説明

転がり軸受

【課題】転動体を保持する保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に配置された転動体保持部により、転動体が、周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受において、保持器構成部の周方向の端部寄りに保持される転動体の面圧を低減できる転がり軸受を提供すること。
【解決手段】外輪2bと、外輪と外輪の内方の回転軸2aとの間の空間に外輪の周方向に沿って配置される複数の第一の転動体3と、第一の転動体を保持する保持器5とを備え、保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部51,52で構成され、保持器構成部における周方向の両端部の間に配置された転動体保持部により、第一の転動体が、周方向に沿って所定間隔で保持される転がり軸受1であって、複数の保持器構成部のうち周方向において隣り合う保持器構成部の間に、第二の転動体30が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関し、特に、外輪と回転軸との間の空間に外輪の周方向に沿って配置される複数の転動体と、転動体を保持する保持器とを備え、保持器が周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に周方向に沿って配置された転動体保持部により、転動体が周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸の外周面と外輪の内周面との間に潤滑油を介して複数の転動体を配置することで、回転軸を回転自在に支持する転がり軸受が知られている。このような転がり軸受としては、例えば、特許文献1に開示されたものが挙げられる。転がり軸受では、転動体を外輪の周方向(以下、単に周方向とする)に沿って所定の間隔をあけて保持する保持器が設けられることがある。
【0003】
転がり軸受の保持器として、分割式の保持器、すなわち、保持器が周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成される保持器が用いられることがある。図12は、分割式の保持器が用いられた転がり軸受の一例を示す径方向の概略断面図である。
【0004】
図12において、符号100は、転がり軸受を示す。軸受100は、環状の軌道輪200と、軌道輪200に沿って転動可能な複数の転動体300と、転動体300を軌道輪200に沿って所定の間隔をあけて保持する保持器500とを備える。軌道輪200は、回転軸200aと、回転軸200aの外方に設けられる外輪200bとによって構成される。保持器500は、軌道輪200に沿って、すなわち、周方向に沿って異なる位置に配置される第一保持器構成部501と第二保持器構成部502とで構成されている。
【0005】
保持器500が分割式とされた場合、一体に形成された保持器では組み付けが不可能な回転軸、例えば、内燃機関のクランク軸のように、回転軸における被支持部と端部との間に屈曲部を有するような回転軸であっても、軸受を組み付けることが可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−149418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、保持器が分割式とされた場合、それぞれの保持器構成部に保持される転動体のうちで周方向の端部寄りに設けられた転動体に他の転動体と比較して大きな面圧が作用するという問題がある。これは、以下に説明するように、保持器構成部における周方向の端部の強度を確保するために、端部の長さをある程度大きなものにする必要があるためである。
【0008】
回転軸が回転する場合、隣り合う保持器構成部の周方向の端部同士がぶつかり合うことがある。この場合に、変形が発生することを抑制するためには、周方向の端部の長さ(周方向の長さ)をある程度大きなものとして必要強度を確保することが要求される。しかしながら、この場合、保持器構成部の周方向の端部において、荷重を受ける転動体が存在しない領域が大きなものとなってしまう。隣り合う保持器構成部のうち、一方の保持器構成部の周方向の端部に保持されている転動体から、他方の保持器構成部の周方向の端部に保持されている転動体までの間隔が、その他の転動体同士の間隔(所定の間隔)よりも大きなものとなる。その結果、保持器構成部における周方向の端部寄りの位置、すなわち、保持器の分割部に近い位置に保持されている転動体に他の転動体と比較して大きな面圧が作用することとなる。
【0009】
転がり軸受の転動体を保持する保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に周方向に沿って配置された転動体保持部により、転動体が、周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受において、保持器構成部における周方向の端部寄りに保持されている転動体の面圧を低減できることが望まれている。
【0010】
本発明の目的は、転がり軸受の転動体を保持する保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に周方向に沿って配置された転動体保持部により、転動体が、周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受において、保持器構成部における周方向の端部寄りに保持されている転動体の面圧を低減できる転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の転がり軸受は、外輪と、前記外輪の内方に配置された回転軸と前記外輪との間の空間に前記外輪の周方向に沿って配置される複数の第一の転動体と、前記複数の第一の転動体を保持する保持器とを備え、前記保持器が、前記周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、前記保持器構成部における前記周方向の両端部の間に前記周方向に沿って配置された転動体保持部により、前記第一の転動体が、前記周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受であって、前記複数の前記保持器構成部のうち前記周方向において隣り合う前記保持器構成部の間に、第二の転動体が配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の転がり軸受において、前記保持器構成部における前記周方向の端部には、前記第二の転動体の形状に対応した形状を有する凹状部が設けられ、前記凹状部により前記第二の転動体が保持されることを特徴とする。
【0013】
本発明の転がり軸受において、前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が1つ配置され、前記第二の転動体は、前記第一の転動体と径が同一であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さいことを特徴とする。
【0014】
本発明の転がり軸受において、前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が前記外輪の軸線方向に沿って複数配置され、前記第二の転動体は、前記第一の転動体と径が同一であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さいことを特徴とする。
【0015】
本発明の転がり軸受において、前記保持器構成部における前記周方向の端部には、互いに対向する前記第二の転動体の前記軸線方向の端部がそれぞれ当接可能なように設けられ、前記第二の転動体の前記軸線方向の移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の転がり軸受において、前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が前記外輪の径方向に沿って2つ配置され、前記第二の転動体は、前記第一の転動体の径の半分の径であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さいことを特徴とする。
【0017】
本発明の転がり軸受において、前記外輪に対する前記保持器の前記周方向の相対移動が生じないように、前記外輪と前記保持器とが固定されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の転がり軸受において、前記外輪は、前記周方向に沿って異なる位置に配置される複数の外輪構成部に分割されているものであって、前記転がり軸受は、前記保持器構成部の前記周方向の端部が前記外輪の分割部を通過しないように、前記外輪に対する前記保持器の前記周方向の相対移動の範囲を規制する規制手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、転がり軸受の転動体を保持する保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に周方向に沿って配置された転動体保持部により、転動体が、周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受において、周方向において隣り合う保持器構成部の間に第二の転動体が配置される。これにより、保持器構成部の周方向の端部における転動体の間隔が大きなものとなることを抑制し、保持器構成部において周方向の端部寄りに保持されている転動体の面圧を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の転がり軸受の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、転がり軸受の転動体を保持する保持器が、周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、保持器構成部に周方向に沿って配置された転動体保持部により、転動体が、周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受に関する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る軸受の径方向の概略断面図、図2は、本実施形態に係る軸受の斜視図、図3は、本実施形態に係る軸受の軸線方向の部分断面図、図4は、本実施形態に係る軸受の周方向の部分断面図、図5は、本実施形態に係る軸受の保持器分割部付近の拡大図を示す。
【0023】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る転がり軸受としての軸受1は、環状の軌道輪2に沿って配置される複数の転動体(第一の転動体)3を有する転動手段としての転動部4が転動自在に設けられている。軸受1は、例えば、内燃機関のカムシャフトやクランクシャフトなどの種々の回転軸を回転自在に支持するものである。以下、本実施形態の軸受1は、内燃機関のクランクシャフトを回転自在に支持する転がり軸受に適用するものとして説明するが、これに限らず、種々の装置の回転軸を支持する転がり軸受にも適用可能である。
【0024】
なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「軸受の軸線方向」とは、軸受1が支持する回転軸の軸線方向をいい、「軸受の径方向」とは、軸線方向と直交する方向をいい、「軸受の周方向」とは、回転軸線を回転の中心として回転する方向をいう。
【0025】
軸受1は、クランクシャフトに設けられたクランクジャーナル等の被支持部に対して相対移動しないように設けられる。軸受1は、例えば、後述する外輪2bが図示しないハウジングに固定されることで被支持部に対して相対移動しないように設けられる。軸受1は、内燃機関のクランクシャフトの回転軸2aを回転自在に支持する。クランクシャフトは、図示しないピストンの往復運動に伴って、軸受1に支持されつつ周方向に回転する。
【0026】
軸受1は、上述の環状の軌道輪2と、軌道輪2に沿って転動可能な複数の転動体3を有する転動部4と、複数の転動体3を軌道輪2に沿って所定の間隔をあけて保持する保持手段としての保持器5とを備える。
【0027】
軌道輪2は、回転軸2aと、回転軸2aの外方に設けられる外輪2bとで構成される。回転軸2aは、円柱状に形成されており、クランクシャフトの軸をなす。外輪2bは、円環状(円筒形状)に形成されており、回転軸2aの外周面に沿って、中心軸線が回転軸2aの中心軸線と一致するように設けられる。すなわち、回転軸2aと外輪2bとは、同軸に設けられる。
【0028】
より具体的には、図3に示すように、回転軸2aの外周面には、周方向に沿って内側軌道面2cが形成されている。一方、外輪2bの内周面には、周方向に沿って外側軌道面2dが形成されている。転動部4は、回転軸2aの内側軌道面2cと外輪2bの外側軌道面2dとの間に形成される環状空間に設けられている。また、外側軌道面2dの軸線方向両側方には、径方向内方に突出するツバ2eが形成されている。言い換えると、外側軌道面2dは、外輪2bの内周面に凹部状に形成されている。
【0029】
転動部4は、複数の転動体3を有する。本実施形態の各転動体3は、細径の円筒形の針状(ニードル状)ころである。複数の転動体3は、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間の環状空間に、転動体3の軸線(転動中心)の方向が軸受1の軸線方向と平行となるように設けられる。複数の転動体3は、保持器5により、内側軌道面2c、外側軌道面2dの周方向に沿って所定間隔、ここでは等間隔で配置される。
【0030】
各転動体3は、保持器5により、外周面である転動面3rが内側軌道面2c、外側軌道面2dに接触可能に配置されると共に、両端面が外輪2bのツバ2eに当接可能に配置される。従って、複数の転動体3は、転動面3rが内側軌道面2c、および外側軌道面2dに接触することで、内側軌道面2c、および外側軌道面2dに沿って環状空間を転動することができると共に、その両端面が外輪2bのツバ2eに当接することで軸線方向に脱落することが防止される。
【0031】
図2に示すように、保持器5は、一対の環状部5aと、複数の柱状のセパレート部5bと、複数のスリット上の転動体保持部5cとを有する。一対の環状部5aは、軸線方向に沿って対をなすと共に、互いに軌道輪2の軸線と同軸に設けられる。すなわち、各環状部5aは、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間の環状空間において、回転軸2a、外輪2bの中心軸線と同軸に配置される。各環状部5aは、外周面が外側軌道面2d両側の各ツバ2eに対向して当接可能に周方向に連続すると共に、内周面が内側軌道面2cに対向して当接可能に配置され、保持器5全体を複数の転動体3と共に内側軌道面2c、および外側軌道面2dに沿って案内支持する。
【0032】
各セパレート部5bは、一対の環状部5a間に軸線方向に沿って掛け渡されるように架設される。セパレート部5bは、両端が環状部5aに固定されることで転動不能に設けられる。セパレート部5bは、隣接する転動体3の間に位置すると共に、周方向に所定の間隔(保持する転動体3の外径に応じた間隔)で等間隔に複数設けられる。
【0033】
各転動体保持部5cは、軸線方向において対向する一対の環状部5aと、周方向において隣接する一対のセパレート部5bにより区画された空間である。各転動体保持部5cは、転動体3の軸線(転動中心)方向が軸受1の軸線方向と平行となるようにそれぞれ1つの転動体3を個別に収容し、各転動体3を内側軌道面2c、外側軌道面2dの周方向に沿って転動自在に保持する。なお、転動体3、および保持器5は、例えば金属(鋼材等)で形成される。
【0034】
上記のように構成される軸受1では、回転軸2aの内側軌道面2cと外輪2bの外側軌道面2dとの間の環状空間において、複数の転動体3が潤滑油を介して内側軌道面2c、および外側軌道面2dに接触して、内側軌道面2c、および外側軌道面2d上を転動(自転)しながら内側軌道面2c、および外側軌道面2dに沿って公転する。つまり、軸受1は、軌道輪2の内側軌道面2c、および外側軌道面2dと各転動体3の転動面3rとが摺動することで回転軸2aを外輪2bに対して回転自在に支持する。このとき、保持器5は、回転軸2aの外輪2bに対する相対的な回転に伴って環状部5aにより内側軌道面2c、および外側軌道面2dに沿って案内されると共に、各転動体保持部5c内に収納した各転動体3を軌道輪2に沿って等間隔に保持しながら軌道輪2に対して相対的に回転する。
【0035】
保持器5に設けられたセパレート部5bは、隣接する転動体3同士の周方向における接触を規制する。この間、軸受1は、内側軌道面2c、および外側軌道面2dと当接する転動体3の転動面3rにより、負荷荷重としてラジアル荷重(軸線方向に直角な方向、すなわち径方向の荷重)を受けることができると共に、ツバ2eと当接する転動体3の端面部により、負荷荷重として若干のアキシアル荷重(軸線方向の荷重)も受けることができる。
【0036】
本実施形態の軸受1では、外輪2b、および保持器5が分割式とされている。図1および図2に示すように、外輪2bは、外輪分割部2sにおいて、周方向に沿って異なる位置に配置される第一外輪構成部21bと、第二外輪構成部22bとに分割されている。第一外輪構成部21b、および第二外輪構成部22bの分割部2sにおける形状(周方向の端部の形状)は、両者のうち一方が周方向に突出する凸形状に形成され、他方はこれに対応した凹形状に形成されている。
【0037】
保持器5は、保持器分割部5sにおいて、周方向に沿って異なる位置に配置される第一保持器構成部51と、第二保持器構成部52とに分割されている。本実施形態では、第一保持器構成部51の周方向の長さと、第二保持器構成部52の周方向の長さとが等しくなるように、保持器5が2つの保持器構成部51,52に分割されている。このように保持器5および外輪2bが分割式である場合、それぞれが一体に形成されている場合には着脱が不可能な回転軸、例えばクランクシャフトの回転軸2aに対して軸受1の着脱を行うことが可能となる。
【0038】
しかしながら、図12を参照して上述したように、保持器500が分割式である場合、保持器構成部501,502に保持される複数の転動体300のうちで、周方向の最も端部寄りに設けられた転動体300(符号300a参照)をはじめ、周方向の端部寄りに配置された転動体300に対して、他の転動体300(周方向の中央部に配置された転動体300)と比較して大きな面圧が作用するという問題がある。
【0039】
図1および図2に示すように、本実施形態の軸受1では、第一保持器構成部51と、第二保持器構成部52との間に、第二の転動体30が設けられる。第二の転動体30が、第一保持器構成部51と第二保持器構成部52との間において、ラジアル荷重を受けることにより、保持器構成部51,52に保持される複数の転動体3のうちで周方向の最も端部寄りに設けられた転動体3(以下、端部転動体3eとする)をはじめ、周方向の端部寄りに配置された転動体3で受けるラジアル荷重を分散させ、周方向の端部寄りに配置された転動体3の面圧を低減させることができる。
【0040】
第二の転動体30は、転動体3と同様の細径の円筒形の針状(ニードル状)ころであり、転動体3と同じ材質で形成されている。第二の転動体30の径は、転動体3の径と等しく形成されている。第二の転動体30の軸線方向の長さ(図4の符号L1参照)は、転動体3の軸線方向の長さと同等とされている。すなわち、第二の転動体30は、内側軌道面2cおよび外側軌道面2dとの接触面積が転動体3と同等となるように形成されている。第二の転動体30は、各保持器分割部5sにそれぞれ1つずつ配置されている。第二の転動体30は、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間の環状空間に、第二の転動体30の軸線(転動中心)の方向が軸受1の軸線方向と平行となるように設けられる。
【0041】
図4は、本実施形態に係る軸受の周方向の部分断面図である。図4に示すように、保持器構成部51,52における周方向の端部では、セパレート部5bと比較して環状部5aが周方向に突出した形状とされている。これにより、一対の環状部5a、および保持器構成部51,52のそれぞれのセパレート部5bにより第二の転動体30を保持する保持部54が構成される。第二の転動体30は、図1に示すように、外周面である転動面30rが内側軌道面2c、および外側軌道面2dにそれぞれ接触可能に配置される。また、第二の転動体30は、図4に示すように、両端面が一対の環状部5aに当接可能であると共に、転動面30rが保持器構成部51,52のセパレート部5bに当接可能に配置されている。
【0042】
第二の転動体30は、保持部54に保持された状態で内側軌道面2c、外側軌道面2dの周方向に沿って転動する。第二の転動体30は、両端面が一対の環状部5aに当接可能に配置されていることにより、軸線方向に移動することが抑制されている。また、第二の転動体30が、保持器構成部51,52のセパレート部5bに当接可能に配置されていることにより、軸線(転動中心)の方向が軸受1の軸線方向と平行に保たれる。
【0043】
図1および図5に示すように、保持器構成部51,52における周方向の端部(セパレート部5b)には、第二の転動体30を保持する保持溝55が設けられている。保持溝55は、周方向に窪んだ凹状部をなし、第二の転動体30の形状に対応した形状に形成されている。本実施形態の保持溝55は、径方向の断面が円弧形状となっている。第二の転動体30は、保持器構成部51,52にそれぞれ設けられた保持溝55に保持された状態で転動する。これにより、第二の転動体30の軸線(転動中心)の方向と軸受1の軸線方向とが平行な状態をより確実に保つことができる。
【0044】
また、保持溝55が設けられていることにより、分割式の保持器5の着脱を効率よく行うことが可能となる。例えば、保持器5を回転軸2aに組み付ける場合を例に説明すると、第一保持器構成部51を回転軸2aの下方から回転軸2aに当接させる。次に、第二保持器構成部52を上方から第一保持器構成部51に組み合わせる場合に、予め第二の転動体30を第一保持器構成部51の保持溝55にセットしておく。これにより、第二の転動体30が組み付け作業中に転がって脱落することなく、第二の転動体30の位置決めを容易に行うことができる。
【0045】
保持器5が2箇所の保持器分割部5sで分割されている場合、2箇所の保持器分割部5sにそれぞれ第二の転動体30を配置することにより、軸受1における転動体の個数を2個増加させることができる。
【0046】
回転軸2aの回転に伴って保持器分割部5sが負荷圏に突入する際、第二の転動体30がラジアル荷重を受けるため、第二の転動体30が配置されていない場合に比べて、端部転動体3eで受けるラジアル荷重を分散させ、端部転動体3eの面圧を低減させることができる。第二の転動体30が第一保持器構成部51の端部転動体3eと第二保持器構成部52の端部転動体3eとの中間に配置されることにより、第二の転動体30が配置されていない場合に比べて、端部転動体3eの面圧を約1.5倍低下させる(面圧を3分の2に低下させる)ことが可能となる。また、従来であれば、保持器5の周方向の端部の強度を確保するために端部転動体3e同士の間隔をある程度大きくする必要があったため、転動体3の間隔を均等とすることが困難であった。本実施形態では、第二の転動体30を配置することにより、端部転動体3eと第二の転動体30との間隔を他の転動体3同士の間隔と等しくし、各転動体3,30の間隔を軸受1の全体で均等とすることが可能となる。これにより、各転動体3,30の面圧を均等化させることができる。
【0047】
従来、転がり軸受は、線接触でラジアル荷重を受けるため、体格が大きい、寿命低下、騒音増などが課題とされていた。本実施形態によれば、以下に説明するように、これらの転がり軸受における課題を解決することができる。上述したように、本実施形態によれば、軸受1に設けられる転動体3,30の数を従来の軸受(第二の転動体30が設けられていない軸受)と比較して、増加させることができる。従って、以下に説明するように、従来に比べて軸受1の体格を小さなものとしたり、軸受1の寿命を延ばし、耐久性を向上させたりすることができる。
【0048】
図6は、転動体(コロ)の本数と軸受の寿命との関係を示す図である。図6に示すように、一般に、軸受1の体格が同じであれば、配置される転動体3,30の数が多くなるに連れて軸受1の寿命が長くなる。これは、転動体3,30の数が多くなると、各転動体3,30で受ける荷重が低下することなどによる。本実施形態では、軸受1に配置可能な転動体3,30の数を増加させることにより、軸受1の体格がそのままで寿命を延ばしたり、同じ寿命を確保しつつ体格を小さなものとしたりすることができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、各転動体3,30の面圧が均等化されることにより、特定の転動体3にラジアル荷重が集中することが抑制され、軸受1の寿命が長くなる。また、各転動体3,30で受ける荷重を低下させることや、各転動体3,30の面圧を均等化させることで、焼付き等の不具合の発生を抑制し、軸受1の信頼性を向上させたり、軸受1で発生する騒音を低減させたりすることができる。
【0050】
本実施形態によれば、特に、騒音低減の点で大きな効果を奏することができる。例えば、外輪分割部2sに転動体3が乗り上げる際に発生する断続音を低減させることができる。外輪分割部2sにおいては、第一外輪構成部21bと第二外輪構成部22bとの間で、外側軌道面2dにわずかながら段差や隙間ができる。転動体3の間隔が不均一である場合、例えば、第二の転動体30が配置されていない軸受100(図12)において、端部転動体300a同士の間隔が他の転動体300同士の間隔と比較して大きい場合、この段差を転動体300が乗り上げる際の乗り上げ音が不均一となって断続音が発生する。本実施形態では、第二の転動体30を配置し、各転動体3,30の間隔を均等とすることにより、このような不連続音による騒音を抑制することができる。また、軸受1全体の回転が滑らか(荷重分布均一)となることから騒音を低減させることができる。
【0051】
保持器分割部5sに第二の転動体30が設けられることにより、以下に説明するように、保持器構成部51,52が外側軌道面2dの段差にぶつかって衝突音が発生したり、回転抵抗が増加したりすることを抑制できる。第二の転動体30がラジアル荷重を受けることにより、保持器分割部5sが負荷圏に入ったとしても、内側軌道面2cと外側軌道面2dとの間隔が減少することが抑制される。このため、保持器構成部51,52が外側軌道面2dへ接近することが抑制される。また、保持器構成部51,52が保持溝55で第二の転動体30を保持していることにより、保持器構成部51,52の端部が径方向へ移動することが抑制される。よって、保持器構成部51,52の端部が外側軌道面2dに近づき、保持器構成部51,52が外側軌道面2dの段差に衝突してしまうことが抑制される。
【0052】
第二の転動体30が配置されることにより、軸受1における周方向の油量分布が均一となる。第二の転動体30が設けられていない従来の軸受100(図12参照)では、保持器分割部500sの油量が他の部分と比較して多くなってしまう。本実施形態(図1)では、保持器分割部5sに第二の転動体30が設けられていることで、保持器分割部5sに潤滑油が集中することが抑制される。よって、軸受1に供給する潤滑油の油量(必要供給量)を減少させ、軸受1のフリクション(潤滑油の引き摺り損失)を低減することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では、転動体3および第二の転動体30が針状(ニードル状)コロである場合を例に説明したが、転動体3,30の形状はこれには限定されない。転がり軸受1に用いられるコロであれば、転動体3および第二の転動体30として適用することができる。また、本実施形態の保持器5は2つの保持器構成部51,52に分割されていたが、これに代えて、保持器5が3以上の保持器構成部に分割されていても本実施形態の軸受1の構成を適用することができる。第二の転動体30の軸線方向の長さL1は、転動体3の軸線方向の長さと等しくされていたが、これには限定されない。例えば、第二の転動体30の軸線方向の長さL1が転動体3の軸線方向の長さよりも短くされてもよい。この場合、第二の転動体30の質量を転動体3の質量と比較して小さくすることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図7を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0055】
上記第1実施形態では、保持器分割部5sに配置される第二の転動体30の数は一箇所につき一つであったが、これに代えて、一箇所の保持器分割部5sに、転動体3よりも小さく形成された第二の転動体(図7の符号31参照)を軸線方向に複数配置することができる。この場合、第二の転動体31の質量を小さなものとし、保持器5の耐久性を向上させることができる。
【0056】
図7は、本実施形態に係る軸受の周方向の部分断面図である。本実施形態では、保持器分割部5sに形成された保持部54に2つの第二の転動体31(第二の転動体31a、31b)が配置される。第二の転動体31は、上記第1実施形態の第二の転動体30と同様に、細径の円筒形の針状(ニードル状)ころであり、転動体3と同じ材質で形成されている。2つの第二の転動体31は、第二の転動体31の軸線(転動中心)の方向が軸受1の軸線方向と並行となるように、かつ、軸線方向に直列に配置される。本実施形態の第二の転動体31a、31bは、同一の形状および大きさに形成されている。
【0057】
第二の転動体31の外径D2は、上記第1実施形態の第二の転動体30の外径と同様とされる。第二の転動体31の軸線方向の長さL2は、例えば、上記第1実施形態の第二の転動体30の軸線方向の長さL1の半分程度とされる。
【0058】
保持部54に配置する第二の転動体31を複数とすることにより、以下に説明するように、保持器5の寿命を向上させることができる。保持器5が分割式とされている場合、保持器5の周方向の端部(保持器分割部5s近傍)では、他の部分と比較して、捩れ、たわみ等の変形が生じやすい。変形を抑制するためには、各々の第二の転動体31の質量を小さくすることで、第二の転動体31の運動エネルギーを低下させ、保持器5に対する第二の転動体31の攻撃性を低減することが有効である。本実施形態では、保持部54に配置される第二の転動体31が複数とされており、各々の第二の転動体31の質量が小さなものとされている。これにより、保持器構成部51,52の周方向の端部寄りに配置された転動体3の面圧を低減させる効果を維持しつつ、上記第1実施形態のようにひとつの第二の転動体30でラジアル荷重を受ける場合に比べて、第二の転動体31の保持器5に対する攻撃性を低減し、保持器5の変形を抑制することができる。その結果、保持器5の耐久性を向上させることができる。
【0059】
保持器5に対する第二の転動体31の攻撃性を低くすることで、第二の転動体31を保持部54に保持するために要求される保持器5の保持力(強度)の軽減が可能となる。つまり、保持器5の必要強度を低減させることが可能となる。例えば、上記第1実施形態のように1箇所の保持部54に配置される第二の転動体30が1つである場合には、保持器5を鋼製とする必要があったところを、質量の小さな第二の転動体31を保持部54に複数配置する本実施形態では、鋼製よりも低強度や軽量(低比重)の材質で形成された保持器5、例えば、樹脂製の保持器5を採用することが可能となる。この場合、保持器構成部51,52が互いに衝突する際の衝突音等が小さくなり、軸受1の騒音を低減することができる。あるいは、保持器5の材質を変えずに、保持器5を鋼製のままでより軽量とすることが可能となる。
【0060】
なお、本実施形態では、一箇所の保持器分割部5sに配置される第二の転動体31が2つであったが、これには限定されない。3つ以上の第二の転動体31が一箇所の保持器分割部5sに配置されてもよい。この場合、一箇所の保持器分割部5sに配置される第二の転動体31の個数に応じて、第二の転動体31の軸線方向の長さL2が調節される。
【0061】
(第3実施形態)
図8を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0062】
上記第2実施形態(図7)では、保持部54に複数の第二の転動体31が軸線方向に直列に配置された。この場合、第二の転動体31が軸線方向に移動することは望ましくない。例えば、第二の転動体31が軸線方向に移動すると、第二の転動体31同士が接触して引き摺りが生じたり、ラジアル荷重に対する第二の転動体31の面圧の分布が不均一となったりして、騒音が増加したり磨耗が促進されたりする。
【0063】
本実施形態の保持器5には、図8に示すように、隣り合う2つの第二の転動体31a、31bの間に、第二の転動体31a、31bの軸線方向の移動を規制する規制部56が設けられている。規制部56は、保持器5の周方向の端部における軸線方向の中央部に設けられる。規制部56は、互いに対向する第二の転動体31a、31bの軸線方向の端部にそれぞれ当接可能となるように、隣り合う第二の転動体31a、31bの間の空間に周方向に突出する凸部状に形成されている。規制部56が設けられることにより、保持部54には、第二の転動体31aを保持する保持部54aと第二の転動体31bを保持する保持部54bとが形成される。
【0064】
このように、第二の転動体31a、31bがそれぞれ対応する保持部54a、54bに保持されることにより、第二の転動体31a、31bが確実に保持され、第二の転動体31a、31bの軸線方向の移動が規制される。よって、第二の転動体31a、31bの接触が抑制されると共に、第二の転動体31a、31bにおける面圧の分布が均一となる。その結果、騒音や第二の転動体31a、31b等の磨耗が低減される。また、規制部56が設けられることにより、保持器5の周方向の端部の強度が向上する。
【0065】
(第4実施形態)
図9を参照して第4実施形態について説明する。第4実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0066】
上記第2実施形態、および第3実施形態では、複数の第二の転動体31が軸線方向に沿って並べて配置された。本実施形態では、これに代えて、複数の第二の転動体(図9の符号32参照)が径方向に並べて配置される。これにより、第二の転動体32の質量を小さなものとし、保持器5への攻撃性を低減させると共に、転動面(図9の符号32r参照)の軌道面2c、2dへの追従性を向上させることができる。
【0067】
図9は、本実施形態に係る軸受1の径方向の部分断面図である。図9に示すように、本実施形態の軸受1では、第一保持器構成部51と第二保持器構成部52との間に形成された保持部54に複数の第二の転動体32が径方向に沿って並べて配置されている。第二の転動体32は、転動体3と同様の細径の円筒形の針状(ニードル状)ころであり、転動体3と同じ材質で形成されている。図9に示す例では、保持部54に2つの第二の転動体32a、32bが配置されている。第二の転動体32a、32bは、第二の転動体32aが相対的に径方向の内側(回転軸2aの中心軸線寄り)に位置するように配置される。第二の転動体32a、32bの外径の和は、転動体3の外径と等しくされている。第二の転動体32a、32bの外径は、転動体3の外径の半分である。これにより、第二の転動体32aが内側軌道面2cに当接し、かつ、第二の転動体32bが外側軌道面2dに当接した状態で第二の転動体32a、32bが径方向に直列となり、ラジアル荷重を受けた状態で周方向に転動することができる。
【0068】
保持器構成部51,52の周方向の端部には、第二の転動体32aを保持する保持溝55a、および第二の転動体32bを保持する保持溝55bがそれぞれ設けられている。保持溝55a、55bにより第二の転動体32a、32bがそれぞれ保持されることにより、第二の転動体32aと第二の転動体32bとの間で周方向の相対変位が生じることが抑制されている。
【0069】
本実施形態によれば、第一保持器構成部51と第二保持器構成部52との間に複数の第二の転動体32が径方向に並んだ状態で配置される。これにより、1つの第二の転動体32の質量を小さなものとし、第二の転動体32の保持器5に対する攻撃性を低減することができる。よって、保持器5の耐久性を向上させたり、保持器5の必要強度を低減させたりすることができる。また、第二の転動体32の質量が小さくなることで、第二の転動体32の転動面32rの軌道面2c、2dへの追従性が良くなり、磨耗や騒音が低減する。本実施形態では、第二の転動体32の外径を小さなものとすることができるため、第二の転動体32を保持する保持部54の容積を小さなものとすることができる。これにより、保持器構成部51,52における周方向の端部の強度を高める形状に、端部を形成することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、一箇所の保持部54に配置される第二の転動体32が2つであったが、これには限定されない。3つ以上の第二の転動体32が一箇所の保持部54に配置されてもよい。この場合、一箇所の保持部54に配置される第二の転動体32の個数に応じて、第二の転動体32の外径が調節される。
【0071】
(上記各実施形態の第1変形例)
上記第1実施形態から第4実施形態の第1変形例について説明する。
【0072】
上記各実施形態では、第二の転動体30,31,32の材質は、転動体3と同じ材質とされていたが、これに代えて、第二の転動体30,31,32の材質を転動体3の材質と比較して低比重の材質とすることができる。これにより、第二の転動体30,31,32の質量を低減させ、第二の転動体30,31,32の保持器5に対する攻撃性を低減させることができる。例えば、転動体3が鋼製である場合に、第二の転動体30,31,32をセラミック製とすることができる。
【0073】
(上記各実施形態の第2変形例)
上記第1実施形態から第4実施形態の第2変形例について説明する。
【0074】
上記各実施形態では、外輪2bに対する保持器5の周方向の移動には制限が設けられていなかった。すなわち、ハウジングに固定された外輪2bに対して、保持器5は周方向に回転自在に設けられていた。これに代えて、本変形例では、外輪2bに対する保持器5の周方向の相対移動が生じない状態とされる。より具体的には、保持器5が外輪2bに固定されている。外輪2bと保持器5との間の周方向の相対移動が生じないことで、外輪2bと保持器5との間の摩擦損失を低減させることができる。
【0075】
図10は、本変形例に係る軸受1の径方向の概略断面図である。図10には、第一保持器構成部51と第二保持器構成部52との間の各保持器分割部5sに第二の転動体30がそれぞれ1つ配置される場合の軸受1が示されている。図10に示すように、保持器構成部51,52の外周面には、径方向に突出する凸形状の突起5dが形成されている。一方、外輪構成部21b、22bの内周面における周方向の端部(外輪分割部2s)には、突起5dに対応する凹形状の溝部2fが形成されている。保持器構成部51,52の突起5dは、外輪構成部21b、22bの溝部2fに嵌合している。これにより、外輪2bに対する保持器5の周方向の相対移動が生じないように外輪2bと保持器5とが固定されている。
【0076】
回転軸2aが回転する際には、各転動体3が保持器5に保持された状態で内側軌道面2c、および外側軌道面2d上を転動(自転)すると共に、第二の転動体30が保持部54で保持された状態で内側軌道面2c、および外側軌道面2d上を転動(自転)する。これにより、軸受1は、回転軸2aを外輪2bに対して回転自在に支持する。このときに、外輪2bに対する保持器5の周方向の相対移動が生じない状態とされているため、上記各実施形態の効果に加えて、外輪2bと保持器5との間の摩擦損失を低減させるという効果を奏することができる。また、転動体3や第二の転動体30、あるいは保持器構成部51,52の周方向の端部が外輪分割部2sを通過することがない。このため、軸受1の騒音および転がり摩擦を低減させる効果や、軸受1の耐久性を向上させる効果を奏することができる。
【0077】
(上記各実施形態の第3変形例)
図11を参照して、上記第1実施形態から第4実施形態の第3変形例について説明する。
【0078】
上記第2変形例では、保持器5が外輪2bに固定されており、外輪2bに対して保持器5が周方向に回転しない状態とされていた。これに代えて、外輪2bに対する保持器5の周方向の相対移動が予め定められた範囲内となるように、保持器5の周方向の移動が規制されてもよい。例えば、外輪2bに対して回転軸2aが相対的に揺動回転する範囲が所定範囲に限定されている場合である。この場合に、軸受1の騒音等を抑制する観点から、保持器5の周方向の移動範囲を所望の範囲とするように、外輪2bに対する保持器5の周方向の相対移動の範囲を規制することができる。
【0079】
本変形例では、保持器構成部51,52の周方向の端部が外輪分割部2sを通過しないように、保持器5の周方向の移動範囲が規制される。これにより、保持器構成部51,52の周方向の端部と外輪構成部21b、22bの周方向の端部(外輪分割部2s)との衝突が生じない状態として、騒音や回転抵抗等を低減することができる。
【0080】
図11は、本変形例に係る軸受1の径方向の概略断面図である。図11に示すように、本変形例の溝部2fは、周方向に所定長さAを有している。所定長さAは、外輪2bに対して回転軸2aが周方向に相対的に揺動回転する際の保持器5の移動範囲に対応した長さである。保持器5が周方向に移動(公転)すると、突起5dは、溝部2fを周方向に移動する。突起5dが溝部2fの周方向の端部に当接することにより、保持器5の周方向の移動が規制される。本変形例の規制手段は、溝部2fおよび突起5dにより構成されている。
【0081】
突起5dは、保持器5が所定長さAの範囲で周方向に移動したとしても、保持器構成部51,52の周方向の端部が外輪分割部2sを通過しない位置に設けられる。すなわち、突起5dは、突起5dが溝部2fの周方向の一端部に当接した位置から他端部に当接した位置まで移動する際に、保持器構成部51,52の周方向の端部が外輪分割部2sを通過しないような位置に設けられる。これにより、回転軸2aが外輪2bに対して相対的に揺動回転することを妨げることなく、保持器構成部51,52の周方向の端部が外輪分割部2sを通過しないように保持器構成部51,52の移動範囲を規制することができる。
【0082】
保持器構成部51,52の周方向の端部と外輪構成部21b、22bの周方向の端部(外輪分割部2s)との衝突を防ぐことにより、軸受1の騒音および回転抵抗を低減させたり、軸受1の耐久性を向上させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の転がり軸受の第1実施形態の径方向の概略断面図である。
【図2】本発明の転がり軸受の第1実施形態の斜視図である。
【図3】本発明の転がり軸受の第1実施形態の軸線方向の部分断面図である。
【図4】本発明の転がり軸受の第1実施形態の周方向の部分断面図である。
【図5】本発明の転がり軸受の第1実施形態の保持器分割部付近の拡大図である。
【図6】本発明の転がり軸受の第1実施形態の効果を説明するための図である。
【図7】本発明の転がり軸受の第2実施形態の周方向の部分断面図である。
【図8】本発明の転がり軸受の第3実施形態の周方向の部分断面図である。
【図9】本発明の転がり軸受の第4実施形態の径方向の部分断面図である。
【図10】本発明の転がり軸受の各実施形態の第2変形例の径方向の概略断面図である。
【図11】本発明の転がり軸受の各実施形態の第3変形例の径方向の概略断面図である。
【図12】分割式の保持器が用いられた転がり軸受の一例を示す径方向の概略断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 軸受
2 軌道輪
2a 回転軸
2b 外輪
2c 内側軌道面
2d 外側軌道面
2e ツバ
2f 溝部
2s 外輪分割部
3 転動体
3e 端部転動体
3r 転動面
4 転動部
5 保持器
5a 環状部
5b セパレート部
5c 転動体保持部
5d 突起
5s 保持器分割部
21b 第一外輪構成部
22b 第二外輪構成部
30,31,32 第二の転動体
30r 転動面
51 第一保持器構成部
52 第二保持器構成部
54 保持部
55 保持溝
56 規制部
100 軸受
200 軌道輪
200a 回転軸
200b 外輪
300 転動体
300a 端部転動体
500 保持器
501 第一保持器構成部
502 第二保持器構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、前記外輪の内方に配置された回転軸と前記外輪との間の空間に前記外輪の周方向に沿って配置される複数の第一の転動体と、前記複数の第一の転動体を保持する保持器とを備え、前記保持器が、前記周方向に沿って異なる位置に配置される複数の保持器構成部で構成され、前記保持器構成部における前記周方向の両端部の間に前記周方向に沿って配置された転動体保持部により、前記第一の転動体が、前記周方向に沿って所定の間隔をあけて保持される転がり軸受であって、
前記複数の前記保持器構成部のうち前記周方向において隣り合う前記保持器構成部の間に、第二の転動体が配置されている
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
請求項1記載の転がり軸受において、
前記保持器構成部における前記周方向の端部には、前記第二の転動体の形状に対応した形状を有する凹状部が設けられ、前記凹状部により前記第二の転動体が保持される
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転がり軸受において、
前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が1つ配置され、
前記第二の転動体は、前記第一の転動体と径が同一であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さい
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項4】
請求項1または2に記載の転がり軸受において、
前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が前記外輪の軸線方向に沿って複数配置され、
前記第二の転動体は、前記第一の転動体と径が同一であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さい
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項5】
請求項4記載の転がり軸受において、
前記保持器構成部における前記周方向の端部には、互いに対向する前記第二の転動体の前記軸線方向の端部がそれぞれ当接可能なように設けられ、前記第二の転動体の前記軸線方向の移動を規制する規制部が設けられている
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項6】
請求項1または2に記載の転がり軸受において、
前記隣り合う前記保持器構成部の間には、それぞれ前記第二の転動体が前記外輪の径方向に沿って2つ配置され、
前記第二の転動体は、前記第一の転動体の径の半分の径であり、かつ、前記第一の転動体の各々の質量と比較して質量が小さい
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の転がり軸受において、
前記外輪に対する前記保持器の前記周方向の相対移動が生じないように、前記外輪と前記保持器とが固定されている
ことを特徴とする転がり軸受。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の転がり軸受において、
前記外輪は、前記周方向に沿って異なる位置に配置される複数の外輪構成部に分割されているものであって、
前記転がり軸受は、前記保持器構成部の前記周方向の端部が前記外輪の分割部を通過しないように、前記外輪に対する前記保持器の前記周方向の相対移動の範囲を規制する規制手段を備える
ことを特徴とする転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−174611(P2009−174611A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12720(P2008−12720)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】