説明

転写・接合方法および装置

【課題】 気泡を含まない良好な転写・接合界面を、同一の装置によって、簡便かつ低コストで得られる転写・接合方法および装置を提供すること。
【解決手段】 微細パターン102が設けられたスタンパー103に載置された第1部材100を、第1の型101により加圧しながら接触させ、赤外線照射手段106を用いてその接触面に赤外線107を線状に照射し加熱し、赤外線照射手段106を移動させ微細パターン102の転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、転写工程後、スタンパー103を取り除き、転写済み第1部材100を、第1の型101により、第2の型105に載置された第2部材104と加圧しながら接触させ、赤外線照射手段106を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱し、赤外線照射手段106を移動させ、接触面の接合が一方向に順次行われるようにする接合工程とを有する転写・接合方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写・接合方法および装置に関するものであり、詳しくは、気泡を含まない良好な転写・接合界面を、同一の装置によって、簡便かつ低コストで得られる転写・接合方法および装置に関するものである。本発明の転写・接合方法および装置は、とくに表面に微細パターンを有するプレートとそれをカバーするカバープレートとから形成された、溶液の混合、反応、分離、精製、検出などの様々な化学操作が微小化されたマイクロ化学チップを得るのに有用である。
【背景技術】
【0002】
DNAチップ、タンパクチップなどのバイオチップ、マイクロリアクター、マイクロ分析チップ、微生物検出チップ、診断チップ等のマイクロ化学チップは、例えば表面に数nmから数百μmの微細パターンを有するプレートにカバープレートを接合することにより形成されている。微細パターンを有するプレートは、例えば当該パターンを転写可能なスタンパーを用意し、このスタンパーにプレート部材を接触させ転写することによって製造されている。
【0003】
転写方法としては、例えば下記特許文献1には、転写面を具えてかつプラスチック材料からなる基材を用意し、転写面を露出した状態で基材を固定し、少なくとも一部が赤外線透過材料からなるスタンパーの賦型面を基材の転写面と密着状態に保持し、スタンパーに対して基材を指向する方向に赤外線を照射することを特徴とするプラスチック成形加工方法が開示されている。しかし、この方法で、賦型面の一部に赤外線を照射した場合、照射した部分のみが転写され、他の部分は転写されないばかりか、照射された部分とされない部分との間での照射ムラにより賦型面表面の平滑性が損なわれる。本方法では、転写面全体に均一に赤外線を照射する方法は示されていない。
【0004】
また、微細パターンを有するプレートとカバープレートを接合するためには、下記のような幾つかの接合方法を利用することができる。
【0005】
例えば、下記特許文献2には、赤外線吸収性を有する2つの熱可塑性樹脂成形体AおよびBを接触させ、熱可塑性樹脂成形体Aの側から赤外線を照射し、接触部の温度、成形体Aの表面温度および軟化温度を特定の関係が満たされるように制御する熱可塑性樹脂成形体の溶着方法が開示されている。
また、特許文献3には、レーザー光に対して非吸収性で熱可塑性の隣接する透明樹脂部材間にレーザー光に対して吸収性で非常に薄い透明フィルムを介在させた状態で複数の透明樹脂部材を接面重合し、外側の透明樹脂部材の面にレーザー光を照射することにより溶着させる熱可塑性透明樹脂部材のレーザー接合方法が開示されている。
特許文献4には、レーザー光に対して非吸収性で熱可塑性の透明樹脂材料の接合面に微量の赤外線吸収色素をベヒクルと共に水または溶剤に分散させて形成した赤外線吸収剤を少なくとも部分的に存在させた状態で複数の透明樹脂材料を接面重合し、外側の透明樹脂材料の露出面にレーザー光を照射する熱可塑性透明樹脂材料のレーザー接合方法が開示されている。
【0006】
上記の技術以外にも、ホットエンボス装置を用いる接合方法;接着剤を用いる接合方法;陽極接合による方法;超音波による接合方法等が知られている。
ホットエンボス装置を用いる接合方法は、ヒータおよび水冷配管を装着し温度制御されたプレスユニットに2枚の樹脂部材を挟み、接合界面に気泡を発生させないために、真空チャンバー内でプレスすることにより、熱溶着させるものである。
接着剤を用いる接合方法は、2つの樹脂部材間に接着剤を塗布し、接着するものである。
陽極接合による方法は、シリコンとガラスを300〜400℃に加熱した状態で、500V〜1kVの電圧を印加し、シリコンとガラスの間に大きな静電引力を発生させ、両者の界面で化学結合させるものである。
超音波による接合方法は、2つの樹脂部材を合わせた状態で超音波振動子により振動エネルギーを与え、接合界面における共振作用により接合するものである。
しかしながら、特許文献2で提案されている溶着方法では、大気中で接合する場合、接合界面に気泡が発生するという問題点がある。なお気泡を発生させないために、真空中で接合を行う方法も考えられるが、真空引きを行うための時間、放熱・冷却に要する時間が長く、生産性が低くなってしまう。
また特許文献3および4で提案されている接合方法では、レーザー光に対して吸収性で非常に薄い透明フィルムを介在させたり、接合面に赤外線吸収剤を存在させたりするため、手間やコストがかかるともに、最終製品であるマイクロ化学チップにおいて光学的な検出を行う用途には使用できない場合がある。
ホットエンボス装置を用いる接合方法では、真空中で接合するため、真空引きを行うための時間、放熱・冷却に要する時間が長く、生産性が低くなってしまう。
接着剤を用いる接合方法では、接着剤の塗布ムラ、はみ出し、気泡の巻き込み等が起こり易く品質が安定せず、また接着剤が母材とは異なる光学特性のため、最終製品であるマイクロ化学チップにおいて光学的な検出を行う用途には使用できない場合がある。
陽極接合による方法では、接合のためにはNaイオンが必要であり、使用部材がシリコンとガラスに限定されてしまうという問題がある。
超音波による接合方法では、最終製品がマイクロ化学チップである場合、共振現象によって微細パターンが破壊されてしまうという問題がある。
【0007】
一方、従来、スタンパーの微細パターンをプレートに転写するメカニズムと、2つのプレートを接合するメカニズムは全く異なるため、同一の装置で転写・接合を行うことは困難であった。唯一の例外は、プレートを均一な温度に保持して、真空中でプレスすることの可能な、ホットエンボス装置である。しかし、前記のように、ホットエンボス装置を用いると、真空引きを行うための時間、放熱・冷却に要する時間が長く、生産性が低くなってしまうという問題点があった。
【0008】
【特許文献1】特開2001−158044号公報
【特許文献2】国際公開第03/039843号パンフレット
【特許文献3】特開2003−181931号公報
【特許文献4】特開2004−276295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、気泡を含まない良好な転写・接合界面を、同一の装置によって、簡便かつ低コストで得られる転写・接合方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、微細パターンが設けられたスタンパーに載置された第1部材を、第1の型により加圧しながら接触させ、赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記微細パターンの形状の転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、前記第1の型により、第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにする接合工程とを有することを特徴とする転写・接合方法である。
【0011】
請求項2の発明は、前記接合工程において、前記第1部材または第2部材の一方の側から赤外線を照射し、前記接触面の温度を(Ti)、前記部材の赤外線照射側表面温度を(Ts)、前記2つの部材の軟化温度のうち低い方の軟化温度を(Tm)、前記赤外線を照射する側の部材の軟化温度を(Tma)としたとき、下記式(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載の転写・接合方法である。
(1) Ts<Tma
(2) Ti>Tm
【0012】
請求項3の発明は、微細パターンが設けられたスタンパーに載置された第1部材を、第1の型およびスタンパーの協働により加圧しながら、前記スタンパーを通して赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記微細パターンの転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、前記第1の型により、第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記第2の型を通して前記赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにし、かつ、前記第1および第2部材の接する前記第1の型および第2の型の表面温度が同じになるように温度調整を行う接合工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写・接合方法である。
【0013】
請求項4の発明は、微細パターンが設けられた赤外線透過材料からなるスタンパーに載置された第1部材を、赤外線透過材料からなる第1の型およびスタンパーの協働により加圧しながら、前記スタンパーを通して第1赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱し、これと同時に前記第1の型を通して第2赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記第1および第2赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記スタンパー表面の微細パターンの転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、赤外線透過材料からなる第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記第2の型を通して前記第1赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱し、これと同時に前記第1の型を通して第2赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型および第2の型、または、前記第1および第2赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにする接合工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写・接合方法である。
【0014】
請求項5の発明は、前記転写済み第1部材が、表面に微細パターンを有するプレートであり、前記第2部材が、前記微細パターンを有するプレートをカバーするカバープレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転写・接合方法である。
【0015】
請求項6の発明は、第1部材を載置するとともに、交換可能とされた、表面に微細パターンが設けられたスタンパーと、
第2部材を載置する第2の型と、
前記第1部材およびスタンパー、または、前記第1部材および第2部材を加圧する第1の型と、
前記第1部材およびスタンパーの加圧された接触面、または、前記第1部材および第2部材の加圧された接触面に向かって赤外線を線状に照射する赤外線照射手段と、
前記第1の型およびスタンパー、前記第1の型および第2の型、または、前記赤外線照射手段を移動させる移動手段と、
を備え、
前記赤外線を線状に照射しつつ前記第1の型およびスタンパー、前記第1の型および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材へのスタンパー表面の微細パターンの転写、および前記第1部材および第2部材の接合を一方向に順次行うことを特徴とする転写・接合装置である。
【0016】
請求項7の発明は、前記スタンパーが、赤外線透過材料からなり、
前記第2の型が、赤外線透過材料からなり、
前記第1の型には、前記第1部材および第2部材の接する前記第1の型および前記第2の型の表面温度が同じになるように温度調整を行う温度調整手段が設けられ、
前記転写が、前記赤外線照射手段を用いて前記スタンパーを通して赤外線を線状に照射し、かつ前記第1の型の表面温度の温度調整をしながら行われ、
前記接合が、前記赤外線照射手段を用いて前記第2の型を通して赤外線を線状に照射し、かつ前記第1の型の表面温度の温度調整をしながら行われることを特徴とする請求項6に記載の転写・接合装置である。
【0017】
請求項8の発明は、前記スタンパーが、赤外線透過材料からなり、
前記第1の型が、赤外線透過材料からなり、
前記第2の型が、赤外線透過材料からなり、
前記赤外線照射手段が、第1赤外線照射手段および第2赤外線照射手段から構成され、
前記転写が、前記第1赤外線照射手段を用いて前記スタンパーを通して赤外線を線状に照射し、これと同時に前記第2赤外線照射手段を用いて前記第1の型を通して赤外線を線状に照射しながら行われ、
前記接合が、前記第1赤外線照射手段を用いて前記第2の型を通して赤外線を線状に照射し、これと同時に前記第2赤外線照射手段を用いて前記第1の型を通して赤外線を線状に照射しながら行われることを特徴とする請求項6に記載の転写・接合装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、気泡を含まない良好な転写・接合界面を、同一の装置によって、簡便かつ低コストで得られる転写・接合方法および装置を提供することができる。本発明の転写・接合方法および装置は、とくに表面に微細パターンを有するプレートとそれをカバーするカバープレートとから形成された、溶液の混合、反応、分離、精製、検出などの様々な化学操作が微小化されたマイクロ化学チップを得るのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の方法および装置を図面を参照しながらさらに説明する。
図1は、本発明の転写・接合装置の一例を説明するための概略図であり、(a)は正面断面図であり、(b)は側面断面図である。
図1において、本発明の転写・接合装置1は、微細パターン102が設けられたスタンパー103に載置された第1部材(アクリル樹脂製のプレート)100と、第1部材100およびスタンパー103間を加圧させるための第1の型101と、第2部材(カバープレート)104を載置する第2の型105と、プレート100および微細パターン102の加圧された接触面、または、プレート100およびカバープレート104の加圧された接触面に向かって赤外線を線状に照射する赤外線照射手段106と、赤外線照射手段106を移動させる移動手段20を備えている。
【0020】
本形態では、スタンパー103は、赤外線透過材料からなる。
【0021】
まず、スタンパー103にプレート100を載置し、第1の型101によりプレート100および微細パターン102間を加圧しながら接触させる。次に赤外線照射手段106を稼動し、プレート100の長手方向に直交するように、すなわちプレート100の幅方向全体に線状に赤外線107を照射する。
【0022】
なお、図1の形態では、各型およびスタンパーを固定するために基台120を使用しているが、赤外線107を照射部分に相当する場所には孔部121が設けられており、赤外線107の照射を妨害することはない。また、スタンパー103は赤外線透過材料から形成されているので、赤外線107はプレート100および微細パターン102の加圧された接触面に到達することができる。赤外線透過材料としては、結晶性無機材料および非晶性無機材料が挙げられ、結晶性無機材料としては例えばZnSe、Si、Ge、ZnS、GaAs、ダイヤモンド等が、非晶性無機材料としては例えばSiO2を主成分とする石英系ガラス材料、GeO2を主成分とするゲルマネート系ガラス材料、Al23を主成分とするアルミネート系ガラス材料等の酸化物系ガラス材料のほかに、硫化物系ガラス材料、カルコゲナイドガラス材料等が挙げられる。
【0023】
次に、プレート100および微細パターン102の加圧された接触面に向かって赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により赤外線照射手段106を矢印108方向に移動させ、転写を一方向に順次行う。なお、赤外線照射手段を106を移動させる替わりに、図示しない別の移動手段を用いて第1の型およびスタンパーを移動させてもよい。
転写界面109は、線状の赤外線107の照射により加熱され、プレート100は、その端部から一方向に順次溶融部110を形成し、微細パターン102の微細パターンを転写していく。このとき、微細パターン102の凹部に存在する空気は、溶融部110の流入に伴って凹部から押出され、最終的にはプレート100およびスタンパー103の他方の端部111から排出される。したがって、気泡を含まない良好な転写界面を得ることができる。なお、前記形態では赤外線107を両プレートの一方の端部から他方の端部に向かって1回のみ照射しているが、2回以上の照射、すなわち往復させてもよい。
【0024】
前記の転写工程終了後、同じ装置を用いて接合工程が開始される。
まず、微細パターン102が設けられたスタンパー103は、図2の転写・接合装置の側面断面図に示すように、図示しない手段により取り除かれ、カバープレート104を載置する第2の型105を第1の型101の下方に到達させ、転写済みのプレート100をカバープレート104上に載置する。
続いて、図3に示すように、転写工程によって微細パターンが転写された転写済みのプレート100を、カバープレート104に加圧しながら接触させるために、第1の型101を第2の型105の方向に移動させる。次に赤外線照射手段106を稼動し、線状の赤外線107を転写工程と同様に照射する。
【0025】
なお、図3の形態では、第2の型105は赤外線透過材料から形成されているので、赤外線は両プレートの加圧された接触面に到達することができる。赤外線透過材料は先に例示したとおりである。
【0026】
次に、両プレートの加圧された接触面に向かって赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により赤外線照射手段106を矢印108方向に移動させ、接合を一方向に順次行う。なお、赤外線照射手段を106を移動させる替わりに、図示しない別の移動手段を用いて第1の型および第2の型を移動させてもよいこと、また赤外線107を両プレートの一方の端部から他方の端部に向かって複数回往復させてもよいことは、前記の転写工程と同じである。
接合界面200は、線状の赤外線107の照射により加熱され、両プレートの端部から一方向に順次溶融部201を形成し溶着していく。このとき、接合界面200に存在する気泡は、溶融部201の形成とともに移動し、最終的には両プレートの他方の端部202から排出される。したがって、両プレートの接合界面200は、他方の端部202まで気泡を排出しながら溶着していくので、気泡を含まない良好な接合界面を得ることができる。なお、赤外線107の強度が強すぎると、両プレートの接合界面の温度が過剰に高くなり、プレート100の微細パターンの内部に溶融樹脂が流入する恐れがあるので、赤外線の照射エネルギーは適宜調節するのが好ましい。
【0027】
なお、図1、3の形態では、赤外線107はスタンパー103または第2の型105の下部からこれら基台を通して照射されているが、スタンパー103または第2の型105を通さずに、第1の型101を通して照射してもよい。この場合、第1の型101は、赤外線透過材料である必要がある。
【0028】
接合界面200への線状の赤外線107の照射は、例えば図3の形態において、赤外線107を第2の型105の下部から第2の型105を通して照射したときに、接合界面の温度を(Ti)、第2の型105に接するプレート104の表面温度、すなわち赤外線照射側表面温度を(Ts)、プレート100と104の軟化温度のうち低い方の軟化温度を(Tm)、プレート104の軟化温度を(Tma)としたとき、下記式(1)および(2)を同時に満たすようにすることが好ましい。この条件を満たすことにより、接合界面200は溶融部201を形成するが、溶融部を形成する必要のないプレート104表面の溶融を防止することができる。
(1) Ts<Tma
(2) Ti>Tm
なお、TsはTmaよりも10℃以上低い温度が好ましい。また、プレート100は微細パターンを有するので、軟化温度はプレート104のほうが低いのが好ましい。
【0029】
赤外線吸収性の材料からなるプレート100と104において、赤外線の照射による温度の上昇は、該材料の各部分で吸収される赤外線の量に比例する。赤外線の吸収量は照射した赤外線の強度および物質に特有の吸光係数に相関しランベルト・ベールの法則に従う。したがって、赤外線の吸収量は赤外線が入射した表面で最も強く、内部に入るにしたがって単位体積あたりの材料に吸収される赤外線の吸収量は小さくなる。
一方、赤外線吸収性の材料の各部分における温度の上昇速度は、各部分に与えられる単位体積あたり、単位時間当たりの熱量と各部分から放散する単位体積あたり、単位時間当たりの熱量との差を比熱で除することにより与えられるが、実際の温度は赤外線照射開始時における各部分の温度の関数である。したがって、赤外線吸収性の材料に照射される赤外線の強度、照射時間、該材料の吸光係数、比熱、熱伝導度、該材料からの熱の放熱量、該材料の各部分の赤外線照射開始時の温度などから計算によって近似的に算出可能である。これらの計算を行う近似式としては、例えば下記式
δT/δt=k/ρc・(δ2T/δx2)+Q/ρc
Q=|−βl0exp(−βx)|
(T:温度、t:時間、x:距離、k:熱伝導度、ρ:密度、c:比熱、l0:入射赤外線強度、β:吸収係数)
が挙げられる。
この式は、プレート104の表面からの内部方向への距離xの温度Tが、赤外線の照射時間tにおいての変化率を示した微分方程式であり、赤外線照射直前の温度を初期値として、入射から時間tにおけるプレート104の表面からの距離xにおける温度Tを近似的に求めることができる。その結果、TiがTm以上であり、TsがTmaより低くする条件(プレート100,104の種類、厚さ、赤外線強度、後述する放熱材の種類等)を簡便に予測することができる。また、赤外線の照射強度(単位時間・単位立体角・単位面積当たりの赤外線エネルギー)、照射時間、照射開始時の温度、プレート表面からの除熱量などを変更したモデル的な実験を行うことで好ましいそれぞれの範囲を定めることもできる。
【0030】
ここで、接合界面200の温度(Ti)は、最も高くなるように制御され、プレート100と104の軟化温度のうち低い方の軟化温度(Tm)よりも、接合界面200の温度を高くするのが好ましい。その制御方法を、図4を参照して説明する。
赤外線照射手段107を用いてプレート100と104の接合界面200に向かって赤外線を照射したとき、前記微分方程式に基いて接合界面200の温度を所望の値となるように赤外線強度を制御すると、プレート104は赤外線を吸収するが、同時にプレート104の赤外線照射側表面が放熱を開始し、プレート100および104の内部温度は、温度分布曲線21のような温度分布を示す。したがって、プレート104の材料に関するパラメータと、赤外線照射手段に関するパラメータを適宜調整することにより、接合界面200の温度を最も高くするとともに、軟化温度(Tm)23よりも、接合界面200の温度を高くすることができる。
なお、プレート104の放熱性が低すぎる場合は、プレート100および104の内部温度は、温度分布曲線22のような温度分布を示す。したがってプレート104の赤外線照射側表面温度(Ts)が、プレート104の軟化温度(Tma)よりも高くなり、その結果、プレート104の赤外線照射側表面が熱損傷することになり好ましくない。
【0031】
このような場合は、図5に示すように、プレート104の赤外線照射側表面に赤外線透過材料からなる放熱体30をスタンパー103として用い、放熱体30をプレート104に接触させることにより、プレート104の放熱性を高めればよい。
また放熱体30をプレート104に接触させることにより、高い出力の赤外線を利用することができる。
放熱体30の熱伝導度は、1W/m・℃以上、好ましくは10/m・℃以上である。
なお、前記のような赤外線吸収性の材料からなる2つの部材の内部温度の温度分布を制御する方法は公知であり、例えば前述の特許文献2に記載されている。
【0032】
また本発明の接合工程において、プレート100とプレート104は、加圧された状態で赤外線が照射される。この加圧によって、転写性および接合性が良好になるとともに、気泡の除去も促進される。なお圧力は、各プレート100,104および微細パターン102の部材の種類やサイズなどにより適宜選定すればよいが、各プレートがプラスチックの場合、転写工程では0.1〜1.0MPaが好ましく、接合工程では0.01〜1.0MPaが好ましい。
【0033】
図6は、接合工程における別の例を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。
図6において、赤外線透過材料からなる第2の型41と第1の型42との間に、プレート100および104が加圧されて接触した状態で載置されている。プレート100および104は、第1の型42および第2の型41の協働により加圧されている。図6では、第1の型42に図示しない加圧手段により、矢印43方向に荷重が加わっている。
加圧完了後、第2の型41を通して、図3で示した形態と同様に、両プレートの加圧された接触面に向かって赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により赤外線照射手段106を矢印108方向に移動させ、接合を一方向に順次行う。接合界面200は、線状の赤外線107の照射により加熱され、両プレートの端部から一方向に順次溶融部201を形成し溶着していく。このとき、接合界面200に存在する気泡は、溶融部201の形成とともに移動し、最終的には両プレートの他方の端部202から排出される。したがって、両プレートの接合界面200は、他方の端部202まで気泡を排出しながら溶着していくので、気泡を含まない良好な接合界面を得ることができる。
【0034】
ここで、図4に示したように、プレート100および104の内部温度は、温度分布曲線21のような温度分布を示している。温度分布曲線21によれば、プレート104の表面温度よりも、プレート100の表面温度(外側表面の温度)が低くなっていることが分かる。このような温度差は、プレート100および104の接合工程時、プレート間の異なる熱収縮により反り等の変形をもたらすことがある。したがって、このような現象を生じさせないために、第1の型42および第2の型41の表面温度が同じになるように温度調整を行うのが好ましい。具体的手段としては、第1の型42に温度調整手段を設け、第1の型42および第2の型41の表面温度が同じになるように温度調整を行えばよい。温度調整手段としては、例えば図6に示したように、第1の型42にヒータ44および冷却媒体配管45を設け、第1の型42および第2の型41の表面温度をセンサによって検知し、第1の型42の温度が第2の型41よりも低い場合にはヒータ44を稼動させて加熱を行い、高い場合には冷却媒体配管45に水のような冷却媒体を流すことにより冷却を行う。
なお、転写工程も図6に示す装置を併用できる。この場合も、プレート100の変形を防止するために、第1の型とスタンパーの表面温度が同じになるように温度調整を行うのが好ましい。
【0035】
図7は、第1の型42および第2の型41の温度調整手段による温度調整方法を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。第2の型41には、表面温度TL1、TL2、TL3、・・・TLn、を検知するための温度センサ51がn個取り付けられている。同様に、第1の型42には、表面温度TU1、TU2、TU3、・・・TUn、を検知するための温度センサ52がn個取り付けられている。符号53は温度調整手段であり、温度センサ51により検知された第2の型41の平均表面温度TLiと温度センサ52により検知された第1の型42の平均表面温度TUiとが同じになるように、図示しないヒータ電源のON/OFF、あるいは冷却媒体ポンプを制御して冷却媒体配管45への冷却媒体の流量を調節する。
【0036】
なお前記で説明した形態では、第2の型41を通して両プレートの加圧された接触面に向かって赤外線を線状に照射し、第1の型42には温度調整手段を設けて温度調整を行ってプレートの熱損傷を防止しているが、2つの赤外線照射手段を用い、第2の型および第1の型を通して両方向から赤外線を照射すれば、温度調整手段を設けずとも両プレートの表面温度の差異がなくなり、かつ2つの方向から赤外線するので接合界面の温度がさらに高まり、良好な接合が達成され好ましい。
図8は、このような2つの赤外線照射手段を用いる一例を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。
図8において、赤外線透過材料からなる第2の型61と赤外線透過材料からなる第1の型62との間に、プレート104および100が加圧接触した状態で載置されている。プレート100および104は、第1の型62および第2の型61の協働により加圧される。
加圧完了後、第1赤外線照射手段1061を用いて、両プレートの接触面に向かって第2の型61を通して赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により第1赤外線照射手段1061を矢印108方向に移動させる。同時に、第2赤外線照射手段1062を用いて、両プレートの接触面に向かって第1の型62を通して赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20’により第2赤外線照射手段1062を矢印108方向に移動させ、接合を一方向に順次行う。第2の型61と第1の型62の赤外線透過材料は、同じエネルギー量の赤外線が接合界面200に到達するように、同じ材料であるのが好ましい。また、第1赤外線照射手段1061と第2赤外線照射手段1062は、接合界面200の同じ箇所の温度が最も高くなるように連動するのが好ましい。接合界面200は、線状の赤外線107の照射により加熱され、両プレートの端部から一方向に順次溶融部201を形成し溶着していく。このとき、接合界面200に存在する気泡は、溶融部201の形成とともに移動し、最終的には両プレートの他方の端部202から排出される。したがって、両プレートの接合界面200は、他方の端部202まで気泡を排出しながら溶着していくので、気泡を含まない良好な接合界面を得ることができる。なお、図8では、第2の型61および第1の型62が赤外線透過材料からなる形態を説明したが、第2の型61および第1の型62に赤外線透過材料からなる透過窓を設け、その他の部分は赤外線不透過性の材料から構成されていてもよい。また前記では接合工程において2つの赤外線照射手段を用いる形態を説明したが、この形態は、転写工程にも適用することができる。2つの方向から赤外線が照射されることにより、転写界面の温度がさらに高まり、良好な転写が達成され好ましい。
【0037】
また、本発明でいう微細パターンは、例えば幅、高さおよび深さが1nm〜1mmの範囲であり、両プレートの厚さは、例えば50μm〜数mmである。
【0038】
また、前記の形態では、接合する部材としてアクリル樹脂製のプレート100および104を例にとり説明したが本発明はこれに限定されず、赤外線吸収性のある、ポリカーボネート、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、低融点ガラス類、低融点金属類などが挙げられる。プレート100および104の材質は同じであっても異なっていてもよいが、プレート100が微細パターンを有する場合には、プレート104よりも軟化温度が高いのが好ましいことは前述のとおりである。
【0039】
また線状に赤外線を照射可能な赤外線照射手段としては、赤外線光源として、赤外線ランプが挙げられる。なお、赤外線ランプは、市販されているものを利用することができ、(株)ハイベック製、HYLシリーズなどが利用可能である。
【0040】
以下は、本発明にしたがう実験例である。本実験例は、図1に示した転写・接合装置を用いて行ったが、第1の型101としては、図6に示す温度調整手段を備えた第1の型42を用いた。
表面に微細パターンを有する微細パターン102を備えたスタンパー103として、赤外線透過性材料(FZシリコン製)からなる、厚さ0.8mmの下型を準備した。当該微細パターンは、5〜50μmまで5μmピッチで形成したライン&スペースを、深さ10μmに加工したものである。
プレート100としては、厚さ1.0mmのアクリル樹脂製のプレートを用いた。プレート100の軟化温度は、110℃であった。
まず、スタンパー103にプレート100を載置し、これを第1の型42を用いて微細パターン102に加圧接触させた。なお、図示しない加圧手段を用い、プレート100および微細パターン102間に0.2MPaの圧力が加わるようにした。
加圧完了後、スタンパー103を通して、(株)ハイベック製、HYLシリーズの赤外線照射手段を用い、プレート100の転写界面に向かって、プレート100の幅方向全体に赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により赤外線照射手段106をプレート100の一方の端部から他方の端部に向かって、一方向に移動させた。移動速度は、0.1mm/秒とした。また、赤外線出力は86W、加熱幅は2mmとした。同時に、第1の型101およびスタンパー103の表面温度が同じになるように、ヒータ44の稼動または冷却媒体配管45への水の流入により温度調整を行った。
【0041】
前記転写工程終了後、プレート100の転写界面を観察したところ、微細パターン102の凹凸形状を反転させた形状が良好な転写性でもって転写されていることが確認できた。
次に、スタンパー103を取り除き、プレート100と同じアクリル樹脂製のカバープレート104を載置する第2の型105を第1の型101の下方に到達させ、転写済みのプレート100をプレート104上に載置し、転写済みのプレート100および104間に0.15MPaの圧力が加わるように加圧した。第2の型105は、赤外線透過性材料(FZシリコン製)からなる、厚さ0.8mmの下型である。
加圧完了後、第2の型105を通して、(株)ハイベック製、HYLシリーズの赤外線照射手段を用い、プレート100および104の接合界面に向かって、両プレートの幅方向全体に赤外線107を線状に照射しつつ、移動手段20により赤外線照射手段106を両プレートの一方の端部から他方の端部に向かって、一方向に移動させた。移動速度は、0.1mm/秒とした。また、赤外線出力は86W、加熱幅は2mmとした。
赤外線照射時のプレート104の赤外線照射側表面温度(Ts)は100℃、プレート104の軟化温度(Tm)は110℃、接合界面の温度(Ti)は150℃であった。
同時に、第1の型101および第2の型105の表面温度が同じになるように、ヒータ44の稼動または冷却媒体配管45への水の流入により温度調整を行った。
その結果、接合界面200が、線状の赤外線107の照射により加熱され、プレート104に溶融部201が形成され、両プレートの端部から一方向に順次溶着していくのが確認された。また接合工程終了後の接合界面には、気泡が全く含まれていないことも確認できた。プレートの反りの発生も全く見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、気泡を含まない良好な転写・接合界面を、同一の装置によって、簡便かつ低コストで得られる転写・接合方法が提供される。本発明の転写・接合方法および装置は、とくに表面に微細パターンを有するプレートとそれをカバーするカバープレートとから形成された、溶液の混合、反応、分離、精製、検出などの様々な化学操作が微小化されたマイクロ化学チップを得るのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の転写・接合装置の一例を説明するための概略図であり、(a)は正面断面図であり、(b)は側面断面図である。
【図2】本発明の転写・接合装置の一例を説明するための側面断面図である。
【図3】本発明の転写・接合装置の一例を説明するための側面断面図である。
【図4】接合界面の温度の制御方法を説明するための図である。
【図5】接合界面の温度の制御方法を説明するための図である。
【図6】接合工程における別の例を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。
【図7】第1の型および第2の型の温度調整手段による温度調整方法を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。
【図8】2つの赤外線照射手段を用いる一例を説明するための転写・接合装置の側面断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1:転写・接合装置、100:第1部材(転写後は、表面に微細パターンを有するプレート)、101:第1の型、102:微細パターン、103:スタンパー、104:第2部材(カバープレート)、105:第2の型、106:赤外線照射手段、107:赤外線、109:転写界面、110:溶融部、200:接合界面、201:溶融部、30:放熱体、41:第2の型、42:第1の型、44:ヒータ、45:冷却媒体配管、51:温度センサ、52:温度センサ、61:第2の型、62:第1の型、1061:第1赤外線照射手段、1062:第2赤外線照射手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細パターンが設けられたスタンパーに載置された第1部材を、第1の型により加圧しながら接触させ、赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記微細パターンの形状の転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、前記第1の型により、第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにする接合工程とを有することを特徴とする転写・接合方法。
【請求項2】
前記接合工程において、前記第1部材または第2部材の一方の側から赤外線を照射し、前記接触面の温度を(Ti)、前記部材の赤外線照射側表面温度を(Ts)、前記2つの部材の軟化温度のうち低い方の軟化温度を(Tm)、前記赤外線を照射する側の部材の軟化温度を(Tma)としたとき、下記式(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載の転写・接合方法。
(1) Ts<Tma
(2) Ti>Tm
【請求項3】
微細パターンが設けられたスタンパーに載置された第1部材を、第1の型およびスタンパーの協働により加圧しながら、前記スタンパーを通して赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記微細パターンの転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、前記第1の型により、第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記第2の型を通して前記赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにし、かつ、前記第1および第2部材の接する前記第1の型および第2の型の表面温度が同じになるように温度調整を行う接合工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写・接合方法。
【請求項4】
微細パターンが設けられた赤外線透過材料からなるスタンパーに載置された第1部材を、赤外線透過材料からなる第1の型およびスタンパーの協働により加圧しながら、前記スタンパーを通して第1赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱し、これと同時に前記第1の型を通して第2赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型およびスタンパー、または、前記第1および第2赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材への前記スタンパー表面の微細パターンの転写が一方向に順次行われるようにする転写工程と、
前記転写工程後、前記スタンパーを取り除き、転写済み第1部材を、赤外線透過材料からなる第2の型に載置された第2部材と加圧しながら接触させ、前記第2の型を通して前記第1赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱し、これと同時に前記第1の型を通して第2赤外線照射手段を用いてその接触面に赤外線を線状に照射し加熱するとともに、前記第1の型および第2の型、または、前記第1および第2赤外線照射手段を移動させ、前記接触面の接合が一方向に順次行われるようにする接合工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の転写・接合方法。
【請求項5】
前記転写済み第1部材が、表面に微細パターンを有するプレートであり、前記第2部材が、前記微細パターンを有するプレートをカバーするカバープレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の転写・接合方法。
【請求項6】
第1部材を載置するとともに、交換可能とされた、表面に微細パターンが設けられたスタンパーと、
第2部材を載置する第2の型と、
前記第1部材およびスタンパー、または、前記第1部材および第2部材を加圧する第1の型と、
前記第1部材およびスタンパーの加圧された接触面、または、前記第1部材および第2部材の加圧された接触面に向かって赤外線を線状に照射する赤外線照射手段と、
前記第1の型およびスタンパー、前記第1の型および第2の型、または、前記赤外線照射手段を移動させる移動手段と、
を備え、
前記赤外線を線状に照射しつつ前記第1の型およびスタンパー、前記第1の型および第2の型、または、赤外線照射手段を移動させ、前記第1部材へのスタンパー表面の微細パターンの転写、および前記第1部材および第2部材の接合を一方向に順次行うことを特徴とする転写・接合装置。
【請求項7】
前記スタンパーが、赤外線透過材料からなり、
前記第2の型が、赤外線透過材料からなり、
前記第1の型には、前記第1部材および第2部材の接する前記第1の型および前記第2の型の表面温度が同じになるように温度調整を行う温度調整手段が設けられ、
前記転写が、前記赤外線照射手段を用いて前記スタンパーを通して赤外線を線状に照射し、かつ前記第1の型の表面温度の温度調整をしながら行われ、
前記接合が、前記赤外線照射手段を用いて前記第2の型を通して赤外線を線状に照射し、かつ前記第1の型の表面温度の温度調整をしながら行われることを特徴とする請求項6に記載の転写・接合装置。
【請求項8】
前記スタンパーが、赤外線透過材料からなり、
前記第1の型が、赤外線透過材料からなり、
前記第2の型が、赤外線透過材料からなり、
前記赤外線照射手段が、第1赤外線照射手段および第2赤外線照射手段から構成され、
前記転写が、前記第1赤外線照射手段を用いて前記スタンパーを通して赤外線を線状に照射し、これと同時に前記第2赤外線照射手段を用いて前記第1の型を通して赤外線を線状に照射しながら行われ、
前記接合が、前記第1赤外線照射手段を用いて前記第2の型を通して赤外線を線状に照射し、これと同時に前記第2赤外線照射手段を用いて前記第1の型を通して赤外線を線状に照射しながら行われることを特徴とする請求項6に記載の転写・接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−315313(P2006−315313A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140638(P2005−140638)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】