説明

転がり軸受

【課題】保持器の振動や異音などを確実に抑制できると共に、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できる新規な転がり軸受の提供。
【解決手段】ラジアルタイプの転がり軸受100であって、静止輪120の軸方向両端に、保持器140の端面と対向するように回転輪110側に鍔状に延びる環状の遮蔽板150,150を設け、当該各遮蔽板150,150の回転輪110側周面と当該周面と対向する回転輪110の軌道面111との間に所定の隙間Sを形成する。これによって、保持器140の移動を規制できるため、保持器140の振動や異音、破損などを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトランスミッションなどに使用される低トルクの転がり軸受に係り、特にその潤滑剤の流れを改良した転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トランスミッションなどに使用されるラジアルタイプの転がり軸受においては、保持器が軸方向に移動することによって発生する保持器の振動および異音、転動体のスキューに起因した保持器と転動体の衝突による保持器の破損が問題になることがある。
このような不都合を解消するために、例えば以下の特許文献1では、保持器の案内面に溝を形成し、潤滑剤の排出を促進させることで潤滑剤に起因する不都合を解消する方法が開示されている。また、以下の特許文献2や3では、保持器に対して動圧溝を形成し、内輪および外輪の軌道面と滑りを抑制することで保持器の挙動を安定させるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−329233号公報
【特許文献2】特開2007−177837号公報
【特許文献3】特開平7−174142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1に示すような技術では、潤滑剤の排出を促進して保持器の挙動を安定させることはできるものの、積極的に潤滑剤を循環させて転がり軸受を充分に冷却させる必要があるため、例えばトランスミッションなどのような低トルクが要求される用途で潤滑剤の量を少なくした場合には、潤滑剤の量が不足して充分な潤滑状態が得られない場合がある。
【0004】
一方、前記特許文献2や3に示すような方法では、保持器の半径方向の挙動を安定させることができるものの、軸方向の挙動に対しては、これを安定させることができないといった不都合がある。
そこで、本発明はこのような課題を解決するために案出されたものであり、その主な目的は、保持器の振動や異音などを確実に抑制できると共に、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できる新規な転がり軸受を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔発明1〕
前記課題を解決するために第1の発明は、
一方が静止輪となると共に他方が回転輪となる一対の内外輪と、当該内外輪の軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、当該各転動体を保持すべく前記内外輪の軌道面間に沿って延びる環状の保持器とを有するラジアルタイプの転がり軸受であって、前記静止輪の軸方向両端に、前記保持器の端面と対向するように、これより前記回転輪側に鍔状に延びる環状の遮蔽板をそれぞれ設けると共に、当該各遮蔽板の回転輪側周面と当該周面と対向する前記回転輪の軌道面との間に所定の隙間を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
【0006】
このような構成によれば、保持器の両端面に各遮蔽板の端面が位置するため、保持器の軸方向の移動を規制することができる。これによって、ラジアルタイプの転がり軸受において、保持器が軸方向に大きく移動することによって発生する保持器の振動や異音、ならびに転動体のスキューに起因した保持器と転動体の衝突による保持器の破損などを抑制できる。
また、これら各遮蔽板の回転輪側周面と当該周面と対向する前記回転輪の軌道面との間に所定の隙間を形成したことから、軸受空間への潤滑剤の流量を最適に調整できる。これによって、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できると共に、低トルクを実現できる。
【0007】
〔発明2〕
また、第2の発明は、
第1の発明において、前記保持器の軸方向端面、または当該軸方向端面と対向する前記各遮蔽板の軸方向端面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、これら複数の動圧発生溝により、回転輪の回転に伴って保持器の軸方向端面と各遮蔽板の軸方向端面間の潤滑剤にせん断力が加わってその表面に潤滑剤による動圧作用が発生する。
これによって、保持器の位置を中立の位置(正常な位置)に保持する力が発生するため、保持器の軸方向端面と各遮蔽板の軸方向端面との衝突を防止することができ、その衝突に起因する振動や異音などを確実に抑制できる。
【0008】
〔発明3〕
また、第3の発明は、
第1の発明において、前記各遮蔽板の回転輪側周面または当該周面と対向する前記回転輪の軌道面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、その隙間によって潤滑剤の流量を最適に調整できると共に、その隙間に形成された動圧発生溝のポンピング作用によって潤滑剤の排出が促進されて積極的に潤滑剤を循環させて全体を効果的に冷却できる。また、トランスミッションなどのような低トルクを満足するためにできるだけ潤滑剤の量を少なくした場合においても、そのポンピング作用によって少ない潤滑剤を軸受全体に効果的に行き渡らせて充分な潤滑状態を確保できるため、潤滑不足となることを防止できる。
【0009】
〔発明4〕
また、第4の発明は、
第1の発明において、前記保持器の端面および前記回転輪の軌道面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、前記保持器の端面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の軌道面に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、前記保持器の端面側に形成された動圧発生溝による動圧発生効果と、前記回転輪の軌道面側に形成された動圧発生溝のポンピング作用による潤滑剤の流れおよびその循環の促進効果とをバランス良く発揮することができる。
【0010】
〔発明5〕
また、第5の発明は、
第1の発明において、前記各遮蔽板のうち、前記保持器の端面に対向する端面および前記回転輪の軌道面に対向する周面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、前記各遮蔽板の端面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記各遮蔽板の周面側に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、発明4と同様に、前記各遮蔽板の端面側に形成された動圧発生溝による動圧発生効果と、前記各遮蔽板の周面側に形成された動圧発生溝のポンピング作用による潤滑剤の流れおよびその循環の促進効果とをバランス良く発揮することができる。
【0011】
〔発明6〕
一方、第6の発明は、
一方が静止輪となると共に他方が回転輪となる一対の上下輪と、当該上下輪の軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、当該各転動体を保持すべく前記上下輪の軌道面間に沿って延びる環状の保持器とを有するスラストタイプの転がり軸受であって、前記静止輪の周縁部に、これより前記回転輪側に延びると共に当該回転輪を囲繞するように環状の遮蔽板をそれぞれ設けると共に、当該遮蔽板と前記回転輪の外径面との間に所定の隙間を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
【0012】
このような構成によれば、保持器を囲むように設けられた各遮蔽板によって保持器の径方向の移動を規制することができる。これによって、スラストタイプの転がり軸受において、保持器が径方向に大きく移動することによって発生する保持器の振動や異音、ならびに転動体のスキューに起因した保持器と転動体の衝突による保持器の破損などを抑制できる。
また、この保持器の外径面とこれを囲む遮蔽板の内径面との間に所定の隙間を形成したことから、軸受空間への潤滑剤の流量を最適に調整できる。
これによって、発明1と同様に、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できると共に、低トルクを実現できる。
【0013】
〔発明7〕
また、第7の発明は、
第6の発明において、前記保持器の外径面または当該外径面と対向する前記遮蔽板の内径面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、回転輪の回転に伴って保持器の外径面と遮蔽板の内径面間の潤滑剤にせん断力が発生することによって潤滑剤による動圧効果が発生する。
これによって、発明2と同様に、保持器の位置を常に静止輪の中心位置(正常な位置)に保持することができるため、保持器の外径面と各遮蔽板の内径面との衝突を防止することが可能となり、その衝突に起因する振動や異音などを確実に抑制できる。
【0014】
〔発明8〕
また、第8の発明は、
第6の発明において、前記回転輪の外径面または当該外径面と対向する前記遮蔽板の内径面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、発明3と同様に、前記回転輪の外径面と前記遮蔽板の内径面との隙間によって潤滑剤の流量を最適に調整できると共に、その隙間に形成された動圧発生溝のポンピング作用によって潤滑剤の排出が促進されて積極的に潤滑剤を循環させて全体を効果的に冷却できる。また、トランスミッションなどのような低トルクを満足するためにできるだけ潤滑剤の量を少なくした場合においても、そのポンピング作用によって少ない潤滑剤を軸受全体に効果的に行き渡らせて充分な潤滑状態を確保できるため、潤滑不足となることを防止できる。
【0015】
〔発明9〕
また、第9の発明は、
第6の発明において、前記保持器の外径面および前記回転輪の外径面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、前記保持器の外径面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の外径面側に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、発明4と同様に、前記保持器の外径面側に形成された動圧発生溝による動圧発生効果と、前記回転輪の外径面側に形成された動圧発生溝のポンピング作用による潤滑剤の流れおよびその循環の促進効果とをバランス良く発揮することができる。
【0016】
〔発明10〕
また、第10の発明は、
第6の発明において、前記遮蔽板の内径面のうち、前記保持器の外径面に対向する位置および前記回転輪の外径面に対向する位置に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、前記保持器の外径面に対向する位置に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の外径面に対向する位置に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、発明5と同様に、前記保持器の外径面に対向する遮蔽板の内径面側に形成された動圧発生溝による動圧発生効果と、前記回転軸の外径面に対向する遮蔽板の内径側に形成された動圧発生溝のポンピング作用による潤滑剤の流れおよびその循環の促進効果とをバランス良く発揮することができる。
【0017】
〔発明11〕
また、第11の発明は、
第1〜5および第7〜10のいずれかの発明において、前記動圧発生溝は、V字形状、U字形状、ヘリングボーン(herringbone)形状またはクサビ(楔)形状をしていることを特徴とする転がり軸受である。
前述した動圧発生溝として、このような形状のものを用いることによってその表面に潤滑油による動圧を効果的に発生させることができる。
【0018】
〔発明12〕
また、第12の発明は、
一対の環状部と当該環状部間を複数の柱部で連結してころ状転動体を収容するポケットを形成したかご形保持器を備えた転がり軸受であって、前記かご形保持器を構成する柱部の前記ころ状転動体と接する側面に、当該柱部の長手方向に沿って溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、軸受空間内に侵入した異物が柱部に形成された溝に入り込んで除去される。これによって、軸受空間内に侵入した異物による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【0019】
〔発明13〕
また、第13の発明は、
第12の発明において、前記かご形保持器の環状部に、前記柱部に形成した溝と連通する貫通孔を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、柱部に形成された溝に侵入した異物を貫通孔を通過させて排出することができる。これによって、軸受空間内に侵入した異物による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【0020】
〔発明14〕
また、第14の発明は、
内外輪の軌道面間に複数の円錐ころを転動自在に配置した転がり軸受であって、前記内外輪のいずれか一方あるいは両方の軌道面に、当該軌道面を横断するように複数の溝を形成したことを特徴とする転がり軸受である。
このような構成によれば、軸受空間内に侵入した異物が内外輪の軌道面に形成された溝を介して自動的に除去される。これによって、軸受空間内に侵入した異物による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保持器と遮蔽板との間の隙間に形成された動圧発生溝の潤滑剤のせん断により発生する動圧効果により保持器の位置を常に中立の位置(正常な位置)に保持することができるため、保持器と遮蔽板との衝突を防止することが可能となり、保持器の振動や異音などを効果的に抑制できる。
また、遮蔽板と回転輪間に設けられた隙間によって潤滑剤の流量を最適に調整できると共に、その隙間に形成された動圧発生溝のポンピング作用によって潤滑剤の循環や排出を促進できるため、低トルクを満足するために潤滑剤の量を少なくしても充分な潤滑効果を発揮することができる。
また、軸受空間内に侵入した異物などを自動的かつ効果的に除去できるため、異物混入による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図8は、本発明に係る転がり軸受100の第1の実施の形態を示したものであり、図1はこの転がり軸受100の一部破断全体斜視図、図2はこの転がり軸受100の周方向断面図である。
【0023】
図1および図2に示すように、この転がり軸受100はラジアルタイプの転がり軸受であり、内輪110および外輪120と、この内外輪110、120間に転動自在に配置される複数の転動体130、130…と、これら複数の転動体130、130…を保持するための保持器140とから主に構成されている。
この内輪110は、図示しない回転軸を支持するようになっており、その回転軸と共に回転して回転輪を構成している。
【0024】
一方、外輪120は、この内輪110の周囲に所定の間隔を隔てて同軸上に位置しており、図示しない固定フレーム上などに固定されて静止輪を構成している。
また、転動体130は、円筒状をした金属製のころから構成されており、内輪110の外径面に形成された内輪側軌道面111と、外輪120の内径面に形成された外輪側軌道面121に沿って転動自在となっている。
【0025】
また、保持器140は、この内輪110と外輪120に沿って延びる一対の環状体141、142の間を、複数の柱部143,143…によってその周方向に沿って所定の間隔を隔てて接続したはしご状に形成されている。そして、この一対の環状体141、142と、その周方向に隣接する一対の柱部143,143とによって形成される矩形状の各ポケット144,144…にそれぞれ前記の転動体(ころ)130を収容することで各転動体130、130…をその周方向に沿って一定の間隔を隔てて転動自在に保持するようになっている。
【0026】
また、静止輪となる外輪120の軸方向両端には、それぞれこれより前記内輪(回転輪)110側に鍔状に延びる環状の遮蔽板150,150が設けられており、これら一対の遮蔽板150,150によって保持器140の軸方向両側が覆われるような構造となっている。
また、これら遮蔽板150,150の内径面(周面)f1、f1は、内輪110の軌道面111と対向するように位置すると共に、その間には、その周方向に沿って環状の隙間Sが形成されており、この隙間Sを介して軸受空間Cの潤滑剤が適宜流入および排出するようになっている。
【0027】
次に、図4〜図7はこの転がり軸受100の各部の詳細を示したものであり、図4は図2中A−A線断面図、図5は図2中B−B線断面図、図6は図2中C−C線断面図、図7は図2中D−D線断面図である。
先ず、図4に示すように、この保持器140の軸方向両端面(環状体141、142の側面)f2,f2には、潤滑剤のせん断により圧力を発生するV字形をした複数の動圧発生溝160、160…が、その回転方向に沿って形成されている。
【0028】
また、図5に示すように、この保持器140の軸方向端面f2,f2と対向する遮蔽板150,150の端面(内面)f3,f3にも、同様にV字形をした複数の動圧発生溝160、160…が、(その向きは異なるものの)その回転方向に沿って形成されている。
また、図6に示すように、遮蔽板150,150の内径面(周面)f1,f1には、ポンピング作用を発生させるV字形をした複数の動圧発生溝165、165…が、その回転方向に沿って形成されている。
【0029】
また、図7に示すように、この遮蔽板150,150の内径面(周面)f1,f1と対向する内輪110の軌道面111両端側f4,f4にも、同様にV字形をした複数の動圧発生溝165、165…が、(その向きは異なるものの)その回転方向に沿ってそれぞれ形成されている。
そして、このような構成をした本発明の転がり軸受100にあっては、図1および図2に示すように保持器140の両端面にこれと対向するように遮蔽板150,150が位置し、保持器140の両端面と、これと対向する遮蔽板150の軸方向両端面に、動圧発生溝160,160を形成したことにより、この遮蔽板150,150によって保持器140の軸方向への移動を規制することができる。
【0030】
これによってラジアルタイプの転がり軸受100において、保持器140が軸方向に大きく移動することがなくなるため、保持器140の振動や異音、ならびに転動体130のスキューに起因した保持器140と転動体130の衝突による保持器140の破損などを抑制できる。
また、これら各遮蔽板150、150の内径面f1,f1と回転輪110の軌道面111との間に所定の隙間Sを形成すると共に、その隙間Sを形成する各遮蔽板150、150の内径面f1,f1と回転輪110の軌道面111の両端側f4にそれぞれポンピング作用を発生させる動圧発生溝165、165…を形成したことから軸受空間Cへの潤滑剤の流量を最適に調整できる。
【0031】
これによって、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できると共に、潤滑剤の量を減らすことができるため、低トルクを実現できる。
すなわち、その隙間Sに形成された動圧発生溝165,165…によって潤滑剤の排出が促進されるようになるため、積極的に潤滑剤を循環させて全体を効果的に冷却できると共に、低トルクを満足するためにできるだけ潤滑剤の量を少なくした場合においても、その動圧効果によって少ない潤滑剤を軸受全体に効果的に行き渡らせて充分な潤滑状態を確保できるため、潤滑不足となることを防止できる。
【0032】
また、図4および図5に示すように、保持器140の軸方向両端面f2,f2と、この軸方向両端面f2、f2と対向する各遮蔽板150,150の端面(内側)f3,f3に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝160、160…を形成したことから、この遮蔽板150,150によって挟まれた保持器140の位置を軌道面111,121の中立の位置(正常な位置)に保持することが可能となる。
【0033】
すなわち、このような複数の動圧発生溝160、160…を設けることにより、その保持器140の両端面f2,f2の潤滑剤がその両端面f2,f2に形成された動圧発生溝160、160…に保持された状態でその保持器140の回転に伴ってその回転方向に流れることになる。すると、その保持器140側の潤滑剤と各遮蔽板150,150側の潤滑剤に流れの速度差が生じ、それらの間にせん断力が発生してそれら各端面f2,f2、f3、f3に前記特許文献にも開示されているような、いわゆる動圧効果が発生することになる。
【0034】
これによって、互いの端面f2,f2、f3、f3同士が離間するような力が発生して保持器140の位置を各遮蔽板150,150間の中立の位置(正常な位置)に保持するように作用するため、保持器140の軸方向端面と各遮蔽板150,150の軸方向端面との衝突を防止することができる。従って、その衝突に起因する振動や異音などを確実に抑制できる。
【0035】
なお、この動圧発生溝160、160…は、対向する端面f2,f2、f3、f3同士にそれぞれ形成されている必要はなく、対向する端面f2,f2、f3、f3同士のいずれか一方のみであっても良い。すなわち、保持器140側の両端面f2,f2のみ、またはこれらと対向する遮蔽板150,150のそれぞれの端面(内面)f3、f3のみ、あるいは保持器140側の一端面f2と、その反対側に位置する遮蔽板150の端面(内面)f3のみに形成するものであっても良い。
【0036】
また、この動圧発生溝160の形状としては、回転輪110(保持器140)の回転に伴って前述したような動圧効果を生ずるものであれば特に限定されるものでなく、前述したようなV字形の他、例えば図8(a)に示すようなU字形や同図(b)に示すようなヘリングボーン形状などであっても良い。また、同図(c)に示すようにお互いに対向する面の少なくとも一方を断面くさび形にすることにより、動圧効果を発生させることができる。
【0037】
一方、このような構成をした本発明の転がり軸受100にあっては、図6および図7に示すように、各遮蔽板150、150の内径面f1,f1と、これに対向する回転輪110の軌道面111の両側f4,f4にも、それぞれ同様にその回転方向に沿って複数の動圧発生溝165、165…を形成したことから、潤滑剤の量が少なくとも円滑に循環することができる。
【0038】
すなわち、この隙間Sに動圧発生溝165、165…を形成することによって、この隙間Sからの潤滑剤の排出を促進し、積極的に潤滑剤を循環させて転がり軸受100全体をを冷却することが可能となる。従って、低トルクが要求される用途で、できるだけ潤滑剤の量を少なくした場合においても充分な潤滑状態が確保でき、潤滑剤不足となるのを防止できる。
【0039】
また、この隙間Sに形成される動圧発生溝165、165…は、前記と同様に対向する端面f1,f1、f4,f4同士にそれぞれ形成されている必要はなく、対向する端面f1,f1、f4,f4同士のいずれか一方のみであっても良い。すなわち、軌道面111側f4,f4のみ、またはこれらと対向する遮蔽板150,150の内径面f1,f1のみ、あるいは軌道面111の一方f4と、その反対側に位置する遮蔽板150の内径面f1のみに形成するものであっても良い。
【0040】
ここで、このように隙間Sを形成する各面f1,f1、f4,f4にも動圧発生溝165,165…を形成した場合、前記保持器140と遮蔽板150、150の各端面f2,f2、f3、f3に形成される潤滑剤のせん断により圧力を発生させる動圧発生溝160、160…の溝深さは、この隙間S側の各面f1,f1、f4,f4に形成されるポンピング作用を発生させる動圧発生溝165、165…の溝深さよりも浅くすることが望ましい。
【0041】
すなわち、前記保持器140と遮蔽板150、150の各端面f2,f2、f3、f3に形成される動圧発生溝160、160…は、前述したように保持器140端面f2,f2と遮蔽板150、150の端面f3、f3同士の接触を防止するための動圧発生を目的としたものであるのに対し、隙間S側の各面f1,f1、f4,f4に形成される動圧発生溝165、165…は、潤滑剤の流れおよびその循環を促進するためのポンピング作用発生を目的としたものである。そして、通常、2面間の接触を防止するための動圧を発生させるための溝深さの最適値は、潤滑剤の流れおよびその循環を促進するための溝深さよりも小さいので前者(f2,f2、f3、f3)の溝深さを、後者(f1,f1、f4,f4)の溝深さよりも浅くすることが望ましい。
【0042】
なお、本実施の形態では、外輪120側を静止輪としてこの外輪120側に遮蔽板150、150を設けた例で示したが、内輪110側を静止輪としてこの内輪110側に遮蔽板150、150を設けるような構成であっても良い。
また、本実施の形態では、転動体130として円筒状ころを用いたラジアルタイプの転がり軸受の例で示したが、図3に示すようにボール状の転動体130を用いた、いわゆる深溝玉軸受にもそのまま適用することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、図9〜図13は、本発明に係る転がり軸受200の第2の実施の形態を示したものであり、図9はこの転がり軸受200の一部破断全体斜視図、図2はこの転がり軸受200の周方向断面図である。
図9および図10に示すように、この転がり軸受200はスラストタイプの転がり軸受であり、上下に位置する静止輪210および回転輪220と、この静止輪210と回転輪220間に転動自在に配置される複数の転動体230、230…と、これら複数の転動体230、230…を保持するための保持器240とから主に構成されている。
この回転輪220は、図示しない回転軸を支持するようになっており、その回転軸と共に回転するようになっている。
【0044】
一方、静止輪210は、この回転輪220の下部に所定の間隔を隔てて位置しており、図示しない固定フレーム上などに固定されるようになっている。
また、転動体230は、円筒状をした金属製のころから構成されており、静止輪210の上面外周縁に沿って形成された静止輪側軌道面211と、回転輪220の下面外周縁に沿って形成された回転側軌道面221に沿って転動自在となっている。
【0045】
また、保持器240は、この静止輪210と回転220の周縁部に沿って延びるドーナツ円盤状の保持器本体241に矩形状のポケット242を複数放射状に形成したものであり、これら各ポケット242,242…にそれぞれ前記の転動体(ころ)230を収容することで各転動体230、230…を、静止輪210と回転220間の周縁部に沿って一定の間隔を隔てて放射状かつ転動自在に保持するようになっている。
【0046】
また、静止輪210の外周面には、これより回転輪220の周囲にまで延びる筒状の遮板250が設けられており、この遮蔽板250によって回転輪220および保持器240の外周部が囲まれるような構造となっている。
また、この遮蔽板250の内径面(内面)f6と、回転輪220の外径面f5との間には、その周方向に沿って環状の隙間Sが形成されており、この隙間Sを介して軸受空間Cの潤滑剤が適宜流入および排出するようになっている。
【0047】
次に、図12および図13はこの転がり軸受200の各部の詳細を示したものであり、図12は図10中A−A線断面図、図13は図10中B−B線断面図である。
先ず、図12に示すように、この回転輪220の外径面f5と保持器240の外径面f7には、それぞれV字形をした複数の動圧発生溝265、265…が、その回転方向に沿って形成されている。
【0048】
また、図13に示すように、これら回転輪220の外径面f5と保持器240の外径面f7とに対向する遮蔽板250の内径面f6のうち、それぞれの外径面f5とf7と対向する面f6Uと、f6Lにも、同様にそれぞれV字形をした複数の動圧発生溝265、260…が、(その向きは異なるものの)その回転方向に沿って形成されている。
そして、このような構成をした本発明の転がり軸受200にあっては、図9および図10に示すように保持器240の周囲にこれを囲繞するように筒状の遮蔽板250が位置するため、この遮蔽板250によって保持器240の径方向への移動を規制することができる。
【0049】
これによってスラストタイプの転がり軸受200において、保持器240が径方向に大きく移動することがなくなるため、保持器240の振動や異音、ならびに転動体230のスキューに起因した保持器240と転動体230の衝突による保持器240の破損などを抑制できる。
また、回転輪220の外径面f5と遮蔽板150の内径面f6との間に所定の隙間Sを形成したことから軸受空間Cへの潤滑剤の流量を最適に調整できる。
【0050】
これによって、潤滑剤の量が少なくとも充分な潤滑状態を確保できると共に、潤滑剤の量を減らすことができるため、低トルクを実現できる。
また、図12および図13に示すように、保持器240の外径面f7と、この外径面f7の囲む遮蔽板250の内周面f6のうち、これと対向する面f6Lに、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝260、260…を形成したことから、この遮蔽板150によって囲まれた保持器240の位置をその静止輪210の中心位置(正常な位置)に保持することが可能となる。
【0051】
すなわち、前記第1の実施の形態と同様に、それらの対向面f7とf6Lに複数の動圧発生溝260、260…を設けることにより、その保持器240の外径面f7の潤滑剤が遮蔽板250の内周面f6Lに形成された動圧発生溝260、260…に保持された状態でその保持器240の回転に伴ってその回転方向に流れることになる。すると、その保持器240側の潤滑剤と遮蔽板250側の潤滑剤に流れの速度差が生じ、それらの間にせん断力が発生してそれらの対向面f7とf6Lに動圧が発生することになる。
【0052】
これによって、それらの対向面f7とf6L同士が離間するような力が発生して保持器240の位置を静止輪210の中心位置(正常な位置)に保持するように作用するため、保持器240が偏芯して遮蔽板250との衝突を防止することができる。従って、その衝突に起因する振動や異音などを確実に抑制できる。
なお、前記第1の実施の形態と同様に、それらの対向面f7とf6Lに形成される動圧発生溝260、260…は、いずれか一方のみに形成してもこれらの作用効果を発揮することができる。また、この動圧発生溝160の形状もV字形の他、図8(a)に示すようなU字形や同図(b)に示すようなヘリングボーン形状、同図(c)に示すようなくさび形またはスパイラル形状などであっても良い。
【0053】
また、このような構成をした本発明の転がり軸受200にあっては、図12および図13に示すように、回転輪220と遮蔽板250との隙間Sを形成する回転輪220の外径面f5と、遮蔽板250の内径面f6Uにも、それぞれその回転方向に沿ってポンピング作用を発生させる複数の動圧発生溝265、265…を形成したことから、潤滑剤の量が少なくとも円滑に循環することができる。
【0054】
すなわち、前記第1の実施の形態と同様に、この隙間Sに動圧発生溝265、265…を形成することによってこの隙間Sからの潤滑剤の排出を促進し、積極的に潤滑剤を循環させて転がり軸受200全体を効果的に冷却することが可能となる。従って、低トルクが要求される用途で、できるだけ潤滑剤の量を少なくした場合においても充分な潤滑状態が確保でき、潤滑剤不足となるのを防止できる。
【0055】
なお、この隙間Sに形成される動圧発生溝265、265…も、いずれか一方のみに形成するものであっても良い。
また、このように隙間Sの各面f5,f6Uと、保持器240の外径面f7および遮蔽板250の内径面f6Lのいずれにもそれぞれ動圧発生溝260、260、265,265…を形成した場合、前記保持器240の外径面f7および遮蔽板250の内径面f6Lに形成される動圧発生溝260、260…の溝深さは、隙間S側の各面f5,f6Uに形成される動圧発生溝265、265…の溝深さよりも浅くすることが望ましいこと、およびその理由は、前記第1の実施の形態と同様である。
【0056】
なお、本実施の形態では、静止輪210側に遮蔽板250を設けた例で示したが、回転輪220側に遮蔽板250を設けるような構成であっても良い。
また、本実施の形態では、転動体130として円筒状ころを用いた例で示したが、図11に示すようにボール状の転動体130を用いたスラスト軸受の場合でも同様な作用効果を発揮することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、図14〜図19は、本発明に係る転がり軸受300の実施の形態を示したものである。
図14に示すように、本実施の形態に係る転がり軸受300は、転動体として円錐状のころを用いた円錐ころ軸受であり、内輪310の軌道面311と、その外側に位置する外輪320の321との間に円錐ころからなる複数の転動体330,330…を配置すると共に、これら各転動体330,330…をかご形保持器340によって転動自在に保持した構成となっている。
【0058】
この内輪310および外輪320は、一端面が他方の端面よりも拡径した円錐状の外径面および内径面を有しており、これら外径面および内径面に沿って形成された軌道面311および321に沿って複数の転動体330,330…が転動するようになっている。
また、内輪310側の軌道面311の大径側端面には、大鍔部312がその周方向に沿って形成されていると共に、その小径側端面には、小鍔部313がその周方向に沿って形成されている。そして、これら大鍔部312と小鍔部313によって挟まれた環状の軌道面311に沿って各転動体330,330…が転動するようになっている。
【0059】
また、かご形保持器340は、図15に示すように大径の環状部341と、これよりも小径の環状部342と、これら環状部341,342間を複数の柱部343、343…で連結して構成されている。そして、これら環状部341,342と柱部343、343…で形成された矩形状をした複数のポケット344,344…内に前記の円錐状のころからなる各転動体330,330…を収容して保持するようになっている。
【0060】
そして、本発明に係る転がり軸受300にあっては、図15に示すように、このかご形保持器340を構成する柱部343のうちポケット344側に位置する側面、すなわちころ状転動体330と接する側面に、この柱部343の長手方向に沿って延びる溝350が形成されている。
また、さらにこのかご形保持器340の大径側の環状部341には、この柱部に形成した溝350と連通するように貫通孔360が形成されている。
【0061】
そして、このような構成によれば、図16に示すように、軸受空間C内に侵入した異物が転動体330の回転などに伴ってそのかご形保持器340の柱部343に形成された溝350に入り込んだ後、図15に示すように、遠心力によってこの溝350内を環状部341側に流れ、その環状部341に形成された貫通孔360からかご形保持器340外へ排出されることになる。これによって、軸受空間内に侵入した金属片や砂粒などの異物を潤滑剤と共に自動的に除去することができるため、異物による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【0062】
なお、前述したようにこのかご形保持器340の構造では、1つの転動体330対して2つの柱部343が接触することになるため、この溝350はいずれか一方のみに設けても良い。
また、図17に示すように、その溝350の縁をスクレーパ状に鋭角に加工すれば、その縁部が転動体330の表面を掻き取るように作用するためより効果的に異物を除去することができる。
【0063】
また、さらに図18に示すように、その溝の断面形状を円形にすれば、溝350に入った異物が溝の中で対流しながら螺旋状に移動してスムーズに貫通孔360から排出することができる。
また、さらに図19に示すように、内輪310の軌道面311または外輪320の軌道面321のいずれか一方あるいは両方に、この軌道面311,321を横断するように複数の溝370、370…を形成するようにしても良い。
【0064】
このような構成によれば、軸受空間C内に侵入した異物が内外輪310,320の各軌道面311,321に形成された溝370,370…に入り込んだ後、遠心力によってその溝370,370…内を大径側端面に通過して通動するようになる。これによって、軸受空間C内に侵入した異物を効果的に除去できるため、異物混入による振動や異音、破損などを未然に防止することができる。
【0065】
なお、図19に示すように、この溝370,370…に入り込んだ異物がその遠心力によってより大鍔側によりスムーズに排出されるように、その排出側端部が回転方向下流側に向くようにこの溝370,370…をその回転方向に対して斜めに傾斜(例えば、10〜80°)するように形成することが望ましい。また、この溝370,370…の最適なサイズ(深さや幅)や数(間隔)などは、適用される軸受の大きさや潤滑剤の種類などによって異なってくるため特に限定されるものではないが、例えば、幅1〜3mm、深さ100μm〜1mm程度、間隔数mm〜数cm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る転がり軸受100の第1の実施の形態(ラジアルタイプ)を示す部分破断斜視図である。
【図2】本発明に係る転がり軸受100の第1の実施の形態(ラジアルタイプ)を示す周方向拡大断面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る転がり軸受100の他の例を示す周方向拡大断面図である。
【図4】図2中A−A線断面図である。
【図5】図2中B−B線断面図である。
【図6】図2中C−C線断面図である。
【図7】図2中D−D線断面図である。
【図8】動圧発生溝160の他の形状を示す図である。
【図9】本発明に係る転がり軸受200の第2の実施の形態(スラストタイプ)を示す部分破断斜視図である。
【図10】本発明に係る転がり軸受200の第2の実施の形態(スラストタイプ)を示す周方向拡大断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る転がり軸受200の他の例を示す周方向拡大断面図である。
【図12】図10中A−A線断面図である。
【図13】図10中B−B線断面図である。
【図14】本発明に係る転がり軸受300の第3の実施の形態(円錐ころ軸受)を示す断面図である。
【図15】本発明に係る転がり軸受300に適用するかご形保持器340の一例を示す部分拡大図である。
【図16】図15中A−A線拡大断面図である。
【図17】本発明に係る転がり軸受300に適用するかご形保持器340の変形例を示す部分拡大図である。
【図18】本発明に係る転がり軸受300に適用するかご形保持器340の変形例を示す部分拡大図である。
【図19】本発明に係る転がり軸受300に適用する内輪310と外輪320の一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
100…転がり軸受(ラジアルタイプ)
110…内輪(回転輪)
120…外輪(静止輪)
130…転動体
140…保持器
150…遮蔽板
160…動圧発生溝
165…動圧発生溝
200…転がり軸受(スラストタイプ)
210…静止輪
220…回転輪
230…転動体
240…保持器
250…遮蔽板
260…動圧発生溝
265…動圧発生溝
300…転がり軸受(円錐ころ軸受)
310…内輪
320…外輪
330…転動体
340…かご形保持器
341…環状部(径大)
342…環状部(径小)
343…柱部
350…溝
360…貫通孔
f1…遮蔽板の内径面(周面)
f2…保持器の端面
f3…遮蔽板の端面(内面)
f4…軌道面の端部
f5…回転輪の外径面(周面)
f6…遮蔽板の内径面(周面)
f7…保持器の外径面(周面)
S…隙間
C…軸受空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が静止輪となると共に他方が回転輪となる一対の内外輪と、当該内外輪の軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、当該各転動体を保持すべく前記内外輪の軌道面間に沿って延びる環状の保持器とを有するラジアルタイプの転がり軸受であって、
前記静止輪の軸方向両端に、前記保持器の端面と対向するように、これより前記回転輪側に鍔状に延びる環状の遮蔽板をそれぞれ設けると共に、当該各遮蔽板の回転輪側周面と当該周面と対向する前記回転輪の軌道面との間に所定の隙間を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受において、
前記保持器の軸方向端面、または当該軸方向端面と対向する前記各遮蔽板の軸方向端面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項3】
請求項1に記載の転がり軸受において、
前記各遮蔽板の回転輪側周面または当該周面と対向する前記回転輪の軌道面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項4】
請求項1に記載の転がり軸受において、
前記保持器の端面および前記回転輪の軌道面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、
前記保持器の端面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の軌道面に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受。
【請求項5】
請求項1に記載の転がり軸受において、
前記各遮蔽板のうち、前記保持器の端面に対向する端面および前記回転輪の軌道面に対向する周面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、
前記端面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記各遮蔽板の周面側に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受。
【請求項6】
一方が静止輪となると共に他方が回転輪となる一対の上下輪と、当該上下輪の軌道面間に転動自在に配置される複数の転動体と、当該各転動体を保持すべく前記上下輪の軌道面間に沿って延びる環状の保持器とを有するスラストタイプの転がり軸受であって、
前記静止輪の周縁部に、これより前記回転輪側に延びると共に当該回転輪を囲繞するように環状の遮蔽板をそれぞれ設けると共に、当該遮蔽板と前記回転輪の外径面との間に所定の隙間を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項7】
請求項6に記載の転がり軸受において、
前記保持器の外径面または当該外径面と対向する前記遮蔽板の内径面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項8】
請求項6に記載の転がり軸受において、
前記回転輪の外径面または当該外径面と対向する前記遮蔽板の内径面のいずれか一方あるいはその両方に、その回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項9】
請求項6に記載の転がり軸受において、
前記保持器の外径面および前記回転輪の外径面に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、
前記保持器の外径面側に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の外径面側に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受。
【請求項10】
請求項6に記載の転がり軸受において、
前記遮蔽板の内径面のうち、前記保持器の外径面に対向する位置および前記回転輪の外径面に対向する位置に、それぞれその回転方向に沿って複数の動圧発生溝を形成すると共に、
前記前記保持器の外径面に対向する位置に形成する動圧発生溝の深さを、前記回転輪の外径面に対向する位置に形成する動圧発生溝の深さよりも浅くしたことを特徴とする転がり軸受。
【請求項11】
請求項1〜5および7〜10のいずれか1項に記載の転がり軸受において、
前記動圧発生溝は、V字形状、U字形状、ヘリングボーン形状またはくさび形状をしていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項12】
一対の環状部と当該環状部間を複数の柱部で連結してころ状転動体を収容するポケットを形成したかご形保持器を備えた転がり軸受であって、
前記かご形保持器を構成する柱部の前記ころ状転動体と接する側面に、当該柱部の長手方向に沿って溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項13】
請求項12に記載の転がり軸受において、
前記かご形保持器の環状部に、前記柱部に形成した溝と連通する貫通孔を形成したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項14】
内外輪の軌道面間に複数の円錐ころを転動自在に配置した転がり軸受であって、
前記内外輪のいずれか一方あるいは両方の軌道面に、当該軌道面を横断するように複数の溝を形成したことを特徴とする転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−31947(P2010−31947A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193976(P2008−193976)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】