説明

転がり軸受ユニット用荷重測定装置

【課題】低コストで造れ、しかも設計の自由度が高い構造を実現する。
【解決手段】車輪支持用転がり軸受ユニット1と荷重測定装置2とを備える。この荷重測定装置2は、永久磁石製のエンコーダ14と、1対のセンサ15a、15bと、演算器とを備える。このエンコーダ14を構成するエンコーダ本体17の外周面は、全周全幅に亙り同極に着磁している。又、上記両センサ15a、15bは、それぞの検出部に、通過する磁束の密度及び方向の変化に対応して特性を変化させる磁気検出素子を設置したもので、中立状態で、それぞれの検出部を上記エンコーダ本体17の外周面の幅方向両端縁部に対向させている。更に、上記演算器は、上記両センサ15a、15bの出力信号に基づいて、外輪3とハブ4との間に作用するアキシアル荷重の方向及び大きさを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持した車輪に加わるアキシアル荷重の方向及び大きさを測定して、車両の安定運行に寄与する為に利用する。或いは、各種工作機械の主軸をハウジングに対し回転自在に支持する為の転がり軸受に適用し、この主軸に加わるアキシアル荷重の大きさを測定して、この主軸の送り速度等を適正に制御する為に利用する事もできる。
【背景技術】
【0002】
車両の走行安定性を確保する為の装置として従来から、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には電子制御式ビークルスタビリティコントロールシステム(ESC)が広く使用されている。これらの走行安定化装置を構成する為に、車輪の回転速度、車体に加わる加速度、ヨーモーメント等の複数の状態量をそれぞれ別々のセンサにより測定して、1個の制御器に送り込んでいる。そして、この制御器は、上記各状態量に応じて、エンジンの出力を制御する他、各車輪の制動力を互いに関連付けて(但し、場合により異なる制動力に)制御する。
【0003】
上述の様な走行安定化装置の性能をより一層向上させる為には、各車輪に加わる荷重を測定する事が効果があると考えられる。例えば、各車輪に加わるアキシアル荷重を測定し、このアキシアル荷重が当該車輪のグリップ力を上回る直前に、エンジンの出力を低下させたり、或いは適切な車輪に制動力を加えれば、車両の走行安定性を、より一層向上させられるものと考えられる。この様な走行安定化の為に利用可能な転がり軸受ユニット用荷重測定装置として従来から、例えば特許文献1〜4に記載されたものが知られている。
【0004】
このうちの特許文献1に記載された荷重測定装置では、非接触式の変位センサにより、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する1対の軌道輪部材である、外輪とハブとの径方向の相対変位量を測定する。そして、この相対変位量に基づいて、これら外輪とハブとの間に加わるラジアル荷重を求める。
【0005】
又、特許文献2に記載された荷重測定装置では、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成するハブに、断面L字形の被検出体を外嵌固定し、この被検出体の軸方向側面と外周面とに、外輪に支持固定したセンサの検出部を対向させている。そして、このセンサにより、この外輪と上記ハブとの間の、軸方向及び径方向の相対変位量を測定し、これら両方向の相対変位量に基づいて、上記外輪と上記ハブとの間に加わるアキシアル荷重及びラジアル荷重を求める。
【0006】
又、特許文献3に記載された荷重測定装置では、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する、複列に配置された転動体の公転速度を、1対のセンサにより測定する。そして、これら両列の転動体の公転速度同士の間に存在する違いに基づいて、上記車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる、ラジアル荷重とアキシアル荷重との一方又は双方を求める。
【0007】
更に、特許文献4に記載された荷重測定装置では、特性が変化する位相を測定すべき荷重の作用方向に対応して漸次変化させた特殊なエンコーダの被検出面に、1対のセンサの検出部を、この作用方向に離隔させた状態で対向させている。そして、これら両センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる、ラジアル荷重又はアキシアル荷重を求める。又、上記特許文献4には、特性が変化するピッチを、測定すべき荷重の作用方向に対応して漸次変化させた、特殊なエンコーダの被検出面に、1個のセンサの検出部を対向させる構造に就いても記載されている。この様な構造の場合には、このセンサの出力信号のデューティ比の変化に基づいて、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に加わる、ラジアル荷重又はアキシアル荷重を求める。
【0008】
以上に述べた特許文献1〜4に記載された様な、従来の荷重測定装置のうち、特許文献1に記載された構造の場合には、ラジアル荷重を測定できてもアキシアル荷重を測定する事はできない。例えば、自動車の走行安定性に及ぼす影響は、ラジアル荷重に比べてアキシアル荷重が大きい。この為、上記特許文献1に記載された構造では、自動車の走行安定性向上を図る面からは十分な効果を得られない。
【0009】
これに対して、特許文献2に記載された構造の場合には、アキシアル荷重を測定できる代わりに、被検出体を断面L字形とする(被検出体の一部に鍔状部分を設ける)事に伴って、この被検出体の製造コスト及び径方向寸法が嵩む。この径方向寸法が嵩む為、この被検出体の設置位置が限られ、転がり軸受ユニット用荷重測定装置の設計の自由度が低くなる。又、特許文献3、4に記載された発明の場合には、測定すべき荷重の作用方向に配置した、1対のセンサを必要とする為、コスト並びに設置スペースが嵩み、やはり、転がり軸受ユニット用荷重測定装置の設計の自由度が低くなる。更に、センサの出力信号のデューティ比の変化に基づいて荷重を求める構造の場合には、エンコーダのピッチを正確に変化させる必要があり、このエンコーダの製造コストが嵩む。特に、センサ側の永久磁石を省略してセンサの小型化を図る為に、永久磁石製のエンコーダを使用すると、上述した様な理由による、製造コストの増大が著しくなる。
【0010】
【特許文献1】特開2001−21577号公報
【特許文献2】特開2004−45219号公報
【特許文献3】特開2005−331496号公報
【特許文献4】特開2006−113017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、低コストで造れ、しかも設計の自由度が高い、転がり軸受ユニット用荷重測定装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に外輪軌道を有し、使用状態でも回転しない外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有し、使用状態で回転する内輪相当部材と、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備える。
又、上記荷重測定装置は、上記内輪相当部材と同心に支持固定されてこの内輪相当部材と共に回転する永久磁石製のエンコーダと、使用状態でも回転しない部分に支持された1対のセンサと、演算器とを備える。
そして、上記エンコーダは、円筒状に形成されると共に、全周及び全幅に亙り、同じ径方向に着磁されて、被検出面である外周面を同じ極としている。
又、上記両センサは、それぞれの検出部に、通過する磁束の密度の変化に対応して特性を変化させる磁気検出素子を設置したものである。この磁気検出素子は、例えば請求項2に記載した様に、ホール素子(ホールICを含む)とする。そして、上記エンコーダの軸方向に離隔した位置で、それぞれの検出部を、このエンコーダの外周面の幅方向に離隔した2個所位置、例えば、この外周面の両端縁、若しくは、この両端縁の近傍部分に対向させている。
更に、上記演算器は、上記両センサの出力信号に基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との間に作用するアキシアル荷重の方向及び大きさを求める。
【0013】
又、上述の様な本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した様に、それぞれが1対のセンサの組み合わせであるセンサ組を、2組備える。そして、一方のセンサ組を構成する1対のセンサの検出部と、他方のセンサ組を構成する1対のセンサの検出部とを、エンコーダの径方向反対側で、それぞれこのエンコーダの外周面の幅方向に異なる2個所位置に対向させる。
【0014】
本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、例えば工作機械の主軸をハウジングに回転自在に支持する為の転がり軸受ユニットに関しても適用できるが、最も適当な構造としては、自動車の車輪支持用転がり軸受ユニットに適用する事が考えられる。この場合には、請求項4に記載した様に、前記外輪相当部材を、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持固定される外輪とする。又、前記内輪相当部材を、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用状態で車輪を結合固定してこの車輪と共に回転するハブとする。そして、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつの転動体を、両列同士の間で互いに逆方向の接触角及び与圧を付与した状態で設置する。
更に、本発明をこの様な自動車の車輪支持用転がり軸受ユニットに適用する場合には、例えば請求項5に記載した様に、上記エンコーダを上記ハブの軸方向内端部に外嵌固定する。又、上記センサを、上記外輪の軸方向内端部に嵌合固定したカバーの内周面に支持固定する。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置の場合には、低コストで造れ、しかも設計の自由度を高くできる。即ち、エンコーダの被検出面である外周面には、全面に亙ってS極又はN極が存在する。従って、着磁強度を外周面の周方向に関し均一にするにしても、このエンコーダの加工(着磁作業)が容易になり、このエンコーダを含む荷重測定装置の製造コストを低く抑えられる。又、このエンコーダは、被検出面である外周面にS極又はN極が存在すれば良く、径方向外方に突出する鍔部等が必要になる事はない為、上記エンコーダを含む荷重測定装置の設置の自由度が向上する。
【0016】
又、請求項3に記載した発明の様に、2組のセンサ組を構成する1対ずつのセンサの検出部を、径方向反対側で、それぞれ上記エンコーダの外周面に対向させれば、このエンコーダの振れ回りに基づく磁束変化の影響を相殺して、荷重測定に関する信頼性及び精度の向上を図れる。
又、請求項4に記載した様に、本発明を自動車の車輪支持用転がり軸受ユニットに適用する場合で、請求項5に記載した様に、エンコーダをハブの軸方向内端部に、センサを外輪に固定したカバーの内周面に、それぞれ設置すれば、小型の車輪支持用転がり軸受ユニットにも、上記エンコーダ及びセンサを設置できる。又、外輪の一部にセンサを設置する為の取付孔を設ける必要がなくなる為、この外輪の強度を低下させる事もなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1、2、4、5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、車輪支持用転がり軸受ユニット1と荷重測定装置2とを備える。
このうちの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、互いに同心に配置された外輪3及びハブ4と、複数個の転動体5、5とを備える。このうちの外輪3は、外周面に外向フランジ状の取付部6を、内周面に複列の外輪軌道7、7を、それぞれ有する。この様な外輪3は、使用状態で、上記取付部6を懸架装置に固定して回転しない。又、上記ハブ4は、外周面の軸方向外端部(軸方向に関して「外」とは、懸架装置への取付状態で、車体の幅方向外側となる側を言い、図1、3の左側。反対に、懸架装置への取付状態で、車体の幅方向中央側となる側を、軸方向に関して「内」と言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)に車輪を結合固定する為の結合フランジ8を、軸方向中間部乃至軸方向内端部に複列の内輪軌道9、9を、それぞれ有する。そして、上記各転動体5、5を、これら両内輪軌道9、9と上記外輪軌道7、7との間に、両列毎に複数個ずつ、保持器10、10により保持した状態で、転動自在に設けている。更に、上記各転動体5、5を設置した内部空間11の軸方向外端側開口部を、上記外輪3の軸方向外端部に内嵌したシールリング12により塞いでいる。更に、この外輪3の軸方向内端部を、金属板に絞り加工を施す等により、有底円筒状に形成した、カバー13により塞いでいる。
【0018】
又、上記荷重測定装置2は、エンコーダ14と、1対のセンサ15a、15bと、図示しない演算器とを備える。このうちのエンコーダ14は、例えば金属板製で円筒状の芯金16の中間部乃至先半部(=軸方向中間部乃至内端部)外周面に、例えばゴム磁石製或いはプラスチック磁石製で円筒状のエンコーダ本体17を、全周に亙り添着して成る。尚、このエンコーダ本体17が、特許請求の範囲に記載したエンコーダに相当する。このエンコーダ本体17の軸方向に関する幅寸法は、全周に亙って均一である。又、このエンコーダ本体17は、全周及び全幅に亙り同じ径方向に着磁されて、被検出面である外周面を同じ極(図示の例ではN極)としている。この様なエンコーダ本体17と芯金16とから成る、上記エンコーダ14は、この芯金16の基端部(=軸方向外端部)を上記ハブ4の軸方向内端部に締り嵌めで外嵌する事により、このハブ4と同心に支持して、このハブ4と共に回転する。
【0019】
又、上記両センサ15a、15bは、上記カバー13の内周面に、それぞれの検出部の径方向位置を互いに一致させた状態で、直接又はスペーサを介して支持している。これら両センサ15a、15bは、それぞれの検出部に、通過する磁束の密度の変化に対応して特性を変化させる磁気検出素子である、ホール素子を組み込んだもので、このホール素子の特性変化に対応して変化する信号を出力する。この様な両センサ15a、15bの検出部、即ち、上記ホール素子は、上記外輪3と上記ハブ4との間にアキシアル荷重が作用せず、これら外輪3とハブ4とが軸方向に相対変位していない中立状態で、上記エンコーダ本体17の幅方向両端縁に対向する。即ち、上記中立状態で、上記エンコーダ14の軸方向に関する、上記両センサ15a、15bに組み込んだホール素子の中心位置を、上記エンコーダ本体17の外周面の幅方向両端縁の位置に一致させている。但し、これら両ホール素子の中心位置とエンコーダ本体17の幅方向両端縁位置とは、必ずしも一致させなくても良い。要は、軸方向に離隔した1対のホール素子の特性が、上記エンコーダ本体17の軸方向変位に伴って、逆方向に変化すれば良い。
更に、前記演算器は、車体側に設けた、ABS、TCS、ESC等の制御器中に組み込んだもので、上記両センサ15a、15bの出力信号に基づいて、上記外輪3と上記ハブ4との間に作用するアキシアル荷重を求める。
【0020】
上述の様に構成する本例の転がり軸受ユニット用荷重測定装置によれば、次の様にして、各車輪と懸架装置との間に設けた車輪支持用転がり軸受ユニットに加わるアキシアル荷重を求められる。先ず、このアキシアル荷重が加わると、上記外輪3と上記ハブ4とが、前記各転動体5、5と、外輪、内輪両軌道7、9との弾性変形に基づいて、軸方向{図1及び図2の(A)の左右方向}に相対変位する。そして、上記エンコーダ17の幅方向両端縁位置と、上記両センサ15a、15bの検出部とが、このエンコーダ本体17の軸方向に亙り相対変位する。一方、このエンコーダ本体17の内外両周面同士の間で出入りする磁束の密度の分布は、このエンコーダ本体17を基準として見た場合には、一定のままである。従って、上記両センサ15a、15bの検出部での磁束密度は、上記外輪3と上記ハブ4との相対変位に伴って変化する。そして、この磁束密度の変化に伴って、上記センサ15の出力信号が変化する。
【0021】
例えば、軸方向外側のセンサ15aの出力信号が図2の(B)の実線αで示す様に変化し、同内側のセンサ15bの出力信号が同破線βで示す様に、上記軸方向外側のセンサ15aの出力信号と逆の傾向で変化する。そして、これら両センサ15a、15bの出力信号の差(α−β)は、図2の(C)に実線γで示す様に、上記外輪3と上記ハブ4との相対変位両に応じて所定方向に変化する。この様に上記両センサ15a、15bの出力信号の差が変化する状態は、上記図2の(C)に示す様に、上記相対変位の量が著しくならない限り、上記中立状態を境にして、ほぼ直線的になる。この為、上記両センサ15a、15bの出力信号に基づいて、上記外輪3と上記ハブ4との相対変位量、延てはこれら外輪3とハブ4との間に作用するアキシアル荷重を求められる。尚、上記両センサ15a、15bの出力信号の差の変化量とこのアキシアル荷重の大きさとの関係は、予め実験により、或いは計算により求めて、上記演算器にインストールするソフトウェア中に組み込んでおく。
前述の様に構成し、上述の様に作用する本例の転がり軸受ユニット用荷重測定装置の場合には、前述した理由により、低コストで造れ、しかも設計の自由度を高くできる。
【0022】
[実施の形態の第2例]
図3は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、1対のセンサ15a、15bから成る第1組のセンサ組18aをエンコーダ14の下端部の直下位置に、1対のセンサ15c、15dから成る第2組のセンサ組18bを上記エンコーダ14の上端部の直上位置に、それぞれ配置している。そして、これら各センサ組18a、18bを構成する、1対ずつ、合計4個のセンサ15a〜15dの検出部を、被検出面である、上記エンコーダ14を構成するエンコーダ本体17の外周面の幅方向両端縁に、それぞれ対向させている。
この様な本例の構造によれば、各部品の製造誤差、組立誤差、外輪3とハブ4との間に加わるラジアル荷重の影響等により、上記エンコーダ14が振れ回った場合にも、この振れ回りがアキシアル荷重の測定誤差に結び付く事を防止できる。
【0023】
即ち、上記振れ回りが生じると、上記エンコーダ本体17の外周面がセンサの検出部に遠近動し、その結果、このセンサの検出部での磁束密度が、アキシアル荷重に関係なく変化する。これに対して、本例の様に、2組のセンサ組18a、18bを直径方向反対側2個所位置に設ければ、上記振れ回りに基づく磁束変化の影響を相殺して、荷重測定に関する信頼性及び精度の向上を図れる。即ち、振れ回りに基づく磁束密度は、一方のセンサ組18aと他方のセンサ組18bとで反対方向に変化(増減)する為、これら両センサ組18a、18bの出力信号(それぞれ1対ずつのセンサ15a〜15dの出力信号同士の差)を合計(或いは平均)すれば、上記振れ回りの影響をなくして、上記アキシアル荷重を正確に求められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】アキシアル荷重に基づく外輪とハブの相対変位を測定する状態を説明する為の図で、(A)は、一部を省略して示す、図1のX部拡大図、(B)は、エンコーダとセンサとの位置関係が1対のセンサの検出部での磁束密度に及ぼす影響を示す線図、(C)は、この位置関係が1対のセンサの検出部での磁束密度の差に及ぼす影響を示す線図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 荷重測定装置
3 外輪
4 ハブ
5 転動体
6 取付部
7 外輪軌道
8 結合フランジ
9 内輪軌道
10 保持器
11 内部空間
12 シールリング
13 カバー
14 エンコーダ
15a、15b、15c、15d センサ
16 芯金
17 エンコーダ本体
18a、18b センサ組

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと荷重測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に外輪軌道を有し、使用状態でも回転しない外輪相当部材と、外周面に内輪軌道を有し、使用状態で回転する内輪相当部材と、この内輪軌道と上記外輪軌道との間に設けられた複数個の転動体とを備えたものであり、
上記荷重測定装置は、上記内輪相当部材と同心に支持固定されてこの内輪相当部材と共に回転する永久磁石製のエンコーダと、使用状態でも回転しない部分に支持された1対のセンサと、演算器とを備えたものであり、
上記エンコーダは、円筒状に形成されると共に全周及び全幅に亙り同じ径方向に着磁されて、被検出面である外周面を同じ極としたものであり、
上記両センサは、それぞれの検出部に、通過する磁束の密度の変化に対応して特性を変化させる磁気検出素子を設置したものであって、上記エンコーダの軸方向に離隔した位置で、それぞれの検出部を、このエンコーダの外周面の幅方向に異なる2個所位置に対向させており、
上記演算器は、上記両センサの出力信号に基づいて、上記外輪相当部材と上記内輪相当部材との間に作用するアキシアル荷重の方向及び大きさを求める、
転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
【請求項2】
磁気検出素子がホール素子である、請求項1に記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
【請求項3】
それぞれが1対のセンサの組み合わせであるセンサ組を2組備え、一方のセンサ組を構成する1対のセンサの検出部と、他方のセンサ組を構成する1対のセンサの検出部とを、エンコーダの径方向反対側で、それぞれこのエンコーダの外周面の幅方向に異なる2個所位置に対向させている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
【請求項4】
外輪相当部材が、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用状態で懸架装置に支持固定される外輪であり、内輪相当部材が、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用状態で車輪を結合固定してこの車輪と共に回転するハブであり、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつの転動体を設置している、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
【請求項5】
エンコーダをハブの軸方向内端部に外嵌固定し、センサを、外輪の軸方向内端部に嵌合固定したカバーの内周面に支持固定している、請求項4に記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−292275(P2008−292275A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137599(P2007−137599)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】