーが低くなり、衝撃により発生する加速度レベルがこれに伴って低くなり、計測器や環境の雑音レベルに埋もれてしまうことが考えられる。さらに、低速回転の場合、平均化処理などの信号処理を行うと、転動体6と軌道面の傷の衝突から発生する低いレベルの衝撃波形と次の転動体6が傷を通過する際に発生する衝撃波形との間のインターバルが長くなるためにさらにSN比が低くなることも考えられる。以上の状況を鑑みれば、低速回転数領域における転がり軸受1の状態監視は十分だとはいえない。
【0038】
(低速回転における加速寿命試験)
<実験装置>
低速回転数で回転する転がり軸受1が正常な状態から転がり疲労はく離の発生に至るまでの過程をAEと振動加速度によるモニタリングをして比較する実験を実施した。この加速寿命試験に用いた実験装置を図5に示す。
【0039】
回転数はディスコ変速機付きモータ(3.7kW、1420rpm)102により0〜400rpm の連続可変でタイミングベルト104を介して供試軸受1’を回転させ、荷重を、油圧シリンダ108にて軸方向に静止側軸受ハウジング110から回転側軸受ハウジング112へ押す形で加える。供試軸受1’は回転側軸受ハウジング112と静止側軸受ハウジング110に挟まれた形で設置され、AEセンサ12及び圧電型振動加速度センサ(図示省略)は静止側軸受ハウジング110に設置されている。
【0040】
<供試軸受>
供試軸受1’はスラスト玉軸受をシミュレートしたもので、スラスト玉軸受の内輪4と外輪5の背面とを組み合わせたものである。本実施例では、外輪5の背面にて転動体6を点接触させることで接触圧力を高め、さらに転動体6の数を通常の15個から1/3の5個に減らして1個にかかる荷重を増やした(表1、図6参照)。なお、潤滑材にはグリス(日石エピノックグリス)を用いた。
【表1】

【0041】
本実施例では、図6に示す状態で荷重19.6kN をかけて試験を行っており、点接触となる外輪5側のHertz(ヘルツ)最大接触圧力の計算値は9.86GPa と過酷な条件となった。ただし、外輪面は塑性変形するので実際には計算値よりも低い値となる。
【0042】
<測定系>
実験に用いた測定系を図7に示す。センサとして例えば圧電型加速度センサを用いる場合は周波数範囲10k〜30kHz とし、AEセンサ12を用いる場合は広帯域センサで周波数範囲100k〜1MHz とした。加速度センサにて検出された信号は前置増幅器14にて増幅された後、バンドパスフィルタ16にてそれぞれの測定周波数範囲にカットされ、さらに増幅器18で増幅された信号は弁別器19にて予め設定されたしきい値を超えた信号を弁別し、カウンタにて計数した。計数法としては単位時間内に包絡線波形がしきい値を超えた個数を計数する事象計数法を採用した。計測条件を表2に示す。
【表2】

【0043】
<試験条件>
軸受において、はく離を発生させるまでに要する時間を予めある程度把握しておく必要がある。特に低速回転では長時間を要する可能性が高く、最初から低速回転で試験を実施すると非常に長い試験時間が必要となるので、ある程度までを高速回転で行うことで疲労させ、残りの寿命について低速回転で試験を開始するという試験方法を選択した。寿命推定時間の98%を回転数400rpm で行い、外輪面にはく離が発生していないことを顕微鏡で確認したものを供試軸受1’とし、内輪4と保持器7を新品に交換してから、残りの2%の寿命について回転数を10rpm に設定して試験を開始した。
【0044】
<試験結果>
正常状態からはく離が発生し、目視によるはく離長が約6mm に至るまで回転数10rpm による加速寿命試験を行い、AEと加速度の異常検出能力の優位性比較を行った。低速回転数(10rpm)で試験する前に予め回転数400rpm にて18 分間回転させることで外輪面を疲労させ、目視検査にてはく離がまだ発生していないことを確認した後、内輪4と玉(転動体6)、保持器7を新品に交換してから試験に入った。図8に、回転数10rpm に再設定してからその630min 後に外輪軌道面に転がり疲労はく離が発生して試験を停止するまでのAEと加速度のそれぞれの事象率(予め設定されているしきい値を超える信号を単位時間について計数して数値で表したもの)の推移を示す。事象数を計数する計測単位時間を10min(100 回転する時間を1単位)と設定して、AEと加速度いずれかの事象率(本明細書ではこれらをそれぞれAE事象率、加速度事象率ともいう)が100個を超えた時点(1回転に1個の発生が確認された時点)を警報点として、これを超えた時点で試験を中断してはく離の発生の有無を確認する方法を採った。10min で試験を開始してから480min を経過した時点で初めてAEの事象率が100 個を超えたため、試験を停止して供試軸受1’を確認したところ、外輪軌道面に約1.5mm の微小なはく離を確認した。その後、試験を再開すると500min 以降はAE計数率が100 個を超え続けたが、加速度はほとんど計数されなくなった。560min にて2回目の停止をして外輪軌道面を確認するとはく離長が約3.0mm に進展していた。再度試験を開始するとAE事象率が急増し、加速度事象率も発生し始めたが、その数は580min で200 個以上を計数したものの他は100 個以下が続いて630min の試験終了に至った。最終的には外輪はく離の長さは約6.0mmまで進展していた。
【0045】
このAE事象率が発生した480min 時点(図8中の(I))及びその後の510min 時点(図8中の(II))、580min 時点(図8中の(III))におけるAE波形(AEセンサにより検出された波形)と加速度波形(AEセンサ以外の加速度センサにより検出された波形)を図9に示す。480min 時点で初めて突発型のAE波形と加速度波形が発生した。その後の510min においても突発型AE波形は発生しているものの、加速度波形は検出されなくなっている。つまり、480min 時点(図8中の(I))から510min 時点(図8中の(II))へのはく離進展の過程では突発型加速度波形は検出されていない。580min では加速度波形もはく離の進展から発生していると思われる突発型波形が発生する様になっている。
【0046】
図10にAEと加速度のエンベロープスペクトル(エンベロープ処理後の包絡線波形のスペクトル)を示す。本実施例では、0.425Hz 及びその2倍成分が発生している。外輪5に傷がある場合の繰り返し周波数fout は数式(1)にて求まる。
【数1】

ここで、fr:回転周波数(=0.167Hz)
D :ピッチ円直径(mm)
d :転動体直径(mm)
Z :転動体個数(=5 個)
α :接触角(=90deg)
スラスト玉軸受の場合、接触角が90°であるので数式(1)は、
【数2】

となる。
【0047】
つまり、外輪傷の計算値は0.425Hz で図10の値と一致しており、外輪はく離の発生によりAE波形が周期性を持っていることがわかる。これは、転動体6が荷重を受けてはく離部に接触することではく離の進展がおこり0.425Hz 間隔で規則的に転動体6がはく離部を通過するために周期性を持つものと考えられる。510min 時と580min 時に得られたAEと加速度のエンベロープスペクトルを図11、図12に示す。突発型の加速度波形が発生していない510min ではエンベロープスペクトルでも周期性を示すスペクトルは発生していない。つまり、回転数10rpm においてもはく離異常を検出できない加速度に対しAEでは明確に異常検出が可能であり、はく離の進展から発生する突発型のAE波形が周期性を持って発生することに着目して異常診断が可能である。
【実施例2】
【0048】
(潤滑不良(異物混入と油切れ)に対するAE特性)
転がり疲れ寿命を促進する要因として、外部からの異物の侵入や油量不足などの潤滑状態の悪化があげられる。これらの異常を早期に検出し、はく離に至る前に対処することは非常に重要である。これらの異常を人為的に作り、低速回転数領域においてAEにて検出できるか否かを確認する試験を行った。異物混入は正常なスラスト玉軸受を正規な状態で設置しグリース1.5gに対してA.C.Fine Dust0.3g を混入したものを潤滑剤として使用した。油切れは異物混入時と同じスラスト玉軸受のグリース量を0.05g に減量して試験を開始し、回転数400rpm,荷重19.6kNにて約1時間回転し、AEのO/A 値が190mV から400mV に上昇して異音が発生し始めた状態から低速に設定して試験を行った。回転数は1.1rpm から50rpm まで変化させて実施した。軸受の玉数(転動体6の数)は通常の15 個で荷重は19.6kN 一定とした。Hertz の最大接触圧力は2.76GPa である。また、比較対象として外輪はく離も試験した。外輪はく離は、はく離を進展させるために玉数を5個へ減らして接触圧力を9.86GPa に上げている。
【0049】
図13に異物混入と油ぎれ、外輪傷及び正常の各軸受のAEエンベロープ波形のピーク値を示す。各異常軸受とも正常軸受よりも明らかに高い値を示しており、1rpm 程度の超低速回転数領域からAEエンベロープピーク値での異常診断が可能である。図14に回転数1.1rpm において各異常軸受から得られたAE波形を示す。各異常とも突発型の波形が発生している。異物が押し潰された状態や油膜切れによる金属接触状態により外輪はく離と同様の突発型波形が発生しており、波形の形だけでは異常の種類を判別することは困難と思われる。また、各異常の回転数10rpm におけるエンベロープスペクトルを図15に示す。外輪はく離軸受では外輪傷周波数fout 及びその高調波の発生が見られるが、異物混入や油切れでは周期性は見られず特別なスペクトルの発生は見られない。
【実施例3】
【0050】
(AEによる低速軸診断)
AEによる低速軸の診断に際し、はく離軸受進展時の周波数成分、エンベロープ波形の増幅、計測単位時間のそれぞれについて検討した。以下、実施例3として説明する。
<はく離軸受進展時の周波数成分>
既に外輪軌道面にはく離が発生している軸受に荷重をかけて、回転数50rpm においてはく離を進展させる試験を実施した。この時、目視によるはく離長が約2mm から約4mm に進展しており、この過程で得られたAE波形を周波数分析した結果を図16に示す。数10kから約500kHz まで広く分布していることがわかった。
【0051】
また、同じ型式の軸受にダイヤモンドヤスリで溝を作成した人工傷軸受を50rpm で試験した場合のAE波形を周波数分析した結果を図17に示す。試験前後で軸受傷には変化が見られなかった。はく離軸受と異なり100kHz 以下の成分がほとんどであった。
【0052】
以上より、はく離の進展により発生する周波数成分は約100k〜500kHz であると考えられる。従って、診断装置10の測定周波数範囲はこの周波数範囲を含めた100k〜1MHz とし、センサは広帯域センサとした。
【0053】
<エンベロープ波形の増幅>
外輪軌道面にはく離が発生している軸受(外輪はく離軸受)を用いて低速回転数領域の検出感度を評価した結果を図18、図19に示す。
【0054】
AE波形を増幅度60dB で増幅した場合、回転数10rpm 以下ではエンベロープスペクトルにて全く外輪傷周波数fout の発生が見られない(図18中の□参照)。80dB に増幅度を上げた場合では回転数5rpm までは外輪傷周波数fout の発生が見られたが、そのレベルは非常に低い結果となった(図18中の△参照)。増幅度をこれ以上上げると現場計測時に環境ノイズも上昇してしまい好ましくないので、本実施例ではエンベロープ波形を増幅する方法を採った。その結果、回転数の低下に伴って外輪傷周波数レベルも低下するものの、明確に傷の発生をとらえることができた(図18中の●参照)。
【0055】
このように、80dB 以上にまで増幅したAE波形をエンベロープ処理して、さらに10dB 以上増幅させると回転数転がり軸受1rpmでも転がり疲労はく離異常が検出可能となる(図19等参照)。以上から、超低速回転数領域を診断するには、AE波形を増幅する第1増幅器18(例えば80dB)にエンベロープ波形を増幅する第2増幅器(10dB)(図2中において符号26で示す)が必要になると考えられた。
【0056】
<計測単位時間>
低速回転数の場合、例えば回転数1rpm と30rpm では1回転に要する時間は30 倍も異なる。これでは種々の軸受について計測時間を均一にして計測すると、回転数がわずかに異なった場合に異常判定がわかりづらい。本発明者は、計測単位時間を数式(3)に従って回転数により計測時間を変更することで、回転数が異なる転がり軸受1でも同様に異常判定ができる様にした。
[数3]
T=(60/n)×m
ここで、T:計測時間(sec)、n:回転数(rpm)、m:判定回転数(回転)
【0057】
例えば、同種・同型式の転がり軸受1であっても、経過年数、使用電圧などといった種々の使用状況により単位時間当たりの回転数(すなわち回転速度)が異なることは通常よくあることである。この点、所定回転数を一単位とする計測時間Tのカウント方式を導入するこの判定式(数式3)を用いれば、単位時間当たりの回転数(すなわち回転速度)が異なる転がり軸受1に対しても同様の評価指標に基づいて異常判定することが可能となる。
【0058】
また、かかる判定式を用いる際、本実施例では以下に基づいて判定した(表3参照)。
【表3】

すなわち、内輪4と外輪5との嵌め合いが「すきまばめ」の場合の嵌め合いガタ(すきまばめに起因する回転時のがたつき)は、
嵌め合いガタ:1回転に1個の発生(m回転でm個)
であるのに対し、はく離の場合の異常(はく離が発生していることに起因する回転時の異常)の指標となる「キズ周波数」(はく離に基づく1回転あたりの異常の発生度合)を考慮すると、
はく離(異常):キズ周波数は回転周波数よりも高くなる(1回転に数個以上となる)
となる。つまり、転がり軸受1の異常時にはm個以上のはく離異常が発生するということができるから、これに基づいて異常を判定した。なお、mの具体的数値や範囲は特に限定されないが、少なくともある程度の数、例えば10程度以上であることが好ましい。ただし、mが多すぎると計測に長時間を要するので適宜決定される必要がある。
【実施例4】
【0059】
(AE法による低速転がり軸受の診断事例)
上述した計測診断方法を基にAEによる低速軸受診断装置10を製作して現場での適用を図り、良好な結果を得た。以下、実施例4として説明する。
【0060】
<圧延ロール支持軸受における異常診断事例>
図20に示す回転数30rpm の圧延ロールの支持軸受についてAEによる計測を実施した。測定点1側が正常な軸受、測定点2側のラジアル軸受に外輪はく離軸受が設置されている。図21に両軸受のAE波形とエンベロープ波形を示す。この結果から、測定点2(外輪はく離)では突発型のAE波形が発生しており、測定点1(正常)とは明らかな差異が見られた。
【0061】
図22にエンベロープピーク値のトレンド(傾向管理図)の比較を、図23に事象数の比較をそれぞれ示す。計測条件はAE増幅度が80dB、エンベロープ増幅度10dB、しきい値500mV、計測単位時間は20sec(=60sec/30rpm×10 回転)である。測定点1(正常)が最大424mV であるのに対し、測定点2(外輪はく離)は2500mV であり、5倍以上の差異が見られており、事象数にも明確に差異が見られた。
【0062】
図24にAEエンベロープスペクトルの比較を示す。測定点2では外輪傷周波数fout 及びその高次成分が発生しているのを確認した。他に、保持器7の接触を示す周波数が発生しているのを確認した。従来の現場では振動加速度による診断が試みられていたが異常を検出できていなかった。これに対し、今回の結果から、本発明によればAE法により異常診断が可能であることが確認された。
【実施例5】
【0063】
(サイクロ減速機軸受における異常診断事例)
入力軸回転数1000rpm(fH=16.7Hz)、出力軸回転数34rpm(fL=0.57Hz)である図25に示す横型のサイクロ減速機(登録商標)に対してAE法による診断を実施した。特に詳しい図示はしていないが、サイクロ減速機は偏心体により偏心している入力軸の回転により曲線板を外ピンに接しながら回転させ、この回転(公転)の際、曲線板の穴に内ピンを内接させることで低速軸を回転させる機構となっている。図26にサイクロ減速機における低速側からの測定点(3)〜(7)のAEイベントカウント数(事象数)とエンベロープピーク値を示す(図26中においては測定点をPosと表示している)。これによれば、測定点(3)〜(5)のサイクロ減速機部におけるイベントカウント数(事象数)が高いことがわかる。図27に最大周波数100Hz、図28に最大周波数20Hz のAEエンベロープスペクトルを示す。偏心体軸受の内輪傷周波数fi(=4.5Hz)、2fi及び外ピン噛み合い周波数(PO=0.57Hz×29 枚(歯数)×2枚(曲線板数)=33.1Hz)が発生している。その他出力軸の回転周波数fL、2fLの発生が見られる。開放結果では診断結果どおり、偏心体軸受内輪(偏心体)に傷の発生と曲線板の磨耗の発生が見られた。
【実施例6】
【0064】
(攪拌機軸受における異常診断事例)
図29に示す攪拌機の回転数80rpm の軸受部(異音の発生あり)に対して診断を実施した。測定当日は、可聴域の異音はしなくなっていたが、AE測定にて、測定点(5)にて明らかな異常が確認された。表4に示す様に、本設備は定期的にAEにて計測しているが、当該測定当日の1年前の計測結果と異なり、エンベロープピーク値が100倍以上の大きな差異が見られた。この後に行われた軸受交換の後におけるイベントカウントは元のレベルに戻った。なお、振動加速度も同時に計測したが、1年前が0.01gで今回が0.02g であり、特に大きな差異は見られなかった。
【表4】

【0065】
図30にAEエンベロープスペクトルを示す。回転周波数1.3Hz 及びその高次成分の発生が見られた。従って、はく離や潤滑不良などの軸受の異常ではなく、軸受嵌め合いガタの発生が考えられた。軸受交換後(嵌め合い修正後)には、当該測定当日の1年前と同じく回転周波数の発生は無くなっていた。また、交換した軸受の外輪(図示省略)を調べたところ、外輪面にクリープが発生していたことから、当該外輪のガタによる滑りが発生していたことが確認された。
【0066】
(結論)
以上の各実施例の結果、以下の結論が得られた。
(1)振動法による状態監視が困難な100rpm 以下の低速転がり軸受1に対し、AEセンサ12によるエンベロープ波形を用いた異常診断手法が有効であり、この手法を用いることは1rpm 程度の超低速回転数領域でも可能である。
(2)実施例において、低速回転数における加速寿命試験などを通して、異常検出性能について加速度に対するAEの優位性を評価した。加速寿命試験では非常に過酷な条件下での結果であり、実際の生産現場における損傷メカニズムとは異なる点もあるとは思われるが、正常状態からはく離が発生するに至るまでの過程においてAEでは異常検出ができている。また、現場における異常診断にてその有効性が評価できている。
(3)AE法においても振動法と同様、はく離や嵌め合いガタなどの現象は周期性を持って発生するため、エンベロープスペクトルによる異常種類の判別も可能である。
(4)転がり疲労はく離だけでなく、潤滑油への異物混入や潤滑不良、嵌め合いガタなどの異常診断にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、石油化学プラントにおける撹拌機や押出機、樹脂や繊維、製鉄プラントにおける圧延ロールや延伸機、製紙プラントにおける抄紙機など、特に大型の低速回転設備などにおける各種転がり軸受に適用して好適である。
【符号の説明】
【0068】
1…転がり軸受、2…回転軸(軸)、12…AEセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受の稼働時に発生するAE波形信号をAEセンサを用いて検出し、
該AE波形信号をエンベロープ処理して包絡線成分を得、
該包絡線成分を増幅する処理を行い、
該増幅処理後の包絡線成分の値が所定のしきい値を超えたとき、前記転がり軸受に異常が発生していると判断する、転がり軸受の診断方法。
【請求項2】
前記転がり軸受の診断時における前記AE波形の計測時間Tを、回転軸が所定の判定回転数となる時間に設定する、請求項1に記載の転がり軸受の診断方法。
【請求項3】
前記計測時間Tを、
T=(60/n)×m
T:計測時間(sec)、n:回転数(rpm)、m:判定回転数(回転)
により算出して設定する、請求項2に記載の転がり軸受の診断方法。
【請求項4】
回転軸が100回転/分以下の低速回転をする転がり軸受を対象とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の転がり軸受の診断方法。
【請求項5】
前記波形信号を時定数の大きい包絡線検波器および時定数の小さい波形整形回路でパルス波形に整形し、当該計数されたパルス発生個数が予め定めた個数よりも小さい時には、この時の前記波形信号は雑音と判断し、当該雑音信号と判断された期間の前記波形信号を無効化する、請求項1から4のいずれか一項に記載の転がり軸受の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−78288(P2012−78288A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225754(P2010−225754)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000116736)旭化成エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】